JP3517725B2 - 合成繊維経糸用糊剤及びその製造方法 - Google Patents

合成繊維経糸用糊剤及びその製造方法

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JP3517725B2
JP3517725B2 JP18320696A JP18320696A JP3517725B2 JP 3517725 B2 JP3517725 B2 JP 3517725B2 JP 18320696 A JP18320696 A JP 18320696A JP 18320696 A JP18320696 A JP 18320696A JP 3517725 B2 JP3517725 B2 JP 3517725B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ウォータジェット
ルーム方式でポリエステルやポリアミド系の織布などを
製織する時に使用する合成繊維マルチフィラメント経糸
用糊剤で、特にポリエステルやポリアミドのマルチフィ
ラメント用糊剤(サイジング剤)及びその製法に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】合成繊維マルチフィラメント糸の製織に
は、噴射した水で緯糸を送入するウォータージェットル
ーム(WJL)が汎用されている。特公平4-2712号公報
の1欄22行〜2欄5行及び特公平5-4465号公報の1欄16行〜
2欄1行で指摘されているように、本織機では製織中に多
量の水を使用するため、経糸に付着させたサイジング剤
の皮膜には十分な耐水性を付与しなければならない。そ
れと同時に精練工程では十分に糊抜きされねばならず、
耐水性と精練性の両立という相反する因子を同時に満足
せねばならない。
【0003】また最近では製織速度が750rpm以上の高速
化が進み、経糸と筬及び綜絖との擦過、または綜絖の上
下運動に伴う経糸どうしの擦過の程度が従来以上とな
り、経糸が受ける損傷がより大きくなっている。さらに
細番手糸を多用した高密度織物等の定番品以外の高品位
織物の製織も増えてきているが、その場合糊剤を高付着
量化して対応している。しかしその場合筬や綜絖での落
ち糊の増大を招く。そのため低付着量でも高速製織に対
応できる耐擦過性に優れた糊剤が要求されている。
【0004】WJLでの製織における経糸用糊剤とし
て、従来よりアクリル酸エステル−アクリル酸共重合体
からなる糊剤やこれにポリビニルアルコールを併用した
糊剤が使用されている。しかしアクリル酸エステル−ア
クリル酸共重合体の糊剤の場合、その糊皮膜が軟弱であ
り、かつ粘着性や吸湿性等の点で欠点が指摘されてい
る。これによって製織時の落ち糊が多く筬や綜絖部に蓄
積し粘着現象を生じ、経糸が損傷し織物品位の低下を招
いてたり、製織不良となってしまう。また、硬い糊皮膜
を形成する前述のアクリル系樹脂の欠点を補完すべくこ
れにポリビニルアルコールを併用する糊剤が用いられる
が、合成繊維に対する親和性に欠け集束性が不十分であ
る。ポリビニルアルコールの併用割合が高くなるほど糸
切れが起こりやすくなり、結果的に製織効率の低下を招
いてしまう(特公平4-2712号公報の2欄 6〜10行や特公
平4-2713号公報の3欄1〜9行、特公平5-4465号公報の2欄
2〜6行、特開昭59-9274号公報2欄5行〜3欄10行などで記
載)。
【0005】また水溶性ポリエステル糊剤では、十分な
集束性を期待できるが精練性の悪さから一般での使用量
は極一部に限られている(特公平4-2713号公報の3欄10〜
33行や特公平5-4466号公報の2欄16〜23行に記載)。
【0006】水溶性ウレタン糊剤の使用については、特
公昭60-18355や特公平5-24268、特開昭59-147013、特開
平4-142385等に示されている。しかし親水基としてスル
ホン酸基を持つため耐水性が十分でなかったり、また親
水基に使用するカルボキシル基の濃度が低いため精練性
が十分でなかったり、などの理由でウォータジェットル
ームでの高速製織に十分に対応できるものは見当たらな
い。また耐水性や対合成繊維接着性を高めるため、主鎖
としてポリエステルポリオール成分を使用しているケー
スが見られる(特開61-47880、特公平5-24268)。この
場合、抱合力は十分期待できるもののその接着性の高さ
が却って精練性に悪影響を及ぼすこととなる。最近では
精練工程前に織物の横幅を出すため生機セットを行う場
合も多々見受けられ、ポリエステル系ポリウレタンでサ
イジングされた経糸がこのような高温処理を受けると、
ポリエステル系ポリウレタンは合成繊維マルチフィラメ
ント間で固定されてしまい、精練性に著しい悪影響を及
ぼす。
【0007】このようにWJL製織工程の高速化に伴
い、より少ない付着量でより高速の製織に対応できる苛
酷な条件下での使用が可能でかつ、精練性に優れるとい
う、相反した条件を満足する経糸用糊剤が要求されてい
るが、従来品では十分に対応できていないのが現状であ
る。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】従来の杼を用いた製織
に比較して、WJLによる製織では高速製織が可能であ
るため、製織効率が著しく向上した。
【0009】最近では生産性向上のため、さらなる製織
高速化(回転数750rpm以上)が進められ経糸が受ける損
傷はより増大している。
【0010】従って経糸に付着した皮膜が耐水性と精練
性を両立するだけでなく、高速製織にも耐用できるよう
集束性に優れた糊剤が要求されている。
【0011】従来からのアクリル酸エステル−アクリル
酸重合体系糊剤では、製織時の落ち糊が多く筬や綜絖部
に蓄積する欠点をもっている。またPVAは集束性が不足
しており、いずれも最近の製織工程の高速化への対応は
難しい。ポリエステル樹脂やポリエステル系ポリウレタ
ン樹脂を主体とした糊剤では抱合力は良好であるもの
の、アクリル酸エステル−アクリル酸重合体系糊剤に比
較して精練性に大きな欠点が生じる。
【0012】本発明は低付着量でも十分な集束性を示
し、WJLでの製織時の耐水性に優れ、落ち糊もなく、
かつ精練性に優れた合成繊維経糸用糊剤及びその製造方
法を提供するものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明の請求項1の合成
繊維経糸用糊剤は、下記構造単位(A)〜(D)よりな
り、かつ(イ)〜(ハ)の特徴を備える水系ウレタン樹
脂を主成分として含むものである。
【0014】(A)分子量500〜2500のポリアル
キレングリコールに由来する構造単位20〜60重量
%、(B)ペンダント状のカルボキシル基を少なくとも
1個有する、低分子量ジオールに由来する構造単位3〜
15重量%、(C)前記(B)成分以外の、低分子量の
ジオール又はトリオールに由来する構造単位を、前記
(B)成分との合計で15〜35重量%、及び(D)ジ
イソシアネート化合物由来の構造単位25〜60重量
%。
【0015】(イ)ウレタン結合部分をなす原子団NH
COOの含有量が20〜35重量%であって、(ロ)オ
リゴマーの分子末端の未反応イソシアネート基が封鎖剤
によって実質的に封鎖されているか又は水酸基を形成し
ており、(ハ)前記ペンダント状のカルボキシル基が中
和されて親水基を形成している。
【0016】請求項2の合成繊維経糸用糊剤は、請求項
1に記載の合成繊維経糸用糊剤において、ワックスと、
非イオン系及び/又はアニオン系界面活性剤とからなる
ワックスエマルションを含み、前記水系ウレタン樹脂と
ワックスエマルションの合計重量に対するワックスエマ
ルションの重量%が40重量%以下であることを特徴と
する。
【0017】請求項3の合成繊維経糸用糊剤の製造方法
は、下記の構造(A)〜(E)を有する合成繊維経糸用
糊剤の製造方法であって、下記(ニ)〜(ホ)の工程を
備えることを特徴とする。
【0018】(A)分子量500〜2500のポリアル
キレングリコールに由来する構造単位20〜60重量
%、(B)ペンダント状のカルボキシル基を有する低分
子量ジオールに由来する構造単位3〜15重量%、
(C)前記(B)成分以外の、低分子量のジオール又は
トリオールに由来する構造単位を、前記(B)成分との
合計で15〜35重量%、及び(D)ジイソシアネート
化合物由来の構造単位25〜60重量%、かつ、(E)
ウレタン結合部分をなす原子団NHCOOの含有量20
〜35重量%。
【0019】(ニ)イソシアネート基/水酸基の当量比
が1.0以上の場合は未反応イソシアネート基が0.3
〜2.5重量%残存するように配合して反応させた後こ
の未反応イソシアネート基を封鎖剤によって実質的に封
鎖し、イソシアネート基/水酸基の当量比が1.0未満
の場合は水酸基価が5〜40になるよう配合して反応さ
せ、(ホ)前記オリゴマー中の(B)成分に由来するペ
ンダント状カルボキシル基が親水性塩をなすように中和
する。
【0020】すなわち、本発明の合成繊維経糸用糊剤の
主成分であるウレタン樹脂は、(1)ソフトセグメント
であり高温熱処理時に酸化分解されるポリエーテルジオ
ールを長鎖ジオール成分として使用していることと、
(2)ウレタン結合を高密度に配するべく低分子量ポリ
オールを特定範囲内で使用することを主な特徴とするウ
レタンオリゴマーから成り、これを所定の処理を行うこ
とにより得られる特殊な水溶性ウレタン樹脂である。
【0021】ポリエーテルジオールを主鎖とするポリウ
レタンの場合、耐水性が悪化することと合成繊維に対す
る接着性の低下が従来指摘されてきたが、低分子量ポリ
オールを使用してウレタン結合含有量を増加させること
で合成繊維に対する接着性及び耐水性の向上が可能とな
りポリエステル系ポリウレタンとほぼ同等の皮膜物性が
得られた。ポリエーテルジオールが主鎖であるため、合
成繊維に対する接着性が過度に強力ではないことと精練
前のセットなど高温処理(180℃×1〜2分)が行わ
れると、エーテル結合が酸化分解され精練性がポリエス
テル系ポリウレタンに比較して大きく向上することが特
徴となっている。またポリエステルポリオール成分を使
用していないため、経時的な加水分解によって物性が低
下する恐れもない。
【0022】このため、上記特定の水溶性ウレタン樹脂
が冷水不溶で、熱アルカリ可溶を示すため、耐水性に優
れることから、製織時の織機汚染を減少させると同時
に、製織した生布の精練性を向上させることが可能とな
る。また製織した生布を精練前にセットしても、アクリ
ル系糊剤と同等の精練性が得られる。
【0023】またこの糊剤によって処理された製織用経
糸は優れた集束性、平滑性、耐擦過性、耐膠着性を示す
ため、製織時の機械的摩擦による毛羽立ちや糸切れを防
止し、例えば、750rpm以上の高速WJLによる製
織にも十分に対応できる。さらに、低付着量でも充分な
集束性を示すため、経糸として細番手糸を多用した高密
度織物を高速で製織することも可能となる。さらに上記
ウレタン樹脂とともに、前記のワックスエマルションを
特定の割合で配合することにより、一層優れた集束性、
平滑性、耐擦過性、耐膠着性の向上が図られる。
【0024】
【発明の実施の形態】次に本発明を詳しく説明する。
【0025】上記特殊な水溶性ウレタン樹脂は、特定の
成分と量を用いて得られるウレタンオリゴマーのウレタ
ン結合(−NHCOO−)含有量が特定範囲に設定され
たウレタンオリゴマーを用い、このウレタンオリゴマー
を特定の方法で処理することにより得られるものであ
る。
【0026】上記ウレタンオリゴマーは分子量500〜
2500のポリアルキレングリコール(A成分)と、ペ
ンダント状カルボキシル基を有するジオール(B成分)
と、上記(B)成分以外の低分子量ポリオール(C成
分)と、ジイソシアネート(D成分)を用いて得られる
ウレタンオリゴマーの上記B成分に由来するペンダント
状カルボキシル基を中和・親水化し、さらに未反応イソ
シアネート基をすべてまたはその大部分を封鎖剤によっ
て処理することにより得られる。
【0027】本発明の中心をなす特殊な組成を有する水
溶性ウレタン樹脂のオリゴマーを製造する際の原料成分
の反応重量比は、高分子ポリエーテルジオール(A)/鎖
延長剤(B)及び(C)/ジイソシアネート(D)の各成分は、
それぞれ 20〜60/15〜35/25〜60 重量%であり、特に
好ましくはそれぞれ 35〜50/20〜35/30〜60 重量%で
ある。
【0028】ポリアルキレングリコール成分(A)には、
ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール
(PPG)、又はポリエチレン/ポリプロピレンのコポ
リマーグリコール、ポリテトラメチレングリコール(P
TMG)等が挙げられる。
【0029】これらポリアルキレングリコールの中で
も、耐水性を考慮してポリテトラメチレングリコール、
テトラメチレングリコールとポリプロピレングリコール
の混合物、ポリテトラメチレングリコールとポリエチレ
ングリコール/ポリプロピレングリコ−ルのコポリマー
グリコールの混合物などが好ましい。高分子ポリエーテ
ルジオールの平均分子量は500〜2,500であることが好ま
しく、特に好ましくは700〜1,600である。平均分子量 5
00未満の場合には、オリゴマー中に占めるソフトセグメ
ント含有量が少なくなるため得られる皮膜が脆くなり却
って製織効率が悪化してしまう。また分子量が2,500を
越える場合には、オリゴマー中に占めるウレタン結合含
量が低下するため、耐水性及び皮膜強度が低下して本発
明で得られる効果を期待できない。
【0030】本発明で用いられる鎖延長剤は必須成分と
してのペンダントカルボキシル基含有鎖延長剤(B)と一
分子に二個以上の水酸基を有する低分子ポリオール鎖延
長剤(C)に大別できる。
【0031】必須成分であるペンダントカルボキシル基
含有鎖延長剤成分(B)としては、ジメチロール酢酸、ジ
メチロールプロピオン酸、ジメチロール吉草酸等のグリ
コールカルボン酸が挙げられる。成分(B)によって樹脂
に親水性を付与し自己乳化性を持たせるのと同時に、皮
膜の耐水性と精練性をコントロールする。鎖延長剤成分
(B)の配合量はオリゴマー中で3〜15重量%が好ましく、
特に好ましくは5〜10重量%である。3重量%以下ならば
皮膜の耐水性が悪化し、15重量%を越えると乳化安定性
や皮膜の精練性が悪化する。
【0032】一分子に二個以上の水酸基を有する低分子
ポリオール鎖延長剤成分(C)としては、例えばジエチレ
ングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパ
ンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオ
ール、3−メチル−1,5−ペンタジオール、1,6−ヘキサ
ンジオール等の脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサン
ジメタノール等の脂環族ジオール、ビスフェノールAの
エチレンオキサイド(EO)付加物またはプロピレンオキ
サイド(PO)付加物等の芳香族系ジオール、トリメチロ
ールプロパン、トリメチロールエタン、ヘキサントリオ
ール、グリセリン等の脂肪族トリオールが挙げられる。
これら鎖延長剤成分(C)については単独でも二者以上の
併用であってもさしつかえない。これらの中でも、1,4
−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノー
ル、3-メチル-1,5-ペンタジオールの単独使用又は併
用、またはこれらとトリメチロールプロパンの併用が、
得られる皮膜の耐水性や耐擦過性、または乳化安定性の
点から好ましい。
【0033】鎖延長剤成分(B)及び(C)の合計配合量はオ
リゴマー中で10〜35重量%が好ましく、特に好ましくは
15〜25重量%である。配合量が10重量%未満の場合に
は、得られるオリゴマー中のウレタン含量も低くなるた
め、得られる糊剤の接着性・集束性が低下してしまう。
配合量が35重量%を越える場合には、オリゴマー中のウ
レタン含量も高くなってしまうため、得られる糊剤の皮
膜の可撓性が低下して脆くなり却って製織効率を悪化さ
せてしまう。
【0034】本発明で用いられるジイソシアネート成分
(D)としては、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-ト
リレンジイソシアネート、2,4-及び2,6-トリレンジイソ
シアネートの混合物、m−フェニレンジイソシアネー
ト、p−フェニレンジイソシアネート、4,4′−ジフェ
ニルメタンジイソシアネート、キシレンジイソシアネー
ト、テトラメチレンキシリレンジイソシアネート、1,5-
ナフタレンジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシ
ルメタンジイソシアネート、3,3′−ジメチル−4,4′−
ビフェニレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソ
シアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホ
ロンジイソシアネート等のような芳香族、脂環族、脂肪
族のジイソシアネートが挙げられる。これらジイソシア
ネート成分については単独の使用や二者以上の併用であ
ってもさしつかえない。上記ジイソシアネートの中で
も、2,4-トリレンジイソシアネートと2,6-トリレンジイ
ソシアネートとの重量比80/20及び65/35の混
合物(ぞれぞれTDI-80及びTDI-65)、4,4′-ジフェニル
メタンジイソシアネート(MDI)、4,4′−ジシクロヘキ
シルジイソシアネート(H12MDI)、ヘキサメチレンジイ
ソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート
(IPDI)の使用がより好ましく、経済性を重視する場
合、TDI-80, TDI-65, MDIがより好ましい。オリゴマー
中に占めるジイソシアネート含量は25〜60重量%が好ま
しく、特に好ましくは30〜50重量%である。25重量%未
満では後に得られる糊剤の耐水性や集束性に悪影響を与
え、60重量%を越えると後に得られる皮膜の精練性が悪
化し、また反応の制御が困難となる場合がある。
【0035】またオリゴマーを生成するためには必要に
応じて溶媒を使用できる。使用できる溶媒としてはイソ
シアネートに対して不活性でかつ親水性であることが必
要で、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン類、テ
トラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、セロソ
ルブアセテート、酢酸エチル、プロピオン酸メチル等の
エステル類が例示されるが、ウレタン樹脂を親水化した
後減圧蒸留によって溶媒を回収できるように、水より低
沸点の溶剤の使用がより好ましい。
【0036】オリゴマーを生成するためには、高分子ジ
オール成分(A)、鎖延長剤としての低分子ジオール成分
(B)及び(C)、ジイソシアネート成分(D)を同時に混合さ
せて反応させる方法や、高分子ジオール成分(A)とジイ
ソシアネート成分(D)とを反応させオリゴマー作成後、
鎖延長剤成分(B)及び(C)を添加させる方法が例示され
る。オリゴマー化する反応温度は、約65〜130℃の範囲
内が好ましい。
【0037】反応の終点はNCO/OH 当量比が1.0以上の
場合、未反応イソシアネートの濃度によって判断し、オ
リゴマー中に好ましくは0.3〜2.5重量%、特に好ましく
は0.5〜2.0重量%の範囲内に収まるまで反応を進行させ
る。NCO/OH 当量比が1.0以下の場合、水酸基価(OH
value)が好ましくは 5〜40、特に好ましくは10
〜20の範囲内に収まるまで反応を進行させる。
【0038】ここで得られるウレタンオリゴマーの特徴
は、ウレタン結合部分をなす原子団NHCOOの含有量
が好ましくは20〜35重量%、特に好ましくは20〜30重量
%を含むことで、この点において従来の水溶性ウレタン
系糊剤に見られない組成を有している。オリゴマー中に
含まれるウレタン結合含量が20重量%未満の場合には後
に得られる皮膜の強度が低下し、集束性や耐水性が悪化
してしまう。ウレタン結合含量が35重量%を越える場合
には皮膜が可撓性を失って脆くなり却って製織性を低下
させてしまい、いずれの場合にも本発明の効果を得るこ
とができない。またここで得られるオリゴマーの平均分
子量は限定されないが、好ましくは3,000〜50,000、特
に好ましくは5,000〜20,000である。平均分子量が3,000
未満では後に得られる皮膜の集束性や耐水性が悪化する
ことがあり、平均分子量が50,000を越える場合には皮膜
の糊抜き精練性に悪影響を与えることがある。
【0039】かくして得られたオリゴマーのNCO/OH 当
量比が1.0以上の場合、安定した水溶液乃至は水系エマ
ルションを得るためには未反応イソシアネートを-NCOと
して2.5重量%以下となるまで反応させることが好まし
く、この未反応イソシアネートをすべてまたはその大部
分を封鎖剤によって処理することが好ましい。封鎖剤で
処理すべき未反応イソシアネートは-NCOとして0.3〜2.5
重量%で、特に好ましくは0.5〜2.0重量%である。0.3
重量%以下ではオリゴマーの分子量が大きくなり精練性
に悪影響を及ぼす。また2.5%以上では分子量が小さく
なり過ぎて、皮膜強度が低下し本発明で得られる抱合力
が期待できない。またフィラメントに処理後の乾燥工程
での皮膜作成時又は生機セット時に、処理した封鎖剤が
使用温度範囲内でイソシアネート基からの解離せず、活
性イソシアネート基が再生されないことが必要となる。
イソシアネート基が再生すれば架橋反応によって樹脂が
高分子化し、皮膜の耐水性は向上するものの精練性が著
しく悪化してしまうことがあるためである。このため乾
燥時または精練前の生機セット時にブロック剤のイソシ
アネート基からの解離を抑制することが必要となり、封
鎖剤の解離温度が使用温度よりも高いことが必要とな
る。封鎖剤としては使用するイソシアネートの種類にも
よるが、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコ
ール、またはラウリルアルコールなどC1〜18の脂肪族
アルコール系や、ジメチルアミン、ジエチルアミン、メ
チルエチルアミンなどモノアミン系、フェノール、クレ
ゾールなどフェノール系、ε−カプロラクタムなどラク
タム系など公知のブロック剤が挙げられる。メチルエチ
ルケトオキシムやシクロヘキサノンオキシムなどのオキ
シム系ブロック剤は比較的解離温度が低いため、本用途
での使用は好ましくない。また一分子中に一つのアミノ
基と一つのカルボキシル基またはスルホン基を持つ物
質、例えばグリシン、アラニンなどの脂肪族モノアミノ
モノカルボン酸、アミノシクロヘキサンカルボン酸など
の脂環族モノアミノモノカルボン酸、アミノエタンスル
ホン酸(タウリン)などの脂肪族モノアミノモノスルホン
酸なども末端イソシアネート基封鎖剤として使用でき
る。NCO/OH 当量比が1.0以下の場合にも若干未反応イ
ソシアネート基が残留する場合には、上記封鎖剤によっ
て処理するのが好ましい。
【0040】次に樹脂の乳化を行うため、ペンダントカ
ルボキシル基を中和し親水化する必要がある。中和する
塩基としては、アンモニアまたはトリメチルアミン、ト
リエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチル
アミン、トリエタノールアミン、メチルジエタノールア
ミン、ジメチルエタノールアミンなど有機アミンが挙げ
られる。最終的に得られる皮膜の耐水性を考慮すれば、
皮膜作成時に熱によって塩基が容易に揮発するものが好
ましく、アンモニアやトリメチルアミン、トリエチルア
ミンが好ましい。
【0041】以上で得られた水溶性ウレタンオリゴマー
を撹拌など機械的剪断力によって水中乳化する。その後
エバポレーター等を使用して、溶媒を減圧蒸留によって
回収することが好ましい。
【0042】かくして得られた水溶性ウレタンは樹脂成
分中の主体をなすものである。無論この水溶性ウレタン
樹脂を樹脂成分のすべてをなすこともできるし、従来よ
りのアクリル酸エステル−アクリル酸共重合体やPVA
を、本発明の効果を損なわない範囲内で部分的に配合す
ることもできる。また各種添加剤として、樹脂を水性化
した後溶媒を回収する際に発泡抑制剤(消泡剤)や、溶
媒回収後耐候剤や黄変防止剤(ヒンダードアミン系やヒ
ンダードフェノール系など)、防黴剤を配合することも
できる。
【0043】さらにこのような水溶性ウレタンを主体と
する樹脂成分に対して、一定量の平滑剤成分を添加して
もよい。平滑剤成分として主に天然ワックスを使用する
が、合成ワックスを併用する場合もある。天然ワックス
としては、植物系ワックスではキャンデリラワックス、
カルナウバワックス、ライスワックス、木ロウ等が、動
物系ワックスでは蜜ロウ、ラノリン(羊毛ろう)等が、
鉱物系ワックスではモンタンワックスが、石油系ワック
スではパラフィンワックスが挙げられる。合成ワックス
としては、ポリエチレンワックスや脂肪酸エステルが挙
げられる。脂肪酸エステルとしては、一価アルコール、
またはエチレングリコール、ブタンジオール、ヘキサン
ジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペン
タエスリット、ソルビタン等の多価アルコールと炭素数
12〜20の脂肪酸とのエステルが挙げられる。具体的に
は、メチルラウレート、メチルミリステート、メチルパ
ルミテート、メチルステアレート、メチルオレート、エ
チルラウレート、エチルミリステート、エチルパルミテ
ート、エチルステアレート、エチルオレート、グリセリ
ンモノラウレート、グリセリンモノステアレート、グリ
セリンモノオレート、ペンタエスリットモノステアレー
ト、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレ
ートなどが挙げられる。
【0044】実際に使用する場合にはこれらワックス類
を非イオン活性剤及び/またはアニオン活性剤で乳化し
て得られるエマルションを使用する。これらの中でも特
に植物系ワックスの使用が好ましく、植物系ワックスの
乳化体、または植物系ワックス/動物系ワックス/鉱物
系ワックスの混合ワックスの乳化体の使用が平滑性付与
の点でより好ましい。乳化剤では非イオン活性剤とし
て、ラウリルアルコール、セチルアルコール、オレイル
アルコール、ステアリルアルコールなどの高級アルコー
ルのエチレンオキサイド付加物や、オクチル基やノニル
基、ドデシル基などでアルキル化したフェノールのエチ
レンオキサイド付加物が挙げられる。アニオン活性剤で
はラウリルアルコールやセチルアルコール、ステアリル
アルコール、オレイルアルコールなど高級アルコ−ルの
エチレンオキサイド付加物をベースとした硫酸エステル
塩やリン酸エステル塩、さらにドデシル基でアルキル化
したベンゼンスルホン酸塩が挙げられる。
【0045】樹脂成分/平滑剤成分の固形分配合比は、
100/0 〜 60/40、好ましくは 98/ 2 〜 70/30 であ
る。樹脂成分の固形分配合率が60%未満では、フィラ
メント間の集束性が低下し製織時に毛羽立ちや糸切れが
生じることがある。
【0046】本発明によって得られる経糸用糊剤を処理
する合成繊維マルチフィラメントとしては限定されない
が、ポリエステルやナイロンの50デニール/24フィラメ
ント〜75デニール/96フィラメントのナマ糸が例示され
る。糸が交絡糸や加工糸、撚糸であっても構わない。
【0047】また本発明で得られる経糸用糊剤を合成繊
維マルチフィラメントに供給する方法としては、通常の
サイジング方法、すなわち粗巻ビーム状態で糊剤付着、
ロール絞液、ノンタッチ乾燥、ドラム乾燥という工程の
中で100〜150m/分の速度でサイジングを行う方法や、
ダイレクトワーパーを使用してクリルからビームに巻取
る工程の中で、ロールタッチによって糊剤付着を行い、
ノンタッチ乾燥機によって乾燥後、即ビームに巻取る
「簡易サイジング」法でも対応可能である(速度200〜400
m/分)。本発明における経糸用糊剤の合成繊維への付
着量は、ナマ糸の場合好ましくは 2.0〜10.0重量%であ
り、特に好ましくは4.0〜9.0重量%である。糸が交絡糸
や加工糸、撚糸の場合付着量は、好ましくは0.5〜5.0重
量%であり、特に好ましくは1.0〜3.0重量%である。付
着量が所定量未満ではフィラメント間の集束性が低下し
て、製織時に毛羽立ちが生じやすい。付着量が所定量を
越えると巻取った糸を解舒する際糸間で膠着が起こり糸
切れが生じたり、さらに製織時に糊落ちして織機汚染を
誘発することがある。
【0048】このようにして得られる水溶性ウレタンを
主体とする樹脂成分と平滑剤成分の配合物は、合成繊維
に対する集束性、接着性に優れ、十分な耐水性と精練性
を両立し、かつ良好な平滑性を示す。
【0049】以下に本発明の経糸用糊剤の評価方法を示
す。
【0050】<糊付け試験> (1) 実験室加工 実験室で糊付け加工を行い、糊付着量、抱合力試験、耐
水性試験、精練性試験、粘着性試験の5点を評価した。
【0051】 使用機器 カキノキ(株)製KHSユニバーサルサイザー 糊付け速度 250 m/分 (2) 実機加工 (2-1) 糊付け加工 使用機器 津田駒工業(株)製サイザーKS-200 乾燥条件 2-チャンバー,2-ドラム(チャンバー120〜1
30℃,ドラム100℃)、 速度 120m/分 (2-2) 製織 使用機器 津田駒工業(株)製ウォータージェットルー
ムZW-303 製織速度 750 (rpm) <糊付け糸評価方法> (1)糊付着量 糊付け糸及び糊付け糸を100倍量の精練浴(精練剤/ス
カム分散剤/水酸化ナトリウム=見かけ2.0(g/l)/0.5
(g/l)/0.5(g/l)の構成)中で90℃×10分を2回繰り返し
た後、湯洗、水洗、乾燥して、糸重量を測定し、糊付け
糸と糊抜き糸の重量差及び糊付け糸とブランク糸の重量
差によって付着量を求めた。
【0052】(2)抱合力試験 20℃、75%RHの雰囲気で、TM式抱合力試験器を用いて糊
付け糸1本当たり100gの荷重をかけた状態で摩擦
し、糸割れを起こすまでの回数をカウントした。
【0053】(3)耐水性試験 糊付け糸を100倍量の水道水(20℃)中で10分間撹拌し
た後、糊付け糸の重量から糊落ち量を測定し、(糊落ち
量/付着量)×100を水浴脱糊率として耐水性の指標とし
た。
【0054】(4)精練性試験 糊付け糸及びブランク糸を100倍量の精練浴[精練剤/
スカム分散剤/水酸化ナトリウム=見かけ2.0(g/l)/0.
5(g/l)/0.5(g/l)の構成]中で90℃×1分間撹拌した
後、糊付け糸の重量から糊落ち量を測定し、糊付け糸と
ブランク糸の重量差も考慮して、(糊落ち量/付着量)×
100を精練浴脱糊率として精練性の指標とした。(5)粘着
性 糊付け糸を糸速50m/分、走行張力30(g)でボビンに巻
取り、25℃×75RHの条件下で24時間放置後、糸−糸間の
粘着性を、ボビンより糸を解く際の手の感触及び肉眼観
察により判定した。これにより、◎:粘着性がない、
○:粘着性がほとんどない、△:粘着性が少しある、
×:粘着性が多い、の4段階に判別した。
【0055】(6)糊落ち性 ウォータージェットルームでポリエステル・タフタを速
度750rpmで10000m走行させて製織したときの糊落ちの
程度を触感、及び肉眼観察により判定した。これによ
り、◎:糊落ちがない、○:糊落ちがほとんどない、
△:糊落ちが少しある、×:糊落ちが多い、の4段階に
判別した。
【0056】(7)A反率 ウォータージェットルームでポリエステル・タフタを速
度750rpmで10000m走行させて製織したときの織布中の
A反の割合を%表示した。
【0057】(8)稼働率 ウォータージェットルームで製織にかかった全時間か
ら、製織中にトラブルなどで織機が停滞した時間を差し
引いた、実働製織時間の割合を%表示した。
【0058】
【実施例】次に実施例により本発明を具体的に説明する
が、本発明はもとより下記実施例によって制限を受ける
ものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当
に変更して実施することも可能であり、それらはいずれ
も本発明の技術的範囲に含まれる。なお実施例中の部は
重量部を示す。
【0059】<実施例1> (水系ポリウレタン樹脂の製造)温度計、窒素ガス導入
管、撹拌機及び還流冷却機を備えた4つ口反応器中で、
窒素ガスを導入しながら、ポリテトラメチレングリコー
ル(数平均分子量1,000、三菱化学工業(株)製PTMG
−1000)100部、1,4-シクロヘキサンジメタノー
ル(1,4-CHDM)14部、トリレンジイソシアネート(TD
I-80)57部、メチルエチルケトン113部を仕込み、
75℃45分間反応させた後、ジメチロールプロピオン
酸(DMPA)13部を添加して約1時間反応させ未反応イ
ソシアネートを約1重量%含むウレタンオリゴマーを合
成後(オリゴマー中のウレタン結合含量、即ち、ウレタ
ン結合部分をなす原子団NHCOOの含有量が21%)、
50℃まで冷却してブタノールを3.1部添加し、さらにト
リエチルアミン(TEA)を9.8部添加した。さらに水を42
0部添加し混合乳化した後、50℃下でエバポレーターで
脱溶媒し、固形分30%に調整して乳白色の水溶性ウレタ
ン樹脂Aを得た。
【0060】(ワックスエマルションの調製)カルナウ
バワックス25部、蜜ロウ25部、モンタンワックス20部、
ソルビタンモノオレート5部からなるワックスを溶融し
て、乳化剤としてオレイルアルコールのエチレンオキサ
イド付加物(ポリオキシエチレンオレイルエーテル)の
非イオン活性剤を15部、ジノニルフェノールエチレンオ
キサイド付加物のリン酸エステルを5部使用し、温水を
添加し乳化温度80℃を保持して固形分濃度20%に希釈し
てワックスエマルションE1を得た。同様にして表6に
示した原料からワックスエマルションE2を得た。
【0061】(製織及び評価)ポリエステルマルチフィ
ラメント糸(50d/24fil.; 無撚糸)に対して水溶性ウ
レタン樹脂Aを固形分として8.5%、ワックスエマルシ
ョンE1を固形分として1.5%配合した純分10.0%の糊
剤を、KHSユニバーサルサイザ−を用いてポリエステル
糸に糊付け加工した。まずこの糊付け糸の性質(付着量
測定、抱合力、耐水性、精練性、粘着性)を評価した。
その結果、この糊付け糸は良好な耐水性と精練性を併有
し、十分な抱合力をも有する(表1)。次に同じくこの純
分10.0%の配合糊剤をKHSユニバーサルサイザーを使用
してポリエステルマルチフィラメント(50d/24fil.; 無
撚糸)に糊付け加工した。この糊付け糸を経糸として、
緯糸にはポリエステルマルチフィラメント(50d/24fi
l.; 無撚糸)を使用して、ウォータージェットルーム
(津田駒工業(株)製ZW-303,経糸7,200本,織り幅173c
m)でポリエステル・タフタを速度750rpmで50mを1疋と
して200疋製織した。製織中の糊落ちもなく、また毛羽
立ちもなくA反率は99%を示した。織機稼働率は99%で
あった(表1)。
【0062】
【表1】 <比較例1>市販のウォータージェットルーム用アクリ
ル系糊剤イを希釈して固形分10.0%の水溶液とし、実施
例1と同様の条件でまずKHSユニバーサルサイザーで糊
付けし、その糊付け糸の性質を評価した。
【0063】その後この希釈した糊剤イ(10.0%溶液)を
サイザーKS-200を使用して糸に糊付け加工した。この糊
付け糸を経糸として、緯糸にはポリエステルマルチフィ
ラメント(50d/24fil.; 無撚糸)を使用して、ウォー
タージェットルーム(津田駒工業(株)製ZW-303,経糸7,
200本,織り幅173cm)でポリエステル・タフタを速度75
0rpmで50mを1疋として200疋製織した。その結果筬や綜
絖に若干の糊落ちが認められ、A反率は94%、織機稼働
率も94%であった(表1)。
【0064】<実施例2〜40>実施例1と同様にして
表2〜5に示した原料から成る水溶性ウレタン樹脂B〜
Z及びa〜dを得た。表2〜5に示すように、ポリアル
キレングリコールとして、PTMG -500,-1000,-2500(三
菱化学工業(株)製ポリテトラメチレングリコール、数
平均分子量がそれぞれ約500、1000及び2500)のいずれ
か、PPG -500,-1000,-2500(第一工業製薬(株)製ポリ
プロピレングリコール、数平均分子量がそれぞれ約50
0、1000及び2500)のいずれか、又はPTMG-1000とPPG-10
00との混合物を各種混合比率で用いた。又、カルボン酸
を有しない鎖延長剤としては、1,4-シクロヘキサンジメ
タノール(1,4-CHDM)、1,4−ブタンジオール(1,4-B
D)、3-メチル-1,5-ペンタジオール(MPD)、トリメ
チロールプロパン(TMP)から選択して用いた。
【0065】ポリエステルマルチフィラメント(50d/2
4fil.; 無撚糸)に対して水溶性ウレタン樹脂B〜d、
及びワックスエマルションE1〜2を下記表4に示した
配合の糊剤をそれぞれ10.0%溶液としてKHSユニバーサ
ルサイザ−を用いて糊付け加工した。ここで、ワックス
エマルションE2は、実施例1におけるE1と同様にし
て表6に示した原料から調製した。この糊付け糸の性質
(付着量測定、抱合力、耐水性、精練性、粘着性、吸湿
性)を評価した。その結果を表7〜10に示す。
【0066】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】 <比較例2〜14>表11に示した糊剤組成について実
施例2〜40と同様の試験を行った。その結果を表12
に示す。
【0067】
【表11】
【表12】 <実施例41>ポリエステルマルチフィラメント糸(75
d/96fil.; ウーリー糸)に対して、水溶性ウレタン樹
脂Fを固形分として8.5%、ワックスエマルションE2
を固形分として1.5%配合した、実施例6に用いた糊剤
(固形分10.0%溶液)をワーピングサイザーKS-200を使用
して糊付け加工した。この糊付け糸を経糸として、緯糸
にはポリエステルマルチフィラメント(75d/96fil.;
ウーリー糸)を使用して、ウォータージェットルーム
(津田駒工業(株)製 ZW-303,経糸6,690本,織り幅17
3cm)でポリエステル・タフタを速度750rpmで50mを1疋
として200疋製織した。製織中の落ち糊もなく、また毛
羽立ちもなくA反率は99%を示した。織機稼働率は99%
であった(表13)。
【0068】
【表13】 <比較例15>市販のウォータージェットルーム用アク
リル系糊剤イ(固形分10.0%溶液)を、ポリエステルマル
チフィラメント糸(75d/96fil.; ウーリー糸)に糊付け
加工した。この糊付け糸を経糸として、緯糸にはポリエ
ステルマルチフィラメント(75d/96fil.; ウーリー
糸)を使用して、ウォータージェットルーム(津田駒工
業(株)製 ZW-303,経糸6,690本,織り幅173cm)でポ
リエステル・タフタを速度750rpmで50mを1疋として200
疋製織した。その結果筬や綜絖に落ち糊が認められ、A
反率は94%、織機稼働率も95%であった(表13)。
【0069】表13から、実施例41のウレタン系糊剤
(実施例6に用いた糊剤)が、アクリル系糊剤の約半分
の付着量でも同等以上の製織性を示していることがわか
る。
【0070】<実施例42>ナイロンマルチフィラメン
ト糸(70d/24fil.; 無撚糸)に対して水溶性ウレタン
樹脂Dを固形分として8.5%、ワックスエマルションE
2を固形分として1.5%配合した、実施例4に用いた糊
剤(固形分10.0%溶液)をサイジングマシンKS-500を使用
して、糊付け速度300m/分、チャンバー温度120℃の乾
燥条件で乾燥後ビームに巻取り、クリル・トゥ・ビームの
簡易サイジングの形式で糊付け加工した。この糊付け糸
を経糸として、緯糸にはナイロンマルチフィラメント
(70d/24fil.; タスラン糸)を使用して、ウォーター
ジェットルーム(江機鉄工(有)製 KIC966,経糸6,690
本,織り幅173cm)で速度750rpmで50mを1疋として200疋
製織した。製織中の落ち糊もなく、また毛羽立ちもなく
A反率は98%を示した。織機稼働率は98%であった(表
14)。
【0071】
【表14】 <比較例16>市販のウォータージェットルーム用アク
リル系糊剤イ(固形分10.0%溶液)を、ナイロンマルチフ
ィラメント糸(70d/24fil.; 無撚糸)に上と同様に簡易
サイジングによる糊付け加工を行った。この糊付け糸は
やや乾燥性不足であった。この糊付け糸を経糸として、
緯糸にはナイロンマルチフィラメント(70d/24fil.;タ
スラン糸)を使用して、ウォータージェットルーム(江
機鉄工(有)製 KIC966,経糸6,690本,織り幅173cm)
でポリエステル・タフタを速度750rpmで50mを1疋として
200疋製織した。その結果筬や綜絖に落ち糊が認めら
れ、A反率は92%、織機稼働率も93%であった(表1
4)。
【0072】表14から、実施例42のウレタン系糊剤
(実施例5に用いた糊剤)が、アクリル系糊剤の約半分
の付着量でも同等以上の製織性を示していることがわか
る。
【0073】
【発明の効果】ポリエーテルジオールを主鎖とするウレ
タンにおいて、低分子量ポリオールを鎖延長剤として使
用してウレタン結合含有量を増加させることにより合成
繊維に対する接着性及び耐水性向上が可能となりポリエ
ステル系ウレタンとほぼ同等の皮膜物性が得られた。ポ
リエーテルジオールが主鎖であるため、合成繊維に対す
る接着性が過度に強力ではなく、精練前のセットなど高
温処理(180℃×1〜2分)が行われると、エーテル
結合が酸化分解され精練性がポリエステル系ウレタンに
比較して大きく向上する。またポリエステルポリオール
成分を使用していないため、経時的に加水分解し物性低
下する恐れもない。
【0074】冷水不溶であって熱アルカリ可溶を示すた
め耐水性に優れることから、製織時の織機汚染を減少さ
せると同時に、製織した生布の精練性を向上させること
が可能となる。また製織した生布を精練前にセットして
も、アクリル系糊剤と同等の精練性が得られる。
【0075】またこの糊剤によって処理された製織用経
糸は優れた集束性、平滑性、耐擦過性、耐膠着性を示す
ため、製織時の機械的摩擦による毛羽立ちや糸切れを防
止し、例えば、750rpm以上の高速WJLによる製
織にも十分に対応できる。さらに、低付着量でも充分な
集束性を示すため、経糸として細番手糸を多用した高密
度織物を高速で製織することも可能となる。さらに上記
ウレタン樹脂とともに、前記のワックスエマルションを
特定の割合で配合することにより、一層優れた集束性、
平滑性、耐擦過性、耐膠着性の向上が図られる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平8−246355(JP,A) 特開 平8−311774(JP,A) 特開 昭62−133188(JP,A) 特開 平4−142385(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D06M 15/568

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】下記構造単位(A)〜(D)よりなり、か
    つ(イ)〜(ハ)の特徴を備える水系ウレタン樹脂を主
    成分として含む合成繊維経糸用糊剤。 (A)分子量500〜2500のポリアルキレングリコ
    ールに由来する構造単位20〜60重量%、 (B)ペンダント状のカルボキシル基を少なくとも1個
    有する、低分子量ジオールに由来する構造単位3〜15
    重量%、 (C)前記(B)成分以外の、低分子量のジオール又は
    トリオールに由来する構造単位を、前記(B)成分との
    合計で10〜35重量%、及び (D)ジイソシアネート化合物由来の構造単位25〜6
    0重量%。 (イ)ウレタン結合部分をなす原子団NHCOOの含有
    量が20〜35重量%であって、 (ロ)オリゴマーの分子末端の未反応イソシアネート基
    が封鎖剤によって実質的に封鎖されているか又は水酸基
    を形成しており、 (ハ)前記ペンダント状のカルボキシル基が中和されて
    親水基を形成している。
  2. 【請求項2】請求項1に記載の合成繊維経糸用糊剤にお
    いて、ワックスと、非イオン系及び/又はアニオン系界
    面活性剤とからなるワックスエマルションを含み、前記
    水系ウレタン樹脂とワックスエマルションの合計重量に
    対するワックスエマルションの重量%が40重量%以下
    であることを特徴とする合成繊維経糸用糊剤。
  3. 【請求項3】下記の構造(A)〜(E)を有する合成繊
    維経糸用糊剤の製造方法であって、下記(ニ)〜(ホ)
    の工程を備えることを特徴とする合成繊維経糸用糊剤の
    製造方法。 (A)分子量500〜2500のポリアルキレングリコ
    ールに由来する構造単位20〜60重量%、 (B)ペンダント状のカルボキシル基を有する低分子量
    ジオールに由来する構造単位3〜15重量%、 (C)前記(B)成分以外の、低分子量のジオール又は
    トリオールに由来する構造単位を、前記(B)成分との
    合計で15〜35重量%、及び (D)ジイソシアネート化合物由来の構造単位25〜6
    0重量%、かつ、 (E)ウレタン結合部分をなす原子団NHCOOの含有
    量20〜35重量%。 (ニ)イソシアネート基/水酸基の当量比が1.0以上
    の場合は未反応イソシアネート基が0.3〜2.5重量
    %残存するように配合して反応させた後この未反応イソ
    シアネート基を封鎖剤によって実質的に封鎖し、イソシ
    アネート基/水酸基の当量比が1.0未満の場合は水酸
    基価が5〜40になるよう配合して反応させ、 (ホ)前記オリゴマー中の(B)成分に由来するペンダ
    ント状カルボキシル基が親水性塩をなすように中和す
    る。
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