JP2851814B2 - 簡易サイジング用合成繊維経糸用糊剤およびその製法 - Google Patents

簡易サイジング用合成繊維経糸用糊剤およびその製法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ウォータージェットル
ームにおいて、ポリエステルやポリアミド等を製織する
際に使用する合成繊維マルチフィラメント経糸用糊剤で
あって、特に、ポリエステルやポリアミドのマルチフィ
ラメントの簡易サイジング用経糸用糊剤(サイジング
剤)およびその製法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、繊維業界においては、無杼織機の
開発が進められ、合成繊維マルチフィラメント糸の製織
には、噴射した水で緯糸を送入するウォータージェット
ルーム(以下「WJL」と称す)が汎用されている。こ
のWJLの導入に伴い、従来の杼による製織に比較して
大幅に製織速度が上がり、生産性が大きく向上した。
【0003】上記WJLでの製織の準備段階では、通
常、粗巻ビーム状態で、糊液浸漬、ロール絞液、ノンタ
ッチ乾燥、ドラム乾燥という経糸サイジング工程が行わ
れる。上記糊液に用いる糊剤としては、アクリル酸エス
テルのアンモニウム塩系樹脂を主体に少量のポリビニル
アルコール(PVA)等の他の樹脂を5〜12重量%程
度併用し、さらに油脂等乳化物を油剤として0.3〜
0.5重量%配合したものが使用されている。しかし、
上記経糸サイジング工程の前工程である粗巻ビーミング
工程は、通常、20〜500m/分の糸速で処理が行わ
れているのに対して、経糸サイジング工程は、糸速12
0〜180m/分で処理が行われているため、この経糸
サイジング工程が、製織準備工程の高速化に対する阻害
要因となっている。
【0004】このような問題を解決すべく、最近では、
サイジング工程とワーピング工程を同一工程で行う「簡
易サイジング」が提唱されている。この簡易サイジング
の特徴として、合成繊維マルチフィラメント糸をダイ
レクト・ワーパーに送り出し、表面に糊剤が付着したロ
ールの表面接触(ロールタッチ)で糊剤を糸に付着さ
せ、この糊付糸を乾燥しながら粗巻ビームに巻き取る、
加工速度が200m/分以上であること、糊剤の付
着量が1〜3重量%であること、マルチフィラメント
糸として、インターレース糸(交絡糸)、撚糸、加工糸
のいずれかを使用し、糊剤が低付着量であっても高速製
織に適用可能なように糸自体の物性を強化していること
の4点があげられる。この簡易サイジングは、糊付けが
上記のロール・タッチで行われるうえに、加工速度が
高速であるため、糊剤の付着量が従来のサイジング工程
に比較して低量であるが、乾燥が不足しやすいという欠
点を有している。
【0005】このように上記簡易サイジングでは、糊剤
の乾燥が不足しやすいという問題から、例えば、従来の
糊剤を使用せず、多価アルコールのエチレンオキサイド
やプロピレンオキサイドの付加重合物に脂肪酸エステル
等を添加した油剤を経糸に付着させることにより、製織
時の平滑性を向上させた、いわゆるサイジングレスオイ
ルを用いた方法が提案されている(特開昭60−151
336号公報、特開昭60−252748号公報)。し
かし、最近では、製織速度の高速化(700rpm以
上)も進められ、製織時に経糸と筬および綜絖との擦
過、または綜絖の上下運動に伴う経糸同士の擦過の程度
が従来以上となるため、経糸の受ける損傷がより大きく
なっており、上記油剤類の使用のみでは高速製織に対応
が困難になっている。
【0006】このように、サイジング(糊付け)工程や
製織工程の合理化、高速化に伴い、より少ない付着量
で、より速い製織に適用できるという過酷な条件下での
使用可能な経糸用糊剤が要求されている。
【0007】このような要求に応えるべく糊剤として、
アクリル系樹脂に油剤およびワックスエマルジョンを配
合したもの(特公平5−36535号公報)や、アクリ
ルエステル系樹脂にワックスエマルジョンを配合したも
の(特開平4−163336号公報)、水溶性ポリエス
テルにワックスエマルジョンを配合したもの(特開昭6
1−75878号公報)等が提案されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記アクリル
系樹脂を使用した糊剤は、乾燥性不足時の粘着性物質の
発生や製織時の落ち糊によって筬や綜絖部に糊が蓄積し
て経糸を損傷するため、織物の商品価値を低下させると
いう欠点を有している。一方、水溶性ポリエステルを使
用した糊剤は、製織後の精練工程における脱糊性の悪さ
が指摘されており、いずれにせよ満足のいく糊剤が開発
されていないのが現状である。
【0009】このように、WJLでの合成繊維マルチフ
ィラメント糸の高速製織に供給する経糸の糊付け工程を
簡易サイジング法で進めるに際して、サイジングレスオ
イルでの集束性不足、アクリル系糊剤での粘着性物質や
落ち糊の発生、水溶性ポリエステル糊剤での精練性不足
等の問題があり、これら問題が解決された簡易サイジン
グ用糊剤が要求されている。
【0010】本発明は、このような事情に鑑みなされた
もので、簡易サイジング工程に適応可能なよう低付着量
でも充分な抱合力を示し、WJLでの高速製織時の集束
性および耐水性に優れ、落ち糊も少なく、かつ精練性に
も優れた簡易サイジング用合成繊維経糸用糊剤およびそ
の製法の提供をその目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
め、本発明は、下記のウレタンプレポリマー(X)の
(B)成分に由来するペンダント状カルボキシル基が中
和・親水化され、さらに未反応イソシアネート基が封鎖
剤によって処理された水溶性ウレタン樹脂を主成分とす
る樹脂成分と、下記の(Y)成分を含有する簡易サイジ
ング用合成繊維経糸用糊剤であって、上記樹脂成分
(α)と(Y)成分(β)との配合割合が、固形分重量
比で、α/β=9/1〜3/7に設定されている簡易サ
イジング用合成繊維経糸用糊剤を第1の要旨とする。 (X)下記の(イ)および(ロ)を備えたウレタンプレ
ポリマー。 (イ)下記の(A)成分から誘導される構造単位がウレ
タンプレポリマーの20〜60重量%、下記の(B)成
分および(C)成分から誘導される構造単位がウレタン
プレポリマーの15〜35重量%、下記の(D)成分か
ら誘導される構造単位がウレタンプレポリマーの25〜
60重量%を占めるように設定されている。 (A)分子量500〜2500の高分子ジオール。 (B)ペンダント状カルボキシル基を有するジオール。 (C)上記(B)成分以外の低分子量ポリオール。 (D)ジイソシアネート。 (ロ)ウレタン結合(−NHCOO−)含量が20〜3
5重量%に設定されている。 (Y)下記の(a)成分を、下記の(b)成分により乳
化して得られるワックスエマルジョン。 (a)天然ワックスおよび合成ワックスの少なくとも一
方。 (b)非イオン活性剤およびアニオン活性剤の少なくと
も一方。
【0012】また、下記の(A)成分をウレタンプレポ
リマー全体の20〜60重量%、下記の(B)成分およ
び(C)成分をウレタンプレポリマー全体の15〜35
重量%、下記の(D)成分をウレタンプレポリマー全体
の25〜60重量%となるよう配合し反応させ、ウレタ
ン結合(−NHCOO−)を20〜35重量%含有する
ウレタンプレポリマーを作製する工程と、上記ウレタン
プレポリマー中の(B)成分に由来するペンダント状カ
ルボキシル基を中和・親水化するとともに、上記ウレタ
ンプレポリマー中の未反応イソシアネート基を封鎖剤を
用いて処理することにより水溶性ウレタン樹脂を作製す
る工程と、下記の(a)成分に対して下記の(b)成分
を用いて乳化することによりワックスエマルジョンを作
製する工程と、上記水溶性ウレタン樹脂を主成分とする
樹脂成分(α)と上記ワックスエマルジョン(β)の配
合割合が、固形分重量比で、α/β=9/1〜3/7と
なるよう上記水溶性ウレタン樹脂とワックスエマルジョ
ンを配合する工程とを備えた簡易サイジング用合成繊維
経糸用糊剤の製法を第2の要旨とする。 (A)分子量500〜2500の高分子ジオール。 (B)ペンダント状カルボキシル基を有するジオール。 (C)上記(B)成分以外の低分子量ポリオール。 (D)ジイソシアネート。 (a)天然ワックスおよび合成ワックスの少なくとも一
方。 (b)非イオン活性剤およびアニオン活性剤の少なくと
も一方。
【0013】
【作用】すなわち、本発明の簡易サイジング用合成繊維
経糸用糊剤は、前記特定の各(A)〜(D)成分から構
成されたウレタンプレポリマーからなり、これを所定の
処理を行うことにより得られる特殊な水溶性ウレタン樹
脂を主成分とする樹脂成分と、前記(Y)成分を特定の
割合で配合して構成されるものである。このため、この
糊剤を用いて簡易サイジング処理した製織用経糸は、糊
剤の付着量が少量であっても優れた集束性、平滑性、耐
擦過性、耐膠着性を示す。このことから、製織時の機械
的摩擦による毛羽立ちや糸切れが減少し、例えば、70
0rpm以上の高速WJLでも効率良く製織することが
可能となる。さらに、上記特殊な水溶性ウレタン樹脂が
冷水不溶で、熱アルカリ可溶を示すため、これを主成分
とする樹脂成分を構成上の必須成分とする糊剤は、耐水
性に優れることから、製織時の織機汚染を減少させると
同時に、製織した生地の精練性を向上させることが可能
となる。
【0014】つぎに、本発明を詳しく説明する。
【0015】本発明の簡易サイジング用合成繊維経糸用
糊剤は、特殊な水溶性ウレタン樹脂を主成分とする樹脂
成分と、特定のワックスエマルジョンとを用いて得られ
るものである。なお、本発明において、「主成分とす
る」とは主成分のみからなる場合も含める趣旨である。
【0016】上記特殊な水溶性ウレタン樹脂は、特定の
成分を用いて得られるウレタンプレポリマーのウレタン
結合(−NHCOO−)含量が特定範囲に設定されたウ
レタンプレポリマーを用い、このウレタンプレポリマー
を特定の方法で処理することにより得られるものであ
る。
【0017】上記ウレタンプレポリマーは、分子量50
0〜2500の高分子ジオール(A成分)と、ペンダン
ト状カルボキシル基を有するジオール(B成分)と、上
記B成分以外の低分子量ポリオール(C成分)と、ジイ
ソシアネート(D成分)を用いて得られるウレタンプレ
ポリマーの上記B成分に由来するペンダント状カルボキ
シル基を中和・親水化し、さらに未反応イソシアネート
基を封鎖剤によって処理することにより得られる。
【0018】上記分子量500〜2500の高分子ジオ
ール(A成分)には、ポリエステルジオール、ポリエー
テルジオール、ポリエーテルエステルジオール、ポリカ
ーボネイト等があげられる。
【0019】上記ポリエステルジオールを構成する二塩
基酸成分としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グ
ルタール酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セ
バチン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタ
ル酸、テレフタル酸等のような飽和または不飽和の脂肪
族二塩基酸および芳香族二塩基酸があげられる。そし
て、ポリエステルジオールを構成する二価アルコール成
分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコー
ル、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、
ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、
1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペン
タジオール、1,6−ヘキサンジオール等のような脂肪
族グリコールおよびシクロヘキサンジオール等のような
脂環式グリコール等があげられる。
【0020】上記ポリエーテルジオールとしては、ポリ
エチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ
エチレン/ポリプロピレンのコポリマーグリコール、テ
トラメチレングリコール等のポリアルキレングリコール
等があげられる。
【0021】上記ポリエーテルエステルジオールとして
は、ポリエチレングリコールやテトラメチレングリコー
ルと、二塩基酸とのエステル化物があげられる。上記二
塩基酸成分としては、上記ポリエステルジオールを構成
する二塩基酸成分と同様のものがあげられる。
【0022】上記ポリカーボネイトとしては、トリメチ
レングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメ
チレングリコール、ヘキサメチレングリコール等の脂肪
族グリコールと炭酸とのポリエステル、4,4′−ジオ
キシフェニルメタン、4,4′−ジオキシジフェニル−
1,1−エタン、4,4′−ジオキシジフェニル−1,
1−ブタン、4,4′−ジオキシジフェニル−2,2−
プロパン、4,4′−ジオキシジフェニル−2,2−ブ
タンと炭酸とのポリエステル等があげられる。
【0023】これら高分子ジオールは、単独でもしくは
2種以上併せて用いてもよい。そして、これらから得ら
れる高分子ジオールのなかでも、皮膜の耐水性を特に重
視する場合には、テレフタル酸を使用したポリエステル
を用いることが好ましい。また、経済性を重視する場合
には、アジピン酸を使用したポリエステルを用いること
が好ましい。
【0024】そして、この高分子ジオール(A成分)の
平均分子量は、前述のように、500〜2500の範囲
に設定することが好ましく、特に好ましくは平均分子量
が700〜1600である。すなわち、平均分子量が5
00未満では、ウレタンプレポリマー中に占めるイソシ
アネートの含有量が多くなりすぎ、形成される皮膜が脆
くなり製織効率が低下する。また、平均分子量が250
0を超えると、ウレタンプレポリマー中に占めるウレタ
ン結合(−NHCOO−)含有量が所定の範囲を下回る
ため、本発明の糊剤を用いることにより得られる効果を
望めなくなるからである。
【0025】また、高分子ジオール(A成分)の配合量
は、ウレタンプレポリマー中20〜60重量%(以下
「%」と略す)の範囲に設定する必要があり、特に好ま
しくは25〜55%である。すなわち、A成分の配合量
が20%未満では、相対的にウレタン結合含有量が過剰
となり、皮膜が可撓性を失い、合成繊維に対する接着性
および集束性を低下させてしまう。逆に60%を超える
と、相対的なウレタン結合含有量が過少となり、耐水性
および粘着性に悪影響を及ぼすからである。
【0026】本発明でA成分とともに用いられるペンダ
ント状カルボキシル基を有するジオール(B成分)は、
上記C成分とともに鎖延長剤としての作用を有するもの
である。
【0027】上記B成分としては、ジメチロール酢酸、
ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール吉草酸等があ
げられる。このB成分を用いることにより、ウレタン樹
脂に親水性を付与し自己乳化性を持たせると同時に、皮
膜の耐水性と精練性をコントロールすることが可能とな
る。上記B成分の配合量は、ウレタンプレポリマー中で
3〜15%に設定することが好ましく、特に好ましくは
5〜10%である。すなわち、3%未満では、皮膜の耐
水性が悪化し、逆に15%を超えると乳化安定性および
皮膜の精練性が悪化する傾向がみられるからである。
【0028】上記B成分とともに鎖延長剤として用いら
れるC成分は、上記B成分以外のジオールであって、一
分子中に二個以上の水酸基を有する低分子量ポリオール
である。例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレン
グリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタ
ンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキ
サンジオール等の脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキ
サンジメタノール等の脂環族ジオール、ビスフェノール
Aのエチレンオキサイド(EO)付加物またはプロピレ
ンオキサイド(PO)付加物等の芳香族系ジオール、ト
リメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ヘキサ
ントリオール、グリセリン等の脂肪族トリオールがあげ
られる。これらC成分は、単独でもしくは2種以上併せ
て用いられる。なかでも、1,4−ブタンジオール、
1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノール
Aのエチレンオキサイド(EO)付加物、ビスフェノー
ルAのプロピレンオキサイド(PO)付加物を単独でも
しくは2種以上併せて用いる、さらにこれらとトリメチ
ロールプロパンを併用することが、得られる皮膜の耐水
性や耐擦過性、および乳化安定性という点から好まし
い。
【0029】そして、鎖延長剤成分であるB成分とC成
分の合計配合量は、ウレタンプレポリマー中15〜35
%に設定する必要があり、特に好ましくは15〜30%
である。すなわち、B成分とC成分の合計配合量が15
%未満では、得られるプレポリマー中のウレタン含有量
が少なくなるため、得られる糊剤の接着性および集束性
が低下する。また、合計配合量が35%を超えると、ウ
レタンプレポリマー中のウレタン含有量が高くなるた
め、得られる糊剤により形成される皮膜の可撓性が低下
して脆くなり却って製織効率が悪化してしまう。また、
相対的に高分子ジオール(A成分)の配合量が低下する
ため、合成繊維に対する親和性および接着性が低下する
からである。このことから、上記C成分の配合量は、ウ
レタンプレポリマー中で7〜20%に設定することが好
ましい。
【0030】上記A〜C成分とともに用いられるジイソ
シアネート(D成分)としては、2,4−トリレンジイ
ソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、
2,4−トリレンジイソシアネートと2,6−トリレン
ジイソシアネートの混合物、m−フェニレンジイソシア
ネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4′−
ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレンジイソシ
アネート、テトラメチレンキシリレンジイソシアネー
ト、1,5−ナフタレンジイソシアネート、4,4′−
ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3′−
ジメチル−4,4′−ビフェニレンジイソシアネート、
テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイ
ソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のような
芳香族系、脂環族系、脂肪族系のジイソシアネート等が
あげられる。これらD成分は単独でもしくは2種以上併
せて用いられる。上記ジイソシアネートのなかでも、
2,4−トリレンジイソシアネートと2,6−トリレン
ジイソシアネートの混合物(TDI−80やTDI−6
5)、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(M
DI)、4,4′−ジシクロヘキシルジイソシアネート
(H12MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(H
MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)を
用いることが好ましい。そして、経済性を重視する場合
は、2,4−トリレンジイソシアネートと2,6−トリ
レンジイソシアネートの混合物(TDI−80やTDI
−65)、MDIを用いることがより好ましい。
【0031】そして、上記ジイソシアネート(D成分)
の配合量は、ウレタンプレポリマー中25〜60%に設
定する必要があり、特に好ましくは30〜50%であ
る。すなわち、D成分の配合量が25%未満では、得ら
れる糊剤の耐水性や集束性に悪影響を与え、60%を超
えると形成される皮膜の精練性が悪化し、また反応の制
御が困難となるからである。
【0032】これらA〜D成分を用いてウレタンプレポ
リマーを作製する方法としては、例えば、A成分、鎖延
長剤としてのB成分およびC成分、D成分を同時に混合
させ反応させることにより作製する方法があげれらる。
また、A成分とD成分とを反応させイソシアネート末端
プレポリマーを作製した後、鎖延長剤としてのB成分お
よびC成分を添加することにより作製する方法があげら
れる。このようなプレポリマー化する反応温度は、65
〜130℃の範囲が好ましい。
【0033】上記ウレタンプレポリマーの作製時には、
必要に応じて溶媒を使用することができる。上記溶媒と
しては、ジイソシアネート(D成分)に対して不活性で
かつ親水性であることが必要である。例えば、メチルエ
チルケトン、アセトン等のケトン類、テトラヒドロフラ
ン、ジオキサン等のエーテル類、セロソルブアセテー
ト、酢酸エチル、プロピオン酸メチル等のエステル類が
あげられる。なかでも、ウレタン樹脂を親水化した後、
減圧蒸留によって溶媒を回収できるように、水より低沸
点の溶媒を用いることが好ましく、このような点から、
メチルエチルケトンを用いることが特に好ましい。
【0034】上記ウレタンプレポリマーの反応の終点
は、NCO/OH当量比が1.0以上の場合、未反応ジ
イソシアネートの濃度によって判断し、未反応ジイソシ
アネートがウレタンプレポリマー中に、好ましくは0.
2〜3.0%の範囲、特に好ましくは0.5〜2.0%
の範囲の濃度となるまで反応を進行させる。また、NC
O/OH当量比が1.0未満の場合は、OH値が好まし
くは5〜40の範囲内、特に好ましくは10〜20の範
囲内に収まるまで反応を進行させる。
【0035】このようにして得られるウレタンプレポリ
マーは、プレポリマー中のウレタン結合の含有量(−N
HCOO−換算)が20〜35%に設定される。特に好
ましくは25〜30%である。このウレタン結合の含有
量の割合が従来の水溶性ウレタン系糊剤とは異なる点で
ある。すなわち、プレポリマー中に含まれるウレタン結
合含有量が20%未満では、形成される皮膜の強度が低
下し、集束性や耐水性が悪化してしまう。また、ウレタ
ン結合含有量が35%を超えると、形成される皮膜が可
撓性を失い脆くなり却って製織性を低下させてしまうか
らであり、上記範囲内に設定しなければ本発明の糊剤と
しての効果を得ることができない。また、ここで得られ
るウレタンプレポリマーの平均分子量は、特に限定する
ものではないが、好ましくは3000〜50000、特
に好ましくは5000〜20000である。すなわち、
ウレタンプレポリマーの平均分子量が3000未満では
形成される皮膜の集束性や耐水性が悪化することがあ
り、平均分子量が50000を超えると皮膜の糊抜き精
練性に悪影響を与える傾向がみられるからである。
【0036】ついで、上記のようにして得られたウレタ
ンプレポリマーを、NCO/OH当量比が1.0以上の
場合、安定した水系化を得るために未反応ジイソシアネ
ートを−NCO換算で2.0%以下となるまで反応させ
ることが好ましい。そして、この未反応ジイソシアネー
トは全て封止剤によって処理しなければならない。すな
わち、皮膜形成時に、処理した封鎖剤がイソシアネート
基から解離せず、活性イソシアネート基が再生されない
ことが必要となる。このイソシアネート基が再生すれば
架橋反応によって樹脂が高分子化し、皮膜の耐水性は向
上するものの精練性が著しく悪化するからである。この
ため、皮膜形成の際の乾燥時に、封鎖剤のイソシアネー
ト基からの解離を抑制することが必要となり、このよう
な封鎖剤としては、その解離温度が乾燥温度よりも高く
なければならない。なお、NCO/OH当量比が1.0
未満の場合においても、僅かでも未反応イソシアネート
基が残留する場合には、封鎖剤によって処理することが
好ましい。
【0037】上記封鎖剤としては、使用するジイソシア
ネート成分の種類にもよるが、メタノール、エタノー
ル、イソプロピルアルコール、ブタノール、ラウリルア
ルコール等の炭素数1〜18の脂肪族アルコールや、フ
ェノール、クレゾール等のフェノール系、ε−カプロラ
クタム等のラクタム系等の公知の封鎖剤があげられる。
一方、メチルエチルケトオキシムやシクロヘキサノンオ
キシム等のオキシム系ブロック剤は比較的解離温度が低
いため、本用途での使用は好ましくない。また、一分子
中に一つのアミノ基と一つのカルボキシル基、または一
つのアミノ基と一つのスルホン基を有する化合物、例え
ば、グリシン、アラミン等の脂肪族モノアミノモノカル
ボン酸、アミノシクロヘキサンカルボン酸等の脂環族モ
ノアミノモノカルボン酸、アミノエタンスルホン酸(タ
ウリン)等の脂肪族モノアミノモノスルホン酸等も末端
イソシアネート基の封鎖剤として用いられる。これら封
鎖剤のなかでも、イソシアネート基からの解離温度が高
いという点からメタノールやブタノールを用いることが
好ましい。
【0038】つぎに、未反応イソシアネート基の封鎖剤
による処理に続いて、ウレタンプレポリマーの乳化を行
うため、乳化の前に予め前記B成分に由来するペンダン
ト状カルボキシル基を中和し親水化する。この中和に用
いられる処理剤としては、アンモニア、トリメチルアミ
ン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ
ブチルアミン、トリエタノールアミン、メチルジエタノ
ールアミン、ジメチルエタノールアミン等の有機アミン
があげられる。最終的には、得られる皮膜の耐水性を考
慮すれば、皮膜形成時に熱によって上記処理剤が容易に
揮発するものが好ましく、この点からアンモニア、トリ
メチルアミン、トリエチルアミンを用いることが好まし
い。
【0039】このようにして得られた水溶性ウレタンプ
レポリマーを攪拌等の機械的剪断力によって水中乳化す
る。その後、エバポレーター等を使用して、溶媒を減圧
蒸留することによって回収することが好ましい。
【0040】このようにして水溶性ウレタン樹脂が得ら
れる。そして、本発明において、必須の構成成分である
樹脂成分は、この水溶性ウレタン樹脂を主成分とするも
のであり、この水溶性ウレタン樹脂のみから構成されて
いてもよいし、この水溶性ウレタン樹脂以外に、従来か
らのアクリル酸エステル−アクリル酸共重合体やポリビ
ニルアルコールを、本発明の効果を損なわない範囲内で
部分的に配合することもできる。この場合、上記アクリ
ル酸エステル−アクリル酸共重合体やポリビニルアルコ
ールの配合量は、水溶性ウレタン樹脂との合計量の10
%未満に設定することが好ましい。また、上記主成分で
あるウレタン樹脂以外に、各種添加剤を必要に応じて適
宜に配合することもできる。
【0041】上記各種添加剤としては、ウレタンプレポ
リマーを水性化した後、溶媒を回収する際の発泡を抑制
する発泡抑制剤(消泡剤)や、溶媒回収後に、耐候剤、
黄変防止剤(ヒンダードアミン系やヒンダードフェノー
ル系等)、防黴剤があげられる。
【0042】そして、本発明の簡易サイジング用合成繊
維経糸用糊剤においては、上記水溶性ウレタン樹脂を主
成分とする樹脂成分とともに、下記に示す(Y)成分
(平滑剤成分)が必須成分として用いられる。
【0043】(Y)下記の(a)成分を、下記の(b)
成分により乳化して得られるワックスエマルジョン。 (a)天然ワックスおよび合成ワックスの少なくとも一
方。 (b)非イオン活性剤およびアニオン活性剤の少なくと
も一方。
【0044】上記(a)成分中の天然ワックスとして
は、植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワック
ス、石油系ワックスがあげられる。
【0045】上記植物系ワックスとしては、キャンデリ
ラワックス、カルナバワックス、ライスワックス、木ロ
ウ等があげられる。
【0046】上記動物系ワックスとしては、蜜ロウ、ラ
ノリン(羊毛ロウ)等があげられ、上記鉱物系ワックス
としては、モンタンワックス等があげられ、上記石油系
ワックスとしては、パラフィン系ワックス等があげられ
る。
【0047】上記(a)成分中の合成ワックスとして
は、ポリエチレンワックス、脂肪酸エステル等があげら
れる。
【0048】上記脂肪酸エステルとしては、一価アルコ
ール、またはエチレングリコール、ブタンジオール、ヘ
キサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリ
ン、ペンタエスリット、ソルビタン等の多価アルコール
と、炭素数12〜20の脂肪酸とのエステルがあげられ
る。具体的には、メチルラウレート、メチルミリステー
ト、メチルパルミテート、メチルステアレート、メチル
オレート、エチルラウレート、エチルミリステート、エ
チルパルミテート、エチルステアレート、エチルオレー
ト、グリセリンモノラウレート、グリセリンモノステア
レート、グリセリンモノオレート、ペンタエスリットモ
ノステアレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビ
タンモノオレート等があげられる。
【0049】上記(b)成分中の非イオン活性剤として
は、ラウリルアルコール、セチルアルコール、オレイル
アルコール、ステアリルアルコール等の高級アルコール
のエチレンオキサイド付加物、オクチル基やノニル基、
ドデシル基等でアルキル化したフェノールのエチレンオ
キサイド付加物があげられる。
【0050】上記(b)成分中のアニオン活性剤として
は、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリ
ルアルコール、オレイルアルコール等の高級アルコール
のエチレンオキサイド付加物をベースとした硫酸エステ
ル塩やリン酸エステル塩、さらにドデシル基でアルキル
化したベンゼンスルホン酸塩があげられる。
【0051】これら(b)成分は、単独でもしくは2種
以上併せて用いられる。特に、乳化安定性という点から
オレイルアルコールおよびステアリルアルコールの混合
物のエチレンオキサイド付加物を用いることが好まし
い。
【0052】ワックスエマルジョン(E成分)は、上記
(a)成分を用い、上記(b)成分である乳化剤により
乳化することによりワックスエマルジョン(Y成分)が
得られる。
【0053】上記ワックスエマルジョン(Y成分)にお
いて、(a)成分としては、特に植物系ワックスを単独
で用いることが好ましい。また、植物系ワックスと動物
系ワックスと鉱物系ワックスの混合ワックスの乳化体を
用いることが平滑性付与の点から好ましい。上記植物系
ワックス単独としては、カルナバワックス、またはキャ
ンデリラワックスを用いることが好ましい。また、上記
植物系ワックスと動物系ワックスと鉱物系ワックスの混
合ワックスとしては、植物系ワックスとしてカルナバワ
ックス、キャンデリラワックスを用い、動物系ワックス
として蜜ロウを用い、鉱物系ワックスとしてモンタンワ
ックスを用いる混合ワックスが好ましい。
【0054】上記ワックスエマルジョン(Y成分)と、
前記水溶性ウレタン樹脂を主成分とする樹脂成分との配
合割合は、固形分重量比で、上記樹脂成分(α)とワッ
クスエマルジョン(β)との配合比(α/β)が、α/
β=9/1〜3/7に設定されなければならない。特に
好ましくはα/β=8/2〜5/5である。すなわち、
樹脂成分の配合比が全体の9割を超えると、製織時に糸
と筬および綜絖との間に平滑性が低下して毛羽立ちが発
生する。また、糸巻取り時に、糸間膠着が生じて、糸を
解舒する際糸切れが生じることもある。特に、簡易サイ
ジング加工法では、高速加工であるため乾燥性が不足し
て、糸巻取り時に糸間膠着が生起し易くなるため、膠着
防止のためにも樹脂成分の固形分配合比は全体の90%
以下に設定する必要がある。逆に、樹脂成分が全体の3
割未満では、合成繊維を形成するフィラメント間の集束
性が低下し、製織時に毛羽立ちや糸切れが生じる傾向が
みられるからである。
【0055】このようにして得られる水溶性ウレタン樹
脂を主体とする樹脂成分とワックスエマルジョン(平滑
剤成分)の混合物である簡易サイジング用合成繊維経糸
用糊剤は、合成繊維に対する集束性および接着性に優
れ、充分な耐水性と精練性との両立がなされ、かつ良好
な平滑性(耐擦過性)を示す。
【0056】本発明の簡易サイジング用合成繊維経糸用
糊剤によって処理される対象となる合成繊維マルチフィ
ラメントとしては、特に限定するものではないが、ポリ
エステルやポリアミドの30デニール/12フィラメン
ト〜120デニール/80フィラメントのものがあげら
れる。ただし、前記従来の技術で述べたように、簡易サ
イジング工程で処理するためには生糸では強度が不充分
のため、交絡糸や加工糸、また撚糸を用いることが必要
とされる。
【0057】そして、上記合成繊維マルチフィラメント
に対する本発明の簡易サイジング用合成繊維経糸用糊剤
の付着量(使用量)は、0.5〜5.0%に設定するこ
とが好ましく、特に好ましくは1.0〜3.0%であ
る。すなわち、糊剤の付着量が0.5%未満では、フィ
ラメント間の集束性が低下して、製織時に毛羽立ちが生
じ易い。そして、付着量が5.0%を超えると、簡易サ
イジングでは乾燥性が不充分となるため、巻き取った糸
を解舒する際に糸間で膠着が起こり糸切れが生じたり、
さらに製織時に糊落ちして織機汚染を誘発することがあ
る。
【0058】
【発明の効果】以上のように、本発明の簡易サイジング
用合成繊維経糸用糊剤は、特定の組成から構成されたウ
レタンプレポリマーからなる特殊な水溶性ウレタン樹脂
を主成分とする樹脂成分と、特定のワックスエマルジョ
ンからなる平滑剤成分を特定の割合で配合し含有するも
のである。このため、この糊剤を簡易サイジング工程に
用いると、これにより処理された製織用経糸はその糊剤
が低付着量であるにも関わらず、集束性、平滑性、耐擦
過性および耐膠着性の全てに優れた特性を備えている。
したがって、この処理された経糸を用いての製織時に
は、機械的摩擦による毛羽立ちや糸切れが減少し、最近
のWJLでの高速化(700rpm以上)にも充分対応
可能で、効率良く製織することができる。さらに、本発
明の糊剤は、特殊な組成を有する冷水不溶で熱水可溶の
水溶性ウレタン樹脂を主成分とする樹脂成分を必須成分
とすることから、耐水性に優れ、織機汚染の発生を減少
させるとともに、精練性をも向上させることが可能とな
る。
【0059】つぎに、実施例について比較例と併せて示
す。
【0060】まず、水溶性ウレタン樹脂を作製した。
【0061】〔水溶性ウレタン樹脂aの作製〕温度計、
窒素ガス導入管、攪拌機および還流冷却機を備えた4つ
口反応器中で、窒素ガスを導入しながら、ポリブチレン
アジペート(平均分子量1000)100重量部(以下
「部」と略す)、1,4−シクロヘキサンジメタノール
37部、トリレンジイソシアネート92部、メチルエチ
ルケトン115部を仕込み、75℃で45分間反応させ
た後、ジメチロールプロピオン酸19部を添加して約1
時間反応させた。このようにして未反応イソシアネート
基を約1%含むウレタンプレポリマーを合成した(ウレ
タンプレポリマー中のウレタン結合含有量24%)。そ
して、このウレタンプレポリマーを50℃まで冷却して
ブタノールを4.5部添加し、さらにトリエチルアミン
を14.5部添加した。さらに、水を790部添加して
混合乳化した後、50℃下でエバポレーターで脱溶媒
し、固形分30%に調整して乳白色の水溶性ウレタン樹
脂aを得た。
【0062】〔水溶性ウレタン樹脂b〜oの作製〕下記
の表1および表2に示す各成分を用い、上記水溶性ウレ
タン樹脂aの作製と同様の操作を行うことにより水溶性
ウレタン樹脂b〜oを得た。なお、中和および封鎖剤に
よって処理する前のウレタンプレポリマー中のウレタン
結合含有量および未反応イソシアネート基の含有量を同
表に併せて示す。なお、表1および表2中におけるBA
はブチレンアジペート(分子量1000)、MPD/
TPAは3−メチル−1,5−ペンタジオールのテレフ
タレート(分子量1000)、BAはブチレンアジペ
ート(分子量500)、BAはブチレンアジペート
(分子量2500)、PTMGはポリテトラメチレング
リコール(分子量1000)、1,4−BDは1,4−
ブタンジオール、MPDは3−メチル−1,5−ペンタ
ジオール、ビスフェノールA−2EOはビスフェノール
Aのエチレンオキサイド2付加物TMPはトリメチロー
ルプロパン、DMPAはジメチロールプロピオン酸、T
DI−80は、2,4−トリレンジイソシアネートと
2,6−トリレンジイソシアネートの混合物〔2,4−
トリレンジイソシアネート/2,6−トリレンジイソシ
アネート=80/20(重量比)〕、TEAはトリエチ
ルアミン、NH4 OHはアンモニア水、1,4−CHD
Mは1,4−シクロヘキサンジメタノールを表す。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】つぎに、ワックスエマルジョン(平滑剤成
分)を作製した。
【0066】〔ワックスエマルジョンの作製〕下記の表
3に示す各成分を同表に示す割合で配合して溶融し、こ
れに乳化剤として同表に示す成分を同表に示す割合添加
した。そして、これに温水(85〜90℃)を添加し乳
化温度80℃を保持して固形分濃度20%に希釈するこ
とによりワックスエマルジョンE1を調製した。
【0067】
【表3】
【0068】
【実施例1〜13、比較例1〜4】上記のようにして得
られたワックスエマルジョンと、前記で作製した水溶性
ウレタン樹脂とを下記の表4〜表6に示す配合割合で配
合し混合することにより簡易サイジング用合成繊維経糸
用糊剤を得た。
【0069】
【表4】
【0070】
【表5】
【0071】
【表6】
【0072】
【従来例1】市販のWJL用アクリル系糊剤(互応化学
工業社製、プラスサイズJ−96)を希釈して固形分1
0%溶液とした合成繊維経糸用糊剤を調整した。
【0073】
【従来例2】市販の水溶性ポリエステル系糊剤(東亜合
成化学社製、ペスポールR)を準備した。
【0074】このようにして得られた実施例品、比較例
品、従来例品を用い、これら糊剤を付着させた糸(糊付
け糸)を作製した。
【0075】まず、実施例1品および従来例1品を用い
た場合について述べる。
【0076】〔実施例1および従来例1の評価〕ナイロ
ンマルチフィラメント糸(70デニール/24フィラメ
ント:交絡数20回/m)に対して糊剤(実施例1品、
従来例1品)を配合した固形分10%溶液を、KHSユ
ニバーサルサイザー(カキノキ社製)を用いてナイロン
糸に糊付け加工(糸速250m/分)した。そして、ま
ず、この糊付け糸の性質(付着量測定、抱合力、耐水
性、精練性、粘着性)を評価した。
【0077】そして、実施例1品を配合した固形分10
%溶液を、ワーパーTW−N1700を使用してナイロ
ンマルチフィラメント交絡糸(70デニール/24フィ
ラメント:交絡数20回/m)に糊付け加工した。この
糊付け糸を経糸として、緯糸にはナイロンマルチフィラ
メント(70デニール/24フィラメント:無撚糸)を
使用して、WJL(津田駒工業社製、ZW−303、経
糸6690本、織り幅173cm)でナイロン・タフタ
を速度750rpmで50mを1疋として200疋製織
した。一方、従来例1品を配合した固形分10%溶液
を、ワーパーTW−N1700を使用してナイロンマル
チフィラメント交絡糸(70デニール/24フィラメン
ト:交絡数20回/m)に糊付け加工した。この糊付け
糸を経糸として、緯糸にはナイロンマルチフィラメント
(70デニール/24フィラメント:無撚糸)を使用し
て、WJL(津田駒工業社製、ZW−303、経糸66
90本、織り幅173cm)でナイロン・タフタを速度
750rpmで50mを1疋として200疋製織した。
これら糊付け糸および製織した織物における特性を測定
・評価した。
【0078】上記実施例1品および従来例1品による糊
付け糸および製織の測定・評価は後記の方法に従い、後
記の表7に併せて示した。
【0079】〔実施例2〜13、比較例1〜4および従
来例2の評価〕
【0080】ポリエステルマルチフィラメント交絡糸
(50デニール/24フィラメント:交絡数40回/
m)に対して糊剤(実施例2〜12品、比較例1〜7品
および従来例2品)を配合した固形分10%溶液を、K
HSユニバーサルサイザー(カキノキ社製)を用いてポ
リエステル糸に糊付け加工(糸速250m/分)した。
そして、まず、この糊付け糸の性質(付着量測定、抱合
力、耐水性、精練性、粘着性)を評価した。
【0081】そして、上記各糊剤を配合した固形分10
%溶液を、ワーパーTW−N1700を使用してポリエ
ステルマルチフィラメント交絡糸(50デニール/24
フィラメント:交絡数40回/m)に糊付け加工した。
この糊付け糸を経糸として、緯糸にはポリエステルマル
チフィラメント交絡糸(50デニール/24フィラメン
ト:無撚糸)を使用して、WJL(津田駒工業社製、Z
W−303、経糸6690本、織り幅173cm)でナ
イロン・タフタを速度750rpmで50mを1疋とし
て200疋製織した。これら糊付け糸および製織した織
物における特性を測定・評価した。
【0082】上記実施例2〜13品、比較例1〜4品お
よび従来例2品による糊付け糸および製織の測定・評価
は後記の方法に従い、後記の表7〜表9に併せて示し
た。
【0083】まず、糊付け加工および糊付け糸の特性
を、実験室および工場の二通りについて行った。
【0084】(1)糊付け試験 〔実験室加工〕 実験室で糊付け加工を行い、糊付着量、抱合力試験、耐
水性試験、精練性試験、粘着性試験の5点について評価
した。なお、糊付け加工には、図1に示す装置を用い
た。すなわち、コーン1から引き出した糸2が、糊剤が
充填されたサイジングボックス3内で回転する糊付けロ
ーラー4の表面に接触して糊剤が付着した後、ベーキン
グマシン(乾燥機)5内を通過して、検尺器6に巻き取
った。このようにして糊付け加工を行った。なお、糊付
け速度200m/分に設定した。
【0085】〔工場加工〕 加工工場で下記の条件で糊付け加工を行った後、製織を
行い、製織時の落ち糊、A反率、織機稼働率の3点を評
価した。
【0086】(糊付け加工) 使用機器:津田駒工業社製のワーパーTW−N1700
〔さらに、タッチロール(直径20cm)と遠赤外線ヒ
ーターを設置〕 糊付け速度:300m/分
【0087】クリールスタンドからワーパーへ、ナイロ
ン糸(生糸)1338本をコームで引き揃え、インター
レーサーによって交絡した。その後、2rpmで回転し
ているサイズロールに接触して糊付けした後、プロパン
ガスによる遠赤外線ヒーターゾーンで乾燥し粗巻ビーム
に巻き取った。
【0088】(製織) 使用機器:津田駒工業社製のウォータージェットルーム
ZW−303 製織速度:750rpm
【0089】(2)糊付け糸評価方法
【0090】〔糊付着量〕糊付け糸およびブランク糸を
100倍量の精練浴〔精練剤ダイサーフWS−50(第
一工業製薬社製)/スカム分散剤サイゾールLM(第一
工業製薬社製)/水酸化ナトリウム=見掛け2.0(g
/l)/0.5(g/l)/0.5(g/l)の構成〕
中で90℃×10分を2回繰り返した後、湯洗、水洗、
乾燥して、糸重量を測定した。そして、糊付け糸と糊抜
き糸の重量差、および糊付け糸とブランク糸の重量差に
よって糊の付着量を求めた。
【0091】〔抱合力試験(集束性と平滑性)〕20
℃、75%RHの雰囲気で、TM式抱合力試験器を用い
て糊付け糸1本当たり100gの荷重をかけた状態で摩
擦し、糸割れを起こすまでの回数をカウントした。
【0092】〔耐水性試験〕糊付け糸を100倍量の水
道水(20℃)中で10分間攪拌した後、糊付け糸の重
量から糊落ち量を測定した。そして、(糊落ち量/付着
量)×100を水浴での脱糊率として耐水性の指標とし
た。
【0093】〔精練性試験〕糊付け糸およびブランク糸
を100倍量の精練浴〔精練剤ダイサーフWS−50
(第一工業製薬社製)/スカム分散剤サイゾールLM
(第一工業製薬社製)/水酸化ナトリウム=見掛け2.
0(g/l)/0.5(g/l)/0.5(g/l)の
構成〕中で90℃×1分間攪拌した後、糊付け糸の重量
から糊落ち量を測定した。そして、糊付け糸とブランク
糸の重量差も考慮して、(糊落ち量/付着量)×100
を精練浴での脱糊率として精練性の指標とした。
【0094】〔粘着性〕糊付け糸を糸速50m/分、走
行張力30gでボビンに巻取り、25℃×75%RHの
条件下で24時間放置した後、糸−糸間の粘着性を観察
した。その結果、粘着性がないものを◎、粘着性が殆ど
ないものを○、粘着性が少しあるものを△、粘着性が多
分にあるものを×とし4段階にて評価した。
【0095】〔糊落ち性〕ウォータージェットルーム
(津田駒工業社製、ZW−303)でナイロン・タフタ
を速度750rpmで10000m走行させて製織した
ときの糊落ちの程度を観察した。その結果、糊落ちが全
くないものを◎、糊落ちが殆どないものを○、糊落ちが
少しあるものを△、糊落ちが多分になるものを×とし4
段階にて評価した。
【0096】〔A反率〕ウォータージェットルーム(津
田駒工業社製、ZW−303)でナイロン・タフタを速
度750rpmで10000m走行させて製織したとき
の織布中のA反の割合(%)を表示した。なお、A反と
は毛羽立ちがなく織物品位の高い織布をいう。
【0097】〔稼働率〕ウォータージェットルーム(津
田駒工業社製、ZW−303)で製織にかかった全時間
から、製織中にトラブル等で織機が停滞した時間を差し
引いた、実働製織時間の割合(%)を表示した。
【0098】
【表7】
【0099】
【表8】
【0100】
【表9】
【0101】上記表7〜表9の結果から明らかなよう
に、実施例では、糊付け加工(ラボ試験)における糊付
け糸は良好な耐水性と精練性を有し、充分な抱合力も示
した。また、工場試験においては、製織中の糊落ちもな
く、また毛羽立ちも殆ど生じずA反率も97%以上と非
常に高い数値が得られた。また、織機稼働率も99%以
上と良好な結果が得られた。これに対して、比較例およ
び従来例では、抱合力が弱いか、多少の粘着が確認され
た。また、製織時において、筬や綜絖に若干の糊落ちが
確認され、毛羽立ちが生じて低いA反率が得られ、織機
稼働率も実施例に比べて低かった。
【0102】
【実施例14】ナイロンマルチフィラメント糸(70デ
ニール/24フィラメント:交絡数20回/m)に対し
て、実施例1品の水溶性ウレタン樹脂を固形分として
7.0%、ワックスエマルジョンE1を固形分として
3.0%配合した簡易サイジング用合成繊維経糸用糊剤
(固形分10.0%溶液)を作製した。そして、これを
前記実験室試験の糊付け加工装置(図1参照)を用いて
糊付け加工した。この糊付け糸の性質(糊付着量測定、
抱合力、耐水性、精練性、粘着性)を前記の方法に従い
測定・評価した。その結果を後記の表10に示す。
【0103】つぎに、上記糊剤を用いて、ワーパーTW
−N1700を使用しナイロンマルチフィラメント糸
(70デニール/24フィラメント:交絡数20回/
m)に糊付け加工した。この糊付け糸を経糸として、緯
糸にはナイロンマルチフィラメント糸(70デニール/
24フィラメント:無撚糸)を使用して、WJL(津田
駒工業社製、ZW−303、経糸6690本、織り幅1
73cm)でナイロン・タフタを速度750rpmで5
0mを1疋として200疋製織した。そして、この糊付
け糸および製織した織物について、前記の方法に従い測
定・評価した。その結果を後記の表10に示す。
【0104】
【比較例8】市販のWJL用アクリル系糊剤(互応化学
工業社製、プラスサイズJ−96)を希釈して固形分1
0%溶液とした従来例1品である合成繊維経糸用糊剤を
準備した。そして、上記実施例14と同様にして実験室
試験での糊付け加工、また工場試験での糊付け加工およ
び製織を行った。そして、この糊付け糸および製織した
織物について、下記の表10に示す特性を前記の方法に
従い測定・評価した。その結果を同表に示す。
【0105】
【表10】
【0106】上記表10の結果から明らかなように、実
施例14は、製織中の落ち糊もなく、また毛羽立ちもな
くA反率は98%の高い値を示した。また、織機稼働率
も98%であった。これに対して、比較例5は、筬や綜
絖に若干の落ち糊が確認された。また、A反率が94
%、織機稼働率が95%と実施例14と比べて低い値で
あった。
【図面の簡単な説明】
【図1】実験室試験での糊付け加工を行う際に用いられ
る糊付け加工装置の概要を示す説明図である。
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) D06M 13/00 - 15/72

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記のウレタンプレポリマー(X)の
    (B)成分に由来するペンダント状カルボキシル基が中
    和・親水化され、さらに未反応イソシアネート基が封鎖
    剤によって処理された水溶性ウレタン樹脂を主成分とす
    る樹脂成分と、下記の(Y)成分を含有する簡易サイジ
    ング用合成繊維経糸用糊剤であって、上記樹脂成分
    (α)と(Y)成分(β)との配合割合が、固形分重量
    比で、α/β=9/1〜3/7に設定されていることを
    特徴とする簡易サイジング用合成繊維経糸用糊剤。 (X)下記の(イ)および(ロ)を備えたウレタンプレ
    ポリマー。 (イ)下記の(A)成分から誘導される構造単位がウレ
    タンプレポリマーの20〜60重量%、下記の(B)成
    分および(C)成分から誘導される構造単位がウレタン
    プレポリマーの15〜35重量%、下記の(D)成分か
    ら誘導される構造単位がウレタンプレポリマーの25〜
    60重量%を占めるように設定されている。 (A)分子量500〜2500の高分子ジオール。 (B)ペンダント状カルボキシル基を有するジオール。 (C)上記(B)成分以外の低分子量ポリオール。 (D)ジイソシアネート。 (ロ)ウレタン結合(−NHCOO−)含量が20〜3
    5重量%に設定されている。 (Y)下記の(a)成分を、下記の(b)成分により乳
    化して得られるワックスエマルジョン。 (a)天然ワックスおよび合成ワックスの少なくとも一
    方。 (b)非イオン活性剤およびアニオン活性剤の少なくと
    も一方。
  2. 【請求項2】 下記の(A)成分をウレタンプレポリマ
    ー全体の20〜60重量%、下記の(B)成分および
    (C)成分をウレタンプレポリマー全体の15〜35重
    量%、下記の(D)成分をウレタンプレポリマー全体の
    25〜60重量%となるよう配合し反応させ、ウレタン
    結合(−NHCOO−)を20〜35重量%含有するウ
    レタンプレポリマーを作製する工程と、上記ウレタンプ
    レポリマー中の(B)成分に由来するペンダント状カル
    ボキシル基を中和・親水化するとともに、上記ウレタン
    プレポリマー中の未反応イソシアネート基を封鎖剤を用
    いて処理することにより水溶性ウレタン樹脂を作製する
    工程と、下記の(a)成分に対して下記の(b)成分を
    用いて乳化することによりワックスエマルジョンを作製
    する工程と、上記水溶性ウレタン樹脂を主成分とする樹
    脂成分(α)と上記ワックスエマルジョン(β)の配合
    割合が、固形分重量比で、α/β=9/1〜3/7とな
    るよう上記水溶性ウレタン樹脂とワックスエマルジョン
    を配合する工程とを備えたことを特徴とする簡易サイジ
    ング用合成繊維経糸用糊剤の製法。 (A)分子量500〜2500の高分子ジオール。 (B)ペンダント状カルボキシル基を有するジオール。 (C)上記(B)成分以外の低分子量ポリオール。 (D)ジイソシアネート。 (a)天然ワックスおよび合成ワックスの少なくとも一
    方。 (b)非イオン活性剤およびアニオン活性剤の少なくと
    も一方。
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