JP3465980B2 - 合成繊維経糸用糊剤およびその製法 - Google Patents

合成繊維経糸用糊剤およびその製法

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JP3465980B2 JP04278395A JP4278395A JP3465980B2 JP 3465980 B2 JP3465980 B2 JP 3465980B2 JP 04278395 A JP04278395 A JP 04278395A JP 4278395 A JP4278395 A JP 4278395A JP 3465980 B2 JP3465980 B2 JP 3465980B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ウォータージェットル
ームにおいて、ポリエステルやポリアミド等を製織する
際に使用する合成繊維マルチフィラメント経糸用糊剤で
あって、特に、ポリエステルやポリアミドのマルチフィ
ラメントの経糸用糊剤(サイジング剤)およびその製法
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、合成繊維マルチフィラメント糸の
製織には、噴射した水で緯糸を送入するウォータージェ
ットルーム(以下「WJL」と称す)が汎用されてい
る。このような製織に用いられる経糸表面には、サイジ
ング剤(糊剤)による皮膜が形成されている。そして、
このWJLによる製織では、製織中に多量の水を使用す
るため、経糸に付着させたサイジング剤(糊剤)の皮膜
には充分な耐水性が付与されていなければならない。ま
た、この耐水性とともに、製織後の精練工程において、
充分な糊抜きがなされねばならず、上記サイジング剤に
は、耐水性と精練性の両立という相反する特性を同時に
満足させることが要求される。
【0003】最近では、製織速度が700rpm以上の
高速化が進み、経糸と筬および綜絖との擦過、または綜
絖の上下運動に伴う経糸同士の擦過の程度が従来以上と
なり、経糸の受ける損傷がより大きくなっている。さら
に、細番手糸を多用した高密度織物等の定番品以外の高
品位織物の製織も増加してきており、このため、低付着
量であっても高速製織に対応できる耐擦過性に優れたサ
イジング剤が要求されている。
【0004】このようなWJLでの製織における経糸用
糊剤としては、従来から、アクリル酸エステル−アクリ
ル酸共重合体や、ポリビニルアルコールが使用されてい
る。しかし、上記アクリル酸エステル−アクリル酸共重
合体の場合、その糊皮膜は軟弱であり、かつ粘着性や吸
湿性等の点において欠点がある。すなわち、上記アクリ
ル酸エステル−アクリル酸共重合体系糊剤を用いると、
これによって製織時での糊落ちが多く、筬や綜絖部に落
ちた糊が付着・蓄積して粘着現象が生じ、経糸が損傷し
て織物の品質の低下を招いてしまう。また、上記ポリビ
ニルアルコールの場合、硬い糊皮膜を形成するために、
上記アクリル系樹脂糊剤の欠点を補完すべくアクリル系
樹脂糊剤と併用される。しかしながら、この併用糊剤
は、合成繊維に対する親和性に欠け集束性が不充分であ
るため、アクリル系樹脂の併用割合が高くなるほど糸切
れが生じ易くなり、結果的に製織効率の低下を招いてし
まう。
【0005】上記糊剤以外に、水溶性ポリエステル糊剤
が用いられているが、この糊剤は充分な集束性を有して
はいるが、精練性の悪さから、通常、一般での使用量は
極一部に限られている。
【0006】さらに、水溶性ウレタン樹脂系の糊剤が各
種提案されている(特公昭60−18355号公報、特
公平5−24268号公報、特開昭59−147013
号公報、特開平4−142385号公報)。しかしなが
ら、これら水溶性ウレタン樹脂系糊剤は、親水基として
スルホン酸基を有するため、耐水性が充分でなかった
り、また親水基に使用するカルボキシル基の濃度が低い
ため精練性が充分でなかったり、ウレタン密度が低いた
め必要な皮膜強度を備えていない等の欠点を有してい
る。このため、WJLでの高速製織に充分対応できるも
のではない。
【0007】このように、WJLによる製織工程の高速
化に伴い、より少ない付着量でより高速の製織に耐用で
きる過酷な条件下での使用可能な経糸用糊剤が要求され
ているが、従来品では充分に対応できないのが現状であ
る。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】従来の杼を用いた製織
に比較して、WJLによる製織では高速製織が可能であ
るため、製織効率が著しく向上し、さらに、最近では、
一層の生産性向上のために、さらなる製織高速化(回転
数700rpm以上)が進められ、それに伴い、経糸の
受ける損傷はより増大している。
【0009】したがって、経糸に付着形成した皮膜につ
いて、耐水性と精練性の両立のみでなく、高速製織にも
耐用できるよう集束性にも優れていることが要求され、
このような皮膜を形成しうる糊剤が望まれている。
【0010】従来からのアクリル酸エステル−アクリル
酸重合体系糊剤では、製織時の落ち糊が多く、その糊分
が筬や綜絖部に蓄積するという問題を有している。ま
た、ポリビニルアルコール系糊剤は、集束性に乏しいと
いう欠点がある。このように、従来の糊剤では、最近の
製織工程の高速化への対応は困難である。
【0011】本発明は、このような事情に鑑みなされた
もので、WJLでの製織時の耐水性に優れ、落ち糊も少
なく、かつ精練性および集束性にも優れた合成繊維経糸
用糊剤およびその製法の提供をその目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
め、本発明は、下記のウレタンプレポリマー(X)の
(B)成分に由来するペンダント状カルボキシル基が中
和・親水化され、さらに未反応イソシアネート基が封鎖
剤によって処理された水溶性ウレタン樹脂を主成分とす
る合成繊維経糸用糊剤を第1の要旨とする。 (X)下記の(Y)および(Z)を備えたウレタンプレ
ポリマー。 (Y)下記の(A)成分から誘導される構造単位がウレ
タンプレポリマーの20〜60重量%、下記の(B)成
分および(C)成分から誘導される構造単位がウレタン
プレポリマーの15〜35重量%、下記の(D)成分か
ら誘導される構造単位がウレタンプレポリマーの25〜
60重量%を占めるように設定されている。 (A)分子量500〜2500の高分子ジオール。 (B)ペンダント状カルボキシル基を有するジオール。 (C)上記(B)成分以外の低分子量ポリオール。 (D)ジイソシアネート。 (Z)ウレタン結合(−NHCOO−)含量が20〜3
5重量%に設定されている。
【0013】また、上記合成繊維経糸用糊剤に、下記の
(E)成分が配合された合成繊維経糸用糊剤であって、
上記(E)成分の配合割合が、固形分換算で、水溶性ウ
レタン樹脂を主成分とする樹脂成分と(E)成分との合
計中30重量%以下に設定されている合成繊維経糸用糊
剤を第2の要旨とする。 (E)下記の(a)成分を、下記の(b)成分により乳
化して得られるワックスエマルジョン。 (a)天然ワックスおよび合成ワックスの少なくとも一
方。 (b)非イオン活性剤およびアニオン活性剤の少なくと
も一方。
【0014】そして、上記(A)成分をウレタンプレポ
リマー全体の20〜60重量%、上記(B)成分および
(C)成分をウレタンプレポリマー全体の15〜35重
量%、上記(D)成分をウレタンプレポリマー全体の2
5〜60重量%となるよう配合し反応させて、ウレタン
結合(−NHCOO−)を20〜35重量%含有するウ
レタンプレポリマーを作製する工程と、上記ウレタンプ
レポリマー中の(B)成分に由来するペンダント状カル
ボキシル基を中和・親水化する工程と、ウレタンプレポ
リマー中の未反応イソシアネート基を封鎖剤によって処
理する工程とを備えた合成繊維経糸用糊剤の製法を第3
の要旨とする。
【0015】さらに、上記合成繊維経糸用糊剤の製法に
加えて、さらに、上記(a)成分に対して上記(b)成
分を用いて乳化することによりワックスエマルジョンを
作製する工程と、固形分換算で、上記水溶性ウレタン樹
脂を主成分とする樹脂成分と上記ワックスエマルジョン
との合計中30重量%以下となるよう、上記ワックスエ
マルジョンを配合する工程とを備えた合成繊維経糸用糊
剤の製法を第4の要旨とする。
【0016】
【作用】すなわち、本発明の合成繊維経糸用糊剤は、前
記特定の各(A)〜(D)成分から構成されたウレタン
プレポリマーからなり、これを所定の処理を行うことに
より得られる特殊な水溶性ウレタン樹脂を主成分とす
る。このため、上記特定の水溶性ウレタン樹脂が冷水不
溶で、熱アルカリ可溶を示すため、耐水性に優れること
から、製織時の織機汚染を減少させると同時に、製織し
た生地の精練性を向上させることが可能となる。また、
この糊剤によって処理された製織用経糸は優れた集束
性、平滑性、耐擦過性、耐膠着性を示すため、製織時の
機械的摩擦による毛羽立ちや糸切れを防止し、例えば、
700rpm以上の高速WJLによる製織にも充分に対
応できる。さらに、低付着量でも充分な集束性を示すた
め、経糸として細番手糸を多用した高密度織物を高速で
製織することも可能となる。さらに、上記水溶性ウレタ
ン樹脂とともに、前記のワックスエマルジョンを特定の
割合で配合することにより、一層優れた集束性、平滑
性、耐擦過性、耐膠着性の向上が図られる。
【0017】つぎに、本発明を詳しく説明する。
【0018】本発明の合成繊維経糸用糊剤は、特殊な水
溶性ウレタン樹脂を主成分とするものである。なお、本
発明において、「主成分とする」とは主成分のみからな
る場合も含める趣旨である。
【0019】上記特殊な水溶性ウレタン樹脂は、特定の
成分を用いて得られるウレタンプレポリマーのウレタン
結合(−NHCOO−)含量が特定範囲に設定されたウ
レタンプレポリマーを用い、このウレタンプレポリマー
を特定の方法で処理することにより得られるものであ
る。
【0020】上記ウレタンプレポリマーは、分子量50
0〜2500の高分子ジオール(A成分)と、ペンダン
ト状カルボキシル基を有するジオール(B成分)と、上
記B成分以外の低分子量ポリオール(C成分)と、ジイ
ソシアネート(D成分)を用いて得られるウレタンプレ
ポリマーの上記B成分に由来するペンダント状カルボキ
シル基を中和・親水化し、さらに未反応イソシアネート
基を封鎖剤によって処理することにより得られる。
【0021】上記分子量500〜2500の高分子ジオ
ール(A成分)には、ポリエステルジオール、ポリエー
テルジオール、ポリエーテルエステルジオール、ポリカ
ーボネイト等があげられる。
【0022】上記ポリエステルジオールを構成する二塩
基酸成分としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グ
ルタール酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セ
バチン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタ
ル酸、テレフタル酸等のような飽和または不飽和の脂肪
族二塩基酸および芳香族二塩基酸があげられる。そし
て、ポリエステルジオールを構成する二価アルコール成
分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコー
ル、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、
ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、
1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペン
タジオール、1,6−ヘキサンジオール等のような脂肪
族グリコールおよびシクロヘキサンジオール等のような
脂環式グリコール等があげられる。
【0023】上記ポリエーテルジオールとしては、ポリ
エチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ
エチレン/ポリプロピレンのコポリマーグリコール、テ
トラメチレングリコール等のポリアルキレングリコール
等があげられる。
【0024】上記ポリエーテルエステルジオールとして
は、ポリエチレングリコールやテトラメチレングリコー
ルと、二塩基酸とのエステル化物があげられる。上記二
塩基酸成分としては、上記ポリエステルジオールを構成
する二塩基酸成分と同様のものがあげられる。
【0025】上記ポリカーボネイトとしては、トリメチ
レングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメ
チレングリコール、ヘキサメチレングリコール等の脂肪
族グリコールと炭酸とのポリエステル、4,4′−ジオ
キシフェニルメタン、4,4′−ジオキシジフェニル−
1,1−エタン、4,4′−ジオキシジフェニル−1,
1−ブタン、4,4′−ジオキシジフェニル−2,2−
プロパン、4,4′−ジオキシジフェニル−2,2−ブ
タンと炭酸とのポリエステル等があげられる。
【0026】これら高分子ジオールは、単独でもしくは
2種以上併せて用いてもよい。そして、これらから得ら
れる高分子ジオールのなかでも、皮膜の耐水性を特に重
視する場合には、テレフタル酸を使用したポリエステル
を用いることが好ましい。また、経済性を重視する場合
には、アジピン酸を使用したポリエステルを用いること
が好ましい。
【0027】そして、この高分子ジオール(A成分)の
平均分子量は、前述のように、500〜2500の範囲
に設定することが好ましく、特に好ましくは平均分子量
が700〜1600である。すなわち、平均分子量が5
00未満では、ウレタンプレポリマー中に占めるイソシ
アネートの含有量が多くなりすぎ、形成される皮膜が脆
くなり製織効率が低下する。また、平均分子量が250
0を超えると、ウレタンプレポリマー中に占めるウレタ
ン結合(−NHCOO−)含有量が所定の範囲を下回る
ため、本発明の効果を望めなくなるからである。
【0028】また、高分子ジオール(A成分)の配合量
は、ウレタンプレポリマー中20〜60重量%(以下
「%」と略す)の範囲に設定する必要があり、特に好ま
しくは25〜55%である。すなわち、A成分の配合量
が20%未満では、相対的にウレタン結合含有量が過剰
となり皮膜が可撓性を失い、合成繊維に対する接着性お
よび集束性を低下させてしまう。逆に、60%を超える
と、相対的なウレタン結合含有量が過少となり、耐水性
および粘着性に悪影響を及ぼしてしまうからである。
【0029】本発明でA成分とともに用いられるペンダ
ント状カルボキシル基を有するジオール(B成分)は、
上記C成分とともに鎖延長剤としての作用を有するもの
である。
【0030】上記B成分としては、ジメチロール酢酸、
ジメロールプロピオン酸、ジメチロール吉草酸等があげ
られる。このB成分を用いることにより、ウレタン樹脂
に親水性を付与し自己乳化性を持たせると同時に、皮膜
の耐水性と精練性をコントロールすることが可能とな
る。上記B成分の配合量は、ウレタンプレポリマー中で
3〜15%に設定することが好ましく、特に好ましくは
5〜10%である。すなわち、3%未満では、皮膜の耐
水性が悪化し、逆に15%を超えると乳化安定性および
皮膜の精練性が悪化する傾向がみられるからである。
【0031】上記B成分とともに鎖延長剤として用いら
れるC成分は、上記B成分以外のジオールであって、一
分子中に二個以上の水酸基を有する低分子量ポリオール
である。例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレン
グリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタ
ンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキ
サンジオール等の脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキ
サンジメタノール等の脂環族ジオール、ビスフェノール
Aのエチレンオキサイド(EO)付加物またはプロピレ
ンオキサイド(PO)付加物等の芳香族系ジオール、ト
リメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ヘキサ
ントリオール、グリセリン等の脂肪族トリオールがあげ
られる。これらC成分は、単独でもしくは2種以上併せ
て用いられる。なかでも、1,4−ブタンジオール、
1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノール
Aのエチレンオキサイド(EO)付加物、ビスフェノー
ルAのプロピレンオキサイド(PO)付加物を単独でも
しくは2種以上併せて用いる、さらにこれらとトリメチ
ロールプロパンを併用することが、得られる皮膜の耐水
性や耐擦過性、および乳化安定性という点から好まし
い。
【0032】そして、鎖延長剤成分であるB成分とC成
分の合計配合量は、ウレタンプレポリマー中15〜35
%に設定する必要があり、特に好ましくは15〜30%
である。すなわち、B成分とC成分の合計配合量が15
%未満では、得られるプレポリマー中のウレタン結合含
有量が少なくなるため、得られる糊剤の接着性および集
束性が低下する。また、合計配合量が35%を超える
と、ウレタンプレポリマー中のウレタン結合含有量が高
くなるため、得られる糊剤により形成される皮膜の可撓
性が低下して脆くなり却って製織効率が悪化してしま
う。また、相対的に高分子ジオール(A成分)の配合量
が低下するため、合成繊維に対する接着性および集束性
が低下してしまう。このことから、上記C成分の配合量
は、ウレタンプレポリマー中で7〜20%に設定するこ
とが好ましい。
【0033】上記A〜C成分とともに用いられるジイソ
シアネート(D成分)としては、2,4−トリレンジイ
ソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、
2,4−トリレンジイソシアネートと2,6−トリレン
ジイソシアネートの混合物、m−フェニレンジイソシア
ネート、キシレンジイソシアネート、テトラメチレンキ
シリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソ
シアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソ
シアネート、3,3′−ジメチル−4,4′−ビフェニ
レンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネー
ト、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイ
ソシアネート等のような芳香族系、脂環族系、脂肪族系
のジイソシアネート等があげられる。これらD成分は単
独でもしくは2種以上併せて用いられる。上記ジイソシ
アネートのなかでも、2,4−トリレンジイソシアネー
トと2,6−トリレンジイソシアネートの混合物(TD
I−80やTDI−65)、4,4−ジフェニルメタン
ジイソシアネート(MDI)、4,4′−ジシクロヘキ
シルジイソシアネート(H12MDI)、ヘキサメチレン
ジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシア
ネート(IPDI)を用いることが好ましい。そして、
経済性を重視する場合は、2,4−トリレンジイソシア
ネートと2,6−トリレンジイソシアネートの混合物
(TDI−80やTDI−65)、MDIを用いること
がより好ましい。
【0034】そして、上記ジイソシアネート(D成分)
の配合量は、ウレタンプレポリマー中25〜60%に設
定する必要があり、特に好ましくは30〜55%であ
る。すなわち、D成分の配合量が25%未満では、得ら
れる糊剤の耐水性や接着性,集束性に悪影響を与え、6
0%を超えると形成される皮膜の精練性が悪化し、また
反応の制御が困難となるからである。
【0035】これらA〜D成分を用いてウレタンプレポ
リマーを作製する方法としては、例えば、A成分、鎖延
長剤としてのB成分およびC成分、D成分を同時に混合
させ反応させることにより作製する方法があげれらる。
また、A成分とD成分とを反応させイソシアネート末端
プレポリマーを作製した後、鎖延長剤としてのB成分お
よびC成分を添加することにより作製する方法があげら
れる。このようなプレポリマー化する反応温度は、65
〜130℃の範囲が好ましい。
【0036】上記ウレタンプレポリマーの作製時には、
必要に応じて溶媒を使用することができる。上記溶媒と
しては、ジイソシアネート(D成分)に対して不活性で
かつ親水性であることが必要である。例えば、メチルエ
チルケトン、アセトン等のケトン類、テトラヒドロフラ
ン、ジオキサン等のエーテル類、セロソルブアセテー
ト、酢酸エチル、プロピオン酸メチル等のエステル類が
あげられる。なかでも、ウレタン樹脂を親水化した後、
減圧蒸留によって溶媒を回収できるように、水より低沸
点の溶媒を用いることが好ましく、このような点からメ
チルエチルケトンを用いることが特に好ましい。
【0037】上記ウレタンプレポリマーの反応の終点
は、NCO/OH当量比が1.0以上の場合、未反応ジ
イソシアネートの濃度によって判断し、未反応ジイソシ
アネートがウレタンプレポリマー中に、好ましくは0.
2〜3.0%の範囲、特に好ましくは0.5〜2.0%
の範囲の濃度となるまで反応を進行させる。また、NC
O/OH当量比が1.0未満の場合は、OH値が好まし
くは5〜40の範囲内、特に好ましくは10〜20の範
囲内に収まるまで反応を進行させる。
【0038】このようにして得られるウレタンプレポリ
マーは、プレポリマー中のウレタン結合の含有量(−N
HCOO−換算)が20〜35%に設定される。特に好
ましくは25〜30%である。このウレタン結合の含有
量の割合が従来の水溶性ウレタン系糊剤とは異なる点て
ある。すなわち、プレポリマー中に含まれるウレタン結
合含有量が20%未満では、形成される皮膜の強度が低
下し、集束性や耐水性が悪化してしまう。また、ウレタ
ン結合含有量が35%を超えると、形成される皮膜が可
撓性を失い脆くなり却って製織性を低下させてしまうか
らであり、上記範囲内に設定しなければ本発明の糊剤と
しての効果を得ることができない。また、ここで得られ
るウレタンプレポリマーの平均分子量は、特に限定する
ものではないが、好ましくは3000〜50000、特
に好ましくは5000〜20000である。すなわち、
ウレタンプレポリマーの平均分子量が3000未満では
形成される皮膜の集束性や耐水性が悪化することがあ
り、平均分子量が50000を超えると皮膜の糊抜き精
練性に悪影響を与える傾向がみられるからである。
【0039】ついで、上記のようにして得られたウレタ
ンプレポリマーを、NCO/OH当量比が1.0以上の
場合、安定した水系化を得るために未反応イソシアネー
ト基を−NCO換算で2.0%以下となるまで反応させ
ることが好ましい。そして、この未反応イソシアネート
基を全て封止剤によって処理しなければならない。これ
は、未反応イソシアネート基を、水またはジアミン等で
架橋させると樹脂が高分子化し皮膜の精練性が大きく悪
化してしまうためである。一方、処理した封鎖剤が、皮
膜形成時にイソシアネート基から解離せず、活性イソシ
アネート基が再生されないことが必要となる。このイソ
シアネート基が再生すれば架橋反応によって樹脂が高分
子化し、皮膜の耐水性は向上するものの精練性が著しく
悪化するからである。このため、皮膜形成の際の乾燥時
に、封鎖剤のイソシアネート基からの解離を抑制するこ
とが必要となり、このような封鎖剤としては、その解離
温度が乾燥温度よりも高くなければならない。なお、N
CO/OH当量比が1.0未満の場合においても、僅か
でも未反応イソシアネート基が残留する場合には、封鎖
剤によって処理することが好ましい。
【0040】上記封鎖剤としては、使用するジイソシア
ネート成分の種類にもよるが、メタノール、エタノー
ル、イソプロピルアルコール、ブタノール、ラウリルア
ルコール等の炭素数1〜18の脂肪族アルコールや、フ
ェノール、クレゾール等のフェノール系、ε−カプロラ
クタム等のラクタム系等の公知の封鎖剤があげられる。
一方、メチルエチルケトオキシムやシクロヘキサノンオ
キシム等のオキシム系ブロック剤は比較的解離温度が低
いため、本用途での使用は好ましくない。また、一分子
中に一つのアミノ基と一つのカルボキシル基、または一
つのアミノ基と一つのスルホン基を有する化合物、例え
ば、グリシン、アラミン等の脂環族モノアミノモノカル
ボン酸、アミノシクロヘキサンカルボン酸等の脂環族モ
ノアミノモノカルボン酸、アミノエタンスルホン酸(タ
ウリン)等の脂肪族モノアミノモノスルホン酸等も末端
イソシアネート基の封鎖剤として用いられる。これら封
鎖剤のなかでも、イソシアネート基からの解離温度が高
いという点からメタノールやブタノールを用いることが
好ましい。
【0041】つぎに、未反応イソシアネート基の封鎖剤
による処理に続いて、ウレタンプレポリマーの乳化を行
うため、乳化の前に予め前記B成分に由来するペンダン
ト状カルボキシル基を中和し親水化する。この中和に用
いられる処理剤としては、アンモニア、トリメチルアミ
ン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ
ブチルアミン、トリエタノールアミン、メチルジエタノ
ールアミン、ジメチルエタノールアミン等の有機アミン
があげられる。最終的には、得られる皮膜の耐水性を考
慮すれば、皮膜形成時に熱によって上記処理剤が容易に
揮発するものが好ましく、この点からアンモニア、トリ
メチルアミン、トリエチルアミンを用いることが好まし
い。
【0042】このようにして得られた水溶性ウレタンプ
レポリマーを攪拌等の機械的剪断力によって水中乳化す
る。その後、エバポレーター等を使用して、溶媒を減圧
蒸留することによって回収することが好ましい。
【0043】このようにして水溶性ウレタン樹脂が得ら
れる。そして、本発明の合成繊維経糸用糊剤は、この水
溶性ウレタン樹脂を主成分とするものであり、この水溶
性ウレタン樹脂のみから構成されていてもよいし、この
水溶性ウレタン樹脂以外に、従来からのアクリル酸エス
テル−アクリル酸共重合体やポリビニルアルコールを、
本発明の効果を損なわない範囲内で部分的に配合するこ
ともできる。この場合、上記アクリル酸エステル−アク
リル酸共重合体やポリビニルアルコールの配合量は、水
溶性ウレタン樹脂との合計量の10%未満に設定するこ
とが好ましい。また、この合成繊維経糸用糊剤には、主
成分であるウレタン樹脂以外に、各種添加剤を必要に応
じて適宜に配合することもできる。
【0044】上記各種添加剤としては、ウレタンプレポ
リマーを水性化した後、溶媒を回収する際の発泡を抑制
する発泡抑制剤(消泡剤)や、溶媒回収後に、耐候剤、
黄変防止剤(ヒンダードアミン系やヒンダードフェノー
ル系等)、防腐剤があげられる。
【0045】さらに、本発明においては、上記水溶性ウ
レタン樹脂を主成分とする樹脂成分に対して、下記に示
す(E)成分(平滑剤成分)を配合したものを合成繊維
経糸用糊剤として用いてもよい。
【0046】(E)下記の(a)成分を、下記の(b)
成分により乳化して得られるワックスエマルジョン。 (a)天然ワックスおよび合成ワックスの少なくとも一
方。 (b)非イオン活性剤およびアニオン活性剤の少なくと
も一方。
【0047】上記(a)成分中の天然ワックスとして
は、植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワック
ス、石油系ワックスがあげられる。
【0048】上記植物系ワックスとしては、キャンデリ
ラワックス、カルナバワックス、ライスワックス、木ロ
ウ等があげられる。
【0049】上記動物系ワックスとしては、蜜ロウ、ラ
ノリン(羊毛ロウ)等があげられ、上記鉱物系ワックス
としては、モンタンワックス等があげられ、上記石油系
ワックスとしては、パラフィン系ワックス等があげられ
る。
【0050】上記(a)成分中の合成ワックスとして
は、ポリエチレンワックス、脂肪酸エステル等があげら
れる。
【0051】上記脂肪酸エステルとしては、一価アルコ
ール、またはエチレングリコール、ブタンジオール、ヘ
キサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリ
ン、ペンタエスリット、ソルビタン等の多価アルコール
と、炭素数12〜20の脂肪酸とのエステルがあげられ
る。具体的には、メチルラウレート、メチルミリステー
ト、メチルパルミテート、メチルステアレート、メチル
オレート、エチルラウレート、エチルミリステート、エ
チルパルミテート、エチルステアレート、エチルオレー
ト、グリセリンモノラウレート、グリセリンモノステア
レート、グリセリンモノオレート、ペンタエスリットモ
ノステアレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビ
タンモノオレート等があげられる。
【0052】上記(b)成分中の非イオン活性剤として
は、ラウリルアルコール、セチルアルコール、オレイル
アルコール、ステアリルアルコール等の高級アルコール
のエチレンオキサイド付加物、オクチル基やノニル基、
ドデシル基等でアルキル化したフェノールのエチレンオ
キサイド付加物があげられる。
【0053】上記(b)成分中のアニオン活性剤として
は、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリ
ルアルコール、オレイルアルコール等の高級アルコール
のエチレンオキサイド付加物をベースとした硫酸エステ
ル塩やリン酸エステル塩、さらにドデシル基でアルキル
化したベンゼンスルホン酸塩があげられる。
【0054】これら(b)成分は、単独でもしくは2種
以上併せて用いられる。特に、乳化安定性という点か
ら、オレイルアルコールおよびステアリルアルコールの
混合物のエチレンオキサイド付加物を用いることが好ま
しい。
【0055】ワックスエマルジョン(E成分)は、上記
(a)成分を用い、上記(b)成分である乳化剤により
乳化することにより得られる。
【0056】上記ワックスエマルジョン(E成分)にお
いて、(a)成分としては、特に植物系ワックスを単独
で用いることが好ましい。また、植物系ワックスと動物
系ワックスと鉱物系ワックスの混合ワックスの乳化体を
用いることが平滑性付与の点から好ましい。上記植物系
ワックス単独としては、カルナバワックスまたはキャン
デリラワックスを用いることが好ましい。また、上記植
物系ワックスと動物系ワックスと鉱物系ワックスの混合
ワックスとしては、植物系ワックスとしてカルナバワッ
クス、キャンデリラワックスを用い、動物系ワックスと
して蜜ロウを用い、鉱物系ワックスとしてモンタンワッ
クスを用いる混合ワックスが好ましい。
【0057】上記ワックスエマルジョン(E成分)の配
合割合は、前記水溶性ウレタン樹脂を主成分とする樹脂
成分に対して、上記E成分を、固形分換算で、上記樹脂
成分とE成分との合計中30%以下に設定する。より好
ましくは2〜20%である。すなわち、E成分の配合割
合が30%を超えると、水溶性ウレタン樹脂を主成分と
する樹脂成分の割合が少なくなり、合成繊維経糸間の集
束性が低下し製織時に毛羽立ちや糸切れが生じる傾向が
みられるからである。
【0058】このようにして得られる水溶性ウレタン樹
脂を主体とする樹脂成分と平滑剤成分の混合物である合
成繊維経糸用糊剤は、合成繊維に対する集束性に優れ、
充分な耐水性と精練性との両立がなされ、かつ良好な平
滑性(耐擦過性)を示す。
【0059】本発明の合成繊維経糸用糊剤によって処理
される対象となる合成繊維マルチフィラメントとして
は、特に限定するものではないが、ポリエステルやナイ
ロンの50デニール/24フィラメント〜75デニール
/96フィラメントの生糸があげられる。そして、その
糸として交絡糸や加工糸、また撚糸等どのようなもので
あってもよい。
【0060】そして、上記合成繊維マルチフィラメント
に対する本発明の合成繊維経糸用糊剤の付着量(使用
量)は、生糸の場合、好ましくは2.0〜10.0%に
設定することが好ましく、特に好ましくは4.0〜9.
0%である。また、糸が、交絡糸や加工糸、また撚糸の
場合は、付着量は、0.5〜5.0%に設定することが
好ましく、特に好ましくは1.0〜3.0%である。す
なわち、糊剤の付着量が、生糸の場合2.0%未満、交
絡糸や加工糸、また撚糸の場合0.5%未満では、フィ
ラメント間の集束性が低下して、製織時に毛羽立ちが生
じ易い。また、付着量が生糸の場合10.0%未満、交
絡糸や加工糸、また撚糸の場合5.0%を超えると、巻
き取った糸を解舒する際に糸間で膠着が起こり糸切れが
生じたり、さらに製織時に糊落ちして織機汚染を誘発す
ることがある。
【0061】
【発明の効果】以上のように、本発明の合成繊維経糸用
糊剤は、特定の組成から構成されたウレタンプレポリマ
ーからなる特殊な水溶性ウレタン樹脂を主成分とする。
このため、従来の糊剤では得られなかった耐水性と精練
性の両立という相反する特性を同時に満足することがで
きる。また、耐擦過性にも優れており、最近の製織の高
速化にも対応し、高品位の織物が得られ、従来の糊剤の
使用により生じた問題が解決され、製織効率の向上化が
実現する。さらに、上記水溶性ウレタン樹脂とともに、
前記のワックスエマルジョンを特性の割合で配合するこ
とにより、上記各特性が一層向上し、WJLでの高速製
織に充分対応した合成繊維経糸用糊剤が得られる。
【0062】つぎに、実施例について比較例と併せて示
す。
【0063】まず、水溶性ウレタン樹脂を作製した。 〔水溶性ウレタン樹脂aの作製〕温度計、窒素ガス導入
管、攪拌機および還流冷却機を備えた4つ口反応器中
で、窒素ガスを導入しながら、ポリブチレンアジペート
(平均分子量1000)100重量部(以下「部」と略
す)、1,4−シクロヘキサンジメタノール37部、ト
リレンジイソシアネート92部、メチルエチルケトン1
15部を仕込み、75℃で45分間反応させた後、ジメ
チロールプロピオン酸19部を添加して約1時間反応さ
せた。このようにして未反応イソシアネート基を約1%
含むウレタンプレポリマーを合成した(ウレタンプレポ
リマー中のウレタン結合含有量24%)。そして、この
ウレタンプレポリマーを50℃まで冷却してブタノール
を4.5部添加し、さらにトリエチルアミンを14.5
部添加した。さらに、水を790部添加して混合乳化し
た後、50℃下でエバポレーターで脱溶媒し、固形分3
0%に調整して乳白色の水溶性ウレタン樹脂aを得た。
【0064】〔水溶性ウレタン樹脂b〜lの作製〕下記
の表1および表2に示す各成分を用い、上記水溶性ウレ
タン樹脂aと同様の操作を行うことにより水溶性ウレタ
ン樹脂b〜lを得た。なお、中和および封鎖剤によって
処理する前のウレタンプレポリマー中のウレタン結合含
有量を同表に示す。なお、表1および表2中におけるB
Aはブチレンアジペート(分子量1000)、MPD
/TPAは3−メチル−1,5−ペンタジオールのテレ
フタレート(分子量1000)、BAはブチレンアジ
ペート(分子量500)、BAはブチレンアジペート
(分子量2500)、1,4−BDは1,4−ブタンジ
オール、MPDは3−メチル−1,5−ペンタジオー
ル、ビスフェノールA−2EOはビスフェノールAのエ
チレンオキサイド2付加物TMPはトリメチロールプロ
パン、DMPAはジメチロールプロピオン酸、TDI−
80は、2,4−トリレンジイソシアネートと2,6−
トリレンジイソシアネートの混合物〔2,4−トリレン
ジイソシアネート/2,6−トリレンジイソシアネート
=80/20(重量比)〕、TEAはトリエチルアミ
ン、NH4 OHはアンモニア水、1,4−CHDMは
1,4−シクロヘキサンジメタノールを表す。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
【従来例1】市販のWJL用アクリル系糊剤(互応化学
工業社製、プラスサイズJ−96)を希釈して固形分1
0%溶液とした合成繊維経糸用糊剤を調整した。
【0068】
【従来例2】市販の水溶性ポリエステル系糊剤(東亜合
成化学社製、ペスポールR)を準備した。
【0069】つぎに、水溶性ウレタン樹脂を主成分とす
る樹脂成分と、ワックスエマルジョン(平滑剤成分)を
混合した合成繊維経糸用糊剤の実施例および比較例につ
いて述べる。
【0070】〔ワックスエマルジョンの調製〕下記の表
3に示す各成分を同表に示す割合で配合して溶融し、こ
れに乳化剤として同表に示す成分を同表に示す割合添加
した。そして、これに温水(85℃)を添加し乳化温度
80℃を保持して固形分濃度20%に希釈することによ
りワックスエマルジョンE1〜E2を調製した。
【0071】
【表3】
【0072】
【実施例1〜14、比較例1〜5】上記のようにして得
られたワックスエマルジョンと、前記で作製した水溶性
ウレタン樹脂とを下記の表4〜表6に示す配合割合で配
合し混合することにより合成繊維経糸用糊剤を得た。
【0073】
【表4】
【0074】
【表5】
【0075】
【表6】
【0076】このようにして得られた実施例品、比較例
品、従来例品を用い、これら糊剤を付着させた糸(糊付
け糸)を作製した。そして、ポリエステルマルチフィラ
メント糸(70デニール/24フィラメント:無撚糸)
に対して上記糊剤を純分10%に設定して、これをKH
Sユニバーサルサイザーを用いてポリエステル糸に糊付
け加工した。一方、上記糊付け糸を経糸として、緯糸に
はポリエステルマルチフィラメント(70デニール/2
4フィラメント:無撚糸)を使用して、WJL(津田駒
工業社製、ZW−303、経糸6690本、織り幅17
3cm)でポリエステル・タフタを速度750rpmで
50mを1疋として200疋製織した。そして、この糊
付け糸および製織した織物について下記に示す特性を下
記に示す方法で測定・評価した。その結果を後記の表7
〜表10に示す。
【0077】まず、糊付け加工および糊付け糸の特性
を、実験室および工場の二通りについて行った。
【0078】糊付け試験 〔実験室加工〕実験室で糊付け加工を行い、糊付着量、
抱合力試験、耐水性試験、精練性試験、粘着性試験の5
点について評価した。なお、使用した機器はカキノキ社
製のKHSユニバーサルサイザーを用い、糊付け速度を
250m/分で行った。
【0079】〔工場加工〕工場で糊付け加工を行い、糊
付着量、抱合力試験、耐水性試験、精練性試験、粘着性
試験の5点について評価した。なお、使用した機器は津
田駒工業社製のサイザーKS−200を用い、乾燥を2
−チャンバー、2−ドラム(チャンバー120〜130
℃、ドラム100℃)で行い、糊付け速度を120m/
分で行った。また、製織を、津田駒工業社製のウォータ
ージェットルームZW−303を用い、製織速度750
rpmの高速で行った。
【0080】糊付け糸の評価方法
【0081】〔糊付着量〕糊付け糸およびブランク糸を
100倍量の精練浴〔精練剤ダイサーフWS−50(第
一工業製薬社製)/スカム分散剤サイゾールLM(第一
工業製薬社製)/水酸化ナトリウム=見掛け2.0(g
/l)/0.5(g/l)/0.5(g/l)の構成〕
中で90℃×10分を2回繰り返した後、湯洗、水洗、
乾燥して、糸重量を測定した。そして、糊付け糸と糊抜
き糸の重量差、および糊付け糸とブランク糸の重量差に
よって糊の付着量を求めた。
【0082】〔抱合力試験(集束性と平滑性)〕20
℃、75%RHの雰囲気で、TM式抱合力試験器を用い
て糊付け糸1本当たり100gの荷重をかけた状態で摩
擦し、糸割れを起こすまでの回数をカウントした。
【0083】〔耐水性試験〕糊付け糸を100倍量の水
道水(20℃)中で10分間攪拌した後、糊付け糸の重
量から糊落ち量を測定した。そして、(糊落ち量/付着
量)×100を水浴での脱糊率として耐水性の指標とし
た。
【0084】〔精練性試験〕糊付け糸およびブランク糸
を100倍量の精練浴〔精練剤ダイサーフWS−50
(第一工業製薬社製)/スカム分散剤サイゾールLM
(第一工業製薬社製)/水酸化ナトリウム=見掛け2.
0(g/l)/0.5(g/l)/0.5(g/l)の
構成〕中で90℃×1分間攪拌した後、糊付け糸の重量
から糊落ち量を測定した。そして、糊付け糸とブランク
糸の重量差も考慮して、(糊落ち量/付着量)×100
を精練浴での脱糊率として精練性の指標とした。
【0085】〔粘着性〕糊付け糸を糸速50m/分、走
行張力30gでボビンに巻取り、25℃×75%RHの
条件下で24時間放置した後、糸−糸間の粘着性を観察
した。その結果、粘着性がないものを◎、粘着性が殆ど
ないものを○、粘着性が少しあるものを△、粘着性が多
分にあるものを×とし4段階にて評価した。
【0086】〔糊落ち性〕ウォータージェットルーム
(津田駒工業社製、ZW−303)でナイロン・タフタ
を速度750rpmで10000m走行させて製織した
ときの糊落ちの程度を観察した。その結果、糊落ちが全
くないものを◎、糊落ちが殆どないものを○、糊落ちが
少しあるものを△、糊落ちが多分になるものを×とし4
段階にて評価した。
【0087】〔A反率〕ウォータージェットルーム(津
田駒工業社製、ZW−303)でポリエステル・タフタ
を速度750rpmで10000m走行させて製織した
ときの織布中のA反の割合(%)を表示した。なお、A
反とは毛羽立ち、糸切れのない織布をいう。
【0088】〔稼働率〕ウォータージェットルーム(津
田駒工業社製、ZW−303)で製織にかかった全時間
から、製織中にトラブル等で織機が停滞した時間を差し
引いた、実働製織時間の割合(%)を表示した。
【0089】
【表7】
【0090】
【表8】
【0091】
【表9】
【0092】
【表10】
【0093】上記表7〜表10の結果から明らかなよう
に、実施例では、糊付け加工(ラボ試験)における糊付
け糸は良好な耐水性と精練性を有し、充分な抱合力も示
した。また、工場試験においては、製織中の糊落ちもな
く、また毛羽立ちも殆ど生じずA反率も97%以上と非
常に高い数値が得られた。また、織機稼働率も97%以
上と良好な結果が得られた。これに対して、比較例およ
び従来例では、抱合力が弱いか、多少の粘着が確認され
た。
【0094】
【実施例15】ナイロンマルチフィラメント糸(50デ
ニール/24フィラメント:無撚糸)に対して、実施例
1品の水溶性ウレタン樹脂を固形分として9.0%、ワ
ックスエマルジョンE1を固形分として1.0%配合し
た合成繊維経糸用糊剤(固形分10.0%溶液)を作製
した。そして、これをワーピングサイザーKS−200
を使用して糊付け加工した。
【0095】この糊付け糸を経糸として、緯糸にはナイ
ロンマルチフィラメント糸(50デニール/24フィラ
メント:無撚糸)を使用して、WJL(津田駒工業社
製、ZW−303、経糸6690本、織り幅173c
m)でナイロン・タフタを速度750rpmで50mを
1疋として200疋製織した。そして、この糊付け糸お
よび製織した織物について、下記の表11に示す特性を
前記と同様の方法に従い測定・評価した。その結果を同
表に示す。
【0096】
【比較例6】市販のWJL用アクリル系糊剤(互応化学
工業社製、プラスサイズJ−96)を希釈して固形分1
0%溶液とした従来例1品である合成繊維経糸用糊剤を
準備した。そして、上記実施例17と同様にして糊付け
加工および製織を行った。そして、この糊付け糸および
製織した織物について、下記の表11に示す特性を前記
と同様の方法に従い測定・評価した。その結果を同表に
示す。
【0097】
【表11】
【0098】上記表11の結果から明らかなように、、
実施例15は、製織中の落ち糊もなく、また毛羽立ちも
なくA反率は99%の高い値を示した。また、織機稼働
率も99%であった。これに対して、比較例6は、筬や
綜絖に若干の落ち糊が確認された。また、A反率が94
%、織機稼働率が95%と実施例15と比べて低い値で
あった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平4−142385(JP,A) 特開 昭51−116247(JP,A) 特開 平6−33377(JP,A) 特開 昭51−49992(JP,A) 特開 平4−222802(JP,A) 特開 平10−25664(JP,A) 特許2851814(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D06M 13/00 - 15/72 Fターム(4L033)

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記のウレタンプレポリマー(X)の
    (B)成分に由来するペンダント状カルボキシル基が中
    和・親水化され、さらに未反応イソシアネート基が封鎖
    剤によって処理された水溶性ウレタン樹脂を主成分とす
    ることを特徴とする合成繊維経糸用糊剤。 (X)下記の(Y)および(Z)を備えたウレタンプレ
    ポリマー。 (Y)下記の(A)成分から誘導される構造単位がウレ
    タンプレポリマーの20〜60重量%、下記の(B)成
    分および(C)成分から誘導される構造単位がウレタン
    プレポリマーの15〜35重量%、下記の(D)成分か
    ら誘導される構造単位がウレタンプレポリマーの25〜
    60重量%を占めるように設定されている。 (A)分子量500〜2500の高分子ジオール。 (B)ペンダント状カルボキシル基を有するジオール。 (C)上記(B)成分以外の低分子量ポリオール。 (D)ジイソシアネート。 (Z)ウレタン結合(−NHCOO−)含量が20〜3
    5重量%に設定されている。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の合成繊維経糸用糊剤に、
    下記の(E)成分が配合された合成繊維経糸用糊剤であ
    って、上記(E)成分の配合割合が、固形分換算で、水
    溶性ウレタン樹脂を主成分とする樹脂成分と(E)成分
    との合計中30重量%以下に設定されていることを特徴
    とする合成繊維経糸用糊剤。 (E)下記の(a)成分を、下記の(b)成分により乳
    化して得られるワックスエマルジョン。 (a)天然ワックスおよび合成ワックスの少なくとも一
    方。 (b)非イオン活性剤およびアニオン活性剤の少なくと
    も一方。
  3. 【請求項3】 下記の(A)成分をウレタンプレポリマ
    ー全体の20〜60重量%、下記の(B)成分および
    (C)成分をウレタンプレポリマー全体の15〜35重
    量%、下記の(D)成分をウレタンプレポリマー全体の
    25〜60重量%となるよう配合し反応させて、ウレタ
    ン結合(−NHCOO−)を20〜35重量%含有する
    ウレタンプレポリマーを作製する工程と、上記ウレタン
    プレポリマー中の(B)成分に由来するペンダント状カ
    ルボキシル基を中和・親水化する工程と、ウレタンプレ
    ポリマー中の未反応イソシアネート基を封鎖剤によって
    処理する工程とを備えたことを特徴とする合成繊維経糸
    用糊剤の製法。 (A)分子量500〜2500の高分子ジオール。 (B)ペンダント状カルボキシル基を有するジオール。 (C)上記(B)成分以外の低分子量ポリオール。
    (D)ジイソシアネート。
  4. 【請求項4】 請求項3記載の合成繊維経糸用糊剤の製
    法に加えて、さらに、下記の(a)成分に対して下記の
    (b)成分を用いて乳化することによりワックスエマル
    ジョンを作製する工程と、固形分換算で、上記水溶性ウ
    レタン樹脂を主成分とする樹脂成分と上記ワックスエマ
    ルジョンとの合計中30重量%以下となるよう、上記ワ
    ックスエマルジョンを配合する工程とを備えたことを特
    徴とする合成繊維経糸用糊剤の製法。 (a)天然ワックスおよび合成ワックスの少なくとも一
    方。 (b)非イオン活性剤およびアニオン活性剤の少なくと
    も一方。
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