JP3515076B2 - 超硬材表面のTi系被膜の剥離剤、剥離方法及び超硬材の再生処理方法 - Google Patents

超硬材表面のTi系被膜の剥離剤、剥離方法及び超硬材の再生処理方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、超硬材の表面に形
成されたTi(チタン)系被膜を剥離、除去するための
剥離剤及び剥離方法、並びに表面にTi系被膜が形成さ
れた超硬材の再生処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】超硬材は、WC(タングステンカーバイ
ド)又は必要に応じて添加されたTi、Ta(タンタ
ル)やNb(ニオブ)等の炭化物を3〜30%程度のC
o(コバルト)で結合したきわめて硬い材料で、切削工
具や耐摩工具あるいは特殊な構造材料として用いられて
いる。かかる超硬材においては、摩耗や傷から超硬母材
を護って寿命を向上させるべく、チタンや窒化チタン、
炭化チタン、炭窒化チタン等のチタン化合物よりなるT
i系被膜で母材表面をコーティングすることが一般的で
ある。
【0003】例えば、超硬材よりなる冷間鍛造型におい
ては、高精度を要求されることから、表面処理による母
材に対する熱的影響の少ないPVD(Physical
Vapor Deposition)処理を用いて、
Ti系被膜を型表面に形成して型寿命の向上を図ってい
る。
【0004】一方、超硬材は、鉄系材等と比べて高価で
ある。このため、特に大型で複雑形状の冷間鍛造型の場
合、型費の低減を図るべく、冷間鍛造型が摩耗、損傷す
れば、それを再生処理することが行われている。
【0005】冷間鍛造型自体の再生処理は、一般に研磨
や研削加工により行われる。しかし、Ti系被膜が表面
に形成されたままの冷間鍛造型を研削や研磨加工をしよ
うとすると、硬質膜たるTi系被膜の難削性により、そ
の作業が困難となり、作業効率が低下するとともに、高
精度な再生が困難となる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】このため、冷間鍛造型
を高精度に研磨や研削加工するには、古いTi系被膜を
剥離、除去する必要がある。
【0007】このとき、研削加工等によりTi系被膜を
除去しようとしても、上述のとおりTi系被膜の難削性
により、特に複雑形状の冷間鍛造型では、その作業が困
難となる。
【0008】一方、特開平6−228778号公報に開
示されているように、化学的処理液を用いた浸漬処理に
よれば、複雑形状の冷間鍛造型であっても、Ti系被膜
の除去が容易となる。なお、当該公報に開示された化学
的除去剤は、親プロトン性溶媒を主体とする有機溶媒、
フッ化アルカリ塩、リン酸アルカリ塩、次亜硫酸アルカ
リ、水溶性高分子、タンニン酸又は不飽和脂肪酸及び界
面活性剤を含むものである。
【0009】しかしながら、上記従来の化学的処理液を
用いた化成処理では、超硬材中のCoが溶出して表面荒
れを起こすという問題がある。しかも、表面荒れを起こ
した超硬材にそのままTi系被膜を被覆すると表面精度
が低下するため、この超硬材を再使用する場合は、表面
荒れを起こした超硬材の表面精度を回復させるべく、超
硬材表面を研磨や研削加工等することが必要となる。
【0010】さらに、上記従来の化学的処理液を用いた
化成処理は、数十時間以上という長時間の処理時間を要
するという問題もある。
【0011】本発明は上記実情に鑑みてなされたもので
あり、(1)超硬材中のCoの溶出を抑えて表面荒れを
効果的に抑えることができるとともに従来と比べてTi
系被膜の剥離処理時間の短縮化を図ることができる超硬
材表面のTi系被膜の剥離剤を提供すること、(2)従
来と比べてTi系被膜の剥離処理時間の短縮化を図るこ
とのできる超硬材表面のTi系被膜の除去方法を提供す
ること、並びに(3)Ti系被膜を除去した後に超硬材
表面を再度研磨、研削することを不要にするとともに、
従来と比べてTi系被膜の剥離処理時間を短縮化して、
再生処理工程の簡素化及び処理時間の短縮化を図ること
のできる超硬材の再生処理方法を提供することを解決す
べき技術課題とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記(1)の課題を解決
する本発明の超硬材のTi系被膜の剥離剤は、過酸化水
素、水酸化アルカリ及びアミノカルボン酸塩を含み、超
硬材の表面に形成されたTi系被膜を剥離する剥離剤で
あって、酒石酸塩及び安息香酸塩のうちの少なくとも一
種を含むことを特徴とするものである。
【0013】この剥離剤によれば、超硬材中のCoの溶
出を抑えて表面荒れを効果的に抑えつつ、超硬材表面に
形成されたTi系被膜を確実に剥離、除去することがで
きる。しかも、この剥離剤を用いた場合、0.5〜1.
0μm/時間の除去速度でTi系被膜を剥離、除去する
ことができ、従来と比べてTi系被膜の剥離処理時間の
短縮化を図ることが可能となる。
【0014】好適な態様において、前記酒石酸塩及び安
息香酸塩のうちの少なくとも一種の含有量は1〜10m
ass%である。
【0015】好適な態様において、前記酒石酸塩は酒石
酸カリウムナトリウムである。
【0016】好適な態様において、前記安息香酸塩は安
息香酸ナトリウムである。
【0017】上記(2)の課題を解決する本発明の超硬
材表面のTi系被膜の剥離方法は、過酸化水素、水酸化
アルカリ及びアミノカルボン酸塩を含み、さらに酒石酸
塩及び安息香酸塩のうちの少なくとも一種を含む剥離剤
中に、表面にTi系被膜が形成された超硬材を浸漬し
て、該Ti系被膜を剥離、除去することを特徴とするも
のである。
【0018】この剥離方法によれば、従来と比べて処理
時間の短縮化を図ることができるとともに、超硬材中の
Coの溶出を抑えて表面荒れを効果的に抑えつつ、超硬
材表面に形成されたTi系被膜を確実に剥離、除去する
ことができる
【0019】好適な態様において、前記Ti系被膜を
0.5〜1.0μm/時間の除去速度でTi系被膜を剥
離、除去する。この態様によれば、0.5〜1.0μm
/時間の除去速度でTi系被膜を剥離、除去するので、
従来と比べてTi系被膜の剥離処理時間の短縮化を図る
ことが可能となる。
【0020】上記(3)の課題を解決する本発明の超硬
材の再生処理方法は、表面にTi系被膜が形成されたT
i系被膜付の超硬材の再生処理方法であって、表面に形
成されたTi系被膜のみが損傷し、該Ti系被膜が形成
された超硬材表面は損傷していない状態にあるTi系被
膜付の超硬材を、過酸化水素、水酸化アルカリ及びアミ
ノカルボン酸塩を含み、さらに酒石酸塩及び安息香酸塩
のうちの少なくとも一種を含む剥離剤中に浸漬して、該
Ti系被膜を剥離、除去する除去工程と、上記Ti系被
膜が除去された上記超硬材の表面に新たなTi系被膜を
形成する被膜形成工程とを順に実施することを特徴とす
るものである。
【0021】この超硬材の再生処理方法は、表面に形成
されたTi系被膜のみが損傷し、該Ti系被膜が形成さ
れた超硬材表面は損傷していない状態で、Ti系被膜を
剥離、除去するものである。しかも、上記特定の剥離剤
を用いることで、超硬材中のCoの溶出を抑えて表面荒
れを効果的に抑えつつ、超硬材表面に形成されたTi系
被膜を確実に剥離、除去することができる。このため、
Ti系被膜を除去した後に、超硬材表面の損傷、摩耗や
表面荒れを回復すべく超硬材表面に研磨や研削加工等を
施すことが不要となり、再生処理工程の簡素化を図るこ
とができる。また、上記特定の剥離剤を用いることで、
0.5〜1.0μm/時間の除去速度でTi系被膜を剥
離、除去することができるので、従来と比べてTi系被
膜の剥離処理時間の短縮化を図って再生処理時間の短縮
化を図ることが可能となる。
【0022】好適な態様において、前記超硬材は冷間鍛
造型である。冷間鍛造型は大型・複雑化する場合が多
く、型費低減の観点より、型寿命の向上及び再生処理の
簡易・効率化の要望が特に強い。本発明の超硬材の再生
処理方法を利用することにより、かかる要望に応えるこ
とができ、したがって型費低減を効果的に図ることが可
能となる。
【0023】
【発明の実施の形態】請求項1〜8に記載された本発明
に係る剥離剤(以下、単に「本発明に係る剥離剤」とい
う)は、過酸化水素、水酸化アルカリ及びアミノカルボ
ン酸塩を含む。
【0024】過酸化水素は、Ti系被膜を酸化して、T
iの酸化物を強制的に形成するために含有されている。
過酸化水素の含有量が多すぎると、量に見合うだけの効
果が無く不経済となり、少なすぎると酸化効果が得られ
なくなる。このため、過酸化水素の含有量は、35%溶
液の過酸化水素水を添加する場合なら、3〜80mas
s%とすることが好ましい。
【0025】水酸化アルカリは、Ti系被膜が酸化され
たものを、アミノカルボン酸塩がTiを錯形成により溶
解する環境を整えるために含有されている。水酸化アル
カリの含有量が多すぎると、他の有機酸などの溶解を阻
害し、少なすぎるとアミノカルボン酸塩のTi溶解速度
が低下することになる。このため、水酸化アルカリの含
有量は、0.1〜5mass%とすることが好ましい。
この水酸化アルカリとして、具体的には水酸化ナトリウ
ム、水酸化カリウムや水酸化リチウム等を用いることが
できる。
【0026】アミノカルボン酸塩は、過酸化水素で酸化
されたTiを剥離液中へ錯体形成により溶解するために
含有されている。アミノカルボン酸塩の含有量が多すぎ
ると、添加しただけの効果が無く、また溶けなくなり少
なすぎると溶解速度が低下する。このため、アミノカル
ボン酸塩の含有量は、0.1〜15mass%とするこ
とが好ましい。このアミノカルボン酸塩として、具体的
には、ニトリロ三酢酸(NTA)、エチレンジアミン四
酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DT
PA)やトリエチレンテトラミン六酢酸の各ナトリウム
塩等を用いることができる。
【0027】また、本発明に係る剥離剤は、過酸化水素
の安定性を得る観点より、必要に応じて珪酸塩を含有さ
せることができる。珪酸塩の含有量が多すぎると、珪酸
ゲルの形成などの不必要な現象を生じ、少なすぎると過
酸化水素の安定性に寄与しなくなる。このため、珪酸塩
の含有量は、0.5〜5mass%とすることが好まし
い。この珪酸塩として、具体的には、オルソ珪酸ソーダ
やメタ珪酸ソーダ等を用いることができる。
【0028】本発明に係る剥離剤の最大の特徴は、酒石
酸塩及び安息香酸塩のうちの少なくとも一種を含むこと
である。酒石酸塩又は安息香酸塩を含有させることによ
り、超硬材の成分たるCoの溶出を効果的に抑制して、
超硬材の表面荒れを効果的に抑制することができる。ま
た、酒石酸塩及び安息香酸塩の双方を含有させることに
より、両者の相乗効果により、Coの溶出による超硬材
の表面荒れより効果的に抑制することができる。
【0029】酒石酸塩及び安息香酸塩のうちの少なくと
も一種の含有量が多すぎると、量に応じた効果が出ず、
不経済となり、少なすぎると上記効果が十分に期待でき
ない。このため、酒石酸塩及び安息香酸塩のうちの少な
くとも一種の含有量は、1〜10mass%とすること
が好ましい。この酒石酸塩として、具体的には、酒石酸
カリウムナトリウム、酒石酸ナトリウムや酒石酸カリウ
ム等を用いることができる。また、安息香酸塩として、
具体的には、安息香酸ナトリウムや安息香酸カリウム等
を用いることができる。
【0030】上記構成を有する本発明に係る剥離剤によ
れば、超硬材の成分たるCoの溶出による超硬材の表面
荒れを効果的に防止しつつ、超硬材の表面に形成された
Ti系被膜を確実に剥離、除去することができる。
【0031】したがって、超硬材自体が摩耗、損傷した
とき、あるいはTi系被膜のみが摩耗、損傷し、超硬材
自体は摩耗、損傷していないときに、超硬材の表面精度
を維持しつつ、超硬材表面に形成されたTi系被膜を確
実に除去することが可能となる。よって、Ti系被膜除
去後に新たなTi系被膜を再表面処理する際に、表面荒
れを回復すべく超硬材表面を研磨、研削加工等を施すこ
とが不要となる。しかも、本発明に係る剥離剤を用いた
場合、従来と比べて大きな除去速度でTi系被膜を剥
離、除去することができるので、従来と比べてTi系被
膜の剥離処理時間の短縮化を図ることが可能となる。
【0032】特に、Ti系被膜のみが摩耗、損傷し、超
硬材自体は摩耗、損傷していない状態にあるTi系被膜
付の超硬材について、本発明に係る剥離剤を用いて摩
耗、損傷したTi系被膜を剥離、除去すれば、上述のと
おり超硬材中のCoの溶出を抑えて表面荒れを効果的に
抑えつつ、超硬材表面に形成されたTi系被膜を確実
に、かつ従来と比べて短時間で剥離、除去することがで
きる。このため、超硬材自体の表面状態や表面精度を新
品時に近いものに維持することが可能となる。したがっ
て、Ti系被膜を除去した後に、超硬材表面の損傷、摩
耗や表面荒れを回復すべく超硬材表面に研磨、研削加工
等を施すことが不要となり、再生処理工程の簡素化・短
縮化を図ることができるとともに、超硬材の高寿命化を
図ることができる。
【0033】すなわち、表面にTi系被膜が形成された
Ti系被膜付の超硬材の再生処理方法であって、表面に
形成されたTi系被膜のみが損傷し、該Ti系被膜が形
成された超硬材表面は損傷していない状態にあるTi系
被膜付の超硬材を本発明に係る剥離剤中に浸漬して、該
Ti系被膜を剥離、除去する除去工程と、上記Ti系被
膜が除去された上記超硬材の表面に新たなTi系被膜を
形成する被膜形成工程とを順に実施するという、超硬材
の再生処理方法によれば、超硬材の高寿命化や再生処理
の簡素化・短縮化を図ることができ、特にかかる再生処
理方法を大型・複雑化した冷間鍛造型に利用することに
より、型費を大幅に低減させることが可能となる。
【0034】なお、本発明に係る剥離剤を用いて超硬材
表面のTi系被膜を剥離、除去する際は、液温度を15
〜20℃程度とすることができ、また除去時間は被膜厚
さに応じた時間とすることができる。
【0035】
【実施例】以下、本発明の実施例について具体的に説明
する。
【0036】(実施例1)表1に示すように、35%溶
液の過酸化水素水:20mass%(以下、単に「%」
と表示する)、水酸化アルカリとしての水酸化ナトリウ
ム:3%、アミノカルボン酸塩としてのEDTA:10
%、珪酸塩としてのオルソ珪酸ソーダ:3%、酒石酸塩
としての酒石酸カリウムナトリウム:3%、安息香酸塩
としての安息香酸ナトリウム:4%及び水:残部の組成
をもつ本実施例の剥離剤を準備した。
【0037】一方、超硬材(WC:90%及びCo:1
0%の組成を持つJIS V30、東海合金(株)社
製、商品名「G3])の表面に、イオンプレーティング
法により、膜厚2μmのTi系(TiN)被膜を形成し
て、Ti系被膜付の超硬材よりなる試料No.1を準備
した。
【0038】また、超硬材(WC:85%及びCo:1
5%の組成を持つJIS V50、東海合金(株)社
製、商品名「G7」)の表面に、イオンプレーティング
法により、膜厚2μmのTi系(TiN)被膜を形成し
て、Ti系被膜付の超硬材よりなる試料No.2を準備
した。
【0039】得られた上記試料No.1及びNo.2
を、剥離剤の温度:20℃及び浸漬時間:4時間の条件
で、それぞれ上記剥離剤中に浸漬して、Ti系被膜を超
硬材表面から剥離、除去した。このときの除去速度は
0.5μm/時間であった。
【0040】(実施例2)表1に示すように、35%溶
液の過酸化水素水:20%、水酸化ナトリウム:3%、
EDTA:10%、オルソ珪酸ソーダ:3%、酒石酸カ
リウムナトリウム:3%及び水:残部の組成をもつ本実
施例の剥離剤を準備した。
【0041】そして、前記実施例1と同様のTi系被膜
付の超硬材よりなる試料No.1及びNo.2を、前記
実施例1と同様の条件で、それぞれ上記剥離剤中に浸漬
して、Ti系被膜を超硬材表面から剥離、除去した。こ
のときの除去速度は0.5μm/時間であった。
【0042】(実施例3)表1に示すように、35%溶
液の過酸化水素水:20%、水酸化ナトリウム:3%、
EDTA:10%、オルソ珪酸ソーダ:3%、安息香酸
ナトリウム:4%及び水:残部の組成をもつ本実施例の
剥離剤を準備した。
【0043】そして、前記実施例1と同様のTi系被膜
付の超硬材よりなる試料No.1及びNo.2を、前記
実施例1と同様の条件で、それぞれ上記剥離剤中に浸漬
して、Ti系被膜を超硬材表面から剥離、除去した。こ
のときの除去速度は0.5μm/時間であった。
【0044】(比較例1)表1に示すように、 35%
溶液の過酸化水素水:20%、水酸化ナトリウム:1
%、EDTA:5%、オルソ珪酸ソーダ:4%及び水:
残部の組成をもつ従来の鉄系素地用の剥離剤を準備し
た。
【0045】そして、前記実施例1と同様のTi系被膜
付の超硬材よりなる試料No.1及びNo.2を、剥離
剤の温度:20℃及び浸漬時間:4時間の条件で、それ
ぞれ上記剥離剤中に浸漬して、Ti系被膜を超硬材表面
から剥離、除去した。このときの除去速度は0.5μm
/時間であった。
【0046】
【表1】
【0047】(評価)前記実施例1〜3及び比較例1に
おいて、Ti系被膜除去後の超硬材表面における面粗度
を評価した。この評価は、触針電気式測定器を用い、J
IS B 0601の表示法に従って、中心線平均粗さ
(Ra)、最大高さ(Rmax)、十点平均粗さ(R
z)により評価した。その結果を表2に示す。なお、T
i系被膜を形成する前の新品の超硬材(G3、G7)に
おける面粗度の評価結果も表2に併せて示す。
【0048】
【表2】
【0049】表2から明らかなように、酒石酸塩として
の酒石酸カリウムナトリウム及び安息香酸塩としての安
息香酸ナトリウムのうちの少なくとも一方を含む実施例
1〜3の剥離剤は、酒石酸塩及び安息香酸塩のいずれも
含まない比較例1の剥離剤と比べて、Ti系被膜除去後
の超硬材表面の面粗度低下が半分以下程度に軽減した。
特に、酒石酸塩及び安息香酸塩の双方を含む実施例1の
剥離剤は、両者の相乗効果により、Ti系被膜除去後の
超硬材表面の面粗度低下が格段と軽減した。
【0050】(実施例4)前記表1に組成を示す前記実
施例1の剥離剤と同様の剥離剤を準備した。
【0051】一方、超硬材(WC:88%及びCo:1
2%の組成を持つJIS V40、東海合金(株)社
製、商品名「G6])の表面に、イオンプレーティング
法により、膜厚2μmのTi系(TiN)被膜を形成し
て、Ti系被膜付の超硬材よりなる試料No.3を準備
した。
【0052】得られた上記試料No.3を、剥離剤の温
度:20℃及び浸漬時間:4時間の条件で、上記剥離剤
中に浸漬して、Ti系被膜を超硬材表面から剥離、除去
した。このときの除去速度は0.5μm/時間であっ
た。
【0053】(比較例2)前記比較例1と同様の剥離剤
を準備した。
【0054】そして、前記実施例4と同様のTi系被膜
付の超硬材よりなる試料No.3を、剥離剤の温度:2
0℃及び浸漬時間:4時間の条件で、上記剥離剤中に浸
漬して、Ti系被膜を超硬材表面から剥離、除去した。
このときの除去速度は0.5μm/時間であった。
【0055】(評価)前記実施例4及び比較例2におい
て、Ti系被膜除去後の超硬材表面における面粗度を前
記と同様に評価した。その結果を表3に示す。なお、T
i系被膜を形成する前の新品の超硬材(G6)における
面粗度の評価結果も表3に併せて示す。
【0056】
【表3】
【0057】(実施例5)超硬材(WC:75%及びC
o:25%の組成を持つJIS V60、住友電工
(株)社製、商品名「G8])よりなる所定形状の冷間
鍛造型を準備し、この型表面に、イオンプレーティング
法により、膜厚2μmのTi系(TiCN)被膜を形成
して、Ti系被膜付の超硬材よりなる冷間鍛造型を製造
した。
【0058】この冷間鍛造型を用いて、図1に示すよう
に、所定形状の歯形1を有する歯形粗部品10を冷間鍛
造した。なお、この歯形粗部品10は、外ヘリカルギヤ
付の粗部品である。
【0059】得られた歯形粗部品10の粗材精度を評価
した。この評価は、歯形1の図1に示すA断面、B断面
及びC断面の各測定位置で、図2に示す歯断面形状2の
L面及びR面における歯形誤差傾き、歯すじ誤差傾き及
びOBD(オーバーボールダイアメター)について、試
料数:N=5で、平均値、最大値及び最小値を測定する
ことにより行った。その結果を図3〜図5にそれぞれ示
す。なお、歯形誤差傾きとは圧力角度誤差量のことをい
い、歯すじ誤差傾きとはねじれ角度誤差量のことをい
い、OBDとはボールを相対する歯溝に挿入したときの
2つのボール間の外径のことをいう。
【0060】また、上記冷間鍛造を100〜1000回
程度繰り返した後、以下に示す再生処理を行うことを4
回繰り返した。すなわち、Ti系被膜のみが損傷し、該
Ti系被膜が形成された鍛造型表面は損傷していない状
態にある冷間鍛造型を、剥離剤の温度:20℃及び浸漬
時間:4時間の条件で、前記実施例1の剥離剤中に浸漬
して、Ti系被膜を型表面から剥離、除去した。このと
きの除去速度は0.5μm/時間であった。その後、上
記と同様の条件で型表面に新たなTi系被膜を形成し
た。
【0061】そして、再生処理を繰り返すたびに、上記
と同様に、冷間鍛造した歯形粗部品10について粗材精
度を評価した。その結果を図3〜図5に併せて示す。
【0062】図3に示す歯形誤差傾きについては、3μ
m程度の誤差は発生するが、これは要求品質の規格であ
る20μmの範囲内であり、影響は少ない。
【0063】図4に示す歯すじ誤差傾きについては、5
μm程度の誤差は発生するが、これは要求品質の規格で
ある22μmの範囲内であり、影響は少ない。
【0064】図5に示すOBDについては、再生処理前
の新作品とほぼ同程度の精度であり、勿論要求品質の規
格である0.07μmの範囲内であった。
【0065】したがって、本実施例における再生処理方
法によれば、再生処理を繰り返しても、しかも型面を研
磨、研削加工等することなく、冷間鍛造型の型面精度を
良好に維持可能であることが確認できた。
【0066】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明に係る剥離
剤によれば、超硬材成分たるCoの溶出による表面荒れ
を抑えつつ、Ti系被膜を確実に、かつ、迅速に除去す
ることが可能となる。
【0067】また、Ti系被膜のみが損傷し、該Ti系
被膜が形成された超硬材表面は損傷していない状態で、
該Ti系被膜を本発明に係る剥離剤で剥離、除去すれ
ば、その後に超硬材表面を研磨、研削加工することな
く、新たなTi系被膜を再表面処理しても、高い表面精
度を維持することができる。
【0068】したがって、超硬材の高寿命化や再生処理
の簡素化・短縮化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例5に係り、歯形粗部品の断面図であ
る。
【図2】 実施例5に係り、上記歯形粗部品の歯断面形
状を示す部分斜視図である。
【図3】 実施例5に係り、歯形粗部品の歯形誤差傾き
の評価結果を示す図である。
【図4】 実施例5に係り、歯形粗部品の歯すじ差傾き
の評価結果を示す図である。
【図5】 実施例5に係り、歯形粗部品のOBDの評価
結果を示す図である。
【符号の説明】
10…歯形粗部品 1…歯形
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 磯部 活之 愛知県刈谷市野田町場割50番地 ユケン 工業株式会社内 (56)参考文献 特開 平5−112885(JP,A) 特開 平7−278848(JP,A) 特開 平10−251874(JP,A) 特開 昭63−202489(JP,A) 特開 平1−272785(JP,A) 特開 平11−827(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23F 1/00 C23F 1/44

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 過酸化水素、水酸化アルカリ及びアミノ
    カルボン酸塩を含み、超硬材の表面に形成されたTi系
    被膜を剥離する剥離剤であって、 酒石酸塩及び安息香酸塩のうちの少なくとも一種を含む
    ことを特徴とする超硬材表面のTi系被膜の剥離剤。
  2. 【請求項2】 前記酒石酸塩及び安息香酸塩のうちの少
    なくとも一種の含有量が1〜10mass%であること
    を特徴とする請求項1記載の超硬材表面のTi系被膜の
    剥離剤。
  3. 【請求項3】 前記酒石酸塩は酒石酸カリウムナトリウ
    ムであることを特徴とする請求項1又は2記載の超硬材
    表面のTi系被膜の剥離剤。
  4. 【請求項4】 前記安息香酸塩は安息香酸ナトリウムで
    あることを特徴とする請求項1又は2記載の超硬材表面
    のTi系被膜の剥離剤。
  5. 【請求項5】 過酸化水素、水酸化アルカリ及びアミノ
    カルボン酸塩を含み、さらに酒石酸塩及び安息香酸塩の
    うちの少なくとも一種を含む剥離剤中に、表面にTi系
    被膜が形成された超硬材を浸漬して、該Ti系被膜を剥
    離、除去することを特徴とする超硬材表面のTi系被膜
    の剥離方法。
  6. 【請求項6】 前記Ti系被膜を0.5〜1.0μm/
    時間の除去速度で剥離、除去することを特徴とする請求
    項5記載の超硬材表面のTi系被膜の剥離方法。
  7. 【請求項7】 表面にTi系被膜が形成されたTi系被
    膜付の超硬材の再生処理方法であって、 表面に形成されたTi系被膜のみが損傷し、該Ti系被
    膜が形成された超硬材表面は損傷していない状態にある
    Ti系被膜付の超硬材を、過酸化水素、水酸化アルカリ
    及びアミノカルボン酸塩を含み、さらに酒石酸塩及び安
    息香酸塩のうちの少なくとも一種を含む剥離剤中に浸漬
    して、該Ti系被膜を剥離、除去する除去工程と、 上記Ti系被膜が除去された上記超硬材の表面に新たな
    Ti系被膜を形成する被膜形成工程とを含むことを特徴
    とする超硬材の再生処理方法。
  8. 【請求項8】 前記超硬材は冷間鍛造型であることを特
    徴とする請求項7記載の超硬材の再生処理方法。
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