JP3514944B2 - 電力系統シミュレータ - Google Patents

電力系統シミュレータ

Info

Publication number
JP3514944B2
JP3514944B2 JP13264597A JP13264597A JP3514944B2 JP 3514944 B2 JP3514944 B2 JP 3514944B2 JP 13264597 A JP13264597 A JP 13264597A JP 13264597 A JP13264597 A JP 13264597A JP 3514944 B2 JP3514944 B2 JP 3514944B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
data
time
simulator
current
calculation
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP13264597A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH10322907A (ja
Inventor
誠 大井
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Electric Corp
Original Assignee
Mitsubishi Electric Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsubishi Electric Corp filed Critical Mitsubishi Electric Corp
Priority to JP13264597A priority Critical patent/JP3514944B2/ja
Publication of JPH10322907A publication Critical patent/JPH10322907A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3514944B2 publication Critical patent/JP3514944B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Supply And Distribution Of Alternating Current (AREA)
  • Feedback Control In General (AREA)
  • Management, Administration, Business Operations System, And Electronic Commerce (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、電力系統の挙動
を模擬することによって、電力系統の挙動を実験あるい
は解析する電力系統シミュレータに関するものである。
【0002】
【従来の技術】電力系統シミュレータは、電力系統で生
起する現象を再現させることによって、電力系統の特性
や挙動を解析するための実験装置である。この電力系統
シミュレータを実際に構成する方法は、大別して3通り
の方法がある。1つ目はアナログシミュレータと呼ばれ
る方法であり、実際に電力系統の一部である電気回路を
構成して、その電気回路に通電し、その電気回路で生じ
る現象を観察することによって、実際の電力系統で生じ
る現象を推定する方法である。尚、アナログシミュレー
タは、実際の電力系統の構成要素であるアナログ装置か
ら構成される場合がある。
【0003】2つ目はディジタルシミュレータと呼ばれ
る方法であり、様々な手法によって電力系統を構成する
構成要素を数式や方程式によってモデル化し、電子計算
機によってそのモデル化に基づいた数値演算を行うこと
によって、電力系統で生起する現象を解析する。即ち計
算機による数値演算によって電力系統を模擬する方法で
ある。
【0004】3つ目の方法はハイブリッドシミュレータ
と称する方法であり、模擬対象とする電力系統を2つの
部分に分け、一方の部分をアナログシミュレータで模擬
し、他方の部分をディジタルシミュレータで模擬する方
法である。即ちアナログシミュレータとディジタルシミ
ュレータを組み合わせて全体として一つの電力系統を模
擬するシミュレーション方法である。このハイブリッド
シミュレータの場合、構成されるアナログシミュレータ
とディジタルシミュレータは、全体として一つの電力系
統を整合性をもって模擬し得るように、相互に適切に連
係される必要がある。
【0005】図11は、例えば、電学論B 平成5年
VOL113 PP855「ディジタル型リアルタイム
系総解析シミュレータの開発」に示された従来のハイブ
リッドシミュレータの連係方式を示すブロック図であ
る。図において、101〜104はアナログシミュレー
タの構成要素を表し、101は発電機、102及び10
4は母線、103は送電線である。105は、送電線1
03に流れる電流を計測する電流計測装置、106は母
線104の電圧を計測する電圧計測装置である。107
〜117はディジタル計算機におけるプロセッサの演算
によって処理が行われ、連係機能を含んだディジタルシ
ミュレータを表わす。このディジタルシミュレータは、
時間の進行を離散的に刻み時間で刻み、このタイムステ
ップ毎に所定の演算を行うことをくりかえすことによっ
て、時間の進行とともに進む電力系統の現象の進行を模
擬する演算を行う。以下ではこの刻み時間をTで表わ
す。
【0006】107、108は一定のサンプリング時間
間隔毎に、計測データをディジタルデータに変換するA
/Dコンバータであり、A/Dコンバータ107は計測
された電圧信号をディジタルデータに変換し、A/Dコ
ンバータ108は計測された電流をディジタルデータに
変換する。109はA/D変換された後の電圧の瞬時値
データを実効値データに変換する実効値変換部、110
はA/D変換された後の電流の瞬時値データを実効値デ
ータに変換する実効値変換部である。
【0007】上記実効値変換部109によって変換され
た電圧の実効値データを記号VA (t)で表わす。
【0008】ここで、tはサンプリングされた時間を表
わす。時間tでサンプリングされた実効値という概念を
説明する。瞬時値データを実効値データに変換する際に
は、一定の角度(例30°又は90°等)に換算され
た、時間差でサンプリングされた2個のサンプリング時
点での瞬時値データをもとにベクトルの絶対値と位相角
を演算する必要がある。時刻tでサンプリングされた実
効値という場合、時刻tは実効値に変換されるために用
いられた複数の瞬時データのうち、最新の瞬時値データ
のサンプリング時刻を表わす。
【0009】同様に実効値変換部110によって変換さ
れた時刻tにおける電流の実効値データを記号I
A (t)で表わす。尚、VA (t),IA (t)共に交
流をベクトルで表現したデータである。
【0010】上記A/Dコンバータ107及び108に
おけるサンプリング時間間隔は、ディジタルシミュレー
タにおける刻み時間幅Tよりも一般に細かく設定される
ことが多い。しかしながら計測された電圧、電流の実効
値データはディジタルシミュレータにおける実効値の演
算に使用されるとともに、ディジタルシミュレータはT
時間毎に演算を実施するので、実効値変換部109、1
10により出力される実効値データは時間間隔T毎に出
力される。
【0011】111はディジタルシミュレータにおける
最新刻み時間Tに対して、2個の電圧実効値データVA
(t),VA (t−T)を退避するデータ退避部、11
2は2個の電流実効値データIA (t),IA (t−
T)を退避するデータ退避部である。
【0012】113は、データ退避部111、112に
退避されたデータにより、次の計算式に従う演算によっ
てベクトルデータYD (t),ID (t)を演算する演
算部、114はノード方程式求解演算部、115はディ
ジタル側データ退避部、116は瞬時値変換部、117
はD/Aコンバータ、118はモデル演算部、119は
アンプである。尚、計算式における四則演算は複素数
(ベクトル)としての演算を表わす。 YD (t)=(IA (t)−IA (t−T))/(VA (t)−VA (t−T) ) …(1) ID (t)=IA (t)−YD (t)VA (t) …(2)
【0013】図12はハイブリッドシミュレータの模擬
対象とする電力系統の例を表わす模式図である。図にお
いて、121は発電機、122は母線、123は送電
線、124は母線である。125は124を含む部分系
統を表わす。図11に示すハイブリッドシミュレータ
は、図12における発電機121、母線122、送電線
123、母線124からなる部分を各々発電機101、
母線102及び104、送電線103からなるアナログ
シミュレータで模擬し、図12における部分系統125
をディジタルシミュレータで模擬する例を表わす。
【0014】即ち、模擬対象とする電力系統はアナログ
シミュレータによって模擬される部分とディジタルシミ
ュレータによって模擬される部分からなり、両者は共通
の母線124を共有している。
【0015】この母線124は図11におけるアナログ
シミュレータでは母線104が模擬している。この図1
1における母線104は、ハイブリッドシミュレータで
はアナログシミュレータとしてディジタルシミュレータ
の両者で模擬される。図11におけるハイブリッドシミ
ュレータでは、この母線104の電圧を決定することが
アナログシミュレータとディジタルシミュレータで全体
として図12における全電力系統を整合性をもって模擬
することに相当する。以後、母線104ないし124を
「連係点母線」と称する。図12における部分系統12
5をディジタルシミュレータで模擬するためのモデルを
「ディジタル系統」と称する。
【0016】このディジタル系統は次のノード方程式に
よって表わされるモデルである。 I=YV …(3) ここで
【数5】 は部分系統125の各々のノードに流入する注入電流を
表わす列ベクトル、
【数6】 は部分系統125の各々のノードの電圧を表わす列ベク
トル、
【数7】 は部分系統125におけるアドミタンス行列である。
【0017】なお、Nは部分系統125におけるノード
の総数である。また式(4)におけるI1 ,I2 ,…,
N 及び式(5)におけるV1 ,V2 ,…,VN は各々
ベクトル量、式(6)におけるY11,Y12…はアドミタ
ンスを表わす複素量である。式(4)、(5)、(6)
の各々は、時間的に変化するから以後時刻を表わす変数
tをつけて以下のように表わす。
【数8】
【数9】
【数10】 ディジタル系統において、図12における連係点母線1
24のノード番号を1とする。
【0018】I’(t)は式(7)においてノード番号
1のI1 (t)をI1 (t)+ID(t)に変更した列
ベクトルとする。ID (t)は式(2)である。
【数11】 また、Y’(t)はY(t)において、ノード番号1の
駆動点アドミタンスY11(t)をY11(t)+Y
D (t)に変更したアドミタンス行列とする。Y
D (t)は式(1)である。
【数12】
【0019】また、V1 (t)は連係点母線の電圧を表
わす。これを連係点電圧と称する。式(1)及び式
(2)に示されたYD (t),ID (t)は各々ディジ
タル系統から見たアナログシミュレータのアドミタンス
及びアナログシミュレータからの注入電流を表わす量で
あり、上記I’(t),Y’(t)は各々ディジタル系
統のノード方程式においてこれらを考慮していることを
表わしている。
【0020】以下、再び図11における構成要素につい
て説明する。ディジタルシミュレータにおけるディジタ
ル系統では、発電機負荷等の各々のノードに接続された
機器のモデルを、注入電流や等価アドミタンス等で表現
する。図11における118は、この発電機負荷等の時
間的変化を演算するモデル演算部である。モデル演算の
結果、該当シミュレーション時刻におけるディジタル系
統における注入電流のベクトル(式(7))及びディジ
タル系統におけるアドミタンス行列(式(9))が決ま
る。114はディジタル系統におけるノード方程式を求
解し各ノードの電圧ベクトルを決定するノード方程式求
解部である。これはディジタル系統におけるノード方程
式である次の連立方程式 I’(t)=Y’(t)V(t) …(12) を求解して列ベクトルV(t)を求め、ディジタル系統
の各ノードの電圧値を決定することである。115はデ
ィジタル系統におけるデータ退避部であり、シミュレー
ション結果として外部に出力するディジタルシミュレー
タの演算結果を退避する部分である。
【0021】ノード方程式I’(t)=Y’(t)V
(t)を求解した結果、連係点電圧V1 (t)が決ま
る。116は連係点電圧の実効値ベクトルデータを瞬時
値に変換する瞬時値変換部である。117は連係点電圧
の瞬時値データをアナログ信号に変換するD/Aコンバ
ータ、119は連係点の実際の電圧を生成するアンプで
あり、アナログシミュレータの母線114の電圧を発生
させる。なお、母線114はアナログシミュレータ側か
ら見た連係点母線である。
【0022】次に図11に示したハイブリッドシミュレ
ータにおけるディジタルシミュレータの動作を図13に
従って各タイムステップ毎の演算を説明する。即ち時刻
tにおける系統状態を演算する処理を説明する。先ず、
電圧計測部106及び電流計測部105によって計測さ
れた信号を、A/Dコンバータ107、108でA/D
変換を行う(ステップST131)。
【0023】また、これらA/D変換されたディジタル
データを実効値変換部109、110で実効値のベクト
ルデータに変換する(ステップST132)。その結
果、時刻tにおけるアナログ入力データの電圧、電流の
実効値データVA (t)IA (t)が各々出力され、こ
れらのデータはデータ退避部111、112に退避する
(ステップST133)。
【0024】次に、式(1)、式(2)に従い、ベクト
ルデータYD (t)ID (t)を演算する(ステップS
T134)。次に、ディジタルシミュレータ側でのモデ
ル演算を行い、時刻tにおけるディジタル系統の注入電
流列ベクトルデータI(t)、ディジタル系統のアドミ
タンス行列のデータY(t)を演算する(ステップST
135)。
【0025】そして、式(10)、(11)に従い、ア
ナログシミュレータにおいて連係点母線に流入する電流
を考慮した、ディジタル系統の注入電流列ベクトルデー
タI’(t)及び、連係点母線におけるアナログシミュ
レータ側の駆動点アドミタンスを考慮したアドミタンス
行列のデータY’(t)を各々演算する。しかる後、ノ
ード方程式I’(t)=Y’(t)V(t)を求解する
演算を行い、ディジタル系統の電圧分布を表わす列ベク
トルV(t)を演算する(ステップST136)。
【0026】次に、この演算結果を退避する(ステップ
ST137)。このデータを退避する目的は、シミュレ
ーション結果を外部に出力するためである。そして、連
係点の母線の実効値ベクトルを表わすデータV1 (t)
から瞬時値データを演算する(ステップST138)。
次に、この瞬時値データをD/Aコンバータ117によ
りアナログ信号に変換し(ステップST139)、この
アナログ信号に従い、アンプ119によって実際の連係
点母線の電圧が生成される。なお、上記従来例に関連す
る先行技術としては、特開平6−38372号公報があ
る。
【0027】
【発明が解決しようとする課題】従来の電力系統シミュ
レータであるハイブリッドシミュレータは以上のように
構成されているので、実際に電気的現象が生起するアナ
ログシミュレータと、ディジタル系統のモデルに従い数
値演算によって電気現象を模擬するディジタルシミュレ
ータを組み合せ、ディジタルシミュレータ側において、
連係点で計測したアナログシミュレータの電圧値・電流
値をフィードバックしながら、模擬対象とする全電力系
統の実際の電圧分布と整合性がとれた連係点電圧を決定
することによって、電力系統全体の電気的挙動を模擬す
るものである。
【0028】また、ハイブリッドシミュレータでは、デ
ィジタルシミュレータ側において、いかにして実際の電
力系統で発生する電気現象とよく一致する正確な数値デ
ータを演算するかが、肝要な点である。そのため、連係
点におけるアナログシミュレータ側の電気現象を考慮し
てノード方程式の求解を行うため、連係点におけるアナ
ログシミュレータ側の電圧VA と電流IA の特性を次の
1次式(13)で近似した特性と見なし、この式(1
3)におけるID を部分系統125における連係点母線
124の送電線123側からの注入電流と見なし、YD
を駆動点アドミタンスと見なして、ディジタル系統のノ
ード方程式を求解する。 YD =@IA /∂VA …(13) IA =ID +YDA …(14) なお、式(1)、(2)は式(13)、(14)からベ
クトルデータYD とID を演算するための式である。
【0029】以後、式(14)におけるベクトルデータ
D を「等価アドミタンス」と称する。即ち、アナログ
シミュレータの連係点で計測した電圧ベクトルVA 、電
流ベクトルIA の関係を式(14)で表わした時の電圧
ベクトルVA の係数を「等価アドミタンス」と称する。
また式(14)におけるベクトルデータID を「等価注
入電流」と称する。
【0030】従来のハイブリッドシミュレータでは、上
記等価アドミタンスYD を式(1)に従って演算してい
たため、この等価アドミタンスYD を精度よく演算する
ことができず、その結果、ハイブリッドシミュレータと
して精度よく電力系統を模擬することができないという
課題があった。
【0031】以下、何故従来のハイブリッドシミュレー
タでは等価アドミタンスYD を精度よく演算できなかっ
たかを説明する。 1.ディジタルシミュレータでは刻み時間幅Tを細分化
することにより離散化誤差が減少するので可能な限り刻
み時間幅Tは小さくとられる。しかしながら、刻み時間
幅Tを小さくすると、式(1)において、 V(t)≒V(t−T) …(15) となり、V(t)−V(t−T)はディジタルデータの
差演算において著しく桁落ちを生じて、式(1)の分母
はディジタル数値データとして非常に有効桁数が少なく
なる。分子のI(t)−I(t−T)も同様である。ま
た、分母のV(t)−V(t−T)は非常に微少量とな
る。従って式(1)は有効桁数の少ない微少量を分母に
持つため、誤差が著しく拡大されて非常に精度が悪化す
るという課題があった。
【0032】2.図1において、連係点の電圧、電流を
電流計側部105、電圧計側部106で計測するが、こ
れら計測データは一般的にノイズや高調波が混入してい
る。従って、実効値変換を経た後のアナログ入力データ
A (t)、IA (t)は、これらノイズや高調波に影
響された誤差を含み、その結果、式(1)、(2)で演
算された等価アドミタンスYD 、等価注入電流ID の精
度が悪いという課題があった。
【0033】3.式(1)は電力系統の周波数が基準周
波数に等しいことを前提として等価アドミタンスYD
求める式である。しかしながら、系統周波数が基準周波
数と異なる場合は、実効値ベクトルデータV(t)、I
(t)がベクトル図において回転するため、式(1)で
は正確に等価アドミタンスYD を演算することができ
ず、等価アドミタンスYD の精度が悪いという課題があ
った。等価アドミタンスYD の精度が悪いと、ディジタ
ル系統のノード方程式を求解する際、あたかもアナログ
シミュレータの送電線インピーダンスを誤って計測して
連係を行っているのと等価になり、ハイブリッドシミュ
レータの模擬精度が悪化するという課題があった。
【0034】この発明は上記の課題を解決するためにな
されたもので、ハイブリッドシミュレータの連係方式に
おいて、アナログシミュレータの状態を表わす「等価ア
ドミタンス」及び「等価注入電流」の計測及び演算精度
を向上させて正確にこれらの値を演算し、それによって
電力系統シミュレータの模擬精度を向上させることを目
的とする。
【0035】
【0036】
【課題を解決するための手段】 請求項記載の発明に
係る電力系統シミュレータの最小二乗法演算部は、アナ
ログシミュレータの状態を演算する該当時刻をtとし、
時刻t,t−T,t−2T,…,t−(n−1)Tで計
測されたn個の電圧データVA (t−kT)と、n個の
電流データIA (t−kT)に基づき、式
【数13】 を最小とする等価注入電流、等価アドミタンスを演算
し、ディジタル計算部は前記等価注入電流、等価アドミ
タンスのデータに基づいて電力系統の時刻tの状態を模
擬する演算を行うものである。
【0037】請求項記載の発明に係る電力系統シミュ
レータの最小二乗法演算部は、アナログシミュレータの
状態を演算する該当時刻をtとし、時刻t,t−T,t
−2T,…,t−(n−1)Tで計測されたn個の電圧
データVA (t−kT)とn個の電流データIA (t−
kT)に基づき、式
【数14】 を最小とする等価アドミタンスを演算するとともに、I
D =IA (t)−YD A (t)によって等価注入電流
を演算し、ディジタル計算部は、時刻tにおける等価ア
ドミタンスと時刻tにおける等価注入電流のデータに基
づいて電力系統の時刻tの状態を模擬する演算を行うも
のである。
【0038】請求項記載の発明に係る電力系統シミュ
レータの最小二乗法演算部は、アナログシミュレータの
状態を演算する該当時刻をtとし、時刻t,t−T,t
−2T,…,t−(n−1)Tで計測されたn個の電圧
データVA (t−kT)とn個の電流データIA (t−
kT)に基づき、式(20)
【数15】 を最小とする等価アドミタンスを演算するとともに、等
価注入演算部は、ID =IA (t)−YD A (t)に
よって等価注入電流を演算し、ディジタル計算部は、等
価アドミタンスと時刻tにおける等価注入電流のデータ
に基づいて、電力系統の時刻tの状態を模擬する演算を
行うものである。
【0039】請求項記載の発明に係る電力系統シミュ
レータは、電力系統の基準周波数からの周波数偏差を演
算する周波数偏差演算部と、アナログシミュレータにお
いて電流と電圧のベクトルデータの周波数偏差に起因す
るベクトル回転を補正演算する補正演算部とを備え、デ
ィジタル計算部は補正演算がなされた電流と電圧のデー
タに基づいてアナログシミュレータの状態量を演算して
電力系統の状態を模擬するものである。
【0040】請求項記載の発明に係る電力系統シミュ
レータは、下記(a)から(e)の演算処理を行うもの
である。 (a)電力系統の基準周波数からの周波数偏差を演算す
る。 (b)上記(1)の演算結果にローパスフィルタを施
し、その演算結果をΔfとする。 (c)時刻t,t−T,t−2T,…,t−(n−1)
Tで計測されたn個の電圧ベクトルデータVA (t),
A (t−T),VA (t−2T),…,VA (t−
(n−1)T)と、n個の電流ベクトルデータI
A (t),IA (t−T),IA (t−2T),…,I
A (t−(n−1)T)に対してk=0からn−1ま
で次の演算を施す。 V’A (t−kT)=VA (t−kT)exp(−j2πΔf(n−k)T) I’A (t−kT)=IA (t−kT)exp(−j2πΔf(n−k)T) (d)次式を最小にする等価アドミタンスを演算する。
【数16】 (e)上記(d)の演算結果を、時刻tにおけるアナロ
グシミュレータの等価的なアドミタンス量とみなして、
電力系統の時刻tの状態を演算する。
【0041】請求項記載の発明に係る電力系統シミュ
レータは、アナログシミュレータにおいて電圧と電流を
計測する計測部と、この計測部から出力された電圧デー
タと電流データ及び外部から与えられた固定の等価アド
ミダンスに基づいて等価注入電流を演算する等価注入演
算部を備え、ディジタル計算部は、前記固定の等価アド
ミタンスと前記等価注入電流のデータに基づいて電力系
統の状態を模擬する演算を行うものである。
【0042】
【0043】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.図1はこの発明の実施の形態1によるハ
イブリッドシミュレータを示すブロック図であり、図に
おいて、1〜4はアナログシミュレータの構成要素を表
し、1は発電機、2及び4は母線、3は送電線である。
【0044】5は送電線3に流れる電流を計測する電流
計測装置、6は母線4の電圧を計測する電圧計測装置で
あり、この両者5、6によって計測部を構成する。7、
8は一定のサンプリング時間間隔毎に、計測データをデ
ィジタルデータに変換するA/Dコンバータであり、A
/Dコンバータ7は計測された電圧信号をディジタルデ
ータに変換し、A/Dコンバータ8は計測された電流信
号をディジタルデータに変換する。
【0045】9はA/D変換された後の電圧の瞬時値デ
ータを実効値データに変換する実効値変換部、110は
A/D変換された後の電流の瞬時値データを実効値デー
タに変換する実効値変換部である。
【0046】11は電圧データ退避部であり、サンプリ
ングされて実効値に変換された後の最新のn個の刻み時
間分の連係点電圧ベクトルデータ VA (t),VA (t−T),VA (t−2T), …,VA (t−(n−1)T) …(16) を退避して保存しておく。尚、nは固定値であり、ディ
ジタルシミュレータにシミュレーション開始前に設定し
ておく。
【0047】tはディジタルシミュレータ側での最新演
算時刻、t−Tは1刻み前の演算時刻、t−2Tは2刻
み前の演算時刻である。最新演算時刻tにおける演算時
に、新たにデータVA (t)が演算されるので、このデ
ータVA (t)を退避し、データVA (t−nT)を破
棄することによって、常に最新のn刻み時間分のデータ
が退避される。
【0048】12は電流データ退避部であり、サンプリ
ングされて実効値に変換された後の最新のn個の刻み時
間分の連係点電流ベクトルデータ IA (t),IA (t−T),IA (t−2T), …,IA (t−(n−1)T) …(17) を退避して保存しておく。
【0049】13は、電圧データ退避部11と電流デー
タ退避部12に退避されたデータに従い、最小二乗法に
よって式(14)における等価注入電流ID と等価アド
ミタンスYD を演算する最小二乗法演算部、14はディ
ジタル計算部としてのノード方程式求解演算部、15は
ディジタル側データ退避部、16は瞬時値変換部、17
はA/Dコンバータ、18はモデル演算部、19はアン
プである。
【0050】以下、最小二乗法演算部13において、等
価注入電流ID (以下、ID と略称する)と等価アドミ
タンスYD (以下、YD と略称する)を演算する方式を
説明する。式(14)はk=0,1,…,n−1に対
し、 IA (t−kT)=ID +YDA (t−kT) …(18) が各々のkに対して高い近似精度で成立するようにID
とYD の値を求める。そのために式(18)の右辺と左
辺の差のベクトルの絶対値の二乗の和を考え、これを最
小にするようにID とYD を決める。この手法は最小二
乗法と呼ばれる手法であり、同定理論を記した公知文献
により理論を参照することができる。
【0051】以下に次式のDを最小にするようにID
D を求める方法を説明する。
【数17】 次にID 、YD 、IA (t−kT)、VA (t−kT)
を各々実数部、虚数部によって以下の様にベクトル表示
する。 ID =K+jL (K:ID の実部,L:ID の虚部) YD =G+jB (G:YD の実部,B:YD の虚部) IA (t−kT)=Ir (k)+jIi (k) Ir (k):IA (t−kT)の実部 Ii (k):IA (t−kT)の虚部 VA (t−kT)=Vr (k)+jVi (k) Vr (k):VA (t−kT)の実部 Vi (k):VA (t−kT)の虚部
【0052】次に次式(20)を実部と虚部により表現
すると、 ID +YDA (t−kT)−IA (t−kT) =K+jL+GVr (k)−BVi (k)+j(GVi (k)+BVr (k ))−Ir (k)−jIi (k) …(20) となる。
【0053】これより、Dは以下のように計算される。
【数18】 最小二乗法によってK、L、G、Bを求めるために次の
4式を満たすK、L、G、Bを求める。 ∂@D/∂K=0 ∂∂D/∂L=0 …(22) ∂∂D/∂G=0 ∂∂D/∂B=0
【0054】以下では例えば
【数19】 等と略記する。
【数20】
【0055】以上の式により、式(22)の連立一次方
程式を行列表現すると、次のようになる。
【数21】
【0056】以下に、AとUを示す。
【数22】
【数23】
【0057】図1における最小二乗法演算部13では、
データ退避部11、12に退避されたデータから式(2
5)、式(26)におけるAとUの各々の成分を演算
し、しかる後、ガウスの消去法により式(24)を求解
する演算を行って、K、L、G、Bを求める。かくして
式(19)を最小とするID とYD が最小二乗法により
演算される。
【0058】以下、実施の形態1における各タイムステ
ップ毎の処理動作を図1を参照しながら図2のフローチ
ャートについて説明する。即ち、時刻tにおける系統状
態を演算する処理を説明する。先ず電圧計測部6、電流
計測部5によって計測された電圧信号、電流信号に従い
これらアナログ入力信号をA/Dコンバータ7、8によ
ってサンプリングし、ディジタルデータに変換する。こ
れらは瞬時値データである(ステップST1)。
【0059】次にこれらの瞬時値データに従い実効値変
換部9、10により、実効値ベクトルデータを演算す
る。この結果、実効値変換部9の出力として時刻tにお
ける連係点電圧の実効値ベクトルデータVA (t)が得
られる。また、実効値変換部10の出力として時刻tに
おける連係点電流の実効値ベクトルデータIA (t)が
得られる(ステップST2)。
【0060】次に上記実効値ベクトルデータVA (t)
をデータ退避部11に退避するとともに該データ退避部
11ではn+1刻み前に退避されたデータVA (t−n
T)を破棄する。この結果、データ退避部11には、時
刻tからさかのぼってn刻み分の連係点電圧の実効値ベ
クトルデータVA (t),VA (t−T),VA (t−
2T),…,VA (t−(n−1)T)が格納されてい
る状態になる。
【0061】また、同様に上記実効値ベクトルデータI
A (t)をデータ退避部12に退避するとともに該デー
タ退避部ではn+1刻み前に退避されたデータIA (t
−nT)を破棄する。その結果データ退避部12には時
刻tからさかのぼったn刻み分の連係点電流の実効値ベ
クトルデータIA (t),IA (t−T),IA (t−
2T),…,IA (t−(n−1)T)が格納された状
態になる(ステップST3)。
【0062】次に、最小二乗法演算部13によって等価
アドミタンスYD と等価注入電流ID を演算する処理に
移る(ステップST4)。この最小二乗法演算部13の
処理では、先ず、データ退避部11に格納されているデ
ータと、データ退避部12に格納されているデータに従
い、式(25)に示した行列Aの各成分と、式(26)
に示した列ベクトルUの各成分を各々演算する。しかる
後、式(24)に示した連立一次方程式をガウスの消去
法で求解する演算を行い、式(24)におけるK、L、
G、Bを求める演算を行う。式(24)において、ID
=K+jL、YD =G+jBであったから、これにより
時刻tにおける等価アドミタンスYD (t)と等価注入
電流ID (t)が演算された。
【0063】次にモデル演算部18によってディジタル
シミュレータ側のモデル演算を行い(ステップST
5)、時刻tにおけるディジタル系統の注入電流列ベク
トルデータI(t)、及び、ディジタル系統のアドミタ
ンス行列のデータY(t)を演算する。尚、I(t)、
Y(t)は式(7)、式(9)に示す。
【0064】次にノード方程式求解演算部14におい
て、最小二乗法演算部9の出力である等価アドミタンス
D (t)、等価注入電流ID (t)と、モデル演算部
18の出力であるデータI(t)、データY(t)か
ら、各々式(10)、式(11)に従い、列ベクトルデ
ータI’(t)、アドミタンス行列のデータY’(t)
を演算する。しかる後、ガウスの消去法によってノード
方程式I’(t)=Y’(t)V(t)を求解する演算
を行い(ステップST6)、時刻tにおけるディジタル
系統の電圧分布を表わす列ベクトルデータV(t)を演
算し、この列ベクトルデータV(t)をディジタル側デ
ータ退避部15に退避する(ステップST7)。
【0065】次に連係点の母線の実効値ベクトルデータ
1 (t)(V(t)の1成分である)を瞬時値変換部
16によって瞬時値データに変換した後(ステップST
8)、A/Dコンバータ19によってA/D変換を行い
(ステップST9)、変換されたアナログ信号を発生さ
せる。このアナログ信号に従い、アンプ19によって実
際の連係点母線の電圧が生成される。これにより、ディ
ジタルシミュレータの演算結果がアナログシミュレータ
に反映される。
【0066】しかる後、シミュレーション終了かを判断
し(ステップST10)、YESであれば動作を終了
し、NOであれば、Tを加算することによって、次のタ
イムステップの演算に移行する(ステップST11)。
【0067】以上のように、実施の形態1によれば、ハ
イブリッドシミュレータにおけるディジタル系統のノー
ド方程式の入力データとして、連係点におけるアナログ
シミュレータの電圧、電流の特性を表す式IA =ID
DAにおける等価注入電流ID と等価アドミタンス
D を、サンプリングされた過去にさかのぼるn個の最
新の連係点電圧データVA (t−kT)(k=0,1,
…,n−1)とn個の最新の連係点電流データIA (t
−kT)(k=0,1,…,n−1)に従って、これら
多数のデータに従って最小二乗法により推定演算を行っ
て求めるので、等価注入電流ID と等価アドミタンスY
D の推定精度が向上する。また、最小二乗法を用いるこ
とにより、ノイズの混入、A/Dコンバータの有効桁数
不足、数値演算上の桁落ちの誤差要因を排除することが
できる。
【0068】従って、ID とYD の精度を確保した上で
ノード方程式の求解を行うので、シミュレーションの演
算精度を向上させ、ハイブリッドシミュレータの模擬精
度を向上させるという効果がある。
【0069】実施の形態2.実施の形態1ではID とY
D の両方を最小二乗法で求め、これらをノード方程式へ
の入力としたが、最小二乗法による演算結果の等価注入
電流ID は破棄し、そのかわりに最小二乗法による演算
結果の等価アドミタンスYD と連係点の電圧・電流デー
タとしての最新のサンプリングデータVA (t),IA
(t)を用いて次式によって等価注入電流ID を演算す
る方式でもよい。 ID =IA (t)−YDA (t) …(27)
【0070】実施の形態2はこの方式に従って等価注入
電流ID を演算し、ディジタル系統のノードアドミタン
ス方程式に入力するアルゴリズムを採用したものであ
る。図3は実施の形態2によるハイブリッドシミュレー
タの構成を示すブロック図を示すもので、図1に示す実
施の形態1と同一部分には同一符号を付して重複説明を
省略する。図3において、31は等価注入電流ID の演
算部である。
【0071】次に実施の形態2の動作の概略を図4のフ
ローチャートについて説明する。先ず、連係点で計測さ
れた電圧信号、電流信号をA/Dコンバータ7,8によ
ってディジタルデータに変換する(ステップST1)。
次にこれらを実効値変換部9,10により実効値ベクト
ルデータに変換する(ステップST2)。実効値変換部
9の出力は時刻tにおける連係点の電圧の実効値ベクト
ルデータVA (t)であり、実効値変換部10の出力は
連係点の電流の実効値ベクトルデータIA(t)であ
る。
【0072】次に実効値ベクトルデータVA (t)のデ
ータ退避部11に退避し、実効値ベクトルデータIA
(t)をデータ退避部12に退避する(ステップST
3)。次に最小二乗法演算部13によって時刻tにおけ
る等価アドミタンスYD (t)を演算する(ステップS
T4)。この最小二乗法演算部13には、データ退避部
11に格納されている時刻tからさかのぼったn刻み分
の連係点電圧データVA (t),VA (t−T),VA
(t−2T),…,VA (t(n−1)T)と、データ
退避部12に格納されている時刻tからさかのぼったn
刻み分の連係点電流データIA (t),IA (t−
T),IA (t−2T),…,IA (t(n−1)T)
が各々入力される。
【0073】最小二乗法演算部13において等価アドミ
タンスYD を演算する処理内容は、実施の形態1におけ
る最小二乗法演算の処理内容と同一であり、重複説明を
省略する。しかしながら、実施の形態1では最小二乗法
により等価アドミタンスYDとともに等価注入電流ID
を演算したが、この等価注入電流は以後の演算では使用
されずに破棄される。次に実効値変換部9の出力である
A (t),実効値変換部10の出力であるIA
(t),最小二乗法演算部の出力であるYD (t)を各
々ID 演算部31に入力する。しかる後、ID 演算部3
1において、式(27)によって時刻tにおける等価注
入電流ID (t)を演算する(ステップST12)。
【0074】次にモデル演算部18において、ディジタ
ル系統側の時刻tにおける注入電流列ベクトルI(t)
と、アドミタンス行列Y(t)を演算し(ステップST
5)、ノード方程式求解部14にID 演算部31の演算
結果ID (t)、最小二乗法演算部13の演算結果YD
(t)、モデル演算部18の演算結果I(t),Y
(t)が入力される。しかる後、ノード方程式求解部1
4によってディジタル系統の電圧分布を表す列ベクトル
データV(t)が演算される(ステップST6)。この
演算結果V(t)はディジタル側データ退避部15に退
避されるとともに(ステップST7)、連係点の電圧デ
ータV1 (t)は瞬時値変換部16(ステップST
8)、D/Aコンバータ17(ステップST9)を経
て、アンプ19によって電圧が生成され、アナログシミ
ュレータに還元される。
【0075】しかる後、シミュレーション終了かを判断
し(ステップST10)、YESであれば動作を終了
し、NOであれば、Tを加算することによって、次のタ
イムステップの演算に移行する(ステップST11)。
以上のように、実施の形態2によれば、ハイブリッドシ
ミュレータにおけるディジタル系統のノード方程式の入
力データとして、連係点におけるアナログシミュレータ
の電圧、電流の特性を表す式(14)における等価アド
ミタンスYD を、最新のn個のサンプリングタイミング
における電圧、電流データから最小二乗法によって求
め、等価注入電流ID を最新の電圧データVA (t)、
最新の電流データIA (t)によって、式(27)によ
って求めた。
【0076】以下に、この方式がハイブリッドシミュレ
ーションの模擬精度を向上させる上で何故有効であるか
を説明する。式(14)における等価アドミタンスYD
は、一般的にアナログシミュレータの送電線インピーダ
ンスを変化させない限り不変であるので、連係点電圧と
電流に関する可能な限り多くの標本データにもとづいて
最小二乗法を用いることにより等価アドミタンスYD
推定精度を向上させる事が必要である。
【0077】それに対し、等価注入電流ID はアナログ
シミュレータ側の電圧源の電圧が変化するとそれに伴っ
て変化する。これらを数式で説明すると、次のようにな
る。図1において発電機1の電圧ベクトルをE、送電線
3のインピーダンスの逆数としてのアドミタンスをYと
すると、次式が成り立つ。 (VA −E)Y=IA …(28) 従って、次式が成り立つ。 IA =−EY+YVA …(29) 式(14)と式(29)を比較すると、YD =Y,ID
=−EYであることがわかる。
【0078】発電機1の電圧Eは電力動揺等によって時
間とともに変化するから、等価注入電流ID も時間的に
変化する。また、等価アドミタンスYD は送電線アドミ
タンスYに等しい。実施の形態2では等価注入電流ID
を、最新の連係点電圧データVA (t)と最新の連係点
電流データIA (t)にもとづいて演算するため、アナ
ログシミュレータの電圧源の時間変化に即応した値を演
算することができる。即ち、アナログシミュレータ側の
状態変化に対してディジタルシミュレータの演算が高速
に追従することができる。その結果、ディジタルシミュ
レータにおける系統模擬演算と連係機能についてアナロ
グシミュレータの時間変化に対する追従性が向上し、ハ
イブリッドシミュレータの模擬精度が向上するという効
果がある。
【0079】実施の形態3.上記実施の形態2では、連
係点における電圧電流の特性を表す式(14)に従うと
仮定して、最小二乗法により等価アドミタンスYD を計
算したが、最小二乗法で入力とするn個の電圧、電流に
関するサンプリング時間t,t−T,t−2T,…,t
−(n−1)Tの時間帯での等価注入電流ID の時間変
化を、1次式でID (t)=Io −(t−T)Hと近似
し、連係点におけるアナログシミュレータ側の電圧、電
流の特性を表す式として IA (T)=Io −(t−T)H+YDA (T) t−(n−1)T≦T<t …(30) なるモデルを仮定し、最小二乗法によって等価アドミタ
ンスYD を同定する方法でもよい。
【0080】以下にその同定方式を実施の形態2と比較
しながら説明する。実施の形態2において時刻tにおけ
るディジタル系統のノード方程式を求解するためのアナ
ログシミュレータ側の等価アドミタンスYD を同定する
標本データは、以下のデータである。 VA (t),VA (t−T),VA (t−2T),…,VA (t(n−1)T) (連係点電圧データ) IA (t),IA (t−T),IA (t−2T),…,IA (t(n−1)T) (連係点電流データ)
【0081】これらに対して、本実施の形態3では、等
価注入電流が式(30)のモデルに従うとする方式のた
め、次のn個の式における右辺と左辺の差の絶対値の二
乗の和が最も小さくなるように等価アドミタンスYD
決める。
【数24】
【0082】即ち次式Dを最小にするようにYD を決め
る。
【数25】 ここで、Io ,H,YD のベクトル表示(複素数表示)
を以下の通りとする。 Io =K+jL (K:実部,L:虚部) H =C+jF (C:実部,F:虚部) YD =G+jB (G:実部,B:虚部)
【0083】式(31)に示したDが最小になるのは、
以下の式(32)が成立するときである。この式(3
2)において、左辺は各々K,L,C,F,G,Bに関
する1次式である。またK,L,C,F,G,Bの係数
はすべて標本データVA (t−kT),IA (t−k
T)(k=0,1,…,(n−1))から演算すること
ができる。
【0084】
【数26】 上記式(32)は6個の変数K,L,C,F,G,Bに
関する連立一次方程式であり、ガウスの消去法によって
求解演算を行うことによりG,Bを演算する。
【0085】以上のように、実施の形態3によれば、ハ
イブリッドシミュレータにおけるディジタル系統のノー
ド方程式の入力データを演算するために、連係点におけ
るアナログシミュレータの電圧、電流の特性を表す式に
おいて、等価注入電流の時間変化を考慮した精密なモデ
ルを採用した上で、等価アドミタンスを最小二乗法によ
り同定するので、等価アドミタンスをより精度よく演算
することができて、ハイブリッドシミュレータの模擬精
度を向上させるという効果がある。なお、上記の実施の
形態3では等価注入電流の時間変化を、時間に対する1
次式で表したモデルに従ったが、もちろん2次式で表し
たモデルを用いてもよく、より一層最小二乗法による等
価アドミタンスの推定精度を向上させることができる。
【0086】以上に示した実施の形態3では、連係点に
おけるアナログシミュレータの電圧と電流の特性を表す
式において、等価注入電流の時間変化を考慮したモデル
を採用し、最小二乗法によって等価アドミタンスを推定
したが、等価注入電流の時間変化を考慮すると、模擬対
象としている電力系統の周波数が基準周波数と一致せず
に偏差を持った場合においても、等価アドミタンスを精
度よく推定できることを、以下図1におけるアナログシ
ミュレータの電気量の関係を例にとって説明する。
【0087】電力系統の基準周波数をf0 、模擬してい
る電力系統の周波数をfとして(f≠f0 )、またはΔ
f=f0 −fとする。発電機1の電圧ベクトルをE、送
電線J1−3のアドミタンスをYとすると、図1に示し
たアナログシミュレータが接続されたハイブリッドシミ
ュレータの連係点では、等価注入電流ID は式(29)
により ID =−EY …(33) である。発電機1の電圧ベクトルEの単相モデルでの瞬
時値表示を e=e0 sin(2πft+δ) …(34) とすると e=e0 sin(2π(f0 −Δf)t+δ) =e0 sin(2πf0 t−2πΔft+δ) …(35) となり、基準周波数はf0 で実効値ベクトルEをベクト
ル表示したときの位相角は−2πΔft+δである。
【0088】これは電力系統の周波数fが基準周波数f
0 と異なる時、即ちΔf≠0のときは、電圧ベクトルE
の位相角が時間とともに変化することを意味している。
従って、式(33)より等価注入電流ID も時間ととも
に変化する。式(1)は次の2式から等価注入電流ID
を消去して等価アドミタンスYD を求めたものである。 IA (t)=ID +YDA (t) IA (t−T)=ID +YDA (t−T) …(36) 即ち、従来のハイブリッドシミュレータでは、t−Tか
らのtの時間変化において等価注入電流ID が時間的に
変化しないことを前提した式に基づいて、等価アドミタ
ンスYD を演算していたため、電力系統の周波数が基準
周波数と異なる場合や電力動揺が生じている場合等のよ
うに、等価注入電流ID が時間的に変化する場合は正確
に等価アドミタンスYD を演算できないという課題があ
った。
【0089】それに対し、実施の形態3では、アナログ
シミュレータの電圧、電流の特性を表す式において等価
注入電流ID の時間変化を考慮したモデルに従って最小
二乗法により等価アドミタンスYD の値を推定するの
で、等価アドミタンスYD を正確に推定することがで
き、ハイブリッドシミュレータの模擬精度を向上させる
効果がある。
【0090】実施の形態4.図5は実施の形態4による
ハイブリッドシミュレータの構成を示すブロック図を示
すもので、図1,図3に示す実施の形態1,2と同一部
分には同一符号を付して重複説明を省略する。図5にお
いて、51はディジタルシミュレータの系統模擬演算結
果に従い、模擬対象としている電力系統の周波数偏差を
演算する周波数偏差演算部である。ここで周波数偏差に
ついて説明する。電力系統の基準周波数をf0 とする。
実際の電力系統における周波数は、電力の需給バランス
に影響を受けて変化し、基準周波数f0 よりもややはず
れた周波数で運転される場合がある。実際の電力系統の
周波数をfとする時、Δf=f−f0 を周波数偏差と呼
ぶ。
【0091】ディジタルシミュレータにおけるディジタ
ル系統のモデルは、電圧と電流の関係式を、基準周波数
0 で静止した座標系(いわゆるクーロンの座標系)に
おいて、ベクトル表示したモデルに従って演算される。
電力系統の周波数がfのとき、電圧の瞬時値正弦波をV
sin(2πft)と表すと(tは時間を表す)、f=
0 +Δfより Vsin(2πft)=Vsin(2π(f0 +Δf)t) =Vsin(2πf0 t+2πΔft) …(37) であるから、基準周波数f0 で静止した座標系におい
て、この瞬時値正弦波を実効値ベクトルに変換すると、
位相角が2πΔftとなる。即ち実効値ベクトルの位相
角が時間とともに変化する。次にディジタルシミュレー
タの刻み時間幅をTとし系統が定常状態にあるとする。
そのとき時刻tにおける電圧ベクトルデータV(t)と
1刻み前に演算された電圧ベクトルデータV(t−T)
の各々の位相角を比較すると、周波数偏差がΔfのと
き、V(t)はV(t−T)に対して位相角が2πΔf
Tだけ進んでいる。
【0092】従って、V(t)の位相角をδ(t)、V
(t−T)の位相角をδ(t−T)と表すと、 δ(t)−δ(t−T)=2πΔfT …(38) より周波数偏差Δfは Δf=(δ(t)−δ(t−T))/2πT …(39) で演算することができる。周波数偏差演算部51ではデ
ィジタル側データ退避部15に退避された電圧ベクトル
データV(t),V(t−T)から式(39)に従って
上記周波数偏差Δfを演算する。
【0093】52はローパスフィルタであり、周波数偏
差演算部51によって演算された周波数偏差Δfの急変
成分をカットすることにより、定常周波数偏差を出力す
る。ここで、ローパスフィルタを用いて定常周波数偏差
を演算することの必要性を説明する。例として電力系統
において時刻tで事故が発生した時のように状態が急変
すると、電圧ベクトルデータV(t)はV(t−T)に
対して大きく変化し、それに伴って位相角も急変する。
このとき式(39)は周波数偏差Δfを表さずに瞬間的
に過大な値が演算されてしまい、以後の演算に使用する
ことができない。従って、ローパスフィルタ52を設け
て、定常状態にある時の周波数偏差の値を出力するよう
に構成する。
【0094】53及び54は補正演算部である。ここ
で、これら補正演算がどのような演算であるかを説明す
る。時刻tの状態をディジタルシミュレータが演算して
いる時、データ退避部11には、時刻tからn刻みさか
のぼった連係点電圧ベクトルデータVA (t),VA
(t−T),VA (t−2T),…,VA (t−(n−
1)T)が退避されている。補正演算部53ではこれら
のデータを入力し次の演算をk=0からk=n−1まで
行う。 VA ’(t−kT) =VA (t−kT)exp(−j2πΔf(n−k)T) …(40) ここで、Δfはローパスフィルタ52の出力である。同
様に補正演算部54ではデータ退避部12に退避されて
いるデータ IA (t),IA (t−T),IA (t−2T),…, IA (t−(n−1)T) …(41) に対して、次の演算をk=0からn−1まで行う。 IA ’(t−kT) =IA (t−kT)exp(−j2πΔf(n−k)T) …(42) ここで、式(40)または式(42)による演算の意味
を説明する。
【0095】周波数偏差がΔfの時、時刻tからn刻み
さかのぼった時刻t−(n−1)Tに対して時刻を(n
−k)T進めると、周波数偏差Δfによって位相角が2
πΔf(n−k)T進んでいる。式(40)、式(4
2)の内容は、k=0,1,…,(n−1)に対し、こ
の進んだ角度で逆方向にベクトルを回転させることによ
って、周波数偏差Δfに起因したベクトルの回転を補正
することである。その結果、周波数偏差Δfに起因した
ベクトルの回転分を除去したn刻み分のデータが得ら
れ、以後、電力系統の周波数が基準周波数f0 に等しい
場合と同じ演算式に従って諸量を演算することができ
る。
【0096】次に、実施の形態4の動作として、時刻t
における系統状態をディジタルシミュレータで演算する
動作を図5を参照しながら説明する。アナログシミュレ
ータとの連係点において計測された電圧信号、電流信号
をA/D変換したのち、電圧信号は実効値変換部9で、
電流信号は実効値変換部10で各々実効値ベクトルデー
タに変換する。これらの処理により、時刻tにおける連
係点電圧ベクトルVA (t)、及び連係点電流ベクトル
A (t)が得られる。ここで、これら実効値ベクトル
への変換演算は、基準周波数f0 で静止した座標(以
下、クーロンの座標と呼称する)でベクトル表示がなさ
れるように変換される。
【0097】次にVA (t)をデータ退避部11に、I
A (t)をデータ退避部12に退避する。その結果、デ
ータ退避部11には時刻tからn刻みさかのぼったn個
の連係点電圧ベクトルデータVA (t),VA (t−
T),VA (t−2T),…,VA (t−(n−1)
T)が格納された状態になる。またデータ退避部12に
は時刻tからn刻みさかのぼったn個の連係点電流ベク
トルデータIA (t),IA (t−T),IA (t−2
T),…,IA (t−(n−1)T)が格納された状態
になる。
【0098】次に補正演算部53によって式(40)に
示した演算を行い、演算結果のVA’(t),VA
(t−T),…,VA ’(t−(n−1)T)を最小二
乗法演算部に入力する。また、補正演算部54によって
式(42)に示した演算を行い、演算結果のIA
(t),IA ’(t−T),…,IA ’(t−(n−
1)T)を最小二乗法演算部13に入力する。尚、補正
演算部53、54に入力される定常周波数偏差Δfは、
1刻み前のタイムステップ(即ち時刻t−Tの状態を演
算する処理)において、ローパスフィルタ52によって
演算された結果を入力する。最小二乗法演算部13で
は、補正演算部53で補正されたn個の連係点電圧ベク
トルデータと、補正演算部54で補正されたn個の連係
点電流ベクトルデータに従い、最小二乗法によってアナ
ログシミュレータの時刻tにおける等価アドミタンスY
D (t)を推定する演算を行う。
【0099】次にID 演算部31において、式(27)
により時刻tにおけるアナログシミュレータの等価注入
電流ID (t)を演算する。これらのYD (t),ID
(t)はノード方程式求解部14に入力される。次にモ
デル演算部18と、ノード方程式求解部14における演
算を行い、時刻tにおけるディジタル系統の電圧分布を
決定する。また、この演算結果をディジタル側データ退
避部15に退避する。なお、モデル演算部18とノード
方程式求解演算部14は、ディジタル系統のモデルをク
ーロンの座標系におけるベクトル表現で表したモデルに
従って演算する。次に演算された連係点電圧ベクトルデ
ータを瞬時値変換部16、D/Aコンバータ17を経て
アンプ19に信号出力し、連係点の電圧が生成される。
一方、時刻tにおける演算結果であるディジタル系統の
電圧ベクトルと、1刻み前の電圧ベクトルの演算結果に
従い、周波数偏差演算部51で周波数偏差Δfを演算す
る。また、ローパスフィルタ52によって定常周波数偏
差が演算される。以上で時刻tにおける状態の演算を終
わり、時刻変数tに刻み時間幅Tを加算した後、次のタ
イムステップに移る。
【0100】以上のように、実施の形態4によれば、周
波数偏差に起因した電流、電圧のベクトルの回転を補正
した上でアナログシミュレータの等価アドミタンスを推
定する演算を行うので、電力系統の周波数が基準周波数
よりもはずれている場合においても正確にアナログシミ
ュレータの等価アドミタンスが推定されて、ハイブリッ
ドシミュレータの模擬精度が向上する。また、周波数偏
差の演算においてローパスフィルタを通過させる構成と
したので、数値値に安定した周波数偏差に従ってベクト
ルの回転を補正し、系統急変時においても安定した演算
結果が得られるという効果がある。
【0101】ここで、実施の形態4によれば、なぜ周波
数偏差を有する場合でも正確に等価アドミタンスが推定
できるかを以下に説明する。なお、説明を簡単にするた
め、最小二乗法によって等価アドミタンスYD を推定す
る演算において、実効値のサンプリングデータは2刻み
分入力されると仮定する。即ち、n=2と仮定する。こ
のとき最小二乗法の演算に入力されるデータは以下のデ
ータである。 VA (t),VA (t−T) :連係点電圧ベクトルデータ IA (t),IA (t−T) :連係点電流ベクトルデータ 最小二乗法による等価アドミタンスYD の推定演算は次
の2式の左辺と右辺の差の絶対値の二乗和を最小にする
D を求めることである。 IA (t)=ID +YDA (t) IA (t−T)=ID +YDA (t−T)
【0102】n=2のときは未知数(ID 及びYD )の
個数と式の個数が一致するので、これら2式の左辺と右
辺が一致するような解をもち、それが最小二乗法による
演算結果と一致する。従って、等価アドミタンスYD
次式で計算される。 YD =(IA (t)−IA (t−T))/(VA (t)−VA (t− T)) …(43) 周波数偏差Δfが0のときは、等価アドミタンスYD
理論値は式(43)に従う。
【0103】次にVA (t),IA (t)を次のように
極座標表示する。 VA (t)=VA,t exp(jθ(t)) VA,t :絶対値 θ(t):位相 IA (t)=IA,t exp(jδ(t)) IA,t :絶対値 δ(t):位相 このとき式(43)は次式となる。 YD =IA,t exp(jδ(t))−IA,t-T exp(jδ(t−T)) /VA,t exp(jθ(t))−VA,t-T exp(jθ(t−T)) …(44)
【0104】今基準位相角αを変更すると、
【数27】 となり、式(43)は基準位相のとりかたに依存しな
い。
【0105】即ち、周波数に依存しない量である等価ア
ドミタンスの演算に関しては位相角についてはVA
(t),VA (t−T),IA (t),IA (t−T)
の4データの相対位相にのみ着眼すればよい。次に周波
数偏差Δfが0でない(f≠0)と仮定する。そのと
き、時間がT経過すると、クーロンの座標系ではΔf=
0のときに比べて全てのベクトルが2πΔfTだけ位相
が進む。従って、位相差δ(t)とδ(t−T)はΔf
≠0のときはΔf=0のときに比べて2πΔfT増加す
る。同様に位相差θ(t)とθ(t−T)はΔf≠0の
ときはΔf=0のときに比べて2πΔfT増加する。
【0106】今2πΔfT=βとおくと、周波数偏差Δ
f≠0のときに周波数偏差Δf=0を前提とした式(4
3)で演算すると、 YD =IA,t exp(δ(t)+β)−IA,t-T exp(δ(t−T)) /VA,t exp(θ(t)+β)−VA,t-T exp(θ(t−T)) …(46) となり、β≠0であるから式(43)に示した理論値と
異なる計算式で演算することになる。従って、周波数偏
差が0でないときに、周波数偏差が0であることを前提
としたモデルによって等価アドミタンスを推定すると、
正確に演算することができない。それに対し、実施の形
態4ではVA (t),IA (t)の位相角を−2πΔf
T=−βだけ補正する演算を行った後、等価アドミタン
スを演算するので式(43)と等価な計算式で演算を行
うことになる。従って、周波数偏差Δfに影響されずに
正確に等価アドミタンスを推定することができる。
【0107】実施の形態5.図6は実施の形態5による
ハイブリッドシミュレータの構成を示すブロック図であ
り、図1に示す実施の形態1と同一部分には同一符号を
付して重複説明を省略する。図6において、61はYD
保存部であり、等価アドミタンスYD の値を表すデータ
をシミュレーションを開始する前に外部から設定保存す
る。62は等価注入電流ID を演算する演算部である。
等価注入電流ID は式(14)より次式で計算される。 ID =IA −YDA …(47) ここでIA は、実効値変換部10によって出力された連
係点電流を表す実効値ベクトルデータ、VA は実効値変
換部9によって出力された連係点電圧を表す実効値ベク
トルデータである。
【0108】次に実施の形態5の動作の概略を図7のフ
ローチャートについて説明する。先ず、ディジタルシミ
ュレータ側の動作として時刻tのディジタル系統の状態
を演算する動作を説明する。電圧計測部6と電流計測部
5で計測された、アナログシミュレータの連係点の電圧
値、電流値をA/D変換する(ステップST1)。この
後、これらのデータを実効値ベクトルデータに変換する
(ステップST2)。これにより時刻tで計測されたア
ナログシミュレータの連係点の電圧ベクトルVA
(t),電流ベクトルIA (t)のデータが得られる。
次にID 演算部62において、これらのデータVA
(t),IA (t)と、YD 保存部61に設定されてい
る等価アドミタンスのデータYD から次式 ID =IA (t)−YDA (t) …(48) によって、等価注入電流ID を演算する(ステップST
13)。この等価注入電流ID は時刻tにおけるアナロ
グシミュレータの等価注入電流を表す。
【0109】次にディジタルシミュレータのモデル演算
(ステップST5)を行った後、ディジタル系統のノー
ド方程式を求解する(ステップST6)。ノード方程式
求解演算部14には、時刻tにおけるアナログシミュレ
ータの等価注入電流データとしてID 演算部62によっ
て演算された等価注入電流ID と、YD 保存部61に設
定された等価アドミタンスのデータが各々入力される。
なお、他の動作処理は実施の形態1の動作と同様である
から、同一のステップ番号を付して、重複説明を省略す
る。
【0110】以上のように、実施の形態5によれば、デ
ィジタル系統のノード方程式を求解するための、アナロ
グシミュレータの等価アドミタンスを表すデータを、シ
ミュレーションを開始するに先立って固定値として外部
から設定した。また、シミュレーション中のディジタル
系統のノード方程式求解処理ではアナログシミュレータ
の等価アドミタンスがこの固定値であるとして、ノード
方程式求解演算を行うように構成した。その結果、以下
の効果が得られる。 1.シミュレーション中にアナログシミュレータの計測
データに基づいて等価アドミタンスを推定演算する処理
を省略することができるので、ディジタルシミュレータ
側の演算速度が向上する。あるいは演算するプロセッサ
の負荷を低減させることができる。 2.等価アドミタンスを固定設定値としたので、計測デ
ータにもとづいた推定演算にみられる計測におけるノイ
ズや高調波あるいは演算における桁落ち等の誤差要因を
排除することができてハイブリッドシミュレータの演算
精度が向上する。 3.アナログシミュレータの等価アドミタンスが時間的
に変化せずに固定値であるというモデルに従って演算す
るので、計算安定性において優れている。ここで、この
計算安定性に優れているということの意味を以下に詳細
に説明する。
【0111】このため、例として図8に示した電力系統
についてハイブリッドシミュレーションを行う場合の数
値演算結果の挙動を例にとって説明する。図8におい
て、1は発電機、2は(発電機端の)母線、3は送電
線、4は連係点母線であり、アナログシミュレータによ
って電気回路が実現されている。63は母線、64は電
流源、5は送電線であり、ディジタル系統におけるモデ
ルが実現されている。なお、連係点母線4は、ディジタ
ル系統側でもモデルとして含んでいる。従って、ディジ
タル系統は、連係点母線4、母線63、電流源64、送
電線65からなる電力系統をモデル化したものである。
【0112】図8の説明に関する記号を以下の通りとす
る。 V1 :ディジタル系統における連係点JI−4の電圧ベ
クトル V2 :母線4−4の電圧ベクトル Y12:送電線4−6のアドミタンス I2 :電流源4−5の電流ベクトル VA :アナログシミュレータにおいて計測した連係点J
I−4の電圧ベクトル IA :アナログシミュレータにおいて計測した送電線J
I−3の電流ベクトル YD :アナログシミュレータの連係点からみた等価アド
ミタンス ID :アナログシミュレータの連係点からみた等価注入
電流
【0113】なお、YD ,Y12以外は時間とともに変化
するので、V1 (t),V2 (t)等と(t)をつけて
表す。tは時間を表す。ディジタルシミュレータにおけ
る刻み時間をTとする。図8に示したディジタル系統は
上記のように構成されているので、ディジタル系統にお
けるノード方程式は次式である。
【数28】
【0114】従って、電圧は次式で求められる。
【数29】
【0115】アナログシミュレータとディジタル系統を
統合して整合性のある電圧分布が求まる過程を以下に説
明する。 1.時刻tでVA (t),IA (t)が計測され、ID
(t)=IA (t)−YDA (t)によってID
(t)が求まる。 2.ID (T)を式(50)に代入し、V1 (t),V
2 (t)が求まる。なお、実施の形態5では式(50)
のYD は固定値である。従来技術ではYD はタイムステ
ップ毎に演算される。V1 (t)はアンプ19によりア
ナログシミュレータの連係点母線4に電圧V1 (t)が
出力される。 3.タイムステップを進めた次の刻み時間ではVA (t
+T)=V1 (t)として計測される。従って、
【数30】 となる。
【0116】刻み時間幅Tによるタイムステップを進め
る毎に式(51)による漸化式に従って次第にV1 ,V
2 はアナログシミュレータの電気状態と、ディジタル系
統のモデルを総合して整合性をもった電圧分布に収束し
ていく。ハイブリッドシミュレータにおけるアナログシ
ミュレータとディジタル系統の連係アルゴリズムでは、
この収束をできるだけ速くかつ安定に収束させることが
必要である。従来のハイブリッドシミュレータでは、等
価アドミタンスYD を刻み時間(タイムステップ)毎に
毎回演算していたので、YD が計測誤差やA/D変換器
のビット数不足、演算の際の桁落ち等に影響をうけて振
動するなど、YD の値が数値的に不安定であった。
【0117】その結果、漸化式(51)の係数が振動し
て数値的に安定した一定の値を保持しなかったので、漸
化式の収束性が悪化し、タイムステップを進めてもV
1 ,V2 が収束しなかったり、V1 ,V2 等が振動やチ
ャタリングをおこす等の現象がみられる。あるいはま
た、図8において、送電線に大きな潮流を流し、脱調し
ない許容限界付近の潮流値を流すシミュレーションを行
った時、等価アドミタンスYD が振動すると安定して計
算できず、許容限界より小さな潮流を流してもすぐに脱
調するなど、ハイブリッドシミュレータとしての模擬精
度が悪いという問題があった。
【0118】これに対し実施の形態5では、等価アドミ
タンスYD を変化しない一定値に設定して演算するの
で、漸化式(51)の係数がタイムステップを進めても
変化せず固定される。その結果、漸化式(51)収束が
著しく高速になる効果がある。また、その結果電圧の演
算結果V1 ,V2 の不要な振動現象やチャタリング現象
が解消し、計算安定性が向上してハイブリッドシミュレ
ータの模擬精度が向上する。また、等価アドミタンスY
D が一定値としてシミュレーションするので、送電線に
大きな潮流を流しても、脱調することなく安定したシミ
ュレーションが可能になる効果がある。
【0119】次に実施の形態5において、アナログシミ
ュレータの等価アドミタンスを固定値として設定する
と、何故計算安定性が向上するかということを特開平6
−38372号公報の先行技術を参照しながら説明す
る。この先行技術は、アナログ装置とディジタルシミュ
レータの連係方式を示したものであり、この先行技術に
おけるセルフ・チューニング・レギュレータの処理が、
実施の形態5におけるアナログシミュレータとディジタ
ル系統で整合性をもった電圧分布となるように連係点の
電圧を制御する処理に相当する。
【0120】この先行技術によれば、セルフ・チューニ
ング・レギュレータにおいて、演算部の出力電圧を変化
させる(即ち連係点の電圧をディジタル側演算で決定す
る)ためにハイブリッド等価アドミタンスの値が変化し
ない条件の下で、ディジタル部の動作特性に一致する点
にアナログ装置の電流が変化したものとして出力電圧を
変化させている。なお、この先行技術におけるハイブリ
ッド等価アドミタンスという用語は、実施の形態5にお
けるアナログシミュレータの等価アドミタンスという概
要の下位概念である。従って、セルフ・チューニング・
レギュレータによるチューニングアルゴリズムは、ハイ
ブリッド等価アドミタンスが変化しないという条件下で
設計されているので、ハイブリッド等価アドミタンスが
変化しない時にはじめて良好に動作するものである。
【0121】しかしながら、先行技術では、ディジタル
演算における毎回のタイムステップ毎にアナログデータ
を計測してハイブリッド等価アドミタンスを演算してい
たとともに演算の桁落ちの大きい計算法であったので、
この値がノイズ誤差や桁落ち等により不安定な挙動を示
して一定値におちつかず、その結果、セルフ・チューニ
ング・レギュレータが良好に動作しないという問題があ
った。
【0122】これに対し、実施の形態5ではハイブリッ
ド等価アドミタンスを固定された一定値であるとして、
セルフ・チューニング・レギュレータを動作させるの
で、セルフ・チューニング・レギュレータのチューニン
グ動作が良好に動作し、速やかにアナログシミュレータ
とディジタル系統で整合性をもった電圧分布に収束させ
ることができる。また、実用上のケースでは、上記に計
算式で説明したように、ハイブリッド等価アドミタンス
の値は送電線のアドミタンスに等しく、理論上において
も変化せずに一定値であるので、実施の形態5における
ハイブリッド等価アドミタンスを一定値として演算する
方式が合理的であり、セルフ・チューニング・レギュレ
ータの性能を向上させる上で優れている。
【0123】実施の形態6.先ず、実施の形態6の概要
を説明する。電力系統の基準周波数f0 に対してλ=1
/f0 とおき、λは電圧、電流に関する基本波の周期、
Tはディジタルシミュレータの刻み時間幅とする。アナ
ログシミュレータの連係点における電圧と電流を計測し
た後、A/D変換するサンプリングのサンプリング時間
幅も同じ時間幅Tに等しいという条件でハイブリッドシ
ミュレータを動作させる。λはTの整数倍であるとし、
λ=NT(N:整数)とおく。時刻tでサンプリングさ
れた電圧の瞬時値をυ(t)とする。
【0124】従来のハイブリッドシミュレータでは、瞬
時値データから実効値ベクトルデータに変換する際、例
えば次のように、υ(t)とともにλ/4以前にサンプ
リングしたデータυ(t−λ/4)を使用して実効値を
演算していた。
【数31】
【0125】ここで、Nは4で割りきれるとともに、λ
/4はπ/2の位相に相当する。この場合、計測したア
ナログデータに高調波が含まれていると、正確に基本波
成分の実効値を演算することができない。これに対し、
実施の形態6では1周期に渡るサンプリングデータ υ(t),υ(t−T),υ(t−2T),…,υ(t−(N−1)T) …(53) を用いて散離フーリエ変換を施すことによって、実効値
ベクトルデータを演算する。散離フーリエ変換による実
効値ベクトルVの演算方法は次式による。
【数32】
【0126】ここで、exp(−j2πk/N)は複素
数、
【数33】 を表わすデータである。υ(t−kT)は実数データで
あり、演算結果のVは、複素数データである。この複素
数データVが、離散フーリエ変換によって得られた、計
測した電圧の実効値ベクトルデータである。同様に電流
についても1周期に渡ってサンプリングされた電流の瞬
時値データ i(t),i(t−T),i(t−2T),…,i(t−(N−1)T) …(55) を用いて次式による離散フーリエ変換の演算を行うこと
によって電流の実効値ベクトルを演算する。
【数34】 尚、離散フーリエ変換の理論については、信号解析法を
述べた多数の公知文献があるので詳細説明を省略する。
【0127】図9は、実施の形態6によるハイブリッド
シミュレータの構成を示すブロック図であり、図1に示
す実施の形態1と同一部分には同一符号を付して、重複
説明を省略する。図において、91は1周期に渡るA/
D変換された連係点電圧の瞬時値のサンプリングデータ
υ(t),υ(t−T),…,υ(t−(N−1)T)
を退避するデータ退避部である。92は1周期に渡るA
/D変換された連係点電流の瞬時値のサンプリングデー
タ i(t),i(t−T),…,i(t−(N−1)
T)を退避するデータ退避部である。93は式(54)
に示した離散フーリエ変換の演算を行うことによって時
刻tにおける連係点電圧の実効値ベクトルデータVA
(t)を次式により演算する離散フーリエ変換演算部で
ある。
【数35】
【0128】94は式(56)に示した離散フーリエ変
換演算を行うことによって連係点で計測された時刻tに
おける連係点電流の実効値ベクトルデータIA (t)を
演算する離散フーリエ変換演算部である。
【数36】
【0129】次に実施の形態6の動作の概略を図10の
フローチャートについて説明する。全体の処理の流れ
は、刻み時間幅Tを加算することによって更新される時
刻tの状態を演算するための処理を行い、この処理が一
通り完了すると、時刻を表す変数にTを加算し、次のタ
イムステップに移行する。この繰り返しをシミュレーシ
ョンが終了するまで繰り返す。
【0130】次に各タイムステップ毎の演算を説明す
る。即ち時刻tにおける系統状態を演算する処理を説明
する。先ず、電圧計測部6及び電流計測部5によって計
測された信号のA/D変換を行う(ステップST1)。
これによって、時刻tにおける連係点電圧の瞬時値デー
タυ(t)及び連係点電流の瞬時値データi(t)が得
られる。
【0131】次にこれら瞬時値データについて、電圧の
瞬時値データをデータ退避部91に、電流の瞬時値デー
タをデータ退避部92に退避する(ステップST1
4)。データ退避部91では時刻tのタイムステップの
処理において時刻tの瞬時値データυ(t)が入力され
ると、N+1回前のサンプリングデータυ(t−NT)
を破棄することによって常にN個のサンプリングデータ
υ(t),υ(t−T),υ(t−2T),…,υ(t
−(N−1)T)が保持される。1周期λ=1/f0
間にN回時間Tの間隔でサンプリングされるから、これ
らN個のデータは1周期に渡るサンプリングデータであ
る。データ退避部92では、同様の動作が行われること
により、時刻tにおいてサンプリングされた瞬時値デー
タが入力されると、1周期に渡るN個のサンプリングデ
ータi(t),i(t−T),i(t−2T),…,i
(t(N−1)T)が退避される。
【0132】次に離散フーリエ変換演算部93により、
データ退避部91に退避されたデータに従い、式(5
7)の演算を行うことによって、時刻tにおける連係点
電圧の実効値ベクトルデータVA (t)を演算する(ス
テップST15)。このデータは、データ退避部11に
退避される。また、離散フーリエ変換演算部94によ
り、データ退避部92に退避されたデータに従い、式
(58)の演算を行うことによって、時刻tにおける連
係点電流の実効値ベクトルデータIA (t)を演算す
る。以上の処理により時刻tにおける実効値ベクトルデ
ータVA (t),IA (t)が演算された。このデータ
A (f)はデータ退避部12に退避される。
【0133】実施の形態6は、実施の形態1に対してア
ナログデータを計測してサンプリングした瞬時値データ
から実効値ベクトルデータを演算する方法について改良
を行ったものであり、他の動作処理は、実施の形態の動
作と同様であるので、同一のステップ番号を付して、重
複説明を省略する。
【0134】以上のように、実施の形態6によれば、連
係点で計測した電流・電圧の瞬時値サンプリングデータ
から離散フーリエ変換による基本波成分を求める演算に
よって実効値ベクトルデータを演算したので高調波や、
ノイズの影響を排除して精度よく実効値ベクトルデータ
を演算することができる。その結果、ハイブリッドシミ
ュレータの模擬精度を向上させる効果がある。
【0135】尚、上記の実施の形態6では、1周期に渡
るサンプリングデータ全てを用いて離散フーリエ変換を
行う例を述べたが、半周期、1/3周期、1/4周期に
渡る最新のサンプリングデータを用いてもよい。離散フ
ーリエ変換の入力とするサンプリングデータの時間帯が
短い程、アナログシミュレータ側の状態変化に高速に追
従するという効果がある。
【0136】
【0137】
【発明の効果】以上のように、 請求項記載の発明によ
れば、サンプリングされた過去にさかのぼる最新の電圧
データと電流データに従って、最小二乗法により推定演
算を行って、等価注入電流と等価アドミタンスを求める
ように構成したので、等価注入電流と等価アドミタンス
の推定精度が向上する。また、最小二乗法を用いること
により、ノイズの混入、A/Dコンバータの有効桁数不
足、数値演算上の桁落の誤差要因を排除することができ
る。従って、等価注入電流と等価アドミタンスの精度を
確保した上でノード方程式の求解を行うことができ、シ
ミュレーションの演算精度を向上させ、ハイブリッドシ
ミュレータの模擬精度を向上させる効果がある。
【0138】請求項記載の発明によれば、等価アドミ
タンス,等価注入電流を最新の電圧データと最新の電流
データに基づいて演算するように構成したので、アナロ
グシミュレータの電圧源の時間変化に即応した値を演算
することができる。即ち、アナログシミュレータ側の状
態変化に対してディジタルシミュレータの演算が高速に
追従することができる。その結果、ディジタルシミュレ
ータにおける系統模擬演算と連係機能についてアナログ
シミュレータの時間変化に対する追従性が向上し、ハイ
ブリッドシミュレータの模擬精度が向上する効果があ
る。
【0139】請求項記載の発明によれば、等価注入電
流の時間変化を考慮して、等価アドミタンスを最小二乗
法により同定するように構成したので、等価アドミタン
スを精度よく演算することができ、ハイブリッドシミュ
レータの模擬精度が向上する効果がある。
【0140】請求項記載の発明によれば、電力系統の
基準周波数からの周波数偏差を演算するとともに、アナ
ログシミュレータにおいて計測した電流、及び電圧のベ
クトルデータの周波数偏差に起因するベクトル回転を補
正演算し、この補正演算がなされた電流・電圧のデータ
に基づいてアナログシミュレータの状態量を演算するよ
うに構成したので、電力系統の周波数が基準周波数と一
致しない場合でも正確にアナログシミュレータの状態量
が演算できて、電力系統シミュレータの演算精度が向上
する効果がある。
【0141】請求項記載の発明によれば、等価注入電
流の時間変化を考慮したモデルを採用し、等価アドミタ
ンスを最小二乗法により、同定するように構成したの
で、等価アドミタンスを精度よく演算することができ、
ハイブリッドシミュレータの模擬精度が向上する効果が
ある。
【0142】請求項記載の発明によれば、アナログシ
ミュレータの等価アドミタンスをシミュレーション開始
に先立って、固定値として外部から設定するように構成
したので、等価アドミタンスを推定演算する処理を省略
することができるので、ディジタルシミュレータ側の演
算速度が向上し、演算するプロセッサの負担を低減させ
ることができる。また、計測データに基づいた推定演算
にみられる計測におけるノイズや高周波、あるいは、演
算における桁落ち等の誤差要因を排除することができ
て、ハイブリッドシミュレータの演算精度が向上する効
果がある。
【0143】
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1によるハイブリッド
シミュレータを示すブロック図である。
【図2】 実施の形態1の処理動作を説明するフローチ
ャートである。
【図3】 この発明の実施の形態2によるハイブリッド
シミュレータを示すブロック図である。
【図4】 実施の形態2の処理動作を説明するフローチ
ャートである。
【図5】 この発明の実施の形態4によるハイブリッド
シミュレータを示すブロック図である。
【図6】 この発明の実施の形態5によるハイブリッド
シミュレータを示すブロック図である。
【図7】 実施の形態5の処理動作を説明するフローチ
ャートである。
【図8】 電力系統図である。
【図9】 この発明の実施の形態6によるハイブリッド
シミュレータを示すブロック図である。
【図10】 実施の形態6の処理動作を説明するフロー
チャートである。
【図11】 従来のハイブリッドシミュレータの連係方
式を示すブロック図である。
【図12】 電力系統を示す模式図である。
【図13】 従来のハイブリッドシミュレータを示すブ
ロック図である。
【符号の説明】
1 発電機(アナログシミュレータ)、2,4 母線
(アナログシミュレータ)、3 送電線(アナログシミ
ュレータ)、5 電流計測装置(計測部)、6電圧計測
装置(計測部)、13 最小二乗法演算部、14 ノー
ド方程式求解演算部(ディジタル計算部)、51 周波
数偏差演算部、53,54 補正演算部、62 等価注
入演算部、93,94 離散フーリエ変換演算部。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平6−38371(JP,A) 特開 平8−265979(JP,A) 特開 平1−164233(JP,A) 特開 平6−38372(JP,A) 特開 昭63−188775(JP,A) 特開 平4−183235(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H02J 3/00 - 5/00

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 最小二乗法演算部は、アナログシミュレ
    ータの状態を演算する該当時刻をtとし、時刻t,t−
    T,t−2T,…,t−(n−1)Tで計測されたn個
    の電圧データVA(t),VA (t−T),VA (t−
    2T),…,VA (t−(n−1)T)と、n個の電流
    データIA (t),IA (t−T),IA (t−2
    T),…,IA (t−(n−1)T)に基づき、 【数1】 を最小とする等価注入電流、等価アドミタンスを演算
    し、ディジタル計算部は前記等価注入電流、等価アドミ
    タンスのデータに基づいて電力系統の時刻tの状態を模
    擬する演算を行うことを特徴とする請求項1記載の電力
    系統シミュレータ。
  2. 【請求項2】 最小二乗法演算部は、アナログシミュレ
    ータの状態を演算する該当時刻をtとし、時刻t,t−
    T,t−2T,…,t−(n−1)Tで計測されたn個
    の電圧データVA (t),VA (t−T),VA (t−
    2T),…,VA (t−(n−1)T)と、n個の電流
    データIA (t),IA (t−T),IA (t−2
    T),…,IA (t−(n−1)T)に基づき、 【数2】 を最小とする等価アドミタンスを演算するとともに、I
    D =IA (t)−YD A (t)によって等価注入
    電流を演算し、ディジタル計算部は、時刻tにおける等
    価アドミタンスと、時刻tにおける等価注入電流のデー
    タに基づいて、電力系統の時刻tの状態を模擬する演算
    を行うことを特徴とする請求項1記載の電力系統シミュ
    レータ。
  3. 【請求項3】 最小二乗法演算部は、アナログシミュレ
    ータの状態を演算する該当時刻をtとし、時刻t,t−
    T,t−2T,…,t−(n−1)Tで計測されたn個
    の電圧データVA (t),VA (t−T),VA (t−
    2T),…,VA (t−(n−1)T)と、n個の電流
    データIA (t),IA (t−T),IA (t−2
    T),…,IA (t−(n−1)T)に基づき、 【数3】 を最小とする等価アドミタンスを演算するとともに、等
    価注入演算部はID =IA (t)−YD A (t)によ
    って等価注入電流を演算し、ディジタル計算部は時刻t
    における等価注入電流のデータに基づいて、電力系統の
    時刻tの状態を模擬する演算を行うことを特徴とする請
    求項1記載の電力系統シミュレータ。
  4. 【請求項4】 電力系統の基準周波数からの周波数偏差
    を演算する周波数偏差演算部と、アナログシミュレータ
    において電流と電圧を計測する計測部と、この計測部か
    ら出力された電流と電圧のベクトルデータの周波数偏差
    に起因するベクトル回転を補正演算する補正演算部と、
    この補正演算がなされた電流と電圧のデータに基づいて
    アナログシミュレータの状態量を演算して電力系統の状
    態を模擬するディジタル計算部とを備えた電力系統シミ
    ュレータ。
  5. 【請求項5】 以下の(1)〜(5)の演算を行うこと
    を特徴とする請求項5記載の電力系統シミュレータ。 1.電力系統の基準周波数からの周波数偏差を演算す
    る。 2.上記1.の演算結果にローパスフィルタを施し、そ
    の演算結果をΔtとする。 3.時刻t,t−T,t−2T,…,t−(n−1)T
    で計測されたn個の電圧ベクトルデータVA (t),V
    A (t−T),VA (t−2T),VA (t−(n−
    1)T)と、n個の電流ベクトルデータIA (t),I
    A (t−T),IA (t−2T),…,IA (t−(n
    −1)T)に対してk=0からn−1まで次の演算を施
    す。 V’A (t−kT)=VA (t−kT)exp(−j2πΔf(n−k)T) I’A (t−kT)=IA (t−kT)exp(−j2πΔf(n−k)T) 4.次式を最小にする等価アドミタンスを演算する。 【数4】 5.上記4.の演算結果を、時刻tにおけるアナログシ
    ミュレータの等価的なアドミタンス量とみなして、電力
    系統の時刻tの状態を演算する。
  6. 【請求項6】 アナログシミュレータにおいて電圧と電
    流を計測する計測部と、この計測部から出力された電圧
    データと電流データ及び外部から与えられた固定の等価
    アドミタンスに基づいて等価注入電流を演算する等価注
    入演算部と、前記固定の等価アドミタンスと前記等価注
    入電流のデータに基づいて電流系統の状態を模擬する演
    算を行うディジタル計算部とを備えた電力系統シミュレ
    ータ。
JP13264597A 1997-05-22 1997-05-22 電力系統シミュレータ Expired - Fee Related JP3514944B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP13264597A JP3514944B2 (ja) 1997-05-22 1997-05-22 電力系統シミュレータ

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP13264597A JP3514944B2 (ja) 1997-05-22 1997-05-22 電力系統シミュレータ

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH10322907A JPH10322907A (ja) 1998-12-04
JP3514944B2 true JP3514944B2 (ja) 2004-04-05

Family

ID=15086176

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP13264597A Expired - Fee Related JP3514944B2 (ja) 1997-05-22 1997-05-22 電力系統シミュレータ

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3514944B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN102709955A (zh) * 2012-05-30 2012-10-03 中国电力科学研究院 一种基于多断面潮流控制的方法

Families Citing this family (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR100711816B1 (ko) * 2005-10-31 2007-04-30 한국전력공사 하이브리드 유피에프씨 시뮬레이터
CN103257593A (zh) * 2013-05-30 2013-08-21 上海交通大学 光伏并网发电系统的数字物理混合仿真系统
CN103593565B (zh) * 2013-11-14 2017-02-22 华北电力大学 结构风险最小化的加权最小二乘电力系统状态估计方法
CN111060756B (zh) * 2019-11-29 2022-04-15 国网河南省电力公司洛阳供电公司 一种智能变电站暂态仿真测试方法
CN111402077A (zh) * 2020-03-10 2020-07-10 贵州电网有限责任公司 一种基于统一编码的电网一次设备模型交互方法

Family Cites Families (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS63188775A (ja) * 1987-02-02 1988-08-04 Hitachi Ltd 実効値及び電力検出方式
JPH01164233A (ja) * 1987-12-17 1989-06-28 Kansai Electric Power Co Inc:The アクティブフィルタ
JP2685352B2 (ja) * 1990-11-15 1997-12-03 株式会社東芝 電力系統用計算機システム
JP2843463B2 (ja) * 1992-07-16 1999-01-06 三菱電機株式会社 電力系統模擬装置
JP2788691B2 (ja) * 1992-07-16 1998-08-20 三菱電機株式会社 電力系統模擬装置
JPH08265979A (ja) * 1995-03-22 1996-10-11 Tokyo Electric Power Co Inc:The 電力系統の外部リアクタンス推定装置

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN102709955A (zh) * 2012-05-30 2012-10-03 中国电力科学研究院 一种基于多断面潮流控制的方法
CN102709955B (zh) * 2012-05-30 2014-08-27 中国电力科学研究院 一种基于多断面潮流控制的方法

Also Published As

Publication number Publication date
JPH10322907A (ja) 1998-12-04

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JPWO2008126240A1 (ja) 同期フェーザ測定装置及びこれを用いた母線間位相角差測定装置
Al-Othman et al. Uncertainty modelling in power system state estimation
CN109409762A (zh) 基于改进数据关联分析的谐波责任划分方法
CN109444515B (zh) 一种基于sdft算法的无功、不平衡与谐波检测方法
JP2009074941A (ja) 周期信号の振幅測定方法および装置並びに磁気ヘッドの試験方法および装置
CN111046327A (zh) 适用于低频振荡与次同步振荡辨识的Prony分析方法
JP3514944B2 (ja) 電力系統シミュレータ
CN111884218B (zh) 一种双馈入vsc输电系统稳定性评估方法及系统
CN116359605A (zh) 一种基于二次加权的谐波信号分析方法
CN110988594B (zh) 一种配电网故障位置确定方法及确定装置
Coury et al. Programmable logic design of a compact Genetic Algorithm for phasor estimation in real-time
CN109638811B (zh) 基于模型等值的配电网电压功率灵敏度鲁棒估计方法
CN108470091A (zh) 基于自适应冲击负荷注入的psasp混合动态仿真方法
CN112001059A (zh) 柔性直流换流阀子模块宽频模型建立方法及装置
Trinh et al. Comparison of dynamic mode decompositon and iterative matrix pencil method for power system modal analysis
Serov et al. Features of application of frequency measurement technique based on spectral analysis for real electrical power networks
CN108982954A (zh) 适用于馈线终端的计算相电压幅值与相位的方法及系统
Mirz A dynamic phasor real-time simulation based digital twin for power systems
CN111679125B (zh) 一种电力系统振荡辨识的方法和装置
CN112069453B (zh) 一种基于小波变换的电力系统强迫振荡源时频域定位方法
CN113591801A (zh) 一种电力信号参数估计方法和装置
CN113496439A (zh) 一种考虑网损的直流潮流模型优化方法及系统
JP2005045981A (ja) 三相交流負荷模擬装置
CN115524574A (zh) 故障点距离测量方法及装置
Ishak et al. Performance comparison of electric power flow solutions using PSCAD

Legal Events

Date Code Title Description
A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20040114

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313111

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313113

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080123

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090123

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100123

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100123

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110123

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120123

Year of fee payment: 8

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130123

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130123

Year of fee payment: 9

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees