JP3511815B2 - 耐キズつき性と脱膜性に優れた表面潤滑処理金属材 - Google Patents

耐キズつき性と脱膜性に優れた表面潤滑処理金属材

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JP3511815B2
JP3511815B2 JP27266696A JP27266696A JP3511815B2 JP 3511815 B2 JP3511815 B2 JP 3511815B2 JP 27266696 A JP27266696 A JP 27266696A JP 27266696 A JP27266696 A JP 27266696A JP 3511815 B2 JP3511815 B2 JP 3511815B2
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Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、基材金属の表面
に、耐キズつき性と脱膜性に優れた潤滑処理皮膜を有す
る金属材 (以下、表面潤滑処理金属材という) に関す
る。 【0002】 【従来の技術】鋼板やめっき鋼板を始めとする金属薄板
(以下、金属板という) を塑性加工する際に、加工前に
金属板にプレス油等の潤滑剤を塗布して金型と金属板と
の潤滑性を高め、加工時に加えられる荷重を低減した
り、焼き付きを防止する技術は、従来より常套的に採用
されてきた。 【0003】しかし、近年は、潤滑剤の塗布および加工
後の潤滑剤の除去における環境問題への対応や、製造コ
スト低減を考慮して、需要家が加工時に潤滑剤を塗布す
るのではなく、金属板の製造段階または需要家までの適
当な段階で、有機樹脂中に各種の潤滑剤を含有させた固
体有機皮膜 (本明細書においては「潤滑処理皮膜」とい
う) を金属板の表面に予め形成した表面潤滑処理金属板
が広く利用されるようになってきた。それにより、需要
家は直ちに塑性加工を施すことができ、手間が省ける。
別の利点として、潤滑剤の塗布が専門の設備で大規模に
実施されるため、形成された潤滑処理被膜の品質が安定
化および均質化する。 【0004】表面潤滑処理金属板は脱膜型と非脱膜型と
に大別される。脱膜型の表面潤滑処理金属板は、塑性加
工後に脱脂等の手法により潤滑処理皮膜を除去した後、
無処理でそのまま、或いは更に化成処理および塗装など
を施して使用される。一方、非脱膜型の表面潤滑処理金
属板は、塑性加工後に潤滑処理皮膜を除去することな
く、その潤滑処理皮膜を付けたままで、或いはその上に
更に塗装などを施して使用される。一般に、ステンレス
鋼板やアルミニウム系めっき鋼板など、その美麗な表面
を生かして最終製品化される金属板の場合は、脱膜型の
表面潤滑処理金属板として使用することが多い。 【0005】脱膜型の塑性加工用潤滑処理皮膜に要求さ
れる主な性能を次に述べる。 皮膜厚が薄くても良好な潤滑性を示す。 皮膜形成後、皮膜同士が容易に粘着しない (耐ブロッ
キング性が良好) 。 洗浄により皮膜を容易に除去できる。 【0006】金属板の表面にこのような潤滑処理皮膜を
形成することができる処理液として、アクリル系樹脂、
エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂等
の従来より公知の水溶性または水分散性樹脂からなる乾
燥または焼付硬化型の皮膜形成性成分を主成分とし、こ
れに脂肪酸、脂肪酸塩、脂肪酸金属石鹸、脂肪酸エステ
ル、脂肪酸アミド、高級アルコール、グラファイト、二
硫化モリブデン、フッ素樹脂粉末などの1種もしくは2
種以上の潤滑性成分を配合したものが提唱されている。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】しかし、上述したステ
ンレス鋼板のように、表面に研磨ないし光輝焼鈍等を施
した美麗な金属光沢を有する金属板の場合、絞り加工等
の厳しい塑性加工が可能な潤滑性を付与するだけでは不
十分で、加工後に潤滑処理皮膜を除去した後も本来の美
麗な表面を保持していることが要求される。加工中に基
材の金属板がキズつくと、表面の美麗さが大きく損なわ
れる。 【0008】従来の潤滑処理皮膜では耐キズつき性が不
十分なため、基材がステンレス鋼板やアルミニウム系め
っき鋼板のように美麗な表面を持つ金属板の場合には、
上記のような潤滑処理皮膜を形成する代わりに、金属板
の表面に厚み80μm程度のビニールフィルム等を貼合し
て潤滑性および美麗な表面を確保する方法が一般に採用
されている。 【0009】しかし、この方法では、塑性加工後にフィ
ルムを剥離する必要があり、通常この作業は人力で行わ
なければならないため、製造ラインの自動化・省力化の
大きな妨げとなる上、コストを押し上げる。また、特に
加工部ではフィルムの剥離が困難になる場合が多い。さ
らに、剥離したフィルムは嵩高く、多くは焼却処分が困
難で、その減容・埋立処理等に多大な経費を要する。 【0010】そのため、脱膜型の表面潤滑処理金属板に
対して、耐キズつき性の改善が従来より強く求められて
いた。これに関して、例えば、特開昭52−104459号公報
には、特定組成からなる有機樹脂皮膜を両面に有し、塑
性加工を施す方の片面には、その上にさらに潤滑皮膜を
形成した加工用ステンレス鋼板が開示されている。ま
た、特開昭53−75159 号公報には、特定の酸価およびガ
ラス転移温度を有するビニル系樹脂等を表面に被覆した
ステンレス鋼板が開示されている。しかし、家電メーカ
ー等の需要家が要求する非常に高度の耐キズつき性を備
えた潤滑処理皮膜を有する金属板は未だ得られていない
のが現状である。 【0011】このような状況に鑑み、本発明は、耐キズ
つき性をはじめ、潤滑性、脱膜性等といった、塑性加工
用の潤滑処理皮膜に要求される全ての性能を満たした、
脱膜型の表面潤滑処理金属材を提供することを目的とす
る。 【0012】 【課題を解決するための手段】従来、塑性加工時に発生
する表面キズを防止するための主たる考え方は以下のよ
うなものであった。 (a) 潤滑処理皮膜の膜厚を厚くして、金型と金属薄板の
直接接触を避ける。 (b) 潤滑処理皮膜の潤滑性を固体潤滑剤などの添加によ
って向上させ、キズ発生にいたるまでの摺動長さを増加
させる。 【0013】しかし、このような考え方による潤滑処理
皮膜では、塑性加工の条件が厳しいと、基材金属の表面
キズの発生を確実に防止することは困難であった。そこ
で、本発明者らは、塑性加工時における表面キズ発生の
メカニズムについて種々の検討を行った結果、材料との
接触により金型内に堆積する潤滑処理皮膜の剥離片その
ものが表面キズ発生の原因になるという知見を得た。 【0014】即ち、どんなに潤滑性のよい潤滑処理皮膜
を厚く形成しても、皮膜と基材金属の密着性が低ければ
皮膜が根こそぎ剥離し、その剥離した皮膜が金型に堆積
し、表面キズの原因となるのである。従って、皮膜と基
材金属との密着性を高めることにより表面キズの発生を
抑制することが可能であるという結論に達した。 【0015】この知見に基づいて、本発明者らが脱膜型
の潤滑処理皮膜を構成する樹脂の主成分や添加剤等につ
いて検討を重ねた結果、従来より提唱されてきた主成分
の皮膜形成性成分 (樹脂) と潤滑性成分に加えて、シラ
ンカップリング剤を添加して潤滑処理皮膜と基材金属と
の密着力を強化することにより、耐キズつき性が飛躍的
に向上すること、さらにこの潤滑処理皮膜の上に慣用の
液状の塑性加工用潤滑剤 (例、潤滑油) を塗布すること
により複数回プレス等の非常に厳しい加工条件下におい
てもその潤滑性能を保持できることを見出し、本発明に
到達した。 【0016】ここに、本発明は、基材金属の表面に、ガ
ラス転移温度が10℃以上85℃以下の水溶性または水分散
性でアルカリ可溶性の少なくとも1種の樹脂と、このア
ルカリ可溶性樹脂固形分に対して5.0 重量%以下のシラ
ンカップリング剤および0.5重量%以上10重量%以下の
金属石鹸とを含有する水系処理液から形成された、膜厚
が0.5 μm以上10μm以下の潤滑処理皮膜を有し、この
皮膜上に液状の塑性加工用潤滑剤が塗布されていること
を特徴とする、耐キズつき性と脱膜性に優れた表面潤滑
処理金属材である。 【0017】 【発明の実施の形態】以下、本発明の表面潤滑処理金属
材とその潤滑処理皮膜の形成に用いる処理液について詳
細に説明する。以下の説明において、%は特に指定のな
い限り、重量%である。 【0018】基材金属 基材金属の形状および種類は特に限定されるものではな
い。形状としては、塑性加工の主な対象となる薄板形状
のものが基材金属として広く適用されるので、以下では
おもに金属板について本発明を説明する。しかし、線
材、管材などにも適用可能である。 【0019】金属の種類としては、熱延鋼板、冷延鋼
板、ステンレス鋼板、亜鉛系めっき鋼板、アルミニウム
系めっき鋼板、アルミニウム板、チタン板等が例示され
る。中でも、美麗な表面を生かして無塗装で使用される
ことの多いステンレス鋼板やアルミニウム系めっき鋼板
(例、55%Al−Znめっき鋼板) が、本発明による優れた
耐キズつき性を最大限に発揮させるのに適した基材金属
である。 【0020】基材金属は、耐食性を向上させるために、
本発明による潤滑処理皮膜の下地としてクロメート皮膜
を有していてもよい (特に、基材金属が亜鉛系またはア
ルミニウム系めっき鋼板の場合) 。 【0021】本発明によれば、基材金属の表面に、アル
カリ可溶性の樹脂成分と潤滑性成分とシランカップリン
グ剤とを含有する処理液を塗布し、塗膜を乾燥させて、
アルカリ溶液(例、市販のアルカリ脱脂液)で容易に脱
膜できる潤滑処理皮膜を形成した後、液状の潤滑処理剤
を塗布する。次にこれらの成分について説明する。 【0022】樹脂成分 潤滑処理皮膜の主成分を構成する樹脂成分 (皮膜形成性
成分) としては、水系処理液を調製することができ、か
つアルカリ溶液による洗浄で容易に脱膜することができ
るように、水溶性または水分散性で、アルカリ可溶性の
樹脂を用いる。このような樹脂の例には、アクリル系、
エポキシ系、メラミン系、フェノール系等の水溶性また
は水分散性樹脂が挙げられ、従来より水系塗料に使用さ
れているものの中から選ぶことができる。これらのアル
カリ可溶性樹脂は、一般に酸性モノマーを共重合させる
か、酸性化合物で変性することにより、分子中に酸性基
を導入した、酸価を持つ重合体である。その重合法につ
いては何ら制限はない。 【0023】アルカリ可溶性樹脂は、ガラス転移温度が
10℃以上85℃以下のものを用いる。樹脂のガラス転移温
度が10℃未満であると、潤滑処理皮膜の耐ブロッキング
性が不十分で、その上に液状の塑性加工油を塗らない状
態で表面潤滑処理金属板を重ねて保管する時に皮膜同士
がくっついて、剥離が困難となるおそれがあり、また耐
キズつき性も劣化する。一方、樹脂のガラス転移温度が
85℃を越えると、皮膜の加工性が劣化する。ガラス転移
温度は好ましくは15℃以上60℃以下である。 【0024】また、アルカリ可溶性樹脂は、酸価が20以
上、より好ましくは30以上であることが好ましい。酸価
が20未満では、得られる潤滑処理皮膜のアルカリ溶液に
よる脱膜性が不十分となることがある。 【0025】アルカリ可溶性樹脂は、水溶性または水分
散性の1種もしくは2種以上のアルカリ可溶性樹脂を使
用しても、或いは水溶性と水分散性の両方のアルカリ可
溶性樹脂をそれぞれ1種以上づつ併用してもよい。 【0026】シランカップリング剤 本発明においては、樹脂と潤滑性成分に加えて、潤滑処
理皮膜の基材金属への密着力を強化するためにシランカ
ップリング剤を潤滑処理皮膜中に存在させる。シランカ
ップリング剤は、基材金属の表面に存在する極性基と反
応しうる加水分解性のアルコキシ基および/またはハロ
ゲンと、樹脂成分と親和性ないし反応性を持つ有機基、
特に官能基を含有する有機基とがケイ素原子に結合した
化合物であり、無機材料と有機樹脂との密着力を向上す
る作用があることは良く知られている。潤滑処理皮膜中
にシランカップリング剤を含有させることにより、絞り
加工といった厳しい塑性加工を施した場合でも皮膜の剥
離が起こりにくくなり、剥離した皮膜に起因するキズの
発生を防止できるので、耐キズつき性が飛躍的に向上す
る。 【0027】シランカップリング剤の配合量は、樹脂固
形分に対して5.0 %以下とする。配合量が5.0 %を越え
ると、樹脂皮膜の架橋が著しく進行し、塑性加工後の脱
膜性が劣化する。下限は特に制限されないが、好ましく
は0.1 %以上である。より好ましい配合量は 0.5〜3.0
%である。 【0028】本発明で用いるシランカップリング剤の種
類は特に限定されない。シランカップリング剤の例とし
ては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシ
シラン、N−(2−アミノエチル) −3−アミノプロピル
メチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル) −3
−アミノプロピルメチルメトキシシラン、3−アミノプ
ロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピル
トリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリ
メトキシシラン等が挙げられるが、これら以外のものも
使用できる。また、2種以上のシランカップリング剤を
併用することもできる。 【0029】金属石鹸 本発明における潤滑処理皮膜には、潤滑性成分として金
属石鹸を含有させる。金属石鹸としては、ステアリン酸
アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸
亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等が例示されるが、こ
れら以外のものも使用可能である。また、2種以上を使
用することもできる。金属石鹸は一般に微粒子であり、
水系処理液中に容易に分散する。 【0030】金属石鹸の配合量は、樹脂固形分に対して
0.5 %以上10%以下とする。好ましくは1〜5%であ
る。配合量が0.5 %未満では潤滑性が不十分となり、10
%を越えると、潤滑性の向上効果が飽和するのみなら
ず、樹脂皮膜の凝集強化が低下し、耐キズつき性が劣化
する。 【0031】潤滑処理皮膜 本発明の表面潤滑処理金属材は、上記のアルカリ可溶性
樹脂とシランカップリング剤と金属石鹸とを含有させた
水系処理液を基材金属表面に塗布し、必要により加熱し
て塗膜を乾燥させることにより形成した潤滑処理皮膜を
表面に有する。この潤滑処理皮膜の膜厚は0.5 μm以上
10μm以下とする。0.5 μm未満では耐キズつき性が不
十分であり、10μmを越えると逆に金型への皮膜堆積の
問題が生じる。好ましい膜厚は1.0 μm以上5.0 μm以
下である。潤滑処理皮膜は、基材金属の全表面 (例、金
属板の場合には両面) に形成しても、或いは表面の一部
だけ (例、同じく片面) に形成してもよい。 【0032】塑性加工用潤滑剤 本発明では、潤滑処理皮膜の上に液状の塑性加工用潤滑
剤を塗布して、使用に供する。この液状の塑性加工用潤
滑剤は、必ずしも潤滑処理皮膜の全面に塗布しなくても
よく、特に厳しい加工を受ける表面だけに塗布するので
もよい。この潤滑剤は、塑性加工後にアルカリ溶液によ
り潤滑処理皮膜を脱膜する際に同時に除去される。 【0033】使用する塑性加工用潤滑剤は一般に市販さ
れているような液状の塑性加工用潤滑剤であれば特にそ
の種類は限定されることはない。例えば、鉱油、合成油
等の油性潤滑剤 (いわゆる潤滑油) 、エマルジョンタイ
プ、ケミカルソリューションタイプの水溶性潤滑油等、
さらには防錆油等の油性金属処理剤が挙げられる。これ
らの塑性加工用潤滑剤は必要に応じて適量の油性剤、極
圧剤、防錆剤等の慣用の潤滑油用の添加剤を含有してい
てもよい。 【0034】本発明における潤滑処理皮膜の形成方法お
よび液状の塑性加工用潤滑剤の塗布方法は特に限定され
るものではないが、以下に標準的な手法を説明する。 【0035】前処理 潤滑処理皮膜の形成に用いる処理液は、主成分の樹脂が
水溶性または水分散性の樹脂であるため、水系である。
そのため、基材金属はアルカリ脱脂等で十分に脱脂して
おく必要がある。この脱脂が不十分であると、形成され
る皮膜に塗装はじきあるいは塗装ムラ等の欠陥が発生す
る。 【0036】処理液 処理液は、水溶性または水分散性でアルカリ可溶性の1
種もしくは2種以上を含有する水性樹脂液に、まず金属
石鹸を添加して十分に分散させた後、シランカップリン
グ剤を添加し、攪拌し、必要に応じて希釈することによ
り調製することができる。希釈はイオン交換水を用いて
行うが、濡れ性の改善、消泡・乾燥性の向上のため、水
と相溶性のよい有機溶剤(例、アルコール、ケトン等)
を添加してもよい。処理液の固形分濃度は、形成する潤
滑処理皮膜の厚さおよび塗布方法によって調整する。処
理液には、上記成分以外に、分散剤、界面活性剤などの
慣用の添加剤を少量添加してもよい。さらに、基材金属
の片面だけを潤滑処理する場合の処理面の識別や、脱膜
状況の把握が容易になるように、処理液に着色剤(顔料
または染料)を添加して、皮膜を着色してもよい。 【0037】処理液の塗布 処理液の塗布方法は基材金属の形状により異なるが、金
属板の場合はロールコーターによる塗布が最も好まし
い。ロールコーターを用いると、塗布膜厚の調整が容易
で、かつ美麗な塗装が可能である。その他、スプレー
法、刷毛塗り法、浸漬法なども適用できる。形状が複雑
な基材に対してはスプレー法、浸漬法等が実用的であ
る。 【0038】乾燥 処理液を塗布した後、乾燥して潤滑処理皮膜を形成す
る。乾燥温度は水が蒸発する程度でよいが、最高到達板
温が40〜100 ℃となる条件で行うのが効率よく好まし
い。乾燥方法としては、温風乾燥、赤外線による乾燥
等、通常用いられる方法が適用できる。 【0039】塑性加工用潤滑剤の塗布 上記の処理液の塗布と同様に、金属板の場合はロールコ
ーターによる塗布が最も好ましい。その他、スプレー
法、刷毛塗り法、浸漬法なども適用できる。塗布量は特
に制限されず、通常の範囲内であればよい。 【0040】液状の塑性加工用潤滑剤の塗布は、塗布す
ると長期保管が難しい潤滑剤 (例、一部の潤滑油) の場
合には、塑性加工の直前に行う。その場合、上記の潤滑
処理皮膜を形成した段階で表面潤滑処理金属板を保管
し、使用前に需要家が液状の潤滑剤を塗布することにな
る。上記の潤滑処理皮膜は耐ブロッキング性にも優れて
いるので、保管時に潤滑処理皮膜同士が密着しても、く
っついて剥がれにくくなることはない。一方、防錆油の
ように塗布後に保管しても支障がない場合には、上記の
潤滑処理皮膜の形成に続いて塑性加工用潤滑剤を塗布
し、この状態で保管しておけばよい。この場合には、予
め塑性加工用潤滑剤が塗布されているので、需要家は直
ちに塑性加工に使用することができる。 【0041】本発明の表面潤滑処理金属材は、潤滑処理
皮膜と基材金属との密着力が強く、優れた耐キズつき性
を有しており、また潤滑処理皮膜の上にさらに液状の塑
性加工用潤滑剤が塗布して潤滑性能を向上させているた
め、プレス加工を複数回行ってもキズ発生が防止できる
という優れた潤滑性能を示す。さらに、後述する実施例
に示すように、脱膜性にも優れている。 【0042】 【実施例】以下実施例により、本発明の詳細を説明す
る。 【0043】表1に示したガラス転移温度(Tg)および酸
価を有する各種のアルカリ可溶性樹脂が水中に溶解ない
し分散している樹脂液に、まず金属石鹸を添加し、十分
に攪拌して分散させてから、シランカップリング剤を添
加して混合することによって、表2に示す固形分組成を
持った水系処理液を調製した。処理液の総固形分濃度
は、イオン交換水を添加して20%に調整した。 【0044】この処理液を、表面をアルカリ脱脂したス
テンレス鋼板 (SUS430、2B仕上げ、板厚1.2mm)の両面に
バーコーターで塗布し、最高到達温度が60℃になるよう
に熱風炉で5分間乾燥して、潤滑処理皮膜を形成した。
さらに、片面の潤滑処理皮膜の上に、刷毛塗り法にて塑
性加工用潤滑剤 [40℃での粘度が56 cStのプレス加工油
#660[スギムラ化学工業製または油性防錆油] を塗布
し、試験板を得た。この試験板を下記の試験に供し、そ
の性能を調査した。 【0045】耐キズつき性評価試験 図1に示す簡易的な摺動試験装置を用い、下記の条件で
研磨したダイスを試験片に押しつけながら試験片を摺動
させることにより試験を行い、摺動部のキズを目視観察
して、下記の判定基準により耐キズつき性の評価を行っ
た。◎または○であれば良好とした。 【0046】 ダイス研磨紙 :#600 ダイス研磨方向:平行研磨 押し付け圧 :0.66 Mpa(66 g/mm2) 試験片採取方向:圧延方向 試験片形状 :1.2 mm厚×30mm幅×150 mm長さ 摺動長さ :50 mm ×繰り返し5往復 【0047】脱膜性評価試験 市販のアルカリ脱脂液 (日本パーカライジング社製、FC
-L-4480)の2%水溶液を使用し、温度40℃、スプレー圧
1kg/cm2で10秒間スプレーすることにより脱膜した後、
水はじきの有無を目視にて判定し、脱膜性を以下の基準
で判定した。○であれば良好とした。 【0048】 ○:水はじきなし △:水はじき一部あり ×:水はじき全面発生。 【0049】評価結果を表2に併せて示す。この結果か
ら明らかなように、実施例として示した本発明の表面潤
滑処理金属材は、塑性加工を反復しても優れた耐キズつ
き性を示し、同時に脱膜性も良好であった。 【0050】 【表1】 【0051】 【表2】【0052】 【発明の効果】本発明の表面潤滑処理金属材は、潤滑処
理皮膜の基材金属への密着力に優れており、絞り加工と
いった厳しい塑性加工を繰り返し受けても皮膜の剥離が
起こりにくいため、塑性加工時に金型との接触による表
面キズが発生せず、成形後の脱膜性にも優れている。 【0053】従って、従来は塑性加工中のキズつきを防
止するためビニールシートを貼合して成形していた、ス
テンレス鋼板やアルミニウム系めっき鋼板といった、加
工後に無塗装で使用されることが多い美麗な表面を持っ
た金属材に対しても、十分に適用しうるものである。そ
れにより、このような金属材の塑性加工の作業性が著し
く改善され、かつビニールシートの廃棄の問題も解消さ
れる。
【図面の簡単な説明】 【図1】実施例において耐キズつき性評価試験に用いた
簡易型の摺動試験装置の概略説明図である。 【符号の説明】 1:材料、2:ダイス、3:ホルダー、4:荷重、5:
スライドテーブル
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭61−231177(JP,A) 特開 昭51−147438(JP,A) 特開 平1−110140(JP,A) 特開 平2−38042(JP,A) 特開 平8−168723(JP,A) 特開 昭52−104459(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B32B 1/00 - 35/00 B05D 1/00 - 7/26 C23C 22/00 - 22/86

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 基材金属の表面に、ガラス転移温度が10
    ℃以上85℃以下の水溶性または水分散性でアルカリ可溶
    性の少なくとも1種の樹脂と、このアルカリ可溶性樹脂
    固形分に対して5.0 重量%以下のシランカップリング剤
    および0.5 重量%以上10重量%以下の金属石鹸とを含有
    する水系処理液から形成された、膜厚が0.5 μm以上10
    μm以下の潤滑処理皮膜を有し、この皮膜上に液状の塑
    性加工用潤滑剤が塗布されていることを特徴とする、耐
    キズつき性と脱膜性に優れた表面潤滑処理金属材。
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