JP3510700B2 - 耐銹性に優れたステンレス鋼 - Google Patents
耐銹性に優れたステンレス鋼Info
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Description
用や自動車モール用素材などとして、湿潤大気環境下で
の耐銹性に優れたステンレス鋼に関する。
CrやMoを多量に合金化する方法と水素−窒素混合ガ
ス中での光輝焼鈍で表面に耐銹性に優れた皮膜を形成さ
せる方法とがある。前者は合金化によるコスト増加を招
くため、特に安価な素材が要求される建築建材や自動車
・輸送機器用としては好ましくないため、後者の光輝焼
鈍を利用した高耐食化方法について種々の研究や発明が
なされている。
iを重量%で0.3%以上含むステンレス鋼を800〜
1100℃で光輝焼鈍することにより、Si分を30原
子%以上含む非晶質シリカ(SiO2 )を主成分とする
皮膜を形成させて耐銹性を高める方法が開示されてい
る。特開昭63−235461号公報には、SiO2 皮
膜の耐銹性にとってAlが有害であるとの発見から、鋼
中Al量と酸化皮膜中Al量に上限を規定したステンレ
ス鋼が開示されている。その主旨は、Al含有量が0.
05重量%以下のステンレス鋼を960℃以上1040
℃以下で光輝焼鈍し、表面にCを除いた原子%で金属状
態のFeを10原子%以下、酸化物状態のAlを60原
子%以下とし、残部がSiO2 とその他の金属酸化物か
らなる酸化皮膜を形成させる耐銹性に優れたステンレス
鋼の製造方法である。
は、SiO2 皮膜の耐銹性にとってNbが有効に作用す
るとの発見に基づき、光輝焼鈍材の皮膜の表層2.0nm
に含まれるSiとNbの平均原子%の比をNb/Si=
0.1〜0.3とすると、耐銹性が向上することが開示
されている。さらに鋼中Siの酸化に頼らない方法とし
て、特開平5−125558号公報にはステンレス鋼の
酸化皮膜をクロムと化学結合した窒素を4原子%以上含
有させることにより耐候性が向上することが開示されて
いる。
厳しくなってきており、より一層の耐銹性向上が求めら
れている。特に、近年、ステンレス鋼は、建築物の内外
装材や自動車モール材などとして広く利用されている
が、海塩粒子や亜硫酸ガスなど腐食性因子が多い環境で
は、発銹やしみなどの腐食損傷が問題となっている。特
に、近年、酸性雨やSO2 ガスの増加、臨界地域開発に
伴う高濃度海塩粒子環境でのステンレス鋼建材の使用、
さらに輸送機器においては冬季の安全確保のための塩化
物系融雪剤散布など、腐食環境は厳しくなってきてお
り、コスト増加を招く高合金化ではない安価な高耐食化
技術の開発が求められている。
うな技術の現状にかんがみてなされたものであり、耐銹
性に優れたステンレス鋼を安価に提供することを目的と
してなされた。
鋼の耐銹性を改善すべく、鋼中成分と光輝焼鈍で生成す
る皮膜組成との関係、さらに光輝焼鈍条件と生成する皮
膜組成や厚さの関係、光輝焼鈍で生成する皮膜性状と耐
銹性との関係などについて研究を行った結果、Tiを添
加したステンレス鋼を窒素ガスを含む雰囲気中で110
0℃以上で焼鈍すると、酸化皮膜中にTiと化学結合し
たNを含む酸化皮膜が生成し、耐候性が著しく向上する
ことなどの全く新しい知見を得た。
であって、その要旨とするところは下記の通りである。
すなわち重量%にて、 C :0.1%以下、 Si:2%以下、 Mn:1.5%以下、 P :0.1%以下、 S :0.05%以下、 Cr:15%以上50
%以下、 Ti:0.03%以上2.0%以下 を含み、必要に応じて Ni:2%以上35%以下、 Cu:0.05%以上
2.0%以下、 Mo:0.5%以上6.0%以下の1種または2種以上 を含有し、残部はFeと不可避不純物とからなるステン
レス鋼の表面に、1100℃以上で焼鈍することにより
生成する、Cを除いた原子%で、Tiと化学結合したN
を4%以上含む酸化皮膜を有することを特徴とした耐銹
性に優れたステンレス鋼である。
表面酸化皮膜組成の限定理由について詳細に説明する。 (1)ステンレス鋼の成分範囲 Cは、それ自体では光輝焼鈍皮膜の耐銹性には影響しな
いが、過度に含有すると鋼板の靭性を劣化するため、
0.1重量%以下とした。
低減し熱間加工性を確保するためにある程度添加する必
要があるが、深絞りや曲げなどの加工性を阻害するた
め、Siの添加量は2%を上限とした。Mnは、脱酸や
脱硫作用があり鋼材の熱間加工性を改善する。また、そ
れ自体は光輝焼鈍皮膜の耐銹性には影響しないが、多量
に添加してもコスト上昇に見合った熱間加工性改善効果
を期待できないため、1.5重量%以下とした。
耐銹性にとって有害であるので、0.1重量%以下とし
た。Sは、主にMnSなどの介在物として存在し、発銹
の輝点となる。このため、上限を0.05重量%とし
た。
が破壊された際の補修作用を高める。しかし、15重量
%未満ではその効果が弱く所望の結果を期待できず、5
0重量%を超えて添加した場合には、耐銹性は極めて向
上するが、加工性が著しく劣化する。このため、上限を
50重量%とした。また、Cr添加量が比較的少ない場
合には、光輝焼鈍皮膜による耐銹性改善効果が薄れるた
め、特に耐銹性を高める必要がある場合には、Crを2
0重量%以上添加することが望ましい。Tiは、光輝焼
鈍時にガス中の窒素と反応し、皮膜中に濃化し耐銹性を
高める。しかし、過度に添加すると表面肌にキズが発生
しやすくなることから、添加量の上限を2.0重量%と
した。
量に濃縮することはないが、鋼中に存在し膜破壊時の皮
膜補修性改善に作用し、光輝焼鈍材の耐酸性や耐銹性を
向上させる。したがって、皮膜中のNとTiによる耐銹
性改善が不十分な場合には、必要に応じてCu,Ni,
Moの中から1種類以上を添加し、耐銹性を補う必要が
ある。しかし、過度の添加はコスト上昇を招くため、C
uは0.05%以上2.0%以下、Niは2%以上35
%以下、Moは0.5%以上6.0%以下とした。
Nは、皮膜の耐銹性を向上させる作用がある。耐銹性向
上を期待するには、酸化皮膜組成としては、Cを除いた
原子%で、Tiと化学結合したNが4%以上とする必要
がある。さらに耐銹性を高める必要がある場合には、鋼
中Ti量を増やすか光輝焼鈍時間を長くして10原子%
以上とすることが望ましい。
は、X線光電子分光法(XPS)のTi2p3/2 ピークにお
いて、結合エネルギー453.5〜456.0eVに現れ
るピーク強度によって定量されるものである。本発明者
は、スパッタリングでSUS304上に作製したTiN
膜と、純Ti上のTiO2 膜とを標準試験片として計測
した。また、皮膜中での濃度は、皮膜内の平均組成であ
る。
した手順で酸化皮膜の厚さを定義した場合のものであ
る。すなわち、Arイオンスパッタリングによりステン
レス鋼の酸化皮膜を最表層から徐々に削って行きなが
ら、X線光電子分光法により表面組成の変化を測定す
る。そして、酸化皮膜表層付近の酸素濃度OF と金属素
地部分の酸素濃度OM の算術平均値((OF +OM )/
2)を求める。ここで、スパッタリングにより皮膜がな
くなると、酸素濃度がゼロ原子%に近い一定値になるこ
とから、下地金属の露出と金属素地部分での酸素濃度を
知ることができる。
リング時間に対する変化曲線から、酸素濃度が(OF +
OM )/2となる時点を求め、ここを酸化皮膜と金属素
地の界面とし、スパッタリング開始時点の最表層からこ
の皮膜/金属界面までの距離を膜厚とする。そして、皮
膜内の平均組成とは、図1に示したように、以上の手順
で決めた皮膜中における注目する元素濃度の平均値であ
る。なお、ここでいう皮膜組成とは、100μm×10
0μmよりも広い範囲での平均値である。また、皮膜組
成とはX線光電子分光法による分析値である。
して変化する。さらにArイオンスパッタリングやエリ
プソメトリーなどの計測手法に依存して測定値が異なり
絶対値の決定が困難である。そのため、明確に膜厚の範
囲は記述できないが、おおむね2.0nm以上であれば、
耐銹性向上機能を発揮する。しかし、500nmを超えた
場合には干渉色が発生し、装飾用としてはあまり実用的
ではない。
がある。窒素の容量が少なくても反応時間を長くするこ
とで、NをTiと反応させて皮膜中に取り込むことが可
能である。むしろ、ガス組成よりも、光輝焼鈍過程で耐
銹性の悪いFe2 O3 やCr2 O3 などの生成を抑制す
るために、露点の低い還元性ガスを主成分とした混合ガ
スを使用する必要がある。昇温過程も含めて露点を下げ
るには、水素ガスを主成分とする方法が最も容易であ
る。したがって、本願の組成を有する皮膜を作製するに
は、露点が−35℃以下で、窒素を10〜50%程度含
む水素と窒素の混合ガスを使用することが望ましい。
あり、高温ほど好ましい。高温焼鈍ほどTiが拡散しや
すく優先的にNと反応する。しかし、鋼の再結晶温度を
超えて高温で焼鈍を行うと、結晶粒が粗大化し機械的な
特性が劣化する。そこで、適量のNbを添加し再結晶温
度を高めたり、短時間加熱を行うなどして結晶粒の粗大
化を抑制する必要がある。
表1に示した各組成のステンレス鋼を真空炉にて溶解
し、通常の方法で熱間圧延、焼鈍、冷間圧延を行い、厚
さ0.5mmで縦50mm、横40mmの大きさの試験片を作
製した。これらを露点を−48℃に制御した水素75容
量%の混合ガス中で焼鈍した。焼鈍には赤外線加熱の炉
を使用し、150℃・s-1の昇温速度で所定の温度まで
加熱炉冷した。加熱、均熱、冷却過程を通して水素−窒
素の混合ガスを試験片に吹き付けた。また、ガスの流量
制御により、冷却速度は400℃以上の領域では15℃
・s-1以上、400〜100℃でも10℃・s-1程度に
なるようにした。
発銹状態から判定した。これは、人工海水噴霧(35
℃、4時間)、乾燥(60℃、2時間)、湿潤(相
対湿度95%以上、50℃、2時間)を1サイクルとし
たサイクル腐食試験で、5サイクル試験した際の発銹面
積率を画像解析装置で計測した。また、光輝焼鈍皮膜の
組成は、X線光電子分光法とArイオンスパッタリング
の併用により分析した。皮膜の分析結果は、Cを除いた
原子%で表した。
試験結果であり、Ti添加量が増えるほど皮膜中のTi
と化学結合したNの量も増えて耐銹性が向上することが
分かる。これに対して、6は3の素材を100%水素中
で焼鈍したもので、下地成分は本発明の範囲内であるが
皮膜にTiと化学結合したNが含まれていないものであ
る。この材料は、極めて耐銹性が悪い。7〜10は、3
の下地材を使用して焼鈍温度を変化させて皮膜中のTi
と化学結合したNの量を変えたものである。温度を高め
るほどTiと化学結合したNの量が増し、耐銹性が向上
する。図2は、1〜10および21の皮膜中のTiと化
学結合したN量とサイクル腐食試験での発銹面積率の関
係を示した図である。Tiと化学結合したNが4at%を
超えると耐銹性が著しく向上することが分かる。
0は、皮膜の耐銹性を補うために添加するNi,Cu,
Moの効果を調査したものである。いずれも皮膜中のT
iと化学結合したNの量は同程度であるが、Ni,C
u,Moの添加量が増えるほど耐銹性が向上することが
分かる。また、21は湿式研磨を行った比較材である。
材料が要求される、建築建材や輸送用機器など各種用途
に適したステンレス鋼を提供することが可能であり、本
発明は、工業上極めて有用な効果をもたらす。
腐食試験での発銹面積率との関係を示した図である。
Claims (2)
- 【請求項1】 重量%にて、 C :0.1%以下、 Si:2%以下、 Mn:1.5%以下、 P :0.1%以下、 S :0.05%以下、 Cr:15%以上50%以下、 Ti:0.03%以上2.0%以下 を含有し、残部はFeと不可避不純物とからなるステン
レス鋼の表面に、1100℃以上で焼鈍することにより
生成する、Cを除いた原子%で、Tiと化学結合したN
を4%以上含む酸化皮膜を有することを特徴とした耐銹
性に優れたステンレス鋼。 - 【請求項2】 請求項1の鋼組成にさらに、重量%で Ni:2%以上35%以下、 Cu:0.05%以上2.0%以下、 Mo:0.5%以上6.0%以下のうち1種以上を含有
することを特徴とする請求項1記載の耐銹性に優れたス
テンレス鋼。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP08728495A JP3510700B2 (ja) | 1995-04-12 | 1995-04-12 | 耐銹性に優れたステンレス鋼 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP08728495A JP3510700B2 (ja) | 1995-04-12 | 1995-04-12 | 耐銹性に優れたステンレス鋼 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH08283916A JPH08283916A (ja) | 1996-10-29 |
JP3510700B2 true JP3510700B2 (ja) | 2004-03-29 |
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ID=13910498
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP08728495A Expired - Lifetime JP3510700B2 (ja) | 1995-04-12 | 1995-04-12 | 耐銹性に優れたステンレス鋼 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3510700B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US20190127831A1 (en) * | 2016-03-15 | 2019-05-02 | Colorado State University Research Foundation | Corrosion-resistant alloy and applications |
-
1995
- 1995-04-12 JP JP08728495A patent/JP3510700B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH08283916A (ja) | 1996-10-29 |
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