JP3508891B2 - 通気性成形型及び熱可塑性樹脂成形品の成形方法 - Google Patents

通気性成形型及び熱可塑性樹脂成形品の成形方法

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JP3508891B2 JP27713195A JP27713195A JP3508891B2 JP 3508891 B2 JP3508891 B2 JP 3508891B2 JP 27713195 A JP27713195 A JP 27713195A JP 27713195 A JP27713195 A JP 27713195A JP 3508891 B2 JP3508891 B2 JP 3508891B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、通気性成形型及び
成形方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、鏡面の
ように平滑な、又は皮革のように微細な柄及び凹凸模様
の表面を有する熱可塑性樹脂成形品を得るのに好適な通
気性成形型及び該成形型を用いる熱可塑性樹脂成形品の
成形方法に関する。
【0002】
【従来の技術】微細な模様の表面を有する熱可塑性樹脂
成形品は、通常、真空成形、圧空成形、圧縮成形、ブロ
ー成形などにより成形されている。これらの成形には微
細模様の表面を再現する成形型が必要である。
【0003】この目的の成形型は、真空又は空気加圧の
ための通気孔を有するが、成形品に通気孔の跡が残らな
いように、近年無数の微細な通気孔を型全体に有する成
形型が用いられるようになった。
【0004】熱可塑性樹脂板を、型を用い、空気圧力差
を利用して成形する方法は広く行われている。もっとも
容易な成形法の一つは真空成形であり、真空成形におい
ては、加熱により軟化した熱可塑性樹脂板の周辺部を型
に固定し、真空によって熱可塑性樹脂板を型面に引き付
けて成形する。
【0005】また、圧空成形においては、加熱により軟
化した熱可塑性樹脂板の周辺部を型に固定し、圧縮空気
によって熱可塑性樹脂板を型面に押し付けて成形する。
【0006】真空成形においても、圧空成形において
も、成形型は通気性を有することが必要であり、通常は
通気性は成形型に細孔を設けることによって与えられ
る。しかし、空気圧力差を利用した成形においては、熱
可塑性樹脂板は加熱により軟化した状態で成形型に押し
付けられるため、成形品表面に通気のための細孔による
型痕が生ずることは避けられず、美観を要求される成形
品にとって大きな問題となっている。
【0007】型痕を目立たなくするために細孔径を小さ
くすると、通気量が低下するために生産性が低下し、一
方、細孔径を大きくして通気量を増し生産性を上げる
と、型痕が目立つようになる。このため、細孔径を小さ
くしながら大きい通気量を確保するための研究がなさ
れ、さまざまな提案がなされている。
【0008】例えば、特公昭51−7452号公報に
は、模型に対して金属を溶射して多孔質型体を形成する
方法が提案されている。しかし、溶射された金属の流動
及び固化の状態は温度によって微妙に変化するので、金
属の溶射によって制御された細孔を有する多孔質層を形
成することは容易ではない上に、金属溶射装置は高価で
操業費も高く、模型も耐熱性を必要とするために高価と
なる。
【0009】特開昭51−40327号公報には、金属
粒子を焼結し、又は細粒の砂を樹脂で結合することによ
り多孔質材料とする、真空造型法により鋳型を製造する
ための鋳物模型が提案されている。しかし、金属粒子の
焼結には特殊な高価な設備を必要とし、高温加熱を必要
とするために操業費も高く、かつ寸法精度の維持に難が
あり、また、これらの粒子を結合する方法によると、通
気量を大きくするためには大きい粒子を使用する必要が
あり、粒子径が大きくなると必然的に多孔質材料の表面
が粗くなることを免れないという問題がある。
【0010】特開昭60−152692号公報には、電
導性付与塗膜に塩化ビニルラッカー液などの絶縁物質を
混入したスプレー液を噴射し、乾燥したのち電鋳するこ
とにより成形用金型を得る方法が提案されている。しか
し、電鋳には長時間を要し、高価となる。
【0011】特開昭63−297005号公報には、微
細粒子を熱硬化性樹脂と混合して有機溶媒で希釈し、希
釈した混合物を模型に塗布後乾燥、硬化してポーラス型
本体を形成し、さらにポーラス型本体から空気を吹き出
しながら表面をめっきすることにより、ポーラス型を得
る方法が提案されている。しかし、この方法は有機溶媒
を使用するので作業環境及び地球環境を汚染するおそれ
があり、必要な厚さを得るためには塗布を繰り返す必要
があり、さらにめっき工程を経るなど、工程が長くかつ
煩雑である。
【0012】特開平2−308858号公報には、二液
反応型有機高分子化合物質に有機高分子化合物質の粉末
を含有せしめて硬化した、真空成形などの成形分野に利
用可能な多孔性有機高分子化合物質が提案され、エポキ
シ樹脂とポリ塩化ビニル樹脂粉末が例示されている。し
かし、この方法によっては確実に通気性を有する細孔を
形成することは容易ではない。
【0013】特公平5−50373号公報には、表面に
合成樹脂層を有する硬質球状体を加熱し、連続気孔を残
しながら硬質球状体を互いに結合することにより通気性
成形型を製造する方法が提案されている。しかし、この
方法も球状体を使用するために、通気量を大きくするた
めには粒径の大きい球状体を用いて表面平滑性を犠牲に
しなければならない。
【0014】特開平6−220683号公報には、模型
表面に網状体を貼りつけて電鋳を行い、電鋳被覆部を薄
く電着させたのち模型から剥がし、さらに電鋳を行って
得られる多数の貫通孔を備えた三次元形状の型用電鋳殻
が提案されている。しかし、この方法は網状体を出発材
料とするので電鋳を厚く行っても網目模様は残り、平滑
な表面や精緻な模様を有する表面を得ることは困難であ
る。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、平滑性に優
れた鏡面又は精緻な模様の型表面を有し、しかも通気量
の大きい通気性成形型、及び、熱可塑性樹脂板より鏡面
状態の表面又は精緻な模様の表面を有する成形品を生産
性よく製造する成形方法を提供することを目的としてな
されたものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の課
題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、熱硬化性樹脂
に、硬化前は相溶し、硬化後は相溶性を失って分離する
有機液体を配合して硬化することにより多孔質樹脂表面
層を形成し、さらにその裏面に接点部において接着した
硬質粒子よりなる多孔質裏打ち層を形成することによ
り、表面状態が良好で、しかも通気量が大きい通気性成
形型を得ることができることを見いだし、この知見に基
づいて本発明を完成するに至った。
【0017】すなわち、本発明は、以下の(1)〜
(5)を提供することを特徴とする。 (1)熱硬化性樹脂、硬化前の該熱硬化性樹脂には相
溶するが、硬化後の該熱硬化性樹脂には相溶性を失って
分離する有機液体及び充填剤を含有する熱硬化性樹脂組
成物を硬化してなる表裏両面を連通する細孔を有する多
孔質樹脂表面層と、平均粒径10〜1,000μmの硬
質粒子を合成樹脂バインダーで接着させてなる多孔質裏
打ち層からなる通気性成形型を提供する。
【0018】(2)熱可塑性樹脂成形品の成形面に対
応する表面を有する模型の周囲に型枠をめぐらし、該表
面上に、熱硬化性樹脂、硬化前の該熱硬化性樹脂には相
溶するが、硬化後の該熱硬化性樹脂には相溶性を失って
分離する有機液体及び充填剤を含有する熱硬化性樹脂組
成物を厚さ10〜1,000μmの膜状に塗布し、これ
を硬化することにより、分離した有機液体が充満した表
裏両面を連通する細孔を有する多孔質樹脂表面層を形成
し、次いで該多孔質樹脂表面層と型枠とにより形成され
る空間部に、合成樹脂バインダーを表面に被覆した平均
粒径10〜1,000μmの硬質粒子を充填して加熱す
ることにより、硬質粒子間及び硬質粒子と多孔質樹脂表
面層の相互間を合成樹脂バインダーで接着させて多孔質
裏打ち層を形成し、しかるのち模型及び型枠を取り外
し、加圧又は減圧により細孔内の有機液体を除去して得
られる、多孔質樹脂表面層及び多孔質裏打ち層を有する
通気性成形型を提供する。
【0019】(3)第(1)項又は第(2)項記載の
通気性成形型の多孔質樹脂表面層側に、加熱により軟化
した熱可塑性樹脂板を設置し、多孔質裏打ち層側を減圧
することにより、該熱可塑性樹脂板を通気性成形型の多
孔質樹脂表面層側に密着させることを特徴とする熱可塑
性樹脂成形品の成形方法を提供する。
【0020】(4)第(1)項又は第(2)項記載の
通気性成形型を用いた熱可塑性樹脂成形品の成形方法
おいて、多孔質樹脂表面層が共に雌型である一対の通気
性成形型を対面配置し、両雌型の間に加熱により軟化し
た熱可塑性樹脂製のパリソンを介在させて両雌型を接面
し、次いで両雌型の多孔質裏打ち層側を減圧することに
よりパリソンの外面に通気性成形型の表面形状を転写す
ることを特徴とする熱可塑性樹脂成形品の成形方法を提
供する
【0021】(5)第(1)項又は第(2)項記載の
通気性成形型を用いた熱可塑性樹脂成形品の成形方法
おいて、多孔質樹脂表面層が雄型及び雌型である一対の
通気性成形型を形成し、雄型及び雌型の間に加熱により
軟化した熱可塑性樹脂板を介在させてプレス成形すると
ともに、一方の通気性成形型の多孔質裏打ち層側を減圧
し、他方の通気性成形型の多孔質裏打ち層側を加圧する
ことにより、熱可塑性樹脂板の片面に多孔質裏打ち層側
を減圧した通気性成形型の表面形状を転写することを特
徴とする熱可塑性樹脂成形品の成形方法を提供する。
【0022】
【発明の実施の形態】本発明の通気性成形型は、熱硬化
性樹脂、硬化前の熱硬化性樹脂には相溶するが硬化後の
熱硬化性樹脂には相溶しない有機液体及び充填剤を含有
する熱硬化性樹脂組成物を硬化してなる表裏両面を連通
する細孔を有する多孔質樹脂表面層を有する。
【0023】本発明に使用する熱硬化性樹脂は、重合に
おいて、架橋結合を生じ三次元化しながら高分子化する
樹脂であり、したがって、加熱によって高分子化するも
ののほか、樹脂と硬化剤を混合することにより室温又は
室温以下の低温で架橋反応が起こり高分子化する樹脂
も、本発明において使用することができる。
【0024】熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ
樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシアクリレート
樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、
メラミン樹脂、フタル酸樹脂、シリコーン樹脂などを挙
げることができる。
【0025】エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェ
ノールA型樹脂、ビスフェノールF型樹脂、ビスフェノ
ールAD型樹脂、フェノールノボラック型樹脂、クレゾ
ールノボラック型樹脂、環状脂肪族エポキシ樹脂、グリ
シジルエステル系樹脂、グリシジルアミン系樹脂、複素
環式エポキシ樹脂などを使用することができる。
【0026】本発明の通気性成形型の製造に用いる熱硬
化性樹脂組成物においては、硬化剤を配合することがで
きる。硬化剤は、熱硬化性樹脂の種類、硬化条件などに
応じて適宜選定することができる。
【0027】硬化剤は、熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂で
ある場合は、例えば、脂肪族ポリアミン、芳香族ポリア
ミン、第三級アミン、ポリアミドアミン、ポリメルカプ
タン、フェノール樹脂、メラミン樹脂、酸無水物、イミ
ダゾール類、ヒドラジッド付加物、ジシアンジアミドな
どを使用することができる。
【0028】硬化剤は、熱硬化性樹脂が不飽和ポリエス
テル樹脂である場合は、例えば、メチルエチルケトンパ
ーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブ
チルパーオキシピバレートなどの過酸化物や、アゾビス
イソブチロニトリルなどのアゾ化合物などを使用するこ
とができ、さらに必要に応じてコバルトの有機酸塩など
の促進剤を加えて常温硬化型とすることができる。
【0029】また、不飽和ポリエステル樹脂及びエポキ
シアクリレート樹脂は、紫外線、電子線などによっても
硬化することができ、紫外線硬化の場合には、ジメチル
ベンジルケタールなどの光重合開始剤を併用することが
できる。
【0030】ポリウレタン樹脂は、ポリオール及びポリ
イソシアネートを主成分として配合するものであり、ポ
リオール又はポリイソシアネートの一部を三官能性以上
の化合物とし、あるいは、他の三官能性以上の反応性化
合物を配合することにより、樹脂を三次元架橋型とする
ことができる。本発明に用いる熱硬化性樹脂組成物に
は、熱硬化性樹脂の硬化前は熱硬化性樹脂に相溶し、熱
硬化性樹脂が三次元化して硬化した後は樹脂と相溶しな
い有機液体を含有せしめる。
【0031】硬化前の熱硬化性樹脂は、一般に極性の高
い化合物であるので、極性を有する多くの有機液体が相
溶し、硬化後の熱硬化性樹脂は三次元化するので多くの
有機液体は相溶性を失って分離する。
【0032】本発明においては、熱硬化性樹脂の硬化前
には相溶し、硬化後に相溶しない有機液体であれば特に
制限なく使用することができるが、このような有機液体
としては、例えば、炭素数14〜22の一塩基脂肪酸又
はヒドロキシ一塩基脂肪酸と炭素数1〜4のアルコール
の脂肪酸エステル、炭素数5〜10のアルキル基又は炭
素数6〜10のアリール基若しくはアルキルアリール基
を有するトリアルキルホスフェート、トリアリールホス
フェート、アルキルジアリールホスフェート又はジアル
キルアリールホスフェート、フタル酸又は炭素数4〜1
6の脂肪族二塩基酸と炭素数8〜10のアルコールとの
エステル、炭素数2〜24の脂肪酸とポリアルキレング
リコールの脂肪酸エステル、炭素数8〜24の脂肪酸と
モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノプロ
パノールアミン又はジプロパノールアミンの脂肪酸アミ
ド、炭素数2〜24の脂肪酸とグリセリン−ソルビタン
縮合物のエステル、動植物油、水添動植物油、流動パラ
フィン、塩素化パラフィンなどを挙げることができる。
【0033】さらに、前記ホスフェート類の具体例とし
ては、トリオクチルホスフェート、トリス(ジクロロプ
ロピル)ホスフェート、トリフェニルホスフェート、ト
リクレジルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニ
ル)ホスフェート、オクチルジフェニルホスフェートな
どを、また、前記二塩基酸エステルの具体例としては、
ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジ−n−ノニルフ
タレート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジイソ
デシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート
などを挙げることができる。これらの有機液体は、1種
を単独で使用することができ、あるいは2種以上を混合
して使用することができる。
【0034】本発明に使用する熱硬化性樹脂組成物にお
いて、有機液体の配合量には特に制限はないが、通常は
熱硬化性樹脂及び硬化剤の合計量100重量部当たり5
〜50重量部であることが好ましい。
【0035】有機液体の配合量が熱硬化性樹脂及び硬化
剤の合計量100重量部当たり5重量部未満であると、
多孔質表面における細孔の存在量が少なく、通気性成形
型が十分な通気量を有しないおそれがある。有機液体の
配合量が熱硬化性樹脂及び硬化剤の合計量100重量部
当たり50重量部を超えると、多孔質表面における細孔
の直径が大きくなりすぎたり、硬化した熱硬化性樹脂の
強度が不足したりするおそれがある。
【0036】本発明において、熱硬化性樹脂と有機液体
の相溶性は、目的とする通気性成形型の性能に応じて適
宜選択することができる。熱硬化性樹脂と有機液体の相
溶性が良い範囲の中で比較的小さい場合は、有機液体は
硬化の比較的早い段階から分離し、直径の大きい細孔が
形成される。熱硬化性樹脂と有機液体の相溶性が良い範
囲の中で比較的大きい場合は、有機液体は硬化の比較的
遅い段階に達してから分離し、直径の微細な細孔が形成
される。
【0037】本発明の成形型の樹脂表面層の細孔は、大
部分は0.2〜10μmの範囲に分布するものであるこ
とが好ましい。個数基準の平均径は0.01〜100μ
mが好ましく、より好ましくは0.5〜10μmであ
る。平均径が0.01μmより小さいと通気性が乏しく
なり易く、又、平均径が100μmを超えると樹脂表面
層の表面粗度が粗くなり、鏡面や微細な起伏の表面を形
成し難くなる。
【0038】本発明に使用する熱硬化性樹脂組成物に
は、必須成分として充填剤が含有される。充填剤として
は炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、シリカ、アル
ミナ、カーボンブラックなどが用いられる。充填剤は形
状が球又は楕円体など球に近いものが好ましく、平均粒
径が0.01〜10μmのものが用いられる。
【0039】充填剤の配合量は、熱硬化性樹脂100重
量部に対し10〜500重量部であることが好ましく、
80〜300重量部であることがより好ましい。充填剤
の配合量が、熱硬化性樹脂100重量部に対し10重量
部未満であると、熱硬化性樹脂組成物の粘度が低すぎて
硬化前の賦形の段階で形状が不安定となるおそれがあ
る。また、充填剤の配合量が、熱硬化性樹脂100重量
部に対し500重量部を超えると、本発明の通気性成形
型の目的である均一な空孔が得られ難く、また高粘度の
ため賦形し難くなるおそれがある。
【0040】本発明に使用する熱硬化性樹脂組成物にお
いては、必要に応じて、顔料、染料などの着色剤、レベ
リング剤、離型剤などを添加することができる。
【0041】本発明の通気性成形型の多孔質樹脂表面層
は、熱硬化性樹脂、硬化前の熱硬化性樹脂には相溶する
が硬化後の熱硬化性樹脂には相溶しない有機液体及び充
填剤を含有する熱硬化性樹脂組成物を、熱可塑性樹脂成
形品の成形面に対応する模型表面に塗布して硬化する。
【0042】熱硬化性樹脂組成物を塗布する方法には特
に制限はなく、刷毛塗り、スプレーなどにより塗布し、
あるいは模型が平面である場合にはドクターブレードな
どにより塗布することができる。硬化前の熱硬化性樹脂
は粘度が低いので、模型の表面を忠実に再現し、鏡面仕
上げの表面や牛革状のしぼ模様など精緻な模様を有する
多孔質樹脂表面層を形成することができる。
【0043】模型の表面の再現性の点からは、一般には
熱硬化性樹脂組成物の粘度は低いことが好ましいが、模
型表面に水平面に対する傾斜が強い部分がある場合に
は、樹脂組成物の流下を防ぐためにある程度の粘度を有
することが好ましい。
【0044】本発明の通気性成形型の多孔質樹脂表面層
の細孔の直径及び長さは一定ではないので、厳密にはポ
アズイユの法則は成立しないが、近似的には通気量は膜
の厚さに反比例し、かつ同一の樹脂組成物を同一条件で
硬化した場合に得られる細孔の直径はほぼ同じであるの
で、膜の厚さを変更することにより通気量を制御するこ
とができる。
【0045】本発明において、多孔質樹脂表面層の厚さ
には特に制限はないが、通常は厚さ10〜1,000μ
mとすることが好ましい。多孔質樹脂表面層の厚さが1
0μm未満である場合は、表面層に欠陥が生じるおそれ
がある。多孔質樹脂表面層の厚さが1,000μmを超
えると、表面層の表裏両面に貫通しない細孔が生じるお
それがある。
【0046】本発明の通気性成形型の製造に際しては、
有機液体を含有する熱硬化性樹脂組成物を塗布したのち
室温下で又は加熱することにより、熱硬化性樹脂は架橋
し三次元化しつつ高分子化する。加熱条件は熱硬化性樹
脂及び硬化剤の組み合わせに応じて温度及び時間を適切
に選択することができ、場合によっては常温において高
分子化する組み合わせを選ぶことが可能である。
【0047】一般に高温に加熱することにより硬化に必
要な時間を短縮することができるが、熱可塑性樹脂成形
品の成形面に対応する模型表面が複雑な形状である場合
は、歪みや応力集中の発生を防ぐために著しい高温を避
けることが好ましい。熱硬化性樹脂が三次元化し高分子
化するにつれて、有機液体は熱硬化性樹脂から分離し、
表面層の両面に貫通する細孔を形成する。
【0048】本発明の通気性成形型は、多孔質樹脂表面
層の裏面に、硬質粒子の相互間をそれらの接点部にて合
成樹脂バインダーを介して接着させてなる多孔質裏打ち
層を有する。多孔質裏打ち層の形成方法には特に制限は
ないが、多孔質樹脂表面層が裏面に裏打ち層を形成する
材料を積層してもその表面状態が変化しない程度以上に
硬化したのち、裏打ち層を形成する材料を積層すること
が望ましい。
【0049】硬質粒子の材質には特に制限はなく、例え
ば、ステンレス鋼、アルミニウムなどの金属粒子;アル
ミナ、水酸化アルミニウムなどの無機粒子;セラミック
粒子;ガラス粒子;カーボン粒子:ポリメチルメタクリ
レート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネ
ートなどの熱可塑性樹脂や尿素樹脂、メラミン樹脂、フ
ェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂
などの熱硬化性樹脂の粉末、ペレット又は破砕体などを
使用することができる。
【0050】硬質粒子は必ずしも真球状であることを必
要としないが、通気量を大きくするためには形状が球形
に近く、かつ粒度が揃っていることが好ましい。
【0051】本発明に使用する硬質粒子の平均粒径は1
0〜1,000μmであり、好ましくは50〜500μ
mである。硬質粒子の平均粒径が10μm未満である
と、多孔質裏打ち層の通気性が十分でないおそれがあ
る。硬質粒子の平均粒径が1,000μmを超えると、
多孔質裏打ち層の強度が不足するおそれがある。
【0052】本発明の通気性成形型の多孔質裏打ち層
は、硬質粒子の相互間を合成樹脂バインダーを介して接
着させてなる。合成樹脂バインダーは、硬質粒子の表面
に薄い被覆層を形成する量を必要とし、通常は、硬質粒
子に対して容積比で1/8〜1/2、好ましくは1/5
〜1/3の量を使用する。
【0053】合成樹脂バインダーの量が硬質粒子に対し
て容積比で1/8未満であると、硬質粒子間の接着が不
十分で成形型が脆くなるおそれがある。
【0054】尚、成形型の使用に支障ない範囲であれ
ば、裏打ち層の内央部に、硬質粒子間の接着が不十分な
部分があってもよい。合成樹脂バインダーの量が硬質粒
子に対して容積比で1/2を超えると、硬質粒子間の空
隙が少なくなり通気性が損なわれるおそれがある。
【0055】使用する合成樹脂バインダーは、通気性成
形型の使用温度において十分な接着強度を有するもので
あれば特に制限なく使用することができる。
【0056】合成樹脂バインダーとしては、例えば、エ
ポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、フ
ェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フタル酸樹
脂、シリコーン樹脂などの熱硬化性樹脂が、成形型を加
熱して使用しても変形や破損を起こし難いので好まし
い。
【0057】熱硬化性樹脂は、硬化前は低分子又は低分
子と高分子の混合物であるので流動性に優れ、硬質粒子
の表面に層状の被覆塗膜を施すのに好適である。被覆塗
膜層には、それぞれの樹脂に適した硬化剤、例えば、エ
ポキシ樹脂では、脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミン
などのアミン類;ポリエステル樹脂では、メチルエチル
ケトンパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレー
トなどの過酸化物;ポリウレタン樹脂ではポリイソシア
ネートなどを配合しておき、硬化させて多孔質裏打ち層
を形成する。合成樹脂バインダーとして、塩化ビニル系
樹脂ペーストや、メチルメタクリレート系樹脂塗料など
の熱可塑性樹脂を用いる場合には、それぞれチオール−
s−トリアジンやトリメチロールプロパントリアクリレ
ート等を配合したりするなどの架橋化の手段を加味する
ことが好ましい。
【0058】本発明の通気性成形型は、多孔質樹脂表面
層が十分硬化し、多孔質裏打ち層を形成する硬質粒子が
十分強固に接着されたのち、減圧又は加圧することによ
り細孔内の有機液体を吸引又は圧出により除去して、多
数の表裏両面を連通する細孔を開通させる。
【0059】本発明の通気性成形型の通気量は、微細な
細孔を有する多孔質樹脂表面層のみによって支配され、
多孔質裏打ち層は孔径が大きく通気抵抗が小さいので、
微細な細孔を有する良好な表面状態を保ったまま通気量
を大きくすることができる。
【0060】以下、図面により本発明の通気性成形型の
製造方法を説明する。図1は、本発明の通気性成形型の
製造の一態様を説明する部分断面図である。熱可塑性樹
脂成形品の成形面に対応する模型1の周囲に、型枠2を
めぐらせる。好ましくは、模型の表面に、高級脂肪酸、
高級脂肪酸の金属塩、シリコーンオイル、パラフィンワ
ックス、カルナバワックスなどの離型剤3を塗布する
か、あるいは、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコー
ル、アセチルセルロースなどの溶液を塗布、乾燥して離
型フィルムを形成する。
【0061】その上に熱硬化性樹脂、硬化前の熱硬化性
樹脂には相溶するが硬化後の熱硬化性樹脂には相溶しな
い有機液体及び充填剤を含有する熱硬化性樹脂組成物4
を厚さ10〜1,000μmの膜状に塗布する。
【0062】この状態で模型及び塗布された熱硬化性樹
脂組成物を加熱条件下におき、熱硬化性樹脂を硬化す
る。熱硬化性樹脂が硬化するにつれ、樹脂組成物より有
機液体が分離して細孔5を生じ、多孔質樹脂表面層6が
形成される。
【0063】熱硬化性樹脂が、裏面に多孔質裏打ち層を
形成する材料を積層してもその表面状態が変化しない程
度以上に硬化したのち、多孔質樹脂表面層と型枠とによ
り形成される空間部に、合成樹脂バインダーを表面に被
覆した平均粒径10〜1,000μmの硬質粒子7を充
填し、加熱硬化して多孔質裏打ち層8を形成する。
【0064】多孔質裏打ち層が形成されたのち、通気性
成形型を模型から取り外す。多孔質裏打ち層により補強
された多孔質樹脂表面層を有する通気性成形型は、離型
剤の効果により容易に模型より取り外すことができる。
【0065】模型より取り外した通気性成形型は、表面
側又は裏面側から減圧又は加圧することにより、多孔質
樹脂表面層の細孔内の有機液体を吸引又は圧出し、中空
の細孔を有する多孔質樹脂表面層を備えた通気性成形型
が完成する。
【0066】多孔質樹脂表面層の表面状態は、熱硬化性
樹脂組成物が硬化した段階ですでに安定しているので、
多孔質裏打ち層形成材料の硬質粒子が大きくても、その
形状が表面に現れることはなく、粒径の大きい硬質粒子
を用いて粒子間の間隙を大きくし、多孔質裏打ち層にお
ける圧力損失を低減することができる。
【0067】このようにして製造される本発明の通気性
成形型の通気量は、微細な細孔を有する多孔質樹脂表面
層のみによって支配され、多孔質裏打ち層の通気量に対
する影響をなくすことができるので、微細な細孔を有す
る良好な表面状態を保ったまま通気量を大きくすること
ができる。
【0068】本発明の成形方法は、熱可塑性樹脂製の板
又は筒(以下、パリソンという。)を用いる成形品の成
形に適用することができる。本発明方法を適用すること
ができる熱可塑性樹脂には特に制限はなく、例えば、塩
化ビニル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリア
ミド樹脂、塩化ビニリデン樹脂、メタクリル樹脂、耐衝
撃性スチレン樹脂などの樹脂板又はパリソンを用いて本
発明方法により成形品を成形することができる。
【0069】熱可塑性樹脂板又は筒の厚さには特に制限
はなく、例えば、厚さ0.1〜1mmのような薄手の材
料から、厚さ1〜10mmのような厚手の材料まで、本
発明方法に用いることができるが、本発明方法により得
られる成形品は極めて美麗な表面を有するので、本発明
方法は、特に厚手の材料を用いる高級品に対して好適に
用いることができる。
【0070】図2は、本発明の成形方法の一態様の説明
図である。本発明の通気性成形型9が筺体10に気密状
態に固定され、筺体はパイプにより真空系に接続されて
いる。成形材料である熱可塑性樹脂板11をクランプ1
2により、通気性成形型の周辺部に圧着保持する。熱可
塑性樹脂板をヒーター(図示されていない。)により加
熱し、熱可塑性樹脂板が軟化したとき、筺体内を減圧に
し、通気性成形型の多孔質裏打ち層側を減圧にすること
により、軟化した熱可塑性樹脂板を通気性成形型の多孔
質樹脂表面層に密着させる。
【0071】成形された熱可塑性樹脂板の温度が下が
り、成形型より取り外してももはや変形しない状態にな
れば、筺体内を常圧に戻し、クランプを外して成形品を
取り出す。本発明の通気性成形型は、美麗な表面を有し
ているので、このような真空成形方法により成形品に成
形型の美麗な表面を転写し、従来より肌目の細かな模型
表面を再現した、美観に優れた成形品を得ることができ
る。
【0072】図3は、本発明の成形方法の他の一態様の
説明図である。本図の態様においては、通気性成形雌型
13と通気性成形雄型14の一対の通気性成形型を使用
する。通気性成形雌型は筺体15に気密状態に固定さ
れ、筺体はパイプ16により真空系に接続されている。
通気性成形雄型は筺体17に気密状態に固定され、筺体
はパイプ18により加圧系に接続されている。通気性成
形雌型の筺体を減圧にし、通気性成形雄型の筺体を加圧
にすることにより、成形される熱可塑性樹脂板の表面を
特に精緻に加工することができる。
【0073】成形材料である熱可塑性樹脂板19をクラ
ンプ20により、図3(a)に示すように通気性成形雌
型の周辺部に圧着保持し、熱可塑性樹脂板をヒーター
(図示されていない。)により加熱する。
【0074】熱可塑性樹脂板が軟化したとき、ヒーター
を熱可塑性樹脂板上部から移動除去し、通気性成形雄型
を軟化した熱可塑性樹脂板にラム(図示されていな
い。)などにより押し付け、図3(b)に示すように通
気性成形雌型と通気性成形雄型の間でプレスする。
【0075】雌型と雄型を使用することにより、肉厚成
形品や深絞り成形品の加工が容易になり、成形品の良好
な肉厚分布を保つことができる。成形された熱可塑性樹
脂板の温度が下がり、成形型より取り外してももはや変
形しない状態になれば、筺体内を常圧に戻し、通気性成
形雄型を引き上げ、クランプを外して成形品を取り出
す。
【0076】真空成形においては、通気性成形型の多孔
質裏打ち層側を減圧にすることにより、加熱によって軟
化した熱可塑性樹脂板を多孔質樹脂表面層に密着させる
のであるが、その圧力は1kg/cm以下であるの
で、成形型の表面状態が極めて精緻に加工されていて、
軟化した熱可塑性樹脂板が完全に成形型の表面を転写す
ることが困難な場合も生ずる。
【0077】このような場合は、通気性成形雄型側を加
圧にすることにより、通気性成形雌型の精緻な表面を成
形材料に正確に転写再現することができる。すなわち、
成形材料である熱可塑性樹脂板19をクランプ20によ
り、通気性成形雌型の周辺部に圧着保持し、熱可塑性樹
脂板をヒーター(図示されていない。)により加熱す
る。
【0078】熱可塑性樹脂板が軟化したとき、ヒーター
を熱可塑性樹脂板上部から移動除去し、通気性成形雄型
を軟化した熱可塑性樹脂板にラム(図示されていな
い。)などにより押し付け、図3(b)のように通気性
成形雌型と通気性成形雄型の間に挟み込み、通気性成形
雌型を取り付けた筺体15を減圧に、通気性成形雄型を
取り付けた筺体17を加圧にすることにより、軟化した
熱可塑性樹脂板19を強く通気性成形雌型に押し付け、
その表面状態を転写再現させる。
【0079】通気性成形雄型側の圧力は、通気性成形型
及び筺体の強度を超えない範囲で任意に選ぶことができ
るが、通常は2〜10kg/cmが用いられる。成形
された熱可塑性樹脂板の温度が下がり、成形型より取り
外してももはや変形しない状態になれば、筺体内を常圧
に戻し、通気性成形雄型を引き上げ、クランプを外して
成形品を取り出す。
【0080】また、本発明の成形方法の別の態様を説明
する。本発明の通気性成形型の多孔質樹脂表面層が共に
雌型である一対の成形型を対面配置し、両雌型の間に加
熱により軟化した熱可塑性樹脂製のパリソンを介在させ
て両雌型を接面し、次いで両雌型の多孔質裏打ち層側を
減圧し、要すればパリソンの内側を加圧する操作も加え
ることにより、パリソンを膨張せしめて両雌型の多孔質
樹脂表面層に密着させる。かくしてパリソンの外面に通
気性成形型の表面形状を転写させた熱可塑性樹脂成形品
を得ることができる。
【0081】
【実施例】以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細
に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限
定されるものではない。
【0082】実施例1(通気性成形型の作製) エポキシ樹脂[エピコート828、油化シェルエポキシ
(株)製]100重量部、硬化剤[エピキュアT、油化
シェルエポキシ(株)製の脂肪族ポリアミン系硬化剤]
20重量部、オクチルジフェニルホスフェート8重量部
及びカーボンブラック(平均粒径0.2μm)100重
量部を均一に混合した。
【0083】表面を鏡面仕上げしたステンレス鋼製の模
型表面にシリコーン系離型剤を塗布し、上記の混合物を
厚さ100μmに塗布した。模型を加熱炉に入れ、80
℃で2時間加熱して多孔質樹脂表面層を形成した。
【0084】模型及び多孔質樹脂表面層をいったん室温
まで冷却し、エポキシ樹脂[エピコート828、油化シ
ェルエポキシ(株)製]100重量部、硬化剤[エピキ
ュアT、油化シェルエポキシ(株)製]20重量部及び
平均粒径500μmのアルミニウム粉末2,000重量
部を混合し、樹脂層の裏面に厚さ15mmに積層し、再
び加熱炉に入れて80℃で2時間、続いて150℃で2
時間加熱して硬化を完了し、多孔質樹脂表面層の裏面に
多孔質裏打ち層を形成した。
【0085】室温まで冷却したのち、多孔質樹脂表面層
及びエポキシ樹脂で結合したアルミニウム粉末からなる
多孔質裏打ち層を有する成形型を、ステンレス鋼製の模
型から取り外し、裏打ち層側から減圧して、細孔内のオ
クチルジフェニルホスフェートを吸引除去して通気性成
形型を完成した。
【0086】多孔質樹脂表面層は忠実に模型の鏡面仕上
げを再現し、アルミニウム粉末による凹凸は全く認めら
れなかった。通気性成形型の通気量を、表面樹脂層側を
大気圧、裏打ち層側を50Torrとし、両面間に71
0Torrの圧力差を設けて測定したところ、34m
(STP)/m・hrであった。表面樹脂層を一部剃
刀で剥し、表面樹脂層にある無数の細孔を走査型電子顕
微鏡にて測定したところ、数平均径2.5μmであっ
た。
【0087】実施例2(通気性成形型の作製) エポキシ樹脂[アミノクレゾールトリグリシジルエポキ
シ樹脂]100重量部、硬化剤[イソホロンジアミン3
0重量部及びエポメートQX−3(油化シェルエポキシ
(株)製の複素環式アミン系硬化剤)30重量部]、ト
リクレジルホスフェート8重量部、紅花油5重量部、グ
リセリンソルビタン縮合物のリノール酸エステル2重量
部及び水酸化アルミニウム(平均粒径2.0μm)20
0重量部を均一に混合した。
【0088】表面に牛革状のしぼ模様をもった軟質塩化
ビニル製シートを貼り付けた雌型用の木型模型にシリコ
ーン系離型剤を塗布し、上記の混合物を厚さ80μmに
塗布した。
【0089】模型を加熱炉に入れ、80℃で2時間加熱
し、多孔質樹脂表面層を形成した。模型及び多孔質樹脂
表面層をいったん室温まで冷却し、エポキシ樹脂[エピ
コート828、油化シェルエポキシ(株)製]100重
量部、硬化剤[エピキュアT、油化シェルエポキシ
(株)製]20重量部及び平均粒径400μmのガラス
ビーズ2,000重量部を混合し、多孔質樹脂表面層の
裏面に厚さ12mmに積層し、再び加熱炉に入れて80
℃で2時間、続いて150℃で2時間加熱して硬化を完
了した。
【0090】室温まで冷却したのち、多孔質樹脂表面層
とエポキシ樹脂で結合したガラスビーズからなる多孔質
裏打ち層を有する成形型を、木型模型から取り外し、裏
打ち層側から減圧して、細孔内のトリクレジルホスフェ
ート、紅花油及びグリセリンソルビタン縮合物のリノー
ル酸エステルを吸引除去し、通気性成形雌型を完成し
た。多孔質樹脂表面層は忠実に模型の牛革状のしぼ模様
を再現し、ガラスビーズによる凹凸は全く認められなか
った。
【0091】この通気性成形型の通気量を、多孔質樹脂
表面層側を大気圧、裏打ち層側を50Torrとし、両
面間に710Torrの圧力差を設けて測定したとこ
ろ、48m(STP)/m・hrであった。
【0092】又、実施例1と同様にして測定した表面樹
脂層の細孔の数平均径は3.5μmであった。この通気
性成形雌型に、厚さ3mmの成形材料を挟んで適合する
形状の通気性成形雄型を、雌型と同様にして作製した。
【0093】実施例3(通気性成形型の作製) エポキシアクリレート樹脂[ユピカネオポール8250
M、日本ユピカ(株)製]100重量部、トリオクチル
ホスフェート2重量部、トリクレジルホスフェート9重
量部、カーボンブラック(平均粒径0.2μm)100
重量部、オクテン酸コバルト(6重量%液)0.5重量
部及びクメンハイドロパーオキサイド1重量部を均一に
混合した。表面に牛革状のしぼ模様をもった軟質塩化ビ
ニル製シートを貼り付けた木型模型にシリコーン系離型
剤を塗布し、上記の混合物を厚さ100μmに塗布し
た。
【0094】25℃で2時間置いて硬化させ、多孔質樹
脂表面層を形成した。次いで、その上に不飽和ポリエス
テル樹脂[ユピカ4580、日本ユピカ(株)製]10
0重量部、オクテン酸コバルト(6重量%液)0.5重
量部、クメンハイドロパーオキサイド1重量部及び平均
粒径400μmのガラスビーズ2,000重量部を混合
し、多孔質樹脂表面層の裏面に厚さ20mm乗せ、25
℃で3時間置いて硬化させた。
【0095】多孔質樹脂表面層と不飽和ポリエステル樹
脂で結合したガラスビーズからなる多孔質裏打ち層とを
有する成形型を木型模型から取り外し、裏打ち層側から
減圧して、細孔内のトリオクチルホスフェート及びトリ
クレジルホスフェートを吸引除去し、通気性成形型を完
成した。多孔質樹脂表面層は忠実に模型の牛革状のしぼ
模様を再現し、ガラスビーズによる凹凸は全く認められ
なかった。
【0096】この通気性成形型の通気量を、多孔質樹脂
表面層側を大気圧、裏打ち層側を50Torrとし、両
面間に710Torrの圧力差を設けて測定したとこ
ろ、56m(STP)/m・hrであった。実施例
1と同様にして測定した表面樹脂層の細孔の数平均径は
3.7μmであった。
【0097】実施例4(真空成形) 実施例1において作製した通気性成形型を用いて、硬質
塩化ビニル樹脂シートの真空成形を行った。通気性成形
型を筺体に取り付け、図2に示す装置を作製した。
【0098】厚さ1mmの硬質塩化ビニル樹脂シートを
通気性成形型の周辺部にクランプにより圧着保持し、ヒ
ーターにより加熱した。硬質塩化ビニル樹脂シートの温
度が105℃になったとき、筺体を50Torrの減圧
にした。硬質塩化ビニル樹脂シートは直ちに通気性成形
型に吸引され、その多孔質樹脂表面層に密着した。
【0099】硬質塩化ビニル樹脂シート成形品の温度が
50℃まで下がったとき、筺体内を常圧に戻し、通気性
成形型より成形品を取り外した。硬質塩化ビニル樹脂シ
ート成形品の表面状態を観察したところ、成形型の鏡面
状態を正確に反転再現していた。
【0100】実施例5(真空圧空成形) 実施例2において作製した一対の通気性成形型を用い
て、硬質塩化ビニル樹脂板の真空圧空成形を行った。通
気性成形雌型及び通気性成形雄型を筺体に取り付け、図
3(a)に示す装置を作製した。
【0101】厚さ3mmの硬質塩化ビニル樹脂板を、通
気性成形雌型の周辺部にクランプにより圧着保持し、ヒ
ーターにより加熱した。硬質塩化ビニル樹脂板の温度が
120℃になったとき、ヒーターを移動し、上部より通
気性成形雄型を押し付けて、雌型と雄型により硬質塩化
ビニル樹脂板をプレスし、同時に雌型側の筺体を50T
orrの減圧に、雄型側の筺体を5kg/cmの加圧
にした。
【0102】硬質塩化ビニル樹脂板成形品の温度が40
℃まで下がったとき、両筺体内を常圧に戻し、通気性成
形型より成形品を取り外した。硬質塩化ビニル樹脂板成
形品の表面状態を観察したところ、通気性成形雌型の牛
革状のしぼ模様を忠実に反転再現していた。
【0103】実施例6(真空成形) 実施例3で作製した通気性成形型を用いて、実施例4と
同様に塩化ビニル樹脂シートにて真空成形を行ったとこ
ろ、成形品は成形型の牛革状のしぼ模様を忠実に再現し
ていた。
【0104】
【発明の効果】本発明の通気性成形型は、平滑性に優れ
た鏡面あるいは精緻な模様の型表面を有し、しかも通気
量が大きく、本発明の成形方法によれば、成形の生産性
が良好であり、型面の美麗な鏡面状態あるいは精緻な表
面模様を、成形品表面に忠実に反転再現することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の通気性成形型の製造の一態様
を示す部分断面図である。
【図2】図2は、本発明の成形方法の一態様の説明図で
ある。
【図3】図3は、本発明の成形方法の他の一態様の説明
図である。
【符号の説明】
熱可塑性樹脂板成形面に対応する模型、2…型枠
3…離型剤、4…熱硬化性樹脂組成物、5…細孔、6…
多孔質樹脂表面層、7…硬質粒子、8…多孔質裏打ち
、9…通気性成形型、10、15、17…筺体、11
熱可塑性樹脂板、12、20…クランプ、13…通気
性成形雌型、14…通気性成形雄型、16、18…パイ
、19…熱可塑性樹脂板
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭63−188006(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B29C 33/00 - 33/76 B29C 51/00 - 51/46

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】熱硬化性樹脂、硬化前の該熱硬化性樹脂に
    は相溶するが、硬化後の該熱硬化性樹脂には相溶性を失
    って分離する有機液体及び充填剤を含有する熱硬化性樹
    脂組成物を硬化してなる表裏両面を連通する細孔を有す
    る多孔質樹脂表面層と、平均粒径10〜1,000μm
    の硬質粒子を合成樹脂バインダーで接着させてなる多孔
    質裏打ち層と、からなる通気性成形型。
  2. 【請求項2】熱可塑性樹脂成形品の成形面に対応する表
    面を有する模型の周囲に型枠をめぐらし、該表面上に、
    熱硬化性樹脂、硬化前の該熱硬化性樹脂には相溶する
    が、硬化後の該熱硬化性樹脂には相溶性を失って分離す
    有機液体及び充填剤を含有する熱硬化性樹脂組成物を
    厚さ10〜1,000μmの膜状に塗布し、これを硬化
    することにより、分離した有機液体が充満した表裏両面
    を連通する細孔を有する多孔質樹脂表面層を形成し、次
    いで該多孔質樹脂表面層と型枠とにより形成される空間
    部に、合成樹脂バインダーを表面に被覆した平均粒径1
    0〜1,000μmの硬質粒子を充填して加熱すること
    により、硬質粒子間及び硬質粒子と多孔質樹脂表面層の
    相互間を合成樹脂バインダーで接着させて多孔質裏打ち
    層を形成し、しかるのち模型及び型枠を取り外し、加圧
    又は減圧により細孔内の有機液体を除去して得られる、
    多孔質樹脂表面層及び多孔質裏打ち層を有する通気性成
    形型。
  3. 【請求項3】請求項1又は請求項2記載の通気性成形型
    の多孔質樹脂表面層側に、加熱により軟化した熱可塑性
    樹脂板を設置し、多孔質裏打ち層側を減圧することによ
    り、該熱可塑性樹脂板を通気性成形型の多孔質樹脂表面
    層側に密着させることを特徴とする熱可塑性樹脂成形品
    の成形方法。
  4. 【請求項4】請求項1又は請求項2記載の通気性成形型
    を用いた熱可塑性樹脂成形品の成形方法において、多孔
    質樹脂表面層が共に雌型である一対の通気性成形型を対
    面配置し、両雌型の間に加熱により軟化した熱可塑性樹
    脂製のパリソンを介在させて両雌型を接面し、次いで両
    雌型の多孔質裏打ち層側を減圧することによりパリソン
    の外面に通気性成形型の表面形状を転写することを特徴
    とする熱可塑性樹脂成形品の成形方法。
  5. 【請求項5】請求項1又は請求項2記載の通気性成形型
    を用いた熱可塑性樹脂成形品の成形方法において、多孔
    質樹脂表面層が雄型及び雌型である一対の通気性成形型
    を形成し、雄型及び雌型の間に加熱により軟化した熱可
    塑性樹脂板を介在させてプレス成形するとともに、一方
    の通気性成形型の多孔質裏打ち層側を減圧し、他方の通
    気性成形型の多孔質裏打ち層側を加圧することにより、
    熱可塑性樹脂板の片面に多孔質裏打ち層側を減圧した通
    気性成形型の表面形状を転写することを特徴とする熱可
    塑性樹脂成形品の成形方法。
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