JP3508535B2 - 表面性状に優れたCr系ステンレス鋼酸洗鋼帯とその製造方法 - Google Patents

表面性状に優れたCr系ステンレス鋼酸洗鋼帯とその製造方法

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JP3508535B2
JP3508535B2 JP05921098A JP5921098A JP3508535B2 JP 3508535 B2 JP3508535 B2 JP 3508535B2 JP 05921098 A JP05921098 A JP 05921098A JP 5921098 A JP5921098 A JP 5921098A JP 3508535 B2 JP3508535 B2 JP 3508535B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、表面性状に優れた
Cr系ステンレス鋼酸洗鋼帯、具体的にはフェライト系
ステンレス鋼およびマルテンサイト系ステンレス鋼から
なり、酸洗による脱スケール処理後の表面性状に優れた
鋼板や鋼帯とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】SUS430、SUS410、SUS4
20などに代表されるフェライト系ステンレス鋼および
マルテンサイト系ステンレス鋼(以下、単に「Cr系ス
テンレス鋼」という)からなる鋼板や鋼帯(以下、単に
「鋼帯」という)は、美しい金属光沢を備えている。ま
た、Cr系ステンレス鋼鋼帯は、SUS304、SUS
316、SUS321などに代表されるオーステナイト
系ステンレス鋼からなる鋼帯に比べ、安価で、しかも加
工性および耐食性が優れるという特徴を有している。こ
のことから、Cr系ステンレス鋼鋼帯は、厨房器具、家
庭用電気具や自動車外装用などの用途に広く利用されて
いる。
【0003】Cr系ステンレス鋼鋼帯には、熱延酸洗鋼
帯と冷延酸洗鋼帯とがあり、これらは、通常、次のよう
にして製造される。すなわち、前者の熱延酸洗鋼帯は、
素材の連続鋳造スラブ(厚さ120〜280mm、幅7
00〜1200mm、長さ8〜10m程度)を1100
〜1300℃程度に加熱した後、熱間圧延して厚さ2〜
10mm程度の熱延鋼帯となし、その後焼鈍処理と酸洗
処理を施すことにより製造される。一方、後者の冷延酸
洗鋼帯は、上記の熱延酸洗鋼帯に冷間圧延を施して厚さ
0.3〜2mm程度の冷延鋼帯となし、引き続いて連続
焼鈍処理と連続酸洗処理を施すことにより製造される。
【0004】Cr系ステンレス鋼は、800℃以上に加
熱されると、C(炭素)、N(窒素)などの化学成分の
含有量によっても異なるが、通常、フェライトとオース
テナイトの2相の金属組織に変態する。そのため、熱間
圧延の熱延鋼帯には、熱間加工により硬化した鋼帯を軟
らかくするとともに、熱間圧延の状態の金属組織を調整
(炭・窒化物の均一分散化)することを目的として、7
00〜850℃の適当な温度に十分な時間保持した後徐
冷する焼鈍処理が施される。
【0005】この焼鈍処理には、10〜20時間の長時
間を要するため、箱型焼鈍炉を用いたバッチ焼鈍処理が
採用されている。加熱方法としては、プロパン、ブタ
ン、などの燃焼ガス中で被加熱材を直接加熱する方法、
および雰囲気ガスで満たされたインナーカバー内の被加
熱材を間接的に加熱する方法がある。
【0006】インナーカバー内の雰囲気としては、D
X、NX、HNXガスなどの窒素ガス(N2)を主成分
とし、若干の水素ガス(H2)や一酸化炭酸ガス(C
O)などの還元性ガスを含むガス雰囲気が一般的であ
る。この雰囲気によって、焼鈍の際のスケール成長を抑
制し、被焼鈍材の脱スケール性を向上させている。
【0007】しかし、上記の窒素ガスを主成分とする混
合ガス雰囲気中でバッチ焼鈍処理を行った場合、酸洗処
理後の熱延鋼帯の表面には、雰囲気ガスと接するコイル
の特定部位に原因不明の肌荒れが発生し、良好な表面性
状を有する熱延酸洗鋼帯が得られない。また、この肌荒
は、この熱延酸洗鋼帯を素材とする最終製品の冷延酸洗
鋼帯に持ち越され、上記と同様に、良好な表面性状を有
する冷延酸洗鋼帯が得られないという問題があった。
【0008】ここで、肌荒れとは、酸洗処理後の鋼帯表
面からの浸食深さが、熱延酸洗鋼帯の場合で3μm以
上、冷延酸洗鋼帯の場合で1μm以上の粒界腐食が発生
することを意味する。
【0009】熱延酸洗鋼帯の肌荒れは、これを冷間圧延
前に研削除去するか、またはその製造工程(冷間圧延、
連続焼鈍、連続酸洗)中に除去できれば、最終製品の冷
延酸洗鋼帯に持ち越されることがなくなり、良好な表面
性状を有する冷延酸洗鋼帯を得ることが可能である。
【0010】しかし、肌荒れの深さは、表面から0.1
mm程度にまで及ぶものもあり、研削除去するには多大
な工数と費用が必要で、製品の製造コスト上昇を招く。
また、素材の肌荒れは、研削除去しない限り冷延酸洗鋼
帯にまで持ち越され、冷延酸洗鋼帯の製造条件調整では
事実上除去不可能である。
【0011】なお、近年、主に被焼鈍材の脱スケール性
を向上させる目的で、水素ガスを主成分とする雰囲気下
でバッチ焼鈍を行う方法が採られるようになっている。
【0012】例えば、特開平5−12714号公報に
は、雰囲気ガスが100容積%の水素ガスまたは25容
積%以下の窒素ガスを含む水素と窒素の混合ガスであ
り、露点が−30℃以下の雰囲気中で焼鈍する方法が示
されている。そして、この方法による場合には、0.0
5〜2質量%のTiを含有するCr系ステンレス鋼鋼帯
の窒化が防止できるとしている。しかし、窒化と上記の
肌荒れとの関係については、何らの記述もない。
【0013】また、特開平6−340920号公報に
は、水素ガスを主成分とする雰囲気ガスの露点を−60
℃以下に制御する目的で、雰囲気中に発生する水蒸気を
還元する一酸化炭素ガスや炭化水素ガスなどを添加する
方法が示されている。
【0014】しかし、上記2件の公報に示される方法
は、雰囲気ガス中の水素ガス濃度を10容積%を超えて
高くすること、また露点を−30℃以下または−60℃
以下と極めて低くすることにしているので、焼鈍処理コ
ストが著しく上昇するという欠点を有している。
【0015】従って、通常、工業的には、水素ガスの含
有量が10容積%以下の水素と窒素の混合ガスを用いて
バッチ焼鈍が行われている。
【0016】一方、特開平7−233449号公報およ
び特開昭53−26217号公報には、鋼のCとNの含
有量を低減する一方、熱延仕上げ温度を600℃以下と
低くすることにより、バッチ焼鈍を行うことなく、耐食
性および加工性に優れた酸洗熱延鋼帯を得る方法が示さ
れている。
【0017】しかし、この方法は、鋼のCとNの含有量
をいずれも0.015〜0.020質量%以下にするこ
とが必要であり、製鋼での製造コストの上昇を招くとい
う欠点を有している。また、熱延仕上げ温度を600℃
以下にすると、熱延でロールと材料との焼付き起因の肌
荒れ、および巻き疵(カキ、共ズレ)が多発するので、
実際の製造には適用し難いという欠点を有している。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記
従来の技術ではなし得なかった表面性状に優れたCr系
ステンレス鋼酸洗鋼帯、具体的にはバッチ焼鈍に引き続
く酸洗処理によっても、その表面に浸食深さが3μm以
上という粒界腐食起因の肌荒れがない熱延酸洗鋼帯、お
よびこの熱延酸洗鋼帯を素材とする冷延酸洗鋼帯で、そ
の表面に浸食深さが1μm以上という粒界腐食起因の肌
荒れがない冷延酸洗鋼帯を含む酸洗鋼帯とその製造方法
を提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、下記
(1)の表面性状に優れたCr系ステンレス鋼酸洗鋼帯
および下記(2)の表面性状に優れたCr系ステンレス
鋼酸洗鋼帯の製造方法にある。
【0020】(1)熱間圧延後のCr系ステンレス鋼鋼
帯に、温度が700〜850℃、雰囲気ガスが0〜10
容積%の水素ガスを含む窒素ガス、露点DP(℃)と前
記熱間圧延後のCr系ステンレス鋼鋼帯の表面に生成付
着したスケール中に含まれるFeOの比率F(%)との
関係が、図2中の直線AB、BC、CDおよびDAで囲
まれる範囲内、または直線EG、GH、HI、IJおよ
びJEで囲まれる範囲内の条件でバッチ焼鈍処理を施す
工程を含む方法により製造されたCr系ステンレス鋼酸
洗鋼帯であって、その表層部に存在するCr系窒化物の
平均粒径が1μm未満であることを特徴とする表面性状
に優れたCr系ステンレス鋼酸洗鋼帯。
【0021】(2)熱間圧延後のCr系ステンレス鋼鋼
帯に、温度が700〜850℃、雰囲気ガスが0〜10
容積%の水素ガスを含む窒素ガス、露点DP(℃)と前
記熱間圧延後のCr系ステンレス鋼鋼帯の表面に生成付
着したスケール中に含まれるFeOの比率F(%)との
関係が、図2中の直線AB、BC、CDおよびDAで囲
まれる範囲内、または直線EG、GH、HI、IJおよ
びJEで囲まれる範囲内の条件でバッチ焼鈍処理を施す
工程を含むことを特徴とする表面性状に優れたCr系ス
テンレス鋼酸洗鋼帯の製造方法。
【0022】本発明者らは、上記の目的を達成すべく、
Cr系ステンレス鋼のバッチ焼鈍条件の影響について鋭
意研究し、その結果得られた以下の知見を基に上記の発
明を完成させた。
【0023】バッチ焼鈍後に酸洗処理を施して得られ
た熱延酸洗鋼帯の肌荒れは、前述したように、結晶粒界
の浸食深さが3μm以上となる部分であるが、これはバ
ッチ焼鈍後の熱延鋼帯の表層部に平均粒径が1μm以上
のCr系窒化物が析出し、Cr欠乏層が生じた結晶粒界
に発生する。従って、肌荒れを生じさせないためには、
バッチ焼鈍後の熱延鋼帯の表層部に析出するCr系窒化
物の平均粒径を1μm未満にする必要がある。
【0024】図1は、バッチ焼鈍後の熱延鋼帯表層部に
析出したCr系窒化物の平均粒径が酸洗処理後の熱延酸
洗鋼帯の表面からの結晶粒界の浸食深さに及ぼす影響、
およびその熱延酸洗鋼帯を常法に従って冷延酸洗鋼帯に
仕上げた最終製品の表面性状に及ぼす影響を調べた結果
を示す図である。
【0025】なお、図1中の「○」印と「×」印は、最
終製品の冷延酸洗鋼帯の表面性状の良否を示しており、
「○」印は表面の結晶粒界浸食深さが1μm未満で表面
性状が良好、「×」印は表面の結晶粒界浸食深さが1μ
m以上で表面性状が不芳なことを示している。
【0026】この図から明かなように、バッチ焼鈍後の
熱延鋼帯表層部に析出したCr系窒化物の平均粒径が1
μm以上の場合では、結晶粒界の浸食深さが3μm以上
となり、熱延酸洗鋼帯および最終製品の冷延酸洗鋼帯と
もに肌荒れが発生する。これに対し、バッチ焼鈍後の熱
延鋼帯表層部に析出したCr系窒化物の平均粒径が1μ
m未満の場合には、結晶粒界の浸食深さが3μm未満と
なり、熱延酸洗鋼帯および最終製品の冷延酸洗鋼帯とも
に肌荒れが発生しないことがわかる。
【0027】なお、上記の平均粒径とは、ある試験片の
表層部の電子顕微鏡観察視野内において存在する種々の
形状を有するそれぞれのCr系窒化物の外形の内で最も
長い部分の長さの平均値を意味する。
【0028】Cr系ステンレス鋼のスラブ加熱(11
00〜1300℃程度)で生成するスケール構造は、
(Fe、Cr)34である。ただし、加熱条件によって
は、そのスケール構造中にFeOが生成する場合もあ
る。
【0029】上記のスケール構造中に生成したFeO
の一部は、「4FeO→Fe34+Fe」の化学反応に
基づいて熱延鋼帯(コイル)の冷却過程(550℃付
近)でFe34と金属鉄に変化する。バッチ焼鈍時の
窒化は、バッチ焼鈍後のスケール構造中にFeOが熱力
学的に生成しうる雰囲気の酸素ポテンシャル(雰囲気の
露点または酸素分圧に相当)において起こる。しかし、
バッチ焼鈍前のスケールがバッチ焼鈍時に還元または酸
化される酸素ポテンシャルの場合、鋼界面に緻密なCr
酸化皮膜(Cr23)が形成し、その生成が抑制され
る。
【0030】バッチ焼鈍後のスケール構造中のFeO
の生成は、バッチ焼鈍前のスケール構造中に金属鉄が含
まれる場合に促進される。
【0031】バッチ焼鈍前のスケールが厚く、そのス
ケール構造中のFeO比率が4%未満の場合には、バッ
チ焼鈍後のスケール構造中のFeO生成が促進される一
方、露点が−30℃以下の雰囲気中では雰囲気中の酸素
分圧低下に伴うスケール中の酸素分圧低下により鋼界面
に緻密なCr酸化皮膜が形成される。
【0032】バッチ焼鈍後の表層ミクロ組織には、未
固溶炭素および窒素がそれぞれCr系炭窒化物を形成し
て多数析出している。しかし、このCr系炭化物は、バ
ッチ焼鈍時の脱炭反応により、バッチ焼鈍後に成長する
ことはない。一方、Cr系窒化物は、雰囲気ガスからの
吸窒により鋼中の窒素が固溶限を超えると、平均粒径が
1μm以上の粗大なCr系窒化物を形成して結晶粒界に
析出する。また、Cr系窒化物の形成は、AlやTiな
どの窒化物形成元素を含有する鋼では促進される傾向が
ある。
【0033】しかし、バッチ焼鈍処理コストの著しい
上昇を回避すべく、雰囲気ガスに0〜10容積%の水素
ガスを含む窒素ガスを用いてバッチ焼鈍する際、熱間圧
延後のCr系ステンレス鋼鋼帯の表面に生成付着したス
ケール中に含まれるFeOの比率をF(%)とした時、
雰囲気の露点DP(℃)を下記の(a)または(b)を
満たす範囲に設定し、700〜850℃でバッチ焼鈍す
る場合には、バッチ焼鈍後の熱延鋼帯の表層部に析出す
るCr系窒化物の平均粒径が1μm未満となる。
【0034】(a)−25≦DP≦25のとき 0≦F≦6→DP≧5×(F−5) (b)−60≦DP≦−25のとき 0≦F≦3→−60≦DP≦−6×(F+5) 3≦F≦6→−60≦DP≦10×(F−15)/3 図2は、上記の(a)および(b)の関係を、横軸にF
eO比率F(%)、縦軸に露点DP(℃)を採って示
し、種々の露点DPでバッチ焼鈍を施して得られた熱延
酸洗鋼帯を素材とし、これに常法に従って冷間圧延と連
続焼鈍および連続酸洗処理を施して得られた最終製品の
冷延酸洗鋼帯の肌荒れの有無、すなわち表面性状の良否
(図1の良否「○」、「×」と同じ)との関係を示す図
である。
【0035】この図2から明らかなように、雰囲気の露
点DP(℃)を下記(a)または(b)を満たす範囲に
設定した場合、肌荒れが生じない、換言すれば焼鈍後の
熱延鋼帯の表層部に析出するCr系窒化物の平均粒径が
1μm未満になることがわかる。
【0036】なお、図2中、点A〜J(F%、DP℃)
は、それぞれ下記の通りである。A:(0、25)、
B:(6、25)、C:(6、5)、D:(0、−2
5)、E:(0、−30)、G:(3、−40)、H:
(6、−30)、I:(6、−60)、J:(0、−6
0)。
【0037】
【発明の実施の形態】以下、本発明のCr系ステンレス
鋼酸洗鋼帯およびその製造方法について具体的に説明す
る。
【0038】《Cr系ステンレス鋼について》 本発明の素材鋼は、11〜22質量%Crを含有する
フェライト系ステンレス鋼およびマルテンサイト系ステ
ンレス鋼を対象としている。CおよびNの含有量につい
ては、通常、それぞれ0.02〜0.08質量%、0.
01〜0.04質量%の範囲であり、この範囲であれば
特に規定する必要はない。
【0039】《バッチ焼鈍条件について》 雰囲気ガスは、焼鈍処理コストの著しい上昇を回避する
ために、0〜10容積の水素ガスを含む窒素ガスとす
る。
【0040】焼鈍温度は、700〜850℃とする。こ
れは、700℃未満では熱間加工により硬化した鋼帯を
焼き鈍すことができない。また、850℃超ではCr系
ステンレス鋼特有の鋭敏化現象により耐食性が著しく劣
化するためである。
【0041】インナーカバー内への雰囲気ガスの導入で
は、先ず、ドライ窒素ガスでインナーカバー内の空気を
パージした後、雰囲気ガスに置換する。その後、ステン
レス熱延鋼帯を、所定のヒートパターンで昇温、均熱、
炉冷、空冷する。
【0042】雰囲気ガスの露点DP(℃)は、熱間圧延
後の熱延鋼帯の表面に生成付着したスケール中のFeO
比率をF(%)とした時、前述したように、下記の
(a)または(b)を満たす範囲内の値に制御する。
【0043】(a)−25≦DP≦25のとき 0≦F≦6→DP≧5×(F−5) (b)−60≦DP≦−25のとき 0≦F≦3→−60≦DP≦−6×(F+5) 3≦F≦6→−60≦DP≦10×(F−15)/3 ここで、露点DPが25℃を超えると、焼鈍後の熱延鋼
帯の表面に10μmを超えるスケールが生成付着し、酸
洗による脱スケールが困難になる。また、露点DPが−
60℃未満になると、焼鈍処理コストが著しく上昇す
る。よって、本発明では露点DPの上限を25℃、下限
を−60℃とした。
【0044】雰囲気ガスは、ドライ窒素ガス(露点−6
0℃)に水蒸気を吹き込むことにより、目標の露点とな
るよう制御した後、インナーカバー内に導入する。
【0045】また、本発明で規定する熱延鋼帯の表面に
生成付着したスケール中のFeO比率F(%)は、以下
の手順で定量することができる。先ず、得られた熱延鋼
帯のエッジから幅方向の中央部に向かって、例えば50
mm、150mm、250mm、350mmおよび45
0mmの各位置からX線分析用の試験片を採取する。次
に、試験片表面の酸化スケールをX線回折により定量分
析する。定量分析は、原則として酸化スケールを構成す
る種々の酸化物の積分強度値を用いて行う。種々の酸化
物積分強度は、一般に、X線回折装置にて回折線幅の2
θ値を指定し、その間を2θ走査法で自動的に積分強度
測定を行い、バックグラウンド強度を差し引いた純粋の
積分強度をプリントアウトする手法で測定される。そこ
で、FeO比率F(%)は、『(FeOの積分強度/酸
化スケール全体の積分強度)×100』により求めるこ
とができる。
【0046】ここで、酸化スケール全体の積分強度と
は、X線回折により得られた種々の酸化物の回折線積分
強度、すなわち(Fe、Cr)34、(Fe、Cr)2
3、FeO、Cr23など全ての酸化物の積分強度を
意味する。なお、各酸化物の積分強度は、メイン回折線
から得られた値を用いて定量することもできる。
【0047】バッチ焼鈍の後工程は、硫酸による1次酸
洗と硝弗酸による仕上げ酸洗とからなる酸洗工程であ
り、必要に応じてメカニカルデスケーリングおよびショ
ットブラスト工程を採る。酸洗工程のライン速度は、通
常、20〜30m/分の範囲で操業される。
【0048】なお、冷延酸洗鋼帯は、上記の熱延酸洗鋼
帯に常法に従って冷間圧延を施し、次いで連続焼鈍と連
続酸洗処理を施して製造されるが、連続焼鈍の在炉時間
は30〜150秒程度と極めて短く、しかもこの連続焼
鈍時に冷延鋼帯の表面に生成付着する酸化スケールがバ
リアとなるために、雰囲気ガスから材料への吸窒がほと
んど生じない。このため、その表層部には平均粒径が1
μm以上のCr系窒化物が新たに析出することがなの
で、連続酸洗処理により肌荒れが発生することはない。
【0049】ここで、Cr窒化物の平均粒径は、以下
の手順で求めることができる。先ず、得られた熱延鋼帯
のエッジから幅方向の中央部に向かって、例えば50m
m、150mm、250mm、350mmおよび450
mmの各位置から電子顕微鏡用の試験片を採取し、その
表面の酸化スケールを除去する。次に、脱スケール処理
後の試験片表層部から抽出レプリカ試料を作製し、透過
型電子顕微鏡を用いて明視野像法により析出物の観察を
行い、観察された各析出物毎にその平均粒径を求める。
その後、電子回折法により観察された各析出物の回折パ
ターンを撮影し、得られた回折パターンより析出物の格
子定数を求め、さらにEDX元素分析法により各析出物
の元素を確認することにより、Cr窒化物の平均粒径
を求める。
【0050】また、冷延酸洗鋼帯を製造する上記の常法
とは、例えば、次のような工程を経る方法を意味する。
第1工程:圧下率50〜90%程度の冷間圧延工程。第
2工程:カテナリー式などの連続炉にて、プロパンやブ
タンなどの燃焼ガス雰囲気中で被処理材を直接加熱し、
温度700〜900℃、在炉時間30〜150秒程度で
熱処理する連続焼鈍工程。第3工程:硝酸や硫酸などの
酸またはこれらの酸と電解法とを組み合わせた連続酸洗
槽設備にて、酸洗時間30〜150秒程度で連続焼鈍時
にその表面に生成付着した酸化スケールを除去する連続
酸洗工程。
【0051】
【実施例】表1に示す化学組成のCr系ステンレス鋼
(SUS430)からなる連続鋳造スラブを準備し、こ
の連続鋳造スラブを種々の温度に加熱した後、熱間圧延
して種々の酸化スケールを有する板厚4.0mmの熱延
鋼帯を製造した。
【0052】
【表1】
【0053】得られた各熱延鋼帯は、その表面に生成付
着したスケール中のFeO比率F(%)をX線回析法を
用いて調べた後、種々異なる条件でのバッチ焼鈍処理に
供した。次いで、バッチ焼鈍を施した各熱延鋼帯は、そ
の表層部のCr系窒化物の平均粒径とその析出深さを調
べた後、メカニカルデスケール処理としての圧下率5%
の冷間圧延に供してから、15容積%硫酸の水溶液中に
40秒間浸漬後、10容積%硝酸+2容積弗酸の水溶
液中に80秒間浸漬する酸洗処理を施した。
【0054】そして、得られた各熱延酸洗鋼帯は、その
一部から試験片を採取して表層部の粒界腐食深さを調べ
た後、冷間圧延に供して常法に従って板厚1.5mmの
冷延酸洗鋼帯に仕上げた後、表層部の粒界腐食深さを調
べることにより、その表面性状の良否を評価した。評価
は、前述したの同様に、その表層部の粒界腐食深さが1
μm未満のものを「○」、粒界腐食深さが1μm以上の
ものを不芳「×」とした。
【0055】なお、バッチ焼鈍は、昇温速度40℃/時
間で各焼鈍温度に昇温し、その温度に10〜20時間保
持後、冷却速度40℃/時間で室温付近まで冷却した。
【0056】また、表層部の析出物の種類と平均粒径
は、抽出レプリカ試料を作製し、透過型電子顕微鏡を用
いて明視野像法、電子回折法、EDX元素分析法により
解析した。窒化物の析出深さは、鋼帯の断面ミクロ観察
を行うことにより測定した。粒界腐食深さは、光学顕微
鏡の焦点深度法により測定した。
【0057】これらの調査結果を、スケール中のFeO
比率F(%)、バッチ焼鈍条件「焼鈍温度(℃)、雰囲
気ガス組成(容積%)、雰囲気露点DP(℃)」および
酸洗速度と併せ、表2に示した。
【0058】
【表2】
【0059】表2に示す結果から明らかなように、本発
明の方法に従って製造された本発明例の熱延酸洗鋼帯
(試番1、2、7、13および14)は、バッチ焼鈍後
の表層部のCr系窒化物の平均粒径が1μm未満で、酸
洗後の粒界腐食深さが3μm未満であって、肌荒れは発
生しなかった。また、これらの熱延酸洗鋼帯を素材とし
た最終製品である冷延酸洗鋼帯の表面性状は、良好
「○」であった。
【0060】これに対し、バッチ焼鈍条件のうち、焼鈍
温度または露点DPのいずれか一方が本発明で規定する
範囲を外れる比較例の熱延酸洗鋼帯(試番3〜6、8〜
12、15および16)のうち、試番3、5、6、8、
9、11、12および15は、バッチ焼鈍後の表層部の
Cr系窒化物の平均粒径が1μm以上で、酸洗後の粒界
腐食深さが3μm以上であって、肌荒れが発生した。ま
た、これらの熱延酸洗鋼帯を素材とした最終製品である
冷延酸洗鋼帯の表面性状は、不芳「×」であった。さら
に、試番4、10およびは16は、露点DPが30℃と
高く、焼鈍後の熱延鋼帯の表面に10μmを超えるスケ
ールが生成付着したために、バッチ焼鈍後の酸洗で脱ス
ケール不良となった。
【0061】
【発明の効果】本発明によれば、表面性状に優れたCr
系ステンレス鋼酸洗鋼帯を提供することができる。ま
た、その酸洗鋼帯は、熱延後の鋼帯表面スケール中のF
eO比率に応じて露点を調整するため、10容%を超
える水素ガスを含む水素と窒素の混合ガスを用いる必要
がないので、焼鈍コストの低減が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】バッチ焼鈍後の熱延鋼帯表層部に析出したCr
系窒化物の平均粒径が、酸洗処理後の熱延酸洗鋼帯の表
面からの結晶粒界の浸食深さ、およびこの熱延酸洗鋼帯
を素材とする最終製品の冷延酸洗鋼帯の表面性状に及ぼ
す影響を示す図である。
【図2】バッチ焼鈍前の熱延鋼帯表面の酸化スケール中
のFeO比率F(%)とバッチ焼鈍炉の露点DP(℃)
とが、熱延酸洗鋼帯およびこの熱延酸洗鋼帯を素材とす
る最終製品の冷延酸洗鋼帯の表面性状に及ぼす影響示す
図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平6−340920(JP,A) 特開 平5−132714(JP,A) 特開 昭59−110732(JP,A) 特開 昭59−173224(JP,A) 特開 平10−265837(JP,A) 特開 昭55−82727(JP,A) 特開 平9−235615(JP,A) 特開 平5−163523(JP,A) 特開 平5−140639(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C21D 9/46 - 9/48 C21D 1/76

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】熱間圧延後のCr系ステンレス鋼鋼帯に、
    温度が700〜850℃、雰囲気ガスが0〜10容積%
    の水素ガスを含む窒素ガス、露点DP(℃)と前記熱間
    圧延後のCr系ステンレス鋼鋼帯の表面に生成付着した
    スケール中に含まれるFeOの比率F(%)との関係
    が、図2中の直線AB、BC、CDおよびDAで囲まれ
    る範囲内、または直線EG、GH、HI、IJおよびJ
    Eで囲まれる範囲内の条件でバッチ焼鈍処理を施す工程
    を含む方法により製造されたCr系ステンレス鋼酸洗鋼
    帯であって、その表層部に存在するCr系窒化物の平均
    粒径が1μm未満であることを特徴とする表面性状に優
    れたCr系ステンレス鋼酸洗鋼帯。
  2. 【請求項2】熱間圧延後のCr系ステンレス鋼鋼帯に、
    温度が700〜850℃、雰囲気ガスが0〜10容積%
    の水素ガスを含む窒素ガス、露点DP(℃)と前記熱間
    圧延後のCr系ステンレス鋼鋼帯の表面に生成付着した
    スケール中に含まれるFeOの比率F(%)との関係
    が、図2中の直線AB、BC、CDおよびDAで囲まれ
    る範囲内、または直線EG、GH、HI、IJおよびJ
    Eで囲まれる範囲内の条件でバッチ焼鈍処理を施す工程
    を含むことを特徴とする表面性状に優れたCr系ステン
    レス鋼酸洗鋼帯の製造方法。
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