JP3502738B2 - 繊維ガイド - Google Patents

繊維ガイド

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JP3502738B2 JP01935097A JP1935097A JP3502738B2 JP 3502738 B2 JP3502738 B2 JP 3502738B2 JP 01935097 A JP01935097 A JP 01935097A JP 1935097 A JP1935097 A JP 1935097A JP 3502738 B2 JP3502738 B2 JP 3502738B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、各種繊維機械にお
いて、繊維を案内するために用いる繊維ガイドに関す
る。
【0002】
【従来の技術】織機や紡績機等の各種繊維機械におい
て、繊維の案内のために繊維ガイドが用いられている。
この繊維ガイドの材質としては、天然繊維に関しては金
属やガラス材が用いられているが、合成繊維の紡糸、巻
取り、延伸には、繊維にダメージを与えることなく、耐
摩耗性に優れた素材が求められ、金属材にクロムメッキ
したものやアルミナ等のセラミックスが用いられてい
る。
【0003】特に、近年、繊維機械のめざましい進歩に
伴い、加工糸の速度はますます高速化され、使用時にお
ける繊維ガイドの要求特性も厳しいものとなっている。
即ち、高速摺動する繊維に対して、ガイド自身の耐摩耗
性が高いだけなく、繊維にダメージを与えずに糸質を劣
化させにくいことが求められている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記各種繊維ガイドの
材質のうち、金属やガラスからなるものでは、耐摩耗性
の点で問題がある。
【0005】また、金属材にクロムメッキした繊維ガイ
ドでは、摩擦係数が低いために糸質を劣化させにくい
が、クロムメッキが摩耗、剥離しやすいために寿命が短
いものであった。
【0006】さらに、アルミナセラミックス製の繊維ガ
イドは、硬度が高く耐摩耗性には優れるものの、繊維に
対する抵抗が大きいために糸質を劣化させやすいという
問題があった。
【0007】また、セラミックスの一種として、チタニ
ア(TiO2 )セラミックスを用いることも提案されて
いたが、チタニアは成形性が悪く、焼結が困難であるた
め、結晶が安定化しにくく、ボイドを少なくすることが
困難であった。そのため、チタニアセラミックス製の繊
維ガイドは、ボイドが多いことから繊維に傷をつけやす
いという問題があった。
【0008】
【課題を解決するための手段】そこで本発明は、周期律
表第2a族元素とTiの複合酸化物を主成分とするセラ
ミックスにより繊維ガイドを形成したことを特徴とす
る。
【0009】即ち、上述したように、チタニア(TiO
2 )単体では焼結性が悪く繊維ガイドとしては不適当で
あるが、周期律表第2a族元素とTiの複合酸化物とす
ることで、焼結性を高め、繊維ガイドとして好適に使用
できることを見出した。また、この複合酸化物を主成分
とするセラミックスは、アルミナ等に比べると硬度が低
く、繊維ガイドとして適度な硬度を有することから優れ
た耐摩耗性を維持したまま、繊維にダメージを与えにく
くすることができる。
【0010】また、上記周期律表第2a族元素として
は、Ba,Ca,Mg,Sr等の一種以上を用いるが、
これらの中でも特にBa,Caを用いることが好まし
い。特に、Baを用いてBaとTiの複合酸化物である
チタン酸バリウム(BaTiO)を主成分とするセラ
ミックスで、繊維ガイドを構成することが最適である。
この場合、焼結性を高め、繊維にダメージを与えにくく
するために、3重量%以下のAl3 を含有するこ
とが好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】以下本発明の実施形態を説明す
る。
【0012】図1に示す繊維ガイド1は、円柱状であ
り、その側面を摺動面1aとして、この摺動面1aで繊
維2を案内することができる。また、図1では最も単純
な形状の繊維ガイド1を示したが、この他に公知のさま
ざまな形状とすることができる。
【0013】そして、上記繊維ガイド1は、周期律表第
2a族元素とTiの複合酸化物を主成分とするセラミッ
クスから形成されている。
【0014】即ち、TiO2 は単体では焼結性が悪く繊
維ガイド1として不適当であるが、MO(MはBa,C
a,Mg,Sr等の周期律表第2a族元素の一種)と、
TiO2 の複合酸化物であるMTiO3 とすることによ
って、焼結性を高めることができ、ボイドを少なくでき
る。また、このセラミックスはビッカース硬度600〜
900kg/mm2 と適度な硬度を有することから、繊
維ガイド1として用いると、優れた耐摩耗性を維持した
まま、繊維2にダメージを与えにくくできるのである。
【0015】特に、周期律表第2a族元素としては、B
a,Caが好ましく、中でもBaが最適であり、以下B
aを用いた場合について詳述する。
【0016】この場合は、10〜30重量%のBaO
と、60〜90重量%のTiO2 を主成分とし、BaT
iO3 の結晶相を主体とするセラミックスを用いること
が好ましい。これは、主成分の組成が上記の範囲外であ
ると、焼結性が悪くなったり、繊維2にダメージを与え
やすくなるためである。
【0017】また、上記BaTiO3 を主体とするセラ
ミックス中に、3重量%以下の範囲でAl2 3 を含有
することが好ましい。このAl2 3 は不可避不純物又
は焼結助剤として添加するものであり、焼結性を向上さ
せ、ボイドの少ない緻密な焼結体を得る作用を成す。な
お、Al2 3 の含有量を3重量%以下としたのは、3
重量%を超えると、部分的に硬い突起が発生して繊維に
ダメージを与えやすくなってしまうからである。
【0018】さらに、上記成分以外に、不可避不純物あ
るいは焼結助剤等として、ZrO2、SrO、SiO2
等を合計で3重量%以下の範囲で含有していても良い。
【0019】また、上記BaTiO3 を主体とするセラ
ミックスからなる繊維ガイド1において、摺動面1aの
平均結晶粒径を3μm以下とすることが好ましい。これ
は、平均結晶粒径が3μmを超えると、摺動面1aの凹
凸が大きすぎて、繊維2にダメージを与えやすく、しか
も脱粒等によって摺動面1aが摩耗しやすくなるためで
ある。
【0020】さらに、上記摺動面1aの表面粗さは、繊
維2にダメージを与えにくくし、摩擦係数を低くするた
めに、中心線平均粗さ(Ra)0.01〜0.3μmの
範囲内とすることが好ましい。
【0021】次に、本発明の繊維ガイド1の製造方法を
説明する。
【0022】まず、上述したようなセラミックス粉末と
所定のバインダー等を添加混合して原料粉末を作製し、
公知の粉末プレス成形法、押出成形法、射出成形法等で
所定の形状に成形する。次に得られた成形体を大気中で
焼成した後、摺動面1aを研削、研磨加工し、所定の表
面状態とすれば、本発明の繊維ガイド1を得ることがで
きる。
【0023】なお、本発明の繊維ガイド1を成す複合酸
化物を主成分とするセラミックスは、通常は体積固有抵
抗地が1012Ω・cm程度の絶縁体であるが、特に還元
雰囲気中で焼成すると体積固有抵抗値が104 Ω・cm
程度まで低下し、適度な導電性を付与することができ
る。
【0024】したがって、還元雰囲気で焼成して体積固
有抵抗値を106 Ω・cm以下としたセラミックスによ
り繊維ガイド1を形成すれば、繊維2の摺動による静電
気を逃がすことができ、また紡糸後の繊維2に付着した
オイルを検出するためのセンサー用の繊維ガイドとして
用いることもできる。
【0025】
【実施例】実施例1 本発明実施例として、95重量%以上のチタン酸バリウ
ム(BaTiO3 )と5重量%以下のAl2 3 やSi
2 等からなる原料粉末に、ポリビニルアルコールやポ
リエチレングリコール等のバインダーを必要量加え、湿
式混合後、噴霧乾燥装置にて顆粒を作製した。この顆粒
を使用して、プレス成形後、切削し、焼成して直径3m
mの円柱状の繊維ガイドを作製した。また、同様にして
チタン酸カルシウム(CaTiO3 )を主成分とするセ
ラミックスでも繊維ガイドを作製した。
【0026】また、比較例として、Al2 3 を主成分
とするアルミナセラミックス、TiO2 を主成分とする
チタニアセラミックスにより、同じ繊維ガイドを作製し
た。
【0027】それぞれの繊維ガイドを用いて、見掛け比
重、ビッカース硬度、3点曲げ強度、表面の平均結晶粒
径を測定した。その後、繊維ガイドの摺動面に、ポリエ
ステルからなり太さ75dの繊維を90°の範囲で接触
させて、張力20g、1000m/分で摺動試験を行っ
た後、繊維に毛羽等が発生しているかどうかを確認し
た。
【0028】なお、平均結晶粒径は、摺動面を鏡面研磨
後、エッチングし、1500倍の走査型電子顕微鏡写真
を撮り、この写真上に任意に8cmの直線を3本引き、
この線上にある結晶粒の数をNとして、 平均結晶粒径(μm)=80×3÷1500÷N により算出した。
【0029】結果は表1に示す通りである。この結果よ
り、アルミナセラミックスは硬度が高すぎるために繊維
にダメージを与え、毛羽が発生していた。また、チタニ
アセラミックスは硬度は低いものの、ボイドが多いこと
から繊維に毛羽が発生していた。
【0030】これらに対し、本発明実施例である、チタ
ン酸バリウム又はチタン酸カルシウムを主成分とするセ
ラミックスは、適度な硬度を有し、焼結性に優れてボイ
ドが少ないため、繊維にダメージを与えにくく、毛羽が
発生しなかった。
【0031】
【表1】
【0032】実施例2 次に、上記と同じチタン酸バリウムを主成分とする原料
粉末に、カルボキシメチルセルロースやポリビニルアル
コール等のバインダーを添加し、攪拌混合後、真空押出
成形機で直径10mmの円柱状に成形し、成形体を6時
間自然乾燥し、さらに100℃で強制乾燥した後、所定
の長さに切断し、1300℃で焼成して、繊維ガイドを
得た。
【0033】この繊維ガイドを用いて、実施例1と同様
の繊維の摺動試験を行ったところ、同様に繊維に毛羽が
発生しなかった。
【0034】実施例3 次に、上記と同じチタン酸バリウムを主成分とする原料
粉末に、パラフィンワックス、エチレン−酢酸ビニル共
重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体等のバ
インダーを13〜20重量%添加し、ニーダーで加熱混
練後、粉砕(又はペレット化)し、コンパウンドを作製
した。このコンパウンドを使用して、射出成形を行い、
脱脂、焼成を行って繊維ガイドを作製した。
【0035】この繊維ガイドを用いて、実施例1と同様
の繊維の摺動試験を行ったところ、同様に繊維に毛羽が
発生しなかった。
【0036】実施例4 次に、Al2 3 含有量の異なるチタン酸バリウム粉末
を用い、かつ焼成温度を変えることによって、平均結晶
粒径の異なる繊維ガイドを作製した。それぞれ、摺動面
の表面粗さを同じとして、実施例1と同様の繊維の摺動
試験を行い、繊維の状態と繊維ガイドの摺動面の状態を
観察した。
【0037】結果は表2に示す通りである。この結果よ
り、Al2 3 含有量が3重量%を超えるか、又は平均
結晶粒径が3μmを超えるものは、繊維に毛羽が生じた
り、繊維ガイドの摺動面の摩耗が激しくなっていた。
【0038】これに対し、Al2 3 含有量を3重量%
以下とし、平均結晶粒径3μm以下としたもの(No.
1,2,4)は、繊維に毛羽が生じておらず、繊維ガイ
ドの摺動面はほとんど摩耗していなかった。
【0039】
【表2】
【0040】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、周期律表
第2a族元素とTiの複合酸化物を主成分とするセラミ
ックスから繊維ガイドを構成したことによって、適度な
硬度を有し、ボイドの少ない繊維ガイドとできるため、
耐摩耗性に優れるとともに繊維に対してダメージを与え
にくくすることができる。したがって、高速走行する繊
維を良好に案内することができ、各種繊維機械装置に好
適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の繊維ガイドを示す斜視図である。
【符号の説明】
1:繊維ガイド 1a:摺動面 2:繊維

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】周期律表第2a族元素とTiの複合酸化物
    を主成分とするセラミックスからなることを特徴とする
    繊維ガイド。
  2. 【請求項2】上記セラミックスがBaとTiの複合酸化
    物を主成分とし、3重量%以下のAl2 3 を含有する
    ことを特徴とする請求項1記載の繊維ガイド。
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