JP3501746B2 - 流体の計測方法 - Google Patents

流体の計測方法

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JP3501746B2 JP2000320312A JP2000320312A JP3501746B2 JP 3501746 B2 JP3501746 B2 JP 3501746B2 JP 2000320312 A JP2000320312 A JP 2000320312A JP 2000320312 A JP2000320312 A JP 2000320312A JP 3501746 B2 JP3501746 B2 JP 3501746B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、気体、液体、霧状流体
(噴霧化された流体、または固体粉体を含む気体や流
体)、さらには液晶のような材料等の流体の計測を行な
う装置、およびその動作方法に関する。例えば、以下に
示す項目の計測を行う装置、及びその動作方法に関す
る。 (1) 流量または流速の計測 (2) 流体の熱伝導率や比熱の計測。 (3) 流体の識別 (4) 複数の流体の混合比の計測 (5) 流体中に含まれる物質の濃度の計測(例えば湿度の
計測)
【0002】さらに、被計測物質(気体、液体、固体は
問わない)の熱伝導率や比熱の違いを評価することがで
きる計測装置、及びその動作方法に関する。
【0003】
【従来の技術】流量を計測する装置として、サーミスタ
を利用したものが知られている。これは、流体によって
熱量が奪われることによって、サーミスタ部分の温度が
低下することを利用したものである。一般にサーミスタ
部分が流体に接していると、サーミスタ部分から奪われ
る熱量は、流量(または流速)に依存するため、サーミ
スタからの出力と流量とはある相関関係を持つ。このこ
とを利用して、サーミスタの出力より、流量を算出する
ことができる。
【0004】流量は流体の断面積と流速との積であり、
例えば、内径rの円形パイプ内を流速vの流体が流れて
いるとするならば、vπr2 が流量になる。従って、以
下においては流量を中心として話を進めるが、流体の断
面積が分かっているのならば、流量と流速は同時に求め
ることができる。
【0005】一般にサーミスタは、大きな負の温度係数
を有する半導体のことをいう。しかし、本来サーミスタ
とは、熱に敏感な抵抗体(Thermally Sensitive Resist
or)のことであり、特に温度係数の正負や材料によって
限定されるものではない。従って、正の温度係数を有す
る白金等の金属をサーミスタと称してもよい。
【0006】サーミスタのように、温度によって抵抗が
変化する材料を用いた素子を総称して、測温抵抗体や温
度感知素子、さらには感温素子や抵抗温度計という。ま
た、温度によって抵抗が変化する材料のことをサーミス
タ機能を有する材料ということもできる。以下において
は、温度によって抵抗が変化する材料のことを測温抵抗
体という。
【0007】また、上記構成の他には、ジュール熱によ
って発熱させた抵抗発熱体を流体に曝し、流量に依存し
て、当該抵抗発熱体から熱量が奪われることを利用する
方式もある。この方式では、抵抗発熱体に流れる電流を
計測することによって、流量を算出することができる。
【0008】また、流体に接した発熱体から熱量を流体
に奪わせ、流体によって運ばれる熱量を別個に設けられ
た測温抵抗体(例えば白金センサー)によって計測し、
流量を算出する方式もある。
【0009】これらの方式において、高い感度を得るた
めには、流体によって奪われる熱量を多くすることが有
効である。また、応答速度を高めるためには、測温抵抗
体部分の熱容量を極力小さくすることが必要である。
【0010】上述した構成を用いた流量計測装置は、計
測できる流量の範囲が狭いという問題がある。即ち、ダ
イナミックレンジが狭いという問題がある。具体的に
は、20sccm〜300sccm、200sccm〜
2000sccmといった範囲でしか正確な流量計測が
できないという問題がある。
【0011】これらの問題は、主に以下のような理由に
よるものであると考えられる。 (1)測温抵抗体が熱的に極めて不安定な状態におかれ
ているので、熱に対する応答の線型性が悪く、広い範囲
の熱的変化に追従できない。 (2)上記(1)に関連して、特に加熱の方法が難し
く、広い流量範囲に渡って有効な加熱を行うことができ
ない。 (3)応答速度を速くするために測温抵抗体の熱容量を
小さくすると、大きな熱量を扱うことができない。
【0012】上記(1)の原因は、広い流量範囲に渡っ
て、測温抵抗体から効果的に流体に熱量を奪わせ、同時
に測温抵抗体に効果的に熱量を供給する構造を採ること
が困難であることによる。
【0013】また、上記(3)は、応答速度を速くする
ことと、ダイナミックレンジ(被計測流体の流量範囲の
広さ)を大きくすることとは2律背反の問題であること
を意味している。
【0014】そこで、従来の流量計測装置においては、
流量計測範囲を狭め、測温抵抗体が扱う熱量が大きく変
化しない構成としているのが現状である。具体的には、
流量の計測範囲を狭め、その範囲内において、必要とす
る感度や計測精度が得られるように、測温抵抗体の熱容
量、測温抵抗体と発熱体との位置関係や熱的関係、さら
には抵抗発熱体に流す電流値を微妙に調整した構成とし
ていた。
【0015】また測温抵抗体は、流量のみではなく、環
境の温度変化(即ち流体の温度変化)をも敏感に検出し
てしまうので、温度変化がある環境での使用には問題が
あった。この問題を解決する方法も数々提案されている
が、実際の使用においては、流体の温度によって流量の
計測に大きなバラツキが出てしまうのが現状である。
【0016】さらに、測温抵抗体や抵抗発熱体が流体に
曝されると、流体の種類によっては、測温抵抗体や抵抗
発熱体を構成する材料が腐蝕されて、その電気的特性や
熱的な特性が変化してしまうという問題がある。この問
題を解決するには、その表面を保護膜で覆う構成等が考
えられるが、測温抵抗体の表面を保護膜で覆うと熱に対
する応答性の低下や熱の屈折による計測精度の低下とい
う問題があり、好ましいものではない。
【0017】〔発明の背景〕本発明者らは、熱的に高速
応答する材料であるダイヤモンドの薄膜を用いた流量計
測装置について数々の基礎的な実験、及び考察を行っ
た。
【0018】ダイヤモンド薄膜を用いた流量計測装置と
しては、Sensors and Materials,2,6(1991) p329-346や
これと基本的に同一内容のApplications of Diamonnd F
ilmsand Related Materials Y.Tzeng,M.Murakawa,A.Fel
dman(Editors) Elsevier Science Publishers B.V,1991
p311-318に記載されている構成が公知である。この流
量計測装置は、珪素基板上にCVD法で形成されたダイ
ヤモンド薄膜が配置されており、珪素基板中に形成され
た抵抗体がダイヤモンド薄膜の一端と他端に接するよう
に構成されている。そして、抵抗体の一方は発熱体とし
て機能し、他方は測温抵抗体(センサー)として機能す
る。この流量計測装置は、ダイヤモンド薄膜の一端から
他端に向かって、膜の平面方向に熱量が移動する際に、
流体によってダイヤモンド薄膜表面から奪われる熱量を
他端に設けられた測温抵抗体によって検出するものであ
る。しかしながら、この流量計測装置は、注目に値する
ような特性を有するものではない。
【0019】一方、本発明者らは、図1に示すような流
量計測装置を作製し、実際に窒素ガスを用いた流量計測
を行った。まず、流量計測装置の概略を図1に示す。な
お、図1(A)のA−A’で切った断面が図1(B)で
あり、図1(A)のB−B’で切った断面が図1(C)
である。
【0020】図1に示す流量計測装置には、15μm厚
で4mm角のダイヤモンド薄膜13上に約0.1μm厚
の白金の層で構成された測温抵抗体12と、同じく約
0.1μm厚の白金の層で構成された発熱体11と、そ
れらの電極15、10が設けられている。また図示はし
ないが、これらの電極からは金ワイヤによる配線が接続
されている。測温抵抗体12は温度計として機能し、ダ
イヤモンド薄膜の温度を計測し、その温度変化を抵抗値
の変化として出力する。また、発熱体11はダイヤモン
ド薄膜に熱量を供給する。
【0021】白金の薄膜で構成される測温抵抗体は、サ
ーミスタ機能を有するものであり、サーミスタ機能を有
する層ということもできる。
【0022】また、図示はしないが、ダイヤモンド薄膜
13は熱的な絶縁物であるテフロン(登録商標)の基体
に保持されている。このテフロンの基体はダイヤモンド
薄膜13の大きさより僅かに小さい形状でくり抜かれて
おり、その部分にダイヤモンド薄膜は配置されている。
即ち、ダイヤモンド薄膜13の測温発熱体11や抵抗体
12が設けられている面側も露呈している構成となって
いる。
【0023】測温抵抗体12と発熱体11との造り分け
は、その面積を調節することにより、測温抵抗体12の
抵抗が約1kΩ、発熱体11の抵抗が約100Ωとなる
ようにして行った。
【0024】図1には示されていないが、ダイヤモンド
薄膜13はダイヤモンド材料に比較すれば熱的に絶縁物
であるとみなせるテフロンの基板に組み込まれており、
周囲から熱的に絶縁されて保持されている。
【0025】この図1に示す流量計測装置を用いて、以
下に示す方法により流量の計測を行った。まず、測温抵
抗体12に所定のバイアス電圧を加え、さらに発熱体1
1に電流を流すことによりジュール加熱を行いダイヤモ
ンド薄膜13を加熱する。この状態で、ダイヤモンド薄
膜の裏面側表面17を流れる流体(窒素ガス)16の流
量を計測した。この結果を図2に示す。図2に示すデー
タは、発熱体11を交流で駆動し、周囲の環境温度の変
化を受けないようにした計測方法によるものである。図
2は、横軸に流速(cm/s)の1/2乗をとり、縦軸
に測温抵抗体からの出力をI/V変換し、アンプで増幅
した値をとったものである。
【0026】流体の断面積をA(cm2 )とするなら
ば、図2に示される最小計測流量は、1×A(cm3/s)
以下であり、最大計測流量は、約252 ×A(cm3/s)
であることが見て取れる。従って、そのダイナミックレ
ンジは、3桁以上のものが得られていることになる。ま
た、その応答速度も50ms程度が実測されており、高
速応答することも確認されている。
【0027】上記のような大きなダイナミックレンジ、
即ち大きな計測範囲が得られたのは、ダイヤモンド薄膜
13が蓄熱層として機能し、流量に対応した熱的バラン
ス状態を高速で実現できるためと考えられる。換言すれ
ば、ダイヤモンド薄膜13を大きなダイナミックレンジ
を有する熱的なセンサーとして機能させ、その熱的なセ
ンサーであるダイヤモンド薄膜13の温度を、測温抵抗
体12で検出する構成が、有効に機能したためであると
考えられる。
【0028】特に、発熱体11および測温抵抗体12
は、ダイヤモンド薄膜13のみと熱結合しており、また
ダイヤモンド薄膜は熱的に絶縁されて保持されているの
で、発熱体が発生する熱量はそのほとんどがダイヤモン
ド薄膜に流入し、一方ダイヤモンド薄膜から奪われる熱
量は、そのほとんどが流体16に奪われることになる点
が重要であると考えられる。
【0029】上記の点は、先のSensor and Materials,
2,6(1991) 329-346に記載された流量計測装置と基本的
に異なる点である。上記文献に記載された構成において
は、発熱体およびセンサー部分(測温抵抗体であると理
解される)が珪素基板中に形成されており、発熱体およ
びセンサー部分は、ダイヤモンド薄膜の一部と熱結合す
るとともに珪素基板とも熱結合してしまっている。
【0030】この発熱体とセンサー部分とが珪素基板と
熱結合している結果、発熱体が発生する熱量の多くが珪
素基板へも流入する。そして、センサー部分が検出する
熱量の多くは、珪素基板中を伝導してきた熱量となって
しまう。従って、流体によってダイヤモンド薄膜から奪
われていく熱量のみをセンサー部分で効果的に検出する
ことはできない。言い換えるならば、センサー部分が珪
素基板中に形成されているので、センサー部分が計測す
るのは、ダイヤモンド薄膜の温度ではなく、主に珪素基
板の温度となってしまい、ダイヤモンド薄膜から奪われ
ていく熱量を正確に評価することができない。
【0031】さらに、発熱体から珪素基板中に逃げてい
く熱量が多量にあるので、加熱効率が悪く、実用的では
ない。
【0032】以上述べたように、ダイヤモンド薄膜のみ
と熱結合させて測温抵抗体と発熱体とを配置し、特に測
温抵抗体によってダイヤモンド薄膜の温度のみを計測す
るようにした構成、さらにはダイヤモンド薄膜を熱的に
絶縁させて保持する構成を採用することによって、大き
なダイナミックレンジを有する流量計測装置を得ること
ができる。
【0033】しかしながら、図1に示す流量計測装置を
用いて数分以上の長時間の測定を行った場合、同じ流量
でも測温抵抗体12からの出力が僅かづつ変化してしま
う現象(以下直流ドリフトという)が観察された。この
直流ドリフトが存在すると、計測感度が高くても計測精
度が悪くなってしまう。即ち、計測値の信頼性が低いも
のとなってしまう。
【0034】なおここで、計測感度とは、流量変化に対
して測温抵抗体の出力がどれだけ大きく変化するか、と
いうことを示す。また、計測精度というのは、計測値の
信頼性を示すものである。
【0035】この直流ドリフトは、ダイヤモンド薄膜1
3を保持する基体、さらには配線であるリード(ここで
は金ワイヤ)から逃げていく熱量に起因すると考えられ
る。このダイヤモンド薄膜13を保持する基体から逃げ
ていく熱量は、流体16に奪われていく熱量に比較すれ
ば、小さなものであるが、数分あるい数十分以上の計測
においては、ダイヤモンド薄膜の温度が少しづつ変化し
てしまう。この結果、直流ドリフト成分が測温抵抗体1
2からの出力に表れてしまう。具体的には、抵抗体12
からの出力は、流量の如何に係わらず僅かであはあるが
動いていってしまう。
【0036】なお、図1に示す流量計測装置の最小の応
答時間は、50msec程度であることが実験により判
明しているが、後述のように、ダイヤモンド薄膜自体の
熱に対する応答時間は、数msec程度が概算される。
この差についても、上記の基体やリードに逃げていく熱
量が原因であると考えられる。即ち、ダイヤモンド薄膜
が示す応答時間よりも長い応答時間を有する基体やリー
ドの影響が現れているものと考えられる。
【0037】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記直流ド
リフトによる計測値の変動を抑え、信頼性の高い流量計
測を行うことを目的とする。特に、計測範囲が広く、計
測精度の高い流量計測を行うことを目的とする。
【0038】また流体に奪われていく熱量を利用して、
流体の熱伝導率や比熱の違いを識別できる装置、及びそ
の計測方法を得ることを目的とする。
【0039】さらには、対象として流体に限定されず、
広く物質全般の熱伝導率や比熱の違いを識別できる装
置、及びその計測方法を得ることを目的とする。
【0040】
【課題を解決するための手段】本発明は、ダイヤモンド
薄膜に流体を接して流れさせた場合、この流体の流量の
違いに対応して、ダイヤモンド薄膜自体が加熱に対して
異なる応答をする点に着目してなされたものである。具
体的には、ダイヤモンド薄膜に対してパルス状の加熱を
行ない、その際におけるダイヤモンド薄膜の温度変化を
測温抵抗体によって電流変化として出力し、その電流変
化をI/V変換によって電圧変化とし、この電圧変化を
オシロスコープ上で観察したところ、流量の違いに対応
して、その波形が異なることを見出したことに基づく。
【0041】上記オシロスコープ上で観察された波形の
違いは、ダイヤモンド薄膜に接して流れる流体の流量の
違いによって、ダイヤモンド薄膜が受ける熱に対する応
答特性が異なることを意味すると理解される。そこで、
この応答特性を定量的に評価することによって、流量を
算出せんとすることを本発明は第1の基本的な思想とす
る。
【0042】さらに、上記応答特性は、当該ダイヤモン
ド薄膜からの熱の奪われ方を反映したもであると理解さ
れるから、この応答特性から、流体を奪っていく媒体
(例えば流体)の熱的な物性(熱伝導率や比熱)を評価
することを本発明のさらなる思想とする。
【0043】以下において主要な発明について説明す
る。以下における説明においては、温度変化を抵抗変化
として検出する抵抗体を測温抵抗体と称することとす
る。本明細書における測温抵抗体というのは、一般に称
される半導体サーミスタや白金やクロム等の金属材料を
も含んだ概念である。即ち、温度の変化を抵抗値の変化
として出力する機能を有する材料は、本発明における測
温抵抗体として利用することができる。
【0044】また以下においては、計測対象として流体
を用いる場合を主に示すが、流体以外の物質であって
も、本発明は利用することができる。(この点に関して
は後述する)
【0045】本発明の基本的な構成としては、ダイヤモ
ンド薄膜の温度を計測する機能を有する抵抗体(測温抵
抗体)がダイヤモンド薄膜の一方の面に配置されてお
り、ダイヤモンド薄膜の少なくとも他方の面が流体に接
する構成を有することを特徴とする。
【0046】これは、ダイヤモンド薄膜から流体へと熱
量が直接移動する構成を実現できるからである。従っ
て、測温抵抗体は流体と必ずしも接する必要はないが、
測温抵抗体が設けられた裏面側のダイヤモンド薄膜表面
は流体と接する必要がある。このことは、ダイヤモンド
薄膜以外の薄膜材料を用いる場合でも、さらには流体以
外の被計測物質を用いる場合であっても同じである。
【0047】上記構成において、ダイヤモンド薄膜とし
ては、CVD法で形成された多結晶ダイヤモンド薄膜を
用いることが一般的である。勿論、他の方法で作製され
たダイヤモンド薄膜を用いてもよい。
【0048】また、後述するが高熱伝導率を有する材料
であれば、ダイヤモンド薄膜の代わりに利用することも
原理的には可能である。
【0049】抵抗体は発熱体としても機能させることが
できるが、ここでは抵抗体の抵抗変化によって、ダイヤ
モンド薄膜の温度変化を検出することを基本とする。即
ち、抵抗体は、少なくとの測温抵抗体として機能しなけ
ればならない。この抵抗体の種類としては、各種サーミ
スタ、各種金属を用いることができる。基本的には、温
度によって抵抗値の変化する材料を用いることができ
る。
【0050】測温抵抗体の抵抗値の変化によってダイヤ
モンド薄膜の温度を正確に検出するには、ダイヤモンド
薄膜以外の材料の温度変化を測温抵抗体が検出しないよ
うにすることが必要である。従って、測温抵抗体がダイ
ヤモンド薄膜以外の高い熱伝導率を有する材料(例えば
珪素)と接触していない構成が必要とされる。特に抵抗
体よりも大きな熱容量を有するダイヤモンド薄膜以外の
高い熱伝導率を有する材料と接触していないことが必要
である。
【0051】一方、測温抵抗体がダイヤモンド薄膜以外
の材料(物質)と接触している場合でも、その材料の熱
電導率が極めて小さい場合や、その熱容量が十分小さい
場合には、その材料による測温抵抗体が検出するダイヤ
モンド薄膜の温度への影響は無視できる。
【0052】例えば、測温抵抗体が空気に曝される場合
は、空気の熱電導率はダイヤモンド薄膜の熱電導率に比
較して極めて小さいので無視することができる。また、
測温抵抗体には配線が設けられるが、配線の熱容量は、
ダイヤモンド薄膜や測温抵抗体の熱容量に比較して極め
て小さいので、測温抵抗体がダイヤモンド薄膜の温度を
計測する機能を直接損なうものではない。
【0053】何れにしても、測温抵抗体がダイヤモンド
薄膜以外の温度を計測しないような構成とすることが必
要である。具体的には、測温抵抗体はダイヤモンド薄膜
のみと接し、ダイヤモンド薄膜とのみ熱結合する構成と
することが必要である。
【0054】また、抵抗体の表面に保護膜等を設ける必
要がある場合は、以下の2つの条件の少なくとも一つの
条件を満たした材料を用いることで、測温抵抗体がダイ
ヤモンド薄膜のみと熱結合している条件を維持すること
ができる。(1)ダイヤモンド薄膜の1/100以下
(好ましくは1/1000以下)の熱伝導率を有するこ
と。(2)ダイヤモンド薄膜に比較して十分小さい(具
体的には1/100以下、好ましくは1/1000以
下)の熱容量を有すること。
【0055】このようにして、測温抵抗体をダイヤモン
ド薄膜のみと熱結合させることによって、ダイヤモンド
薄膜の温度変化を高い精度で計測することができ、ダイ
ヤモンド薄膜の応答特性を性格に評価することができ
る。
【0056】また、流体をダイヤモンド薄膜の一方の面
(抵抗体が配置されていない側の面)のみとすると、抵
抗体や配線が流体に曝されない構成とすることができ、
流体による電極や配線の腐蝕の問題を解決することがで
きる。勿論、電極や配線の腐蝕が問題とならない場合
は、ダイヤモンド薄膜の両面を流体に接触させてよい。
【0057】上記において述べたように、正確な流量計
測を行うには、ダイヤモンド薄膜から流体によって奪わ
れる熱量を正確に評価することが必要であり、そのため
には、測温抵抗体はダイヤモンド薄膜のみが熱結合して
おり、測温抵抗体と他の材料との熱結合が測温抵抗体と
ダイヤモンド薄膜の熱結合に対して無視できる状況を実
現することが必要である。
【0058】また、本発明においては、ダイヤモンド薄
膜が熱的に絶縁されて基体に保持されていることも重要
である。
【0059】ダイヤモンド薄膜から流体以外に熱量が流
失していく場合、測温抵抗体が検出するダイヤモンド薄
膜の温度変化は、流体以外に逃げていく熱量によるもの
も含むことになる。
【0060】このことは、流量計測という観点からは実
質的な感度の低下や計測制度の低下の原因となる。なぜ
ならば、ダイヤモンド薄膜より流体以外に逃げていく熱
量も流量変化等によって変化するから、ダイヤモンド薄
膜から流体に奪われていく熱量に比較して、ダイヤモン
ド薄膜から流体以外に奪われていく熱量が無視できない
場合、ダイヤモンド薄膜の温度変化は流量に依存したも
ので無くなってしまうからである。特にこの問題は、流
量が微小に変化した場合や、流量が少ない場合に顕著に
なる。
【0061】そこで、ダイヤモンド薄膜から流体以外に
逃げていく熱量を極力少なくすることが必要とされる。
究極的には、測温抵抗体や発熱体を配置したダイヤモン
ド薄膜を流体中に完全な自由な形で熱的に浮かせること
が理想的である。しかしながら、ダイヤモンド薄膜を保
持する手段や抵抗体への配線が不可欠なものであり、こ
れらを介しての熱量の流失は完全には無くすことはでき
ない。
【0062】しかしながら、ダイヤモンド薄膜から流体
に奪われいく熱量に比較して、ダイヤモンド薄膜以外に
流失する熱量を極めて小さくすれば、ダイヤモンド薄膜
を実質的に熱的に周囲から絶縁した状態を実現でき、流
体に奪われていく熱量を正確に評価することが可能とな
る。
【0063】具体的には、ダイヤモンド薄膜を保持する
基体には、熱伝導率が極力小さい材料であるテフロンや
樹脂材料を用いることで、上記目的を実現することがで
きる。これら、熱伝導率の小さい材料としては、熱伝導
率が1(Wm-1-1)(300K)以下であるような材
料を選択すれば、ダイヤモンド薄膜(300Kで100
0(Wm-1-1)弱以上であると考えられる)との熱伝
導率の違いが1000倍以上となり、その影響を大きく
低減することができる。
【0064】また、ダイヤモンド薄膜と当該ダイヤモン
ド薄膜を保持する基体との接触点を極力少なく、あるい
はその面積を小さくして、ダイヤモンド薄膜から基体に
伝導する熱量を極力少なくすることも有用である。
【0065】また、珪素基板等の熱伝導率の大きい材料
を用いる場合には、ダイヤモンド薄膜を保持する部分を
酸化または窒化させ、その熱伝導率を小さくさせ、しか
もダイヤモンド薄膜との接触面積を極力小さくすること
で、実質的にダイヤモンド薄膜を熱的に基体から絶縁す
ることができる。
【0066】なお、ダイヤモンド薄膜が被計測物質であ
る流体と熱的に接していなければならないことはいうま
でもない。このことは、被計測物質として、流体以外の
材料(例えば固体)を用いる場合でも同様である。
【0067】また、ダイヤモンド薄膜の少なくとも一方
の面のみが流体に接し、他方の面にダイヤモンド薄膜の
みと熱結合した測温抵抗体あるいは発熱体として機能す
る抵抗体が設けられた構成において、流体と接するダイ
ヤモンド薄膜の一方の面は、ダイヤモンド薄膜の結晶成
長終期面であるとする構成も有用である。
【0068】プラズマCVD法で形成されたダイヤモン
ド薄膜は多結晶ダイヤモンド構造を有し、その表面は微
小な凹凸を有している。そして、基板(例えば珪素基板
が用いられる)との接触面は平滑な面を有している。従
って、凹凸を有する結晶成長終期面を流体と接する構造
とすることによって、流体との間での熱交換効率を高め
ることができ、流体に奪われる熱量を正確に評価するこ
とができる。
【0069】また、結晶成長終期面とは反対側の面に抵
抗体を配置することは、結晶成長初期面、即ち平滑な面
に抵抗体を配置することになるので、回路配置等が容易
になる。
【0070】本発明の他の構成としては、ダイヤモンド
薄膜には発熱体と感熱体とが設けられており、前記発熱
体と感熱体とが当該ダイヤモンド薄膜を介してのみ熱的
に結合している構成を挙げることができる。
【0071】発熱体としては、ジュール熱によって発熱
する抵抗体を利用することができる。また、感熱体とし
ては、温度によって抵抗値が変化する測温抵抗体を利用
することができる。例えば、白金の薄膜を抵抗体として
利用し、その抵抗値を設定することで、発熱体と感熱体
である測温抵抗体とを作り分けることができる。
【0072】この構成においては、発熱体と感熱体とが
ダイヤモンド薄膜を介してのみ熱結合していることが重
要である。ダイヤモンド薄膜へは、発熱体から熱量が供
給され、その熱量の一部がダイヤモンド薄膜から流体に
よって奪われる。この際、ダイヤモンド薄膜にパルス状
の加熱を行ない、この際のダイヤモンド薄膜の応答特性
をダイヤモンド薄膜の温度変化として検出すると、この
応答特性は、流体による熱の奪い方に依存している。従
って、この応答特性を評価することによって、流量また
は流速を算出することができる。
【0073】この場合計測精度を高めるには、感熱体が
ダイヤモンド薄膜の温度変化だけをに反応することが必
要である。そしてそのためには、発熱体からダイヤモン
ド薄膜以外を伝導して、感熱体に至る熱量を極力小さく
する必要がある。
【0074】例えば、発熱体と感熱体とが、ダイヤモン
ド薄膜以外に高い熱伝導率を有する材料(例えば珪素)
と接触(熱結合)している場合、感熱体はダイヤモンド
薄膜の温度のみではなく、発熱体によって加熱されたそ
の高い熱伝導率を有する材料の温度をも同時に検出して
しまうことになる。するとこの場合、感熱体が検出する
温度は、ダイヤモンド薄膜から流体によって奪われた熱
量を反映したものではなくなってしまう。即ち、流量を
正確に反映した出力を感熱体から得ることはできなくな
ってしまう。
【0075】従って、発熱体と感熱体とは流体に接する
ダイヤモンド薄膜のみを介して熱的に結合していること
が必要である。
【0076】本発明の他の構成としては、ダイヤモンド
薄膜に接して発熱体と感熱体とが設けられ、発熱体がパ
ルス状の加熱をする機能を有し、感熱体は発熱体よりの
パルス状の加熱によるダイヤモンド薄膜の温度変化を計
測する機能を有する構成を挙げることができる。
【0077】パルス状の加熱(間欠的な加熱ともいう)
による流量の計測については後に詳述するが、パルス状
の加熱に従うダイヤモンド薄膜の温度変化を計測するこ
とにより、極めて正確な流量の計測ができる。さらには
複数の流体が混合した混合流体の混合比、流体の種類、
流体中の含有物の有無や濃度、等々を計測することがで
きる。これは、流体に奪われていく熱量の違いに起因す
るものである。
【0078】また本発明の他の構成としては、ダイヤモ
ンド薄膜の一方の面に一導電型を有するダイヤモンド半
導体を設け、このダイヤモンド半導体を発熱体として機
能させる構成も有用である。
【0079】ダイヤモンド薄膜に接して流れる流体の流
量を計測するためには、ダイヤモンド薄膜に所定の熱量
を供給(例えばパルス状の加熱を行う)し、この際にお
けるダイヤモンド薄膜の温度変化を測温抵抗体によって
計測する必要がある。
【0080】この場合、ダイヤモンド薄膜に熱量を供給
する手段としては、抵抗体に電流を流し、この抵抗体が
発生するジュール熱を利用する構成を挙げることができ
る。
【0081】一方、抵抗体をダイヤモンド薄膜の表面に
蒸着法やスパッタ法で形成された白金の薄膜で形成した
場合において、この抵抗体をパルス状の電流(間欠的な
電流)によってパルス加熱させた場合、ダイヤモンド薄
膜がうねるように動く様子が観察された。これは、ダイ
ヤモンド薄膜と白金薄膜との熱膨張係数の違いが原因で
あると考えられる。
【0082】発熱体として機能する抵抗体には配線が接
続されており、またダイヤモンド薄膜表面には測温用の
抵抗体も配置されてので、ダイヤモンド薄膜がパルス状
の加熱のたびに波打つように動くことは、配線の接触不
良や断線、さらには配線の接続部分が外れたりする危険
性を高くする。また、機械的な振動に起因して、抵抗体
に流れる電流にノイズが発生することも考えられる。
【0083】一方、ダイヤモンド薄膜の表面にBをイオ
ン注入し、P型ダイヤモンド半導体層を形成し、このP
型ダイヤモンド半導体層を発熱体として利用した場合に
は、パルス加熱において、前述のようなダイヤモンド薄
膜の波打つような動きは観察されなかった。これは、発
熱体とダイヤモンド薄膜との間で熱応力が働くことがほ
とんど無いためであると考えられる。
【0084】また、ダイヤモンド薄膜の一方の面が流体
が流れる通路の内壁の一部を構成する構造を採用するこ
とも有用である。
【0085】このような構造において、流体が流れる通
路としては、例えば流体が流れるパイプを上げることが
できる。上記構成において重要なのは、流体が流れる通
路の内壁の一部をダイヤモンド薄膜で構成し、このダイ
ヤモンド薄膜の流体に接しない側の面に測温抵抗体を配
置することで、通路(例えばパイプ)と一体となった流
体計測装置を配置することができる点である。このよう
にすることで、流体の流れを乱さずに流量計測を行える
構成を実現できる。
【0086】また、後述するが、効果的に流体にダイヤ
モンド薄膜から熱量を奪わせるためには、ダイヤモンド
薄膜の面を流体の流れに対して完全に平行にするのでは
なく、流体がダイヤモンド薄膜に衝突しやすいように多
少ダイヤモンド薄膜を傾けて設けることが有用である。
このような場合も、「ダイヤモンド薄膜の一方の面が通
路の内壁の一部を構成する」という構成に含まれる。即
ち、かなずしもダイヤモンド薄膜の平面が完全に通路の
内壁と同一平面を形成する必要はない。
【0087】また、ダイヤモンド薄膜を用いた流体計測
装置が設けられた通路部分が複数の通路に分割されてい
る構成を採用することも有用である。
【0088】通路部分を分割するのは、後述するよう
に、流体計測装置に接する流体のレイノルズ数を200
0より小さくするためである。レイノルズ数(Reで表
記する)を2000より小さくするのは、レイノルズ数
が2000〜4000の間では流れが不安定になり、流
量計測精度が低下するからである。
【0089】勿論、この構成においては、計測流量範囲
がRe =2000〜4000の範囲内にあることが前提
となる。即ち、Re =2000〜4000となってしま
う場合において、上記構成を採用することで、Re の最
大値を2000より小さくする、という点が重要であ
る。
【0090】通路部分を複数に分割することで、Re
2000とすることができるのは、以下の理由による。
【0091】レイノルズ数Re は、通路を直径dの円形
パイプとし、流速V、動粘性率νとした場合にRe =d
V/νで示される。ここで、通路を分割した構成とする
と、実質的にdを小さくしたことになるから、Re の値
を小さくすることができる。
【0092】例えば、流体の通路として円形パイプを採
用した場合、パイプ内を4等分することによって、その
断面積が1/4になるから、分割された一つの通路を円
形パイプに対応させた場合の直径は、分割前の1/2に
相当することになる。よってRe は分割前の1/2にな
る。
【0093】従って、この場合の流量計測範囲におい
て、通路を分割する前にはRe =500〜3000であ
ったとすると、パイプ内を4等分することによって、そ
の一つの通路においては、Re =250〜1500とす
ることができ、不安定な流れによる流量計測精度の低下
を免れることができる。
【0094】上記構成は、流量の計測のみではなく、流
体の種類の識別や流体中の含有物の有無や濃度を調べる
場合にも利用できる。即ち、Re =2000〜4000
の間の不安定な流れの影響を受けることなく、必要とす
る計測を行うことができる。
【0095】流体力学によれば、Re<2000におい
ては、流れが層流であり、レイノルズが2000〜40
00では局所的に乱流が発生する不安定な流れとなり、
レイノルズ数が4000以上では、安定した完全な乱流
になることが示される。
【0096】従って、被計測流体の流量計測範囲におけ
るレイノルス数を2000より小さくすることは、流れ
を層流状態にし、安定した計測を実現するものといえ
る。
【0097】一方、Re>4000とすることも有用で
ある。前述のように、レイノルズ数を4000より大き
くすることで、安定した乱流状態を実現でき、一応安定
した流量計測を行うことができる。
【0098】レイノルズ数を大きくするには、通路の断
面積を狭めて、流速を速くすればよい。またオリフィス
を設けて流体を絞り、流速を速めることでもよい。
【0099】しかしながら、レイノルズ数を4000以
上とすることは、レイノルズ数を2000以下とするこ
とに比較して、以下のような問題がある。 (1)安定した乱流といっても程度の問題であり、乱流
によってダイヤモンド薄膜が振動したりする問題は残
る。 (2)レイノルス数を4000以上とするには、流体の
通路をかなり狭まく(例えばμmオーダー)しなければ
ならず、構造として現実的ではない。
【0100】また、ダイヤモンド薄膜が流体に対してわ
ずかな角度を有して配置されている構成を採用すること
も有用である。この発明を利用した構成を図20(B)
に示す。図20(B)において、202が流体であり矢
印の方向に流れる。また、200は流体が流れる通路で
あり、この場合は円筒形のパイプである。201がダイ
ヤモンド薄膜あるいはダイヤモンド薄膜が配置された基
体(例えばテフロン基板)で構成される流体計測装置で
ある。この流体計測装置は、流体の流れる方向に対して
φの角度を有して配置されている。またダイヤモンド薄
膜の流体に接しない側の面には、抵抗発熱体と測温抵抗
体が設けられている。
【0101】この角度φをなして流体計測装置201を
設けることにより、ダイヤモンド薄膜の全面に流体が積
極的に接する構造とすることができ、ダイヤモンド薄膜
から流体に対して効果的に熱量を奪わせることができ
る。この結果比較的少ない流量範囲における感度を向上
させることができる。しかしながら、ダイヤモンド薄膜
が流体の流れを乱してしまうという問題がある。なお、
流れの乱れを最小限に抑えるため、φ<10°であるこ
とが望ましい。
【0102】以上において説明した構成においては、薄
膜材料部分の熱容量に比較して、測温抵抗体部分の熱容
量は小さい方がよい。これは、測温抵抗体部分の熱容量
が大きいと、熱に対する測温抵抗体自体の応答時間が長
くなり、パルス加熱に対する薄膜材料の熱応答特性の検
出精度が低下するからである。さらに、微小な熱量変化
を検出することができなってしまうからである。
【0103】本発明らの知見によれば、以上において説
明した流体計測装置の構成は、流体の流量や流速の計測
の他に、流体の種類の識別、流体の密度の計測(密度に
よって拡散していく熱量は異なる)、複数の流体が混合
した流体の混合比の計測、流体中の含有物濃度の計測
(例えば湿度の計測)に用いることもできる。即ち、同
じ条件において、ダイヤモンド薄膜からの熱の奪われた
方が、 (1)流体の種類によって異なる。 (2)流体の密度によって異なる。 (3)流体の混合比率によって異なる。 (4)流体に含まれる混合物によって異なる。 といったことを利用した計測を行うことができる。これ
ら、数々の計測は、流体の熱伝導率や比熱の違いに起因
するものである。
【0104】また、上記の議論を前提とするならば、被
計測物は流体に限定されるものではないことも理解され
る。例えば、ダイヤモンド薄膜と被計測物(例えば固
体)とが接しているとする。この状態でダイヤモンド薄
膜に対してパルス状の加熱を行い、その際の応答特性を
ダイヤモンド薄膜の温度変化として計測した場合、この
応答特性は、被計測物質の熱伝導率や比熱に従って異な
るものとなる。
【0105】一方、物質の熱伝導率や比熱は、 (1)物質の種類。 (2)物質の密度。 (3)異なる物質の混合比率。 (4)物質に含まれる混合物の有無や濃度。 によって異なるのだから、上記応答特性の違いから、上
記の事項についての計測や識別ができることになる。
【0106】また、被計測物質の熱容量の違いも計測で
きる。これは、被計測物質の熱容量の違いによって、ダ
イヤモンド薄膜からの熱の奪い方が異なるからである。
換言すれば、パルス状の加熱に際するダイヤモンド薄膜
の加熱のされ方と冷却のされ方とは、被計測物質の熱容
量の違いを反映したものであり、この違いから、被計測
物質の熱容量の違いを評価することができる。
【0107】従って、本発明においても、特に被計測対
象を限定しない場合は、被計測物質は限定されるもので
はない。
【0108】以上説明した計測装置の動作は、薄膜材料
(例えばダイヤモンド薄膜)に所定の熱量を供給し、こ
の加熱に従う薄膜材料の応答特性から、薄膜材料に接し
て流れる流体、あるいは薄膜材料に接する物質(気体、
液体、固体は問わない)に奪われていく熱量の奪われ方
が異なることを定量的に評価することを基本とする。例
えばこの定量的な評価から、流体の流量や流速が算出さ
れる。また、流量が同じ場合は、流体の熱伝導率や比熱
の違いを求めることができる。
【0109】上記の熱量の奪われ方というのは、熱の移
動の状態、あるいは熱の移動の仕方とも理解することが
できる。そして、この薄膜材料からの熱量の奪われ方
は、薄膜材料の熱に対する応答特性、具体的には、パル
ス状の加熱に際しての、薄膜材料の温度変化として検出
される。
【0110】このような動作の具体的な例としては、以
下に示すような動作が有用である。以下に示す動作は、
ダイヤモンド薄膜に接して流れる流体の流量(流速)の
計測を行う場合の例である。
【0111】(第1の動作)測温抵抗体からの出力をΔ
0 の時間において積算し、積算値S0 を求める。 (第2の動作)薄膜材料に所定の熱量を供給する。例え
ばパルス状の加熱によって、この動作は行われる。 (第3の動作)上記第2の動作に従って変化する抵抗体
からの出力をΔt2 の時間において積算し、積算値S2
を求める。 (第4の動作)積算値S0 と積算値S2 との差を求め
る。 (第5の動作)上記第4の動作の結果から流体の流量を
算出する。
【0112】以下においては、流量を計測する場合につ
いてであるが、他の場合でもその計測方法は第4の動作
まで同じである。
【0113】まず、第1の動作において、測温抵抗体で
ある抵抗体からの出力を所定の時間Δt0 において積算
するのは、流量を計測するための規準の値を決定するた
めである。測温抵抗体からの出力は僅かであるがふらつ
ている。即ち測温抵抗体からの出力にはノイズが含まれ
ている。そこで、このふらつきをキャンセルするために
Δt0 の時間において測温抵抗体からの出力を積算する
のである。こうすることで、プラス方向及びマイナス方
向にふらついていた出力がキャンセルされて、測温抵抗
体からの出力変動に左右されない規準の値を決定するこ
とができる。
【0114】第2の動作で行う加熱は、パルス状の短い
時間で行うことが好ましい。また、その加熱方法は薄膜
材料表面に設けられた発熱体から行うが一般的である。
この加熱の結果、薄膜材料は極短時間で加熱されてい
き、測温抵抗体からの出力は薄膜材料の温度変化に従っ
て変化する。この出力の変化の状態は、薄膜材料から流
体への熱量の奪われ方に依存するものである。そしてこ
の場合、この出力の変化の状態は、流体の流量に依存す
る。
【0115】そして第3の動作において、この抵抗体か
らの出力の変化を積算することによって、薄膜材料の加
熱に対する過渡応答特性を定量的に評価することができ
る。この第3の動作は、薄膜材料が加熱されていく状態
と、加熱終了後に冷却されていく状態の両方で行うこと
が一般的であるが、いずれか一方の状態のみで行っても
よい。
【0116】さらに、第2の動作によって得られた積算
値と第3の動作によって得られた積算値との差を求める
(第4の動作)ことにより、加熱に従う薄膜材料の温度
変化のみを評価することができる。即ち、ドリフト成分
を含まない過渡応答特性を評価することができる。この
薄膜材料の温度変化は、流量に依存するものであり、ま
た直流ドリフト成分がほとんど含まれないので、この変
動成分よりドリフト成分の影響を受けない流量値を算出
することができる。(第5の動作)
【0117】なお、この第4の動作において、時間幅を
合わせて引算を行う必要があるが、この点については後
において詳述する。
【0118】以上の説明は、第5の動作において、薄膜
材料のドリフト成分を含まない過渡応答特性の定量的評
価から、薄膜材料に接して流れる流体の流量または流速
を算出する場合であるが、薄膜材料に接して流れる流体
の熱伝導率や比熱を計測する場合は、第5の動作におい
て、第4の動作の結果と予めメモリーに記憶されている
情報とを照合することにより、必要とする計測を行うこ
とができる。
【0119】例えば、第4の動作の結果の値と流体の熱
伝導率の関係が予め判明していれば、そのデータと実際
に第4の動作の結果得られた値とを比較することで、流
体の熱伝導率を求めることができる。
【0120】上記に述べたような第1〜第5の一連の動
作を行うことで、流量計測が行われるのであるが、実際
には上記一連の第1〜第5までの1サイクルの動作は連
続して行われるので、所定の時間間隔をおいて流量計測
が行われることになる。この流量計測の間隔(ここでは
この時間をTとする)は、前の動作過程における加熱の
影響を受けないようにする必要がある。即ち、第2の動
作における薄膜材料の加熱に従うダイヤモンド薄膜の温
度変化が収まった後に、次の一連の動作過程に入ること
が必要である。この間隔Tは、加熱時間(Δt0 とす
る)の10倍以上とすることが好ましく、例えば、Δt
0 =0.2秒とした場合には、T=2秒以上とすること
が必要である。
【0121】また薄膜材料としては、後述するようにダ
イヤモンド薄膜を用いることが極めて有用である。
【0122】〔動作原理について〕以下に本発明の基本
的な動作原理について、図1の流体計測装置を用いて説
明する。ここでは、実験的にも顕著な効果が得られてい
るダイヤモンド薄膜を用いた流量計測動作の場合につい
て主に説明する。
【0123】図1に示す流体計測装置は、ダイヤモンド
薄膜の一方の面に白金の薄膜よりなる発熱体11と同じ
く白金の薄膜よりなる測温抵抗体として機能する抵抗体
12が設けられ、他の一方の面17に接して流体16が
流れる構成を有する。
【0124】図1に示す構成において、発熱体11より
パルス状の加熱が行われると、その熱はダイヤモンド薄
膜を高速で伝導していく。この伝導は、現存する材料中
最も速い速度で行われる。そして、この発熱体11から
伝導していった熱は、ダイヤモンド薄膜13の裏面17
や側面から逃げていくが、その多くは測温抵抗体12に
も到達する。そしてこのように伝導してきた熱を測温抵
抗体12はダイヤモンド薄膜13の温度として検出す
る。この状態は熱的に平衡な状態ではなく、非平衡な状
態である。具体的には、測温抵抗体12は、ダイヤモン
ド薄膜13のパルス状の加熱に対する過渡応答特性をダ
イヤモンド薄膜の温度変化として検出することになる。
【0125】一方ダイヤモンド薄膜13の裏面表面17
には流体16が流れており、この流体によって、所定の
熱量がダイヤモンド薄膜から奪われていく。この流体に
よって熱の奪い方は、流体の種類さらには流速(即ち流
量)に依存する。
【0126】例えば、流体16の流量が変化すると、ダ
イヤモンド薄膜表面17からの流体16による熱量の奪
い方もまた変化する。当然この変化は、測温抵抗体12
に到達する熱量にも影響を与える。従って、流体16の
流量変化は、測温抵抗体12の出力に表れることにな
る。
【0127】即ち、表面17に伝導していった熱の多く
は、その界面で反射されるが、その反射の割合や反射の
され方は、表面17からの熱の奪われ方に依存する。こ
の影響は、ダイヤモンド自信の持つ熱応答性によって極
めて高速に、そして高感度で及ぼされる。
【0128】結果として、発熱体12から供給されるパ
ルス状の熱量のダイヤモンド薄膜中での移動(即ち、熱
伝導)は、その表面17に接する流体16の流量によっ
て大きく影響を受け、この影響は、ダイヤモンド薄膜1
3の温度変化として測温抵抗体12の抵抗値の変化とし
て出力される。従って、測温抵抗体12からの出力を処
理することによって、流体16の流量を算出することが
できる。
【0129】ここで、周囲からダイヤモンド薄膜13が
受ける熱的な影響について考察すると、その表面及び裏
面におけるものが大部分であることが理解される。この
ことは、薄膜の特徴を考えれば当然理解されることであ
る。例えば図1の場合、図ではその厚さが大きく示され
ているが、実際にはその厚さが数μm〜数十μm程度で
あり、その寸法がmm以上のオーダーであることを考え
ても明らかである。
【0130】また、図1に示すような構成においては、
一方の面に発熱体11と測温抵抗体12とが設けられ、
その面ではダイヤモンド薄膜13がほとんど露呈してい
ない。一方流体16はダイヤモンド薄膜が露呈している
面17のみに接しているので、ダイヤモンド薄膜が外部
から受ける熱的な影響は、面17から受けるものが圧倒
的であることが理解される。
【0131】してみると、ダイヤモンド薄膜13中を移
動する熱が受ける影響は、流体16と接する面17から
のものがそのほとんどであると理解される。このように
考えると、発熱体11から発せられたパルス状の熱量の
ダイヤモンド薄膜中での伝導の仕方、言い換えるならば
ダイヤモンド薄膜13の過渡応答特性は、流体16の流
量によって決まると考えることができる。
【0132】このように考えると、ダイヤモンド薄膜1
3に発熱体11よりパルス状の加熱を行い、この際にお
けるダイヤモンド薄膜13の過渡応答特性を評価するこ
とにより、流体16の流量に関する情報が得られること
が理解される。具体的には、ダイヤモンド薄膜13の温
度変化を前述したような所定の手順に従って処理するこ
とで、流体16の流量を算出することができる。
【0133】以下に図6(A)を用いてさらに具体的に
計測原理を説明する。ここでは一定の流量で流体が流れ
ているとする。図6(A)において、t1からt1+Δt1
間において発熱体11からの加熱が行われるとする。こ
のΔt1の時間は、例えば0.2秒程度である。この結
果、測温抵抗体12からの出力は61で示されるように
変化する。即ち、発熱体12から所定の熱量が供給され
ることによって、ダイヤモンド薄膜が徐々に加熱されて
いくので、その出力f(V) は61で示すように変化す
る。この、f(V) の変化は、ダイヤモンド薄膜13の加
熱に対する過渡応答を示すものといえる。
【0134】前述の議論から明らかなように、ダイヤモ
ンド薄膜13の加熱に対する過渡応答特性を定量的に評
価することで、流体16の流量が求められるのである
が、この場合、f(V) が描く曲線61の形を定量的に評
価することで、ダイヤモンド薄膜13の過渡応答特性を
定量的に評価することができる。具体的には、この曲線
61によって描かれる図形の面積を求めることで、ダイ
ヤモンド薄膜13の過渡応答特性を定量的に評価する。
【0135】発熱体11からの熱量の供給が終わった後
(t1+Δt1以後)においても流体16によって奪われる
熱量があるので、測温抵抗体12からの出力f(V) は、
図6(A)の61で示すような曲線で元の値f0 に近づ
いていく。即ち、熱の供給が終わった後においても、ダ
イヤモンド薄膜の冷却のされ方、という形でダイヤモン
ド薄膜の過渡応答特性を評価することができる。
【0136】このように、ダイヤモンド薄膜の熱に対す
る応答特性を、ダイヤモンド薄膜の加熱のされ方と冷却
のされ方とを定量的に求めることで評価することができ
る。
【0137】61は、所定の流量に対応する測温抵抗体
からの出力f(V) の変化であるが、さらに流量が少ない
場合は、出力f(V) の変化は62の点線で示す曲線のよ
うになる。これは、単位時間当りにおけるダイヤモンド
薄膜から奪われる熱量が少なくなるので、ダイヤモンド
薄膜は急速に加熱され、そしてゆっくりと冷却されてい
くからである。
【0138】以下において、このパルス状の加熱(間欠
的な加熱)に対するダイヤモンド薄膜の応答特性につい
て数式を用いて説明する。以下において、Δt1のパルス
加熱によってダイヤモンド薄膜に供給される熱量をW0
とし、Kを流体によって運び去られる熱量に関係する熱
伝導係数とし、Cをダイヤモンド薄膜の熱容量とし、G
をダイヤモンド薄膜の熱伝導率とする。勿論、以下に説
明する内容は、薄膜材料としてダイヤモンド薄膜以外を
用いた場合においても適用できる。
【0139】まず、時間のパラメータtが(t1 <t<
1 +Δt1 )を満たす場合、即ち、Heat pulseによる
加熱が行われて間においては、下記数1が成り立つ。
【0140】
【数1】
【0141】上記数1において、θはダイヤモンド薄膜
の温度であり、θ0 は流体の温度である。上記数1は、
ダイヤモンド薄膜が加熱されていく状態における、ダイ
ヤモンド薄膜の熱の移動を考慮した微分方程式である。
【0142】また、時間のパラメータtが(t1 +Δt
1 <t<T)を満たす場合、即ち、Heat pulseによる加
熱が終了し、ダイヤモンド薄膜が冷却されていく状態に
おいては、下記数2が成り立つ。なお、Tは1回の流量
計測が終了する時間である。
【0143】
【数2】
【0144】上記数2は、ダイヤモンド薄膜が加熱後、
冷却されていく状態における、ダイヤモンド薄膜の熱の
移動を考慮した微分方程式である。
【0145】上記微分方程式を解くと、(t1 <t<t
1 +Δt1 )においては、下記数3が求められる。
【0146】
【数3】
【0147】また、(t1 +Δt1 <t<T)において
は、下記数4が求められる。
【0148】
【数4】
【0149】上記数3および数4において、Δθはダイ
ヤモンド薄膜の温度変化を示す。上記結果は、図6
(B)に示すように、ダイヤモンド薄膜が急速に加熱さ
れ、そして急速に冷却されていく状態を示している。
【0150】図6(B)に示すダイヤモンド薄膜の加熱
を短時間で行うには、αの値を大きくすればよい。従っ
て流量計測を短時間で行うためには、熱容量Cが小さ
く、熱伝導率Gが大きいダイヤモンド薄膜を利用するこ
とが極めて有用である。また、αの値を大きくすること
で、図6(A),(B)に示す、曲線の立ち上がりを急
峻にすることができ、計測感度を高くすることができ
る。
【0151】以上の議論においては、流量によってf0
の値が定まることが前提である。即ち、長期の流量計測
において流量が変化しない場合、f0 の値が変化しない
ことが前提である。しかしながら、実際の動作におい
て、f0 の値が変動してしまう。これは、ダイヤモンド
薄膜13の温度が徐々に変化してしまうのが原因であ
る。また、動作環境の温度変化(例えば流体の温度変
化)によってもf0 の値は変動してしまう。
【0152】この変動成分(直流ドリフト成分)を取り
除くには、ダイヤモンド薄膜の加熱に対する過渡応答特
性のみを評価すればよい。即ち、Δt1において行われる
パルス状の加熱によって、ダイヤモンド薄膜の温度がど
の様に変化するか、その変化分のみを計測すればよい。
この際、直流ドリフト成分も僅かに変化するが、Δt1
時間におけるダイヤモンド薄膜の温度変化はわずかであ
り、無視することができる。
【0153】具体的には、加熱直前におけるf0 の値を
所定の時間内において積算し、その直後の加熱時さらに
は冷却時におけるf(V) の値をやはり所定の時間におい
て積算し、それらの差をとることにより、加熱に従うf
(V) の変化分のみを得ることができる。このf(V) の変
化分は、図6(A)における斜線部で示される積算量
(積分値)として求められる。このf(V) の変化分は、
流体によるダイヤモンド薄膜表面からの熱量の奪われ方
に主に依存するものであり、直流ドリフト成分をほとん
ど含まない。ここで問題となる直流ドリフト成分は、加
熱直前(即ちt1直前)から加熱終了後(即ちt1+Δ
t1)までの間に生じる直流ドリフト成分のみであり、ほ
とんど問題とならない。
【0154】上記の計測は、瞬間的なΔt1の加熱によっ
て生じるf(V) の変化分のみを評価することを顕著な特
徴とする。
【0155】以上説明したように、ダイヤモンド薄膜を
瞬間的に加熱し、その加熱に対するダイモンド薄膜の応
答特性を、言い換えるならばダイヤモンド薄膜の加熱の
され方と冷却のされ方とを評価することで、ダイヤモン
ド薄膜表面に接して流れる流体の流量を正確に計測する
ことができる。
【0156】以上において説明した計測原理は、ダイヤ
モンド薄膜以外の材料を用いた場合であっても原理的に
は同じである。また、以上においては、ダイヤモンド薄
膜に接して流れる流体の流量を計測する場合について説
明したが、流体の熱伝導率や比熱を計測する場合、さら
には、固体材料の比熱や熱伝導率を計測する場合であっ
てもその原理は同じである。この場合は、被計測物質の
熱伝導率や比熱の違いによって、薄膜材料からの熱の奪
い方が異なる、言い換えるならば、被計測物質に接して
いる状態において、当該薄膜材料がどのように加熱さ
れ、どのように冷却されるかは、被計測物質の熱伝導率
や比熱によって異なり、この異なり方を定量的に評価す
ることで、被計測物質の熱伝導率や比熱に関する情報を
得ることができる、ということになる。
【0157】また上記の議論は、被計測物質の熱容量が
異なる場合であっても同様に展開することができる。た
だしこの場合、被計測物質の熱容量が当該薄膜材料の熱
容量に比較してあまり大きくないことが必要である。即
ち、当該薄膜材料から拡散していく熱量によって、被計
測物質の温度がほとんど変化しないような場合、被計測
物質の熱容量の違いを当該薄膜材料の加熱に対する応答
特性より計測することは困難である。
【0158】〔ダイヤモンド薄膜を用いる有用性につい
て〕薄膜材料の熱に対する応答性は、τ=CρL2 /G
π2 で評価される。この式は、膜厚方向の熱伝導を無視
し、平面方向への熱伝導を2次元モデルを用いて考察す
ることによって求めたものである。ここでτは薄膜に熱
が加えられてから、薄膜が平衡状態に達するまでにかか
る時間を示すパラメータである。上記τは一つの目安で
あり、これをもって薄膜の熱に対する応答時間の絶対値
を評価できるものではないが、相対的な評価には利用す
ることができる。
【0159】上記式において、Cは熱容量であり、ρは
密度であり、Lは薄膜の寸法(ここでは薄膜を正方形と
し、その一辺の寸法とする)であり、Gは熱伝導率であ
り、πは円周率である。この式を用いて4mm角のダイ
ヤモンド薄膜のτを評価すると、K=1300Wm-1
-1として、τ=約2.2msとなる。また、同じく4m
m角の単結晶珪素薄膜のτを評価すると、約19msと
なる。このことから、ダイヤモンド薄膜の熱に対する応
答時間は、珪素薄膜の約8倍以上ということが結論され
る。このようにパルス加熱による過渡応答特性を評価す
る本発明の構成においては、ダイヤモンド薄膜を用いる
ことの有用性が理解される。
【0160】特に気相法で形成したダイヤモンド薄膜は
多結晶状態を有し、膜厚の方向に結晶成長した結晶構造
を持っているので、膜厚方向への熱伝導率は、2000
(Wm-1-1)近くを期待することができる。従って、
ダイヤモンド薄膜の一方の面を流体に接しさせ、他の一
方の面に発熱体と測温抵抗体とを配置する構成は、熱的
な作用を非常に有効利用できる。
【0161】一方、珪素薄膜を用いた場合には、流体以
外に逃げていく熱量の影響も、その熱伝導率の低い分そ
れだけ大きく受けることになるから、微小流量に対する
計測精度やダイナミックレンジの低下が顕著に表れてし
まう。
【0162】以上のように加熱に従う過渡応答特性か
ら、流量を計測する方法には、ダイヤモンド薄膜の用い
ることが極めて有用である。
【0163】〔各種材料についての考察〕以下において
は、ダイヤモンド薄膜以外の薄膜材料を用いて、図6に
示す計測方法を用いた場合について考察する。
【0164】図6に示すような計測方法を採用した場合
には、薄膜が急速な加熱に応答することが流量計測感度
の向上のために必要である。
【0165】応答時間は、前述のCρL2 /Gπ2 の式
で評価することができる。薄膜の加熱に対する応答時間
が短いと、図6におけるΔt1 の時間を短くすることが
できる。
【0166】また数3または数4に示されるように、応
答速度を高めるのは、αの値を大きくすることが有用で
ある。同時に、αが大きいことはそれだけ感度が高いこ
とお意味する。なぜならば、αが大きいことは、図6
(A)の61で示される測温抵抗体からの出力変化が急
激であることを意味し、このことは僅かな流量変化に対
して大きく測温抵抗体の出力が変化することを意味する
からである。
【0167】αは、α=((G+K)/C))で示されるよ
うに、薄膜材料の熱伝導率Gが大きく、熱容量Cが小さ
い程、大きくなる。
【0168】以上の考察から、熱伝導率が小さく、熱容
量が大きい材料を薄膜材料として用いた場合、 (1) 加熱に対する応答時間が長くなる(αが小さくなる
ので応答速度が遅くなる)ので、図6におけるΔt1
Δt2 の値を大きくする必要がある。 (2) 加熱や冷却に対する応答のレンジが狭いので、流量
計測のダイナミックレンジが狭くなる。といったことが
結論される。
【0169】しかしながら、必要とされる流量計測範囲
や計測感度によって、ダイヤモンド薄膜以外の材料を用
いるこも可能である。例えば、ダイヤモンド薄膜の代わ
りに単結晶珪素薄膜を用いた場合、流量計測精度や流量
計測範囲がダイヤモンド薄膜を用いた場合に比較して数
分の一以下に大きく低下する。しかし、要求される流量
計測範囲が10slm〜20slmであるような場合
や、計測間隔が数十秒に一回でよい場合には、生産性や
経済的な観点から珪素薄膜を用いることも有用である。
【0170】単結晶珪素以外の材料としては、炭化珪
素、窒化硼素(cBN)、BP、AlN、BeO、Bや
Pの添加された珪素等を挙げることができる。これらの
材料は、300Kで500Wm-1-1前後、あるいはそ
れ以上の熱伝導率が期待でき、ダイヤモンドに次ぐ材料
として利用することができる。また特性の著しい低下を
許容するならば、酸化珪素、窒化珪素、雲母、BやPの
添加された珪素等を利用することができる。また、その
結晶構造も必要とする特性に鑑みて選択することができ
る。また、酸化アルミやサファイヤ等を利用することも
できる。また、さらに特性の低さを許容するならば、有
機樹脂材料や工業用プラスチック材料を用いることもで
きる。
【0171】しかしながら、高い計測精度や大きな計測
範囲を得るためには、熱伝導率が大きく、比熱が小さい
材料を用いることが望ましい。この様な条件を満足する
材料としては、各種金属材料を用いることも考えられる
が、この場合は、測温抵抗体と接触する部分を電気的に
絶縁する必要がある。
【0172】またこれらの材料は数十μm以下の厚さに
することが必要である。これは、当該薄膜材料の厚さ方
向の熱伝導を無視できるほどの厚さでないと、材料の物
性の違いによる応答速度の差が顕著になるからである。
一般には、薄膜の寸法に対して厚さが1/100以下で
あることが好ましい。例えば、4mm角の薄膜でれば、
この薄膜の膜厚は40μm以下であることが好ましい。
勿論、薄膜材料の厚さは、できうるかぎる薄い方がよ
い。
【0173】なお、本発明者らは、5mm角で厚さ10
μmの雲母薄膜を用い、図6に示すようなパルス加熱に
よる動作を確認している。しかしながら、ダイヤモンド
薄膜を用いた場合に比較して、感度、計測精度、ダイナ
ミックレンジが著しく低く、単に動作が確認できたレベ
ルである。
【0174】
【実施例】以下に実施例を示す。以下に示す実施例にお
いては、実験において顕著な効果を得ることのできたダ
イヤモンド薄膜材料を用いた構成を例として記載する。
しかし、必要とする計測感度が低く、また計測範囲が狭
くて良い場合、さらには経済性(ダイヤモンド薄膜は、
現在のところ他の材料に比較して高価である)や生産性
を考慮するば、他の材料を用いることも原理的には可能
である。また、ダイヤモンドに近い熱伝導率を有する材
料(例えばcBN)を用いることで、ダイヤモンド薄膜
を用いた場合に近い特性を得ることも可能である。
【0175】〔実施例1〕本実施例では、図1に示す流
体計測装置の作製方法について説明する。図1に示す流
体計測装置は、寸法が4mm×4mmで厚さが15μm
の多結晶ダイヤモンド薄膜13の表面上に白金(Pt)の薄
膜よりなる発熱体11と測温抵抗体として機能する抵抗
体12、さらにはそれらの電極10、15が設けられて
いる。
【0176】図1において、図1(A)をA−A’で切
った断面図が図1(B)であり、図1(A)をB−B’
で切った断面図が図1(C)である。
【0177】以下に図1に示す流体計測装置の作製工程
について説明する。まず、直径4インチの珪素基板を用
意する。そして、この珪素基板の被形成面表面にダイヤ
モンドパウダーによる傷つけ処理を行う。このダイヤモ
ンド薄膜上に有磁場マイクロ波CVD法によりダイヤモ
ンド薄膜を15μmの厚さに気相合成する。この有磁場
マイクロ波CVD法は、強力な磁場と2.45GHzの
マイクロ波を用いて、高密度プラズマを形成し、気相合
成を行うものである。
【0178】成膜条件を以下に示す。 基板温度 800度 反応圧力 0.25Torr マイクロ波電力 4KW 反応ガス CH3 OH:H2 =1:4 成膜時間 30時間 膜厚 15μm また珪素基板は875ガウスの磁場強度の位置に配置し
た。上記成膜条件で得られたダイヤモンド薄膜は、多結
晶ダイヤモンド薄膜であり、基板から垂直方向に結晶成
長した構造を有していた。
【0179】成膜方法は、上記方法に限定されるもので
はなく、他の気相合成法を用いてもよい。また天然ダイ
ヤモンドや高圧合成したダイヤモンドを用いてもよい。
またダイヤモンド薄膜中に不純物をドーピングし、熱特
性や電気特性を制御してもよい。また結晶構造も多結晶
に限定されるものではなく、単結晶ダイヤモンド薄膜を
用いてもよい。
【0180】上記珪素基板上に成膜されたダイヤモンド
薄膜は、珪素基板より剥離することで、ダイヤモンド薄
膜単体として得ることができる。この工程は、機械的に
剥離させるか、フッ酸等によって珪素基板を溶かすこと
によって容易に行われる。
【0181】このようにして得られたダイヤモンド薄膜
を4mm角に裁断する。そして、スパッタリングによっ
て、このダイヤモンド薄膜上に白金の薄膜を800〜1
000Åの厚さに成膜する。スパッタリングは、白金タ
ーゲットを用い、スパッタリングガスである空気を1K
eV程度に加速して行った。こうしてダイヤモンド薄膜
上に形成された白金薄膜のシート抵抗は、100Ω/□
程度である。
【0182】そして、パターニングを行うことによっ
て、図1に示すように、ダイヤモンド薄膜13上に発熱
体11と測温抵抗体12とを形成する。具体的には、発
熱体11の抵抗が100Ω程度、測温抵抗体12の抵抗
が1KΩ程度となるようにその面積を調節し、発熱体1
1と測温抵抗体12とを作り分ける。この作り分けは、
図1(C)に示すように、発熱体11と測温抵抗体12
との膜厚を変えることによって行ってもよい。そして電
極10、15を形成して図1に示すような流体計測装置
を完成する。
【0183】なお、測温抵抗体12は、温度に敏感に反
応してその抵抗が変化する機能を有するので、サーミス
タ機能を有する層ということもできる。
【0184】また、測温抵抗体の数や発熱体の数、さら
にはその配置方法を変更する場合でも、上記の作製工程
を基本とすればよい。
【0185】この図1に示す白金薄膜からなる測温抵抗
体12のサーミスタパラメータは約200ppmであっ
た。これは1度の温度変化に対して、0.02%の抵抗
変化に相当する。一般に、白金を用いた測温抵抗体のサ
ーミスタパラメータは100〜3000ppmのものが
得られるので、さらに作製条件の適正化を行えば、さら
に高感度の測温抵抗体を得ることができる。
【0186】図1に示す構成においては、ダイヤモンド
薄膜13の持つ熱容量に比較して、白金の薄膜よりなる
測温抵抗体12の熱容量が数百分の1以下となってい
る。従って、ダイヤモンド薄膜の熱容量に比較すれば、
測温抵抗体の熱容量はほとんど無視することができ、ダ
イヤモンド薄膜の温度変化を測温抵抗体12は極めて高
速に、しかも高感度に検出することができる。測温抵抗
体の熱容量がダイヤモンド薄膜の熱容量に比較して無視
できない場合は、測温抵抗体自身の温度変化が影響し
て、ダイヤモンド薄膜の温度変化を正確に検出できなく
なってしまう。具体的には、測温抵抗体の熱容量に比較
して、ダイヤモンド薄膜の熱容量が100倍以上あるこ
とが必要である。
【0187】図1に示す流体計測装置は、 (1)流体の検出(例えば、流れているかどうかの識
別) (2)流体の流量(流速)の計測 (3)流体の種類の判別 (4)流体中の含有物の有無や濃度の計測(例えば湿度
の計測) (5)複数の流体からなる流体の混合比の計測 等々に用いることができる。
【0188】また、上記(3)〜(5)の使用は、流体
の熱伝導率または比熱、またはその両方の違いによっ
て、ダイヤモンド薄膜から奪われていく熱量の奪われ方
が異なることを利用したものである。
【0189】また、上記(3)〜(5)の使用は、流体
の流れを一定にして動作させる必要がある。例えば、流
量0の状態で動作させる必要がある。
【0190】〔実施例2〕本実施例は、実際にLPGガ
スの流量計測に必要とされる規格(新計量法による)を
満足する流量計測装置に関する。まず、LPGガスの流
量計測に必要とされる特性を図3を用いて説明する。図
3において、縦軸は公差を示す。これは、基準となる値
からのズレ、即ち計測誤差を示すものである。また横軸
は、流量を規格値で示したものである。上記新計量法に
よれば、図3の斜線部分で示される範囲内に計測誤差を
抑えることが要求される。
【0191】LPGガスの流量計測に必要とされる諸条
件を以下に示す。 (1)Qmax は2500(l/hr)(リットル/時)
である。即ち、およそ42slm(リットル/分)であ
る。 (2)必要とされる公差は、120(l/hr)〜25
00(l/hr)の範囲で、上記斜線部分で示される範
囲内に抑えることが要求される。即ち、2slm〜42
slmの流量範囲を上記公差内で計測しなければならな
い。 (3)感度は、3(l/hr)、即ち50sccm
(0.05slm)の検出が必要とされる。 (4)使用温度範囲は、─10度〜60度である。 以上の条件を鑑みるならば、2slm〜50slmの範
囲内における±1.5%以内の公差での計測と、50s
ccmの流量を検出できる感度、即ち50sccmの流
量変化を検出できることが要求される。
【0192】本実施例は、上記要求値を満足する流量計
測装置を作製し、実際に流量計測を行った例である。本
実施例においては、基本的には図1に示す構成を有する
流量計測装置を実際の使用状態において用い、その特性
を計測した。計測は、図4に示すシステムを用いた。な
お、本実施例は流量を計測するのを目的とするので、図
1に示す装置を流量計測装置と呼ぶこととする。
【0193】流量計測装置自体は、図1に示すのと基本
的には、同様な構造を有している。図4においては、一
つの測温抵抗体12からの出力を処理する構成が示され
ているが、本実施例においては、計測値のバラツキを減
らし、さらに流体の温度の影響を排除するために、図5
(C)に示すようなブリッジ回路を用いて流量の計測を
行った。
【0194】図5(A)、(B)は、実際に計測に用い
た構成を示す。図5(A)のA−A’で切った断面が図
5(B)である。図5(A),(B)に示されているの
は、流体の通路である内径10mmのプラスチック製の
パイプ51内を流れる窒素ガス流体50をダイヤモンド
薄膜52と58とに形成された2つの流量計測装置で計
測するものである。このダイヤモンド薄膜52と58と
に形成された流量計測装置は、図1に示す構成を基本と
する。またその作製方法も実施例1に示した作製工程に
準ずる。本実施例においては、ダイヤモンド薄膜の膜厚
は15μmであり、その寸法は10mm×4mmであ
る。
【0195】具体的には、図1に示す構成において、白
金の薄膜よりなる発熱体11を挟む形に2つの白金の測
温抵抗体12を設けたものがダイヤモンド薄膜52上に
形成された図面左側の流量計測装置である。この流量計
測装置は、一対の測温抵抗体53及び55と、その間に
形成された発熱体54とがダイヤモンド薄膜52の一方
の表面に形成された構成を有している。
【0196】また、図面右側の流量計測装置は、上記左
側の流量計測装置の構成において、発熱体がない構成を
有している。即ち、一対の測温抵抗体56及び57がダ
イヤモンド薄膜58の一方の表面上に形成されている。
【0197】上記2つの流量計測装置においては、測温
抵抗体はダイヤモンド薄膜とのみ熱的に結合しており、
また測温抵抗体と発熱体とはダイヤモンド薄膜のみを介
して熱的に結合している。
【0198】さらに、上記2つの流量計測装置は、ダイ
ヤモンド薄膜を周囲から熱的に絶縁するために、ダイヤ
モンドに対しては熱的な絶縁物であるテフロンの基体5
9に組み込まれている。このテフロンの基体59は、内
径10mmのパイプ51に組み込まれている。パイプ5
1内には流体50として窒素ガスが流される。また、ダ
イヤモンド薄膜52と58の測温抵抗体や発熱体が設け
られていない面側が流体50に接するように構成されて
いる。そして、パイプ51内から流体が漏れでないよう
に、パイプ51と基体59との隙間は樹脂が充填されて
いる。
【0199】図5(A),(B)に示す構成を採用した
場合、測温抵抗体や発熱体、さらには配線が形成される
面側が流体に曝されない構成とすることができる。即
ち、腐食性の流体を用いた場合に、熱のやり取りは、極
めて腐食されにくいダイヤモンド薄膜52と58の表面
を介してのみ行われ、測温抵抗体や発熱体の電気特性が
変化しにくい構成とすることができる。
【0200】ダイヤモンド薄膜52及び58を保持する
基体59としては、なるべく熱抵抗の大きい材料を用
い、ダイヤモンド薄膜を熱的に浮かす(周囲から絶縁す
る)ことが必要である。これは、ダイヤモンド薄膜から
流体以外に逃げていく熱量を極力少なくするためであ
る。
【0201】図5(A)、(B)において53、55、
56、57で示される測温抵抗体からの出力は、図5
(C)に示される差動増幅回路の各部分に接続される。
そしてその出力は、図4のA/Dコンバータ45に入力
される。
【0202】以下においては、話を簡単にするため、図
4に示す構成に基づいて説明を行う。即ち、図5(C)
に示す差動回路からの出力の代わりに、図4に示すよう
に一つの測温抵抗体12からの出力を処理する構成を用
いて説明を行う。前述のように、図5に示す構成を採用
したのは、流体の温度の影響を排除するためと測定精度
を高めるためである。しかし、以下に説明するパルス加
熱を用いた流量計測方法は、流体の温度の影響をキャン
セルすることができるので、基本的には、図4に示す構
成で流量計測を行うことができる。
【0203】図4において、測温抵抗体12と発熱体1
1とが図1におけるダイヤモンド薄膜13の表面に設け
られた流量計測装置の各部分に対応する。発熱体11に
は、アンプ41を介してバイアス電圧Vccが加えられ
る。また測温抵抗体12へもバイアス電圧が印加されて
おり、その出力はI/Vアンプ44を介して電圧として
取り出される。この出力は、A/Dコンバータ45にお
いてデジタル信号に変換され、メモリー1(46)、メ
モリー2(47)、及び演算器48においてこれから述
べる所定の演算方法に従って演算処理される。
【0204】図4において、Timing pulse Generator4
3とアンプ41とで、発熱体11にパルス状の熱量を供
給する手段を構成している。ここで、アンプ41とA/
Dコンバータ45とは、Timing pulse Generator43に
より制御される。即ち、Timing pulse Generator43に
制御されたアンプ41からの電流によって、発熱体11
はパルス状の加熱を行なう。
【0205】測温抵抗体12は、ダイヤモンド薄膜の温
度変化を計測する手段であり、発熱体11より加熱され
たダイヤモンド薄膜の温度変化を計測する機能を有す
る。ダイヤモンド薄膜の温度変化は、測温抵抗体12の
抵抗値の変化として出力され、I/Vアンプ44により
電圧変化として出力される。このダイヤモンド薄膜の温
度変化に対応したI/Vアンプ44からの出力は、A/
Dコンバータ45によって処理され、さらにメモリー4
6,47と演算器48とにおいて、所定の演算処理が行
なわれ、流量や流速に対応した信号として出力される。
【0206】この測温抵抗体12やI/Vアンプ44、
さらにはA/Dコンバータ45とメモリー46と47、
さらには演算器48で、ダイヤモンド薄膜のパルス状の
加熱に対する過渡応答特性を計測する手段を構成してい
る。
【0207】演算器48からの出力は、図6を用いて説
明する動作方法に従って処理されたものであり、その値
は、パルス状の加熱に従うダイヤモンド薄膜の過渡応答
特性を定量的に評価したものである。そして、この演算
器48の出力は、流体の流量や流速に対応したものであ
る。従って、この演算器48の出力から、流量や流速を
求めることができる。
【0208】以下に流量の計測方法を説明する。本実施
例は、発熱体11を1秒以下のパルスで駆動し、その際
瞬間的に加熱され、すぐに冷却されるダイヤモンド薄膜
13の温度変化を測温抵抗体12で計測するものであ
る。
【0209】以下計測原理について説明する。図6
(A)において、縦軸f(V) が流速Vをパラメーターと
する関数であり、横軸tが時間である。縦軸f(V) は、
白金薄膜で構成される測温抵抗体12からの出力に対応
するものであり、ここではI/Vアンプ44の出力であ
る。図6(A)には、ダイヤモンド薄膜13の温度が上
昇するとf(V) の値は小さくなり、ダイヤモンド薄膜の
温度が低下するとf(V) の値が大きくなる様子が示され
ている。
【0210】図6(A)に対応させて、同じ時間スケー
ルでもって、ダイヤモンド薄膜の温度変化Δθを示した
ものが図6(B)である。図6(B)には、図5(A)
に示すHeat pulseによって、ダイヤモンド薄膜が加熱さ
れていき、t1 +Δt1 以後、即ちHeat pulse終了後に
冷却されていく様子が示されている。
【0211】なお、出力f(V) が流速Vに対応する値に
なるまでに、時間が必要なので、f(V,t) と考えること
ができる。
【0212】本来であれば、f(V) は流速Vのみに依存
しなければならのであるが、ダイヤモンド薄膜を支える
基体や測温抵抗体や発熱体の配線(直径20μmの金ワ
イヤ)から流出してしまう熱量が存在するために、ダイ
ヤモンド薄膜の温度が流速Vのみには依存しないのが現
実である。
【0213】従って、流量が変化しなくてもダイヤモン
ド薄膜の温度は僅かではあるが徐々に変化していってし
まう。このダイヤモンド薄膜の僅かな温度変化がダイヤ
モンド薄膜の温度を検出する測温抵抗体(図1でいえば
12)からの出力変動、即ち直流ドリフトとして表れて
しまう。
【0214】しかしながら、1秒以下の極めて短時間の
間であれば、この直流ドリフトは実用上無視することが
できる。
【0215】そこで、本実施例においては、0.2秒程
度のHeat pulse(矩形状のパルス波形)によって瞬間的
に加熱を行い、上記直流ドリフト成分をキャンセルする
手法を用いることを特徴とする。
【0216】図6(A)の場合でいうと、Δt1 がHeat
pulseの時間になる。このHeat pulseの波形は、矩形上
に限定されるものではなく、Δt1 の時間内に所定の熱
量を供給することができるものであればよい。
【0217】この加熱によって、ダイヤモンド薄膜の温
度変化Δθは、図6(B)に示すような状態となる。ま
た、測温抵抗体12からの出力f(V) は図6(A)の6
1に示すように変化する。即ち、t1 おいて加熱が始ま
ると、発熱体11から熱量が供給されるに従ってダイヤ
モンド薄膜13の温度が上昇し、f(V) の値は減少して
いく。そしてΔt1 時間の加熱の後、ダイヤモンド薄膜
13は流体16によって冷却されていきその温度が低下
していく。この際、測温抵抗体12からの出力f(V) の
値は再び増加し元の値f0 に近づいていく。なお、ここ
では流量の変化は無いものとする。
【0218】しかしながらこの場合においても、出力f
(V) には、直流ドリフト成分が含まれているので、何回
にも渡ってf(V) を測定すると、その値は徐々に変化し
てしまう。このことは加熱を極短時間のパルスにしたと
ころで解決することはできない。そこで本実施例におい
ては、このf(V) の直流ドリフト分をキャンセルする計
測方法を以下の方法によって得るものである。
【0219】(第1の動作)f(V) を、f(V,t) とみな
し、t0からt0+Δt0までの時間内におけるf(V,t)の値
を下記数5(数式5)の計算を実行することにより行
う。この計算によって、加熱直前におけるダイヤモンド
薄膜の温度を基準として確定する。即ち、流量計測にお
けるベースラインを確定する。
【0220】
【数5】
【0221】上記演算において、所定の時間Δt0 の時
間間隔におけるf(V,t) の積算を行うことによって、f
(V,t) のゆらぎ成分をキャンセルすることができ、信頼
性の高い計測基準を確定することができる。例えば、t
0 +Δt0 内のある1点におけるf(V,t) の値を基準と
した場合には、得られる流量の公差は、上記数5に示す
演算を用いた場合に比較して数%以上悪化してしまう。
【0222】(第2の動作)t1からt1+Δt1の間で行わ
れるHeat pulseに従うf(V,t) の値を積算する。即ち、
下記数6(数式6)の計算を実行する。
【0223】
【数6】
【0224】上記数6に示す計算において、t1<t2とす
る。これは、加熱の瞬間、即ちt1においては、ショクノ
イズがf(V,t) に表れるからである。
【0225】(第3の動作)数5で求めた積算値から数
6で求めた積算値を時間幅を合わせて引き算する。この
時間幅を合わせるには、下記に示すようにいくつかの方
法がある。なお、説明を簡素にするために、数5の演算
結果をS0 、数6の演算結果をS2 と表記することとす
る。
【0226】「第1の方法」Δt0=Δt2として、S0
2 の演算を行う。当然、S2 −S0 を計算してもよ
い。この場合は、図6(A)に示す曲線61で形成され
る斜線部分の面積が求められることになる。
【0227】「第2の方法」(S0 /Δt0 )−(S2
/Δt2 )又は(S2 /Δt2 )−(S0 /Δt0)で
示される演算を行う。
【0228】「第3の方法」(Δt2 /Δt0 )S0
2 又はS2 −(Δt2 /Δt0 )S0 で示される演算
を行う。
【0229】「第4の方法」S0 −(Δt0 /Δt2
2 又は(Δt0 /Δt2 )S2 −S0 で示される演算
を行う。
【0230】上記4つの方法で示される演算は、f(V,t
0+ 1/2Δt0) における直流ドリフト成分とf(V,t2+ 1/2
Δt2) における直流ドリフト成分とをキャンセルするこ
とになるので、その演算結果に表れる直流ドリフト成分
は、t0+ 1/2 Δt0からt2+ 1/2 Δt2までの間に生じたも
のだけである。実際の動作においては、Δt1 の値が
0.2秒程度またはそれ以下であるので、(t2+ 1/2 Δ
t2)−(t0+ 1/2 Δt0)の値もそれと同程度とすること
ができる。即ち、0.2秒程度またはそれ以下の間にお
ける直流ドリフトが問題となるだけとなる。
【0231】上記第1の方法で演算を行った場合、得ら
れる演算結果は、図5の斜線部分の面積に対応するが、
この面積は、流量に従って変化する。即ち、流量が異な
れば、その面積Sも異なる。これは、流量によって、ダ
イヤモンド薄膜の加熱のされ方および冷却のされ方が異
なるからである。言い換えるならば、流量(流速での同
じこと)によって、ダイヤモンド薄膜からの熱の奪い方
が異なるからである。
【0232】従って、この面積と流量との関係を予め調
べておき、この情報と実際の流量計測における演算結果
とを比較することによって、流量を知ることができる。
【0233】以下に実際の実測データを示す。このデー
タは、以下の条件によって得たものである。即ち、図6
に示すパラメータを、 Δt0 =0.1秒 Δt1 =0.18秒 Δt2 =0.36秒 と設定したものである。なお、被計測物として、窒素ガ
スを用いた。
【0234】また本実施例においては、前記数5で計算
される積分値を3.6倍することによって、Δt0 とΔ
2 との時間幅を揃え、数7で示される演算を実行し
た。この演算は、前記第3の方法に従ったものである。
【0235】また、流量の計測は、8秒間に1回の割合
で行った。即ち、8秒に1回、流量のサンプリングが行
われることになる。
【0236】図7(A)に示す写真は、I/Vアンプ4
4からの出力f(V,t) をオシロスコープに接続し、その
変化を表示した際のものである。さらに、図7(B)に
示すのは、(A)の表示をさらに拡大した写真である。
図7(B)には、異なる2つの流量に対応する出力が示
されている。図7(B)において、下側の波形は、上側
の波形の場合に比較して、流量を減らした場合のもので
ある。この場合、流体によって奪われる熱量が減少する
ので、Δt1 の加熱によって、より高い温度にダイヤモ
ンド薄膜が加熱される。従って、図7(B)の下側の波
形のようにより大きく出力f(V,t) の値は変動すること
になる。
【0237】図7に示すオシロスコープの波形より、図
6に示すような動作原理に従って、流量の計測が行われ
ていることが確認される。
【0238】図8に示すのは、流量を50slm(リッ
トル/分)と1slmとに交互に変化させた場合におけ
る、出力(図4の演算器48からの出力)の変化を示し
たものである。
【0239】図8を見れば、所定の流量に従った一定の
出力が得られていることが見て取れる。即ち、図6に示
す測定方法を採用した場合の出力は、ドリフト成分が表
れない、またはそのほとんどが除去されたものであるこ
とが分かる。
【0240】図9は、50sccm〜50slm(50
000sccm)の流量範囲における流量計測値の長期
的安定度を示したものである。具体的には公差とガス流
量(リットル/分)との関係を示したものである。公差
は、出力の信頼性を示すパラメーターであり、計測のバ
ラツキや変動幅を示すパラメーターである。また、図9
に示す公差は、計測値の最大値と最小値との比をとった
ものである。例えば、図9における6%の公差は、図3
に示す±3%の公差に相当する。
【0241】図9に示すデータは、50slm〜5sl
m、1slm〜100sccmというように、流量を大
きく変化させた場合の出力変動をも含んでいる。このよ
うに流量を大きく変化させた場合、測温抵抗体からの出
力にショックノイズのような極短時間における出力変動
が表れる。この出力変動は、図9に示す公差をより大き
くする要因となる。従って、流量が段階的に変化する場
合や、上記ショックノイズのような極短時間における出
力変動を除去できる場合には、さらに公差を小さくする
ことができる。
【0242】図9に示すデータは、2slm〜50sl
mの間において、公差が約6%(±3%)以下であるこ
とを示している。この値は、試験用の窒素ガス流量の変
動を考慮すれば、図3で示される条件を十分満たすもの
であると考えられる。また最小感度として必要とされる
50sccm(0.05slm)もその出力に40%の
幅があるもの、検出できることが分かる。
【0243】図9からも分かるように、流量が減少する
と、出力の変動は大きくなり、200sccmで約30
%、100sccmで約35%の公差となる。これは、
流量が少ないと、その流量に対応した熱の移動よりも流
量に関係しない熱の移動(例えば配線やテフロンの基板
を伝わって移動する熱量)の影響が大きくなるためと考
えられる。また、測温抵抗体からの出力変化が小さくな
るので、計測システム全体におけるノイズの影響が表れ
るためであると考えられる。
【0244】図10に示すのは、図4に示すシステムの
出力(相対値AU)とガス流量(slm)(リットル/
分)との関係を示したものである。図10から明らかな
ように、2桁以上のダイナミックレンジが得られている
ことが分かる。また前述のように、最小流量として50
sccmの流量を検出できることが判明しており、この
ことから3桁以上に渡って流量計測ができることが理解
される。なお、本実施例においては、100slm以上
の流量の計測も可能なことが判明している。
【0245】以上の実測データは、Δt1 =0.18秒
とし、8秒毎に流量計測を行った例であるが、この8秒
という値は以下の利用によって決定されたものである。
実験によれば、Δt1 =0.18秒とした場合には、図
6に示すような計測動作の1サイクルは、2秒弱程度か
かることが判明している。従って、計測間隔を2秒より
短くすると、前回の計測動作の影響が次の計測動作に影
響を与えてしまい、有効な動作ができなくなってしま
う。よって、流量計測の間隔を2秒以上、ここでは大き
く余裕をみて8秒としたのである。
【0246】Δt1 の時間を可変した数々の実験によれ
ば、1動作サイクルの時間間隔Tと、加熱時間Δt1
の比は、T/Δt1 ≧10とすることが必要である。こ
れは、次の動作サイクルに影響を与えないために必要な
条件である。この条件からいえば、本実施例の場合は、
動作サイクルの時間を1.8秒以上とすることが必要で
ある。しかし、大きな流量を狭い範囲で測定するのであ
れば、上記条件にこだわることはない。これは、大流量
によって、ダイヤモンド薄膜がすぐに冷却されるからで
ある。
【0247】LPGガスの流量計測の場合は、8秒間に
1回の計測で実用上十分であるが、さらに計測間隔を短
くする必要も考えられる。この場合の手段としては、Δ
1の時間を短くし、1回の計測サイクルを短くするこ
とが有効である。
【0248】1回の計測サイクルは、ダイヤモンド薄膜
がΔt1 のHeat pulseによって加熱され、また冷却され
て元の状態に戻るまでの時間で決定される。
【0249】Δt1 は、流量計測装置の応答速度によっ
てその下限が決まる。図1に示すような構成を採った場
合、計算によれば、その応答時間して、数ms秒程度が
概算されるが、実験によれば図1に示すような構成にお
いて、実用上有用な応答が得られるのは、50ms程度
までである。従って、Δt1 =0.05秒までは可能で
ある。この場合は、T/Δt1 ≧10の条件より、1動
作サイクルの時間Tを0.5秒程度まで短縮できること
になる。即ち、0.5秒に1回の流量計測ができること
になる。
【0250】この最小の応答時間は、基体や配線から逃
げていく熱量によって制限されるものと考えられる。従
って、さらに短い応答時間を得るためには、基体や配線
から逃げていく熱量を少なくする必要がある。具体的に
は、 (1) ダイヤモンド薄膜を熱的に浮かす構造とする。 (2) リードを熱伝導率の小さい材料とする。 (3) リードを細くし、熱抵抗を高くする。 (4) リードをコイル状にし、熱抵抗を高くする。 といったことを工夫する必要がある。これらの構成は、
ダイヤモンド薄膜から流体以外に逃げていく熱量を少な
くし、微小流量の流体に奪われていく熱量を検出するた
めのものである。
【0251】またΔt1 において発熱体より供給される
熱量は、流体の種類(流体の種類によって、奪っていく
熱量は異なる)や流量によって、それぞれ適正なものが
ある。この発熱量の選定は、発熱体(図1でいうと1
1)に印加する電圧や発熱時間を選択することによっ
て、決めることができる。
【0252】また、測温抵抗体(図1でいうと12)の
感度はなるべく高い方が良い。即ち、温度変化に対して
大きな抵抗の変化が生じる構成とした方がより好まし
い。本実施例は、測温抵抗体として白金の薄膜を用いた
ものであるが、感度の点では、Bをイオン注入法でドー
プし、P型ダイヤモンド半導体層とした構成の方が高い
優れている。
【0253】一方、Δt1 の時間を長くすることは有用
ではない。なぜならば、Δt1 を長くすることは、それ
だけ1回の計測サイクルを長くすることであり、ドリフ
ト成分が出力に表れやすくなるからである。従って、Δ
1 の時間は、1秒以下、好ましくは本実施例にように
0.2秒以下とすることが好ましい。またΔt1 の下限
は、前述のように0.05秒以上とすることが実用的で
ある。
【0254】以上、本実施例の説明においては、図1に
示す流量計測装置の構造を基本として説明を行ったが、
図1の構成において、ダイヤモンド薄膜の膜厚を変化さ
せたり、その寸法を変化させたり、またその作製方法を
変えたり、さらには発熱体11と測温抵抗体12を他の
材料で構成したり、発熱体11と測温抵抗体12の配置
方法や配置数を変えたりしても、本実施例で説明した流
量計測方法は極めて有効である。
【0255】ダイヤモンド薄膜の厚さは、5μm程度ま
で薄くしても利用可能である。また逆に、ダイヤモンド
薄膜により強度を持たせたい場合には、15μm以上の
膜厚のものを利用してもよい。特にダイヤモンド薄膜の
熱伝導率は高いので、膜厚の厚いものを用いても問題は
ない。
【0256】また、本実施例で説明した動作方法(流量
計測方法)は、環境の温度の影響もキャンセルすること
ができるので、環境温度が変化するような場所におい
て、流量計測を行う場合にも極めて有効である。ただし
この場合、環境の温度変化が、Δt1 に比較して十分遅
いことが必要である。なぜならば、Δt1 内における出
力の変動はキャンセルすることができないからである。
【0257】また、本実施例で示した動作方法を実際に
用いる場合には、流量0のレベルを予め定めておく必要
がある。なぜならば、流量0であっても、ダイヤモンド
薄膜は流体から熱を奪われるので、その出力が0にはな
らないからである。この流量0のレベル合わせは以下の
ようにすればよい。
【0258】まず、流量計測装置は、パイプに配置され
ているものとする。そして、この流量検出装置を挟む形
でパイプの2ヵ所にバルブが設けられているものとす
る。まずパイプの一方から他方に向かって流体を流す。
そして、最初流体が流れて来る方に配置されたバルブを
閉じる。次に流体が流れていく方に配置されたバルブを
閉じる。これは、流量計測装置に接する流体の圧力をこ
のレベル合わせの作業において一定にするためである。
【0259】そしてその時における前記所定の演算の結
果を流量0の時の出力としてメモリーする。こうして設
定された流量0の場合の出力を基準として、以後の流量
計測を行えばよい。
【0260】この流量0のレベル合わせは、流量計測装
置の使用毎に行うと、流体の温度や流体中の不純物の影
響(不純物濃度で流体の熱伝導率や比熱は変化する)等
を受けることが少なくなるので、より高い計測精度を得
ることができる。また、実際の使用においても、この流
量0のレベル合わせは、時々行うことが有用である。
【0261】本実施例に示す流量計測方法において、Δ
0 やΔt1 のパラメータを固定するのではなく、可変
して設定するのでもよい。例えば、複数のパラメータの
組み合わせを設定し、測定環境や測定時間、さらには被
測定流体の種類によって、その組み合わせを選んで計測
を行うこともできる。
【0262】〔実施例3〕本実施例は、実施例2に示す
流量計測方法を用いた応用例に関する。図5に示すの
は、パイプ51内を通過する流体50の流量を1ヶ所に
おいて計測する例である。この場合、実施例2に示すよ
うに8秒間の一回の計測だと、流量の頻繁な変化は捉え
ることができない。この問題を解決するには、前述のよ
うに加熱時間Δt1 を短くする方法が考えられる。
【0263】また他の方法としては、複数の流量計測装
置を用意し、計測タイミングをずらす方法が考えられ
る。例えば、図5に示す構成において、流体の流れる方
向に沿って8個の流量計測装置(テフロン基板59に組
み込まれている、ダイヤモンド薄膜52と58とからな
る)を設け、それぞれの流量計測装置において、実施例
2で示したように8秒間隔のサイクルで流量計測を行う
とする。この場合、各流量計測装置の動作を1秒づつず
らすことによって、毎秒毎の流量計測を行うことができ
る。このような構成を採ることによって、流量の変化を
1秒の精度で計測することができる。もちろん、流量計
測装置の数を増やすことによって、さらに計測間隔を短
くすることができる。
【0264】〔実施例4〕本実施例は、実施例3をさら
に変形した例である。実施例3では、複数の流量計測装
置を用いることにより、見かけ上の計測間隔を短くする
ことを特徴とするものであった。それに対して、本実施
例は、計測間隔を短くするのではなく、計測精度を高め
る計測方法に関する。例えば、実施例3に示した構成で
は、毎秒1回の流量計測が行われるが、実際に一つの流
量計測装置が動作するのは、8秒間に1回である。そこ
で、8個の流量計測装置を同時に動作させ、8秒毎に各
流量計測装置からの出力を平均することで、計測精度を
高めることができる。
【0265】また、各検出装置の動作を1秒毎にさせ、
8秒毎にその出力の平均値を算出することで、8秒毎に
精度の高い平均流量を算出することができる。
【0266】上記のような構成を採用すると、図9に示
すような測定誤差(公差)をさらに小さくすることがで
きる。ここでは、流量計測装置を8個用いる例を示した
が、さらに流量計測装置の数を増やすことによって、計
測精度を高めることができる。また計測間隔も、実施態
様に合わせて必要とする時間間隔に定めればよい。
【0267】〔実施例5〕本実施例は、実施例2に示す
流量計測方法を変形したものである。以下に示す本実施
例の説明においては、図1に示す流量計測装置を利用す
るものとする。実施例2においては、ダイヤモンド薄膜
の加熱のされ方と冷却のされ方とを評価することによっ
て、流量の計測を行った。しかし、ダイヤモンド薄膜の
加熱のされ方、あるいはダイヤモンド薄膜の冷却のされ
方、のいずれか一方のみであっても、実施例2に示すよ
うな流量計測を行うことは原理的に可能である。
【0268】そこで本実施例は、 (1) 図6に示すような計測方法において、t2+Δt2<t1
+Δt1とすることによって、ダイヤモンド薄膜の加熱の
され方を計測する方法を採用する。即ち、加熱がされて
いる時のダイヤモンド薄膜の過渡応答を評価する。 (2) 図6に示すような計測において、t1+Δt1<t2とす
ることによって、ダイヤモンド薄膜の冷却のされ方を計
測する方法を採用する。即ち、加熱終了後の冷却されて
いる時のダイヤモンド薄膜の過渡応答特性を評価する。
の2種類の方法を採用することを要旨とする。
【0269】上記動作方法において、t2+Δt2≦t1+Δ
t1、あるいはt1+Δt1≦t2とすることもできるが、境界
値では出力にショックノイズがでるので好ましくない。
上記動作方法における計測の方法は、実施例2に示した
のと基本的に同様であり、異なるのは、各パラメータの
関係が上記(1) または(2) で規定される関係にあるとい
うことである。
【0270】上記(1),(2) に示す計測方法において、
(1) の方法は、(t2 +Δt2/2)−(t0+Δt0/2)の値
が、(2) の方法の場合よりも小さくなるから、それだけ
直流ドリフトの影響を排除することができる。
【0271】〔実施例6〕本実施例は、前述の実施例5
の(2) の方法を採用することを前提としたものである。
図1に示す流量計測装置においては、測温抵抗体部分と
熱を供給する発熱体とを別々に構成することを基本とし
ていた。しかし図1の構成においては、測温抵抗体12
と発熱体11とはともに白金の薄膜であり、その抵抗が
異なっているだけである。また白金以外の材料を用いる
場合も同様であり、例えばBのドーピングによるP型ダ
イヤモンド半導体層で測温抵抗体(ダイヤモンドサーミ
スタ)と発熱体層とを別個に形成する場合でも、エッチ
ングによりその抵抗を制御することで、作り分けること
ができる。
【0272】そこで、本実施例は、発熱体に加える電圧
を制御することにより、測温抵抗体と発熱体とを兼用さ
せることを要旨とする。例えば、実施例1においては、
測温抵抗体の抵抗を1KΩ、発熱体の抵抗を100Ω程
度としたが、この場合に発熱体が発する熱量と同じ熱量
を測温抵抗体から発生させるには、発熱体に加える電圧
に比較して、測温抵抗体に3倍強の電圧を印加すれば良
い。
【0273】勿論、この構成を採用した場合には、加熱
中に流量の計測を行うことはできない。しかし、前述の
実施例5の(2) で示すように、加熱はt1+Δt1以前にお
いて行い、流量計測は、t1+Δt1より後、即ちダイヤモ
ンド薄膜が冷却されている状態において行う方法は利用
することができる。この場合も数5〜数7に示す演算を
実施例2で説明したように行えば良いのであるが、t2
>t1+Δt1の条件を満たしていることが必要である。
【0274】本実施例の有意な点は、ダイヤモンド薄膜
上に発熱体とサーミスア機能を有す層とを兼用した層を
形成するだけで、流量計測装置を構成できる点である。
【0275】〔実施例7〕本実施例は、ダイヤモンド薄
膜表面に測温抵抗体を設け、該抵抗測温体を発熱体とし
ても利用した構成に関する。
【0276】図6に示す計測方法は、発熱体からのパル
ス加熱に従うダイヤモンド薄膜の熱応答特性をダイヤモ
ンド薄膜に密着した抵抗測温体によって電気信号として
検出することを基本とする。
【0277】図6に示す計測方法を実施するための流量
計測装置としては、図1に示す構成が最も基本的なもの
である。図1に示す構成においては、抵抗測温体12と
発熱体11とが同一材料(例えば白金)で構成されてお
り、抵抗値が異なるだけである。抵抗値を異ならせたの
は、必要とする発熱量と必要とする温度によって変化す
る抵抗の割合(サーミスタ特性)を得るためである。
【0278】しかし、発熱体11も測温抵抗体として機
能するものであり、発熱体の抵抗もそれ自身の加熱によ
って変化する。そしてその変化の仕方は、ダイヤモンド
薄膜の熱応答特性を反映したものとなる。従って、パル
ス加熱に従う発熱体を流れる電流変化を計測することに
よっても、ダイヤモンド薄膜に接して流れる流体の流量
を算出できる。言い換えるならば、パルス加熱に従う発
熱体を流れる電流変化を計測することによって、流体に
よるダイヤモンド薄膜からの熱量の奪われ方を評価する
ことができる。
【0279】例えば、図6におけるf(V) を発熱体に流
れる電流値を示すパラメータとした場合、Δt1 の時間
において発熱体に流れる電流の変化の仕方は、流量によ
って異なるので、図6の曲線61に示すように流量に対
応したf(V) の変化を得ることができる。
【0280】また直流ドリフト成分を除去するために
は、Δt1 内における発熱体を流れる電流変化の変化分
のみを計測する必要がある。即ち、パルス加熱に従う発
熱体を流れる電流の変化分(∫f(V) t )のみを評価す
ることが重要である。
【0281】本実施例の計測方法は、基本的には実施例
2で説明した場合と同様である。異なるのは、発熱体を
流れる電流変化を計測する点である。以下に具体的な計
測方法を示す。また、以下の動作は図6に示す方法を基
本とするものである。またこの場合、図6における出力
f(V) は、発熱体に流れる電流をI/V変換したものに
相当する。
【0282】まず、発熱体にバイアス電圧を加えてお
き、前記[数5]で示される演算を行う。
【0283】次に発熱体にパルス電流を流すことによっ
てHeat pulseを行なう。そして、その際の電流変化を前
記[数6]に示す演算によって処理する。
【0284】上記数5の演算結果と数6の演算結果との
差を時間幅を揃えて演算することで、Heat pulseに従う
ダイヤモンド薄膜の温度変化のみを評価する。この演算
の仕方は、実施例2で示した方法と同様である。
【0285】本実施例の構成を採用することによって、
発熱体を設けるだけで良い、簡単な構成を実現すること
ができる。
【0286】〔実施例8〕本実施例は、流量計測装置の
保持方法に関するものである。実施例2に示す流量計測
方法を採用した場合には、図9に示すように、流量が1
slm以下になると、その計測誤差が大きくなる。これ
は、微小流量によってダイヤモンド薄膜から奪われる熱
量を正確に評価できないためであると考えられる。
【0287】これは、流体以外に逃げていってしまう熱
量が、流体によって奪われていく熱量に比較して無視で
きなくなると、流量に対応したダイヤモンド薄膜の加熱
に対する過渡応答特性を正確に評価することができない
ためである。
【0288】例えば、図6のf(V) の変化で示すような
ダイヤモンド薄膜への加熱に対する過渡応答特性には、
流体以外に逃げていく熱量に対応するものも含まれてい
る。この流体以外に逃げていく熱量は、流量を直接反映
したものではないので、一種のノイズとなる。従って、
この流体以外に逃げていく熱量に対応する成分が多くな
ると、それだけノイズレベルが高くなることになり、計
測感度及び計測値の信頼性は低くなることになる。
【0289】上記の問題を解決するには、 (1) 流体以外に逃げていく熱量を極力少なくする。 (2) 測温抵抗体の感度を高め、微小な過渡応答特性の変
化を大きな出力で検出する。 といった方法が考えられる。本実施例は、上記(1) の方
法を採用し、流量計測精度を高めんとするものである。
特に、ダイヤモンド薄膜を保持する基体に逃げていく熱
量を極力少なくする構成に関する。
【0290】ダイヤモンド薄膜から流体以外に逃げてい
く熱量としては、測温抵抗体や発熱体の表面から空気中
に逃げていくもの、測温抵抗体や発熱体にコンタクトし
ている配線からのもの、ダイヤモンド薄膜とダイヤモン
ド薄膜を保持する基体との接触部分からのもの等が主に
考えられる。
【0291】そこで、本実施例においては、図11に示
すよう構造を採用することによって、ダイヤモンド薄膜
からダイヤモンド薄膜を保持する基体に逃げていく熱量
を極力少なくし、微小流量に対する感度を高め、その計
測精度を高めんとするものである。図11において、1
11が測温抵抗体(図示せず)と、発熱体(図示せず)
とが設けられたダイヤモンド薄膜である。測温抵抗体や
発熱体の配置方法は、特に限定されるものではないが、
測温抵抗体がダイヤモンド薄膜111のみと熱結合して
いることが重要である。
【0292】ダイヤモンド薄膜111は、保持部材であ
る112に示すような形状に加工された石英ガラス材料
によって石英ガラス基板113に保持されている。測温
抵抗体や発熱体は、紙面手前側に設けられており、配線
は保持部分112に沿って設けられている。
【0293】保持部材112が方形状のダイヤモンド薄
膜111の角の部分に接していることは重要である。こ
の角の部分は、熱が移動する際に、最も長い距離を経て
移動する部分である。従って、ダイヤモンド薄膜111
から熱が基体113に移動する際に、その熱抵抗を最大
にすることができる。こうすることによって、ダイヤモ
ンド薄膜111から基体113に流出する熱量を最小限
度に抑えることができる。また保持部分112がカギ形
になっているのは、やはりこの部分を伝導して基体11
3に流出する熱量に対する熱抵抗を高くし、基体113
に逃げていく熱量を極力抑えるためである。ダイヤモン
ド薄膜の寸法が例えばmmオーダの寸法であれば、保持
部分192の幅は100μm程度またはそれ以下とすれ
ばよい。
【0294】また、基体113と保持部材112とを石
英ガラスで構成するのは、石英ガラスの熱伝導率が、
1.38Wm-1-1(不純物の影響等で、実際にはそれ
よりかなり低いと考えられる)とダイヤモンド薄膜(膜
厚方向は、1000Wm-1-1以上と考えられる)に対
してほぼ1/1000あるいはそれ以下であるからであ
る。また、石英ガラスではなく、材料として珪素を用
い、ダイヤモンド薄膜111と接する部分のみを酸化ま
たは窒化した構成とするものでもよい。また、気体11
3としては、熱伝導率の低い樹脂材料やプラスチック材
料を用いることも有用である。
【0295】以上のような構造を採用した場合、ダイヤ
モンド薄膜111から流出する熱量は、保持部材112
を経て、さらに基体113に到ることになる。この際、
極めて高い熱抵抗を受けることになるので、その流失量
を抑えることができる。そして、このことによって、微
小流量に対する計測精度を高めることができる。
【0296】また、ダイヤモンド薄膜111の両面が流
体に接触する構成となるので、測温抵抗体や発熱体が流
体に曝されてしまうという問題がある。しかし、大きな
流量を計測する際に、ダイヤモンド薄膜が一方の面のみ
から高い圧力を受けることがないので、ダイヤモンド薄
膜を保持する際に、大きな機械的強度が要求されず、信
頼性を高めることができる。
【0297】図12は、図11に示す流量計測装置の作
製工程図である。まず、図12に示すように、石英ガラ
ス基板113上に公知のプラズマCVD法や有磁場マイ
クロ波プラズマCVD法、さらに燃焼法等によりダイヤ
モンド薄膜111を選択的に形成する。この際、基体1
13として珪素基板を用いるのであれば、その表面に酸
化珪素膜や窒化珪素膜が形成されていることが望まし
い。これは、ダイヤモンド薄膜111との間に熱的な絶
縁をとるためである。
【0298】そして、公知の加工技術により、裏面側か
ら選択的にエッチングを行い、図12(B)に示すよう
に、ダイヤモンド薄膜裏面側116を露呈させる。さら
に図11に示す、カギ形形状の保持部材112を形成す
る。つぎにダイヤモンド薄膜111の裏面側116に、
測温抵抗体や発熱体を形成する。測温抵抗体としては、
白金の薄膜をダイヤモンド薄膜111表面にスパッタ法
や蒸着法により形成し、この白金の薄膜を用いる方法
や、ダイヤモンド薄膜111の表面にB(ボロン)のイ
オン注入を行い、P型ダイヤモンド薄膜層を形成するこ
とによって、このP型ダイヤモンド薄膜層をサーミスタ
として用いる方法がある。また発熱体は、前述のように
測温抵抗体の形成と同時に形成するのが簡単である。も
ちろん、測温抵抗体とは異なる材料でもって、発熱体を
形成するのでもよい。さらにリード配線を図11の11
2で示されるカギ型の保持部分にそって形成する。
【0299】さらに、必要に応じて測温抵抗体や発熱
体、さらには配線等を保護するための保護膜を形成す
る。この保護膜としては、酸化珪素膜、窒化珪素膜、炭
化珪素膜、炭素膜、DLC膜、有機樹脂膜を利用するこ
とができる。この保護膜は、流体によって、測温抵抗体
や発熱体、さらには配線等が腐食されることを防ぐため
である。ただし、この保護膜は、熱伝導率の低い材料
(ダイヤモンド薄膜に比較してその熱伝導率がおよそ1
/1000以下であることが望ましい)で形成するか、
その熱容量を小さくする必要がある。
【0300】こうして、流体114にダイヤモンド薄膜
111の表面115が接する構造の流量計測装置を完成
する。
【0301】〔実施例9〕本実施例は、図1に示す流体
計測装置において、測温抵抗体12と発熱体11とをB
(ボロン)注入によるP型半導体によるダイヤモンドサ
ーミスタで構成した例である。
【0302】以下に作製方法を記載する。まず実施例1
で示すように、有磁場マイクロ波CVD法によって、1
5μm厚の多結晶ダイヤモンド薄膜を形成する。そし
て、このダイヤモンド薄膜を4mm角に裁断し、イオン
注入装置内に配置し、Bイオンの注入を行う。
【0303】このイオン注入装置は、B2 6 を原料ガ
スとして、Bイオンを100KeV程度に加速してダイ
ヤモンド薄膜表面に注入するものである。Bイオンのド
ーズ量としては、1016〜1017cm-2程度とする。ま
たこのイオン注入の際には、ダイヤモンド薄膜を100
度〜500度程度に加熱することが必要である。また、
イオン注入後は、赤外光によるランプ加熱によってアニ
ールを行う。このアニールは加熱によるもの、レーザ光
の照射によるものであってもよい。
【0304】このように、Bイオンが注入されたダイヤ
モンド薄膜においては、表面より1μm以下、特に0.
1μm程度以内の領域にBが存在することがSIMSに
よって確かめられている。即ち、Bイオンの注入によっ
て形成されるP型半導体層は、0.1μm程度の厚さを
有していることになる。このP型ダイヤモンド半導体層
は、その最表面において、10-4〜10-5Ωcmの抵抗
を有する。
【0305】つぎに、P型半導体層をパターニングし
て、図1に示すように発熱体11の領域と測温抵抗体
(ここではP型ダイヤモンドサーミスタであるので、以
下においてはサーミスタ層という)12の部分とを形成
する。この最、発熱体11の抵抗が100Ω程度、サー
ミスタ層12の抵抗が1KΩ程度となるようにする。こ
のように抵抗値を制御するには、図1(C)に示すよう
に、サーミスタ層12の表面を少しエッチングして、最
表面の低抵抗層を取り除けばよい。さらに電極10、1
5を形成して、流体計測装置を完成する。
【0306】以上のような工程によって、ダイヤモンド
薄膜13表面に、P型ダイヤモンド半導体層よりなる発
熱体11、P型ダイヤモンド半導体層よりなるサーミス
タ層12が形成された流量計測装置を得ることができ
る。上記工程によって形成されるP型半導体層よりなる
サーミスタ層12のサーミスタパラメータの値は133
0ppmであった。これは、実施例1の白金を用いた場
合よりも6倍以上の感度を持つことを意味する。
【0307】前述の実施例8で説明したように、微小流
量に対する計測精度を高めるには、サーミスタの感度を
高めることが有用である。従って、本実施例のP型ダイ
ヤモンド半導体層を用いたサーミスタを実施例2または
その他の実施例に利用することは非常に有用である。
【0308】また、ダイヤモンド薄膜の表面にP型ダイ
ヤモンド半導体層よりなる発熱体を形成した場合には、
発熱体による加熱の際に、ダイヤモンド薄膜が並み打つ
ように動くことがないという特徴を有する。これは、ダ
イヤモンド薄膜とP型ダイヤモンド半導体層との熱膨張
係数がほとんど同じ、あるいは極めて近いためであると
考えられる。
【0309】特にパルス加熱を採用した場合には、加熱
の毎にダイヤモンド薄膜に不要な応力が働くことは好ま
しくないので、発熱体をP型ダイヤモンド半導体で構成
することは有用である。
【0310】また、現在N型ダイヤモンド半導体層を形
成する技術が確立されていないが、上記P型ダイヤモン
ド半導体層に代えて、N型ダイヤモンド半導体層を利用
することも原理的には可能である。
【0311】〔実施例10〕本実施例は、ダイヤモンド
薄膜表面に4個の測温抵抗体を配置した実用的な流量計
測装置の例である。この装置は流体の流れの方向と流量
についての情報を同時に得ることのできるベクトル流量
計として機能する。
【0312】図13に装置の概要を示す。図13に示す
流量計測装置は、全体の大きさが4mm角であり、その中
に測温抵抗体75よりなるセンサー部分が4ヶ所設けら
れている。図13において、77が流量計測装置の基体
となる約15μm厚のダイヤモンド薄膜である。また7
5が白金薄膜により構成される測温抵抗体であり、74
が測温抵抗体75に流れる電流を検出するための一対の
金属電極であり、測温抵抗体75を2等辺三角形の底辺
で挟むようして配置されている。また76は測温抵抗体
75と同時に形成される白金薄膜からなる発熱体であ
る。これらは、ダイヤモンド薄膜77の一方の表面に密
着して形成されている。4つの測温抵抗体75と発熱体
76とは、ダイヤモンド薄膜77のみを介して熱的に結
合している。4つの測温抵抗体は、発熱体76によって
加熱されるダイヤモンド薄膜の温度を自身の抵抗値の変
化して出力する。
【0313】また、78が信号を処理するための処理部
であり、図4に示すような信号処理機能を有している。
また、701が入力する信号の差を増幅する差動アンプ
であり、各測温抵抗体からの出力の違いを検出する。7
9が発熱体76を加熱するための電流を流す電源であ
り、700が測温抵抗体75に電極74を介して電流を
流すためのバイアス電源である。
【0314】図13において、発熱体76となる部分は
シート抵抗として10〜100 Ω/□の値をもっている。即
ちこの発熱体76は電流を流すことによってジュール熱
を発生するものである。作製方法や作製条件は、実施例
1に記載したのと基本的に同じである。
【0315】実際の使用においては、実施例2に示した
ように、発熱体76にパルス状の加熱を行い、このパル
ス状の加熱に従う4つの測温抵抗体75の出力変化を所
定の演算によって信号処理部78で処理し、その出力を
差動アンプによって処理する。また、流体は流量計測装
置の裏面側(紙面向う側)のダイヤモンド薄膜77の面
を流れるようにする。
【0316】ダイヤモンド薄膜77は発熱体76によっ
て図6にその動作原理を示すように、Δt1 の時間内に
おいて加熱される。この加熱に従うダイヤモンド薄膜7
7の応答特性が、温度変化として4ヶ所の測温抵抗体7
5によって計測される。そして、各測温抵抗体からの出
力は、信号処理部78において、それぞれ実施例2に示
した方法で処理される。
【0317】ここで、流体が図13に示す流量計測装置
に対して、紙面右側から左側に向かって流れている場合
を考える。この場合、ダイヤモンド薄膜の右側の方が左
側に比較して流体より奪われていく熱量が多くなる。従
って、図6に示すΔt1 内におけるHeat puls に従う出
力は、右側の2つの測温抵抗体からのものと左側2つの
測温抵抗体からのものとでは異なることになる。この違
いは、図13において上下に配置されている作動アンプ
701によって出力される。この出力は、ダイヤモンド
薄膜の右側部分と左側部分とにおける流体による熱量の
奪われ方の違いを示すものであり、流量を反映したもの
である。即ち、この出力より流量(流速)を知ることが
できる。以上のように、図13の上下方向に配置されて
いる作動アンプ701の出力から、紙面左右方向に流れ
る流量成分を知ることができる。また、この上下の作動
アンプからの出力の符号を調べることで、左右方向にお
ける流量成分の向きを知ることができる。
【0318】同様に、図の左右に配置されている作動ア
ンプの出力から、紙面上下方向に流れる流量成分及びそ
の流れの方向を知ることができる。
【0319】このようにして、ダイヤモンド薄膜77に
対して平行に流れる流体の各流量成分を得ることがで
き、このことより流体の流量と流れる方向とを同時にベ
クトルとして検出することができる。
【0320】以上のようにダイヤモンド薄膜上に複数の
測温抵抗体を形成し、複数の領域でダイヤモンド薄膜の
パルス加熱に対する応答特性を計測することにより、流
量と同時に流体の流れる方向をも同時に検出することが
できる。
【0321】また図13に示す装置においては、流体
が、測温抵抗体75や金属電極74、さらには金属配線
(図示せず)が設けられている面側(即ち紙面手前側の
面)を流れるのでなく、その裏面側であるダイヤモンド
薄膜77の表面を流れるので、最も安定な材料であるダ
イヤモンド薄膜を保護層として作用させることができ、
腐食性ガスの流量計測をする場合も測温抵抗体や金属電
極、さらには金属配線の腐食を心配することなく装置を
使用できる。
【0322】また図13に示すような構造を有する流量
計測装置を作製する際に、ダイヤモンオ薄膜の荒れた面
(結晶成長終期面)側を流体と接する面とし、平滑な面
(結晶成長初期面)に測温抵抗体や電極、さらには発熱
体部分を形成することで、装置の作製のし易さと、感度
の向上を同時に得ることができる。
【0323】基板上に気相法で成膜されたダイヤモンド
薄膜は、基板との界面において平滑な面(結晶成長初期
面)を有し、またその反対側である露出した表面(結晶
成長終期面)は荒い面を有している。このことを用い、
基板から剥離したダイヤモンド薄膜の平滑な面に測温抵
抗体や電極さらには発熱体等を形成し、その裏の荒い面
を流量と接する面とすることにより、熱交換部分の表面
積を大きくすることができ、流体との間における熱交換
効率を高めた構成とできる。
【0324】本実施例は実用的な流量計測装置の例であ
るが、実際の測定環境や測定条件に適応させて、センサ
ー部分である測温抵抗体の配置やその数、さらには電極
の配置や形状、発熱体の配置や形状を適時選択すること
ができる。
【0325】また、発熱体76を単に直流バイアスで加
熱し、この加熱に従うダイヤモンド薄膜各部の温度を各
測温抵抗体によって計測し、各測温抵抗体の出力の違い
から当該ダイヤモンド薄膜に形成される熱勾配を算出す
る構成を採用してもよい。この場合、各測温抵抗体から
の出力の違いは、各作動アンプ701から出力され、こ
の出力から、ダイヤモンド薄膜77に形成される熱勾配
を算出することができる。この熱勾配の形は、流量と流
体の流れる向きに依存するものであり、この熱勾配から
流量と流体の流れる向きを同時にベクトルとして知るこ
とができる。
【0326】〔実施例11〕本実施例は、実施例2に示
す構成において、流体として気体を用い、この気体中の
水分含有量を計測せんとする構成に関する。前述のよう
に、ダイヤモンド薄膜から流体によって奪われていく熱
量に対応して、ダイヤモンド薄膜のパルス状の加熱に対
する応答特性は変化する。従って、同じ流量であっても
流体(この場合は気体)中の水分含有量が異なれば、こ
の流体の熱伝導率や比熱が異なることになるので、この
場合ダイヤモンド薄膜からの熱の奪い方は異なることに
なる。
【0327】例えば、水分含有量の異なる気体(例えば
窒素)があるとする。ここで、同じ流速の条件で実施例
2に示すような計測を行なった場合、演算器48からの
出力は異なるものとなる。
【0328】従って、予め演算処理された出力と水分含
有量との関係を調べてメモリーしておき、実際の計測に
おいて、このメモリー情報と出力とを比較することで、
流体中の水分含有量を知ることができる。ただしこの
際、流体の流れを一定(流量0も含む)とする必要があ
る。これは、流量の違いによってもダイヤモンド薄膜か
らの熱の奪われ方は異なるからである。このような計測
は、空気中の湿度を計測する場合に利用することができ
る。
【0329】また、本実施例と同様の原理により、流体
の違いを判別することもできる。この場合、流体の種類
と、所定の流量(流量0も含む)における演算処理され
た出力との関係を予め調べておけば、ガスセンサーとし
て機能させることができる。
【0330】〔実施例12〕本実施例の概略の構成を図
14に示す。図14には、流量計測装置142が設けら
れたパイプ140が示されている。本実施例は、図14
(A)に示すように流体144が流れるパイプ140の
内部を仕切り板141で分割し、流体の流れを2つに分
けたことを特徴とする。
【0331】本発明者らの実験によれば、特定の流量範
囲において計測誤差が増大する現象が観察された。具体
的には、パイプの内径が1cmのものを用いた場合に、
10〜25slmの範囲において、計測精度が1〜3%
程度悪くなる現象が観察された。この計測精度の悪化
は、図9にも表れている。図9を見ると、10〜30s
lmの流量における公差が10slm以下あるいは40
slm以上の公差に比較して1〜3%程度高いことが分
かる。
【0332】本発明者らは、上記現象について考察を行
い以下の知見を得た。レイノルズ数が概略2000〜4
000の間では、層流と乱流の中間状態が表れ、極めて
不安定な流れになる。これは、レイノルズ数が2000
より小さい領域では流れが層流であるが、2000〜4
000の間では局所的に乱流が発生したりする不安定な
状態が実現されるからである。またレイノルズ数が40
00より大きい領域では、全体が一様な乱流状態となる
ので、全体としてみれば安定した状態となり、流量計測
精度を乱すことは少なくなる。
【0333】概算によれば、上記実験条件において、レ
イノルズ数が2000〜4000になるのは、14〜2
8slmである。これは上記実験結果と概略一致する。
【0334】以上のことから、レイノルズ数が2000
〜4000となる条件が実現される範囲内においては、
流量の計測誤差が増大することが結論される。
【0335】また、上記知見によれば、計測流量範囲内
においてレイノルズ数が2000〜4000とならない
ようにすれば、流量計測精度の向上が計れることが結論
される。
【0336】レイノルズ数Re は、Re =dV/νで示
される。ここで、dは円形パイプの内径(m)であり、
Vは流速(m/s)、νは動粘性率であり単位は(m2
/s)である。νは、流体の種類、さらには流体の温度
や圧力によって異なる。しかし、1atm の空気において
は、4.4度で1.36×10-5(m2 /s)、26.
7度で1.57×10-5(m2 /s)、49度で1.7
6×10-5(m2 /s)、であるので、通常は定数とみ
なしてよい。
【0337】流量一定と見なした場合、流速Vは、パイ
プの内径の2乗に反比例するので、この場合レイノルズ
数は、パイプの内径に反比例することになる。従って、
流量一定の条件においては、パイプの内径を大きくすれ
ば、レイノルズ数を小さくでき、パイプの内径を小さく
すれば、レイノルズ数を大きくすることができる。なお
流量は、(流速×流体の断面積)で定義されるものとす
る。
【0338】まず、パイプの内径を大きくする方法につ
いて考察する。パイプの内径を大きくすると、流速が小
さくなるので、流量計測感度が低下してしまう。
【0339】計測精度は、計測値が安定して得られるこ
とを示す指標であり、装置全体のS/Nが高い方がよい
値を得ることができる。従って、単にレイノルズ数を2
000より小さくしても、計測感度が低くなってしまっ
ては装置全体のS/Nを悪くしてしまうので、結果とし
ては計測精度は低くなってしまう。即ち、計測値のバラ
ツキは大きくなってしまう。
【0340】なお、最大流量を50slmとした場合に
レイノルズ数を2000より小さくするには、パイプの
内径を3.6cm以上としなければならないことが概算
される。
【0341】一方、パイプの直径を小さくするのは、流
速も大きくできるので、感度を高くすることができ、有
用である。しかし、デバイスをどれだけ小型化できる
か、という問題がある。例えば、計測する最小流量を1
slm(リットル/分)とした場合において、レイノル
ズ数を4000より大きくするには、パイプの内径を4
0μm程度以下としなくてはならず、実用的ではない。
【0342】また、パイプ自体を細くするのではなく、
所定の内径に相当するようにパイプ内部に詰め物をした
り、しぼりやオリフィスを配置することで、その部分で
パイプを細くした場合と同様な効果を得ることができ
る。しかし、このような流速を速くする構成は、大流量
に際して、不要な圧力が加わったり、乱流の発生要員と
なるので、好ましいものではない。
【0343】なお、以上の概算には、Re =1000V
/(15πdν)を用いた。この式において、Re はレ
イノルズ数であり、Vは流量(slm(リットル/
分))、πは円周率、dは円形パイプの直径(cm)、
νは20度での空気の動粘性率(0.1486)であ
る。
【0344】以上の概算は、流量計測範囲として、1s
lm〜50slmを想定した場合のものであり、また流
体としては空気(ここでは窒素ガスで代用)を用いた場
合のものである。他の流量範囲の計測や他の流体を用い
る場合には、上記概算式に従って、Re<2000ある
いはRe>4000以上となるように、パイプの内径を
定めればよい。
【0345】以下においては、流量計測範囲を1slm
〜50slmとする場合に、下記の条件を満たした流量
計測システムについて説明する。また流体としては空気
(窒素ガスで代用)を用いるものとする。・パイプ(プ
ラスチック製)の内径は1cmとする。・1slm〜5
0slmの範囲内において、Re<2000となるよう
にする。
【0346】レインルズ数Re を示す式(Re =dV/
ν)を見れば分かるように、流速Vを変化させずに、パ
イプの内径dを変化させれば、レイノルズ数のみを制御
することができる。そこで、このことを実現するため
に、図14(A)に示すような構成を採用する。
【0347】図14(A)に示す構成は、流速を変化さ
せずに、見かけ上のパイプの直径を変化させる方法であ
る。図14(A)に示す構成においては、内径1cmの
パイプ140の一部分にプラスチック材料でなる仕切板
141が配置されており、流れてきた流体144はその
部分で2つの流れに分断される。そして、一方の流れだ
けが流量計測装置142に接する構成となっている。
【0348】この仕切板によって、流量計測装置142
に接する側の流体の断面積はパイプ140の断面積の1
/20程度になっている。従って、円形パイプに対応さ
せると、その内径は1/4以下になっていることにな
る。また、仕切板141が薄ければ、その抵抗は無視す
ることができる。従って、図14(A)のような構成を
採用した場合、流量計測装置142に接する側143を
流れる流体のレイノルズ数は仕切り板が無い場合に比較
して1/4以下になることになる。
【0349】前述のように概算によれば内径1cmのパ
イプにおいて、レイノルズ数が2000〜4000とな
るのは、14slm〜28slmである。従って、この
概算に従えば、図14(A)に示す構成を採用をした場
合、レノルズ数が2000以上となるのは、56slm
以上(14×4slm以上)ということになる。
【0350】この図14(A)に示す構成を用いて、窒
素ガスの流量計測を行った結果を図15に示す。図15
に示されるように2slm〜50slmの範囲におい
て、3%以下(±1.5%以下)の公差(計測精度)で
安定した流量計測を行うことができた。これは、図9に
示す計測精度よりさらに高いもので、極めて実用的な流
量計測装置として利用できる値である。
【0351】また、図16には、流量値と演算処理され
た出力との関係を示す。なお、図16には、40slm
強までの計測結果しか示されていないが、100slm
以上まで流量計測が行えることが確かめられている。た
だしこの場合、56slm以上の流量の計測の際の公差
が大きくなることが懸念される。
【0352】図15に示すような高い計測精度が得られ
た原因として以下のことが考えられる。 (1)Re<2000の層流状態において、計測を行う
ようにしたので、乱流による計測精度の低下を防止する
ことができた。 (2)Re<2000の層流状態において、計測を行う
ようにしたので、乱流に起因する不要な振動がダイヤモ
ンド薄膜や測温抵抗体に伝わることがなくなり、機械的
な振動に起因するノイズレベルが低下した。 (3)乱流が発生しないように、流体の導入方法や構成
を工夫した。例えばパイプ端の部分で、通路の内径が極
端に変化したりすことのない構成とした。
【0353】一方、図14(A)の構成を採用すること
によって、1slm以下の微小流量に対する感度が低下
したことが確認された。即ち、1slm以下の微小流量
に対する計測精度が低下したことが確認された。これ
は、仕切板141によって、流体が分割され、流量計測
装置に接する流量が1/20以下に減少し、流体から奪
われていく熱量が減少したためであると考えられる。
【0354】図14(A)に示す構成においては、流体
を2分割する構成としたが、流体をどの様に仕切るか
は、必要とされる流量範囲とレイノルズ数との関係で定
まる。また、図14(B)に示すような構造で流体を分
割するのでもよい。図14(B)に示すのは、仕切り板
を三角形状にしたものである。このような構成にする
と、仕切板141の強度を高めることができる。
【0355】ただし、どの様な構造を採用するにしても
流体の流れを妨げるような構造にすることは好ましくな
い。また、仕切板は、熱伝導率が小さいものであること
が望ましい。これは、流量計測装置142と仕切板14
1とが接近した場合、流量計測装置142から流体に奪
われた熱量が、仕切板141に逃げてしまい、この影響
で実質的に感度が低下するからである。
【0356】以上のように、流体の流れる方向に沿って
パイプ内を仕切ることによって、所定の流量におけるレ
イノルズ数を変化させることができる。そして、必要と
する流量範囲において、レイノルズ数を2000より小
さくすることで、流量計測精度を高くすることができ
る。
【0357】また、以上の説明においては、パイプの形
状を丸型とした場合を前提としたが、パイプの形状は丸
形に限定されるものではなく多角形形状とするのでもよ
い。この場合は、円型パイプ(円形パイプ)の断面積に
換算して、レイノルズ数を計算すればよい。また、パイ
プの材質も特に限定されるものではない。
【0358】〔実施例13〕本実施例は、実質的にパイ
プの内径を小さくする構成に関する。前述のように、流
体として空気を用いた場合には、パイプ径をμmオーダ
ーにすることによって、1slm〜50slmの流量範
囲において、レイノルズ数を4000以上とすることが
できる。
【0359】しかし、ダイヤモンド薄膜をμmオーダー
に加工し、その表面にサーミスタや発熱体を形成するこ
とは容易ではない。また、素子自体の熱容量が極端に小
さくなるので、流体以外に奪われていく熱量が無視でき
なくなり、感度や計測精度が低下してしまう。
【0360】そこで本実施例は、図17に示すように、
パイプの途中にしぼりをいれて、その部分において流速
を速くし、レイノルズ数を変化させた構成に関する。図
17に示されている構成においては、角形パイプの一部
にしぼり部分172を設け、この部分に171で示され
る流量計測装置を配置したものである。
【0361】流体はテーパー状になった173の部分で
しぼられ、断面積が小さくなったしぼり部172の部分
を通過する。この時、レイノルズ数(Re =dV/ν)
は変化することになる。前述のように、流量一定と仮定
し、断面積を円形に換算した場合、dに反比例して、レ
イノルズ数は大きくなる。従って、しぼり部172の部
分では、所定の流量に対するレイノルズ数を大きくする
ことができる。
【0362】例えば、所定の流量範囲において、レイノ
ルズ数が4000以上となるように、しぼり部の断面積
を決定することで、レイノルズ数が2000〜4000
の範囲内における流れの乱れの影響を受けずに流量計測
を行えるシステムを構成できる。また、図17に示すよ
うな構成を採用した場合は、しぼり部分172の断面を
長方形とすることで、必要とするセンサー171の大き
さを確保することができる。
【0363】しかし、しぼり部172で流体をしぼり過
ぎると、 ・大流量時に抵抗が大きくなり、流体の流れが妨げられ
てしまう。 ・シボリ部に異物や堆積物が詰まり、信頼性が低下す
る。といった問題があり好ましいものではない。
【0364】〔実施例14〕本実施例は、レイノルズ数
を変化させるのではなく、流体に接して材料片を設ける
ことで、安定した流体の状態を実現し、突発的な流れの
乱れや、局部的な流れの乱れを解消し、流量計測精度の
向上を計る構成に関する。
【0365】前述のように、突発的あるいは局部的に乱
流が発生すると、流量計測精度が低下する。この現象の
発生を防ぐには、層流状態か完全な乱流状態を実現する
必要がある。実施例11及び実施例12は、レイノルズ
数を制御することによって、特定の流量において、この
問題が発生するのを防いだものである。それに対して、
本実施例では、流量一定の条件において、レイノルズ数
を変化させない状態で、流体の流れを安定化させるため
の構成を採用した例である。具体的には、パイプ内壁に
凹凸を設けたり、薄い材料片を設けたことを特徴とす
る。
【0366】本実施例の構成を図18(A)〜(C)に
示す。図18(A)〜(C)に示されているのは、流量
計測装置181が設けられたパイプ180の断面であ
る。図18において、182が材料片である。この材料
片は、プラスチック材料や樹脂材料で構成される。この
材料片は、流体の障害にならないように、薄くすること
が必要である。またその熱伝導率が低いことが必要であ
る。
【0367】この図18(A)〜(C)に示す構成は、
パイプ170の内部を分割するものではない。従って、
パイプの断面積は変化せず、レイノルズ数R=dV/ν
は変化しない。
【0368】図18(C)に示されているのは、パイプ
180の内部を4等分にする構造であるが、材料片18
2が設けられているのは、流量計測装置181と異なる
場所であり、流量計測装置が設けられている部分におけ
るレイノルズ数を変化させるものではない。例えば、流
体が紙面手前側から向う側に流れるとした場合におい
て、紙面手前側に材料片182が設けられており、その
向う側に流量計測装置181が設けられているような構
成となる。
【0369】この図18(C)に示されている構成は、
十字型に設けられた材料片によって、流体の流れを整形
し、局所的な乱流が発生しないようにするものである。
図18(C)には、十字型の構成が示されているが、例
えばハニカム構造のような構造を採用してもよい。
【0370】図18に示すような構成を採用することに
よって、突発的あるいは局所的な乱流の発生を抑制する
ことができ、流量計測精度を高めることができる。
【0371】また、図18に示すのと同様な効果が得ら
れる構成としては、パイプ内壁に凹凸を設けることも有
用である。また、本実施例の構成と実施例11及ぶ実施
例12で示したレイノルズ数を制御する方法とを併用す
ることは効果的である。
【0372】〔実施例15〕本実施例は、ダイヤモンド
薄膜上に形成された測温抵抗体と発熱体との熱的な結合
を密にした構成に関する。図19に本実施例の構成を示
す。図19において、191がダイヤモンド薄膜であ
り、192が測温発熱体、193が発熱体である。測温
抵抗体や発熱体の構成は限定されるものではないが、金
属を用いたものや半導体を用いたものを利用することが
できる。
【0373】本実施例の構成を採用することによって、
測温抵抗体192と発熱体193とをダイヤモンド薄膜
191を介して熱的に密に結合させることができ、ダイ
ヤモンド薄膜から流体に奪われていく熱量を高い感度で
計測することができる。本実施例は、素子部分の構成を
示すものであり、他の実施例における流量計測装置に利
用できることはいうまでもない。
【0374】〔実施例16〕本実施例は、流体が流れる
通路、例えばパイプ内における流量計測装置の配置方法
に関する。流体の通路としてパイプを用いた場合、図5
(A),(B)に示すように、パイプの一部に流量計測
装置を埋め込む形とする構成がまず挙げられる。
【0375】この構成を簡単に示したものが図20
(A)である。図20(A)において、201が流量計
測装置である。これは、熱絶縁性の高いテフロン等の基
体に組み込まれた構造を有しており、流量計測装置自体
は、図1や図5に示すような構成を有する。この流量計
測装置201は概略パイプ200の内壁の一部を構成し
ており、流体202の流れを遮らないという特徴を有す
る。これは、流体に不要な乱流を生じさせないために重
要である。
【0376】一方図20(A)の構成は、ダイヤモンド
薄膜他端の流体に接する面付近から優先的に熱が流体2
02に奪われるので、ダイヤモンド薄膜全面を有効に利
用できないという問題がある。
【0377】そこで、図20(B)に示すように、流量
計測装置、あるいはダイヤモンド薄膜のみを流体に対し
てφの角度だけずらして配置し、ダイヤモンド薄膜の全
面を流体202に有効に曝す構成を採ることが考えられ
る。このような構成を採用した場合、より多くの流体2
02がダイヤモンド薄膜の全面に接することになるの
で、熱交換効率が向上し、微小流量に対する感度の向上
が期待される。
【0378】実際の計測においては、1slm以下の流
量に対しての感度の向上が確認された。しかし一方で、
大流量に対する若干の感度の低下が確認された。
【0379】以上のように、図20(B)の構成を採用
することで、計測感度を高めることができるが、構造的
な安定性や信頼性、さらには乱流の発生の問題を考慮す
ると、特に感度の向上が必要でない場合は、図20
(A)の構成の方が実用的であると考えられる。
【0380】〔実施例17〕本実施例は、ダイヤモンド
薄膜全体を一導電型を有する半導体とした例である。こ
のような構成とした場合、ダイヤモンド薄膜自体が測温
抵抗体であるサーミスタとして機能する。本実施例の動
作方法は、実施例2で説明したのと基本的には同様であ
るが、薄膜の温度変化を薄膜自体の抵抗変化により計測
する点が実施例2の場合と異なる。なお、直流ドリフト
を排除または無視できるなら、単にダイヤモンド薄膜か
ら流体に奪われていく熱量を検出するセンサーとして用
いることができる。
【0381】図21に本実施例の概略を示す。図21に
おいて、210が一導電型のダイヤモンド薄膜であるP
型ダイヤモンド薄膜である。また、211と212は電
極であり、この電極間の電位差あるいはこの電極間に電
流を流すことによって、P型ダイヤモンド薄膜210を
サーミスタとして機能させることができる。214は発
熱体であり白金等によって構成される。また少なくとも
流体は、213で示されるように、電極211と212
さらには発熱体214が設けられた面側とは反対側の面
に接して流れるようにすることが、必要である。
【0382】ダイヤモンド薄膜は、可能な限り熱的に周
囲から孤立した状態で保持することが必要である。即
ち、熱的に絶縁して保持する必要がある。これは、流体
以外に逃げていく熱量を極力少なくするためである。具
体的には、図5に示すように熱的に絶縁物と見なせる基
体に埋め込むことや、図11に示すように熱抵抗の高い
支持体によって保持させることが重要である。
【0383】P型のダイヤモンド薄膜210の作製条件
を以下に示す。ここではマイクロ波プラズマCVD法で
P型ダイヤモンド薄膜を形成する例を示す。 原料 メタノール+B2 3 (又はH3 BO3 ) 混合比は、Cに対してBが1000ppmとなるように設定する。 マイクロ波電力 600W 基板 単結晶珪素(100面) 成膜圧力 70Torr 成膜速度 0.5μm/h 成膜後には、水素雰囲気中での熱アニール、あるいはラ
ンプ加熱等のアニールを行ない、活性化を行なう。上記
成膜条件において、Bの原料ガスとしてB2 6 を用い
てもよい。なお、他の成膜方法により、P型ダイヤモン
ド薄膜を形成してもよいことはいうまでもない。
【0384】また、発熱体214の代わりに一導電型を
有するダイヤモンド薄膜表面近傍を用いて、抵抗体を形
成してもよい。
【0385】また、発熱体214を設けずに、P型ダイ
ヤモンド半導体層210自体を発熱体として機能させる
構成としてもよい。
【0386】〔実施例18〕本実施例は、パイプ内に配
置された流量計測装置の保持方法に関する。図22に本
実施例の概要を示す。図22(A)において、221が
流体の通路となるパイプであり、222は流量計測装置
であり、223が保持部材である。ここでパイプ221
の材質は何ら限定されるものでない。
【0387】図22(A)の流量計測装置222と保持
部材223との部分を拡大したのが図22(B)であ
る。図22(B)には、、224と225でもって保持
部材223を構成し、226と227とでもって流量計
測装置222を構成している様子が示されている。
【0388】流量計測装置222が保持部材223によ
ってパイプ内部に保持されている。保持部材は一対の材
料224と225とからなり、流量計測装置222を挟
み込むようにして保持している。
【0389】流量計測装置は、一対のダイヤモンド薄膜
224と225とからなり、どちらか一方のダイヤモン
ド薄膜には、図1に示すような発熱体と測温抵抗体が設
けられている。発熱体や測温抵抗体が設けられているの
は、他の一方のダイヤモンド薄膜と向かい合う面であ
る。即ち、一方のダイヤモンド薄膜の表面に設けられた
発熱体と測温抵抗体は、他方のダイヤモンド薄膜によっ
て覆われている構成となっている。
【0390】一対のダイヤモンド薄膜226と227と
の張り合わせ面には、高熱伝導性を有するオイル等にダ
イヤモンドパウダーを混ぜた高熱伝導性材料が塗布さ
れ、ダイヤモンド薄膜同士の熱的な結合が密にされてい
る。またダイヤモンド薄膜226と227とは、保持部
材224と225とによって挟まれることによって一体
化されている。
【0391】保持部材224と225とは、テフロン等
の熱伝導率が低く、ダイヤモンド薄膜に対しては、熱的
な絶縁材料と見なせる材料よりなる。これは、流量計測
装置222を熱的に絶縁した状態で保持するためであ
る。
【0392】発熱体や測温抵抗体からの配線は、一対の
保持部材224と225との間を通り、外部に引き出さ
れる。
【0393】一方のダイヤモンド薄膜の表面に形成され
る発熱体や測温抵抗体の構成は、本明細書中において説
明した構成を適時利用することができる。また一方また
は双方ダイヤモンド薄膜を実施例17で示した一導電型
を有するダイヤモンドサーミスタとすることもできる。
またその動作方法も先に説明した通りである。
【0394】本実施例の構成は以下の特徴を有する。 (1)発熱体や測温抵抗体が露呈しない。 (2)発熱体や測温抵抗体からの配線が、大流量に従う
圧力の影響を受けにくく、さらに丈夫であるために信頼
性が高い。
【0395】図22においては、保持部材223の一方
の端に流量計測装置が保持され、他方の端がパイプの一
方の壁面においてだけ固定される構成となっているが、
保持部材の中央部分で流量計測装置を保持し、保持部材
の両端をパイプの壁面に固定する構造とすると、さらに
強固な構造とすることができ、信頼性を高めることがで
きる。
【0396】〔その他の構成について〕本発明の実施形
態は、以上の実施例において示した形態に限定されるも
のではない。例えばダイヤモンド薄膜の厚さと抵抗体と
なる部分の厚さも適時定めればよい。またダイヤモンド
薄膜の作製方法や作製条件も実施に当たり適時選択すれ
ば良い。また抵抗体の材料や作製方法も実施態様に合わ
せて選べばよい。
【0397】また、流体としては、窒素ガスの如き気体
に限定されるものではなく、液体、霧状流体、粉状にし
た固体を含む気体や液体を用いることができる。
【0398】また、被計測物質としては、流体以外の固
体材料を用いることも可能である。この場合、実施例2
に示した計測動作を行わすことによって、被計測物質の
熱伝導率や比熱、さらには熱容量を計測することができ
る。但し、この場合は、必要とする発熱量や薄膜材料で
あるダイヤモンド薄膜の熱容量の適正な値を決める必要
がある。
【0399】また、本明細書において示した実施例を相
互に組合せることも有用である。
【0400】
【効果】ダイヤモンド薄膜に接して流体が流れるように
した状態において、ダイヤモンド薄膜に極短時間におい
て所定の熱量を供給し、この加熱に際するダイヤモンド
薄膜の温度変化を計測することにより、正確な流量計測
を行うことができる。
【0401】特に、加熱が行われる直前におけるダイヤ
モンド薄膜の温度を時間で積分した値と、加熱が行われ
た直後におけるダイヤモンド薄膜の温度変化を時間で積
分した値とを比較することにより、この加熱に従うダイ
ヤモンド薄膜の温度変化を正確に計測することができ、
ドリフト成分が排除された信頼性の高い流量計測を行な
うことができる。
【0402】具体的には、2〜50slm(リットル/
分)の計測範囲において、約3%(±1.5%)以内の
公差で計測ができる。また、3桁以上のダイナミックレ
ンジにおいて、流量計測を行うことができる。
【0403】また、本発明の計測装置、およびその動作
方法は、流体の熱伝導率や比熱、さらには固体の熱伝導
率や比熱の計測や識別を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例の流量計測置の概要を示す。
【図2】 流量と流量計測装置の出力との関係を示
す。
【図3】 流量計測に必要とされる計測精度を示す。
【図4】 実施例の構成を示す。
【図5】 実施例の構成を示す。
【図6】 流量計測の原理を示す。
【図7】 オシロスコープの波形を示す写真である。
【図8】 流量計測の精度を示す。
【図9】 流量計測の精度を示す。
【図10】 流量と流量計測装置の出力との関係を示
す。
【図11】 実施例の構成を示す。
【図12】 実施例の作製工程を示す。
【図13】 実施例の構成を示す。
【図14】 実施例の構成を示す。
【図15】 流量と公差の関係を示す。
【図16】 流量と流量計測装置の出力との関係を示
す。
【図17】 実施例の構成を示す。
【図18】 実施例の構成を示す。
【図19】 実施例の構成を示す。
【図20】 実施例の構成を示す。
【図21】 実施例の構成を示す。
【図22】 実施例の構成を示す。
【符号の説明】
10・・・・電極 11・・・・発熱体 12・・・・測温抵抗体 13・・・・ダイヤモンド薄膜 15・・・・電極 16・・・・流体 41・・・・アンプ 42・・・・流量計測装置 43・・・・タイミングパルスジェネレーター 44・・・・I/Vアンプ 45・・・・A/Dコンバータ 46・・・・メモリー 47・・・・メモリー 48・・・・演算器 50・・・・流体 51・・・・パイプ 52・・・・ダイヤモンド薄膜 53・・・・測温抵抗体 54・・・・発熱体 55・・・・測温抵抗体 56・・・・測温抵抗体 57・・・・測温抵抗体 58・・・・ダイヤモンド薄膜 59・・・・基体(テフロン) 111・・・ダイヤモンド薄膜 112・・・保持部分 113・・・基体 114・・・流体 75・・・・測温抵抗体 76・・・・発熱体 77・・・・ダイヤモンド薄膜 78・・・・信号処理部 79・・・・電源 700・・・電源 701・・・作動アンプ 140・・・パイプ 141・・・仕切板 142・・・流量計測装置 144・・・流体 171・・・流量計測装置 172・・・しぼり部 173・・・テーパー部 180・・・パイプ 181・・・流量計測装置 182・・・材料片 191・・・ダイヤモンド薄膜 192・・・測温抵抗体 193・・・発熱体 200・・・パイプ 201・・・流量計測装置 202・・・流体 210・・・P型ダイヤモンド薄膜 211・・・電極 212・・・電極 213・・・流体 214・・・発熱体 221・・・パイプ 222・・・流量計測装置 223・・・保持部材
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI G01P 13/02 G01F 1/68 201Z 101B 104B 104C 104A (31)優先権主張番号 特願平5−209059 (32)優先日 平成5年7月31日(1993.7.31) (33)優先権主張国 日本(JP) (72)発明者 佐藤 英司 神奈川県厚木市長谷398番地 株式会社 半導体エネルギー研究所内 (72)発明者 寺本 聡 神奈川県厚木市長谷398番地 株式会社 半導体エネルギー研究所内 (56)参考文献 特開 昭63−252224(JP,A) 特開 昭63−140921(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01F 1/696 G01F 1/684 G01F 1/692 G01P 13/02

Claims (13)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】絶縁性を有する基体と、前記基体に保持さ
    れたダイヤモンド薄膜と、前記ダイヤモンド薄膜に接し
    て設けられ該ダイヤモンド薄膜を加熱するための発熱体
    と、前記ダイヤモンド薄膜に接して設けられ該ダイヤモ
    ンド薄膜の温度を測定するための感熱体とを有し、 前記発熱体はN型またはP型を有するダイヤモンド半導
    体からなり、 前記発熱体と前記感熱体とは前記基体に接することな
    く、且つ互いに接することなく前記ダイヤモンド薄膜に
    接して設けられてなる流体の計測装置を用い、 前記感熱体からの出力をΔt 0 の時間において積算する
    第1の動作と、 前記第1の動作の後、前記発熱体から前記ダイヤモンド
    薄膜に熱量を供給する第2の動作と、 前記第2の動作に伴って変化する前記感熱体からの出力
    をΔt 2 の時間において積算する第3の動作と、 前記第1の動作によって得られた積算値S 0 と前記第3
    の動作によって得られた積算値S 2 との差を演算する第
    4の動作と、を有する流体の計測方法であって、 前記第4の動作における演算を、 (S 0 /Δt 0 )−(S 2 /Δt 2 )又は(S 2 /Δt
    2 )−(S 0 /Δt 0 で実行することを特徴とする流体の計測方法。
  2. 【請求項2】絶縁性を有する基体と、前記基体に保持さ
    れたダイヤモンド薄膜と、前記ダイヤモンド薄膜に接し
    て設けられ該ダイヤモンド薄膜を加熱するための発熱体
    と、前記ダイヤモンド薄膜に接して設けられ該ダイヤモ
    ンド薄膜の温度を測定するための感熱体とを有し、 前記発熱体はN型またはP型を有するダイヤモンド半導
    体からなり、 前記発熱体と前記感熱体とは前記基体に接することな
    く、且つ互いに接することなく前記ダイヤモンド薄膜に
    接して設けられてなる流体の計測装置を用い、 前記感熱体からの出力をΔt 0 の時間において積算する
    第1の動作と、 前記第1の動作の後、前記発熱体から前記ダイヤモンド
    薄膜に熱量を供給する第2の動作と、 前記第2の動作に伴って変化する前記感熱体からの出力
    をΔt 2 の時間において積算する第3の動作と、 前記第1の動作によって得られた積算値S 0 と前記第3
    の動作によって得られた積算値2 との差を演算する第
    4の動作と、を有する流体の計測方法であって、 前記第4の動作における演算を、 (Δt 2 /Δt 0 )S 0 −S 2 又はS 2 −(Δt 2 /Δ
    0 )S 0 で実行することを特徴とする流体の計測方
    法。
  3. 【請求項3】絶縁性を有する基体と、前記基体に保持さ
    れたダイヤモンド薄膜と、前記ダイヤモンド薄膜に接し
    て設けられ該ダイヤモンド薄膜を加熱するための発熱体
    と、前記ダイヤモンド薄膜に接して設けられ該ダイヤモ
    ンド薄膜の温度を測定するための感熱体とを有し、 前記発熱体はN型またはP型を有するダイヤモンド半導
    体からなり、 前記発熱体と前記感熱体とは前記基体に接することな
    く、且つ互いに接することなく前記ダイヤモンド薄膜に
    接して設けられてなる流体の計測装置を用い、 前記感熱体からの出力をΔt 0 の時間において積算する
    第1の動作と、前記第1の動作の後、前記発熱体から前
    記ダイヤモンド薄膜に熱量を供給する第2の動作と、 前記第2の動作に伴って変化する前記感熱体からの出力
    をΔt 2 の時間において積算する第3の動作と、 前記第1の動作によって得られた積算値S 0 と前記第3
    の動作によって得られた積算値S 2 との差を演算する第
    4の動作と、を有する流体の計測方法であって、 前記第4の動作における演算を、 0 −(Δt 0 /Δt 2 )S 2 又は(Δt 0 /Δt 2
    2 −S 0 で実行することを特徴とする流体の計測方法。
  4. 【請求項4】前記第4の動作の結果から、前記第2の動
    作に伴う前記ダイヤモンド薄膜の応答特性に対応した出
    力を算出することを特徴とする請求項1、2又は3の流
    体の計測方法。
  5. 【請求項5】前記ダイヤモンド薄膜は流体に接して配置
    されており、前記第4の動作の結果から、前記流体の流
    量又は流速を求めることを特徴とする請求項1、2又は
    3の流体の計測方法。
  6. 【請求項6】前記ダイヤモンド薄膜は流体に接して配置
    されており、前記第4の動作の結果から、前記流体の熱
    伝導率を求めることを特徴とする請求項1、2又は3の
    流体の計測方法。
  7. 【請求項7】前記ダイヤモンド薄膜は流体に接して配置
    されており、前記第4の動作の結果から、前記流体の比
    熱を求めることを特徴とする請求項1、2又は3の流体
    の計測方法。
  8. 【請求項8】前記流体を識別することを特徴とする請求
    項5、6又は7の流体の測定方法。
  9. 【請求項9】前記ダイヤモンド薄膜は材料に接して配置
    されており、前記第4の動作の結果から、前記材料の熱
    伝導率を求めることを特徴とする請求項1、2又は3の
    流体の計測方法。
  10. 【請求項10】前記ダイヤモンド薄膜は材料に接して配
    置されており、前記第4の動作の結果から、前記材料の
    比熱を求めることを特徴とする請求項1、2又は3の流
    体の計測方法。
  11. 【請求項11】前記材料を識別することを特徴とする
    求項9又は10の流体の測定方法。
  12. 【請求項12】前記ダイヤモンド薄膜は流体に接して配
    置されており、前記第1の動作から前記第4の動作を前
    記ダイヤモンド薄膜の複数の領域で行い、前記複数の領
    域における前記第4の動作の結果を比較して、前記流体
    の流量又は流れる方向を求めることを特徴とする請求項
    1、2又は3の流体の計測方法。
  13. 【請求項13】前記第2の動作における熱量を供給する
    時間Δt 1 と積算値S 0 を算出してから次の積算値S 0
    算出するまでの時間間隔Tとの関係が、 T/Δ 1 ≧10 であることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか一
    の流体の計測方法。
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