JP3506784B2 - 計測装置および計測方法 - Google Patents

計測装置および計測方法

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JP3506784B2
JP3506784B2 JP29225994A JP29225994A JP3506784B2 JP 3506784 B2 JP3506784 B2 JP 3506784B2 JP 29225994 A JP29225994 A JP 29225994A JP 29225994 A JP29225994 A JP 29225994A JP 3506784 B2 JP3506784 B2 JP 3506784B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本明細書で開示する発明は、薄膜
が受ける被計測物質からの熱的な影響を定量的に評価す
る計測装置および計測方法に関する。具体的には、気
体、液体、霧状流体(噴霧化された流体)、または固体
粉体を含む気体や液体、さらには液晶のような材料等の
流体の計測を行う装置または計測方法に関する。
【0002】本明細書で開示する発明を利用することに
よって、例えば以下に示すような計測を行うことができ
る装置またはその方法を得ることができる。 (1) 質量流量または体積流量または流速の計測 (2) 流体の熱伝導率や比熱の計測。 (3) 流体の識別 (4) 複数の流体の混合比の計測 (5) 流体中に含まれる物質の濃度の計測(例えば湿度の
計測)
【0003】さらに、本明細書で開示する発明を利用す
ることによって、被計測物質(気体、液体、固体は問わ
ない)の熱伝導率や比熱の違いを評価あるいは計測する
ことができる装置またはその方法を得ることができる。
【0004】〔発明の概要〕 本明細書で開示する発明の基本的な構成の一つの例は、
ダイヤモンド薄膜等の高熱伝導率を有する薄膜に対して
パルス状の加熱を行い、この際の応答特性を当該薄膜の
温度変化として計測し、この応答特性より当該薄膜が接
している被計測物質から受ける熱的な影響を評価するこ
とを基本的な構成とする。この薄膜が受ける熱的な影響
としては、例えば薄膜に接して流れる流体の流量による
ものを挙げることができる。この場合、流体によって受
ける熱的な影響を評価することで、この流体の流量を評
価することができる。
【0005】そして本明細書で開示する発明は、上記の
ような構成において、流体や環境の温度に対応させて前
記パルス状の加熱に際する熱量を制御することで、流体
や環境の温度に影響されずに例えば流量計測を行うこと
を特徴とする。
【0006】
【従来の技術】流量を計測する装置として、サーミスタ
を利用したものが知られている。これは、流体によって
熱量が奪われることによって、サーミスタ部分の温度が
低下することを利用したものである。一般にサーミスタ
部分が流体に接していると、サーミスタ部分から奪われ
る熱量は、流量(または流速)に依存するため、サーミ
スタからの出力と流量とはある相関関係を持つ。このこ
とを利用して、サーミスタの出力より、流量を算出する
ことができる。
【0007】流量(以下においては体積流量を意味す
る)は流体の断面積と流速との積で定義される。例え
ば、内径rの円形パイプ内を流速vの流体が流れている
とするならば、vπr2 が流量になる。従って、以下
においては流量を中心として話を進めるが、流体の断面
積が分かっているのならば、流量と流速は同時に求める
ことができる。
【0008】一般にサーミスタは、大きな負の温度係数
を有する半導体のことをいう。しかし、本来サーミスタ
とは、熱に敏感な抵抗体(Thermally Sensitive Resist
or)のことであり、特に温度係数の正負や材料によって
限定されるものではない。従って、正の温度係数を有す
る白金等の金属をサーミスタと称してもよい。
【0009】サーミスタのように、温度によって抵抗が
変化する材料を用いた素子を総称して、測温抵抗体や温
度感知素子、さらには感温素子や抵抗温度計という。ま
た、温度によって抵抗が変化する材料のことをサーミス
タ機能を有する材料ということもできる。以下において
は、温度によって抵抗が変化する材料のことを測温抵抗
体という。
【0010】また、上記構成の他には、ジュール熱によ
って発熱させた抵抗発熱体を流体に曝し、流量に依存し
て、当該抵抗発熱体から熱量が奪われることを利用する
方式もある。この方式では、抵抗発熱体に流れる電流を
計測することによって、流量を算出することができる。
【0011】また、流体に接した発熱体から熱量を流体
に奪わせ、流体によって運ばれる熱量を別個に設けられ
た測温抵抗体(例えば白金センサー)によって計測し、
流量を算出する方式もある。
【0012】これらの方式において、高い感度を得るた
めには、流体によって奪われる熱量を多くすることが有
効である。また、応答速度を高めるためには、測温抵抗
体部分の熱容量を極力小さくすることが必要である。
【0013】上述した構成を用いた流量計測装置は、計
測できる流量の範囲が狭いという問題がある。即ち、ダ
イナミックレンジが狭いという問題がある。具体的に
は、20sccm〜300sccm、200sccm〜
2000sccmといった範囲でしか正確な流量計測が
できないという問題がある。
【0014】これらの問題は、主に以下のような理由に
よるものであると考えられる。 (1)測温抵抗体が熱的に極めて不安定な状態におかれ
ているので、熱に対する応答の特性やリアリティーが悪
く(熱に対する応答が不安定)、広い範囲の熱的変化に
追従できない。 (2)上記(1)に関連して、特に加熱の方法が難し
く、広い流量範囲に渡って有効な加熱を行うことができ
ない。 (3)応答速度を速くするために測温抵抗体の熱容量を
小さくすると、大きな熱量を扱うことができない。
【0015】上記(1)の原因は、広い流量範囲に渡っ
て、測温抵抗体から効果的に流体に熱量を奪わせ、同時
に測温抵抗体に効果的に熱量を供給する構造を採ること
が困難であることによる。
【0016】また測温抵抗体は、流量のみではなく、環
境の温度変化(例えば流体の温度変化)をも敏感に検出
してしまうので、温度変化がある環境での使用には問題
があった。この問題を解決する方法も数々提案されてい
るが、実際の使用においては、計測環境あるいは流体の
温度によって流量の計測に大きなバラツキが出てしまう
のが現状である。
【0017】〔発明に至る過程〕 本発明者らは、図1に示すような流量計測センサー素子
を作製した。図1において、13は有磁場マイクロ波C
VD法を用いて気相合成した4mm角で15μm厚の多
結晶ダイヤモンド薄膜である。12はスパッタリング法
で形成された0.1μm厚の白金の測温抵抗体である。
11は同じくスパッタリング法で形成された0.1μm
厚の白金の発熱抵抗体である。10と15がそれらの電
極であり、17はボンディング用の金ワイヤである。1
8はダイヤモンド薄膜13を保持するテフロン製の基体
である。測温抵抗体12と発熱体11とは、その抵抗が
異なるだけであり、測温抵抗体12の抵抗が約1KΩ、
発熱体11の抵抗が約100Ωである。
【0018】図1に示す流量計測センサーは、テフロン
の基体18に保持されており、流体以外とは熱的に絶縁
されて保持されている。このように当該薄膜を熱的に絶
縁して保持することによって、当該薄膜から流体以外に
熱が流失しない構造とすることができ、流体と薄膜の熱
的な相互作用を正確に評価することができる。
【0019】また流体19は、測温抵抗体12や発熱体
11が形成された面とは反対側の面に接して流れる構造
となっている。具体的には、図1に示す装置は流体が流
れるパイプの一部に嵌め込まれており、ダイヤモンド薄
膜の一方の面(回路の形成されている面)はパイプの外
部に面しており、他の一方の面はパイプの内部に面して
いる。
【0020】実際に計測を行ったシステムのブロック図
を図2に示す。図2において22が図1にその概要を示
す流量計測センサー部分である。図2に示すシステムに
おいて、アンプ21より発熱体11にパルス状の電圧が
加えられ、発熱体11はダイヤモンド薄膜13に対して
パルス状の加熱を行う。このパルス状の加熱は極短時
間、例えば0.18秒で行われる。このパルス状の加熱
によって、ダイヤモンド薄膜13は極短時間において加
熱される。
【0021】発熱体11によるパルス状の加熱に従うダ
イヤモンド薄膜13の過渡応答特性は、測温抵抗体12
によって、ダイヤモンド薄膜13の温度変化として出力
される。測温抵抗体12には一定のバイアス電圧が印加
されており、ダイヤモンド薄膜13の温度変化は、測温
抵抗体を流れる電流値の変化として出力される。
【0022】測温抵抗体12からの出力は、I/Vアン
プ24によって電圧信号に変換され、さらにA/Dコン
バータ25において、デジタル信号に変換される。さら
にA/Dコンバータ25からの出力は、CPU28にお
いて所定の演算方法によって処理され、D/Aコンバー
タ27より計測値が出力される。
【0023】図1に示す流量計測装置と、それを利用し
た図2に示すシステムを用いて、窒素ガス流量の計測を
行い、以下の実験事実が得られた。 (1)ダイヤモンド薄膜の瞬間的な加熱(パルス状の加
熱)に対する応答特性は、当該ダイヤモンド薄膜に接し
て流れる流体の流量に依存する。そして、この応答特性
を定量的に評価することによって、流量(または流速)
を計測することができる。 (2)ただし上記(1)の応答特性は、流体の温度によ
っても変化する。即ち、流体の流量が同じであっても、
流体の温度や環境の温度が異なると、対応する応答特性
も違うものとなる。
【0024】上記(1)の実験事実に関する写真を図3
に示す。図3は、図2のI/Vアンプ24からの出力を
オシロスコープに表示し、その表示を写真撮影したもの
である。図3において縦軸がダイヤモンド薄膜の温度を
表し、横軸が時間を表す。図3に示されているのは、ダ
イヤモンド薄膜が急速に加熱され、加熱後に窒素ガス流
体によって冷却されていく様子である。この様子は、パ
ルス状の加熱に対するダイヤモンド薄膜の過渡応答特性
を示すものといえる。なお、加熱の時間は0.18秒で
あり、ガス温度は一定である。
【0025】また、図3における2つの曲線は、それぞ
れ異なる流量に対応する応答特性を示すものである。こ
れは、流量の違いによって、パルス状の加熱に対するダ
イヤモンド薄膜の応答特性が異なることを意味するもの
である。この図3に示される波形の大きい方は流量が少
ない場合のものであり、波形の小さい方は流量が多い場
合のものである。この場合、流量が少ないとダイヤモン
ド薄膜から奪われる熱量が少ないので、ダイヤモンド薄
膜はパルス状の加熱に際して、急速に大きく加熱され、
ゆっくりと冷却される。従って、応答波形は大きくな
る。一方、流量が多い場合、ダイヤモンド薄膜から奪わ
れていく熱量が多いので、ダイヤモンド薄膜はあまり高
い温度に加熱されず、しかも加熱終了後に急速に冷却さ
れる。従って、応答波形は小さいものとなる。
【0026】CPU28における演算は、図3に示され
るような波形の面積を所定の時間内において計算し、予
め求めておいた流量とこの波形の面積との関係に照らし
合わせることによって行われる。具体的には、実施例1
において説明するセンサーの基本的な動作と基本的に同
一である。
【0027】この方法によって求められた温度一定の窒
素ガス流量(Sl、リットル/分)とその計測公差との
関係を図4に示す。公差とは、計測データの信頼性を示
すもので、正確な値からの計測値のズレを表すパラメー
タである。また図4に示す流量計測に当たっては、流量
計測装置に接する流体のレイノルズ数が2000より小
さくなるようにして計測を行った。これは、乱流の影響
による公差の増大を抑えるためである。
【0028】図4を見れば分かるように、流体の温度が
一定の場合には、2(リットル/分)〜42(リットル
/分)において、3%(±1.5%)以内の計測がで
き、しかも50%の公差を許容するならば、0.05
(リットル/分)(50sccm)からの計測が可能で
あり、3桁以上に渡って流量の計測が行えることにな
る。
【0029】次に、前述の(2)に示した、流体の温度
変化と流体の流量変化とを区別できないことに関する実
験事実を以下に示す。
【0030】図5のAに示すのは、図2に示すセンサー
部分22(図1で示される構成を有する)を恒温室に持
ち込み、流量0の状態で流体(空気)の温度を10de
g〜35degまで変化させた場合のD/Aコンバータ
27からの出力である。図5のAに示される曲線のよう
に、温度(この場合は流体の温度と理解することができ
る)が変化することによって、流量が変化しなくても
(この場合は流量0)図2に示す計測システムからの出
力は変化してしまう。
【0031】この場合は、流量が一定であることが分か
っているが、流体の温度と流量値とが分からない場合
は、どちらが変化したのかを確定することは原理的にで
きないことになる。
【0032】
【発明が解決しようとする課題】本明細書で開示する発
明は、図5のAで示されるような、流体や環境の温度変
化によって、流量計測値が変化してしまうことを防ぎ、
流量(または流速)のみに依存した出力が得られる計測
装置を得ることを目的とする。
【0033】
【課題を解決するための手段】以下においては、センサ
ー部分に利用される薄膜材料としてダイヤモンド薄膜
を利用した場合を主に示すが、他の材料としては、単結
晶珪素、多結晶珪素、炭化珪素、窒化アルミニウム、窒
化ほうそ、窒化アルミ、その他高熱伝導率を有する絶縁
性または半導体性を有する材料(少なくとも単結晶シリ
コン(148Wm−1K−1)以上の熱伝導率を有する
材料)を利用することができる。勿論、ダイヤモンド薄
膜を用いた場合に最も顕著な効果を得ることができる。
【0034】本明細書で開示する発明は、流体(または
環境)の温度によって、ダイヤモンド薄膜に供給する熱
量を所定の規則に従って変化させることを特徴とする。
こうすることで、流体の温度変化には依存せず、流量
(質量流量または体積流量)に依存した出力を得ること
ができる。
【0035】言い換えるならば、温度変化によらずに、
ダイヤモンド薄膜に対するパルス状の加熱に対する応答
を一定なものとするには、所定の規則に従って、パルス
状の加熱に際してダイヤモンド薄膜に供給される熱量を
制御する必要があるということである。
【0036】以下において、どのようにして発熱体から
ダイヤモンド薄膜に供給される熱量を変化させるのかに
ついて説明する。図6は、一定の温度と流量(この場合
は流量0)に保った流体(この場合は空気)に図2の流
量計測装置22(流量計測センサー)を接しさせた状態
において、発熱体11に印加されるパルス状の電圧(相
対値)の値(横軸)とD/Aコンバータ27からの出力
(相対値)(縦軸)との関係を示したものである。図6
には複数のプロット点が示されているが、それらはそれ
ぞれ異なる温度において測定したものである。なお、こ
の流体の温度は別に設けた温度計測センサー(Ref= で示
される値がその出力である) を用いている。
【0037】図6の横軸に示す電圧(相対値)は、発熱
体(ヒーター)に加えられる矩形状のパルス電圧の大き
さを示すものである。また、パルスを加える時間は固定
(0.18秒)してある。従って、発熱体から供給され
る熱量は、加えられる電圧に依存すると見なすことがで
きる。また、図6に示す縦軸は、発熱体からのパルス状
の加熱に従うダイヤモンド薄膜の温度変化を所定の演算
によって処理した値である。この所定の演算によって処
理した値とは、図3に示されるような応答波形の面積の
値(任意値)である。
【0038】図6を見れば分かるように、発熱体に供給
する電圧と計測システムからの出力との関係は比例する
ものとなっている。また、流体の温度が異なる場合、そ
のプロット点がほぼ平行に位置している様子が見て取れ
る。このプロット点を結んだ複数の直線は、ヒーター電
圧が0の部分で一点に収束するものと考えられる。なぜ
ならば、発熱体が発熱をしなければ、応答もなく出力も
また0であるからである。このことは、図6の縦軸が、
ダイヤモンド薄膜に対するパルス状の加熱に際する応答
特性を定量的に評価した値であることを考えれば明らか
である。
【0039】一般に流量や流速を計測するシステムとし
ては、流量や流速が変化しなければ、出力もまた変化し
ない特性が必要とされる。
【0040】ここで、図6において、適当な出力の値、
例えば5500の値に着目し、この値を得るために必要
とされる発熱体への電圧値を求める。これは、図6に示
すように、縦軸の5500の値の点を通る横軸に平行な
直線と各プロット点を結んだ直線との交点を求めること
で得ることができる。
【0041】このようにして求められた発熱体へ供給さ
れる電圧値(縦軸)と温度(横軸)との関係を図7に示
す。図7の横軸に示されるのは、温度計測用の装置(こ
こではREFERENCE と称する)からの出力(A.U 任意値)
であるが、温度に対応するもとして理解することができ
る。
【0042】図7に示されるグラフは、一定の流量に対
応する一定の出力を得るためには、流体の温度の値(図
7の横軸に対応)に1対1に対応して、発熱体に特定の
電圧でパルス幅の決まったパルス電圧を加えれば良い、
ということを意味する。即ち、流体の流量が一定であっ
て、流体の温度が変化する場合、図7に示される関係に
従って、発熱体に所定の電圧を印加することによって、
常に一定の流量計測値を得ることができるということを
意味する。
【0043】図7に示すのは、流体の温度とダイヤモン
ド薄膜を加熱する手段である発熱体に供給する電圧との
関係を示したものである。図7の場合には、電圧印加時
間が一定であるから、発熱体からの発熱量は印加電圧に
依存している。従って、図7に示されているのは、流体
の温度と発熱体がダイヤモンド薄膜に供給する熱量との
関係であると見ることもできる。
【0044】以上のことより以下の知見が得られる。
薄膜に対するパルス状の加熱に対する薄膜の応答特性
を温度に依らないものとするためには、ある特定の温度
に1対1で対応した熱量を前記パルス加熱の際に与えな
ければならない」また言い換えるならば、「温度に依存
せずに流量計測を行うには、ある特定の温度に1対1で
対応した熱量(薄膜に供給する熱量)が必要とされる」
【0045】上記知見における1対1の対応関係、さら
には所定の関係は以下のようにして得ることができる。 (1)当該薄膜に接する流体の流量を一定とする。 (2)流体の温度を所定の温度とし、その温度におい
て、ダイヤモンド薄膜にパルス状の加熱を行い、その際
の応答特性を計測する。この際、パルス状の加熱に従っ
薄膜に供給される熱量と応答特性との関係を調べてお
く。 (3)上記(2)の動作は、流体の温度を変えて各温度
において行う。
【0046】この結果、例えば図6のグラフで示す関係
が得られる。図6においては、パルス状の加熱に従って
薄膜に供給される熱量のパラメータとして、発熱体に供
給される電圧が用いられ、薄膜の応答特性として、応答
波形の面積を積算した値が用いられている。
【0047】(4)一定の応答が得られる条件で、温度
とパルス状の加熱に従って薄膜に供給される熱量との関
係を求める。この(4)の動作の具体的な例としては、
図6のグラフにおいて、応答特性が一定を示す直線(縦
軸5500を通る横軸に平行な直線)を引き、この直線
と各温度におけるヒータ電圧と出力(応答特性を定量的
に評価したもの)との関係を示した直線との交点を求
め、この交点の座標の横軸の値(ヒーター電圧)と流体
の各温度を示す温度計測センサーからの出力の値(Ref=
で示される値) との関係をプロットすることで、図7に
示す関係を得る作業を挙げることができる。
【0048】図7に示される関係は、一応計測範囲内に
おける任意の流量に対して有効である。ここで、図8〜
図10に示すシステムにおいて、温度計測センサー80
2は温度成分を計測し、流量計測センサー803は流量
成分と温度成分との両者を含んだものを計測するものと
理解することができる。
【0049】図7に示される関係は、温度計測センサー
802よる温度成分を用いることによって、流量計測セ
ンサーにおいて計測される計測値に温度成分が含まれな
いようにするために利用される。
【0050】以上においては、流量値を0として図6に
示すデータを得、さらに流量計測センサーからの出力を
図6に示すグラフにおいて、5500に固定することに
よって、図7に示す関係を得る場合を示した。しかし、
図6に示す関係を得る際に必要とされる一定なものとす
る流量値の値は、計測範囲内において任意に定めること
ができる。また、図7を得る場合に必要とされる流量計
測センサーからの出力(図6の縦軸に対応する)一定の
値も計測範囲内において得られる出力範囲内から任意に
選ぶことができる。
【0051】ここで、図7に示す関係を0ではない所定
の流量値で求めた場合を考える。この場合、図6の縦軸
の値はもっと小さいものになる。これは、ダイヤモンド
薄膜から奪われる熱量が大きくなるので、ダイヤモンド
薄膜の温度変化が小さくなるからである。即ち、図3に
示すような応答波形が小さくなるからである。
【0052】ここで、図6に示すグラフにおいて、縦軸
の特定の値の点を5500から5800にした場合を考
える。この場合、縦軸の5800の点を通る横軸に平行
な直線と各直線が交わる点の座標を基に、図7に示すよ
うなグラフが作成される。この場合図7に示されるよう
な直線は、その傾きは殆どかわらず、単に平行移動した
ものが得られる。
【0053】このように、図7に示されるグラフが平行
移動した場合、同じ温度であっても流量計測センサーの
発熱体から供給される熱量が異なることになるので、流
量計測値の絶対値は異なることになる。しかしながら、
計測値の相対的な関係は保たれる。
【0054】計測値の絶対値は、較正の段階で基準点を
適当に定めることにより、適時変更できるものであり、
重要な問題ではない。(例えばバイアス電圧の違いによ
っても計測値の絶対値は変化する)
【0055】流量計測において必要なのは、計測値の相
対的な関係である。換言すれば、流量と計測値との1対
1の関係である。
【0056】このように考えると、図6に示すような関
係を得る場合に必要とされる一定の流量は、計測範囲内
において任意に選べるものであり、また図7に示す関係
を得るために必要とされる流量計測センサーからの定ま
った出力の値も出力値の範囲内において任意であること
が理解される。
【0057】〔発明の構成について〕 以下において、各請求の範囲に対応した本発明の主要な
構成について説明を加える。
【0058】本明細書において開示する発明の基本的な
構成は、 (1)薄膜にパルス状の加熱を行った際における当該
の応答特性を当該薄膜の温度変化として検出する。 (2)上記パルス状の加熱に際して発熱体から発熱され
る熱量または当該薄膜に供給される熱量を被計測物質お
よび/または環境の温度に対応させて変化させ、このこ
とによりそれらの温度変化に影響されないで、上記加熱
に対しての当該薄膜の応答特性を得る。といった機能を
有する。
【0059】上記構成において、応答特性は、当該薄膜
が被計測物質から受ける熱的な影響を反映したものであ
る。熱的な影響とは、例えば、当該薄膜に接して流れる
流体の流量に依るものを挙げることができる。この場合
は、上記の応答特性を評価することで、流量を計測する
ことができる。このような流量計測は、流量が異なると
薄膜が受ける熱的な影響もまた異なるということを利用
したものであるといえる。
【0060】熱的な影響は、流体の種類が違う場合にお
いても異なる。従って、流体の違いも当該薄膜に対する
パルス加熱に際する応答特性から知ることができる。ま
た、被計測物質(流体に限らない)の熱伝導率や比熱の
違いによってもこの当該薄膜に対する熱的な影響は異な
り、やはり当該薄膜に対するパルス加熱に際する応答特
性からその違いを知ることができる。
【0061】上記(2)に示す機能は、温度変化を受け
ずに薄膜が受ける熱的な影響を計測するためのものであ
る。例えば、薄膜が受ける熱的な影響として、当該薄膜
に接して流れる流体の流量によるものを考えた場合、当
薄膜が受ける熱的な影響が、流量の変化によるもの
か、流体や環境の温度変化によるものかを区別する必要
がある。具体的には、温度変化に関係無く、流量のみに
関係した出力(応答)を得る必要がある。
【0062】そこで、本明細書において開示する発明に
おいては、流体および/または計測環境の温度に対応さ
せて、適切な熱量を当該薄膜に供給することにより、こ
の熱量の供給の際に、流体および/または計測環境の温
度に影響を受けない応答を得るものである。
【0063】本明細書において開示する発明における
としては、以下に示す条件を満たしていることが望ま
しい。厚さを無視した薄膜の加熱に対する応答時間(時
定数)は、下記〔数5〕で与えられる。
【0064】
【数5】
【0065】上記〔数5〕は、流体によって熱量を奪わ
れる薄膜の温度分布が定常状態になるまでの時間を評価
するパラメータ(τ)を与えるものである。上記〔数
5〕は、2次元モデルを基にして導かれたものであり、
薄膜の厚さはパラメータとして入っていない。また、そ
の答えが薄膜の応答時間を直接示すものでもない。しか
し、各種薄膜の加熱に対する相対的な応答時間を評価す
る指標として用いることができる。
【0066】上記〔数5〕を用いて各種薄膜の材料の加
熱に対する応答時間(τ)を求めた一覧表を〔表1〕に
示す。
【0067】
【表1】
【0068】〔表1〕に示す各種材料の物性値は、出来
る限り薄膜のものを用いた。しかし、c−BN(立
窒化硼素)のように、薄膜の物性値が不明なものは、理
論値またはバルク材料のものを用いてある。またその値
は基本的に室温におけるものを選んである。
【0069】〔表1〕を見ると、ダイヤモンド薄膜と立
方晶窒化ホウ素の時定数が桁違いに小さいことが分か
る。しかし、実測された多結晶の立方晶窒化ホウ素熱伝
導率は、600(W/mK)(人造ダイヤモンド技術ハ
ンドブック,サイエンスフォーラム)程度であり、この
場合、〔表1〕の時定数は0.5(ミリs)程度とな
る。また、気相合成されたダイヤモンド薄膜の熱伝導率
としては、1700(W/mK)(ダイヤモンド薄膜,
産業図書,犬塚著)という大きな値も報告されており、
このようなダイヤモンド薄膜を用いた場合、上記〔表
1〕の時定数はさらに小さなものとなる。
【0070】本明細書で開示する発明の基本的な構成
は、薄膜の加熱に対する応答特性を計測することにあ
る。従って、薄膜の熱的な応答特性の速さ、換言すれ
ば、薄膜の熱に対する反応の速さが重要な要素となる。
本発明者らの知見によれば、この薄膜の熱に対する反応
の速さは、前記〔数5〕によって評価される。
【0071】従って、〔表1〕に示す時定数τによっ
て、本明細書で開示する発明に用いられる薄膜を評価す
ることができる。例えば〔式5〕を用いて求められる時
定数が0.2以下であれば、本明細書で開示する流量計
測センサーと同程度またはそれ以上の特性を得ることが
見積もられる。
【0072】一般的には、〔数5〕で示されるτが1
(ミリs)以下の材料であれば、実用上十分な特性を有
する流量計測センサーを得ることができる。具体的に
は、ダイヤモンド薄膜、窒化アルミまたは立晶窒化硼
素の薄膜(現実には立晶窒化硼素の薄膜を得ることは
困難である)を利用することが好ましい。しかし、感度
の低下、ダイナミックレンジの低下、消費電力の増大、
計測間隔の増大といった問題を許容するのであれば、τ
が2(ミリs)以下の材料を用いることができる。
【0073】勿論、必要とする特性やコストの問題によ
っては、アルミナや窒化珪素を薄膜材料として利用で
きることはいうまでもない。また、当該薄膜を加熱する
ための発熱体や当該薄膜の温度を計測するための測温抵
抗体を当該薄膜に接して配置する関係から、当該薄膜
は、半導体または絶縁体であることが望ましい。
【0074】以上の議論より、パルス状の加熱に対する
薄膜の応答特性より、当該薄膜が周囲から受ける熱的影
響を計測する構成において、当該薄膜は、その寸法を1
mm角とした場合において、下記〔数5〕で示されるパ
ラメータが1(ミリs)以下であることが必要である。
との構成を有することが重要であるとの結論が導かれ
る。
【0075】
【数5】
【0076】即ち、薄膜に対し所定の熱量を供給する手
段と、該手段による所定の熱量の供給に従う当該薄膜
応答特性を計測する手段と、前記応答特性より、当該
が被計測物質から受ける熱的な影響を計測する手段
と、を有し、前記薄膜は、その熱伝導率KS とし、そ
の比熱をCS とし、その密度をρSとし、その寸法を
L=1mm角とした場合において、〔数5〕で示される
τが、1ミリ秒以下であることを特徴とする。という構
成を具備するのが重要であるとの認識が得られる。
【0077】またこの構成において、さらに特性の低下
を許容するならば、〔数5〕で示されるτが、2ミリ秒
以下である、という限定を行うことができる。
【0078】この〔数5〕を用いた薄膜の満足すべき規
定は、本明細書に開示される他の発明の構成に適用でき
ることはいうまでもない。
【0079】被計測物質としては、第一に流体を挙げる
ことができるが、固体材料であってもよい。例えば、被
計測物質が流体の場合は、流体の流量や流速の計測、流
体の種類の判別を行うことができる。これは、薄膜の加
熱に対する当該薄膜の温度変化の仕方(換言すれば応答
特性)が当該薄膜に接して流れる流体の流量や種類によ
って異なることを利用するものである。また、被計測物
質が固体である場合は、この固体の熱伝導率の違いや比
熱の違い、さらには熱容量の違いによって、薄膜の加熱
に対する当該薄膜の温度変化の仕方が異なるので、この
ことを利用して、固体材料の種類の判別やその大きさや
体積の違いを計測することができる。
【0080】薄膜を加熱する手段としては、当該薄膜
直接接して設けられた抵抗発熱体を用いることが一般的
であるが、当該薄膜を間接的に加熱したり、当該薄膜
体に通電しジュール加熱したり、光やレーザー光さらに
はマイクロ波で加熱することも考えられる。
【0081】当該薄膜の温度を計測する手段としては、
当該薄膜に接して設けられた測温抵抗体(例えば白金)
を利用することが一般的である。また、当該薄膜として
半導体を用い、その表面にイオン注入等で一導電型を有
する半導体層を形成することで、測温抵抗体としての機
能を有する層を当該薄膜中に形成した構成を利用するこ
ともできる。また、当該薄膜自身を測温抵抗体として利
用することもできる。例えば、気相合成時にB(ボロ
ン)を添加してP型を付与したダイヤモンド薄膜を当該
薄膜として用いれば、当該薄膜自身を測温抵抗体として
利用することができる。また薄膜が発する熱線を検出す
るような方法(例えばサーモグラフィー)も上記当該
の温度を計測する手段に含まれる。また測温抵抗体の
代わりに熱起電力素子(ゼーベック素子)を用いてもよ
い。
【0082】この当該薄膜の温度を計測する手段は、当
薄膜の温度のみを検出するものであることが重要であ
る。例えば、当該薄膜としてダイヤンモンド薄膜を用
い、このダイヤモンド薄膜をシリコン基板上に配置し、
しかも測温抵抗体をダイヤモンド薄膜とシリコン基板と
の間に設けた構造を考える。この場合、測温抵抗体は、
ダイヤモンド薄膜とシリコン基板の両方の温度を同時に
計測することになる。シリコン基板の熱伝導率は148
(Wm−1K−1)であり、ダイヤモンド薄膜の熱伝導
率約1000(Wm−1K−1)またはそれ以上と比較
するとその値はかなり小さい。従って、この場合測温抵
抗体が検出するパルス状の加熱に対する応答特性はシリ
コンの影響を受けた鈍いものとなり、良好な特性を得る
ことはできない。
【0083】また、当該薄膜を加熱する手段として、当
薄膜に直接接して設けられた抵抗発熱体を用い、当該
薄膜の温度を計測する手段として測温抵抗体を用いた場
合、この発熱体と測温抵抗体とが当該薄膜を介してのみ
熱的に結合していることが必要となる。
【0084】これは、当該薄膜の応答に関係なく、発熱
体からの熱量を測温抵抗体が検出してしまうと、検出さ
れる応答特性に当該薄膜の応答特性以外の要素が含まれ
てしまうからである。
【0085】また、当該薄膜は被計測物質である物質以
外の材料とは極力接触させず、熱的に浮かした状態で保
持することが必要である。これもパルス状の加熱に際し
て、当該薄膜以外の応答特性が計測結果に影響すること
を防ぐためである。例えば、当該薄膜材料としてダイ
ヤモンド薄膜を用い、被計測物質を一定流量の流体とし
た場合、このダイヤモンド薄膜を保持する際の熱的な絶
縁性を高めれば高める程、ダイヤモンド薄膜のパルス状
の加熱に対する応答特性は流体の流量に依存したものと
なることが確かめられている。
【0086】また、被計測物質および/または環境の温
度というのは、以下の3つの場合を意味する。なお、環
境とは計測環境のことである。 (1)被計測物質と環境の温度の両方を問題とする場合 (2)被計測物質の温度を問題とする場合 (3)環境の温度を問題とする場合
【0087】一般的には、環境の温度が変化することに
よって、被計測物質の温度も変化するので、(1)の状
態において計測を行うが普通であると考えられる。
【0088】「被計測物質および/または環境の温度
(以下単に温度という)に対応した熱量を前記加熱手段
に発生させる」という構成は、前述した「温度に依存せ
ずに流量計測を行うには、ある特定の温度に1対1で対
応した熱量(薄膜に供給する熱量)が必要とされる」と
いう、知見に基づくものである。
【0089】上記構成の実施形態としては、図7に示す
相関関係を用いて、流量計測センサーの発熱体からパル
ス状の加熱を行う場合を挙げることができる。この場合
は、温度に対応した所定の熱量を当該薄膜(図7の場合
はダイヤモンド薄膜)に供給するために、発熱体に加え
る電圧をパラメータとして制御したものと理解すること
ができる。
【0090】この構成の具体的な例としては、流体や環
境の温度を計測する温度センサー、流体の流量を計測す
るための流量センサーと、温度センサーからの出力と半
導体メモリーに記憶された相関関係とに基づいて、必要
とされる電圧を導き出すCPUと、該CPUからの出力
に基づいて流量センサーの発熱体に電圧を加えるA/D
コンバータと、を有した構成を挙げることができる。
【0091】以上のような構成をとることによって、例
えば薄膜に接して流れる流体の流量を計測する場合に、
温度に依存せず、流量に依存した計測値を得ることがで
きる。即ち、パルス状の加熱に対する薄膜の応答特性が
流体や環境の温度に依存しないようにすることで、この
応答特性を流量のみに依存したものとすることができ
る。
【0092】他の発明の主要な構成は、薄膜を加熱する
手段と、当該薄膜の温度を計測する手段と、流体および
/または環境の温度に対応した熱量を前記加熱する手段
に発生させる手段と、を有することを特徴とする。
【0093】上記構成を具備した具体的な例を図10に
示す。図10には、薄膜の材料であるダイヤモンド薄膜
102と、このダイヤモンド薄膜102を加熱する手段
である白金薄膜よりなる発熱体86と、流体および/ま
たは環境の温度に対応した熱量を前記発熱体86に発生
させる手段であるCPU88とD/Aコンバータ89と
を備えている。CPU88は、流体および/または環境
の温度に対応した熱量を所定の関係に従って算出する機
能を有している。そしてこの算出データに基づいてD/
Aコンバータ89から発熱体86に所定の電圧で電圧が
印加され、上記算出データに従った熱量をダイヤモンド
薄膜102に供給することになる。
【0094】流体および/または環境の温度に対応した
熱量を前記加熱する手段に発生させる手段としては、流
体および/または環境の温度に対応した熱量を算出する
ための演算機能(CPU88が有している)と、該演算
結果に基づいて発熱体を駆動する機能(D/Aコンバー
タ89が有している)とが必要とされる。
【0095】他の発明の主要な構成は、薄膜の温度を計
測する手段と、流体および/または環境の温度に対応し
た熱量を前記薄膜に供給する手段と、を有することを特
徴とする。
【0096】上記構成を具備した具体的な例を図10に
示す。図10に示す構成は、薄膜であるダイヤモンド薄
膜102の温度を計測する手段である白金薄膜からなる
測温抵抗体84と、流体および/または環境の温度に対
応した熱量を前記薄膜に供給する手段である発熱体86
とを備えている。
【0097】他の発明の主要な構成は、流体および/ま
たは環境の温度に対応した熱量で薄膜を加熱する手段
と、前記加熱に対する当該薄膜の応答を計測する手段
と、を有することを特徴とする。
【0098】 上記構成を具備した具体的な例を図10
に示す。図10に示す構成は、流体および/または環境
の温度に対応した熱量で薄膜を加熱する手段である発熱
体86と、加熱に対するダイヤモンド薄膜102の温度
変化を検出する測温抵抗体84と、その出力を増幅する
アンプ87と、該アンプからの出力をA/D変換する
/Dコンバータ804と、A/Dコンバータ804から
の出力を受けて各種演算や各構成要素に指令を与える機
能を有するCPU88とを有している。
【0099】 加熱に対する当該薄膜の応答特性を計測
する手段は、測温抵抗体84と、その出力を増幅するア
ンプ87と、該アンプからの出力をA/D変換するA/
コンバータ804と、A/Dコンバータ804からの
出力を受けて各種演算や各構成要素に指令を与える機能
を有するCPU88とで構成される。応答特性は、CP
U88において、所定の演算処理を行うことによって計
測される。
【0100】上記構成において、加熱に対する当該薄膜
の応答を計測する手段では、パルス状の加熱前に当該
の温度に対応するパラメータを積算する動作と、パル
ス状の加熱以後に当該薄膜の温度に対応するパラメータ
を積算する動作と、前記2つの積算値の差を算出する動
作と、が行われる。
【0101】 当該薄膜の温度に対応するパラメータと
しては、例えば、測温抵抗体の抵抗値、ブリッジからの
出力として現れる測温抵抗体84からの出力、あるいは
アンプ87とA/Dコンバータ804を介してCPU8
8に入力される信号、または当該薄膜の温度を計測する
他の温度計測手段の出力、を挙げることができる。
【0102】発熱体86は、CPU88からの指令によ
り流体および/または環境の温度に対応した熱量を発生
する。ダイヤモンド薄膜102の発熱体86からの加熱
に対する応答特性は、ダイヤモンド薄膜102の温度変
化として、測温抵抗体84によって検出され、その抵抗
変化に起因する電圧変化をCPU88において演算処理
することによって評価される。
【0103】薄膜のパルス状の加熱に対する応答特性を
計測するには、加熱に対する当該薄膜の応答を計測する
手段において、 (1)パルス状の加熱前に当該薄膜の温度に対応するパ
ラメータを積算する動作と、 (2)パルス状の加熱以後に当該薄膜の温度に対応する
パラメータを積算する動作と、 (3)前記2つの積算値の差を算出する動作と、を行う
ことが重要である。
【0104】薄膜の温度は、外部からの加熱を行わなく
ても少しずつ変化している。従って、加熱に対する薄膜
の温度変化(応答特性)のみを正確に評価するには、応
答が始まる直前における計測の基準点を確定する必要が
ある。上記(1)の動作を行うことで、まずこの基準点
を確定することができる。そして、上記(3)の動作を
行うことで、(1)で確定した基準点の絶対値に関係な
く、パルス状の加熱に従う応答のみ、即ちパルス状の加
熱に従って短時間に変化する薄膜の温度変化のみを評価
することができる。
【0105】当該薄膜の温度に対応するパラメータとし
ては、当該薄膜に接して設けられた測温抵抗体からの電
圧や、当該薄膜に接して設けられ、当該薄膜の温度を出
力する温度計測機能を有する手段(例えば熱起電力素
子)の出力を挙げることができる。
【0106】他の発明の主要な構成は、薄膜に熱量を供
給する加熱手段と、該加熱手段からのパルス状の加熱に
対する当該薄膜の応答を計測する手段と、を有した計測
装置であって、被計測物質および/または環境の温度変
化に従って、前記パルス状の加熱に対する薄膜の応答特
性が変化しないように、前記加熱手段から当該薄膜に供
給される熱量を変化させる手段を有することを特徴とす
る。
【0107】上記構成を具備した構成を図10に示す。
図10に示す構成は、薄膜であるダイヤモンド薄膜10
2に熱量を供給する加熱手段である発熱体86と、該発
熱体86からのパルス状の加熱に対するダイヤモンド薄
膜102の応答を計測する手段である測温抵抗体84
と、前記応答を定量的に評価するCPU88とを備えて
いる。
【0108】被計測物質および/または環境の温度変化
に従って、前記パルス状の加熱に対する薄膜の応答特性
が変化しないように、前記加熱手段から当該薄膜に供給
される熱量を変化させる手段は、CPU88とD/Aコ
ンバータ89とで構成される。即ち、CPU88におい
て、被計測物質および/または環境の温度変化に従っ
て、前記パルス状の加熱に対する薄膜の応答特性が変化
しない熱量に対応したパラメータ(例えば発熱体86へ
の供給電圧や加熱時間)を算出し、該算出結果に基づい
てD/Aコンバータ89より発熱86が駆動され、所定
の熱量を発熱体86はダイヤモンド薄膜102に供給す
ることになる。
【0109】他の発明の主要な構成は、温度計測センサ
ーと、流体計測センサーと、演算処理手段と、を有した
流量または流速を計測する計測装置であって、前記流体
計測センサーは、薄膜を加熱する手段と、当該薄膜の温
度を計測する手段と、を有し、前記演算処理手段は、所
定の関係に従って前記温度計測センサーからの出力から
前記流体計測センサーの加熱手段から発せられる熱量を
制御するパラメータを決定する機能を有し、前記所定の
関係は、流量一定かつ流体計測センサーからの出力一定
または概略一定または一定の範囲内の条件における温度
計測センサーからの出力と流体計測センサーの発熱体か
ら供給される熱量を示すパラメータとの関係を示すもの
であることを特徴とする。
【0110】上記構成を具備した構成を図10に示す。
図10に示す構成は、温度計測センサー802と流体計
測センサー803(流量計測を行う場合は流量計測セン
サー)、演算処理手段であるCPU88を有している。
また、流体計測センサー803は、薄膜であるダイヤモ
ンド薄膜102を加熱する手段である発熱体86、ダイ
ヤモンド薄膜の温度を計測する手段である測温抵抗体8
4を備えている。
【0111】演算処理手段であるCPU88では、図7
で示されるような温度計測センサー802からの出力
(図7の横軸)と発熱体86から発せられる熱量を制御
するパラメータである発熱体への供給電圧(図7の縦
軸)との所定の関係に従って、発熱体86への供給電圧
(加熱手段から発せられる熱量を制御するパラメータ)
を決定し、該決定に従ってD/Aコンバータ89より発
熱体86に対して所定の電圧が供給される。
【0112】この図7に示すような所定の関係は、図6
に示す流体計測センサー803からの出力一定の条件
(例えば図6に示すように縦軸における5500の値に
出力を固定した条件)における温度計測センサーからの
出力(図6のRefで示される)と発熱体86からダイ
ヤモンド薄膜102に供給される熱量を示すパラメータ
である発熱体86に供給される電圧(図6の横軸)との
関係を示すものである。この出力一定の条件は、許容さ
れる計測精度に鑑み、所定の範囲内のものとすることが
できる。
【0113】他の発明の主要な構成は、薄膜に対して所
定の熱量を供給した際における当該薄膜の応答特性か
ら、当該薄膜が被計測物資から受ける熱的な影響を計測
する計測方法であって、被計測パラメータ一定かつ前記
応答特性一定の条件における、被計測物質および/また
は環境の温度を示すパラメータと、前記所定の熱量と、
の関係に基づいて、被計測物質および/または環境の温
度より前記所定の熱量を決定することを特徴とする。
【0114】上記構成において、薄膜に対して所定の熱
量を供給した際における当該薄膜の応答特性とは、例え
ばダヤモンド薄膜の表面に形成された発熱体からのパル
ス状の加熱に対するダイヤモンド薄膜の急激な温度変
化、即ちパルス状の加熱に従って、急激にダイヤモンド
薄膜の温度が上昇し、その後冷却されるプロセスを挙げ
ることができる。
【0115】当該薄膜が被計測物資から受ける熱的な影
響を計測するというのは、例えばダイヤモンド薄膜がそ
の表面に接して流れる流体(例えば空気の流れ)によっ
て熱を奪われる場合において、その熱奪われ方を計測す
る例を挙げることができる。この場合、この熱の奪われ
方を定量的に評価することで、当該流体の流量を知るこ
とができる。また、ダイヤモンド薄膜がその表面に接す
る気体の種類によって、当該薄膜が当該気体から熱を奪
われる状態を計測する例を挙げることができる。この場
合、気体の種類によって当該薄膜からの熱の奪われ方が
異なるので、この熱的な影響の違いを評価することで、
当該気体の種類を識別することができる。
【0116】被計測パラメータ一定かつ前記応答特性一
定の条件というのは、例えば流量を計測する場合であれ
ば流量一定(流量0も含む)という条件である。この一
定の条件は厳密なものとしなくても、必要とされる計測
精度に鑑み一定の範囲内のものとすることができる。
【0117】被計測物質および/または環境の温度を示
すパラメータと前記所定の熱量との関係としては、例え
ば、図10の温度計測センサー802からの出力とダイ
ヤモンド薄膜102に発熱体86から供給される所定の
熱量との関係を挙げることができる。例えば図7に示さ
れるのは、図10の温度計測センサー802からの出力
(横軸で示され、被計測物質および/または環境の温度
を示すパラメータ)と流体計測センサー803の発熱体
86に供給する電圧(縦軸で示され、発熱体86に供給
する熱量に対応するパラメータ)との関係である。
【0118】他の発明の主要な構成は、流体および/ま
たは環境の温度に対応した熱量で薄膜を加熱し、流体の
流量または流速に対応した当該薄膜の応答を得ることを
特徴とする。
【0119】上記構成は、薄膜に供給する熱量を流体お
よび/または環境の温度に対応させて変化させ、この熱
量の供給に従う薄膜の応答特性を流体および/または環
境の温度に関係しないものとするもの又はその影響を大
きく低減させるものである。例えば、図10のダイヤモ
ンド薄膜102上に形成された発熱体86に対して、図
7の縦軸に示す温度計測センサーからの出力(流体およ
び/または環境の温度に対応する)に対応した電圧(縦
軸で示される)を供給することにより、流体および/ま
たは環境の温度に依存せず、ダイヤモンド薄膜102に
接して流れる流体の流量または流速に対応した応答を得
ることができる。即ち、発熱体86からの加熱に対する
ダイヤモンド薄膜102の温度変化の仕方をダイヤモン
ド薄膜102に接して流れる流体の流量または流速に対
応したものとすることができる。
【0120】他の発明の主要な構成は、パルス状の加熱
に際する薄膜の応答特性から当該薄膜に接して流れる流
体の流量または流速を算出する計測方法であって、所定
の相関関係に従いパルス状の加熱の熱量を流体の温度お
よび/または環境の温度に対応させて変化させることを
特徴とし、さらに上記構成において、所定の関数関係
は、同一流量かつ同一応答特性の条件における流体の温
度および/または環境の温度に対応するパラメータとパ
ルス状の加熱によって当該薄膜に供給される熱量を制御
するパラメータとの関係を規定したものであることを特
徴とする。
【0121】上記構成において、同一流量かつ同一応答
特性の条件というのは、流量一定の条件において、流体
に接する薄膜が示すパルス状の加熱に対する応答特性が
一定であるという条件である。このような状況として
は、図6のグラフで縦軸の5500の点を通る横軸に平
行な線が意味するところを挙げることができる。図6の
グラフは、流量一定(流量0)の条件で得られたもので
ある。また縦軸の5500の点を通る横軸に平行な直線
は、流量一定の流体に接しているセンサー(例えば図1
0の803に相当する)からの出力が一定の条件を示
す。
【0122】他の発明の主要な構成は、その表面に少な
くとも一つの測温抵抗体と少なくとも一つの発熱体とが
配置された第1の薄膜と、その表面に少なくとも一つの
測温抵抗体が配置された第2の薄膜と、を有し、前記第
2の薄膜表面に配置された測温抵抗体の抵抗変化を基
に、前記第1の薄膜の発熱体に供給する電圧を制御する
ことを特徴とする。
【0123】上記構成の実施態様例を図14に示す。図
14において、流量計測センサー803は、ダイヤモン
ド薄膜表面に測温抵抗体84と発熱体86とを配置した
構成を有している。また、温度計測センサー802は、
ダイヤモンド薄膜表面に測温抵抗体83と85(ここで
85は発熱体としてではなく、測温抵抗体として機能す
る)を配置した構成を有している。ここで、流量計測セ
ンサー803を構成するダイヤモンド薄膜が、第1の
に相当し、温度計測センサー802を構成するダイヤ
モンド薄膜が第2の薄膜に相当する。
【0124】図14に示す構成においては、測温抵抗体
85の抵抗変化をブリッジ2の出力としてアンプ144
に送り込み、このアンプ144からの出力で発熱体86
に供給する電圧を制御する構成となっている。測温抵抗
体85の抵抗変化は、流体および/または計測環境の温
度変化に対応するものである。この構成は、測温抵抗体
85の抵抗変化に基づいて、発熱体86から流量計測セ
ンサーを構成するダイヤモンド薄膜に供給される熱量を
変化させるものであるといえる。
【0125】上記構成の他の実施態様を図18に示す。
図18において、流量計測センサー803は、ダイヤモ
ンド薄膜表面に測温抵抗体84と発熱体86とを配置し
た構成を有している。また、温度計測センサー181
は、ダイヤモンド薄膜表面に測温抵抗体182を配置し
た構成を有している。即ち、流量計測センサー803を
構成するダイヤモンド薄膜が、第1の薄膜に相当し、温
度計測センサー181を構成するダイヤモンド薄膜が第
2の薄膜に相当する。
【0126】図18に示す構成においては、測温抵抗体
182の抵抗変化をアンプ185で電圧増幅し、このア
ンプ185からの出力で発熱体86に供給する電圧を制
御する構成となっている。測温抵抗体182の抵抗変化
は、流体および/または計測環境の温度変化に対応する
ものである。この構成は、測温抵抗体182の抵抗変化
に基づいて、発熱体86から流量計測センサー803を
構成するダイヤモンド薄膜に供給される熱量を変化させ
るものであるといえる。
【0127】
【作用】薄膜が被計測物から受ける熱的な影響を評価す
る場合において、被計測物質および/または環境の温度
に対応した熱量を前記加熱する手段に発生させることに
よって、被計測物質および/または環境の温度に依存し
ないで、被計測物質から受ける熱的な影響を評価するこ
とができる。
【0128】例えばダイヤモンド薄膜に接して流れる流
体の流量を計測する場合において、図7で示されるよう
に流体の温度に対応させて発熱体へ供給する電圧を変化
させることで、この発熱体による加熱に従うダイヤモン
ド薄膜の応答特性を流体の温度に依らない流体の流量に
依存したものとすることができる。そして、流体の温度
に左右されずに流体の流量を計測することができる。
【0129】
【実施例】〔実施例1〕 本実施例では、図1に示す流体計測装置の作製方法につ
いて説明する。図1に示す流体計測装置は、寸法が4m
m×4mmで厚さが15μmの多結晶ダイヤモンド薄膜
13の表面上に白金(Pt)の薄膜よりなる発熱体11と測
温抵抗体として機能する抵抗体12、さらにはそれらの
電極10、15が設けられている。以下に図1に示す流
体計測装置の作製工程について説明する。まず、直径4
インチの珪素基板を用意する。そして、この珪素基板の
被形成面表面にダイヤモンドパウダーによる傷つけ処理
を行う。このダイヤモンド薄膜上に有磁場マイクロ波C
VD法によりダイヤモンド薄膜を5μmの厚さに気相合
成する。この有磁場マイクロ波CVD法は、強力な磁場
と2.45GHzのマイクロ波を用いて、高密度プラズ
マを形成し、気相合成を行うものである。
【0130】成膜条件を以下に示す。 基板温度 800度 反応圧力 0.25Torr マイクロ波電力 4KW 反応ガス CH3 OH:H2 =1:4 成膜時間 10時間 膜厚 15μm 珪素基板は875ガウスの磁場強度の位置に配置し、成
膜を行った。上記成膜条件で得られたダイヤモンド薄膜
は、多結晶ダイヤモンド薄膜であり、基板から垂直方向
に柱上に結晶成長した構造を有していた。ここで得られ
たダイヤモンド薄膜の熱伝導率は、その結晶性の分析か
ら約1000(W/mK)であると見積もられる。
【0131】成膜方法は、上記方法に限定されるもので
はなく、他の気相合成法を用いてもよい。また天然ダイ
ヤモンドや高圧合成したダイヤモンドを用いてもよい。
またダイヤモンド薄膜中に不純物をドーピングし、熱特
性や電気特性を制御してもよい。また結晶構造も多結晶
に限定されるものではなく、単結晶ダイヤモンド薄膜を
用いてもよい。
【0132】ダイヤモンド薄膜としては、不純物の含有
量の少ない出来うるかぎり高い熱伝導率を有するものが
好ましい。またダイヤモンド薄膜の厚さは、生産性を考
慮するならば、機械的強度の許す限り薄い方がよい。
【0133】上記珪素基板上に成膜されたダイヤモンド
薄膜は、珪素基板より剥離することで、ダイヤモンド薄
膜単体として得ることができる。この工程は、機械的に
剥離させるか、フッ酸等によって珪素基板を溶かすこと
によって容易に行われる。
【0134】このようにして得られたダイヤモンド薄膜
を4mm角に裁断する。そして、スパッタリングによっ
て、このダイヤモンド薄膜上に白金の薄膜を800〜1
000・の厚さに成膜する。スパッタリングは、白金タ
ーゲットを用い、スパッタリングガスである空気を1K
eV程度に加速して行う。こうしてダイヤモンド薄膜上
に形成された白金薄膜のシート抵抗は、100Ω/□程
度である。
【0135】そして、パターニングを行うことによっ
て、図1に示すように、ダイヤモンド薄膜13上に発熱
体11と測温抵抗体12とを形成する。具体的には、発
熱体11の抵抗が100Ω程度、測温抵抗体12の抵抗
が1KΩ程度となるようにその面積を調節し、発熱体1
1と測温抵抗体12とを作り分ける。この作り分けは、
発熱体11と測温抵抗体12との膜厚を変えることによ
って行ってもよい。そしてテフロンの基体18にダイヤ
モンド薄膜を保持させ、さらに電極10、15を形成
し、10μmφの金ワイヤ17によってボンディングを
行う。こうして、図1に示すような流体計測装置を完成
する。
【0136】なお、測温抵抗体12は、温度に敏感に反
応してその抵抗が変化する機能を有するので、サーミス
タ機能を有する層ということもできる。
【0137】また、測温抵抗体の数や発熱体の数、さら
にはその配置方法を変更する場合でも、上記の作製工程
を基本とすればよい。また、ダイヤモンド薄膜の大きさ
をさらに小さくしてもよい。この場合、消費電力の低減
や感度の向上を期待することができる。
【0138】この図1に示す白金薄膜からなる測温抵抗
体12のサーミスタパラメータは約200ppmであっ
た。これは1度の温度変化に対して、0.02%の抵抗
変化に相当する。一般に、白金を用いた測温抵抗体のサ
ーミスタパラメータは100〜3000ppmのものが
得られるので、作製条件の適正化を行えば、さらに高感
度の測温抵抗体を得ることができる。
【0139】図1に示す構成においては、ダイヤモンド
薄膜13の持つ熱容量に比較して、白金の薄膜よりなる
測温抵抗体12の熱容量が数百分の1以下となってい
る。従って、ダイヤモンド薄膜の熱容量に比較すれば、
測温抵抗体の熱容量はほとんど無視することができ、ダ
イヤモンド薄膜の温度変化を測温抵抗体12は極めて高
速に、しかも高感度に検出することができる。測温抵抗
体の熱容量がダイヤモンド薄膜の熱容量に比較して無視
できない場合は、測温抵抗体自身の温度変化が影響し
て、ダイヤモンド薄膜の温度変化を正確に検出できなく
なってしまう。具体的には、測温抵抗体の熱容量に比較
して、ダイヤモンド薄膜の熱容量が100倍以上あるこ
とが必要である。
【0140】図1に示す流体計測装置は、 (1)流体の検出(例えば、流れているかどうかの識
別) (2)流体の流量(流速)の計測 (3)流体の種類の判別 (4)流体中の含有物の有無や濃度の計測(例えば湿度
の計測) (5)複数の流体からなる流体の混合比の計測 等々に用いることができる。
【0141】上記(3)〜(5)の使用法は、流体の熱
伝導率または比熱、またはその両方の違いによって、ダ
イヤモンド薄膜から奪われていく熱量の奪われ方が異な
ることを利用したものである。
【0142】また、上記(3)〜(5)の使用は、流体
の流れを一定にして動作させる必要がある。例えば、流
量0の状態で動作させる必要がある。
【0143】図1に示す流量計測装置は、図1の19で
示すように、その裏面側(回路の形成されていない面
側)を流体が流れる構成とすることができる。この場
合、回路は形成された面側を流体に曝さないようにする
ことで、回路が流体によって腐蝕され、その特性が変化
してしまうことを防ぐことができる。また、回路が形成
された面側、あるいは両面が流体に触れる構成とするこ
ともできる。
【0144】〔実施例2〕 本発明を具体化した実施例の構成を図8〜図10に示
す。図8はブロック図を示し、図9はパイプ91へのセ
ンサー803、803の配置の状態を示し、図10は、
配線の様子を示す。これらの図面は同一のものを異なる
角度(見地)から示したものである。図8〜図10にお
いて、802と803とが、図1に示すような構成を有
している。本実施例においては、それぞれのセンサー8
02と803とは同一の構造と大きさ、そして同一の特
性を有している。
【0145】図8〜図10において、802は、流体の
温度を計測するためのセンサー素子で、温度計測センサ
ーとして機能する。図1に示すような構成を流量計測セ
ンサーとしても、また温度計測センサーとしても利用で
きるのは以下の理由による。
【0146】図6において、ヒーター電圧(発熱体に供
給する電圧)を一定とした場合を考える。図6に示され
ているのは、流量を一定(図6の場合は流量0)として
流体の温度のみを変化させた場合におけるヒーターの電
圧とセンサーの出力との関係を示したものである。ここ
でヒーター電圧を一定とすると、流体の各温度に対応し
て、出力が得られることが分かる。即ち、流体の流量を
一定に保ち、発熱体に供給する電圧を一定とすれば、流
体の温度に対応した出力が得られることになる。この出
力は、図6に示すグラフにおいて、縦軸に平行な直線を
引き、この直線とプロット点とを結んだ各直線との交点
の縦軸に対応する値で与えられる。
【0147】図8〜図10の802で示されるセンサー
は、流量を検出しないように配置することで、温度セン
サーとして機能するように工夫されている。一方、80
3で示されるセンサーは、流量計測センサーとして機能
する。この流量計測センサー803は流体の流れに直接
接するように配置されている。85が温度計測センサー
(REFERENCE センサーという)の発熱体であり。86が
流量計測センサー803の発熱体である。また、83が
温度計測センサー802の測温抵抗体であり、84が流
量計測センサー803の測温抵抗体である。
【0148】この二つのセンサー802と803とは、
抵抗81、82とでブリッジ回路を構成している。な
お、実際の構成においては、図10に示すように一方の
抵抗に並列に可変抵抗を接続し、オフセット調整を行
う。
【0149】このブリッジ回路からの出力は、アンプ8
7を介してA/Dコンバータ804に入力される。A/
Dコンバータからの出力は、CPU88に入力され、こ
こで所定の演算が行われる。本実施例で用いたCPU
は、1チップ内にメモリーも備えたものであり、このメ
モリーの中に図7で示される関係に基づいた測温抵抗体
83からの出力から発熱体86に供給する電圧を決定す
る手順が記憶されている。本実施例においては、このC
PU88が演算処理を行う手段となる。
【0150】そして、D/Aコンバータ801からの出
力が、流量を示すアウトプットとなる。他方D/Aコン
バータ89は、温度計測用センサー802の発熱体85
と流量計測用センサー803の発熱体86とに所定のタ
イミングでパルス電圧を加える機能を有している。
【0151】 図9、図10は、温度計測センサー80
2と流量計測センサー803とが実際に配置されている
状態を示したものである。図9、図10において、91
は流体90が流れるパイプである。パイプ91は適当な
材料(例えばプラスチックや金属)によって構成され
る。パイプ91の一部はくり抜かれており、その部分に
テフロン(登録商標)の基体92がはめ込まれている。
基体92はテフロン(登録商標)やエポキシ樹脂等のダ
イヤモンドに比較して熱的に絶縁物と見なせる材料で構
成されていることが重要である。
【0152】図9に示されるように、この基体92の一
部もくり抜かれており、この部分にダイヤモンド薄膜表
面に白金よりなる発熱体と測温抵抗体とを有した流量計
測用のセンサー803が組み込まれている。このような
構成を採ることによって、ダイヤモンド薄膜を熱的に絶
縁させて保持させることができ、計測精度を高めること
ができる。なお図9においては、温度計測センサー80
2と流量計測センサー803の細目は示されていない
が、図10に示すように実際には、ダイヤモンド薄膜1
01上や102上に発熱体85、86、測温抵抗体8
3、84が形成されている。(図1参照)
【0153】また、Oリング97を介してプラスチック
製の平板96が配置され、空間98を外部から遮断して
いる。一方、基体92にはスリットまたは開孔95が形
成されており、流体90の一部が、平板96とOリング
とによって形成される空間に流入するように構成されて
いる。98で示される空間は、外部と通じていてもよい
が、流体の圧力が高い場合は、流体がその部分から外部
に漏れることになるので、パイプ91の内部のみと通じ
ていることが望ましい。
【0154】また、図10には示されていないが、温度
計測センサー802もテフロンやエポキシ樹脂等の熱的
な絶縁物より成る基体94によって熱的に浮かして保持
されている。図9に示すような構成を採用した場合、温
度センサー802に接する流体は、ほとんど流速0の状
態、あるいは一定と見なしてよい流速となる。従って、
温度計測センサーのからの出力は、ほぼ流体の温度に依
存するものと見なすことができる。
【0155】また、流体90の流れる向きは、図と反対
の方向であっても計測値に何ら影響を与えるものでない
ことが判明している。
【0156】以上の構成を備えた具体的な流量計測装置
の外見を図13に示す。図13に示す流量計測装置は、
長手方向の長さが17cm、幅が14cm、高さが7c
m程の立方体であり、内部に流体の流れる内径1cmの
プラスチックのパイプ91、A/DコンバータやCP
U、さらにはD/Aコンバータ等の回路が配置された基
板133、計測値を表示する液晶ディスプレイ135、
流体が流れるパイプを接続するためのコネクタ136と
137、電池138、図9に示される構成を有する13
1で示される部分を備えている。また、図示されていな
いが、計測データを外部に出力する端子、外部電源端子
を備えている。
【0157】〔基本的なセンサーの動作方法について〕 まず、図11を用いて基本的な動作方法を説明する。な
お図11に示されているのは、図8に示すシステムにお
けるアンプ87からの出力fの変化である。図8には、
温度計測センサー802の測温抵抗体83からの出力を
アンプ87でI/V変換し増幅した信号の波形111
と、流量計測センサー803の測温抵抗体84からの出
力をアンプ87でI/V変換し増幅した信号の波形11
2とが示されている。
【0158】以下に示す動作方法は、それぞれのセンサ
ーにおいて共通なものである。また〔発明に至る過程〕
の項で説明した流量計測センサー(図2にその構成を示
し、図3にその動作状態を、図4にその性能を示す)の
動作方法も以下に説明する手順に従って動作する。以下
においては温度計測センサー802を用いてこの基本的
な動作方法について説明する。
【0159】 (第1の動作)t0Rからt0R+Δt
0Rにおいて、A/Dコンバータ804からの出力をC
PU88において積算する。この計算は以下の計算式で
実行される。またこの積算値をS0Rとする。この動作
は、パルス状の加熱前に当該薄膜の温度に対応するパラ
メータ(この場合はアンプ87の出力f)を積算する動
作に相当する。
【0160】
【数1】
【0161】この第1の動作によって、温度センサー8
02で温度計測を行うに当たっての基準点を確定するこ
とができる。この動作は、ドリフトの無い正確な評価を
得るために極めて重要なものである。
【0162】(第2の動作) 発熱体85に一定電圧VR でΔt1Rの時間通電し、
温度計測センサー802を構成するダイヤモンド薄膜1
01に対してパルス状の加熱を行う。
【0163】第1の動作によって加熱されたダイヤモン
ド薄膜101の温度変化は、測温抵抗体83の抵抗値の
変化として出力される。例えば、アンプ87の出力fを
オシロスコープで観察すると、図11の101のような
波形が観察される。これは、ダイヤモンド薄膜101が
パルス状の加熱によって、急激に加熱され、そして冷却
されていく様子を示している。なお、計算によれば、ダ
イヤモンド薄膜101の上昇温度は20K程度である。
【0164】(第3の動作) ここで、出力fをt2Rからt2R+Δt2Rにおい
て、積算する。この積算は以下に示す計算式によってC
PU88において実行される。またその積算値をS2R
とする。なお、t1R<t2Rとする。これは、t1R
=t2Rとすると、出力にノイズが現れるからである。
この動作は、パルス状の加熱以後に当該 の温度に対
応するパラメータ(この場合はアンプ87の出力f)を
積算する動作に相当する。
【0165】
【数2】
【0166】(第4の動作) CPU88において、S0RとS2Rとの差を演算す
る。この演算は、図11の斜線103で示される面積を
求めることと等価である。この演算によって、ドリフト
成分に左右されないダイヤモンド薄膜の応答特性のみを
求めることができる。
【0167】具体的には、上記第4の演算は、(S0R
/Δt0R)−(S2R/Δt2R)、またを(Δt2
R/Δt0R)S0R−S2R、またはS0R−(Δt
0R/Δt2R)S2R、で行われる。勿論必要なの
は、S0RとS2Rとの差の絶対値であるから、差引す
る順序は上記記載と逆でもよい。
【0168】上記第4の動作によって求められる図11
の103で示される波形の斜線部分の面積は、ダイヤモ
ンド薄膜101が受ける熱的な影響を反映するものであ
り、例えばダイヤモンド薄膜101が接している流体の
温度やその流量に依存して変化する。
【0169】上記のようにS0RとS2Rとの差を求め
ることで、ダイヤモンド薄膜の応答特性を評価する方法
は重要である。このような動作を行うことで、出力にド
リフト成分が現れず、経時変化の無い正確な計測を行う
ことができる。
【0170】上記(第4の動作)は、パルス状の加熱前
に当該薄膜(101で示されるダイヤモンド薄膜)の温
度に対応するパラメータの積算値(即ち測温抵抗体83
からの出力の積算値)と、パルス状の加熱以後に当該
の温度に対応するパラメータの積算値との差を算出す
る動作に当たる。
【0171】〔予め行うセンサーの較正について〕 センサーを動作させる前に予め特定の流量において計測
を行い、図7に示す関係を求めておく必要がある。この
動作は以下のようにして行なわれる。この動作は、本実
施例の流量計測センサーを予め校正しておく作業に当た
る。なお、この作業は少なくとも図8〜図10の構成を
組んだ後に行う必要がある。
【0172】(1)センサーを実際に計測を行う流体が
満たされ、当該流体の温度を精密に変化させることので
きる雰囲気に配置する。例えば、窒素ガス流量を計測す
るのであれば、窒素ガスが満たされた恒温室にセンサー
を配置する。この状態で流量は0(一定の流量)であ
る。
【0173】(2)この状態において、前述の基本動作
の説明において説明した方法により、温度計測センサー
802を動作させる。この時の出力をR(T)とする。
このR(T)は、図11の波形101の面積103に対
応する。本実施例においては発熱体85に加える電圧を
VR =3.2Vとし、Δt1R=0.18秒とする。
【0174】(3)上記(2)の動作で得られる出力R
(T)が一定の条件において、流量値を何通りか変化さ
せて流量計測センサー803を動作させる。即ち、流体
の温度一定の条件において、流量計測センサー803を
動作させ、所定の複数の流量を計測する。この流量計測
センサー803の動作方法も前述した動作方法に従う。
【0175】この動作の結果、発熱体86に供給される
電圧(図6の横軸)と流量計測センサー803からの出
力(図6の縦軸)との関係が得られる。即ち、図6に示
すような1つの直線に乗るプロット点が得られる。な
お、図6に示すようなデータを得るために必要とされる
発熱体86に供給される電圧の幅は3.2±0.25V
程度である。
【0176】(4)上記(3)の動作を雰囲気の温度
(流体の温度)を変えて複数回行う。例えば、図6に示
す場合は、−20℃、0℃、20℃、25℃、40℃、
60℃と温度を設定して上記(3)の動作を行った例で
ある。なお、流量の計測は、必要とする計測範囲内にお
いて、なるべく多くの流量値を設定することが望まし
い。
【0177】(5)図6に示すような関係を得たら、流
体の温度(温度計測センサー802の出力)に関係無
く、流量計測センサーからの出力が所定の値となるため
に必要とされる発熱体86に供給する電圧を求める。こ
の作業は、図6に示すように所定の値(例えば縦軸55
00)の点を通る横軸に平行な直線を引き、各直線との
交点を求めることで行うことができる。なお、上記所定
の値は任意に定めることができる。こうして、図7の横
軸に示すような温度計測センサー802の出力(REFEREN
CE) で表記される)と、縦軸で示される流量計測センサ
ー803の発熱体86に供給する電圧との関係を得るこ
とができる。
【0178】この動作は、被計測パラメータ一定かつ応
答特性一定の条件における、被計測物質および/または
環境の温度を示すパラメータと、流量計測センサーの
に供給する所定の熱量と、の関係を求める作業である
といえる。
【0179】即ち、被計測パラメータが流量に対応し、
応答特性が流量計測センサーからの出力に対応し、被計
測物質および/または環境の温度を示すパラメータが温
度計測センサーからの出力に対応する。そして、流量計
測センサーの薄膜に供給する所定の熱量は、発熱体86
に供給する電圧によって決定される。
【0180】(6)上記の動作で得られた温度計測セン
サー802の出力(流体の温度に対応する)と発熱体8
6に供給する電圧との関係をCPU88内のメモリーに
記憶させる。または、この所定の関係に基づいた演算方
法をCPU88にプログラムする。
【0181】以上の動作で予め行う較正が終了する。そ
して、上記の較正によって得られた所定の関係に基づい
て、CPU88は、温度計測センサー802からの出力
に対応した電圧値を演算し、この結果に基づいてD/A
コンバータ89が流量計測センサー803の発熱体86
に所定の電圧を供給し、流量計測が行なわれる。
【0182】なお、上記の校正は、任意の流量で行って
よい。これは、図7に示す関係においてその直線の傾き
が重要であるからである。即ち、温度計測センサーから
の出力と流量計測センサーの発熱体に供給する電圧との
相対的な関係が重要であるからである。
【0183】また、D/Aコンバータ801からの出力
と被計測流体の流量との関係も予め求めておく必要があ
る。この関係は、図8には示されていないが、別に設け
られたメモリーに記憶させておけばよい。
【0184】〔流量計測時の動作について〕 以下において、実際に流量計測を行う場合における具体
的な動作方法について説明する。流量計測に当たって
は、前もって前述の較正作業が終了していることが前提
である。
【0185】基本的には、まず温度計測センサー802
を動作させて流体の温度に対応した計測値を得、この値
に基づいてCPU88において演算が行なわれる。そし
てこの演算によって、流量計測センサー803の発熱体
86に供給する電圧が決定され、流量計測が行なわれ
る。この一連の動作によって、アンプ87からの出力は
図11に示すような状態で変化する。このことは、図1
2に示すオシロスコープの写真からも確認される。図1
2に示すオシロスコープの写真は、アンプ87の出力を
モニターしたものである。
【0186】 (第1の動作)t0Rからt0R+Δt
0Rにおいて、A/Dコンバータ804からの出力をC
PU88において積算する。この計算は以下の計算式で
実行される。またこの積算値をS0Rとする。
【0187】
【数1】
【0188】この第1の動作によって、温度計測センサ
ー802で温度計測を行うに当たっての基準点を確定す
ることができる。この動作は、ドリフトの無い正確な評
価を得るために極めて重要なものである。
【0189】(第2の動作) 発熱体85に一定電圧VR (3.2V)でΔt1R
(0.18秒)の時間通電し、温度計測センサー802
を構成するダイヤモンド薄膜101に対してパルス状の
加熱を行う。
【0190】第1の動作によって加熱されたダイヤモン
ド薄膜の温度変化は、測温抵抗体83の抵抗値の変化と
して出力される。例えば、アンプ87の出力fをオシロ
スコープで観察すると、図11の111のような波形が
観察される。これは、ダイヤモンド薄膜がパルス状の加
熱によって、急激に加熱され、そして冷却されていく様
子を示している。なお、計算によれば、ダイヤモンド薄
膜101の上昇温度は20K程度である。
【0191】(第3の動作) ここで、測温抵抗体からの出力をt2Rからt2R+Δ
t2Rにおいて、積算する。この積算は以下に示す計算
式によってCPU88において実行される。またその積
算値をS2Rとする。なお、t1R<t2Rとする。こ
れは、t1R=t2Rとすると、出力にノイズが現れる
からである。
【0192】
【数2】
【0193】(第4の動作) CPU88において、S0RとS2Rとの差を演算す
る。この演算は、図11の斜線103で示される面積を
求めることと等価である。この演算によって、ドリフト
成分に左右されないダイヤモンド薄膜101の応答特性
のみを求めることができる。
【0194】具体的には、上記第4の演算は、(S0R
/Δt0R)−(S2R/Δt2R)、またを(Δt2
R/Δt0R)S0R−S2R、またはS0R−(Δt
0R/Δt2R)S2R、で行われる。勿論必要なの
は、S0RとS2Rとの差の絶対値であるから、差引す
る順序は上記記載と逆でもよい。
【0195】このようにして、温度計測センサー802
からは、流量に依存しないで流体の温度のみに依存した
出力が得られる。
【0196】(第5の動作) 上記第4の動作によって求めた流体の温度に関する出力
値に基づいてCPU88において所定の演算を行い、発
熱体86に供給すべき電圧を決定する。この演算は、予
め較正の段階で求めた図7に示すような関係に基づき、
CPU内にプログラムされた演算方法に基づいて行なわ
れる。本実施例においては、この発熱体86に供給され
る電圧は3.2±0.25V程度である。
【0197】以上の一連の動作は、4秒間で行なわれ
る。そして、次に以上の動作を踏まえて流量計測センサ
ーを動作させる。
【0198】(第6の動作) 流量センサー803において、測温抵抗体84からの出
力をt0sからt0s+Δt0sの間において積算す
る。この演算は、CPU88において下記の計算を行う
ことによって実行される。
【0199】
【数3】
【0200】この数3の計算結果をS02とする。この
第6の動作も、流量計測センサー803における計測動
作の基準点を確定するために行われる。
【0201】(第7の動作) 流量計測センサー803の発熱体86に、前記第5の動
作によって求めた電圧値でD/Aコンバータ89から電
圧をt1sからt1s+Δt1sの間供給し、発熱体
を、Δt1sの時間パルス加熱する。
【0202】この第7の動作に従ってダイヤモンド薄膜
の温度変化が生じ、それは測温抵抗体84の出力変化と
して計測される。この際、測温抵抗体84の出力をオシ
ロスコープによってモニターすると、図11の112で
示されるような波形が観察される。この波形は、発熱体
84からのパルス状の加熱に対する流量計測センサーを
構成するダイヤモンド薄膜102の応答特性を示すもの
である。
【0203】(第8の動作) t2sからt2s+Δt2sの間において、D/Aコン
バータ87の出力を下記の数4に従ってCPU88で計
算する。また、この数4の計算結果をS2Sとする。な
お、本実施例においては、Δt2R=Δt2Sとし、そ
の計測のタイミングも同じものとしたが、これらは同一
なものでなくてもよい。
【0204】
【数4】
【0205】上記数4において、t1s<t2sとす
る。これは、t1s=t2sとすると、測温抵抗体84
からの出力にノイズが含まれ、計測精度が低下するから
である。
【0206】(第9の動作) S0SとS2Sとの差を計算する。具体的には、(S0
S/Δt0S)−(S2S/Δt2S)、またを(Δt
2S/Δt0S)S0S−S2S、またはS0S−(Δ
t0S/Δt2S)S2S、で行われる。勿論必要なの
は、S0SとS2Sとの差の絶対値であるから、差引す
る順序は上記記載と逆でもよい。
【0207】この第9の動作によって、図11の104
で示される斜線部分の面積が求められる。この斜線部分
104の面積は、流体の温度や環境の温度に寄らないも
のであり、流体の流量または流速を正確に反映したもの
である。この第9の動作は、第4の動作に対応するもの
であるが、103で示される斜線部分の面積が流体の温
度や環境の温度に対応するものであるのに対し、104
で示される斜線部分の面積が温度には依存せず、流体の
流量や流速に対応するものである点において、その意味
するところが異なる。
【0208】(第10の動作) CPU88において、上記第9の動作結果から流量また
は流速を算出し、D/Aコンバータ801より流量また
は流速に対応した値を出力する。
【0209】これら第6の動作〜第10の動作も4秒間
で行なわれる。従って、本実施例においては、1回の流
量計測に必要とされる時間は8秒ということになる。言
い換えれば、8秒間に1回の割合で流量計測が行なわれ
ることになる。なお、この動作時間はさらに短くするこ
とも可能である。具体的には、2秒以下にすることも可
能である。ただしこの場合は、パルス加熱の時間(Δt
1R及びΔt1S)を100ms以下とする必要があ
る。
【0210】以上のような動作方法によって窒素流体の
計測を行った場合のデータを図5(B)に示す。図5
(B)に示されるのは、空気で満たされた恒温室内に図
8〜図10に示す構成を有するセンサーを配置し、温度
を10deg 〜40deg まで変化させた場合のD/Aコンバ
ータ801からの出力の経時変化を示すものである。
【0211】この場合は、流量は0で一定と考えられ、
また温度は流体の温度と理解することができる。従っ
て、図5(B)に示されるデータは、流体の温度変化に
よらず、流量値を反映した出力が得られていることを示
していると理解される。
【0212】図5(B)によると、温度変化に従うドリ
フトは、約50mV弱であるが、これは約30sccm
の流量に対応する。従って、本実施例で示したセンサー
の分解能は、30sccm程度であるといえる。本実施
例の流量計測センサーの特性は、図4と全く同一であ
る。ただし、温度の変化による上記ドリフトの影響で1
slm(リットル/分)以下においては、多少計測精度
が低下する。
【0213】実際に流量を計測する場合には、D/Aコ
ンバータ801からの出力を予め求めておいた流量値と
D/Aコンバータ801からの出力との関係に照らし合
わせることによって、具体的な流量値を得ることができ
る。
【0214】以上述べたように、本実施例の構成を採る
ことにより、50sccm〜50000sccmに渡っ
て温度の影響を受けずに流量計測を行うことのできる流
量計測装置を得ることができる。
【0215】なお、本実施例においては、温度計測セン
サー802と流量計測センサー803とを同一な構造と
し、加熱時間や出力の演算時間(Δt2RやΔt2S)
を両者で同一なものとしたが、それぞれ異なる設定とし
てもよい。
【0216】〔実施例3〕 本実施例は、実施例2において示した図8〜図10に示
すような構成を有するセンサー(ここでは流量計測を目
的としないので、単にセンサーという)を用いて流体の
種類を識別する場合の例を説明する。
【0217】流体を流さないで実施例2に示したような
動作を行った場合を考える。このような動作は、図9や
図10に示される構成において、 (1)温度計測センサー802を密閉した空間に配置す
る構造とし、この密閉された空間は基準となる流体で満
たす。 (2)上記密閉された空間内の基準となる流体がパイプ
91内を流れる被計測流体と同じ温度なる構成とする。 (3)パイプの両端を塞ぐことできる機構、あるいはパ
イプ内を流体が一定の流量で流れる構成とする。と行っ
た工夫をすることによって容易に実現される。
【0218】この場合、所定の演算の結果得られるD/
Aコンバータ801からの出力は、流体の種類に依存す
る。これは、流体の種類が異なれば、当然熱伝導率や比
熱が異なるので、ダイヤモンド薄膜からの熱の奪われ方
が異なり、図11や図12に示す応答波形が異なるから
である。
【0219】本発明者らの実験によれば、窒素ガスとク
リプトンガスとを個別に同一流量で流し、その流量を実
施例2で示したセンサーで計測した場合、出力に著しい
違いが現れることが確認されている。これは、窒素ガス
とクリプトンガスとを識別できることを意味し、ガスセ
ンサーとして利用できることを示唆する事実であるとい
える。
【0220】例えば、図5の(B)に示す出力は、窒素
ガスに対する出力(200mV)であるが、ここで窒素
ガスの代わりにクリプトンガスを用いれば、異なる出力
を得ることができる。
【0221】この場合、クリプトンガスに対する出力は
200mVより大きくなる。なぜばらば、窒素ガス(N
2)の熱伝導率は259.8×10−4Wm−1K−1
(300K、常圧)であるのに対して、クリプトンガス
(Kr)の熱伝導率は94.2×10−4Wm−1K−
1(300K、常圧)であるから、窒素ガスの場合に比
較してクリプトンガスの場合は、図11の102で示す
応答波形は大きいものとなる。即ち、ダイヤモンド薄膜
から奪われていく熱量が減少するから、ダイヤモンド薄
膜は急速に加熱され、ゆっくり冷えていくことになる。
従って、104で示される波形の面積も大きなものとな
り、D/Aコンバータ801からの出力は大きくなる。
【0222】ガスセンサーとしての動作は、実施例2で
示した流量の計測方法と基本的に同一である。流量の計
測の場合と異なるのは、ガスの種類とD/Aコンバータ
801からの出力との関係を予め調べておき、この関係
に実際の計測値を照らし合わせることによって、ガスの
種類を識別することである。またセンサー803に接す
る流体が一定の流量になるようにする点も異なる。
【0223】また、温度計測センサーは密閉された空間
に配置され、基準となるガス(例えば窒素ガス)に接触
していることが必要とされる。この場合、この基準とな
るガスが、周囲の温度や被計測流体の温度と同一になる
ようにする必要がある。例えば、アルミニウム等の高熱
伝導率を有する材料を用いて上記密閉された空間を構成
し、その中に温度計測センサーを配置する必要がある。
【0224】本発明者らの知見によれば、ガスセンサー
として動作させた場合にセンサーの出力の違いに一番寄
与する要素となるのが、流体の熱伝導率である。また、
熱伝導率の次に寄与する要素となるのが、比熱である。
従って、これらのパラメータに違いがあれば、それを検
出することができる。
【0225】また流体としては、気体のみでなく、液体
を用いた場合も流体の種類を識別するセンサーとして利
用できる。ただし、この場合は、発熱体に供給する熱量
を変更する必要がある。
【0226】以上説明したように、実施例2に示すセン
サーは、温度計測センサーの配置に関して多少の変更を
加えることで、そのままガスセンサーや液体センサーと
して機能させることができる。例えば、空気中における
特定のガスの濃度があるレベル以上になったことを検出
するセンサーとして利用することができる。
【0227】これらの動作は、流体や環境の温度に依存
しない状態で行うことができるので、極めて実用的なも
のである。なお、原理的には被計測対象が流体以外の材
料であっても、被計測対象物質の熱伝導率や比熱の違い
を出力することが可能である。
【0228】〔実施例4〕 実施例2に示したのは、流量計測センサーの発熱体が発
熱する時間Δt1S(図11参照)を0.18秒に固定
し、発熱体に供給される電圧を制御することによって、
発熱体が発生する熱量を制御する方法である。しかし、
重要なのは、流量計測センサーの発熱体が発生する熱量
を流体や環境の温度に従って変化させることである。
【0229】従って、流量計測センサーの発熱体に供給
する電圧を一定とし、その供給時間を可変させることで
も発熱体からダイヤモンド薄膜に供給される熱量を制御
することができる。このことを実施例2の場合において
実現するには、D/Aコンバータ89から発熱体86に
供給される電圧を一定とし、その供給時間を可変する構
成とすればよい。この場合、図6の横軸と図7の縦軸と
は、発熱体86への電圧の印加時間に対応したパラメー
タとなる。勿論、発熱体86に供給する電圧と該電圧の
印加時間との両者をパラメータとして制御してもよい。
【0230】〔実施例5〕 本実施例は、実施例2に示した構成において、流量計測
の精度をさらに向上させる例である。図7に示されるの
は、図6における縦軸が5500の値の点に流量計測セ
ンサーの出力を固定することによって作成したものであ
る。実施例2においては、図7に示される所定の関係を
用いた例が示されている。
【0231】本発明者らの実験によれば、図7に示す関
数関係は、最大流量付近と最小流量付近とでは若干異な
ることが判明している。この原因は明らかではないが、
温度変化に起因する流体の粘性等の変化や、温度変化に
よる回路定数(抵抗値やアンプの動作速度)の変化に因
るものであると考えられる。
【0232】従って、最小流量付近(例えば流量0の場
合)において図7の関係を求め、その関係を用いて最大
流量付近における流量計測を行うと、最大流量付近にお
ける計測値の公差が大きくなるという問題が生じる。
【0233】そこで本実施例においては、流量計測範囲
を複数に分割し、それぞれの流量計測範囲において図7
に示すような所定の関係を求め、それぞれの流量計測範
囲において正確な流量計測を行うことを特徴とする。
【0234】例えば、0〜50000sccmの範囲で
流量計測を行おうとする場合について以下に説明する。
ここでは、0〜300sccm、300〜3000sc
cm、3000〜50000sccmと流量計測埴を3
分割した場合の例を説明する。
【0235】先ず校正の段階において、図6に示すよう
なグラフを得る。ここでは、 (1)流量0の場合 (2)流量1000sccmの場合 (3)流量10000sccmの場合 という様に、流れる流体の流量を3通りに設定し、図6
に示す関係を求める。そしてそれぞれの流量において、
実施例2に示した方法に従って、図7に示す関係を求め
る。この結果、各流量範囲においてそれぞれ図7に示す
ような関係が得られることになる。
【0236】ここで得られる3種類の図7に対応するグ
ラフは、上記3つの流量範囲におけるものである。この
各流量範囲におけるグラフが全く同じものとなるのであ
れば、本実施例の構成を採用する必要はない。この場
合、全計測範囲において、図7で示されるような一つの
関数関係を用いればよい。
【0237】ここでは、各流量における図7に対応する
グラフが異なることを前提として話しを進める。本実施
例では、0〜300sccmを(1)の場合に求めた関
数関係(図7に対応するグラフで示される)を用いて計
測し、流量300〜3000sccmを(2)の場合に
求めた関数関係を用いて計測し、流量3000〜500
0sccmを(3)の場合に求めた関数関係を用いて計
測するものとする。
【0238】本実施例のような構成を採用することによ
り、広い流量計測範囲において、その計測精度を極めて
高くすることができる。この計測範囲の分割はなるべく
多くした法がより計測精度を高くすることができる。
【0239】〔実施例6〕 本実施例は、温度計測センサーからの出力をアナログ的
にフィードバックさせ、このフィードバックされた出力
を基に流量計測センサーの発熱体に供給する電圧を制御
し、流体および/または計測環境に依存しない流量計測
を行う構成に関する。
【0240】図14に本実施例の構成の概略を示す。図
14は〔実施例2〕において示した図8〜図10に示す
構成を改良したのである。図8〜10に示すような構成
を採用した場合、高い計測精度を高ダイナミックレンジ
で得られ、しかも広い温度範囲に渡って温度補償を正確
に行うことができる。しかしながら、基本的に同じ動作
を温度計測センサーと流量計測センサーとでそれぞれ行
い、その度にデジタル回路を用いた演算を行うために、
消費電力が大きいという問題がある。例えば実施例2に
示した構成では、約4mWの電力消費があり、電池で長
期間(例えば数年)駆動することは困難である。
【0241】以下に図14に示す本実施例の主な改良点
を示す。 A.温度計測センサー(Rで示される)802の抵抗体
85(ここでは85は単に抵抗体として機能する)に供
給される電圧を低くし、発熱量を極めて少なくする。
(例えば発熱量を1/4程度とする) B.温度計測センサー802の抵抗体85と抵抗141
〜143とでなるブリッジ回路(ブリッジ2)を構成
し、該ブリッジ回路の出力をアンプ144で電圧増幅
し、流量計測センサー803の発熱体86を駆動する。 C.デジタル処理が行われるのは、流量計測センサー8
03の出力においてのみであり、アンプ87からの出力
波形は、図3に示すものと同様なものとなる。
【0242】各センサー802と803との構成は、実
施例2に示したものと同様である。即ち、両者とも同じ
寸法であり、図1に示すようにダイヤモンド薄膜表面に
白金薄膜からなる測温抵抗体83または84と白金薄膜
からなる抵抗体85または86とが形成された構成を有
している。なお、各ブリッジを構成する抵抗81、8
2、さらに抵抗141〜143は、流体および/または
計測環境の温度によってその抵抗値が変化しにくいもの
を用い、その配置も流体および/または計測環境の温度
の影響を受けにくい配置とすることが重要である。図1
8に示す構成は、図8〜図10に示す構成を利用して容
易に得ることができ、装置全体の外見も図13に示すも
のと殆ど同じである。
【0243】以下において図15を用いて、本実施例の
動作方法を説明する。図15は、1回の計測動作におけ
るアンプ87からの出力波形を示すものである。図15
において、縦軸はアンプ87からの電圧出力を示し、横
軸はその時間変化を示す。
【0244】(第1の動作) t0Sとt0S+Δt0Sとの間において、下記〔数
3〕で示される演算をCPU88において行う。
【0245】
【数3】
【0246】(第2の動作) t1Sとt1S+Δt1Sとの間において、抵抗体85
に一定電圧を加え、同時に発生するアンプ144で増幅
されたブリッジ2からの出力により、発熱体86を駆動
する。即ち、t1Sとt1S+Δt1Sとの間におい
て、発熱体86は、ブリッジ2からの出力に応じた電圧
で駆動され、発熱する。
【0247】(第3の動作) t2Sとt2S+Δt2Sとの間において、A/Dコン
バータ804によってデジタル変換されたアンプ87の
出力をCPU88で積算する。この積算は、下記〔数
4〕に示される演算をCPU88で行うことによって実
行される。なおここで、t1S<t2Sとする。
【0248】
【数4】
【0249】(第4の動作) 上記(第1の動作)で得られた値と上記(第3の動作)
で得られた値との差をCPU88において演算する。具
体的には、実施例2で示した方法と同様な演算を行えば
よい。そしてこの演算結果から実際の流量の値をCPU
88において算出し、D/Aコンバータ801から出力
する。以上の動作は、CPU88からの指令によって、
予め決められた手順に従って行われる。
【0250】ここで、流体の温度が徐々に高くなってい
く状況を考える。この場合、白金薄膜で構成された抵抗
体85の抵抗は、流体の温度に従って高くなる。すると
ブリッジ2の出力は、それに従って大きくなる。この出
力は、アンプ144で電圧増幅され、発熱体86に供給
される。この発熱体86に供給される電圧は、流体の温
度の上昇に従ったものとなる。結果として、流体の温度
の上昇分に見合った熱量が流量計測センサー803を構
成するダイヤモンド薄膜に供給される。この結果、流量
計測センサー803を構成するダイヤモンド薄膜は、流
体の温度に依存しない応答特性(温度変化)を示すこと
になる。
【0251】図14に示す構成においては、抵抗体85
と発熱体86とを同一の材料または同一の抵抗の温度依
存特性を有する材料で構成する必要がある。これは、流
体および/または計測環境の温度変化に対応した熱量を
流量計測センサー803を構成するダイヤモンド薄膜に
供給する必要があるためである。
【0252】例えば、抵抗体85を構成する材料として
温度によってほとんどその抵抗が変化しないものを用
い、発熱体86を構成する材料として、温度によって大
きくその抵抗が変化する材料を用い場合、発熱体86に
加えられる駆動電圧は温度変化に対してほとんど変化し
ない。よって、流体計測センサー803の出力は、流体
の温度に大きく依存したものとなってしまう。
【0253】以下に図14に示した構成を用い、窒素ガ
ス流体の計測を行った場合の計測結果を示す。この計測
では、装置全体を恒温室内に配置し、恒温室外から窒素
ガスを供給した。窒素ガスの流量は、マスフローメータ
により計測した。窒素ガスは、高温室内でコイル状巻か
れた7m程のピニールパイプ内を通過した後に図14に
示す流量計測装置に流入する構成とした。これは、窒素
ガスの温度を計測環境の温度(恒温室内の温度)、また
はそれに近い温度にするためである。
【0254】図16に示すのは、恒温室内の温度を25
℃とした場合における計測結果である。図16におい
て、横軸は流量値(リットル/時)を示し、縦軸は公差
(計測値のバラツキ)を示す。図16を見れば分かるよ
うに、数十(リットル/時)から2000(リットル/
時)近くまで、±1.5%以下の公差に収まっているこ
とが分かる。そしてその公差を±3%以下とするなら
ば、数(リットル/時)から2000(リットル/時)
近くまでの3桁に渡っての流量計測を行えることが分か
る。
【0255】図17に示すのは、恒温室の温度を−10
℃、25℃、70℃とした場合の計測結果である。この
場合、計測環境の温度によって、流体の温度が影響を受
けている状況が実現されていると言える。しかし、恒温
室内の温度がそのまま窒素ガス流体の温度であるという
ことは、正確には言えない。このような状況は、室内や
屋外において、天然ガス等を計測する場合に状況に近い
と考えられる。
【0256】図17に示すデータは、横軸に校正された
マスフローセンサーで計測された窒素ガスの流量(リッ
トル/時)を示し、縦軸に実際の流量値となるように演
算処理された流量計測装置からの出力(リットル/時)
を示すものである。図17に示されるプロット点が切片
0、傾き1の1次関数に近いほど、計測値が正確なこと
を示す。図17に示すデータより、25℃と70℃との
場合には、その計測値の違いにほとんど違いが無く、ま
たその値が正確なことが分かる。なお、70℃の場合は
上側のプロット点、25℃の場合は下側のプロット点で
示される。しかしながら、−10℃の場合は、ややずれ
た計測値となっている。これは、恒温室内の水分が凝固
し、流量計測装置内の回路に熱的な影響を与えたのが原
因であると考えられる。従って、回路部分のパッキング
や周囲よりの熱的な絶縁化を改善することにより、この
計測値のずれはさらに改善することが可能であると考え
られる。
【0257】本実施例に示した構成は、A/Dコンバー
タ804やCPU88の負担が実施例2の場合に比べて
半分になる。また抵抗体85を駆動するための電圧は、
発熱体86を駆動するための電圧に比較して大幅に小さ
くすることができる。従って、全体の消費電力を大きく
低減させることができる。
【0258】〔実施例7〕 本実施例は、実施例6に示した構成をさらに簡単な構成
とした例である。図18に本実施例の概略の構成を示
す。図18に示す構成は、図8〜図10に示す実施例2
の構成において、温度計測センサー802の構成を変更
するだけで、簡単に実現することができる。
【0259】図18において、温度計測センサー181
は、流量計測センサー803と同じ寸法、同じ膜質のダ
イヤモンド薄膜で構成され、その表面に白金薄膜からな
る測温抵抗体182が設けられている。この測温抵抗体
182は、発熱体86と同一の材料または同一の抵抗の
温度依存特性を有してことが必要である。なお、好まし
くは、その寸法を同一なものとすることが望ましい。こ
れは、熱的な状況をなるべく同一なものとすることが重
要であるからである。また抵抗183と184とは、流
体および/または計測環境の温度変化を受けにくい構成
とする必要がある。
【0260】以下に基本的な動作例の手順を示す。動作
手順は、実施例6と基本的に同一である。またアンプ8
7からの出力fの波形も図15に示すのと同じである。
以下において図15を用いて説明を加える。
【0261】(第1の動作) t0Sとt0S+Δt0Sとの間において、A/Dコン
バータ804によってデジタル信号に変換されたアンプ
87の出力をCPU88において積算する。この積算
は、下記〔数3〕で示される計算式に従って行われる。
【0262】
【数3】
【0263】(第2の動作) t1Sとt1S+Δt1Sとの間において、ブリッジに
一定電圧VCCを加え、この際発生する抵抗184の両
端に発生する電圧をアンプ185で反転増幅する。そし
て、この出力により、t1Sとt1S+Δt1Sとの間
において、発熱体86を駆動する。即ち、t1Sとt1
S+Δt1Sとの間において、発熱体86は、抵抗18
4の両端に発生する電圧に応じた電圧で駆動され、発熱
する。抵抗184の両端に発生する電圧は、測温抵抗体
182の抵抗変化を反映したものである。従って、アン
プ185で反転増幅された抵抗184の両端の電圧は、
測温抵抗体182の抵抗変化を反映したものとなる。結
果として、発熱体86に供給される電圧は、測温抵抗体
182の抵抗変化に従ったものとなる。
【0264】(第3の動作) t2Sとt2S+Δt2Sとの間において、A/Dコン
バータ804によってデジタル変換されたアンプ87の
出力を積算する。この積算は、下記〔数4〕に示される
演算をCPU88で行うことによって実行される。
【0265】
【数4】
【0266】(第4の動作) 上記(第1の動作)で得られた値と上記(第3の動作)
で得られた値との差をCPU88において演算する。こ
の演算は、実施例2に示したのと同じ方法によればよ
い。そしてこの演算結果から実際の流量の値をCPU8
8において算出し、D/Aコンバータ801から出力す
る。以上の動作は、CPU88からの指令によって、予
め決められた手順に従って行われる。
【0267】ここで、流体の温度が徐々に高くなってい
く状況を考える。この場合、白金薄膜で構成された発熱
体182の抵抗は、流体の温度に従って高くなる。する
とブリッジの出力は、それに従って小さくなる。即ち、
抵抗184の両端に発生する電圧は小さくなる。この出
力は、アンプ185で反転されて電圧増幅され、発熱体
86に供給される。従って、この発熱体86に供給され
る電圧は、流体の温度の上昇に従って大きなものとな
る。結果として、流体の温度の上昇分に見合った熱量が
流量計測センサー803を構成するダイヤモンド薄膜に
供給される。この結果、流体の温度に関係なく、流量に
依存したダイヤモンド薄膜の応答特性を測温抵抗体84
で検出することができる。
【0268】図18に示す構成を採った場合、ブリッジ
回路が一つだけでよいので、装置の安定性と信頼性とを
高めることができる。特に熱的な安定性を高めることが
できる。一般にブリッジ回路を構成する抵抗や配線も少
なからず抵抗値の温度依存性を有している。従って、回
路を構成する部品は少ないほど、またその構成が単純で
ある程、熱的な安定を高くでき、また特性の時間的な変
化を抑えることができる。
【0269】また、図18に示す構成を採用した場合、
実施例2の場合に比較して、A/Dコンバータ804、
CPU88、D/Aコンバータ801の負担を半分にで
きる。さらに発熱体と測温抵抗体への電圧印加時間を半
分とすることができる。従って、実質的に実施例2で示
した構成に比較して、その消費電力を約半分とすること
ができる。
【0270】〔実施例8〕 本実施例は、図18に示す実施例7の構成を図10に示
すものとは異なる構造で配置した例である。図19に本
実施例の構成を示す。図19に示す構成は、図18に示
すブロック図と基本的にその回路構成は同一である。図
19に示す構成は、パイプ186の一部にテフロン等の
熱的に絶縁物と見なせる基体187に配置されたダイヤ
モンド薄膜191で構成された流量計測センサー803
と、同じくダイヤモンド薄膜192で構成された温度計
測センサー181とを有している。これら2つのセンサ
ーは、流体188に直接曝されるように配置されてい
る。このような構成とすることで、温度計測センサー1
81が検出する流体の温度と、流量計測センサー803
が検出する流体の温度とを同一なものとすることがで
き、温度補償精度をさらに高めることができる。
【0271】温度計測センサー181の測温抵抗体18
2は、ほとんど加熱されないので、流体188の温度の
みを正確に計測することができる。即ち、流量に影響さ
れずに、流体の温度のみを計測することができる。流量
計測センサー803と温度計測センサー181とは、同
じ寸法を有するダイヤモンド薄膜191、192と、そ
の表面にスパッタ法で形成された白金の薄膜よりなる発
熱体86と、やはり白金薄膜で構成された測温抵抗体8
4、182とで構成されている。
【0272】
【効果】所定の関係に従って、パルス状の加熱に際して
薄膜に供給される熱量を変化させることで、このパルス
状の加熱に際する当該薄膜の応答特性を被計測物質や計
測環境の温度に依らないものとすることができ、当該
が該薄膜に接する被計測物質(流体に限定されない)
から受ける熱的な影響を、被計測物質や計測環境の温度
に影響されずに評価することができる。
【0273】特に被計測物質として流体を選択した場合
において、薄膜が熱的に受ける影響を計測するセンサー
を複数用意し、その中の一つのセンサーにおける当該
に対するパルス状の加熱に対する応答特性より、流体
および/または環境の温度を計測し、この結果に基づい
て流体に接した他のセンサーの薄膜に対して所定の熱量
でもってパルス状の加熱を行うことで、この加熱に従う
当該薄膜の応答特性より、温度に依存しない流量の値を
計測することができる。
【0274】特に当該薄膜としてダイヤモンド薄膜を用
いた場合には、3桁以上の流量計測が可能であり、温度
の影響を受けない高性能な流量装置を得ることができ
る。
【0275】また、温度計測センサーからの出力を流量
計測センサーの発熱体にフィードバックさせてやること
で、温度計測センサーが検出する温度に従った熱量で流
体計測センサーの発熱体を発熱させることができ、温度
補償を正確に行った流量計測を行うことができる。さら
にまた、ガス温度に影響を受けない高感度のガスセンサ
ーとしても機能させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 センサーの構造の概要を示す。
【図2】 流量の計測システムの構成を示す。
【図3】 オシロスコープの表示の写真を示す。
【図4】 流量計測における流量と公差の関係を示
す。
【図5】 温度変化に対する出力の経時変化を示す。
【図6】 発熱体に加える電圧と流量センサーからの
出力との関係を示す。
【図7】 温度センサーからの出力と流量センサーの
発熱体に加える電圧との関係を示す。
【図8】 実施例の計測システムの構成を示す。
【図9】 センサーの配置状態を示す。
【図10】 実施例の計測システムの構成を示す。
【図11】 パルス状の加熱に対するダイヤモンド薄膜
の応答波形を示す。
【図12】 オシロスコープの表示の写真を示す。
【図13】 本発明を利用した流量計測装置の外観を示
す。
【図14】 実施例の計測システムの構成を示す。
【図15】 パルス状の加熱に対するダイヤモンド薄膜
の応答波形を示す。
【図16】 25℃における流量計測装置の出力の公差
を示す。
【図17】 −10℃、25℃、70℃おける流量計測
装置の出力と流量との関係を示す。
【図18】 実施例の計測システムの構成を示す。
【図19】 実施例の計測システムの構成を示す。
【符号の説明】
11 発熱体(白金薄膜) 12 測温抵抗体(白金薄膜) 13 ダイヤモンド薄膜 15 電極 10 電極 17 ボンディング用金ワイヤ 19 流体 21 アンプ 22 流量計測センサー 802 温度計測センサー 803 流量計測センサー 83 測温抵抗体(白金薄膜) 84 測温抵抗体(白金薄膜) 85 発熱体(ヒーター)(白金薄膜) 86 発熱体(ヒーター)(白金薄膜) 87 アンプ 90 流体 91 パイプ 92 保持基体(テフロン製) 94 保持基体(テフロン製) 96 密閉部材 97 Oリング 101 ダイヤモンド薄膜 102 ダイヤモンド薄膜 136 コネクタ 137 コネクタ 138 電池 135 液晶ディスプレイ 133 回路が配置された基板 131 図9で示される部分 141〜143 抵抗 144 アンプ 181 温度計測センサー 182 測温抵抗体 183 抵抗 184 抵抗 185 アンプ 186 パイプ 187 基体 188 流体 191 ダイヤモンド薄膜 192 ダイヤモンド薄膜
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭54−22987(JP,A) 特開 昭60−178317(JP,A) 特開 平2−213767(JP,A) 特開 昭63−140921(JP,A) 特開 昭50−161091(JP,A) 特開 昭59−105522(JP,A) 特開 平3−221815(JP,A) 特開 昭47−41665(JP,A) 特開 昭58−223021(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01F 1/00 - 9/02

Claims (32)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】絶縁性を有する基体と、 前記基体に保持された薄膜と、 前記薄膜にパルス状の加熱を行う手段と、 前記手段の加熱による前記薄膜の応答特性を計測する手
    段と、 前記パルス状の加熱前に前記薄膜の温度に対応するパラ
    メータを積算する手段と、 前記パルス状の加熱以後に前記薄膜の温度に対応するパ
    ラメータを積算する手段と、 前記2つの積算値の差を算出する手段とを有することを
    特徴とする計測装置。
  2. 【請求項2】被計測物質に接するように配置された薄膜
    と、 前記薄膜を保持する絶縁性を有する基体と、 前記薄膜にパルス状の加熱を行う手段と、 前記手段の加熱による前記薄膜の応答特性を計測する手
    段とを有する計測装置であって、 前記パルス状の加熱を行う手段は、前記被計測物質の温
    度または被計測物質を計測する環境の温度に従って発生
    する熱量を変化する機能を有することを特徴とする計測
    装置。
  3. 【請求項3】請求項2において、 前記計測装置は前記パルス状の加熱前に前記薄膜の温度
    に対応するパラメータを積算する手段と、 前記パルス状の加熱以後に前記薄膜の温度に対応するパ
    ラメータを積算する手段と、 前記2つの積算値の差を算出する手段と、を有すること
    を特徴とする計測装置。
  4. 【請求項4】請求項1乃至3のいずれか一において、 前記応答特性は前記薄膜の温度変化として計測され、前
    記被計測物質は流体であることを特徴とする計測装置。
  5. 【請求項5】薄膜に対し所定の熱量を供給する手段と、 該手段による所定の熱量の供給に従う前記薄膜の応答特
    性を計測する手段と、 前記応答特性より前記薄膜が被計測物質から受ける熱的
    な影響を計測する手段と、 前記所定の熱量を少なくとも前記被計測物質の温度また
    は前記被計測物質を計測する環境の温度に対応させて変
    化させる手段とを有する計測装置。
  6. 【請求項6】請求項5において、 前記熱量を供給する手段は、前記薄膜に接して設けられ
    た発熱体であり、前記熱量を制御するパラメータは、前
    記発熱体に供給する電圧であることを特徴とする計測装
    置。
  7. 【請求項7】請求項5において、 前記熱量を供給する手段は、レーザー光またはマイクロ
    波により前記薄膜を加熱することを特徴とする計測装
    置。
  8. 【請求項8】請求項5乃至7のいずれか一において、 前記所定の熱量の供給に従う前記薄膜の応答特性を計測
    する手段は、所定の熱量の供給前に前記薄膜の温度に対
    応するパラメータを積算する動作と、 所定の熱量の供給以後に前記薄膜の温度に対応するパラ
    メータを積算する動作と、 前記2つの積算値の差を算出する動作と、 を行うことを特徴とする計測装置。
  9. 【請求項9】請求項5乃至8のいずれか一において、 前記応答特性は前記薄膜の温度変化として計測され、前
    記被計測物質は流体であり、前記熱的な影響より前記流
    体の流量または流速が得られることを特徴とする計測装
    置。
  10. 【請求項10】請求項5乃至8のいずれか一において、 前記応答特性は前記薄膜の温度変化として計測され、前
    記被計測物質は流体であり、前記熱的な影響より前記流
    体の種類を識別することを特徴とする計測装置。
  11. 【請求項11】温度計測センサーと、 流体計測センサーと、 演算処理手段と、 を有し、 前記流体計測センサーは薄膜を加熱する手段と、 前記薄膜の温度を計測する手段とを有し、 前記演算処理手段は、所定の関係に従って前記温度計測
    センサーからの出力に基づいて前記流体計測センサーの
    加熱手段から発せられる熱量を制御するパラメータを決
    定する機能を有する流量または流速を計測する計測装置
    であって、 前記所定の関係は流量一定かつ流体計測センサーからの
    出力が一定または概略一定または一定の範囲内の条件に
    おける温度計測センサーからの出力と前記パラメータと
    の関係を示すものであることを特徴とする計測装置
  12. 【請求項12】表面に少なくとも一つの発熱体が配置さ
    れた第1の薄膜と、 表面に少なくとも一つの抵抗体が配置された第2の薄膜
    と、 を有する計測装置であって、 前記第2の薄膜表面に配置された抵抗体の抵抗変化を基
    に、前記第1の薄膜の発熱体が発生する発熱量を制御す
    ることを特徴とする計測装置。
  13. 【請求項13】表面に少なくとも一つの発熱体が配置さ
    れた第1の薄膜と、 表面に少なくとも一つの抵抗体が配置された第2の薄膜
    と、 を有する計測装置であって、 前記第2の薄膜表面に配置された抵抗体の抵抗変化を基
    に、前記第1の薄膜の発熱体に供給する電圧を制御する
    ことを特徴とする計測装置。
  14. 【請求項14】請求項12または13において、 前記第1薄膜または前記第2の薄膜は、その熱伝導率を
    Ksとし、 その比熱をCsとし、その密度をρsとし、その寸法をL=1
    mm角とした場合において、τ=(Csρs2/Ksπ2
    で示されるτが、1ミリ秒以下であることを特徴とする
    計測装置
  15. 【請求項15】被計測物質に接するように配置された薄
    膜と、 前記薄膜に対し所定の熱量を供給する手段と、 該手段による所定の熱量の供給に従う前記薄膜の応答特
    性を計測する手段と、 前記応答特性より前記薄膜が前記被計測物質から受ける
    熱的な影響を計測する手段と、 を有する計測装置であって、 前記薄膜は、その熱伝導率をKsとし、その比熱をCs
    し、その密度をρsとし、その寸法をL=1mm角とした場合
    において、τ=(Csρs2/Ksπ2)で示されるτが1
    ミリ秒以下であることを特徴とする計測装置。
  16. 【請求項16】被計測物質に接するように配置された薄
    膜と、 前記薄膜に対し所定の熱量を供給する手段と、 該手段による所定の熱量の供給に従う前記薄膜の応答特
    性を計測する手段と、 前記応答特性より前記薄膜が前記被計測物質から受ける
    熱的な影響を計測する手段と、 を有する計測装置であって、 前記薄膜は、その熱伝導率をKsとし、その比熱をCs
    し、その密度をρsとし、その寸法をL=1mm角とした場合
    において、τ=(Csρs2/Ksπ2)で示されるτが
    2ミリ秒以下であることを特徴とする計測装置。
  17. 【請求項17】請求項15または16において、 前記被計測物質として流体を前記薄膜へ接しさせ、 前記薄膜が前記被計測物質から受ける熱的な影響は、前
    記流体の流量または流速によるものであることを特徴と
    する計測装置。
  18. 【請求項18】請求項15または16において、 前記被計測物質として流体を前記薄膜へ接しさせ、 前記所定の熱量の供給に従う前記薄膜の応答特性によ
    り、前記流体の流量を計測することを特徴とする計測装
    置。
  19. 【請求項19】請求項15乃至18のいずれか一におい
    て、 前記薄膜の応答特性を計測する手段は、所定の熱量の供
    給前に前記薄膜の温度に対応するパラメータを積算する
    動作と、 所定の熱量の供給以後に前記薄膜の温度に対応するパラ
    メータを積算する動作と、 前記2つの積算値の差を算出する動作と、 を行うことを特徴とする計測装置。
  20. 【請求項20】請求項1乃至19のいずれか一におい
    て、 前記薄膜はダイヤモンド、単結晶珪素、多結晶珪素、炭
    化珪素、窒化アルミニウム及び窒化ホウ素のいずれかの
    薄膜材料からなることを特徴とする計測装置。
  21. 【請求項21】被計測物質の温度または前記被計測物質
    を測定する環境の温度に対応した熱量で薄膜を加熱する
    ことで、該加熱の際、前記被計測物質の温度または前記
    被計測物質を測定する環境の温度に依存しない前記薄膜
    の応答特性を得ることを特徴とする計測方法。
  22. 【請求項22】被計測物質に接して配置された薄膜に熱
    量を供給し、 前記熱量を供給することによる薄膜の応答特性から前記
    被計測物質が受ける熱量を計測する方法であって、 前記熱量を少なくとも前記被計測物質の温度または前記
    被計測物質を計測する環境の温度に対応させて変化させ
    ることを特徴とする計測方法。
  23. 【請求項23】被計測物質に接して配置された薄膜に熱
    量を供給し、 前記熱量を供給することによる薄膜の応答特性から前記
    被計測物質が受ける熱量を計測する方法であって、 前記被計測物質の各温度または前記被計測物質の各計測
    環境温度における前記薄膜応答特性に基づいて、前記熱
    量を決定することを特徴とする計測方法。
  24. 【請求項24】被計測物質に接して配置された薄膜に熱
    量を供給し、 前記熱量を供給することによる薄膜の応答特性から前記
    被計測物質が受ける熱量を計測する方法であって、 被計測パラメータが一定または一定の範囲内であり、か
    つ前記応答特性が一定または一定の範囲内である条件に
    おける、前記被計測物質の各温度または前記被計測物質
    各測定環境温度を示すパラメータと前記被計測物質に
    接して配置された前記薄膜に供給する熱量との関係に基
    づいて、前記被計測物質に接して配置された前記薄膜に
    供給する前記熱量を決定することを特徴とする計測方
    法。
  25. 【請求項25】請求項21乃至24のいずれか一におい
    て、 前記被計測物質は流体であり、 前記応答特性は前記薄膜の温度変化として計測されるこ
    とを特徴とする計測方法。
  26. 【請求項26】請求項21乃至25のいずれか一におい
    て、 前記薄膜の応答特性は、加熱前に前記薄膜の温度に対応
    するパラメータを積算する動作と、 加熱以後に前記薄膜の温度に対応するパラメータを積算
    する動作と、 前記2つの積算値の差を算出する動作と、 を有する方法により得られることを特徴とする計測方
    法。
  27. 【請求項27】パルス状の加熱に際する薄膜の応答特性
    から前記薄膜に接して流れる流体の流量または流速を算
    出する機能を有する計測方法であって、 所定の関数関係に従いパルス状の加熱の熱量を前記流体
    の温度または前記流体を計測する環境の温度に対応させ
    て変化させることを特徴とする計測方法。
  28. 【請求項28】請求項27において、 前記所定の関数関係は、同一流量かつ同一応答特性の条
    件における流体の温度または前記流体を計測する環境の
    温度に対応するパラメータと、 パルス状の加熱によって前記薄膜に供給される熱量を制
    御するパラメータと、の関係を規定したものであること
    を特徴とする計測方法。
  29. 【請求項29】請求項27または28において、 前記所定の関数関係は、前記薄膜に接して流れる流体の
    流量または流速に対応させて複数用意されていることを
    特徴とする計測方法。
  30. 【請求項30】請求項27乃至29のいずれか一におい
    て、 前記パルス状の加熱に対する薄膜の応答特性は、パルス
    状の加熱前に前記薄膜の温度に対応するパラメータを積
    算する動作と、 パルス状の加熱以後に前記薄膜の温度に対応するパラメ
    ータを積算する動作と、前記2つの積算値の差を算出す
    る動作と、 を有する方法により得られることを特徴とする計測方
    法。
  31. 【請求項31】複数の流体を薄膜に接して配置し、 前記複数の流体の流速を一定にし、 前記薄膜をパルス状に加熱し、 前記複数の流体の熱伝導率または比熱の違いによる前記
    薄膜の温度変化に基づいて前記複数の流体の混合比を計
    測する機能を有する計測方法であって、 前記パルス状の加熱の熱量を前記複数の流体の温度また
    は前記流体を計測する環境の温度に対応させて変化させ
    ることを特徴とする計測方法。
  32. 【請求項32】請求項21乃至31のいずれか一におい
    て、 前記薄膜はダイヤモンド、単結晶珪素、多結晶珪素、炭
    化珪素、窒化アルミニウム及び窒化ホウ素のいずれかの
    薄膜材料からなることを特徴とする計測方法。
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