JP3495870B2 - ブロック−グラフト共重合体とこれを用いた架橋型高分子固体電解質の製造方法および架橋型高分子固体電解質 - Google Patents

ブロック−グラフト共重合体とこれを用いた架橋型高分子固体電解質の製造方法および架橋型高分子固体電解質

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JP3495870B2 JP3279297A JP3279297A JP3495870B2 JP 3495870 B2 JP3495870 B2 JP 3495870B2 JP 3279297 A JP3279297 A JP 3279297A JP 3279297 A JP3279297 A JP 3279297A JP 3495870 B2 JP3495870 B2 JP 3495870B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、一次電池素子、二
次電池素子として有用な高分子固体電解質、特にフィル
ム状ポリマーバッテリーに最適な架橋型高分子固体電解
質に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より研究開発されている固体電解質
としては、β−アルミナ、Li2 TiO3 、RbAg4
5 、AgIあるいはリンタングステン酸といったいわ
ゆる無機系材料が広く知られている。しかし、無機系材
料は、1)比重が重い、2)任意の形状に成形できな
い、3)柔軟で薄いフィルムが得られない、4)室温で
のイオン伝導性が低い等の欠点があり、実用上の問題と
なっている。
【0003】近年、上記の欠点を改良する材料として、
有機系材料が注目されている。有機系材料の一般的な組
成は、ポリアルキレンオキサイド、シリコーンゴム、フ
ッ素樹脂またはポリホスファゼン等のマトリックスとな
る高分子に、LiClO4 、LiBF4 等のキャリアと
なる電解質(主に無機塩類)を混合、溶解させた高分子
固体電解質から構成されている。このような高分子固体
電解質は、無機系材料に比較して軽量で柔軟性があり、
フィルムへの加工、成形が容易であるという特徴を有し
ているが、ここ数年、これらの特徴を維持しつつ、より
高いイオン伝導度を発現する高分子固体電解質を得るた
めの研究開発が活発に行われている。
【0004】現在のところ、より高いイオン伝導性を付
与する手法として、最も効果的なものは、従来よりリチ
ウムイオン電池として使用されてきた非プロトン系有機
電解液を高分子固体電解質に何らかの方法で吸収させ、
ゲル状の固体電解質として利用する技術である(M.A
rmand,Solid States Ionic
s,69,pp.309〜319(1994)参照)。
このゲル状固体電解質のマトリックスとして使用されて
いる高分子は、大別して、イ)ポリエーテル系、フッ素
樹脂等の直鎖状高分子、ロ)ポリアクリル酸系等の架橋
高分子の二種類である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記イ)の直鎖状高分
子の応用例としては、I.E.Kelly et a
l.,J.Power Sources 14,pp.
13(1985)や米国特許第5,296,318号等
が挙げられるが、いずれの場合も高分子から電解液が漏
れ出したり、膜の強度が脆弱であったりした。また、マ
トリックスとなる高分子に対して電解液が可塑剤として
働くため、系の温度が少しでも上昇すると高分子自体が
電解液に溶けてしまう等の問題点がある。
【0006】他方、ロ)の架橋高分子では、電解液を加
えた液状モノマーを重合させて電解質を含む架橋高分子
とする方法(PCT/JP91/00362,国際公開
番号W091/14294)等が提案されているが、こ
の方法では、重合体の架橋度を高くするとイオン伝導度
は極端に低下し、反対に架橋度を低くすると、今度は重
合体の固体強度(弾性率)が脆弱になり、十分な強度を
有する膜が得られないという問題に直面した。
【0007】一方、本出願人は、先に特許第18420
47号(a発明とする)において、本発明のモデルとな
るブロック−グラフト共重合体とその製造方法について
提案した。また、特許第1842048号(b発明とす
る)では、このブロック−グラフト共重合体のイオン伝
導度を高めるために、そのアルキレンオキサイドユニッ
トに対して0.05〜80モル%のLi、Na、K、C
s、Ag、CuおよびMgから選ばれる少なくとも1種
の元素を含む無機塩を混合させたブロック−グラフト共
重合体組成物を提案した。
【0008】特公平5−74195号公報(c発明とす
る)では、同様のブロック−グラフト共重合体のLi イ
オン塩との複合物を電解質として内蔵したLi 電池を、
また特開平3−188151号公報(d発明とする)で
は、これと同じブロック−グラフト共重合体の無機イオ
ン塩複合物にポリアルキレンオキサイドを添加してなる
ブロック−グラフト共重合体組成物を提案した。
【0009】上記(b)、(c)および(d)の発明で
は、得られたブロック−グラフト共重合体に、これを溶
解する有機溶剤を無機塩等と共に加えて溶解し、成形
後、有機溶剤を乾燥除去したものを高分子固体電解質と
して用いてきたが、いずれの高分子固体電解質もイオン
伝導性がやや低く、実用化には至らなかった。
【0010】そこで、本出願人は、イオン伝導性の向上
を目的として、特開平7−109321号公報におい
て、上記と同様のブロック−グラフト共重合体に環状炭
酸エステルと無機塩を主体とした非水系電解液を含有さ
せた複合固体電解質を提案した。これによりイオン伝導
性は大きく改善され、同時に膜強度も飛躍的に向上した
が、例えば、この複合固体電解質を低温(室温〜−20
℃)特性を重視する民生用小型電池に適用しようとした
場合、粘性が高く、融点も高い環状炭酸エステルでは十
分な低温特性が出にくいことが明らかとなった。
【0011】そこで、電池の低温特性を向上させる一般
的手法として知られている、低沸点直鎖状エステルや炭
酸エステルを第二成分として多量に添加する必要性を生
じたが、これらの溶媒は該ブロック−グラフト共重合体
の良溶媒であり、多量に添加した場合には、高分子固体
電解質そのものを溶解してしまうという問題が生じた。
【0012】また、今後実用化が期待されている電気自
動車、電力平坦化用等の高温(60〜80℃)で作動す
る大型電池に適用しようとする場合には、添加する電解
液は、熱安定性が高く、蒸気圧の殆どないポリアルキレ
ンオキサイドを主成分とすることが最適であるが、しか
し、これもまた、多量に使用した場合には高分子固体電
解質を膨潤、溶解させるという不都合を生じた。
【0013】従って、本発明の目的は、高分子系の固体
電解質に関して、いかなる種類の電解液に対しても膨
潤、溶解せず、しかも電解液の種類を変えるだけで用途
別の電池が簡単に構成でき、電解液の保液性や機械的強
度に優れると共に、高イオン伝導性、成形性等を兼ね備
えた架橋型高分子固体電解質を提供しようとするもので
ある。
【0014】
【課題を解決するための手段】このような課題を解決す
るために、本発明は、一般式I、
【化7】 (ここに、R は水素原子、メチル基またはエチル
基、R は水素原子またはメチル基、R はアルキル
基、アリール基、アシル基、シリル基またはシアノアル
キル基、nは1〜100の整数であり、式中の、
【化8】 で示されるグラフト鎖の数平均分子量は59〜4400
である)で表される繰り返し単位から成る重合度10以
上の重合体のブロック鎖Aと、一般式II、
【化9】 (ここに、R は水素原子、メチル基またはエチル
基、R およびR はメチル基またはエチル基であ
る)で表される繰り返し単位からなる重合度200以上
の重合体のブロック鎖Bとから構成され、ブロック鎖A
とブロック鎖Bの成分比が1:20〜20:1である重
合度210以上のブロック−グラフト共重合体に、高エ
ネルギ−線を照射して系全体を架橋した後、非水系電解
液を添加することを特徴とする架橋型高分子固体電解質
の製造方法である。
【0015】この製造方法により新規組成のブロック−
グラフト共重合体に高エネルギ−線を照射して系全体を
架橋させれば、幹分子が疑似架橋構造を形成して膜の機
械的強度を高め、グラフト成分が連続相を形成して金属
イオンの通路を確保し、かつ相溶化剤として電解液を安
定に保持することができる。
【0016】そして、この架橋反応は、前記高エネルギ
−線を電子線とすれば完結させることができる。
【0017】さらに、前記非水系電解液を、ポリアルキ
レンオキサイドおよびリチウム系無機塩から成るものと
するか、或は、エチレンカーボネート プロピレンカー
ボネート γ−ブチロラクトンおよび2−メチル−γ−
ブチロラクトンから選択される少なくとも一種と、1,
2−ジメトキシエタン、メトキシエトキシエタン、ジオ
キソラン、4−メチルジオキソラン、2−メチルジオキ
ソラン、ジエチルカーボネート、アセトニトリル、テト
ラヒドロフランおよび2−メチルテトラヒドロフランか
ら選択される少なくとも一種、およびリチウム系無機塩
から成るものとすることができる。
【0018】次に、本発明は、一般式I、
【化10】 (ここに、R は水素原子、メチル基またはエチル
基、R は水素原子またはメチル基、R はアルキル
基、アリール基、アシル基、シリル基またはシアノアル
キル基、nは1〜100の整数であり、式中の、
【化11】 で示されるグラフト鎖の数平均分子量は59〜4400
である)で表される繰り返し単位から成る重合度10以
上の重合体のブロック鎖Aと、一般式II、
【化12】 (ここに、R は水素原子、メチル基またはエチル
基、R およびR はメチル基またはエチル基であ
る)で表される繰り返し単位からなる重合度200以上
の重合体のブロック鎖Bとから構成され、ブロック鎖A
とブロック鎖Bの成分比が1:20〜20:1である重
合度210以上のブロック−グラフト共重合体である。
【0019】このように、ブロック鎖Bにビニル置換ト
リアルキルシリル基含有スチレン系誘導体を導入すれ
ば、ブロック−グラフト共重合体の基本的特性を変える
ことなく、高エネルギ−線で容易に架橋する構造にする
ことができる。
【0020】本発明は、前記ブロック−グラフト共重合
体に高エネルギ−線を照射して系全体を架橋した後、非
水系電解液を添加してできる架橋型高分子固体電解質で
ある。
【0021】このように、新規組成のブロック−グラフ
ト共重合体を架橋した架橋ブロック−グラフト共重合体
フィルムに非水系電解液を吸収させたものは、膜の機械
的強度に優れ、非水系電解液により膨潤、溶解すること
がないと共に、保液性が高く、イオン伝導性の高い架橋
型高分子固体電解質となる。
【0022】以下、本発明を詳細に説明するが、本発明
はこれらに限定されるものではない。本発明者等は、従
来のブロック−グラフト共重合体の欠点を改良して、よ
り機械的強度、保液性およびイオン伝導性に優れた高分
子固体電解質を得るため、主としてブロック共重合体の
強度保持成分であるブロック鎖Bの組成を検討し、ビニ
ル置換トリアルキルシリル基含有スチレン系誘導体を導
入すれば有効であることに着目し、諸条件を確立して本
発明を完成させたものである。
【0023】先ず、本発明のブロック−グラフト共重合
体の構造と特性について述べる。本発明にかかるブロッ
ク−グラフト共重合体は、一般式I、
【化13】 (ここに、R は水素原子、メチル基またはエチル
基、R は水素原子またはメチル基、R はアルキル
基、アリール基、アシル基、シリル基またはシアノアル
キル基、nは1〜100の整数であり、式中の、
【化14】 で示されるグラフト鎖の数平均分子量は59〜4400
である)で表される繰り返し単位から成る重合度10以
上の重合体のブロック鎖Aと、一般式II、
【化15】 (ここに、R は水素原子、メチル基またはエチル
基、R およびR はメチル基またはエチル基であ
る)で表される繰り返し単位からなる重合度200以上
の重合体のブロック鎖Bとから構成され、ブロック鎖A
とブロック鎖Bの成分比が1:20〜20:1である重
合度210以上のブロック−グラフト共重合体である。
【0024】このブロック−グラフト共重合体は、夫々
一般式IおよびIIで表される同種または異種の繰り返
し単位からなる重合体のブロック鎖AとBが、例えば、
11 、B111 、B112 、B112
11 というように任意に配列されてなるものであ
る。重合体のブロック鎖Aの重合度は10以上、同じく
ブロック鎖Bの重合度は200以上であって、これから
得られるブロック−グラフト共重合体の重合度は210
以上のものである。
【0025】重合体のブロック鎖Aは、高分子電解質と
しての機能を果たす部分のため、重合度が10未満では
このポリマーの特徴であるミクロ相分離構造を示さず、
また、ブロック鎖Bは、強度(弾性)を保持する部分の
ため、重合度が200未満ではポリマーの機械的強度が
低下してしまう。ブロック鎖Aとブロック鎖Bの成分比
は、1:20〜20:1であることが必要で、これが
1:20未満ではグラフト成分が少な過ぎてイオン伝導
能が低下し、20:1を超えると逆にグラフト成分の影
響が大き過ぎて、重合体の機械的強度が保持できない。
【0026】このブロック−グラフト共重合体を得るに
は、例えば、下記一般式III、
【化16】 (式中R1 は前記に同じ)で表される繰り返し単位から
なる重合体のブロック鎖Cと、前記一般式IIで表され
るくり返し単位からなる重合体のブロック鎖Bから構成
されている幹分子鎖となるブロック共重合体Tを合成
し、次に、このブロック共重合体Tが持つ側鎖のヒドロ
キシル基に、一般式RMe(ここに、Rはt−ブチルエ
ーテル、ジフェニルエチレン、ベンジル、ナフタレンま
たはクミル基、Meはナトリウム、カリウム、またはセ
シウム原子である)で表される有機アルカリ金属を反応
させて、カルバニオン化し、これに下記一般式IV、
【化17】 (ここに、R2 は前記に同じ)で表されるアルキレンオ
キサイドを加えてグラフト鎖を成長させることによって
行うことができる。
【0027】この際、出発原料として用いられるブロッ
ク鎖B、Cからなる幹高分子としてのブロック−グラフ
ト共重合体Tは、先ず、4−ヒドロキシスチレン、4−
(1−メチルエテニル)フェノール等で例示される前記
一般式IIIで示される残基を含有するモノマー化合物
について、そのフェノール性水酸基をトリアルキル基や
トリアルキルシリル基で保護しておき、これとトリアル
キルシリルスチレン、あるいはα−アルキル−トリアル
キルシリルスチレン等のモノマー化合物をリビングアニ
オン重合法により重合し、次に酸等で加水分解すること
によって得ることができる。
【0028】この重合に用いられる開始剤には、n−ブ
チルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブ
チルリチウム等の有機金属化合物が例示されるが、これ
らの内では特に、sec−ブチルリチウムが好ましく、
この使用量は、仕込み化合物量と共に得られる重合体の
分子量を決定するので、所望の分子量に応じて決めれば
よい。また、開始剤濃度は、得られたブロック共重合体
Tを構成するブロック鎖Cの重合度が10以上あるの
で、通常は反応溶媒中で10-2〜10-4モル/リットル
の濃度になるように調整する。
【0029】重合は一般に有機溶媒中で行われるが、こ
れに使用される有機溶媒としては、ジオキサン、テトラ
ヒドロフラン等のアニオン重合用の溶媒が好ましく、重
合に供するモノマー化合物の濃度は、1〜10重量%が
適切である。重合反応は、圧力10-5Torr以下の高
真空下、または精製して水分等の有害物質を除去したア
ルゴン、窒素等の不活性ガス雰囲気中で、撹拌下に行う
のが好ましい。 保護基の脱離は、アセトン、メチルエ
チルケトン等の溶媒中で加熱下に塩酸等の酸を滴下する
ことによって容易に行うことができる。
【0030】このようにして得られたブロック共重合体
Tのヒドロキシル基のカルバニオン化は、これを濃度1
〜30重量%、好ましくは1〜10重量%のテトラヒド
ロフラン等の溶媒に溶解し、これに有機アルカリ金属を
加え、0〜40℃で30分〜6時間撹拌することにより
行われる。この反応に用いられる有機アルカリ金属とし
ては、例えば、t−ブトキシカリウム、ナフタレンカリ
ウム、ジフェニルエチレンカリウム、ベンジルカリウ
ム、クミルカリウム、ナフタレンナトリウム、クミルセ
シウム等が挙げられるが、これらの内では特に、t−ブ
トキシカリウムが好ましい。
【0031】カルバニオン化したブロック共重合体T
は、次に前記一般式IVで示されるアルキレンオキサイ
ド、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイ
ド等を蒸気状あるいは液状で加え、40〜80℃で5〜
48時間撹拌すると、ブロック−グラフト共重合体を得
ることができる。アルキレンオキサイドを加えた重合溶
液は、これを水中に注ぐとブロック−グラフト共重合体
が沈殿し、それをろ過して乾燥すると単離できる。
【0032】このブロック−グラフト共重合体のキャラ
クタリゼーションは、膜浸透圧計で数平均分子量を測定
し、赤外吸収スペクトル、1 H−NMR、13C−NMR
で構造や組成を決定し、その結果からグラフト鎖の重合
度を決定することができる。また、GPC溶出曲線で、
目的物が単離できているか否かの判断と分子量分布を推
測することができる。
【0033】この幹分子となるブロック共重合体Tの重
合およびこれのグラフト鎖を成長させるための反応は、
通常有機溶媒中で行われるが、これに使用できる有機溶
媒の例としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、テ
トラヒドロピラン、ベンゼン等が挙げられる。重合停止
剤としては、例えば、ヨウ化メチルや塩化メチル等を挙
げることができる。
【0034】グラフト鎖の長さの制御は、ブロック−グ
ラフト共重合体に含まれるブロック鎖Cのモル数と、カ
ルバニオン化するときの有機アルカリ金属の量と、アル
キレンオキサイドの量とで決定される。すなわち、有機
アルカリ金属の量は、ブロック鎖Cのモル数を超えては
ならず、また、グラフト鎖の長さは、下記数式で表さ
れる。 [(アルキレンオキサイドのモル数)/(有機アルカリ
金属のモル数)]×(アルキレンオキサイドの分子量)
・・・・・ 例えば、グラフト鎖の長さが数平均分子量で2000の
ブロック−グラフト共重合体を製造するには、ブロック
鎖Cを7×10−3モル含むブロック−グラフト共重合
体に、有機アルカル金属を5×10−3モル加えてカル
バニオン化した後、アルキレンオキサイド22gを加え
ればよい。また、数平均分子量が59のグラフト鎖を持
つブロック−グラフト共重合体を製造するには、上記各
成分を全て等モルにすればよい。さらに数平均分子量が
59〜4400のものでは、その中間を任意に選択する
ことにより達成される。
【0035】本発明の架橋型高分子固体電解質は、この
ようにして得られたブロック−グラフト共重合体に高エ
ネルギ−線を照射して、系全体を架橋した後、非水系電
解液を添加することによって得られる。
【0036】架橋反応の励起手段としては、電子線(放
射線)、紫外線(光)および熱線があり、エネルギーレ
ベルとして夫々103 〜106 eV、数eV、および〜
10-2eVのオーダー領域にあるが、本発明では、エネ
ルギーレベルが高く、制御し易く、ラジカル発生剤を必
要としない電子線(放射線)架橋が適しており、電子線
照射装置としてCB250/30/180L(岩崎電気
社製商品名)を使用した場合、加速電圧200kV、線
量5〜50Mrad.であった。
【0037】熱による架橋は、広範囲の架橋を再現性良
く行うためには不向きであり、紫外線は簡便な方法であ
るが、フィルムの形態によっては、うまく架橋できない
場合があった。また、熱と紫外線の併用による架橋方法
では、架橋剤とこれを励起するためのラジカル発生剤が
必要であるが、これを使用することで反応系がより複雑
になるのと同時に、場合によっては、リチウムイオンの
輸送に悪影響を及ぼすことになる。
【0038】以下、本発明の架橋ブロック−グラフト共
重合体に適合し、用途別の特性を重視した電解液の構成
について述べる。 [高温作動型(60〜80℃)大型電池用電解液]電気
自動車あるいは電力平坦化用等の高温(60〜80℃)
で作動する大型電池に最適な非水系電解液は、熱安定性
が高く、しかも高温時においても蒸気圧の発生しないポ
リアルキレンオキサイドを主体とすることが好ましく、
本発明の架橋ブロック−グラフト共重合体に適合するこ
とがわかった。
【0039】前記架橋ブロック−グラフト共重合体に添
加されるポリアルキレンオキサイドにはジエチレングリ
コール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリ
コール、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコー
ルモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエ
チルエーテル、ポリエチレングリコールモノプロピルエ
ーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ポリ
エチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレング
リコールジエチルエーテル、ポリエチレングリコールジ
プロピルエーテルおよびこれら化合物のエチレングリコ
ール構造をプロピレングリコール構造に置き換えた化合
物が挙げられ、その1種または2種以上の組み合わせで
使用される。
【0040】ポリアルキレンオキサイドに添加されるリ
チウム系無機塩の種類は、LiClO4 、Li BF4
Li PF6 、Li AsF6 、Li CF3 SO3 、および
LiN( CF3 SO2)2 から選択される少なくとも一種
の化合物がよい。ポリアルキレンオキサイドに対する塩
濃度は、0.5〜3モル/リットルが好ましく、0.5
モル/リットル未満では電極中のイオンキャリア数が少
なくなり、電極利用率が低下する。また、ポリアルキレ
ンオキサイドとリチウム系無機塩からなる電解液の架橋
ブロック−グラフト共重合体に対する添加割合は20重
量%以上、特には100〜300重量%が好ましい。
【0041】架橋ブロック−グラフト共重合体へのリチ
ウム系無機塩とポリアルキレンオキサイドの配合方法に
は特に制限はなく、例えば、架橋ブロック−グラフト共
重合体にリチウム系無機塩とポリアルキレンオキサイド
とを添加して、常温または加熱下に機械的に混練する方
法がある。
【0042】[低温特性(室温〜−20℃)を重視した
民生小型電池用電解液の構成]カメラやビデオ等で使用
される民生用小型電池に最適な高分子固体電解質には、
特に低温(室温〜−20℃)時においてもイオン伝導性
が低下しないことが求められる。そこで本発明では、粘
性の高い、環状炭酸エステル類の他に、低粘度で誘電率
の高い直鎖状炭酸エステル類や直鎖状エステル類等を加
え、非水系電解液全体の粘度を低下させた。
【0043】前記架橋ブロック−グラフト共重合体に添
加される非水系電解液の構成は具体的には、エチレン
カーボネート プロピレンカーボネート γ−ブチロラ
クトンおよび2−メチル−γ−ブチロラクトンから選択
される少なくとも一種と、1,2−ジメトキシエタン、
メトキシエトキシエタン、ジオキソラン、4−メチルジ
オキソラン、2−メチルジオキソラン、ジエチルカーボ
ネート、アセトニトリル、テトラヒドロフランおよび2
−メチルテトラヒドロフランから選択される少なくとも
一種、およびリチウム系無機塩から成るものである。ま
た、エチレンカーボネート プロピレンカーボネート
γ−ブチロラクトンおよび2−メチル−γ−ブチロラク
トンから選択される少なくとも一種と、1,2−ジメト
キシエタン、メトキシエトキシエタン、ジオキソラン、
4−メチルジオキソラン、2−メチルジオキソラン、ジ
エチルカーボネート、アセトニトリル、テトラヒドロフ
ランおよび2−メチルテトラヒドロフランから選択され
る少なくとも一種は混合して使用され、その混合比率
は、20:80〜80:20が好適である。
【0044】リチウム系無機塩の種類は、前記高温型電
解液に使用したものと同じであり、上記有機溶媒に対す
る塩濃度は、0.5〜3モル/リットルが好ましく、
0.5モル/リットル未満では電極中のイオンキャリア
数が少なくなり、電極利用率が低下する。また、該非水
系電解液の架橋ブロック−グラフト共重合体に対する添
加割合は20重量%以上、特には100〜300重量%
が好適である。
【0045】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を実施
例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定
されるものではない。なお、実施例中のブロック共重合
体は、各成分を「−b−」でつないで、 例えばポリアリ
ルジメチルシリルスチレン、 ポリヒドロキシスチレン、
ポリアリルジメチルシリルスチレンの3成分3元ブロッ
ク共重合体をポリ(アリルジメチルシリルスチレン−b
−ヒドロキシスチレン−b−アリルジメチルシリルスチ
レン)と表し、グラフト共重合体は各成分を「−g−」
でつないで、 例えばポリアリルジメチルシリルスチレ
ン、 ポリヒドロキシスチレン、 ポリアリルジメチルシリ
ルスチレンの3成分3元ブロック共重合体とポリエチレ
ンオキサイドとのブロック−グラフト共重合体を、ポリ
[アリルジメチルシリルスチレン−b−(ヒドロキシス
チレン−g−エチレンオキサイド)−b−アリルジメチ
ルシリルスチレン]と表記する。
【0046】
【実施例】
(実施例1−1)[ポリ(アリルジメチルシリルスチレ
ン−b−ヒドロキシスチレン−b−アリルジメチルシリ
ルスチレン)・・・幹高分子鎖となるブロック共重合体
Tの合成] 10-5Torrの高真空下でテトラヒドロフラン250
ml中に開始剤としてsec−ブチルリチウムの1.2
×10-4モルを仕込んだ。この混合溶液を−78℃に保
ち、テトラヒドロフラン90mlで希釈した10.8g
のアリルジメチルシリルスチレンを添加して、30分間
撹拌しながら重合させた。この反応溶液は赤色を呈し
た。次に、テトラヒドロフラン125mlで希釈したt
ert−ブトキシスチレンを5.2g加えて30分間、
撹拌下で重合させた。この溶液は黄色を呈した。これに
テトラヒドロフラン68mlで希釈したアリルジメチル
シリルスチレンを10.9g加え、さらに30分間、撹
拌下で重合させた。このとき溶液は、再度赤色を呈し
た。重合終了後、反応混合物をメタノール中に注ぎ、得
られた重合物を沈殿させた後、分離し、乾燥して26.
9gの重合体を得た。
【0047】この重合体のGPC溶出曲線は、単峰性で
あり、分子量分布(Mw/Mn)も1.1と極めて高い
単分散性を示した。膜浸透圧法により測定した数平均分
子量は22.1×104 g/モルであり、また赤外吸収
スペクトル、および 1H−NMRの分析結果は、以下の
通りであった。 赤外吸収スペクトル(極大吸収波数: /cm、KB
r);2954、2929、2850、1619、15
98、1504、1446、1400、1365、12
47、1162、1114、985、923、898、
815、781、
【0048】1H−NMR(CDCl3 ) 0.2〜0.4ppm:(s,9H,−Si(CH3
3 ) 1.2〜1.6ppm:(s,9H,−C(CH3
3 ) 1.2〜1.6ppm:(s,2H,−Si−CH2 ) 1.2〜2.2ppm:(ブロード,3H,−CH2
CH) 5.1〜6.2ppm:(ブロード,3H,−CH=C
2 ) 6.2〜6.8ppm:(ブロード,4H,−O−C6
4 ) 7.0〜7.4ppm:(ブロード,4H,−Si−C
64 ) これらの結果から、得られた重合体がポリ(アリルジメ
チルシリルスチレン−b−tert−ブトキシスチレン
−b−アリルジメチルシリルスチレン)であることが確
認された。また、各モノマーの重合度は、両末端のアリ
ルジメチルシリルスチレンが、夫々440、tert−
ブトキシスチレンが240、総計1120であった。
【0049】次に、得られたトリブロック共重合体をア
セトンに溶解し、塩酸を用いて還流下6時間の加水分解
を行うことにより、アリルジメチルシリルスチレン44
部/ヒドロキシスチレン24部/アリルジメチルシリル
スチレン44部からなるポリ(アリルジメチルシリルス
チレン−b−ヒドロキシスチレン−b−アリルジメチル
シリルスチレン)を合成した。このトリブロック共重合
体の赤外吸収スペクトルおよび 1H−NMRの分析結果
は、以下の通りであった。 赤外吸収スペクトル(極大吸収波数: /cm、KB
r);3396、3000、2950、2930、16
00、1504、1446、1400、1313、12
47、1162、1114、985、923、898、
815、781、
【0050】1H−NMR(1,4−Dioxane−
d8); −0.1〜0.1ppm:(s,9H,−Si(CH
33 ) 0.9〜1.9ppm:(s,2H,−Si−CH2 ) 0.9〜1.9ppm:(ブロード,3H,−CH2
CH) 5.1〜6.2ppm:(ブロード,3H,−CH=C
2 ) 6.1〜6.5ppm:(ブロード,4H,−O−C6
4 ) 6.8〜7.2ppm:(ブロード,4H,−Si−C
64 ) なお、このポリ(アリルジメチルシリルスチレン−b−
ヒドロキシスチレン−b−アリルジメチルシリルスチレ
ン)におけるアリルジメチルシリルスチレン/ヒドロキ
シスチレン/アリルジメチルシリルスチレンの組成比と
分子量は、各モノマーの仕込み量と開始剤の濃度とから
任意に選択することができる。
【0051】(実施例1−2)[エチレンオキサイドに
よるポリ(アリルジメチルシリルスチレン−b−ヒドロ
キシスチレン−b−アリルジメチルシリルスチレン)か
らのブロック−グラフト共重合体の合成] 前記実施例1−1で得られたポリ(アリルジメチルシリ
ルスチレン−b−ヒドロキシスチレン−b−アリルジメ
チルシリルスチレン)の10.0gを10-5Torrの
高真空下で500mlのテトラヒドロフランに溶解し
た。この溶液に25℃で8.0ミリモルのtert−ブ
トキシカリウムを加えて1時間撹拌後、エチレンオキサ
イド7.0gを添加した。これを70℃に保ち、20時
間撹拌を続けた。その後、ヨウ化メチルを加えて重合を
停止させてから、反応液を水中に注ぎ、重合体を沈殿分
離し、乾燥して、16.1gの重合体(試料No.T−
1)を得た。
【0052】この重合体T−1のGPC溶出曲線は、単
峰性で対称性がよく、分子量分布(Mw/Mn)も1.
1と極めて狭い単分散性を示したことにより、これが単
一の重合体であることを確認した。さらに、図1に示す
13C−NMR測定の結果は、幹分子であるヒドロキシス
チレンへのグラフト化率はほぼ100%であり、ポリエ
チレンオキサイドの組成は38.1%、グラフト鎖の重
合度が8.6(数平均分子量は380g/モル)である
ことを確認した。
【0053】(実施例2)[異なる組成を有するブロッ
ク−グラフト共重合体の合成] 添加するエチレンオキサイドの量だけを変えて合成した
以外は、実施例1−2と同様の組成と合成方法でブロッ
ク−グラフト共重合体を合成し(試料No.T−2、T
−3)、その組成を表1に示した。得られたブロック−
グラフト共重合体は、いずれも単一で、分子量分布の狭
い重合体であった。
【0054】
【表1】
【0055】(実施例3)[ブロック−グラフト共重合
体の電子線架橋] 上記実施例1−2で得られたブロック−グラフト共重合
体(試料No.T−1)3.0gをテトラヒドロフラン
に溶解した後、テフロン(登録商標)板上に流延した。
この試料をアルゴンガス気流下、室温で24時間静置し
て過剰の溶媒を除去した後、さらに90℃で24時間減
圧乾燥し、厚さ約30μmのフィルムを得た。このフィ
ルムに加速電圧200kVで、線量10Mrad.の電
子線照射を行い、架橋した後、架橋度を評価するために
再度テトラヒドロフランに浸漬した。その結果、フィル
ムの膜厚は40μmと約30%程度厚くはなったが、形
状は浸漬前と殆ど変化はなかった。
【0056】(実施例4〜14)[異なるエネルギーの
電子線を照射した時の架橋度の評価] ブロック−グラフト共重合体(試料No.T−1〜T−
3)を上記実施例3と同様の方法でフィルム化し、表2
に示したような異なるエネルギーの電子線を照射してそ
の架橋度を評価し、その結果を表2に併記した。この結
果から、ブロック−グラフト共重合体の架橋には、10
〜100Mrad.の電子線照射が必要であり、10M
rad.未満では架橋反応が十分進行せず、100Mr
ad.を超えてもフィルムの劣化が激しく、また膜強度
も弱くなってしまった。従って、本発明では10〜50
Mrad.の電子線照射量が適正値である。
【0057】
【表2】
【0058】(実施例15)[ポリアルキレンオキサイ
ドとリチウム系無機塩からなる非水系電解液を添加した
高温電池用架橋型高分子固体電解質] 実施例1−2で得たブロック−グラフト共重合体(試料
No.T−1)5.0gを100mlの1、4−ジオキ
サンに溶解した後、テフロン(登録商標)板上に流延し
た。次いでアルゴンガス気流下、室温で24時間静置し
て過剰の溶媒を除去した後、さらに90℃で24時間減
圧乾燥して厚さ100μmのフィルムを得た。次にこの
フィルムに加速電圧200kVで、線量25Mrad.
の電子線照射を行い架橋した後、1モル/リットルのL
iClO4 を溶解したポリエチレングリコールジメチ
ルエーテル(Mn=350)電解液中に20時間浸漬し
た後取り出したところ、フィルムの膜厚は110μmと
約10%程度厚くはなったが、形状は浸漬前と殆ど変化
はなかった。
【0059】このようにして得られた架橋型高分子固体
電解質は、架橋ブロック−グラフト共重合体の自重に対
して60重量%もの電解液を含有しているにも拘らず、
強靱で、動的粘弾性試験機RSA−II(Rheome
tric Inc.社製商品名)による弾性率は、4.
7×106 dyne/cm2 以上を示した。また、本架
橋型高分子固体電解質を50kg/cm2 の荷重で圧縮
しても、内部に添加された電解液は滲出しなかった。
【0060】示差熱天秤を用いた熱分析では、この膜の
重量減少は160℃まで皆無であり、非常に高い熱安定
性を示すと共に、高温においても揮発成分が発生しない
ため、極めて安全性の高い架橋型高分子固体電解質とい
えよう。
【0061】また、この膜を直径10mmの円板状に切
り出し、両面にリチウム極板を挟んで電極を形成し、周
波数5Hz〜5MHzの交流インピーダンス測定装置:
マルチフリクェンシーLCRXメーターモデル4192
A(横河ヒューレットパッカード社製商品名)を用い、
複素インピーダンス法によりイオン伝導度を算出した。
その結果、80℃で0.5×10-3S/cm、の値を得
た。
【0062】(実施例16〜23)[種類の異なるポリ
アルキレンオキサイドとリチウム系無機塩を添加した架
橋型高分子固体電解質] ポリアルキレンオキサイドとリチウム系無機塩の種類を
表3のように変えた他は実施例15と同様の条件と方法
で架橋型高分子固体電解質を製造し、同様の物性試験を
行ってその結果を表3に併記した。これにより、本発明
の架橋型高分子固体電解質では、多量のポリアルキレン
オキサイドとリチウム系無機塩を含有しているにも拘ら
ず、膜強度は殆ど低下せず、また、同時に高いイオン伝
導度を示すことがわかった。
【0063】
【表3】
【0064】(実施例24〜31)[異なる種類の有機
溶媒とリチウム系無機塩から成る非水系電解液を添加し
た民生用小型電池に適合した架橋型高分子固体電解質] 実施例1−2および実施例2で作製したブロック−グラ
フト共重合体(サンプルNo.T−1〜T−3)から調
製したフィルムに電子線を照射して架橋した後、表4に
示した非水系電解液を添加して架橋型高分子固体電解質
を製造し、前記と同様の物性試験を行ってその結果を表
4に併記した。ここでも、本発明の架橋型高分子固体電
解質では、膜強度は高く、また、低温においても安定
で、高いイオン伝導度を維持できることがわかった。
【0065】
【表4】
【0066】(比較例1) 米国特許第5,296,318号に記載されている高分
子固体電解質の形成方法に従い、膜厚100μmのフィ
ルム状固体電解質を作製した。ポリマーはKyner
FLEX2801(Atochem社製商品名)1.5
gと1モル/リットルのLiPF6 を溶解したプロピ
レンカーボネート1.5gを9gのテトラヒドロフラン
に溶解混合した後、テフロン(登録商標)製シャーレ上
にキャストし、室温下で10時間放置することにより膜
厚100μmのフィルムを得た。このフィルムをガラス
板上に室温下に半日程放置したところ、フィルムの中か
ら電解液のプロピレンカーボネートが流出した。
【0067】(比較例2、3)特公平5−74195号
公報の実施例に記載された方法に従って合成したブロッ
ク−グラフト共重合体[ポリ(スチレン−b−(p−ヒ
ドロキシスチレン−g−エチレンオキサイド)−b−ス
チレン)]から作製したフィルム状高分子固体電解質
を、前記実施例21に示したポリアルキレンオキサイド
−LiAsF6 系電解液に浸漬したところ、約2分間で
溶解した(比較例2)。また、同じフィルムを前記実施
例26に示した有機溶剤−LiAsF6 系電解液に浸漬
したところ約30秒間で溶解してしまった(比較例
3)。
【0068】なお、本発明は、上記実施形態に限定され
るものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明
の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同
一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いか
なるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0069】例えば、上記説明では、本発明の架橋型高
分子固体電解質を固体二次電池素子に使用するものとし
て説明したが、本発明は、一次電池、コンデンサー、エ
レクトロクロミックディスプレイまたはセンサー等の各
種固体電気化学素子に用いても有効であることは言うま
でもない。
【0070】
【発明の効果】本発明の架橋型高分子固体電解質は、そ
の構成要素であるブロック−グラフト共重合体が、1)
明確なミクロ相分離構造を示す、2)機械的強度の高い
幹分子が疑似架橋構造を形成し、構造保持の役目を果た
すと共に材料強度を高める、3)さらに、電子線架橋に
より、相構造の恒久的な凍結が可能であるため、いかな
る種類の電解液をも添加することができる、4)グラフ
ト成分が比較的低分子でも連続相を形成し、金属イオン
の通路を確保する、5)グラフト成分が相溶化剤として
の機能を有するため、あらゆる種類の電解液を安定に保
持できる、6)分子内に架橋サイトを有しているため、
架橋剤やラジカル重合開始剤等を添加しなくても架橋で
きる、等の諸特性を有している。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1−2で得られたブロック−グ
ラフト共重合体の13C−NMRスペクトルを示す図面で
ある。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 高野 敦志 長岡市左近町133−5 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01B 1/06 - 1/12 C08F 287/00 H01M 10/40

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式I、 【化1】 (ここに、R は水素原子、メチル基またはエチル
    基、R は水素原子またはメチル基、R はアルキル
    基、アリール基、アシル基、シリル基またはシアノアル
    キル基、nは1〜100の整数であり、式中の、 【化2】 で示されるグラフト鎖の数平均分子量は59〜4400
    である)で表される繰り返し単位から成る重合度10以
    上の重合体のブロック鎖Aと、 一般式II、 【化3】 (ここに、R は水素原子、メチル基またはエチル
    基、R およびR はメチル基またはエチル基であ
    る)で表される繰り返し単位からなる重合度200以上
    の重合体のブロック鎖Bとから構成され、ブロック鎖A
    とブロック鎖Bの成分比が1:20〜20:1である重
    合度210以上のブロック−グラフト共重合体に、高エ
    ネルギ−線を照射して系全体を架橋した後、非水系電解
    液を添加することを特徴とする架橋型高分子固体電解質
    の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記高エネルギ−線が、電子線であるこ
    とを特徴とする請求項1に記載の架橋型高分子固体電解
    質の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記非水系電解液が、ポリアルキレンオ
    キサイドおよびリチウム系無機塩から成ることを特徴と
    する請求項1または請求項2に記載の架橋型高分子固体
    電解質の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記非水系電解液が、エチレンカーボネ
    ート プロピレンカーボネート γ−ブチロラクトンお
    よび2−メチル−γ−ブチロラクトンから選択される少
    なくとも一種と、1,2−ジメトキシエタン、メトキシ
    エトキシエタン、ジオキソラン、4−メチルジオキソラ
    ン、2−メチルジオキソラン、ジエチルカーボネート、
    アセトニトリル、テトラヒドロフランおよび2−メチル
    テトラヒドロフランから選択される少なくとも一種、お
    よびリチウム系無機塩から成ることを特徴とする請求項
    1または請求項2に記載の架橋型高分子固体電解質の製
    造方法。
  5. 【請求項5】 一般式I、 【化4】 (ここに、R は水素原子、メチル基またはエチル
    基、R は水素原子またはメチル基、R はアルキル
    基、アリール基、アシル基、シリル基またはシアノアル
    キル基、nは1〜100の整数であり、式中の、 【化5】 で示されるグラフト鎖の数平均分子量は59〜4400
    である)で表される繰り返し単位から成る重合度10以
    上の重合体のブロック鎖Aと、 一般式II、 【化6】 (ここに、R は水素原子、メチル基またはエチル
    基、R およびR はメチル基またはエチル基であ
    る)で表される繰り返し単位からなる重合度200以上
    の重合体のブロック鎖Bとから構成され、ブロック鎖A
    とブロック鎖Bの成分比が1:20〜20:1である重
    合度210以上のブロック−グラフト共重合体。
  6. 【請求項6】 前記請求項に記載ブロック−グラフ
    ト共重合体に高エネルギ−線を照射して系全体を架橋し
    た後、非水系電解液を添加してできる架橋型高分子固体
    電解質。
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