JP3492176B2 - 高い動的変形抵抗を有する良加工性高強度鋼板とその製造方法 - Google Patents
高い動的変形抵抗を有する良加工性高強度鋼板とその製造方法Info
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Description
用され、衝突時の衝撃エネルギーを効率よく吸収するこ
とによって乗員の安全性確保に寄与することのできる高
い動的変形抵抗を有する良加工性高強度熱延鋼板および
冷延鋼板とその製造方法に関するものである。
の最重要性能として認識され、それに対応するための高
い高速変形抵抗を示す材料への期待が高まっている。例
えば、乗用車の前面衝突においては、フロントサイドメ
ンバーと呼ばれる部材にこのような材料を適用すれば、
前述の部材が圧潰することで衝撃のエネルギーが吸収さ
れ、乗員にかかる衝撃を緩和することができる。
み速度は103 (1/s)程度まで達するため、材料の
衝撃吸収性能を考える場合には、このような高歪み速度
領域での動的変形特性の解明が必要である。また、同時
に省エネルギー、CO2 排出削減を目指して自動車車体
の軽量化を同時に達成することが必須と考えられ、この
ために有効な高強度鋼板のニーズが高まっている。
J Vol.9(1996)pp.1112〜1115
に、高強度薄鋼板の高速変形特性と衝撃エネルギー吸収
能について報告し、その中で、103 (1/s)程度の
高歪み速度領域での動的強度は、10-3(1/s)の低
歪み速度での静的強度と比較して大きく上昇すること、
材料の強化機構によって変形抵抗の歪み速度依存性が変
化すること、この中で、TRIP(変態誘起塑性)型の
鋼やDP(フェライト/マルテンサイト2相)型の鋼が
他の高強度鋼板に比べて優れた成形性と衝撃吸収能を兼
ね備えていることを報告している。
性に優れた高強度鋼板とその製造方法を提供するものと
して特開平7−18372号公報には、衝撃吸収能を変
形速度の上昇に伴う降伏応力の上昇のみで解決すること
を開示しているが、衝撃吸収能を向上させるために、残
留オーステナイトの量以外に残留オーステナイトの性質
をどのように制御すべきかは明確にされていない。
突時の衝撃エネルギーの吸収に及ぼす部材構成材料の動
的変形特性はすこしづつ解明されつつあるものの、衝撃
エネルギー吸収能に優れた自動車部品用鋼材としてどの
ような特性に注目し、どのような基準に従って材料選定
を行うべきかは未だ明らかにされていない。また、自動
車用部品用鋼材はプレス成形によって要求された部品形
状に成形され、その後、一般的には塗装焼き付けされた
後に自動車に組み込まれ、実際の衝突現象に直面する。
しかしながら、このような予変形+焼き付け処理を行っ
た後の鋼材の衝突時の衝撃エネルギー吸収能の向上にど
のような鋼材強化機構が適しているかも未だ明らかには
されていない。
ドメンバー等の衝突時の衝撃エネルギー吸収を担う部品
に成形加工されて使用される鋼材で、高い衝撃エネルギ
ー吸収能を示す高強度鋼板とその製造方法を提供するこ
とを目的としている。先ず、本発明による高い衝撃エネ
ルギー吸収能を示す高強度鋼板は、 (1)最終的に得られる鋼板のミクロ組織がフェライト
および/またはベイナイトを含み、このいずれかを主相
とし、体積分率で3〜50%の残留オーステナイトを含
む第3相との複合組織であり、かつ0%超10%以下の
相当歪みの変形を予め与え(予変形という。以下同じ)
た後、5×10-4〜5×10-3(1/s)の歪み速度範
囲で変形した時の準静的変形強度σsと、前記予変形を
加えた後、5×102〜5×103(1/s)の歪み速
度で変形した時の動的変形強度σdとの差:σd−σs
が60MPa以上であり、かつ歪み5〜10%の加工硬
化指数が0.130以上を満足することを特徴とする高
い動的変形抵抗を有する良加工性高強度鋼板であり、 (2)最終的に得られる鋼板のミクロ組織がフェライト
および/またはベイナイトを含み、このいずれかを主相
とし、体積分率で3〜50%の残留オーステナイトを含
む第3相との複合組織であり、かつ0%超10%以下の
相当歪みを予め与えた後、5×10-4〜5×10
-3(1/s)の歪み速度範囲で変形した時の準静的変
形強度σsと、前記予変形を加えた後、5×102〜5
×103(1/s)の歪み速度で変形した時の動的変形
強度σdとの差:σd−σsが60MPa以上であり、
かつ、5×102〜5×103(1/s)の歪み速度範
囲で変形した時の3〜10%の相当歪み範囲における変
形応力の平均値σdyn(MPa)と5×10-4〜5×1
0-3(1/s)の歪み速度範囲で変形した時の3〜10
%の相当歪み範囲における変形応力の平均値σst(MP
a)の差が5×10-4〜5×10-3(1/s)の歪み速
度範囲で測定された静的な引張り試験における最大応力
TS(MPa)によって表現される式(σdyn−σs
t)≧−0.272×TS+300を満足し、かつ歪み
5〜10%の加工硬化指数が0.130以上を満足する
ことを特徴とする高い動的変形抵抗を有する良加工性高
強度鋼板である。また、 (3)最終的に得られる鋼板のミクロ組織がフェライト
および/またはベイナイトを含み、このいずれかを主相
とし、体積分率で3〜50%の残留オーステナイトを含
む第3相との複合組織であり、かつ0%超10%以下の
相当歪みを予め与えた後、5×10-4〜5×10-3(1
/s)の歪み速度範囲で変形した時の準静的変形強度σ
sと、前記予変形を加えた後、5×102〜5×103
(1/s)の歪み速度で変形した時の動的変形強度σd
との差:σd−σsが60MPa以上であり、かつ、5
×102〜5×103(1/s)の歪み速度範囲で変形
した時の3〜10%の相当歪み範囲における変形応力の
平均値σdyn(MPa)と5×10-4〜5×10-3(1
/s)の歪み速度範囲で変形した時の3〜10%の相当
歪み範囲における変形応力の平均値σst(MPa)の差
が5×10-4〜5×10-3(1/s)の歪み速度範囲で
測定された静的な引張り試験における最大応力TS(MP
a)によって表現される式(σdyn−σst)≧−
0.272×TS+300を満足し、更に、前記残留オ
ーステナイト中の固溶〔C〕と鋼材の平均Mn等量{M
n eq =Mn+(Ni+Cr+Cu+Mo)/2}よっ
て決まる値(M)が、M=678−428×〔C〕−3
3Mn eq が−140以上70未満を満足し、かつ、0
%超10%以下の相当歪みを予め与えた後の鋼材の残留
オーステナイト体積分率が2.5%以上であり、かつ、
残留オーステナイトの初期体積分率V(0)と、10%
の相当歪みの変形を予め加えた時の残留オーステナイト
の体積分率V(10)との比、V(10)/V(0)が
0.3以上を満足し、かつ歪み5〜10%の加工硬化指
数が0.130以上を満足することを特徴とする高い動
的変形抵抗を有する良加工性高強度鋼板である。
において、前記残留オーステナイトの平均結晶粒径が5
μm以下であること、前記残留オーステナイトの平均結
晶粒径と、主相であるフェライトもしくはベイナイトの
平均結晶粒径の比が、0.6以下で、主相の平均粒径が
10μm以下、好ましくは6μm以下であること、マル
テンサイトの占積率が3〜30%、前記マルテンサイト
の平均結晶粒径が10μm以下、好ましくは5μm以下
であること、フェライトの体積分率が40%以上、引張
強さ×全伸びの値が20,000以上であること、の何
れかを満足する高い動的変形抵抗を有する高強度鋼板で
ある。
で、C:0.03%以上0.3%以下、SiとAlの一
方または双方を合計で0.5%以上3.0%以下、必要
に応じてMn,Ni,Cr,Cu,Moの1種または2
種以上を合計で0.5%以上3.5%以下含み、残部が
Feを主成分とする高強度鋼板であるか、この高強度鋼
板に更に必要に応じて、Nb,Ti,V,P,B,C
a,REMの1種または2種以上を、Nb,Ti,Vに
おいては、それらの1種または2種以上を合計で0.3
%以下、Pにおいては0.3%以下、Bにおいては0.
01%以下、Caにおいては0.0005%以上0.0
1%以下、REM:0.005以上0.05%以下を含
有し、残部がFeを主成分とする高い動的変形抵抗を有
する高強度鋼板である。
有する高強度熱延鋼板の製造方法としては、前記(5)
の成分組成を有する連続鋳造スラブを、鋳造ままで熱延
工程へ直送し、もしくは一旦冷却した後に再度加熱した
後、熱延し、Ar3−50℃〜Ar3+120℃の温度
の仕上げ温度で熱延を終了し、熱延に引き続く冷却過程
での平均冷却速度を5℃/秒以上で冷却後、500℃以
下の温度で巻き取ることを特徴とする熱延鋼板のミクロ
組織がフェライトおよび/またはベイナイトを含み、こ
のいずれかを主相とし、体積分率で3〜50%の残留オ
ーステナイトを含む第3相との複合組織であり、かつ0
%超10%以下の相当歪みを予め与えた後、5×10-4
〜5×10-3(1/s)の歪み速度範囲で変形した時
の準静的変形強度σsと、前記予変形を加えた後、5×
102〜5×103(1/s)の歪み速度で変形した時
の動的変形強度σdとの差:σd−σsが60MPa以
上であり、かつ、5×102〜5×103(1/s)の
歪み速度範囲で変形した時の3〜10%の相当歪み範囲
における変形応力の平均値σdyn(MPa)と5×10
-4〜5×10-3(1/s)の歪み速度範囲で変形した
時の3〜10%の相当歪み範囲における変形応力の平均
値σst(MPa)の差が5×10-4〜5×10-3(1/
s)の歪み速度範囲で測定された静的な引張り試験にお
ける最大応力TS(MPa)によって表現される式(σd
yn−σst)≧−0.272×TS+300を満足
し、かつ歪み5〜10%の加工硬化指数が0.130以
上を満足することを特徴とする高い動的変形抵抗を有す
る良加工性高強度熱延鋼板である。
仕上げ温度がAr3 −50℃〜Ar 3 +120℃の温度
範囲において、メタラジーパラメーター:Aが、(1)
式および(2)式を満たすような熱間圧延を行い、その
後、ランアウトテーブルにおける平均冷却速度を5℃/
秒以上とし、更に前記メタラジーパラメーター:Aと巻
き取り温度(CT)との関係が(3)式を満たすような
条件で巻き取る高い動的変形抵抗を有する高強度熱延鋼
板の製造方法、である。
高強度冷延鋼板の製造方法としては、前記(5)の成分
組成を有する連続鋳造スラブを、鋳造ままで熱延工程へ
直送し、もしくは一旦冷却した後に再度加熱した後、熱
延し、熱延後巻き取った熱延鋼板を酸洗後冷延し、連続
焼鈍工程で焼鈍して最終的な製品とする際に、0.1×
(Ac3 −Ac1)+Ac1℃以上Ac3+50℃以下
の温度で10秒〜3分焼鈍した後に、1〜10℃/秒の
一次冷却速度で550〜720℃の範囲の一次冷却停止
温度まで冷却し、引き続いて10〜200℃/秒の二次
冷却速度で200〜450℃の二次冷却停止温度まで冷
却した後、200〜500℃の温度範囲で15秒〜20
分保持し、室温まで冷却することを特徴とする冷延鋼板
のミクロ組織がフェライトおよび/またはベイナイトを
含み、このいずれかを主相とし、体積分率で3〜50%
の残留オーステナイトを含む第3相との複合組織であ
り、かつ0%超10%以下の相当歪みの変形を予め与え
た後、5×10-4〜5×10-3(1/s)の歪み速度範
囲で変形した時の準静的変形強度σsと、前記予変形を
加えた後、5×102〜5×103(1/s)の歪み速
度で変形した時の動的変形強度σdとの差:σd−σs
が60MPa以上であり、かつ、5×102〜5×10
3(1/s)の歪み速度範囲で変形した時の3〜10%
の相当歪み範囲における変形応力の平均値σdyn(MP
a)と5×10-4〜5×10-3(1/s)の歪み速度範
囲で変形した時の3〜10%の相当歪み範囲における変
形応力の平均値σst(MPa)の差が5×10-4〜5×
10-3(1/s)の歪み速度範囲で測定された静的な引
張り試験における最大応力TS(MPa)によって表現さ
れる式(σdyn−σst)≧−0.272×TS+3
00を満足し、かつ歪み5〜10%の加工硬化指数が
0.130以上を満足することを特徴とする高い動的変
形抵抗を有する良加工性高強度冷延鋼板であり、 (9)更に前記(8)において、前記連続焼鈍工程で焼
鈍して最終的な製品とするに際し、0.1×(Ac3−
Ac1)+Ac1℃以上Ac3+50℃以下の温度で10
秒〜3分焼鈍した後に、1〜10℃/秒の一次冷却速度
で550〜720℃の範囲の二次冷却開始温度Tqまで
冷却し、引き続いて10〜200℃/秒の二次冷却速度
で成分と焼鈍温度Toで決まる温度Tem以上、500
℃以下の二次冷却停止温度Teまで冷却した後、Te−
50℃以上500℃以下の温度Toaで15秒〜20分
保持し、室温まで冷却することを特徴とする冷延鋼板の
ミクロ組織がフェライトおよび/またはベイナイトを含
み、このいずれかを主相とし、体積分率で3〜50%の
残留オーステナイトを含む第3相との複合組織であり、
相当歪みで0%超10%以下の予変形を与えた後、5×
10-4〜5×10-3(1/s)の歪み速度範囲で変形し
た時の準静的変形強度σsと、前記予変形を加えた後、
5×102〜5×103(1/s)の歪み速度で変形し
た時の動的変形強度σdとの差:σd−σsが60MP
a以上であり、かつ、5×102〜5×103(1/
s)の歪み速度範囲で変形した時の3〜10%の相当歪
み範囲における変形応力の平均値σdyn(MPa)と5
×10-4〜5×10-3(1/s)の歪み速度範囲で変
形した時の3〜10%の相当歪み範囲における変形応力
の平均値σst(MPa)の差が5×10-4〜5×10-3
(1/s)の歪み速度範囲で測定された静的な引張り試
験における最大応力TS(MPa)によって表現される式
(σdyn−σst)≧−0.272×TS+300を
満足し、かつ歪み5〜10%の加工硬化指数が0.13
0以上を満足することを特徴とする高い動的変形抵抗を
有する良加工性高強度冷延鋼板、である。
ー等の衝突時の衝撃吸収用部材は、鋼板に曲げ加工やプ
レス成形加工を施すことによって製造される。自動車の
衝突時の衝撃は、このようにして加工された後に一般的
には塗装焼き付けされた後に加えられる。従って、この
ように部材への加工・塗装焼き付け処理が行われた後に
高い衝撃エネルギーの吸収能を示す鋼板が必要となる。
しかしながら、現在までのところ、成形による変形応力
の上昇と歪み速度上昇による変形応力の上昇とを同時に
考慮して実部材として衝撃吸収特性に優れた鋼板を得る
試みはなされていない。
収用部材としての高強度鋼板について長年の研究の結
果、このような成形加工された実部材において、鋼板に
適量の残留オーステナイトを含むことが優れた衝撃吸収
特性を示す高強度鋼板に適していることを見いだした。
すなわち、最適なミクロ組織は、種々の置換型元素によ
って容易に固溶強化されるフェライトおよび/またはベ
イナイトを含み、このいずれかを主相とし、変形中に硬
質のマルテンサイトに変態する残留オーステナイトを体
積分率で3〜50%含む第3相との複合組織である場合
に高い動的変形抵抗を示すことが判明した。また、初期
ミクロ組織の第3相にマルテンサイトを含む複合組織で
ある場合にも、或る特定の条件が満足されると高い動的
変形抵抗を有する良加工性高強度鋼板が得られることが
判明した。
験・検討を進めた結果、フロントサイドメンバー等の衝
撃吸収用部材の成形加工に相当する予変形の量は、部位
によっては最大20%以上に達する場合もあるが、相当
歪みとして0%超10%以下の部位が大半であり、従っ
て、この範囲の予変形の効果を把握することで、部材全
体としての予変形後の挙動を推定することが可能である
ことを見いだした。従って、本発明においては、部材へ
の加工時に与えられる予変形量として相当歪みにして0
%超10%以下の変形を選択した。
おける成形部材の吸収エネルギーEabと、素材強度S
(TS)との関係を示したものである。部材吸収エネル
ギーEabは、図2に示すような成形部材の長さ方向
(矢印方向)に、質量400Kgの重錘を速度15m/
秒で衝突させ、その時の圧潰量100mmまでの吸収エ
ネルギーである。なお、図2の成形部材は、厚さ2.0
mmの鋼板を成形したハット型部1に同じ厚さの同一鋼
種の鋼板2をスポット溶接により接合したものであり、
ハット型部1のコーナー半径は2mmである。3はスポ
ット溶接部である。図1から、部材吸収エネルギーEa
bは、通常の引張試験で得られる素材強度(TS)の高
いものほど高くなる傾向が見られるが、バラツキの大き
いことが分かる。この図1に示す各素材について、相当
歪みにして0%超〜10%以下の予変形を加えた後、5
×10-4〜5×10-3(1/s)の歪み速度で変形した
時の準静的変形強度σsと、5×102 〜5×10
3 (1/s)の歪み速度で 変形した時の動的変形強度
σdを測定した。
ることができた。図1の各プロットの記号で、○は0%
超〜10%以下の範囲の何れかの予変形量で(σd−σ
s)<60MPaとなるもの、●は、前記範囲の全ての
予変形量で60MPa≦(σd−σs)であり、かつ予
変形量が5%の時、60MPa≦(σd−σs)<80
MPaであるもの、■は、前記範囲の全ての予変形量で
60MPa≧(σd−σs)であり、かつ予変形量が5
%の時、80MPa≦(σd−σs)<100MPaで
あるもの、▲は、前記範囲の全ての予変形量で60MP
a≦(σd−σs)であり、かつ予変形量が5%の時、
100MPa≦(σd−σs)であるもの、である。
の予変形量において60MPa≦(σd−σs)である
ものは、衝突時の部材吸収エネルギーEabが、素材強
度S(TS)から予測される値以上であり、衝突時の衝
撃吸収用部材として優れた動的変形特性を有する鋼板で
あった。前記予測される値は図1の曲線で示す値であ
り、Eab=0.062S0.8 で示される。従って、本
発明においては(σd−σs)を60MPa以上とし
た。
S)の累乗の形で表されることが知られており、静的変
形強度(TS)が高くなるにつれて動的変形強度と静的
変形強度の差は小さくなる。しかし、材料の高強度化に
よる軽量化を考えた場合、動的変形強度と静的変形強度
(TS)の差が小さくなると材料置換による衝撃吸収能
の向上が大きくは期待できず、軽量化の達成が困難にな
る。
収用部材は、特徴的にハット型の断面形状を有してお
り、このような部材の高速での衝突圧潰時の変形を本発
明者らが解析した結果、最大では40%以上の高い歪み
まで変形が進んでいるものの、吸収エネルギー全体の7
0%以上が、高速の応力−歪み線図の10%以下の歪み
範囲で吸収されていることを見いだした。従って、高速
での衝突エネルギーの吸収能の指標として、10%以下
での高速変形時の動的変形抵抗を採用した。特に、歪み
量として3〜10%の範囲が最も重要であることから、
高速引張り変形5×102 〜5×103 (1/s)の歪
み速度範囲で変形した時の相当歪みで3〜10%の範囲
の平均応力σdynを以て衝撃エネルギー吸収能の指標
とした。
dynは、予変形や焼き付け処理が行われる前の鋼材の
静的な引張り強度{5×10-4〜5×10-3(1/s)
の歪み速度範囲で測定された静的な引張り試験における
最大応力:TS(MPa)}の上昇に伴って大きくなること
が一般的である。従って、鋼材の静的な引張り強度(T
S)を増加させることは部材の衝撃エネルギー吸収能の
向上に直接寄与する。しかしながら、鋼材の強度が上昇
すると部材への成形性が劣化し、必要な部材形状を得る
ことが困難になる。従って、同一の引張り強度(TS)
で、高いσdynを持つ鋼材が望ましい。特に、部材へ
の加工時の歪みレベルが主に10%以下であることか
ら、部材への成形時の形状凍結性等の成形性の指標とな
る低歪み領域での応力が低いことが成形性向上のために
は重要である。従って、σdyn(MPa)と5×10
-4〜5×10-3(1/s)の歪み速度範囲で変形した時
の3〜10%の相当歪み範囲における変形応力の平均値
σst(MPa)の差が大きいほど静的には成形性に優
れ、動的には高い衝撃エネルギーの吸収能を持つと言え
る。この関係で、図5に示すように、特に(σdyn−
σst)≧−0.272×TS+300の関係を満足す
る鋼材は、実部材としての衝撃吸収エネルギー吸収能が
他の鋼材に比べて高く、部材の総重量を増加させること
なく衝撃吸収エネルギー吸収能を向上させ、高い動的変
形抵抗を有する高強度鋼板を提供することができること
を見いだした。次に、本発明者らは、耐衝突安全性を向
上させるためには、鋼の成形加工後の加工硬化指数を高
め、σd−σsを高めることも知見した。すなわち、上
記のように鋼材のミクロ組織を制御されると鋼の歪み5
〜10%の加工硬化指数が0.13以上、好ましくは
0.16以上とすることで前述の耐衝突安全性を高める
ことができる。すなわち、図3に示すように、自動車用
部材の耐衝突安全性の指標となる動的エネルギー吸収量
と、鋼板の加工硬化指数の関係でみると、これらの値が
増大すると動的エネルギー吸収量が向上していることが
分かり、自動車用部材の耐衝突安全性の指標として、同
一降伏強度レベルであれば鋼板の加工硬化指数で評価す
ることが妥当であると考える。また図6に示すように加
工硬化指数が高くなるということは、鋼板のくびれが抑
制され、引張強さ×全伸びで表わされる成形性が向上す
る。
試験法により次のようにして求めた。すなわち、鋼板を
図4bに示すような試験片形状に成形し、先端径5.5
mmの電極によりチリ発生電流の0.9倍の電流で35
mmピッチでスポット溶接3をし、図4aに示す2つの
天板1間に試験片2を配設した部品(ハット型モデル)
とし、さらに170℃×20分の焼き付け塗装処理を行
った後、図4cに示すように約150Kgの落錘4を約
10mの高さから落下させ、ストッパー6を設けた架台
5上の部品を長手方向に圧壊し、その際の荷重変位線図
の面積から変位=0〜150mmの変形仕事を算出して
動的エネルギー吸収量とした。
S−5号試験片(標点距離50mm、平行部幅25m
m)に加工し、歪み速度0.001/sで引張試験し、
加工硬化指数(歪み5〜10%のn値)を求めることが
できる。以下本発明における鋼材のミクロ組織について
説明する。鋼板に適量の残留オーステナイトが存在する
と、変形時(成形時)に歪みを受けることにより非常に
硬いマルテンサイトに変態するため、加工硬化指数を高
める作用やくびれを抑制して成形性を高める作用を有し
ている。前述した適量の残留オーステナイト量とは3%
〜50%であることが好ましい。すなわち、残留オース
テナイトの体積分率が3%未満では成形後の部材が衝突
変形を受けた際に優れた加工硬化能を発揮することがで
きず、変形荷重が低いレベルに止まり変形仕事量が小さ
くなるため、動的エネルギー吸収量が低く、耐衝突安全
性向上が達成できないと共に、くびれ抑制効果が不足し
て高い引張強さ×全伸びを得ることができない。一方、
残留オーステナイトの体積分率が50%超では僅かな成
形加工歪みにより連鎖的な加工誘起マルテンサイト変態
が起こり、引張強さ×全伸び向上が期待できず、逆に打
ち抜き時の顕著な硬化に起因する穴拡げ比の劣化をもた
らし、更に部材成形が可能であったとしても成形後の部
材が衝突変形を受けた際に優れた加工硬化能を発揮する
ことができないという観点から前述の残留オーステナイ
ト量が決定されるものである。
率が3%〜50%という条件に加え、この残留オーステ
ナイトの平均結晶粒径が5μm以下、好ましくは3μm
以下とすることが望ましい条件となる。仮に、残留オー
ステナイトの体積分率が3%〜50%を満たしていて
も、その平均結晶粒径が5μm超になると、鋼中に残留
オーステナイトを微細分散させることができないため、
この残留オーステナイトのもつ固有特性の向上作用が局
所的に止まるのみで好ましくない。また、好ましくは、
前述した残留オーステナイトの平均結晶粒径と、主相で
あるフェライトもしくはベイナイトの平均粒径の比が
0.6以下で、主相の平均粒径が10μm以下、好まし
くは6μm以下であるようなミクロ組織を有している場
合に優れた耐衝突安全性と成形性を示すことが明らかに
なった。
度(TS:MPa )に対して、前述した相当歪みで3%〜
10%の範囲での平均応力の差:σdyn−σstは部
材への加工が行われる以前の鋼板中に含まれる残留オー
ステナイト中の固溶炭素量:〔C〕で表記、(重量%)
と鋼材の平均Mn等量(Mn eq )が、Mn eq =Mn
+(Ni+Cr+Cu+Mo)/2、によって変化する
ことが見いだされた。残留オーステナイト中の炭素濃度
は、X線解析やメスバウアー分光により実験的に求める
ことができ、例えば、MoのKα線を用いたX線解析に
よりフェライトの(200)面、(211)面およびオ
ーステナイトの(200)面、(220)面、(31
1)面の積分反射強度を用いて、Journal of The Iron
and SteelInstitute, 206(1968), p60 に示された方法
にて算出できる。本発明者らが行った実験結果から、こ
のようにして得られた残留オーステナイト中の固溶炭素
量〔C〕と鋼材に添加されている置換型合金元素から求
められるMn eq を用いて計算される値:Mが、M=6
78−428×〔C〕−33×Mn eq が−140以上
70未満の場合で、かつ相当歪みで0%超10%以下の
予変形を与えた後の鋼材の残留オーステナイト体積分率
が2.5%以上であり、かつ、残留オーステナイトの初
期体積分率V(0)と、相当歪みにして10%の予変形
を加えた時の残留オーステナイトの体積分率V(10)
との比、V(10)/V(0)が0.3以上を満足する
場合に同一の静的引張強度(TS)に対して大きな(σ
dyn−σst)を示すことが同時に見いだされた。こ
の場合において、M>70では残留オーステナイトが低
歪み領域で硬質のマルテンサイトに変態するから、成形
性を支配する低歪み領域での静的な応力をも上昇させて
しまい、形状凍結性等の成形性を劣化させるのみなら
ず、(σdyn−σst)の値を小さくすることから、
良好な成形性と高い成形性と高い衝撃エネルギー吸収能
の両立が得られないためMを70未満とした。また、M
が−140未満の場合には、残留オーステナイトの変態
が高い歪み領域に限定されるために、良好な成形性は得
られるものの、(σdyn−σst)を増大させる効果
がなくなることからMの下限を−140とした。
しては、軟質なフェライトが主に変形時の歪みを受ける
ため、フェライトに隣接していない残留γ(オーステナ
イト)は歪みを受け難く、その結果5〜10%程度の変
形ではマルテンサイトへ変態し難くなり、その効果が薄
れるため残留オーステナイトはフェライトに隣接するこ
とが好ましい。そのため、フェライトは、その体積分率
が40%以上、好ましくは60%以上であることが好ま
しい。前述したように、フェライトは構成組織の中で最
も軟質な組織であるため、成形性を決定する重要な因子
である。そのため、上記体積分率の規制値内とすること
が好ましい。更に、フェライトの体積分率増と細粒化に
より、未変態オーステナイトの炭素濃度が増加して微細
分散化するため残留オーステナイトの占積率増・微細化
に有効に作用し、耐衝突安全性および成形性の向上に寄
与する。
る高強度鋼板の化学成分とその含有規制値について説明
する。本発明で使用される高強度鋼板は、重量%で、
C:0.03%以上0.3%以下、SiとAlの一方ま
たは双方を合計で0.5%以上3.0%以下、必要に応
じてMn,Ni,Cr,Cu,Moの1種または2種以
上を合計で0.5%以上3.5%以下含み、残部がFe
を主成分とする高強度鋼板であるか、この高強度鋼板に
更に必要に応じて、Nb,Ti,V,P,B,Caまた
はREMの1種または2種以上を、Nb,Ti,Vにお
いては、それらの1種または2種以上を合計で0.3%
以下、Pにおいては0.3%以下、Bにおいては0.0
1%以下、Caにおいては0.0005%以上0.01
%以下、REM:0.005以上0.05%以下を含有
し、残部がFeを主成分とする高い動的変形抵抗を有す
る高強度鋼板である。これらの化学成分とその含有量
(何れも重量%)について詳述する。
させて残留させるために必要なオーステナイトの安定化
に貢献する最も安価な元素であるために、本発明におい
て最も重要な元素と言える。鋼材の平均C量は、室温で
確保できる残留オーステナイト体積分率に影響を及ぼす
のみならず、製造の加工熱処理中に未変態オーステナイ
ト中に濃化することで、残留オーステナイトの加工に対
する安定性を向上させることができる。しかしながら、
この添加量が0.03%未満の場合には、最終的に残留
オーステナイト体積分率を3%以上を確保することがで
きないので0.03%を下限とした。一方、鋼材の平均
C量が増加するに従って確保可能な残留オーステナイト
体積分率は増加し、残留オーステナイト体積分率を確保
しつつ残留オーステナイトの安定性を確保することが可
能となる。しかしながら、鋼材のC添加量が過大になる
と、必要以上に鋼材の強度を上昇させ、プレス加工等の
成形性を阻害するのみならず、静的な強度上昇に比して
動的な応力上昇が阻害されると共に、溶接性を劣化させ
ることによって部品としての鋼材の利用が制限されるよ
うになるためにC量の上限を0.3%とした。
の安定化元素であり、フェライト体積分率を増加させる
ことによって鋼材の加工性を向上させる働きがある。ま
た、Si、Al共にセメンタイトの生成を抑制し、効果
的にオーステナイト中へCを濃化させることを可能とす
ることから、室温で適当な体積分率のオーステナイトを
残留させるためには不可欠な添加元素である。このよう
なセメンタイト生成抑制機能を持つ添加元素としては、
Si、Al以外にPやCu、Cr、Mo等が挙げられ、
このような元素を適切に添加することも同様な効果が期
待される。しかしながら、SiとAlの1種もしくは双
方の合計が0.5%未満の場合には、セメンタイト生成
抑制の効果が十分でなく、オーステナイトの安定化に最
も効果的な添加されたCの多くが炭化物の形で浪費さ
れ、本発明に必要な残留オーステナイト体積分率を確保
することができないか、もしくは残留オーステナイトの
確保に必要な製造条件が大量生産工程の条件に適しない
ため下限を0.5%とした。また、SiとAlの1種も
しくは双方の合計が3.0%を超える場合には、母相で
あるフェライトもしくはベイナイトの硬質化や脆化を招
き、歪み速度上昇による変形抵抗の増加を阻害するばか
りでなく、鋼材の加工性の低下、靱性の低下、更には鋼
材コストの上昇を招き、また、化成処理等の表面処理特
性が著しく劣化するために3.0%を上限とした。ま
た、特に優れた表面性状が要求される場合には、Si≦
0.1%とすることによりSiスケールを回避するか、
逆にSi≧1.0%とすることによりSiスケールを全
面に発生させて目立たせなくすることも考えられる。
i、Cr、Cu、Moは全てオーステナイト安定化元素
であり、室温でオーステナイトを安定化させるためには
有効な元素である。特に、溶接性の観点からCの添加量
が制限される場合には、このようなオーステナイト安定
化元素を適量添加することによって効果的にオーステナ
イトを残留させることが可能となる。また、これらの元
素はAlやSiほどではないがセメンタイトの生成を抑
制する効果があり、オーステナイトへのCの濃化を助け
る働きもする。更に、これらの元素は、Al、Siと共
にマトリックスであるフェライトやベイナイトを固溶強
化させることによって、高速での動的変形抵抗を高める
働きも持つ。しかし、これらの元素の1種または2種以
上の添加の合計が0.5%未満の場合には、必要な残留
オーステナイトの確保ができなくなると共に、鋼材の強
度が低くなり、有効な車体軽量化が達成できなくなるこ
とから、下限を0.5%とした。一方、これらの合計が
3.5%を超える場合には、母相であるフェライトもし
くはベイナイトの硬質化を招き、歪み速度上昇による変
形抵抗の増加を阻害するばかりでなく、鋼材の加工性の
低下、靱性の低下、更には鋼材コストの上昇を招くため
に上限を3.5%とした。
は、炭化物、窒化物、もしくは炭窒化物を形成すること
によって鋼材を高強度化することができるが、その合計
が0.3%を超える場合には母相であるフェライトやベ
イナイト粒内もしくは粒界に多量の炭化物、窒化物、も
しくは炭窒化物として析出し、高速変形時の可動転位発
生源となって高い動的変形抵抗を得ることができなくな
る。また、炭化物の生成は、本発明にとって最も重要な
残留オーステナイト中へのCの濃化を阻害し、Cを浪費
することから上限を0.3%とした。
る。Bは、粒界の強化や鋼材の高強度化に有効である
が、その添加量が0.01%を超えるとその効果が飽和
すると共に必要以上に鋼板強度を上昇させ、高速変形時
の変形抵抗の上昇を阻害すると共に、部品への加工性も
低下させることになるので、その上限を0.01%とし
た。また、Pは、鋼材の高強度化や残留オーステナイト
の確保に有効であるが、0.2%を超えて添加された場
合には鋼材コストの上昇を招くばかりでなく、主相であ
るフェライト、ベイナイトの変形抵抗を必要以上に高
め、高速変形時の変形抵抗の上昇を阻害したり、耐置き
割れ性の劣化や疲労特性、靱性の劣化を招くことから
0.2%を上限とした。なお、二次加工性、靱性、スポ
ット溶接性、リサイクル性の劣化防止の観点から0.0
2%以下とすることが望ましい。また、不可避的不純物
として含まれるSについては、硫化物系介在物による成
形性(特に穴拡げ比)、スポット溶接性の劣化防止の観
点から0.01%以下とすることが望ましい。
(球状化)により、成形性(特に穴拡げ比)を向上させ
るために0.0005%以上添加するが、その効果の飽
和、前記介在物増加による逆の効果(穴拡げ比劣化)の
点から上限を0.01%とした。また、REMもCaと
同様の効果があるためその添加量を0.005%〜0.
05%とした。
の製造方法について熱延鋼板および冷延鋼板のそれぞれ
の製造方法を詳述する。本発明における高い動的変形抵
抗を有する高強度熱延鋼板および冷延鋼板とも、その製
造方法としては、前述した成分組成を有する連続鋳造ス
ラブを、鋳造ままで熱間圧延工程へ直送し、もしくは一
旦冷却した後に再度加熱した後、熱間圧延を行う。この
熱延においては、通常の連続鋳造に加え、薄肉連続鋳造
および熱延連続化技術(エンドレス圧延)の適用も可能
であるが、フェライト体積分率の低下、薄鋼板ミクロ組
織の平均結晶粒径の粗大化を考慮すると仕上げ熱延入側
における鋼片厚(初期鋼片厚)は25mm以上とするこ
とが好ましい。また、この熱間圧延においては、最終パ
ス圧延速度は上記の問題から500mpm以上、好まし
くは600mpm以上で熱延を行うことが好ましい。
記熱間圧延における仕上げ温度は、鋼材の化学成分によ
って決まるAr3 −50℃〜Ar3 +120℃の温度範
囲で行うことが好ましい。Ar3 −50℃未満では加工
フェライトが生成し、σd−σs、σdyn−σst、
5〜10%の加工硬化能、成形性を劣化させる。Ar 3
+120℃超では鋼板ミクロ組織の粗大化等からσd−
σs、σdyn−σst、5〜10%の加工硬化能等を
劣化させると共にスケール疵の観点から好ましくない。
前述のようにして熱間圧延された鋼板は巻き取り工程に
入るが、その前にランアウトテーブル上で冷却される。
この際の平均冷却速度は5℃/sec以上である。冷却
速度については残留オーステナイト占積率の確保の観点
から決定される。なお、この冷却方法は一定の冷却速度
で行っても、途中で低冷却速度の領域を含むような複数
種類の冷却速度の組み合わせであってもよい。
に入り、500℃以下の巻き取り温度で巻き取られる。
この巻き取り温度が500℃を超えると残留オーステナ
イト体積分率の低下が起こる。なお、後述するように更
に冷延し、焼鈍に付される冷延鋼板の使用に供される材
料については特に巻き取り温度の制限はなく通常の巻き
取り条件で差し支えない。
仕上げ温度、仕上げ入側温度および巻き取り温度との間
には相関関係があることを見いだした。すなわち、図7
および図8に示すように前記仕上げ温度、仕上げ入側温
度と巻き取り温度との間には一義的に決まる特定の条件
がある。すまわち、熱延の仕上げ温度がAr3 −50℃
〜Ar3 +120℃の温度範囲において、メタラジーパ
ラメーター:Aが、(1)式および(2)式を満たすよ
うな熱間圧延を行う。ただし、前記メタラジーパラメー
ター:Aとは以下のように表わすことができる。
Ceq) /〔1.978 × (FT + 273) 〕} ただし、FT :仕上げ温度(℃) Ceq:炭素当量=C + Mneq/6(%) Mneq:マンガン当量=Mn+(Ni+Cr+Cu+M
o)/2(%) ε* :最終パス歪み速度(s-1)
入側温度(仕上げ第一パス入側温度) Ar3 :901−325C%+33Si%−92Mneq その後、ランアウトテーブルにおける平均冷却速度を5
℃/秒以上とし、更に前記メタラジーパラメーター:A
と巻き取り温度(CT)との関係が(3)式を満たすよ
うな条件で巻き取ることが好ましい。
生成、ミクロ組織微細化の観点から不十分となり、σd
−σs,σdyn−σst、5〜10%の加工硬化能等
を劣化させる。
るための設備が過大となる。(2)式を満たさない場合
には残留γが過度に不安定となり、残留γが硬いマルテ
ンサイトに低歪領域で変態してしまい、成形性やσd−
σs,σdyn−σst、5〜10%の加工硬化能等を
劣化させる。なお、(2)式に示したようにΔTの上限
はlogAの増大により緩和される。
と、残留γ量の減少を招く等の悪影響がでる。また、
(3)式の下限を満たさないと、残留γが過度に不安定
となり、残留γが硬いマルテンサイトに低歪領域で変態
してしまい、成形性やσd−σs、σdyn−σst、
5〜10%の加工硬化能等を劣化させる。なお、巻取り
温度の上下限はlogAの増大により緩和される。
き取り後の各工程を経た鋼板を、圧下率40%以上で冷
間圧延に付され、次いで前記冷間圧延を経た鋼板は焼鈍
に付される。この焼鈍は、図9に示すような焼鈍サイク
ルを有する連続焼鈍が最適であり、この連続焼鈍工程で
焼鈍して最終的な製品とする際に、0.1×(Ac3−
Ac1 )+Ac1 ℃以上Ac3 +50℃以下の温度で1
0秒〜3分焼鈍した後に、1〜10℃/秒の一次冷却速
度で550〜720℃の範囲の一次冷却停止温度まで冷
却し、引き続いて10〜200℃/秒の二次冷却速度で
200〜450℃の二次冷却停止温度まで冷却した後、
200〜500℃の温度範囲で15秒〜20分保持し、
室温まで冷却する。前記焼鈍温度は、鋼材の化学成分に
よって決まる温度Ac1 およびAc3 温度(例えば、
「鉄鋼材料学」:W. C. Leslie著、丸善.p 273.)で表
される0.1×(Ac3 −Ac1 )+Ac1 ℃未満の場
合には、焼鈍温度で得られるオーステナイト量が少ない
ので、最終的な鋼板中に安定して残留オーステナイトを
残すことが出来ないため0.1×(Ac3 −Ac1 )+
Ac1 ℃を下限とした。また、焼鈍温度がAc3 +50
℃を超えても何ら鋼板の特性を改善できず、しかもコス
ト上昇を招くために焼鈍温度の上限をAc3 +50℃と
した。この温度での焼鈍時間は、鋼板の温度均一化とオ
ーステナイト量の確保のために最低10秒以上必要であ
るが、3分を超えると前記効果が飽和し、コスト上昇の
原因となる。
ライトへの変態を促し未変態のオーステナイト中にCを
濃化させてオーステナイトの安定化を図るために重要で
ある。この冷却速度が1℃/秒未満にすると、長大な生
産ラインが必要になること、生産性が悪化する等の点か
ら1℃/秒が下限となる。一方、冷却速度が10℃/秒
超になるとフェライト変態が十分起こらず、最終的な鋼
板中の残留オーステナイト確保が困難になるため10℃
/秒を上限とした。この一次冷却が550℃未満まで行
なわれると、冷却中にパーライトが生成し、オーステナ
イト安定化元素であるCの浪費が起こり、最終的に十分
な量の残留オーステナイトが得られなくなる。また、前
記冷却が720℃超までしか行われなかった場合にはフ
ェライト変態の進行が十分でなくなる。
冷却中にパーライト変態や鉄炭化物の析出が起こらない
ような冷却速度として最低10℃/秒以上が必要になる
が、200℃/秒超にすると設備能力上困難となる。ま
た、この二次冷却の冷却停止温度が200℃未満の場合
には、冷却前に残っていたオーステナイトのほぼ全てが
マルテンサイトに変態して最終的に残留オーステナイト
を確保できなくなる。また、この冷却停止温度が450
℃超になると最終的に得られるσd−σs、σdyn−
σstが低下する。
温で安定化させるためには、その一部をベイナイトに変
態させることでオーステナイト中の炭素濃度を更に高め
ることが好ましい。二次冷却停止温度がベイナイト変態
処理のために保持される温度より低温である場合には保
持温度まで加熱される。この時の加熱速度は5℃/秒〜
50℃/秒の範囲であれば鋼板の最終的な特性を劣化さ
せることはない。また、逆に二次冷却停止温度がベイナ
イト処理温度よりも高温の場合は、ベイナイト処理温度
まで5℃/秒〜200℃/秒の冷却速度で強制的に冷却
しても、予め目標温度が設定された加熱ゾーンに直接搬
送されても、鋼板の最終的な特性を劣化させることはな
い。一方、鋼板が200℃未満で保持された場合にも、
また500℃超に保持された場合にも、十分な量の残留
オーステナイトを確保できないことから、保持温度の範
囲を200℃〜500℃とした。この時、200℃〜5
00℃の保持が15秒未満ではベイナイト変態の進行が
十分でないことから最終的に必要な量の残留オーステナ
イトを得ることができず、また20分超ではベイナイト
変態後に鉄炭化物の析出やパーライト変態が起こり、残
留オーステナイト生成に不可欠なCを浪費してしまい、
必要な量の残留オーステナイトを得ることができなくな
るために、保持時間を15秒〜20分の範囲とした。ベ
イナイト変態を促進させるために行う200℃〜500
℃の保持は、等温での保持であっても、または、この温
度範囲であれば意識的な温度変化を与えても最終的な鋼
板の特性を劣化させることはない。
却条件としては、0.1×(Ac3−Ac1 )+Ac1
℃以上Ac3 +50℃以下の温度で10秒〜3分焼鈍し
た後に、1〜10℃/秒の一次冷却速度で550〜72
0℃の範囲の二次冷却開始温度Tqまで冷却し、引き続
いて10〜200℃/秒の二次冷却速度で成分と焼鈍温
度Toで決まる温度Tem以上、500℃以下の二次冷
却数量温度Teまで冷却した後、Te−50℃以上50
0℃以下の温度Toaで15秒〜20分保持し、室温ま
で冷却する方法である。これは、図10に示すような連
続焼鈍サイクルにおける急冷終点温度Teを成分と焼鈍
温度Toとの関数として表し、ある限界値以上で冷却す
る方法であり、更に過時効温度Toaの範囲を前記急冷
終点温度Teとの関係で規定したものである。
残留しているオーステナイトのマルテンサイト変態開始
温度である。すなわち、Temは、オーステナイト中の
C濃度の影響を除外した値(T1)とC濃度の影響を示
す値(T2)の差:Tem=T1−T2である。ここ
で、T1とは、C以外の固溶元素濃度によって計算され
る温度であり、また、T2は鋼板の成分で決まるAc1
とAc3 および焼鈍温度Toによって決まるTqでの残
留オーステナイト中のC濃度から計算される温度であ
る。また、Ceq* は、前記焼鈍温度Toで残留してい
るオーステナイト中の炭素当量である。
Cr+Cu+Mo)/2}とT2との差であり、T2
は、Ac1 =723−0.7×Mn%−16.9×Ni
%+29.1×Si%+16.9×Cr%、および、A
c3 =910−203×(C%)1/2 −15.2×Ni
%+44.7×Si%+104×V%+31.5×Mo
%−30×Mn%−11×Cr%−20×Cu%+70
0×P%+400×Al%+400×Ti%、と焼鈍温
度Toにより表現され、Ceq* =(Ac3−Ac1 )×
C/(To−Ac1 )+(Mn+Si/4+Ni/7+
Cr+Cu+1.5Mo)/6が、0.6超の場合に
は、T2=474×(Ac3−Ac1 )×C/(To−A
c1)、0.6以下の場合には、T2=474×(Ac3
−Ac1 )×C/{3×(Ac3−Ac1 )×C+〔(M
n+Si/4+Ni/7+Cr+Cu+1.5Mo)/
2−0.85〕×(To−Ac1 )}、により表現され
る。
必要以上に多量のマルテンサイトが生成し、十分な量の
残留オーステナイトを確保できないと同時に、σd−σ
s、(σdyn−σst)の値を小さくすることから、
これをTeの下限とした。また、Teが500℃以上で
はパーライトもしくは鉄炭化物が生成し、残留オーステ
ナイト生成に不可欠なCを浪費してしまい、必要な量の
残留オーステナイトが得られなくなる。また、Toaが
Te−50℃未満の場合には、付加的な冷却設備が必要
であったり、連続焼鈍炉の炉温と鋼板の温度差に起因し
た材質のバラツキが大きくなることから、この温度を下
限とした。更に、Toaが500℃以上では、パーライ
トもしくは鉄炭化物が生成し、残留オーステナイト生成
に不可欠なCを浪費してしまい、必要な量の残留オース
テナイトが得られなくなる。また、Toaでの保持が1
5秒未満ではベイナイト変態の進行が十分でなく、最終
的に得られる残留オーステナイトの量および性質が本発
明の目的に合致しなくなる。
用することにより、鋼板のミクロ組織がフェライトおよ
び/またはベイナイトを含み、このいずれかを主相と
し、体積分率で3〜50%の残留オーステナイトを含む
第3相との複合組織であり、かつ相当歪みで0%超10
%以下の予変形を与えた後、5×10-4〜5×10
-3(1/s)の歪み速度範囲で変形した時の準静的変形
強度σsと、前記予変形を加えた後、5×102 〜5×
103 (1/s)の歪み速度で変形した時の動的変形強
度σdとの差:σd−σsが60MPa以上であり、か
つ、5×102 〜5×103 (1/s)の歪み速度範囲
で変形した時の3〜10%の相当歪み範囲における変形
応力の平均値σdyn(MPa )と5×10-4〜5×10
-3(1/s)の歪み速度範囲で変形した時の3〜10%
の相当歪み範囲における変形応力の平均値σst(MPa
)の差が5×10-4〜5×10-3(1/s)の歪み速
度範囲で測定された静的な引張り試験における最大応力
TS(MPa )によって表現される式(σdyn−σs
t)≧−0.272×TS+300を満足し、かつ歪み
5〜10%の加工硬化指数が0.130以上を満足する
ことを特徴とする高い動的変形抵抗を有する良加工性高
強度鋼板の製造が可能となる。
は、焼鈍、調質圧延、電気メッキ等を施して所望の製品
とすることもできる。ミクロ組織は以下の方法で評価し
た。フェライト、ベイナイト及び残部組織の同定、存在
位置の観察、及び平均円相当径と占積率の測定はナイタ
ール試薬及び特開昭59−219473に開示された試
薬により薄鋼板圧延方向断面を腐食した倍率1000倍
の光学顕微鏡写真により行った。
209で開示された試薬により圧延方向断面を腐食し、
倍率1000倍の光学顕微鏡写真より求めた。また、同
写真によりその存在位置を観察した。残留γ体積分率
(Vγ:単位は%)はMo−Kα線によるX線解析で次
式に従い、算出した。
(211)/γ(220)+1)}+(1/3){10
0/(0.78×α(211)/γ(311)+1)} 但し、α(211)、γ(220)、α(211)、γ
(311)は面強度を示す。残留γのC濃度(Cγ:単
位は%)はCu−Kα線によるX線解析でオーステナイ
トの(200)面、(220)面、(311)面の反射
角から格子定数(単位はオングストローム)を求め、次
式に従い、算出した。
号(標点距離50mm、平行部幅25mm)を用い歪み
速度0.001/sで実施し、引張強さ(TS)、全伸
び(T.El)、加工硬化指数(歪5%〜10%のn
値)を求め、TS×T.Elを計算した。
バリのない面から30度円錐ポンチで押し拡げ、クラッ
クが板厚を貫通した時点での穴径(d)と初期穴径(d
o、20mm)との穴拡げ比(d/do)を求めた。ス
ポット溶接性は鋼板板厚の平方根の5倍の先端径を有す
る電極によりチリ発生電流の0.9倍の電流で接合した
スポット溶接試験片をたがねで破断させた時にいわゆる
剥離破断を生じたら不適とした。
250℃に加熱し、表2に示す製造条件にて、熱間圧
延、冷却、巻取を行い、熱延鋼板を製造した。本発明に
よる成分条件と製造条件を満足する鋼板は、表3に示す
ように残留オーステナイト中の固溶〔C〕と鋼材の平均
Mneqで決まるM値が−140以上70未満である初
期残留オーステナイトを3%以上50%以下、予変形後
の残留オーステナイトを2.5%以上含有しており、さ
らに残留オーステナイトの初期体積分率と10%予変形
後体積分率の比で0.3以上という適度な安定性を有し
ている。本発明による成分条件と製造条件とミクロ組織
を満足する鋼板は、表4に示すように何れもσd−σs
≧60、σdyn−σst≧−0.272×TS+30
0、5〜10%の加工硬化指数≧0.130、TS×
T.El≧20000という優れた耐衝突安全性と成形
性を示すとともにスポット溶接性をも兼備していること
が明らかである。
Ar3以上で熱延を完了し冷却後巻き取り、酸洗後冷延
した。その後、各鋼の成分からAc1,Ac3の各温度
を求め、表6に示すような焼鈍条件で加熱、冷却、保持
を行い、その後室温まで冷却した。本発明による製造条
件と成分条件を満足する各鋼板は、表7および表8に示
すように、残留オーステナイト中の固溶〔C〕と鋼材の
平均Mneqで決まるM値が−140以上70未満で、
何れも歪み5〜10%の加工硬化指数が0.13以上、
予加工後の残留オーステナイト体積分率が2.5%以上
で、V(10)/V(0)が0.3以上、最大応力×全
伸びが20,000以上であり、(σd−σs)≧60
と(σdyn−σst)≧−0.272×TS+300
を同時に満足するという優れた耐衝突安全性と成形性を
示すことが明らかである。
れた耐衝突安全性および成形性を兼ね備えた自動車用高
強度熱延鋼板および冷延鋼板を低コストで、しかも安定
的に提供することが可能になり、高強度鋼板の使用用途
および使用条件が格段に拡大されるものである。
係を示す図。
部材を示す図。
ネルギー吸収量(J)との関係を示す図。
用の衝撃圧壊試験に用いた部品(ハットモデル)の概観
図、bは、aに用いた試験片の断面図、cは、衝撃圧壊
試験方法の模式図。
の指標である、5×102 〜5×103 (1/s)の歪
み速度範囲で変形した時の3〜10%の相当歪み範囲に
おける変形応力の平均値σdynと、5×10-4〜5×
10-3(1/s)の歪み速度範囲で変形した時の3〜1
0%の相当歪み範囲における変形応力の平均値σstの
差(σdyn−σst)とTSとの関係を示す図。
S)×全伸び(T・El)との関係を示す図。
ジーパラメーターAとの関係を示す図。
とメタラジーパラメーターAとの関係を示す図。
クルを示す模式図。
却停止温度(Te)とその後の保持温度(Toa)との
関係を示す図。
Claims (14)
- 【請求項1】 最終的に得られる鋼板のミクロ組織がフ
ェライトおよび/またはベイナイトを含み、このいずれ
かを主相とし、体積分率で3〜50%の残留オーステナ
イトを含む第3相との複合組織であり、かつ0%超10
%以下の相当歪みの変形を予め与えた後、5×10-4
〜5×10-3(1/s)の歪み速度範囲で変形した時
の準静的変形強度σsと、前記相当歪みの変形を加えた
後、5×102〜5×103(1/s)の歪み速度で変
形した時の動的変形強度σdとの差:σd−σsが60
MPa以上を満足し、かつ歪み5〜10%の加工硬化指
数が0.130以上を満足することを特徴とする高い動
的変形抵抗を有する良加工性高強度鋼板。 - 【請求項2】 最終的に得られる鋼板のミクロ組織がフ
ェライトおよび/またはベイナイトを含み、このいずれ
かを主相とし、体積分率で3〜50%の残留オーステナ
イトを含む第3相との複合組織であり、かつ0%超10
%以下の相当歪みの変形を予め与えた後、5×10−4
〜5×10−3(1/s)の歪み速度範囲で変形した時
の準静的変形強度σsと、前記相当歪みの変形を加えた
後、5×102〜5×103(1/s)の歪み速度で変
形した時の動的変形強度σdとの差:σd−σsが60
MPa以上であり、かつ、5×102〜5×103(1
/s)の歪み速度範囲で変形した時の3〜10%の相当
歪み範囲における変形応力の平均値σdyn(MPa)と
5×10-4〜5×10-3(1/s)の歪み速度範囲で
変形した時の3〜10%の相当歪み範囲における変形応
力の平均値σst(MPa)の差が5×10−4〜5×1
0-3(1/s)の歪み速度範囲で測定された静的な引
張り試験における最大応力TS(MPa)によって表現さ
れる式(σdyn−σst)≧−0.272×TS+3
00を満足し、かつ歪み5〜10%の加工硬化指数が
0.130以上を満足するすることを特徴とする高い動
的変形抵抗を有する良加工性高強度鋼板。 - 【請求項3】 最終的に得られる鋼板のミクロ組織がフ
ェライトおよび/またはベイナイトを含み、このいずれ
かを主相とし、体積分率で3〜50%の残留オーステナ
イトを含む第3相との複合組織であり、かつ0%超10
%以下の相当歪みの変形を予め与えた後、5×10-4
〜5×10-3(1/s)の歪み速度範囲で変形した時
の準静的変形強度σsと、前記相当歪みの変形を加えた
後、5×102〜5×103(1/s)の歪み速度で変
形した時の動的変形強度σdとの差:σd−σsが60
MPa以上であり、かつ、5×102〜5×103(1
/s)の歪み速度範囲で変形した時の3〜10%の相当
歪み範囲における変形応力の平均値σdyn(MPa)と
5×10-4〜5×10-3(1/s)の歪み速度範囲で
変形した時の3〜10%の相当歪み範囲における変形応
力の平均値σst(MPa)の差が5×10-4〜5×10
-3(1/s)の歪み速度範囲で測定された静的な引張
り試験における最大応力TS(MPa)によって表現され
る式(σdyn−σst)≧−0.272×TS+30
0を満足し、更に前記残留オーステナイト中の固溶
〔C〕と、鋼材の平均Mn等量{Mn eq =Mn+(N
i+Cr+Cu+Mo)/2}よって決まる値(M)
が、M=678−428×〔C〕−33Mn eq が−1
40以上70未満を満足し、かつ、0%超10%以下の
相当歪みの変形を予め与えた後の鋼材の残留オーステナ
イト体積分率が2.5%以上であり、かつ、残留オース
テナイトの初期体積分率V(0)と、0%超10%以下
の相当歪みの変形を加えた時の残留オーステナイトの体
積分率V(10)との比、V(10)/V(0)が0.
3以上を満足し、かつ歪み5〜10%の加工硬化指数が
0.130以上を満足することを特徴とする高い動的変
形抵抗を有する良加工性高強度鋼板。 - 【請求項4】 前記残留オーステナイトの平均結晶粒径
が5μm以下であり、かつ前記残留オーステナイトの平
均結晶粒径と、主相であるフェライトもしくはベイナイ
トの平均結晶粒径の比が、0.6以下で、主相の平均粒
径が10μm以下、好ましくは6μm以下であることを
特徴とする請求項1〜3の何れかの項に記載の高い動的
変形抵抗を有する良加工性高強度鋼板。 - 【請求項5】 前記フェライトの占積率が40%以上で
あることを特徴とする請求項1〜4の何れかの項に記載
の高い動的変形抵抗を有する良加工性高強度鋼板。 - 【請求項6】 前記引張強さ×全伸びの値が20,00
0以上であることを特徴とする請求項1〜5の何れかの
項に記載の高い動的変形抵抗を有する良加工性高強度鋼
板。 - 【請求項7】 前記鋼板が、重量%で、C:0.03%
以上0.3%以下、SiとAlの一方または双方を合計
で0.5%以上3.0%以下含み、残部がFeを主成分
とすることを特徴とする請求項1〜6の何れかの項に記
載の高い動的変形抵抗を有する良加工性高強度鋼板。 - 【請求項8】 前記鋼板が、更に重量%で、Mn,N
i,Cr,Cu,Moの1種または2種以上を合計で
0.5%以上3.5%以下含むことを特徴とする請求項
1〜7の何れかの項に記載の高い動的変形抵抗を有する
良加工性高強度鋼板。 - 【請求項9】 前記鋼板が、更に重量%で、Nb,T
i,V,PまたはBの1種または2種以上を、Nb,T
i,Vにおいては、それらの1種または2種以上を合計
で0.3%以下、Pにおいては0.3%以下、Bにおい
ては0.01%以下を含有することを特徴とする請求項
1〜8の何れかの項に記載の高い動的変形抵抗を有する
良加工性高強度鋼板。 - 【請求項10】 前記鋼板が、更に重量%で、Ca:
0.0005%以上0.01%以下、REM:0.00
5以上0.05%以下を含有することを特徴とする請求
項1〜9の何れかの項に記載の高い動的変形抵抗を有す
る良加工性高強度鋼板。 - 【請求項11】 請求項7〜10の何れか1項に記載の
成分からなる連続鋳造スラブを、鋳造ままで熱延工程へ
直送し、もしくは一旦冷却した後に再度加熱した後、熱
延し、Ar3−50℃〜Ar3+120℃の温度の仕上
げ温度で熱延を終了し、熱延に引き続く冷却過程での平
均冷却速度を5℃/秒以上で冷却後、500℃以下の温
度で巻き取ることを特徴とする熱延鋼板のミクロ組織が
フェライトおよび/またはベイナイトを含み、このいず
れかを主相とし、体積分率で3〜50%の残留オーステ
ナイトを含む第3相との複合組織であり、かつ0%超1
0%以下の相当歪みの変形を予め与えた後、5×10
-4〜5×10-3(1/s)の歪み速度範囲で変形した
時の準静的変形強度σsと、前記相当歪みの変形を加え
た後、5×102〜5×103(1/s)の歪み速度で
変形した時の動的変形強度σdとの差:σd−σsが6
0MPa以上であり、かつ、5×102〜5×10
3(1/s)の歪み速度範囲で変形した時の3〜10%
の相当歪み範囲における変形応力の平均値σdyn(MP
a)と5×10-4〜5×10-3(1/s)の歪み速度
範囲で変形した時の3〜10%の相当歪み範囲における
変形応力の平均値σst(MPa)の差が5×10-4〜5
×10-3(1/s)の歪み速度範囲で測定された静的
な引張り試験における最大応力TS(MPa)によって表
現される式(σdyn−σst)≧−0.272×TS
+300を満足し、かつ歪み5〜10%の加工硬化指数
が0.130以上を満足することを特徴とする高い動的
変形抵抗を有する良加工性高強度熱延鋼板。 - 【請求項12】 前記熱延の仕上げ温度がAr3−50
℃〜Ar3+120℃の温度範囲において、メタラジー
パラメーター:Aが、(1)式および(2)式を満たす
ような熱間圧延を行い、その後、ランアウトテーブルに
おける平均冷却速度を5℃/秒以上とし、更に前記メタ
ラジーパラメーター:Aと巻き取り温度(CT)との関
係が(3)式を満たすような条件で巻き取ることを特徴
とする請求項11記載の高い動的変形抵抗を有する良加
工性高強度熱延鋼板。 9≦logA≦18 ……………… (1) ΔT≦21×logA−178 ……………… (2) 6×logA+312≦CT≦6×logA+392 ……………… (3) - 【請求項13】 請求項7〜10の何れか1項に記載の
成分からなる連続鋳造スラブを、鋳造ままで熱延工程へ
直送し、もしくは一旦冷却した後に再度加熱した後、熱
延し、熱延後巻き取った熱延鋼板を酸洗後冷延し、連続
焼鈍工程で焼鈍して最終的な製品とする際に、0.1×
(Ac3−Ac1)+Ac1℃以上Ac3+50℃以下の温
度で10秒〜3分焼鈍した後に、1〜10℃/秒の一次
冷却速度で550〜720℃の範囲の一次冷却停止温度
まで冷却し、引き続いて10〜200℃/秒の二次冷却
速度で200〜450℃の二次冷却停止温度まで冷却し
た後、200〜500℃の温度範囲で15秒〜20分保
持し、室温まで冷却することを特徴とする冷延鋼板のミ
クロ組織がフェライトおよび/またはベイナイトを含
み、このいずれかを主相とし、体積分率で3〜50%の
残留オーステナイトを含む第3相との複合組織であり、
かつ0%超10%以下の相当歪みの変形を予め与えた
後、5×10-4〜5×10-3(1/s)の歪み速度範
囲で変形した時の準静的変形強度σsと、前記相当歪み
の変形を加えた後、5×102〜5×103(1/s)
の歪み速度で変形した時の動的変形強度σdとの差:σ
d−σsが60MPa以上であり、かつ、5×102〜
5×103(1/s)の歪み速度範囲で変形した時の3
〜10%の相当歪み範囲における変形応力の平均値σd
yn(MPa)と5×10-4〜5×10-3(1/s)の歪
み速度範囲で変形した時の3〜10%の相当歪み範囲に
おける変形応力の平均値σst(MPa)の差が5×10
-4〜5×10-3(1/s)の歪み速度範囲で測定され
た静的な引張り試験における最大応力TS(MPa)によ
って表現される式(σdyn−σst)≧−0.272
×TS+300を満足し、かつ歪み5〜10%の加工硬
化指数が0.130以上を満足することを特徴とする高
い動的変形抵抗を有する良加工性高強度冷延鋼板。 - 【請求項14】 前記連続焼鈍工程で焼鈍して最終的な
製品とするに際し、0.1×(Ac3−Ac1)+Ac1
℃以上Ac3+50℃以下の温度で10秒〜3分焼鈍し
た後に、1〜10℃/秒の一次冷却速度で550〜72
0℃の範囲の二次冷却開始温度Tqまで冷却し、引き続
いて10〜200℃/秒の二次冷却速度で成分と焼鈍温
度Toで決まる温度Tem以上、500℃以下の二次冷
却停止温度Teまで冷却した後、Te−50℃以上50
0℃以下の温度Toaで15秒〜20分保持し、室温ま
で冷却することを特徴とする冷延鋼板のミクロ組織がフ
ェライトおよび/またはベイナイトを含み、このいずれ
かを主相とし、体積分率で3〜50%の残留オーステナ
イトを含む第3相との複合組織であり、0%超10%以
下の相当歪みの変形を予め与えた後、5×10-4〜5×
10-3(1/s)の歪み速度範囲で変形した時の準静
的変形強度σsと、前記相当歪みの変形を加えた後、5
×102〜5×103(1/s)の歪み速度で変形した
時の動的変形強度σdとの差:σd−σsが60MPa
以上であり、かつ、5×102〜5×103(1/s)
の歪み速度範囲で変形した時の3〜10%の相当歪み範
囲における変形応力の平均値σdyn(MPa)と5×1
0-4〜5×10-3(1/s)の歪み速度範囲で変形し
た時の3〜10%の相当歪み範囲における変形応力の平
均値σst(MPa)の差が5×10-4〜5×10-3(1
/s)の歪み速度範囲で測定された静的な引張り試験に
おける最大応力TS(MPa)によって表現される式(σ
dyn−σst)≧−0.272×TS+300を満足
し、かつ歪み5〜10%の加工硬化指数が0.130以
上を満足することを特徴とする請求項13記載の高い動
的変形抵抗を有する良加工性高強度冷延鋼板。
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