JP3492032B2 - レーザマーキング方法および装置 - Google Patents

レーザマーキング方法および装置

Info

Publication number
JP3492032B2
JP3492032B2 JP18833695A JP18833695A JP3492032B2 JP 3492032 B2 JP3492032 B2 JP 3492032B2 JP 18833695 A JP18833695 A JP 18833695A JP 18833695 A JP18833695 A JP 18833695A JP 3492032 B2 JP3492032 B2 JP 3492032B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
laser
laser beam
gas
target member
marking
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Lifetime
Application number
JP18833695A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH0919788A (ja
Inventor
幸基 岡崎
延忠 青木
成彦 向井
雄二 佐野
誠二 山本
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toshiba Corp
Original Assignee
Toshiba Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toshiba Corp filed Critical Toshiba Corp
Priority to JP18833695A priority Critical patent/JP3492032B2/ja
Publication of JPH0919788A publication Critical patent/JPH0919788A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3492032B2 publication Critical patent/JP3492032B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B41PRINTING; LINING MACHINES; TYPEWRITERS; STAMPS
    • B41MPRINTING, DUPLICATING, MARKING, OR COPYING PROCESSES; COLOUR PRINTING
    • B41M5/00Duplicating or marking methods; Sheet materials for use therein
    • B41M5/26Thermography ; Marking by high energetic means, e.g. laser otherwise than by burning, and characterised by the material used
    • B41M5/262Thermography ; Marking by high energetic means, e.g. laser otherwise than by burning, and characterised by the material used recording or marking of inorganic surfaces or materials, e.g. glass, metal, or ceramics
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B41PRINTING; LINING MACHINES; TYPEWRITERS; STAMPS
    • B41MPRINTING, DUPLICATING, MARKING, OR COPYING PROCESSES; COLOUR PRINTING
    • B41M5/00Duplicating or marking methods; Sheet materials for use therein
    • B41M5/24Ablative recording, e.g. by burning marks; Spark recording

Landscapes

  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Ceramic Engineering (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Optics & Photonics (AREA)
  • Laser Beam Processing (AREA)
  • Monitoring And Testing Of Nuclear Reactors (AREA)
  • Thermal Transfer Or Thermal Recording In General (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、人の接近が困難な対象
物、例えば放射化された原子炉の構成部材を自動的に識
別するマーキング技術に係り、特に、対象部材の材料表
面に識別劣化が小さなレーザマーキングを施すレーザマ
ーキング方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】軽水型原子炉は加圧水型原子炉と沸騰水
型原子炉に大別される。これらの原子炉には、高温高圧
環境下において十分な耐食性と高温強度を有する材料、
例えばオーステナイトステンレス鋼,ニッケル基合金あ
るいはジルコニウム合金等で構成された多種多様な構成
部材が多数使用されている。
【0003】原子炉を建設したり、原子炉の構成部材を
製作する際、また、原子力発電プラントの運転開始後に
原子炉の点検・補修あるいは原子炉の構成部材の交換を
行なう際などには、個々の構成部材を正確に識別する必
要性が生じる。
【0004】原子炉内に類似した構成部材が多数用いら
れていたり、炉内に設置された状態で識別を行なう必要
がある場合などには、対象部材の形状認識だけでは正確
な識別が困難な場合がある。このため、原子炉の構成部
材に直接マーキングを施し、対象部材を識別する方法が
採られている。
【0005】このマーキング技術として、CWレーザ
(Continuous Wave Laser)を用い、気体中で原子炉の
構成部材にCWレーザを照射するレーザマーキング方法
が、加工の精度や効率性の観点から最近検討されてい
る。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】このマーキング技術が
対象部材のマーキングに最も多く用いられる原子炉の構
成部材を例にとって説明する。
【0007】原子炉の構成部材にCWレーザ装置から発
振されたCWレーザビームを照射してマーキングを施す
レーザマーキング方法を適用すると、対象部材のマーキ
ング部はCWレーザビーム照射による熱影響を受ける。
この熱影響による表面応力分布状態の変化、表面組成や
結晶粒界の変化および含有気体量の変化等を考慮する
と、このマーキング部分の耐食性が劣化することが予想
される。
【0008】さらに、原子力発電プラントの運転中には
原子炉の構成部材は、高温高圧、中性子照射という極め
て厳しい腐食環境下に晒され、プラント運転中に構成部
材のマーキング部に局所的に著しい腐食が発生して機械
的・物理的強度の低下を招くおそれがある。
【0009】本発明は上述した事情を考慮してなされた
もので、対象部材に識別劣化が小さく、耐食性に優れた
レーザマーキングを簡単かつ容易に施すことができるレ
ーザマーキング方法および装置を提供することを目的と
する。
【0010】本発明の他の目的は、対象部材への熱影響
が小さく、耐食性に優れ、信頼性が高いレーザマーキン
グを施すことができるレーザマーキング方法および装置
を提供するにある。
【0011】本発明のさらに他の目的は、対象部材の表
面に酸化層のマーキングを施し、マーキング部を色によ
る識別が可能なレーザマーキング方法および装置を提供
するにある。
【0012】本発明の別の目的は、対象部材の表面にレ
ーザビーム照射に伴う材料隆起現象あるいは表層除去現
象を利用して凹凸のマーキングを施し、マーキング部の
形状変化により識別が可能なレーザマーキング方法およ
び装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明に係るレーザマー
キング方法は、上述した課題を解決するために、請求項
1に記載したように、レーザビームを透過する透過媒体
、過酸化水素水(H )を含む液体を用い、この
液体中に設置された対象部材にレーザ装置から発振され
るレーザビームを照射し、上記対象部材の表面に酸化物
あるいは凹凸のマーキングを施す方法である。
【0014】
【0015】
【0016】上述した課題を解決するために、本発明に
係るレーザマーキング方法は、請求項2に記載したよう
に、レーザビームの透過媒体に窒化ガス含有量が所要
値、例えば10ppm以下の液体が用いられ、対象部材
ジルコニウム合金製の部材が用いられる
【0017】
【0018】
【0019】
【0020】本発明に係るレーザマーキング装置は、上
述した課題を解決するために、請求項3に記載したよう
に、レーザビームの透過媒体である液体を収容した容器
と,この容器の底部に敷設され、多数の小孔を備えたマ
ット等のガス吹出手段と、このガス吹出手段に連絡配管
を介して接続された不活性ガスのガス供給手段と、上記
容器内で液体中に設置された対象部材と,上記容器の外
部に設置されたレーザ装置と,このレーザ装置から発振
されるレーザビームを走査する走査光学系と,走査光学
系で走査されるレーザビームを容器内に案内し、液体中
で対象部材に照射する集束光学系とを備え、前記ガス供
給手段から供給される不活性ガスをガス吹出手段から容
器に貯溜された液体中に吹き出し、脱気を行なう一方、
前記対象部材にレーザビームを照射して酸化層あるいは
凹凸のマーキングを施すように構成したものである。
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】本発明に係るレーザマーキング方法は、上
述した課題を解決するために、請求項4に記載したよう
に、レーザビームを透過する透過媒体に、水蒸気(H
O)および過酸化水素水蒸気(H )の少なくとも
一成分を含む気体を用い、この気体中に設置された対象
部材にパルスレーザ装置から発振されるパルスレーザビ
ームを照射し、上記対象部材の表面に酸化層あるいは凹
凸のマーキングを施す方法である。
【0025】また、上述した課題を解決するために、本
発明に係るレーザマーキング方法は、請求項5に記載し
たように、レーザビームを透過する透過媒体に、酸素ガ
スと不活性ガスの混合気の気体を用い、この気体中に設
置された対象部材にパルスレーザ装置から発振されるパ
ルスレーザビームを照射し、上記対象部材の表面に酸化
層あるいは凹凸のマーキングを施す方法である。
【0026】
【0027】
【0028】本発明に係るレーザマーキング装置は、上
述した課題を解決するために、請求項6に記載したよう
に、レーザビームの透過媒体である気体を充填した密閉
容器と,この密閉容器内で気体中に設置された対象部材
と,この密閉容器の外部に設置されたレーザ装置と,こ
のレーザ装置から発振されるレーザビームを走査する走
査光学系と,走査光学系で走査されるレーザビームを密
閉容器内に案内し、対象部材に照射可能な集束光学系
と,前記密閉容器にレーザビーム透過媒体の気体を供給
する給気手段と,密閉容器内の排気を行なう排気手段
と,前記密閉容器内に設置された対象部材の表面にレー
ザビーム透過媒体の気体を吹き付ける吹付給気手段と,
この吹付給気手段により対象部材のレーザビーム照射部
を冷却する冷却手段とを備え、対象部材に気体中でレー
ザビームを照射して酸化層あるいは凹凸のマーキングを
施すように構成したものである。
【0029】
【0030】
【0031】また、上述した課題を解決するために、本
発明に係るレーザマーキング装置は、請求項7に記載し
たように、レーザビームの透過媒体である気体を充填し
た密閉容器と,この密閉容器内で気体中に設置された対
象部材と,この密閉容器の外部に設置されたレーザ装置
と,このレーザ装置から発振されるレーザビームを走査
する走査光学系と,走査光学系で走査されるレーザビー
ムを密閉容器内に案内し、対象部材に照射可能な集束光
学系と,前記密閉容器にレーザビーム透過媒体の気体を
供給する給気手段と,密閉容器内の排気を行なう排気手
段と,前記密閉容器内に設置された対象部材の表面近傍
の気体を吸引する吸引排気手段と,この吸引排気手段に
より対象部材のレーザビーム照射部を冷却する冷却手段
とを備え、対象部材に気体中でレーザビームを照射して
酸化層あるいは凹凸のマーキングを施すように構成した
ものである。
【0032】本発明に係るレーザマーキング方法は、上
述した課題を解決するために、請求項8に記載したよう
に、レーザビームの透過媒体に窒素ガス(N)含有量
が50wt%以下の気体を用い、この気体中に設置され
たジルコニウム合金製の対象部材にレーザ装置からレー
ザビームを照射し、上記対象部材の表面に酸化層あるい
は凹凸のマーキングを施す方法である。
【0033】上述した課題を解決するために、本発明に
係るレーザマーキング方法は、請求項9に記載したよう
に、レーザビームの透過媒体は、酸素ガス(O)、水
蒸気(HO)、過酸化水素水蒸気(HO)および不
活性ガス(He,Ne,Ar,Kr,Xe,Rn)の少
なくとも一成分を含む組成の気体である。
【0034】
【0035】
【0036】また、上述した課題を解決するために、本
発明に係るレーザマーキング方法は、請求項10に記載
したように、レーザビームの透過媒体は気体の組成比が
制御される方法である。
【0037】さらに、上述した課題を解決するために、
本発明に係るレーザマーキング方法は、請求項11に記
載したように、対象部材に吹付給気手段によりレーザビ
ーム透過媒体である気体を吹き付け、対象部材の表面を
冷却する方法である。
【0038】さらにまた、上述した課題を解決するため
に、本発明に係るレーザマーキング方法は、請求項12
記載したように、吸引排気手段により対象部材の表面近
傍の気体を吸引して外部に排出し、対象部材の表面を冷
却する方法である。
【0039】
【0040】
【作用】本発明は、レーザビームの透過媒体の液体ある
いは気体中に設置された対象部材に、レーザ装置からC
Wレーザあるいはパルスレーザなどのレーザビームを照
射させると、対象部材のレーザビーム照射部に、酸化層
が形成されたり、または材料表面の隆起現象や表層除去
現象による凹凸の形状変化が生じ、対象部材表面のレー
ザビーム照射部に生じる酸化層や凹凸の形状変化をレー
ザマーキングとして形成し、対象部材の表面にマーキン
グ(印)を施すものである。
【0041】本発明に係るレーザマーキング方法および
装置は、レーザビーム透過媒体の液体あるいは気体中で
対象部材の表面にレーザビームを照射すると、対象部材
を構成する物質と対象部材の表面に吸着した媒質(媒
体)が化学反応を起こし、対象部材の表層に新しい化合
物が形成されたり、あるいは対象部材の表面が隆起した
り、表層が除去される等の現象が起こる。また、化学反
応が生じない場合でも、レーザビーム照射面が溶融され
て体積膨脹して隆起する現象、あるいは溶融・蒸発、ア
ブレーションによる表層の除去現象等が起こる。このよ
うな対象部材の表面における化合物の形成、あるいは凹
凸の形状の変化により、構造物の表面に識別可能なマー
キングを施すことができる。
【0042】特に、O2 ,H2 O、あるいはH2 2
の酸素元素を含むレーザビーム透過媒体を用いると、対
象部材表面のレーザビーム照射部に酸化層が形成され、
この酸化層とレーザビーム非照射部との色の違いにより
マーキングとして識別可能となる。
【0043】また、レーザビーム照射媒体に不活性ガス
(He,Ne,Ar,Kr,Xe,Rn)を使用する
と、不活性ガス(He,Ne,Ar,Kr,Xe,R
n)は物質と反応し難いため、酸化層は形成されない
が、レーザビーム照射部の材料は隆起または除去され、
レーザビーム非照射部との間に相対的な表面の凹凸が生
じ、この凹凸の形状変化を識別可能なマーキングとした
ものである。
【0044】酸素元素を含むレーザビーム透過媒体(媒
質)を用い、かつ、レーザ装置にCWレーザを使用する
場合において、レーザビームのパワーあるいはビームの
走査速度を制御することにより、レーザビーム照射面が
受ける単位面積当りのレーザパワーをコントロールする
ことができ、レーザ照射材料の深さ方向の温度分布を制
御することができる。したがって、酸素の拡散層の深さ
を制御でき、結果として、酸化層の厚さを制御すること
ができる。
【0045】一方、レーザ装置にパルスレーザを使用す
る場合において、パルスエネルギーあるいはパルス時間
幅を制御することにより、レーザビーム照射面が1パル
ス当りに受ける単位面積当りのレーザエネルギーをコン
トロールすることができ、材料表層の隆起厚さまたは材
料除去厚さを制御することができる。レーザ装置に、パ
ルスレーザを使用し、かつ、酸素元素を含む媒質をレー
ザ透過媒体に用いた場合は、パルスレーザ装置の同様の
制御により、酸化層の厚さを制御することができる。
【0046】また、レーザ透過媒体(媒質)に酸素元素
を含む気体を使用する場合においては、気体の組成比の
制御を行なうことによっても、酸化層の厚さを制御する
ことができる。例えば、レーザ透過媒体に純酸素ガス
(O2 )と不活性ガス(He,Ne,Ar,Kr,X
e,Rn)から成る混合気を使用し、両者の比率(組成
比)を制御することによって、酸化層の厚さを制御する
ことができる。純酸素ガス(O2 )の比率を大きくする
ことにより、酸化層を厚くすることができる。
【0047】レーザビーム照射部であるマーキング部の
酸化層の厚さ、隆起厚さあるいは材料除去厚さを制御す
ることにより、識別に好適なコントラストや凹凸の形状
変化を均質な品質で得ることができる。
【0048】また、対象部材の表面を覆う媒質(レーザ
ビーム透過媒体)が液体の場合には、液体への熱放散に
より対象部材の表面が冷却され、熱影響の少ないマーキ
ングができる。熱影響が小さいことは耐食性の向上につ
ながり、耐食性が優れたレーザマーキングとなる。
【0049】また、液体中で高出力かつ短パルスのパル
スレーザビームを対象部材の表面に照射すると、表層の
原子が瞬間的に蒸発し、プラズマが発生する。発生した
プラズマは液体の慣性力により体積膨張が抑制されるた
め極めて高圧になり、その結果、表面は塑性変形して圧
縮応力が残留する。表面における圧縮応力の残留は耐食
性の向上につながり、耐食性が優れたレーザマーキング
を行なうことができる。
【0050】特に、レーザビーム透過媒体(媒質)の液
体として水(HO2 )を用いることは、酸化層を良好に
形成でき、この酸化層によるマーキングができる。水
(H2 O)は豊富に入手できかつ取扱いが容易という点
で優れている。この場合レーザ波長には水中透過が可能
な0.2〜1.4μmのレーザビームを用いることが有
効である。
【0051】一方、対象部材の表面を覆う媒質が気体の
場合でも、パルスレーザビームを使用することにより、
対象部材の表層への入熱を低減し、熱影響が少なく、耐
食性が優れたレーザマーキングを行なうことができる。
【0052】また、対象部材の表面のレーザビーム照射
部に媒質を強制的に吹き付けることにより、冷却の効果
を高めることができる。
【0053】さらに、対象部材の表面のレーザビーム照
射部近傍を強制的に吸引すると、媒質の流動が発生して
冷却の効果が高められるとともに、マーキングによって
除去された飛散物も吸引されて構造物表面への飛散物の
付着を防ぐことができる。
【0054】また、対象部材である被加工材料がジルコ
ニウム合金製の部材の場合は、媒質中のN2 含有量を低
減することにより、マーキング部の耐食性低下を食い止
めることができる。すなわち、被加工材料表層に窒素化
物が形成されると、被加工材料の腐食量が増加するとと
もに、腐食部のブレークアウェイが発生し易くなるが、
この効果を低減し、被加工材料の耐食性低下を防ぐこと
ができる。
【0055】さらに、対象部材である被加工材料がステ
ンレス鋼製の部材の場合は、媒質中のH2 O含有量を低
減することにより、マーキング部の耐食性低下を食い止
めることができる。すなわち、媒質中のH2 O含有量の
低減により、レーザ照射時に被加工材料表層に形成され
る水素化物量が減少し、被加工材料の水素脆化を防止す
ることができる。
【0056】また、レーザ装置にパルスレーザを使用す
る場合、照射スポットにおけるパワー密度分布は一般
に、スポット周辺部が中心部よりも低くなる。このた
め、パルスレーザビームを用いてライン状のマーキング
を施す際、照射スポットの周辺部が重なりを持つように
レーザビームを走査してライン状にマーキングを施せ
ば、走査方向に連続的なレーザ照射効果を与えることが
でき、均質なマーキングを施すことができる。
【0057】
【実施例】以下、本発明の実施例について添付図面を参
照して説明する。
【0058】[A]本発明の第1実施例 図1は本発明に係るレーザマーキング装置の第1実施例
を概略的に示す図である。このレーザマーキング装置1
0は、レーザビームを透過する透過媒体(媒質)に液体
を用い、この液体中で対象部材にレーザビームを照射
し、対象部材の表面にマーキング(印)を施したもので
ある。
【0059】レーザマーキング装置10は、CW(Cont
inuous Wave)レーザ光あるいはパルスレーザ光を発振
させるレーザ装置11と、このレーザ装置11から発振
されるレーザビームLBを走査する走査光学系12と、
走査光学系12により走査されるレーザビームLBを集
束させる集束光学系13と、レーザビームLBを透過さ
せる液体14を透過媒体(媒質)として収容した容器1
5とを備え、容器15内に原子炉の構成部材,構造物等
が対象部材16として設置される。容器15は上方が開
放あるいは開放可能な構成となっている。
【0060】走査光学系12には、反射ミラー17を備
えたミラー光学系,光ファイバを用いたファイバ光学系
あるいはこれらを組み合せた光学系が用いられる。この
走査光学系12は、集束光学系13とともにレーザビー
ムLBを移動走査可能に構成している。走査光学系12
および集束光学系13を移動走査させる代りに、対象部
材16を容器15内で移動自在に、例えば移動テーブル
等の移動台上に設置してもよい。集束光学系13には、
例えば集光レンズ18あるいは図示しない凹面鏡が用い
られる。集光レンズ18はレンズホルダを兼ねる加工ヘ
ッド19に支持されており、この加工ヘッド19は図示
しないロボットアーム等の操作アームにより移動操作可
能に設けられる。
【0061】次に、レーザマーキング装置10の作用を
説明する。
【0062】図1に示すように、容器15内にはレーザ
ビームLBを透過する透過媒体として液体14が満たさ
れており、この液体14内に原子炉の構成部材,構造物
などの対象部材16が設置される。容器15の外部にレ
ーザ装置11が設置され、このレーザ装置11からCW
レーザ光あるいはパルスレーザ光のレーザビームLBが
発振される。発振されたレーザビームLBは走査光学系
12で走査され、集束光学系13にて集束されて対象部
材16の表面に照射される。
【0063】レーザビームLBを液体14中で対象部材
16の表面に照射すると、対象部材16を構成する物質
と液体が化学反応を起こし、対象部材16の表面あるい
は表層に新しい化合物を形成したり、あるいは対象部材
16の材料の体積膨脹に伴う隆起や表層の除去が行なわ
れる等の現象が起こる。
【0064】また、化学反応が生じない場合でも、レー
ザビームLBの照射面が溶融され体積膨張して隆起する
現象、あるいは溶融・蒸発、またはアブレーションによ
る対象部材16の表層除去現象等が起こる。対象部材1
6の表層における新しい化合物の形成あるいは形状の変
化により、対象部材16の表面に識別可能なマーキング
を施すことができる。
【0065】対象部材16の表層に新しい化合物を形成
し、この化合物の形成をマーキングとして利用する方法
の一例としては、対象部材16表面のレーザビーム照射
部に酸化層を形成し、形成された酸化層と対象部材16
の被照射部との色の違いにより識別可能なマーキングと
して認識する方法がある。
【0066】対象部材16の材料隆起現象または表層除
去現象に着目し、この材料隆起現象または表層除去現象
に伴う形状の変化をマーキングとして利用する方法の一
例としては、レーザビーム照射部の対象部材16の構成
材料の隆起または表層除去現象を利用して、レーザビー
ム照射部とその周辺の被照射部との相対的な凹凸により
識別可能なマーキングとして認識する方法がある。
【0067】また、液体14中で対象部材16の表面に
レーザビームLBを照射すると、レーザビームLBが照
射される対象部材16は加熱作用を受けて温度上昇しよ
うとするが、周囲への熱放散と液体14による冷却作用
を受けて対象部材16の表面が冷却され、対象部材16
に熱影響の小さなマーキングが施される。熱影響が小さ
いことは耐食性の向上につながり、耐食性に優れ、信頼
性の高いレーザマーキングを施すことができる。
【0068】ところで、レーザ装置11にはCWレーザ
装置あるいはパルスレーザ装置が用いられる。このう
ち、レーザ装置11に銅蒸気レーザ、第2高調波発生用
のYAGレーザ、エキシマレーザ等のパルスレーザ装置
を使用し、このパルスレーザ装置から高出力でかつ短パ
ルスのパルスレーザビームLBp を対象部材16の表面
に照射すれば、残留応力を改善し、かつ表層改善を行な
いながら、対象部材16の表面にマーキングを施すこと
ができる。
【0069】液体14が満たされた容器15内に対象部
材16を設置し、液体14中で対象部材16の表面に高
出力で短パルスのレーザビームLBp を照射すると、対
象部材16の表層の原子が瞬間的に蒸発してプラズマが
発生する。発生したプラズマは液体14の慣性力により
体積膨張が抑制されるため極めて高圧になり、その結
果、対象部材16の表面は塑性変形して圧縮応力が残留
する。表面における圧縮応力の残留は耐食性の向上につ
ながり、したがって耐食性に優れ、信頼性の高いレーザ
マーキングを行なうことができる。
【0070】(1)レーザマーキング装置の第1変形例 このレーザマーキング装置の第1変形例の全体的構成は
図1に示すものと同様のものが用いられるが、容器15
に満たされる液体14としては水(H2 O)および過酸
化水素水(H2 2 )の少なくとも1成分を含む液体が
用いられる。
【0071】水(H2 O)および過酸化水素水(H2
2 )の少なくとも1成分を含む液体14中で、対象部材
16の表面にレーザビームLBを照射すると、対象部材
16表面のレーザビーム照射部に酸化層が形成される。
形成された酸化層と非照射部との色の違いにより識別可
能なマーキングを施すことができる。
【0072】(2)レーザマーキング装置の第2変形例 このレーザマーキング装置の第2変形例として、液体1
4として純水等の水(H2 O)を使用し、かつ波長領域
が0.2〜1.4μmのレーザビームLBが使用され
る。波長領域が0.2〜1.4μmの可視光域のレーザ
ビームLBを用いると、図2に示すように、レーザビー
ムの水中透過が可能となる。この図2は、水中における
光の透過特性を示すグラフである。
【0073】0.2〜1.4μmの波長領域に発振波長
を有するレーザ装置11として、KrClエキシマレー
ザ(発振波長0.222μm)、KrFエキシマレーザ
(発振波長0.248μmおよび0.486μm)、X
eBrエキシマレーザ(発振波長0.282μm)、X
eClエキシマレーザ(発振波長0.308μm)、N
2 レーザ(発振波長0.337μm)、Au蒸気レーザ
(発振波長0.3122μmおよび0.6278μ
m)、Pb蒸気レーザ(発振波長0.4057μmおよ
び0.7229μm)、Bi蒸気レーザ(発振波長0.
4722μm)、Cu蒸気レーザ(発振波長0.510
5μmおよび0.5782μm)、Tl蒸気レーザ(発
振波長0.5350μm)、Ca蒸気レーザ(発振波長
0.8662μm)、Ba蒸気レーザ(発振波長1.1
3μm)、Mn蒸気レーザ(発振波長1.30μm)、
ルビーレーザ(発振波長0.6943μmおよび0.6
929μm)、およびYAGレーザ(発振波長0.94
6μm、1.05205μm、1.06152μm、
1.06414μm、1.0646μm、1.0738
μm、1.0780μm、1.1121μm、1.11
59μm、1.12267μm、1.3188μm、
1.3382μmおよび1.3564μm)等がある。
【0074】図2に示すように、可視光領域では光の水
中透過性が著しく良好となるために、この可視光の波長
域にあるCu蒸気レーザ(発振波長0.5105μmお
よび0.5782μm)、あるいはYAGレーザの第2
高調波(波長0.532μm)を使用すると効率的であ
る。
【0075】しかし、容器15に満たされた液体14と
しては容易に入手でき、取扱いが容易な水を使用し、こ
の水中に設置された対象部材16の表面にレーザ装置1
1から発振される0.2〜1.4μmの波長領域のレー
ザビームLBを照射すると、レーザビーム照射部に化学
反応が生じて酸化層が形成され、酸化層のマーキングを
対象部材16の表面に容易に施すことができる。対象部
材16には、炉内構造物を含めた原子炉の構成部材や原
子炉機器、その他がある。
【0076】(3)レーザマーキング装置の第3変形例 この変形例は、対象部材16がジルコニウム合金で構成
されている場合、容器15に満たされる液体16の窒素
ガス含有量を所要値、例えば10ppm以下に制限した
レーザマーキング装置である。
【0077】このレーザマーキング装置10Aは窒素ガ
ス含有量を10ppm以下にコントロールした液体14
中でジルコニウム合金製の対象部材16にレーザ装置1
1から発振されたレーザビームLBを照射し、対象部材
16表面のレーザビーム照射部にマーキングを施すもの
である。
【0078】液体14を脱気する方法は、図3に示すよ
うに、容器15の底部に多数の小孔20を穿設した袋状
あるいはボックス状シートあるいはマット21をガス吹
出手段として敷設し、このマット21に容器15の外部
に設置されたガス供給源22がホース等のガス供給管2
3を介して接続される。ガス供給源22は例えばガスボ
ンベで構成され、内部に加圧された不活性ガス(He,
Ne,Ar,Kr,Xe,Rn)が充填されている。
【0079】容器15内にレーザビームLBを透過させ
る液体14を供給し、容器15をこの液体14で満たし
た状態でバルブ24を開放し、不活性ガスを容器15底
部に敷設されたマット21に供給する。マット21に供
給された不活性ガスはマット21の小孔20から液体1
4中に吹き出され、不活性ガスの泡が液体14中を上昇
する。その間に、液体14中で溶解されたガス(N2
2 )が脱気され、泡と共に外部に放出される。
【0080】不活性ガスを用いた脱気方法によって、液
体14中の脱気を行ない、液体14中の窒素(N2 )ガ
スの含有量を所要値、例えば10ppm以下に制限す
る。窒素ガスが10ppm以下に調整された液体14を
用いて、図1に示すレーザマーキング装置10により、
ジルコニウム合金製の対象部材16にレーザビームLB
を照射してレーザマーキングを施す。
【0081】窒素ガスが脱気された液体14を用いてレ
ーザマーキング装置10により対象部材16にレーザマ
ーキングを施すと、レーザビーム照射部すなわちレーザ
マーキング部の耐食性の低下を防止することができる。
【0082】このレーザマーキング装置10によりジル
コニウム合金製の対象部材16にレーザビームLBを照
射すると、対象部材16の表層にN2 ガスとの化学反応
が生じ、窒素化物が形成されるが、ジルコニウム合金製
対象部材の表層に窒素化物が形成されると、耐食性が著
しく低下する特性がある。したがって、容器15に収容
される液体中の窒素含有量を制限し、レーザビーム照射
部に生成される窒素化物の量を低減することにより、レ
ーザマーキング部の耐食性の劣化を防止することができ
る。
【0083】(4)レーザマーキング装置の第4変形例 図4はレーザマーキング装置10の第4変形例を示すも
のである。この変形例に示されたレーザマーキング装置
10は加工ヘッド19に噴出ノズル25を取付け、その
ノズル口を対象部材16のレーザビーム照射部側に指向
させたものである。噴出ノズル25は容器15の外部に
設置されたポンプ26とホース27を介して連結されて
液体噴出手段29が構成され、この液体噴出手段29が
レーザビーム照射部の冷却手段を構成している。ポンプ
26の吸込側はホース28により容器15内の液体14
側と連絡され、容器15内に満たされた液体14を強制
的に循環させるようになっている。ホース27,28の
途中にはフィルタ(図示せず)が取り付けられ、ゴミ等
の異物を除去するようになっている。
【0084】このレーザマーキング装置10で対象部材
16の表面にレーザマーキングを施す場合には、液体1
4中に設置された対象部材にレーザ装置11から発振さ
れたレーザビームLBを走査光学系12および集束光学
系13を介して絞って照射し、対象部材16の表面にマ
ーキングを施す。
【0085】対象部材16の表面にマーキングを施して
いる間に、液体噴出手段29のポンプ26を作動させ、
容器15内部の液体14をポンプ26に吸い込んだ後、
ホース27,噴出ノズル25を通じて対象部材表面のレ
ーザビーム照射部に吹き付ける。
【0086】ポンプ26作動により、液体14をレーザ
ビーム照射部に吹き付けることにより、レーザビーム照
射部の冷却の効果をさらに高めることができ、熱影響の
少ない、耐食性の良いマーキングを施すことができる。
【0087】(5)レーザマーキング装置の第5変形例 図5はレーザマーキング装置10の第5変形例を示すも
のである。この変形例に示されたレーザマーキング装置
10は、加工ヘッド19に吸引ノズル30を取り付け、
この吸引ノズル30のノズル口を対象部材16のレーザ
ビーム照射部側に指向させている。
【0088】吸引ノズル30はホース31を介して容器
15の外部に設置されたポンプ32の吸込側に接続さ
れ、ポンプ32の吐出側はホース33を介して容器15
内の液体14中に連絡されて液体吸引排出手段37を構
成し、レーザビーム照射部近傍の液体を吸引してフィル
タ34で異物を除去した後、再び容器15内に放出して
いる。液体吸引排出手段37はレーザビーム照射部の冷
却手段を兼ねている。ホース33の途中にフィルタ34
が設けられる。他の構成は図1に示すレーザマーキング
装置と異ならない。
【0089】このレーザマーキング装置10で対象部材
16の表面にレーザマーキングを施す場合、液体14中
に設置された対象部材16にレーザ装置11からレーザ
ビームLBを絞って照射し、対象部材16の表面にマー
キングを施す。
【0090】対象部材16の表面にマーキングを施して
いる間に、液体吸引排出手段37のポンプ32を作動さ
せる。このポンプ作動によりレーザビーム照射面の近傍
にあるマーキング加工により発生した飛散物は吸引ノズ
ル30を通じて容器15内部からホース31内に吸い込
まれ、フィルタ34で飛散物が除去された後、液体14
はポンプ32からホース33を経由して容器15内に再
び戻される。
【0091】このレーザマーキング装置10によれば、
図1に示したレーザマーキング装置の作用効果に加え
て、対象部材16の表面のレーザビーム照射部に液体1
4の流れが発生することで、次々に新しい液体14が対
象部材16の表面に接触して冷却の効果がさらに高めら
れるとともに、マーキング加工により発生した飛散物が
除去され、対象部材16の表面への付着を防止してい
る。したがって、対象部材16の表面に悪影響を及ぼす
ことがなく、かつ、熱影響が少なく耐食性の良好なマー
キングを施すことができる。
【0092】(6)レーザマーキング装置の第6変形例 この第6変形例に示されたレーザマーキング装置10
は、図1に示す構成を有する。ただ、レーザ装置11と
してCWレーザ装置ではなく、パルスレーザ装置が用い
られる。このパルスレーザ装置にはQスイッチレーザ,
モードロックレーザ等があり、パルスレーザ装置から発
振されるレーザビームにはパルス時間幅が1μs以下の
パルスレーザビームLBp が用いられる。
【0093】このレーザマーキング装置においては、図
1に示した作用効果に加え。パルスレーザ装置11にパ
ルスレーザ装置を使用し、このパルスレーザ装置から発
振されるレーザビームLBp のパルス時間幅を1μs以
下とすることにより、熱影響が少ない、耐食性が優れた
マーキングを施すことができる。
【0094】(7)レーザマーキング装置の第7変形例 図6はレーザマーキング装置10の第7変形例を示すも
ので、パルスレーザビームLBp の走査方法を示したも
のである。このレーザマーキング装置10は全体的な構
成は図1に示すものと同様であり、レーザ装置11とし
てパルスレーザ装置が使用される。このパルスレーザ装
置を用いて対象部材16の表面にマーキングを施す際、
パルスレーザの集光スポット35が重なり合うようにパ
ルスレーザビームLBp を走査してライン状のマーキン
グを施すものである。
【0095】このレーザマーキング装置10は図1に示
すレーザマーキング装置の作用効果に加え、次の作用効
果を奏する。
【0096】レーザ装置11としてパルスレーザ装置か
ら発振されるパルスレーザビームLBp の対象部材16
へ照射され、この照射スポット35のレーザパワー密度
は一般にスポット周辺部が中心部より低くなる。対象部
材16に図6に示すようにライン状のマーキングを施す
際、照射スポット35の周辺部が重なりを持つようにレ
ーザビームLBp を走査してライン状にマーキングを施
せば、走査方向に連続的なレーザ照射効果を与えること
かてき、均質なライン状マーキングを施すことができ
る。
【0097】(8)レーザマーキング装置の第8変形例 このレーザマーキング装置の全体的構成は図1に示すも
のと同様であるが、レーザ装置11としてCWレーザ装
置を用いたものであり、このCWレーザ装置からのCW
レーザビームLBc を対象部材16の表面に図1に示す
走査光学系12、集束光学系13を介して照射し、対象
部材16の表面に酸化層のマーキングを形成する。
【0098】この酸化層のマーキングをCWレーザ装置
を用いて形成する際、CWレーザ装置からのCWレーザ
ビームLBcのパワー調整を行なったり、あるいは走査
光学系12の走査速度の制御を行なって、所望する酸化
層のマーキングを施すようにしたものである。
【0099】容器15に貯溜される液体14に酸素元素
を含有するレーザビーム透過媒体(媒質)を使用し、か
つCWレーザ装置を用いて、CWレーザビームLBc の
パワーあるいはレーザビーム走査速度を制御することに
よりレーザビーム照射面が受ける単位面積当りのレーザ
パワーをコントロールすると、レーザ照射材料の深さ方
向の温度分布を制御することができる。したがって、酸
素の拡散層の深さを制御でき、結果として、酸化層の厚
さを制御することができる。レーザマーキング部の酸化
層の厚さを制御することにより、マーキングは周囲との
間に識別に好適なコントラストを有する、均質なマーキ
ングを得ることができる。
【0100】(9)レーザマーキング装置の第9変形例 このレーザマーキング装置10の全体的構成は図1に示
すものと同様であるが、レーザ装置11としとてパルス
レーザ装置が用いられる。このパルスレーザ装置から発
振されるパルスレーザビームLBp を対象部材16に照
射し、対象部材16の表面にマーキング(印)として酸
化層あるいは凹凸を形成する。対象部材16の表面に酸
化層または凹凸を形成する場合、パルスレーザビームL
Bp のエネルギーまたはパルス時間幅の制御を行なうよ
うにしたものである。
【0101】このレーザマーキング装置10によれば、
レーザ装置11としてパルスレーザ装置を使用し、パル
スレーザ装置から発振されるパルスレーザエネルギーあ
るいはパルス時間幅を制御することにより、レーザビー
ム照射面が1パルス当りに受ける単位面積当りのレーザ
エネルギーをコントロールすることができ、材料表層の
隆起厚さまたは材料表層の除去厚さを制御することがで
きる。
【0102】このレーザマーキング装置10にパルスレ
ーザ装置を使用し、容器15に貯溜される液体14に酸
素元素を含む透過媒体を用いた場合には、パルスレーザ
装置のパルスレーザエネルギーあるいはパルス時間幅を
制御することにより、酸化層の厚さを制御することがで
きる。レーザマーキング部の酸化層の厚さ、隆起厚さ、
あるいは材料表層除去厚さを制御することにより、識別
に好適なコントラストあるいは凹凸を有する、均質なマ
ーキングを得ることができる。
【0103】[B]本発明の第2実施例 図7は本発明に係るレーザマーキング装置の第2実施例
を示すものである。
【0104】このレーザマーキング装置40はレーザ装
置としてパルスレーザ装置41を用い、このレーザ装置
41から発振されるパルスレーザビームLBp を気体4
2中で対象部材43に照射し、対象部材43の表面にマ
ーキング(印)を施すものである。
【0105】このレーザマーキング装置40はパルスレ
ーザビームLBpの透過媒体である気体42を封入した
開閉自在なセル容器のような密閉容器44と、この密閉
容器44の外部に設置されたレーザ装置としてのパルス
レーザ装置41と、このパルスレーザ装置41から発振
されるパルスレーザビームLBpを走査させる走査光学
系45と、走査光学系45で走査されるパルスレーザビ
ームLBpを絞り込んで照射する集束光学系46と、前
記密閉容器44内に設置された原子炉の構成部材,炉内
構造物,原子炉機器等の対象部材43と、密閉容器44
内にレーザビーム透過媒体(媒質)である気体42を供
給する給気手段47と、密閉容器44内の気体42を排
気する排気手段48とを有する。
【0106】走査光学系45には反射ミラー49を備え
たミラー光学系,光ファイバを用いたファイバ光学系あ
るいはこれらを組み合せた光学系が用いられる。また、
集束光学系46には透過窓50および集光レンズ51あ
るいは凹面鏡を組み合せた光学系が用いられ、透過窓5
0および集光レンズ51は加工ヘッド等のスリーブ状の
ホルダ52に保持される。ホルダ52は密閉容器44の
頂壁あるいはカバー44aに固定しても、また、カバー
44aを透明体で構成してこのカバー上方に設置し、走
査光学系45とともにホルダ52を移動自在に支持して
もよい。ホルダ52を移動走査自在に保持する代りに、
密閉容器44内に収容される対象部材43を移動テーブ
ル等の移動台(図示せず)上に移動自在に支持してもよ
い。
【0107】また、給気手段47は気体ボンベ等の気体
供給源53を有し、この気体供給源53から給気配管5
4が延びて密閉容器44に接続される。給気配管54に
はバルブ55が設けられる一方、バルブ55の下流側は
分岐され、複数の分岐管54a,54bが密閉容器44
の側壁に高さを異にして接続され、レーザビーム透過媒
体である気体を密閉容器44内に効率よく供給するよう
になっている。分岐管54a,54bにもバルブ56が
設けられている。
【0108】さらに、密閉容器44の側壁に排気手段4
8が設けられている。排気手段48は密閉容器44の側
壁に高さを異にして設けられた複数の排気管58a,5
8bを備え、この排気管58a,58bは途中に合流さ
れ、排気ポンプ60を介して外部に開放されている。排
気管58a,58bの途中にもバルブ61が開閉自在に
設けられている。
【0109】一方、密閉容器44内に形成される密閉空
間は、給気手段47およ排気手段48を適宜作動させる
ことにより、パルスレーザビームLBp を透過する透過
媒体である気体42で満たされる。
【0110】次に、図7に示されたレーザマーキング装
置40の作用を説明する。
【0111】このレーザマーキング装置40を用いて対
象部材43の表面にレーザマーキングを施す場合、セル
容器である密閉容器44内を排気手段48や給気手段4
7を作動させて、パルスレーザビームLBp を透過する
気体42で満たし、この気体42で満たされた密閉容器
44の雰囲気内に対象部材43を設置する。
【0112】しかして、密閉容器44の外部に設置され
たパルスレーザ装置41を作動させ、このパルスレーザ
装置41から発振されるパルスレーザビームLBp を走
査光学系45に案内して走査された後、集束光学系46
で密閉容器44の内部に導かれて集束され、対象部材4
3の表面上に集光されて照明される。このとき、気体4
2の雰囲気中で対象部材43の材料表面に照射されるパ
ルスレーザビームLBp により、マーキングが施され
る。
【0113】密閉容器44内の雰囲気は給気手段47お
よび排気手段48と連絡され、密閉容器44内は気体供
給源53および外気にそれぞれ連通可能に構成される。
給気手段47および排気手段48により密閉容器44の
内部雰囲気の気体を交換し、好適な気体42を密閉容器
44内部に充填させることができる。
【0114】図7に示されたレーザマーキング装置40
を用いて対象部材43の表面にマーキングを施すと、次
の作用効果が得られる。
【0115】密閉容器44の内部雰囲気(空間)に気体
42を充填させ、内部に設置された対象部材43の表面
に、パルスレーザ装置41から発振されたパルスレーザ
ビームLBp を絞って照射すると、対象部材43の材料
構成物質と材料表面に吸着した気体が化学反応を起こ
し、対象部材43の表層に新しい化合物を形成したり、
また、対象部材43はレーザビームの照射に伴う材料の
体積膨張で隆起したり、あるいは材料表層が除去される
等の現象が起こる。また、化学反応が生じない場合で
も、パルスレーザビーム照射面が溶融され体積膨張して
隆起する現象、あるいは溶融・蒸発,アブレーションに
よる表層の除去現象等が起こる。このような対象部材4
3の表層における化合物の形成、あるいは形状の変化に
より、対象部材43の表面に識別可能なマーキングを施
すことができる。
【0116】対象部材43の表層に新しい化合物を形成
し、この化合物の形成をマーキングに利用する方法の一
例としては、対象部材43の表面のレーザビーム照射部
に酸化層を形成し、形成された酸化層と非照射部との色
の違いにより識別可能なマーキングとして認識する方法
がある。
【0117】対象部材43の材料隆起現象あるいは表層
除去現象に着目し、これらの現象に伴う形状の変化をマ
ーキングに利用する方法の一例としては、レーザビーム
照射部の対象部材43の材料隆起、または表層除去現象
を利用して、パルスレーザビーム照射部とその周辺の非
照射部との相対的な凹凸により識別可能なマーキングを
施す方法がある。
【0118】このレーザマーキング装置40において
は、レーザ装置にパルスレーザ装置41を使用するの
で、パルスレーザビームLBp によって対象部材43の
表層への入熱を低減させることができ、対象部材43に
及ぼす熱影響が少なく、耐食性が優れたレーザマーキン
グを行なうことができる。
【0119】(1)レーザマーキング装置(第2実施
例)の第1変形例 この変形におけるレーザマーキング装置40の全体的な
構成は、図7に示すものと同様であり、異ならないが、
密閉容器44内に充填される気体42の組成を、酸素ガ
ス(O2 )、水蒸気(H2 O)、過酸化水素水蒸気(H
2 2 )、不活性ガス(He,Ne,Ar,Kr,X
e,Rn)の少なくとも1成分を含む組成としたもので
ある。
【0120】レーザマーキング装置40の密閉容器44
内雰囲気に充填される気体42を選択し、酸素ガス(O
2 )、水蒸気(H2 O)、過酸化水素水蒸気(H
2 2 )、不活性ガス(He,Ne,Ar,Kr,X
e,Rn)の少なくとも1成分を含む組成を有する気体
を使用すると、第2実施例の作用効果に加えて、次の作
用効果を奏する。
【0121】酸素ガス(O2 )、水蒸気(H2 O)、過
酸化水素水蒸気(H2 2 )、不活性ガス(He,N
e,Ar,Kr,Xe,Rn)の少なくとも1成分を含
む気体中で、パルスレーザビームLBp を、対象部材の
表面に照射すると、対象部材表面のレーザビーム照射部
に酸化層が形成され、この酸化層がその周辺のレーザビ
ーム非照射部との色の違いにより識別可能となり、酸化
層からなるマーキングを施すことができる。
【0122】また、密閉容器44の給気手段47に気体
供給源53として不活性ガスを充填したガスボンベを使
用し、この給気手段47により密閉容器44内に不活性
ガスを充填させる。この不活性ガス(He,Ne,A
r,Kr,Xe,Rn)のみから構成される気体42中
で、パルスレーザビームLBp を、対象部材43の表面
に照射すると、不活性ガス(He,Ne,Ar,Kr,
Xe,Rn)は物質と反応し難いため、化合物は形成さ
れないが、パルスレーザビーム照射部の材料は隆起、ま
たは除去され、その周辺の非照射部との間に相対的な表
面の凹凸が生じ、この凹凸により識別可能なマーキング
を施すことができる。
【0123】さらに、酸素ガス(O2 )と不活性ガス
(He,Ne,Ar,Kr,Xe,Rn)から構成され
る混合気体中で、パルスレーザビームを対象部材の表面
に照射すると、不活性ガス(He,Ne,Ar,Kr,
Xe,Rn)は物質と反応し難いため、対象部材表面に
酸化層のみを形成し、この酸化層によるレーザマーキン
グを施すことができる。このマーキング技術によれば、
耐食性に悪影響を及ぼす酸素以外の元素が、対象部材の
表層に化合物として入り込むことを防止することがで
き、耐食性を改善することができる。
【0124】(2)レーザマーキング装置(第2実施
例)の第2変形例 図8は第2実施例に示されたレーザマーキング装置40
の第2変形例を示すものである。この変形例に示された
レーザマーキング装置40は給気手段47を改良する一
方、集束光学系46を保持するホルダ51に給気ノズル
63を設け、この給気ノズル63をホース等の供給配管
64を介して給気手段47の気体供給源53に連通さ
せ、気体42を対象部材43のレーザビーム照射部に吹
き付けるようにし、吹付給気手段67を構成したもので
ある。この吹付給気手段67はレーザビーム照射部を冷
却する冷却手段を構成している。
【0125】気体供給源53から供給される気体42は
供給ポンプ65により加圧された後、供給配管64を経
て密閉容器44内に入り、吹付給気手段67の給気ノズ
ル63から対象部材43表面のレーザビーム照射部に吹
き付けられるようになっている。符号66はバルブであ
る。
【0126】図8に示されたレーザマーキング装置40
においては、気体供給源53からの気体(流体)42を
パルスレーザビーム照射部に吹き付けることにより、冷
却の効果をさらに高めることができ、熱影響が少なく、
耐食性の良いマーキングを施すことができる。
【0127】(3)レーザマーキング装置(第2実施
例)の第3変形例 この変形例に示されたレーザマーキング装置40は図9
に示すものである。このレーザマーキング装置40は集
束光学系46を保持するホルダ51に排気ノズル68を
設けたものである。排気ノズル68のノズル口は対象部
材43のパルスレーザビーム照射部に向けて指向される
一方、排気ノズル68には排気配管69が接続されてい
る。排気配管69は密閉容器44の頂壁あるいはカバー
44aを貫いて外部に延びており、密閉容器44の外部
に設置された排気ポンプ70にフィルタ71を介して接
続している。排気ポンプ70の吐出側は外気に開放さ
れ、対象部材43の表面近傍の気体を吸引して排気する
吸引排気手段74を構成している。符号72は開閉バル
ブである。
【0128】このレーザマーキング装置40は対象部材
43に照射されるパルスレーザビームLBp のレーザビ
ーム照射部近傍の気体を積極的に吸引する吸引排気手段
74を設け、この吸引排気手段74でレーザビーム照射
部を冷却する冷却手段を構成したものである。
【0129】図9に示されたレーザマーキング装置40
の他の構成は、図7に示すものと異ならないので、同一
符号を付して説明を省略する。
【0130】このレーザマーキング装置40によれば、
パルスレーザ装置41から発振されるパルスレーザビー
ムLBp を走査光学系45で走査し、集束光学系46で
密閉容器44内に案内して集束させ、密閉容器44内の
気体雰囲気に設置された対象部材43に照射され、この
対象部材43の表面にパルスレーザビームLBp による
マーキングが施される。
【0131】対象部材43の表面にパルスレーザビーム
LBp を照射してマーキングを施している間に排気ポン
プ70を作動させて、吸引排気手段74を駆動させる。
この駆動により、パルスレーザビーム照射面の近傍にあ
る気体を吸引し、外気中に排出される。その際、マーキ
ング加工により発生した飛散物はノズルを通じて容器内
部からホース内に吸い込まれ、フィルタで飛散物が除去
される。
【0132】すなわち、吸引排気手段74を駆動させる
ことにより、対象部材43のパルスレーザビーム照射部
に気体の流れが発生し、レーザビーム照射部が次々の新
しい気体と接触し、積極的に冷却されるので、冷却の効
果がさらに高められるとともに、マーキング加工により
発生した飛散物が除去され、構造物表面への付着を防止
できる。したがって、対象部材の表面に悪影響を及ぼす
ことがなく、かつ、熱影響が少なく耐食性の良好なマー
キングを施すことができる。
【0133】(4)レーザマーキング装置(第2実施
例)の第4変形例 この変形例ではレーザマーキング装置40に用いられる
レーザ装置としてパルスレーザ装置41が用いられる
が、このパルスレーザ装置41から発振されるパルスレ
ーザビームLBp はパルス時間幅が1μs以下にコント
ロールされる。このパルスレーザ装置41としてQスイ
ッチレーザ、モードロックレーザ等が使用され、そのパ
ルスレーザビームLBp のパルス時間幅を1μs以下と
するものである。
【0134】この第4変形例のレーザマーキング装置4
0によれば、図7のレーザマーキング装置40で得られ
る作用効果に加えて、パルスレーザビームLBp のパル
ス時間幅を1μs以下とすることにより、さらに対象部
材43に及ぼされる熱影響が少なく、耐食性がより一層
良好なマーキングを施すことができる。
【0135】(5)レーザマーキング装置(第2実施
例)の第5変形例 この変形例のレーザマーキング装置40は、対象部材4
3の表面にマーキングを施す際、図6に示すように、パ
ルスレーザビームLBp の集光スポット35が重なり合
うようにレーザビームを走査してライン状のマーキング
を施すものである。
【0136】図6はパルスレーザビームの操作方法を示
す図である。
【0137】このレーザマーキング装置40において
は、図7に示されたレーザマーキング装置で得られる作
用効果に加えて、次の作用効果が得られる。
【0138】レーザマーキング装置40のパルスレーザ
装置41から発振されるパルスレーザビームLBp が対
象部材43に照射される際、対象部材43の表面に照射
されるパルスレーザビームLBp の照射スポット35に
おけるレーザビームのパワー密度は一般に、スポット周
辺部が中心部よりも低くなる。対象部材43にライン状
のマーキングを施す際、図6に示すように、照射スポッ
ト35の周辺部が重なりを持つようにパルスレーザビー
ムLBp を走査してライン状にマーキングを施せば、走
査方向に連続的なレーザ照射効果を与えることができ、
均質なマーキングを施すことができる。
【0139】(6)レーザマーキング装置(第2実施
例)の第6変形例 この変形例のレーザマーキング装置40は、対象部材4
3の表面にパルスレーザビームLBp を用いてマーキン
グ(印)として酸化層または凹凸を形成した例である。
この場合には、レーザ装置としてのパルスレーザ装置4
1の運転制御を行なって、発振されるパルスレーザビー
ムLBp のエネルギーまたはパルス時間幅制御を行なう
ようにしたものである。
【0140】このレーザマーキング装置40において
は、対象部材43の表面にパルスレーザ装置41からパ
ルスレーザビームLBp が照射されるが、パルスレーザ
照射部における材料表層の隆起厚さ、または材料除去厚
さはレーザビーム照射面が1パルス当りに受ける単位面
積当りのエネルギーに強く依存している。したがって、
パルスレーザビームLBp のエネルギーあるいはパルス
時間幅を制御することにより、パルスレーザビーム照射
面が1パルス当りに受ける単位面積当りのエネルギーを
コントロールすれば、材料表層の隆起厚さまたは材料除
去厚さを制御することが可能になる。
【0141】密閉容器44内の雰囲気に酸素元素を含む
気体を用いる場合においては、パルスレーザビームLB
p のエネルギーやパルス時間幅の制御によりレーザ照射
材料の深さ方向の温度分布のコントロールを行なうと、
深さ方向の温度分布と酸素の拡散層の深さ、すなわち酸
化層の厚さは相関があるため、結果として、酸化層の厚
さを制御することが可能になる。
【0142】マーキング部の酸化層の厚さ、隆起厚さ、
あるいは材料除去厚さを制御することにより、識別に好
適なコントラストあるいは凹凸を有する均質なマーキン
グを得ることができる。
【0143】(7)レーザマーキング装置(第2実施
例)の第7変形例 この変形例におけるレーザマーキング装置40は給気手
段47に、例えば酸素ガス給気手段と不活性ガス給気手
段を独立して複数系統設け、複数系統の給気手段47の
作動を調節制御して密閉容器44内に充填される雰囲気
気体の組成比を制御したものである。このレーザマーキ
ング装置40は図7に示されたレーザマーキング装置と
給気手段47の系統数が異なるだけであり、全体的な構
成は異ならない。
【0144】密閉容器44内に充填される雰囲気気体4
2の組成比の制御を行なうことにより、このレーザマー
キング装置40は図7に示すものに加えて次の作用効果
を奏する。
【0145】密閉容器44内に、例えば、酸素ガス(O
2 )と不活性ガス(He,Ne,Ar,Kr,Xe,R
n)から成る混合ガスを雰囲気として使用すると、酸素
ガス(O2 )の比率の増加に伴う酸化層の厚さが増加す
るため、両者の組成比率を制御することによって酸化層
の厚さを制御することができる。このように、雰囲気気
体の組成比の制御を行なうことにより酸化層の厚さを制
御することができ、マーキング部の酸化層の厚さを制御
することにより、識別に好適なコントラストを均質な品
質で得ることができる。
【0146】[C]本発明の第3実施例 図10は本発明に係るレーザマーキング装置の第3実施
例を示すものである。
【0147】この実施例に示されたレーザマーキング装
置80は、対象部材81にジルコニウム合金製部材を用
い、このジルコニウム合金製対象部材81の表面にレー
ザ装置82からのレーザビームLBの照射によりマーキ
ングを施すものである。このレーザマーキング装置80
は密閉容器83内に窒素ガス(N2 )含有量が重量比で
50wt%以下のレーザビームLBを透過する気体84
が封入される。対象部材81としては原子炉の構成部
材,炉内構造物,制御関連部材等がある。
【0148】このレーザマーキング装置80は、レーザ
ビーム透過媒体(媒質)として気体84を封入した真空
セル容器である密閉容器83と、この密閉容器83の外
部に設置されたレーザ装置82と、このレーザ装置82
から発振されるレーザビームLBを走査する走査光学系
85と、走査光学系85で走査させるレーザビームLB
を絞り込んで密閉容器83内に照射する集束光学系86
と、密閉容器83内に設置される原子炉の構成部材等で
あるジルコニウム合金製の対象部材81と、密閉容器8
3内にレーザビーム透過媒体である気体84を供給する
給気手段87と、密閉容器83内を吸引して排気する排
気手段88とを有する。
【0149】走査光学系85には反射ミラー89を備え
たミラー光学系,光ファイバを用いたファイバ光学系あ
るいはこれらを組み合せた光学系が用いられる一方、集
束光学系86には透過窓90および集光レンズ91ある
いは凹面鏡を組み合せた光学系が用いられる。透過窓9
0および集光レンズ91は加工ヘッド等のスリーブ状ホ
ルダ92に保持される。ホルダ92は密閉容器83の頂
壁あるいはカバー83aに固定しても、またカバー83
aを透明体で構成してカバー上方に設置し、走査光学系
85と一体にホルダ92を移動自在に支持してもよい。
走査光学系85および集束光学系86を移動走査自在に
保持する代りに、密閉容器83内に収納される対象部材
81を移動テーブル等の移動台(図示せず)上に設置
し、移動自在としてもよい。
【0150】また、給気手段87は気体ボンベ等の気体
供給源93を有し、この気体供給源93から延びる給気
配管94が密閉容器83に接続される。給気配管94に
はバルブ95が設けられる。
【0151】また、密閉容器83の側壁に排気手段88
が設けられる。排気手段88は密閉容器83の側壁に設
けられた排気配管98を備え、この排気配管98は途中
にバルブ99,真空ポンプ100を備えて外気に開放し
ている。
【0152】次に、レーザマーキング装置80の作用を
説明する。
【0153】図10に示すように真空セル容器としての
密閉容器83の内部にジルコニウム合金製の対象部材8
1が設置されており、密閉容器83内は初めに排気手段
88の真空ポンプ100がポンプ作動して真空化され、
密閉容器83の内壁に吸着した窒素ガス(N2 )を取り
除く。続いて、密閉容器83内の空間(雰囲気)に給気
手段87により気体供給源93からレーザビーム透過媒
体の気体84を供給し、この気体84で密閉容器83内
を満たす。気体供給源93には、例えば気体ボンベによ
り窒素ガス(N2 )含有量が50wt%以下の気体が貯
溜されている。
【0154】密閉容器83内に窒素ガス(N2 )含有量
が50wt%以下の気体を充填させた後、密閉容器83
の外部に設置されたレーザ装置82からレーザビームL
Bを発振させ、発振されたレーザビームLBを走査光学
系85で走査し、集束光学系86により密閉容器83内
に案内して集束させ、密閉容器83内に設置されたジル
コニウム合金製の対象部材81に照射する。
【0155】レーザビームLBをレーザビーム透過媒体
の気体84中でジルコニウム合金製対象部材81に照射
すると、レーザビームLBが照射された対象部材81の
材料表面では材料構成物質と材料表面に吸着した気体が
化学反応を起こし、材料の表層に新しい化合物が形成さ
れたり、あるいは材料の表面が体積膨張して隆起した
り、材料の表層が除去される等の現象が起こる。また、
化学反応が生じない場合でも、パルスレーザビーム照射
面が溶融され体積膨張して隆起する現象、あるいは溶融
・蒸発、またはアブレーションによる表層の除去現象等
が起こる。このような表層における化合物の形成あるい
は形状の変化により、ジルコニウム合金製対象部材の表
面に識別可能なマーキングを施すことができる。
【0156】化合物の形成をマーキングに利用する方法
の一例としては、ジルコニウム合金製対象部材81の表
面のレーザビーム照射部に酸化層をマーキングとして形
成し、この酸化層とその周辺の非照射部との色の違いに
よりマーキングを識別可能としたものである。
【0157】形状の変化をマーキングに利用する方法の
一例としては、レーザビーム照射部の材料の隆起または
表層除去現象で形成される凹凸をマーキングとして利用
し、周辺のレーザビーム非照射部との相対的な凹凸によ
りマーキングを識別可能としたものである。ジルコニウ
ム合金製対象部材81の表層に窒素化物が形成されると
耐食性が低減することが知られている。したがって、こ
の窒化物の形成を防止するため、雰囲気気体中のN2
有量をできるだけ低減させ、これによりマーキング部の
耐食性低下を有効に防止している。
【0158】(1)レーザマーキング装置(第3実施
例)の第1変形例 このレーザマーキング装置80の全体構成は、図10に
示すものと異ならないが、このレーザマーキング装置8
0は給気手段87から密閉容器83の雰囲気に供給され
る気体84の組成を、酸素ガス(O2 )、水蒸気(H2
O)、過酸化水素水蒸気(H2 2 )、不活性ガス(H
e,Ne,Ar,Kr,Xe,Rn)の少なくとも1成
分を含む組成としたものである。
【0159】密閉容器83の雰囲気気体に、酸素ガス
(O2 )、水蒸気(H2 O)、過酸化水素水蒸気(H2
2 )、不活性ガス(He,Ne,Ar,Kr,Xe,
Rn)の少なくとも1成分を含む組成を有する気体を使
用したレーザマーキング装置80を用いると、図10に
示したレーザマーキング装置の作用効果に加えて次の作
用効果を奏する。
【0160】このレーザマーキング装置80は、酸素ガ
ス(O2 )、水蒸気(H2 O)、過酸化水素水蒸気(H
2 2 )、不活性ガス(He,Ne,Ar,Kr,X
e,Rn)の少なくとも1成分を含む気体中で、レーザ
ビームを、ジルコニウム合金製対象部材81の表面に照
射すると、ジルコニウム合金製対象部材81表面のレー
ザビーム照射部に酸化層がマーキングとして形成され、
この酸化層とレーザビーム非照射部との色の違いにより
マーキングとして識別可能となる。
【0161】また、不活性ガス(He,Ne,Ar,K
r,Xe,Rn)のみから構成される気体中で、レーザ
ビームLBを、ジルコニウム合金製対象部材81の表面
に照射すると、不活性ガス(He,Ne,Ar,Kr,
Xe,Rn)は物質と反応し難いため、化合物は形成さ
れないが、レーザビーム照射部の材料は隆起または表層
が除去され、レーザビーム非照射部との間に相対的な表
面の凹凸によりマーキングとして識別可能となる。
【0162】また、酸素ガス(O2 )と不活性ガス(H
e,Ne,Ar,Kr,Xe,Rn)から構成される混
合気体中で、レーザビームをジルコニウム合金製対象部
材81の表面に照射すると、不活性ガス(He,Ne,
Ar,Kr,Xe,Rn)は物質と反応し難いため、対
象部材81の表面に酸化層のみを形成し、この酸化層を
マーキングとすることができる。このマーキング技術に
よれば、耐食性に悪影響を及ぼす酸素以外の元素が、ジ
ルコニウム合金製対象部材81の表層に化合物として入
り込むのを有効的に防止することができる。
【0163】(2)レーザマーキング装置(第3実施
例)の第2変形例 この変形例のマーキング装置80は図11に示すよう
に、対象部材81のレーザビーム照射部に気体84を吹
き付ける吹付給気手段102を備えたものである。他の
構成は、図10に示すレーザマーキング装置と異ならな
いので同一符号を付して説明を省略する。
【0164】吹付給気手段102は集束光学系86を保
持するホルダ92に取り付けられた給気ノズル103を
備え、この給気ノズル103は給気配管104を介して
給気供給源93に連結される一方、給気配管104には
密閉容器83の外側に給気ポンプ105が備えられ、こ
の給気ポンプ105で給気供給源93からの気体84を
加圧し、給気ノズル103から吹き出すようになってい
る。給気ノズル103のノズル口は対象部材81のレー
ザビーム照射部を向くように指向される。なお、符号1
06はバルブである。
【0165】このレーザマーキング装置80において
は、マーキング時に、給気供給源93からレーザビーム
透過媒体の気体が給気配管104を介して給気ポンプ1
05に送られ、この給気ポンプ105で加圧された後、
給気配管104を通して給気ノズル103によりジルコ
ニウム合金製の対象部材81表面に、レーザビーム照射
中に吹き付けられる。
【0166】図11に示すレーザマーキング装置80は
レーザ装置83からジルコニウム合金製対象部材81に
レーザビームLBを絞り込んで照射し、マーキングを形
成している間に、吹付給気手段102の給気ノズル10
3から気体(流体)84をレーザビーム照射部に吹き付
けることにより、冷却の効果をさらに高めることがで
き、熱影響の少ない、耐食性の良いマーキングを施すこ
とができる。
【0167】(3)レーザマーキング装置(第3実施
例)の第3変形例 この変形例のマーキング装置80は図12に示すよう
に、図10に示すレーザマーキング装置80に吸引排気
手段108を備え、ジルコニウム合金製対象部材81の
レーザビーム照射面近傍の気体を吸引し、外部に放出す
るようにしたものである。他の構成は図10のレーザマ
ーキング装置80と異ならないので説明を省略する。
【0168】吸引排気手段108は集束光学系86を保
持したホルダ92に取り付けられた排気ノズル109を
有し、この吸引ノズル109からの排気配管110は密
閉容器83の頂壁あるいはカバー83aを通して外部に
延設される。排気配管110には密閉容器83の外部で
バルブ111,フィルタ112および排気ポンプ113
が設置され、排気ポンプ113の吐出側は大気に開放さ
れている。
【0169】このレーザマーキング装置80は吸引排気
手段108を備え、吸引排気手段108の吸引ノズル1
09はそのノズル口がジルコニウム合金製の対象部材8
1に指向されている。そして、吸引排気手段108の排
気ポンプ1の作動により、レーザビーム照射面の近傍に
ある気体とマーキング加工により発生した飛散物は吸引
ノズル109を通じて密閉容器83内部から排気配管1
10内に吸い込まれ、フィルタ112で飛散物が除去さ
れた後、気体は外気に排出される。
【0170】このレーザマーキング装置80によれば、
第3実施例の作用効果に加えて、次の作用効果を奏す
る。
【0171】このレーザマーキング装置80においては
ジルコニウム合金製対象部材81の表面のレーザビーム
照射部付近の気体が吸引排気手段108により吸引され
て外気に放出される。このため、レーザビーム照射部付
近に気体の流れが生じ、次々と新しい気体が対象部材8
1の表面に接触し、レーザビーム照射部を冷却するの
で、冷却の効果がさらに高められるとともに、マーキン
グ加工により発生した飛散物が除去され、構造物表面へ
の付着を防止できる。したがって、ジルコニウム合金製
対象部材81の表面に悪影響を及ぼすことがなく、か
つ、熱影響が少なく耐食性の良好なマーキングを施すこ
とができる。
【0172】(4)レーザマーキング装置(第3実施
例)の第4変形例 この変形例においては、レーザ装置82としてパルスレ
ーザ装置を用い、このパルスレーザ装置の作動を制御
し、発振されるパルスレーザビームのパルス時間幅を1
μs以下としたものである。他の構成は図10に示した
レーザマーキング装置80と異ならない。
【0173】レーザ装置82としてQスイッチレーザ、
モードロックレーザ等のパルスレーザ装置を使用し、こ
のパルスレーザビームのパルス時間幅を1μs以下とす
ることにより、さらに熱影響が少なく、耐食性の良いマ
ーキングを施すことができる。
【0174】(5)レーザマーキング装置(第3実施
例)の第5変形例 この変形例においては、レーザ装置82としてパルスレ
ーザ装置を使用し、ジルコニウム合金製対象部材81の
表面にマーキングを施す際、図6に示すように、パルス
レーザの集光スポット35が重なり合うようにパルスレ
ーザビームLBp を走査してライン状のマーキングを施
したものである。他の構成は図10に示すレーザマーキ
ング装置と異ならない。
【0175】このレーザマーキング装置80において
は、ジルコニウム合金製対象部材81の表面に、図6に
示すように、パルスレーザの集光スポット35が重なり
合うようにレーザビームを走査してライン状のマーキン
グを施す。
【0176】第5変形例によれば、図10に示すレーザ
マーキング装置80の作用効果に加えて、次の作用効果
を奏する。
【0177】パルスレーザ装置から対象部材81にパル
スレーザビームを照射する際、集光スポット35におけ
るレーザのパワー密度は一般に、スポット周辺部が中心
部よりも低くなる。対象部材81にライン状のマーキン
グを施す際、図6に示すように、集光スポット35の周
辺部が重なりを持つようにパルスレーザビームを走査し
てライン状にマーキングを施せば、走査方向に連続的な
レーザ照射効果を与えることができ、均質なマーキング
を行なうことができる。
【0178】(6)レーザマーキング装置(第3実施
例)の第6変形例 この変形例では、レーザ装置82としてCWレーザ装置
を用い、このCWレーザ装置から発振されるCWレーザ
ビームLBc をジルコニウム合金製の対象部材81の表
面に照射して、マーキングを施すもので、全体的な構成
は図10に示すレーザマーキング装置と異ならない。密
閉容器83内には酸素元素を含むレーザビーム透過媒体
である気体84が充填される。
【0179】CWレーザ装置を作動制御し、発振される
CWレーザビームLBc のパワーまたは、CWレーザビ
ームLBc の走査速度をコントロールすることにより、
ジルコニウム合金製対象部材81の表面に酸化層を形成
し、この酸化層をマーキングとして利用することができ
る。
【0180】第6変形例のレーザマーキング装置80に
よれば、図10に示すレーザマーキング装置の作用効果
に加え、次の作用効果を奏する。
【0181】このレーザマーキング装置80で酸素元素
を含む気体を密閉容器83に充填させ、酸素元素を含む
気体の雰囲気中にジルコニウム合金製対象部材81を設
置し、この対象部材81にCWレーザ装置から発振され
たCWレーザビームLBc を照射すると、このCWレー
ザビームの照射により形成される酸化層の厚さとレーザ
ビーム照射面が受ける単位面積当りのレーザパワーの間
には強い相関がある。
【0182】すなわち、対象部材81であるレーザ照射
材料の深さ方向の温度分布はレーザビーム照射面が受け
る単位面積当りのレーザパワーによって決められ、一
方、酸素の拡散層の深さ、すなわち、酸化層の厚さは深
さ方向の温度分布に依存する。したがって、レーザビー
ムのパワーあるいはビームの走査速度を制御することに
より、レーザビーム照射面が受ける単位面積当りのレー
ザパワーをコントロールすれば、レーザ照射材料の深さ
方向の温度分布を制御することができる。したがって、
酸素の拡散層の深さを制御でき、結果として、酸化層の
厚さを制御することができる。マーキング部の酸化層の
厚さを制御することにより、識別に好適なコントラスト
を有する均質なマーキングを得ることができる。
【0183】(7)レーザマーキング装置(第3実施
例)の第7変形例 この変形例はレーザ装置82としてパルスレーザ装置を
用いて、ジルコニウム合金製対象部材81の表面にマー
キング(印)として酸化層または凹凸を形成したもので
ある。他の構成は図10に示すレーザマーキング装置8
0と異ならない。
【0184】レーザ装置82にパルスレーザ装置を用
い、このパルスレーザ装置の作動制御を行なって、発振
されるパルスレーザビームLBp のエネルギーまたはパ
ルス時間幅の制御を行なうことにより、図10に示した
レーザマーキング装置の作用効果に加え、次の作用効果
を奏する。
【0185】このレーザマーキング装置80において、
パルスレーザ装置から発振されるパルスレーザビームL
Bp のエネルギーまたはパルス時間幅の制御を行なうこ
とにより、ジルコニウム合金製対象部材81のレーザ照
射部における材料表層の隆起厚さ、または材料表層の除
去厚さはレーザビーム照射面が1パルス当りに受ける単
位面積当りのエネルギーに強く依存している。したがっ
て、パルスエネルギーあるいはパルス時間幅を制御する
ことにより、レーザビーム照射面が1パルス当りに受け
る単位面積当りのエネルギーをコントロールすれば、材
料表層の隆起厚さまたは材料表層の除去厚さを制御する
ことが可能になる。
【0186】ジルコニウム合金製対象部材81を密閉容
器83内に収容し、この密閉容器83の雰囲気に酸素を
含む気体84を用いる場合においては、パルスレーザ装
置の同様の作動制御によりレーザ照射材料の深さ方向の
温度分布のコントロールを行なうことができ、深さ方向
の温度分布と酸素の拡散層の深さ、すなわち酸化層の厚
さは相関があるため、結果として、酸化層の厚さを制御
することが可能になる。
【0187】マーキング部の酸化層の厚さ、隆起厚さあ
るいは材料除去厚さを制御することにより、識別に好適
なコントラストあるいは凹凸を有する均質なマーキング
を得ることができる。
【0188】(8)レーザマーキング装置(第3実施
例)の第8変形例 この変形例においては、給気手段87を複数系統設け、
各系統の給気手段87から密閉容器83内に供給される
種類を異にする種々の気体84を個別にコントロールす
ることにより、密閉容器83内雰囲気気体84の組成比
制御を行なってレーザマーキングを施すものである。全
体的な構成は、種々の気体用給気手段87を複数系統設
ける以外、図10に示すレーザマーキング装置80と異
ならないので、同一符号を付して説明を省略する。
【0189】第8変形例のレーザマーキング装置80に
おいては、密閉容器83に充填されるレーザビーム透過
媒体の気体84の組成比を制御し、例えば、酸素ガス
(O2)と不活性ガス(He,Ne,Ar,Kr,X
e,Rn)から成る混合気を雰囲気として使用すると、
酸素ガス(O2 )の比率の増加に伴い酸化層の厚さが増
加するため、両者比率を制御することによって酸化層の
厚さを制御することができる。このように、すなわち、
雰囲気気体の組成比の制御を行なうことにより酸化層の
厚さをコントロールすることができる。マーキング部の
酸化層の厚さを制御することにより、識別に好適なコン
トラストを均一な品質で得ることができる。
【0190】[D]本発明の第4実施例 図13は本発明に係るレーザマーキング装置の第4実施
例を示すものである。
【0191】この実施例に示されたレーザマーキング装
置120は、対象部材121にステンレス鋼製部材を用
い、レーザビーム透過媒体として水蒸気(H2 O)含有
量が所要量、例えば1×10-6g/cm3 以下の気体12
2中でステンレス鋼製対象部材121にレーザビームL
Bを照射し、対象部材121の表面にマーキング(印)
を施すものである。対象部材として原子炉の構成部材,
炉内構造物,制御棒等関連部材がある。
【0192】このレーザマーキング装置120は、レー
ザビーム透過媒体として気体122を封入した真空セル
容器である密閉容器123と、この密閉容器123の外
部に設置されたレーザ装置124と、このレーザ装置1
24から発振されるレーザビームLBを走査する走査光
学系125と、走査光学系125で走査させるレーザビ
ームLBを絞り込んで密閉容器123内に照射する集束
光学系126と、密閉容器123内に設置される原子炉
の構成部材であるステンレス鋼製の対象部材121と、
密閉容器123内にレーザビーム透過媒体である気体1
22を供給する給気手段127と、密閉容器123内を
吸引して排気する排気手段128とを有する。
【0193】走査光学系125には反射ミラー129を
備えたミラー光学系,光ファイバを用いたファイバ光学
系あるいはこれらを組み合せた光学系が用いられる一
方、集束光学系126には透過窓130および集光レン
ズ131あるいは凹面鏡を組み合せた光学系が用いられ
る。透過窓130および集光レンズ131は加工ヘッド
等のスリーブ状ホルダ132に保持される。ホルダ13
2は密閉容器123の頂壁あるいはカバー123aに固
定しても、またカバー123aを透明体で構成してカバ
ー上方に設置し、走査光学系125と一体にホルダ13
2を移動自在に支持してもよい。走査光学系125およ
び集束光学系126を移動走査自在に保持する代りに、
密閉容器123内に収納される対象部材121を移動テ
ーブル等の移動台(図示せず)上に設置し、移動自在と
してもよい。
【0194】また、給気手段127は気体ボンベ等の気
体供給源133を有し、この気体供給源133から延び
る給気配管134が除湿装置135を介して密閉容器1
23に接続される。給気配管134にはバルブ136が
設けられる。除湿装置135は気体供給源133から供
給されるレーザ透過媒体としての気体を除湿し、水蒸気
含有量が所要量、例えば1×10-6g/cm3 以下となる
ように低減させている。
【0195】また、密閉容器123の側壁に排気手段1
28が設けられる。排気手段128は密閉容器123の
側壁に設けられた排気配管138を備え、この排気配管
138は途中にバルブ139,真空ポンプ140を備え
て外気に開放している。
【0196】次に、レーザマーキング装置120の作用
を説明する。
【0197】図13に示すように真空セル容器としての
密閉容器123の内部にステンレス鋼製の対象部材12
1が設置されており、密閉容器123内は初めに排気手
段128の真空ポンプ140がポンプ作動して真空化さ
れ、密閉容器123の内壁に付着したH2 Oを取り除
く。続いて、密閉容器123内の空間(雰囲気)に給気
手段127により気体供給源133からレーザビーム透
過媒体の気体122を供給する。供給される気体は途中
で除湿装置135により除湿され、水蒸気含有量が所要
量、例えば1×10-6g/cm3 以下に低減され、この水
蒸気を含有する気体が密閉容器123内に充填される。
【0198】一方、密閉容器123の外部にレーザ装置
124が設置され、このレーザ装置124から発振され
たレーザビームLBは走査光学系125を走査されて集
束光学系126により密閉容器123内に案内されて絞
られ、水蒸気(H2 O)の含有量が例えば1×10-6
/cm3 以下の気体の雰囲気で、ステンレス鋼製対象部材
121の材料表面に照射され、マーキングが施される。
【0199】このレーザマーキング装置120において
は、レーザ装置124から発振されるレーザービームL
Bを水蒸気含有量が例えば1×10-6g/cm3 以下の気
体122中でステンレス鋼製対象部材121に照射す
る。この対象部材121の表面に気体中でレーザビーム
LBを照射すると、材料構成物質と材料表面に吸着した
気体が化学反応を起こし、材料の表層に新しい化合物が
形成されたり、あるいは材料表面の加熱溶融による体積
膨張や材料の表層が除去される等の現象が起こる。
【0200】また、化学反応が生じない場合でも、パル
スレーザビーム照射面が溶融され体積膨張して隆起する
現象、あるいは溶融・蒸発、またはアブレーションによ
る表層の除去現象等が起こる。このような表層における
化合物の形成あるいは凹凸による形状の変化により、ス
テンレス鋼製対象部材121の表面に識別可能なマーキ
ングを施すことができる。
【0201】化合物の形成をマーキングに利用する方法
の一例としては、ステンレス鋼製対象部材121の表面
のレーザビーム照射部に酸化層をマーキングとして形成
し、この酸化層と非照射部との色の違いによりマーキン
グを識別可能となっている。
【0202】形状の変化を利用する方法の一例として
は、レーザビーム照射部の材料の隆起または表層の除去
現象による凹凸をマーキングとして利用して、周辺の非
照射部との間の相対的な凹凸により識別可能としたもの
である。
【0203】また、マーキングが施される対象部材12
1をステンレス鋼で形成すると、ステンレス鋼の場合、
表層に水素化物が形成されると耐食性が低減することが
知られている。したがって、雰囲気気体中のH2 O含有
量を低減することにより、レーザビーム照射時に被加工
材料表層に形成される水素化物量を低下させ、被加工材
料の水素脆化を防止し、マーキング部の耐食性低下を食
い止めることができる。
【0204】(1)レーザマーキング装置(第4実施
例)の第1変形例 この変形例においては、レーザマーキング装置120の
全体的な構成は、図13に示されるものと異ならない
が、密閉容器123内の雰囲気に充填される気体に酸素
ガス(O2 )および不活性ガス(He,Ne,Ar,K
r,Xe,Rn)の少なくとも1成分を含む組成の気体
122を用いたものである。
【0205】密閉容器123内の雰囲気気体122に、
酸素ガス(O2 )および不活性ガス(He,Ne,A
r,Kr,Xe,Rn)の少なくとも1成分を含む組成
を有する気体を使用することにより、図13のレーザマ
ーキング装置120の作用効果に加えて、次の作用効果
を奏する。
【0206】密閉容器123に充填される気体122に
酸素ガス(O2 )を成分として含む場合、この気体12
2中に設置されたステンレス鋼製の対象部材121にレ
ーザ装置124からレーザビームLBを照射すると、ス
テンレス鋼製対象部材121の表面のレーザビーム照射
部に酸化層が形成され、黒化する。この酸化層形成部と
非照射部との間の色の違いにより、酸化層を識別可能な
マーキングとして認識でき、対象部材121の表面に識
別可能なマーキングを施すことができる。
【0207】密閉容器123に充填される気体122を
不活性ガス(He,Ne,Ar,Kr,Xe,Rn)の
気体中で、レーザビームを、ステンレス鋼製対象部材1
21の表面に照射すると、不活性ガス(He,Ne,A
r,Kr,Xe,Rn)は物質と反応し難いため、化合
物は形成されないが、レーザ照射部の材料は加熱による
体積膨張で隆起したり、または表層が除去され、非照射
部との間に相対的な表面の凹凸が生じ、この凹凸をマー
キングとして認識でき、対象部材121の表面に識別可
能なマーキングを施すことができる。
【0208】また、密閉容器123に充填される気体1
22が、酸素ガス(O2 )と不活性ガス(He,Ne,
Ar,Kr,Xe,Rn)との混合気で構成される場
合、この混合気中で、レーザビームをステンレス鋼製対
象部材121の表面に照射すると、不活性ガス(He,
Ne,Ar,Kr,Xe,Rn)は物質と反応し難いた
め、対象部材121の表面に酸化層のみを形成しマーキ
ングを施すことができる。このマーキング技術によれ
ば、耐食性に悪影響を及ぼす酸素以外の元素が、ステン
レス鋼製対象部材121の表層に化合物として入り込む
ことを防止することができる。
【0209】(2)レーザマーキング装置(第4実施
例)の第2変形例 図14はレーザマーキング装置120の第2変形例を示
すものである。このレーザマーキング装置120は、ス
テンレス鋼製対象部材121のレーザビーム照射部に気
体122の吹付給気手段144を備えたものである。他
の構成は、図13に示すレーザマーキング装置と異なら
ないので同一符号を付して説明を省略する。
【0210】吹付給気手段144は集束光学系126を
保持するホルダ132に取り付けられた給気ノズル14
5を備え、この給気ノズル145は給気配管146を介
して給気供給源133に除湿装置135を介して連結さ
れる一方、給気配管146には密閉容器123の外側に
給気ポンプ147が備えられ、この給気ポンプ147で
給気供給源133からの気体122を加圧し、給気ノズ
ル145から吹き出すようになっている。給気ノズル1
45のノズル口は対象部材121のレーザビーム照射部
を向くように指向される。なお、符号148はバルブで
ある。
【0211】このレーザマーキング装置120において
は、マーキング時に、給気供給源133からレーザビー
ム透過媒体の気体が除湿装置135で水蒸気が除湿さ
れ、給気配管146を介して給気ポンプ147に送られ
る。この給気ポンプ147で加圧された気体は、続いて
給気配管146を通して給気ノズル145によりステン
レス鋼製の対象部材121表面に、レーザビーム照射中
に吹き付けられる。
【0212】図14に示すレーザマーキング装置120
はレーザ装置124からステンレス鋼製対象部材121
にレーザビームLBを絞り込んで照射し、マーキングを
形成している間に、吹付給気手段144の給気ノズル1
45から気体(流体)をレーザビーム照射部に吹き付け
ることにより、冷却の効果をさらに高めることができ、
熱影響の少ない、耐食性の良いマーキングを施すことが
できる。
【0213】(3)レーザマーキング装置(第4実施
例)の第3変形例 このマーキング装置120は図15に示すように、図1
3に示すレーザマーキング装置120に吸引排気手段1
50を備え、ステンレス鋼製対象部材121のレーザビ
ーム照射面近傍の気体を吸引し、外部に放出するように
したものである。他の構成は図13のレーザマーキング
装置120と異ならないので説明を省略する。
【0214】吸引排気手段150は集束光学系126を
保持したホルダ132に取り付けられた吸引ノズル15
1を有し、この吸引ノズル151からの排気配管152
は密閉容器123の頂壁あるいはカバー123aを通し
て外部に延設される。排気配管152には密閉容器12
3の外部でバルブ153,フィルタ154および排気ポ
ンプ155が設置され、排気ポンプ155の吐出側は大
気に開放されている。
【0215】このレーザマーキング装置120は吸引排
気手段150を備え、吸引排気手段150の吸引ノズル
151はそのノズル口がステンレス鋼製の対象部材12
1に指向されている。そして、吸引排気手段150の吸
引ポンプ155の作動により、レーザビーム照射面の近
傍にある気体とマーキング加工により発生した飛散物は
吸引ノズル151を通じて密閉容器123内部から排気
配管152内に吸い込まれ、フィルタ154で飛散物が
除去された後、気体は外気に排出される。
【0216】このレーザマーキング装置120によれ
ば、第4実施例の作用効果に加えて、次の作用効果を奏
する。
【0217】このレーザマーキング装置120において
はステンレス鋼製対象部材121の表面のレーザビーム
照射部付近の気体が吸引排気手段150により吸引され
て外気に放出される。このため、レーザビーム照射部付
近に気体の流れが生じ、次々と新しい気体が対象部材1
21の表面に接触し、レーザビーム照射部を冷却するの
で、冷却の効果がさらに高められるとともに、マーキン
グ加工により発生した飛散物が除去され、構造物表面へ
の付着を防止できる。したがって、ステンレス鋼製対象
部材121の表面に悪影響を及ぼすことがなく、かつ、
熱影響が少なく耐食性の良好なマーキングを施すことが
できる。
【0218】(4)レーザマーキング装置(第4実施
例)の第4変形例 この変形例においては、レーザ装置124としてパルス
レーザ装置を用い、このパルスレーザ装置の作動を制御
し、発振されるパルスレーザビームのパルス時間幅を1
μs以下としたものである。他の構成は図13に示した
レーザマーキング装置120と異ならない。
【0219】レーザ装置124としてQスイッチレー
ザ、モードロックレーザ等のパルスレーザ装置を使用
し、このパルスレーザビームのパルス時間幅を1μs以
下とすることにより、さらに熱影響が少なく、耐食性の
良いマーキングを施すことができる。
【0220】(5)レーザマーキング装置(第4実施
)の第5変形例 この変形例においては、レーザ装置124としてパルス
レーザ装置を使用し、ステンレス鋼製対象部材121の
表面にマーキングを施す際、図6に示すように、パルス
レーザの集光スポット35が重なり合うようにパルスレ
ーザビームLBpを走査してライン状のマーキングを施
したものである。他の構成は図13に示すレーザマーキ
ング装置と異ならない。
【0221】このレーザマーキング装置120において
は、ステンレス鋼製対象部材121の表面において、図
6に示すように、パルスレーザの集光スポット35が重
なり合うようにレーザビームを走査してライン状のマー
キングを施す。
【0222】第5変形例によれば、図13に示すレーザ
マーキング装置120の作用効果に加えて、次の作用効
果を奏する。
【0223】パルスレーザ装置から対象部材81にパル
スレーザビームを照射する際、集光スポットにおけるレ
ーザのパワー密度は一般に、スポット周辺部が中心部よ
りも低くなる。対象部材121にライン状のマーキング
を施す際、図6に示すように、集光スポット35の周辺
部が重なりを持つようにパルスレーザビームを走査して
ライン状にマーキングを施せば、走査方向に連続的なレ
ーザ照射効果を与えることができ、均質なマーキングを
施すことができる。
【0224】(6)レーザマーキング装置(第4実施
例)の第6変形例 この変形例では、レーザ装置82としてCWレーザ装置
を用い、このCWレーザ装置から発振されるCWレーザ
ビームLBc をステンレス鋼製の対象部材121の表面
に照射して、マーキングを施すもので、全体的な構成は
図13に示すレーザマーキング装置と異ならない。密閉
容器133内には酸素元素を含むレーザビーム透過媒体
である気体122が充填される。
【0225】CWレーザ装置を作動制御し、発振される
CWレーザビームLBc のパワーまたは、CWレーザビ
ームLBc の走査速度をコントロールすることにより、
ステンレス鋼製対象部材121の表面に酸化層を形成
し、この酸化層をマーキングとして利用することができ
る。
【0226】第6変形例のレーザマーキング装置120
によれば、図13に示すレーザマーキング装置の作用効
果に加え、次の作用効果を奏する。
【0227】このレーザマーキング装置120で酸素元
素を含む気体を密閉容器123に充填させ、酸素元素を
含む気体の雰囲気中にステンレス鋼製対象部材121を
設置し、この対象部材121にCWレーザ装置から発振
されたCWレーザビームLBc を照射することができ
る。このCWレーザビームの照射により形成される酸化
層の厚さとレーザビーム照射面が受ける単位面積当りの
レーザパワーの間には強い相関関係がある。
【0228】すなわち、対象部材121であるレーザ照
射材料の深さ方向の温度分布はレーザビーム照射面が受
ける単位面積当りのレーザパワーによって決められ、酸
素の拡散層の深さ、すなわち、酸化層の厚さは深さ方向
の温度分布に依存する。したがって、レーザビームのパ
ワーあるいはビームの走査速度を制御することにより、
レーザビーム照射面が受ける単位面積当りのレーザパワ
ーをコントロールすれば、レーザ照射材料の深さ方向の
温度分布を制御することができる。したがって、酸素の
拡散層の深さを制御でき、結果として、酸化層の厚さを
制御することができる。マーキング部の酸化層の厚さを
制御することにより、識別に好適なコントラストを有す
る均質なマーキングを得ることができる。
【0229】(7)レーザマーキング装置(第4実施
例)の第7変形例 この変形例はレーザ装置124としてパルスレーザ装置
を用いて、ステンレス鋼製対象部材121の表面にマー
キング(印)として酸化層または凹凸を形成したもので
ある。他の構成は図13に示すレーザマーキング装置1
20と異ならない。
【0230】レーザ装置124にパルスレーザ装置を用
い、このパルスレーザ装置の作動制御を行なって、発振
されるパルスレーザビームLBp のエネルギーまたはパ
ルス時間幅の制御を行なうことにより、図13に示した
レーザマーキング装置の作用効果に加え、次の作用効果
を奏する。
【0231】このレーザマーキング装置120におい
て、パルスレーザ装置から発振されるパルスレーザビー
ムLBp のエネルギーまたはパルス時間幅の制御を行な
うことにより、ステンレス鋼製対象部材121のレーザ
照射部における材料表層の隆起厚さ、または材料除去厚
さはレーザビーム照射面が1パルス当りに受ける単位面
積当りのエネルギーに強く依存している。したがって、
パルスエネルギーあるいはパルス時間幅を制御すること
により、レーザビーム照射面が1パルス当りに受ける単
位面積当りのエネルギーをコントロールすれば、材料表
層の隆起厚さまたは材料除去厚さを制御することが可能
になる。
【0232】ステンレス鋼製対象部材121を密閉容器
123内に収容し、この密閉容器123の雰囲気に酸素
を含む気体122を用いる場合においては、パルスレー
ザ装置の同様の作動制御によりレーザ照射材料の深さ方
向の温度分布のコントロールを行なうと、深さ方向の温
度分布と酸素の拡散層の深さ、すなわち酸化層の厚さは
相関があるため、結果として、酸化層の厚さを制御する
ことが可能になる。
【0233】マーキング部の酸化層の厚さ、隆起厚さあ
るいは材料除去厚さを制御することにより、識別に好適
なコントラストあるいは凹凸を有する均質なマーキング
を得ることができる。
【0234】(8)レーザマーキング装置(第4実施
例)の第8変形例 この変形例においては、給気手段127を複数系統設
け、各系統の給気手段127から密閉容器123内に供
給される種類の異なる種々の気体122を個別にコント
ロールすることにより、密閉容器123内雰囲気気体1
22の組成比制御を行なってレーザマーキングを施すも
のである。全体的な構成は、給気手段127を複数系統
設ける以外、図13に示すレーザマーキング装置120
と異ならないので、同一符号を付して説明を省略する。
【0235】第8変形例のレーザマーキング装置120
においては、密閉容器123に充填されるレーザビーム
透過媒体の基体122の組成比を制御し、例えば、酸素
ガス(O2 )と不活性ガス(He,Ne,Ar,Kr,
Xe,Rn)から成る混合ガスを雰囲気として使用する
と、酸素ガス(O2 )の比率の増加に伴い酸化層の厚さ
が増加するため、両者比率を制御することによって酸化
層の厚さを制御することができる。このように、すなわ
ち、雰囲気気体の組成比の制御を行なうことにより酸化
層の厚さをコントロールすることができる。マーキング
部の酸化層の厚さを制御することにより、識別に好適な
コントラストを均一な品質で得ることができる。
【0236】
【発明の効果】以上に述べたように本発明に係るレーザ
マーキング方法および装置によれば、レーザビーム透過
媒体(媒質)の液体あるいは気体中に対象部材を設置
し、この対象部材にレーザ装置から発振されるCWレー
ザあるいはパルスレーザのレーザビームを照射し、対象
部材の表面にマーキングを施すようにしたので、対象部
材の表面にレーザマーキングを簡単かつ容易に形成で
き、対象部材の表面に識別劣化が小さく、耐食性に優れ
たレーザマーキングを施すことができる。
【0237】対象部材の表面にレーザマーキングを施す
際、対象部材の表面にレーザビーム透過媒体である液体
や気体を吹き付けたり、また、対象部材付近の液体や気
体を吸引すると、対象部材表面のレーザビーム照射部を
積極的に冷却でき、対象部材への熱影響が小さく、耐食
性に優れ、信頼性の高いレーザマーキングを対象部材の
表面に形成できる。
【0238】また、対象部材の表面にレーザマーキング
を施す際、レーザビーム透過媒体の液体の窒素ガス含有
量を所要値以下に脱気したり、レーザビーム透過媒体の
気体を不活性ガスで構成すると、耐食性に優れ、信頼性
の高いレーザマーキングを対象部材の表面に形成でき
る。
【0239】レーザビーム透過媒体として酸素ガス(O
2 )、水または水蒸気(H2 O)、過酸化水素水または
その蒸気(H2 2 )を用い、この透過媒体中に設置さ
れた対象部材にレーザビームを照射すると、対象部材に
化学反応が生じて酸化層が形成され、この酸化層をマー
キングとして形成でき、マーキング分を色による識別が
可能となる。
【0240】また、対象部材表面に化学反応が生じない
場合にも、レーザビーム透過媒体の液体あるいは気体中
で対象部材にレーザビームを照射すると、レーザビーム
照射部に加熱による体積膨脹で隆起現象が生じたり、あ
るいは表層の溶融・蒸発、アブレーションによる除去現
象が生じて凹凸に形状変化し、この形状変化に伴う凹凸
をマーキングとして利用することで、マーキング部の形
状変化による識別を良好に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るレーザマーキング装置の第1実施
例を概略的に示す図。
【図2】光の水中透過特性を示す図。
【図3】液体に溶解した窒素ガスを排除する脱気方法を
示す図。
【図4】液体を吹き付けながらレーザマーキングを施す
本発明に係るレーザマーキング装置(第1実施例)の第
4変形例を示す図。
【図5】レーザビーム照射部近傍を吸引しながらレーザ
マーキングを施す本発明に係るレーザマーキング装置
(第1実施例)の第5変形例を示す図。
【図6】対象部材表面へのパルスレーザビームの走査方
法を示す図。
【図7】本発明に係るレーザマーキング装置の第2実施
例を概略的に示す図。
【図8】気体を吹き付けながらレーザマーキングを施す
本発明に係るレーザマーキング装置(第2実施例)の第
2変形例を示す図。
【図9】レーザビーム照射部近傍の気体を吸引しながら
レーザマーキングを施す本発明に係るレーザマーキング
装置(第2実施例)の第3変形例を示す図。
【図10】本発明に係るレーザマーキング装置の第3実
施例を概略的に示す図。
【図11】気体を吹き付けながらジルコニウム合金製対
象部材にレーザマーキングを施す本発明に係るレーザマ
ーキング装置(第3実施例)の第2変形例を示す図。
【図12】レーザビーム照射部近傍の気体を吸引しなが
らジルコニウム合金製対象部材にレーザマーキングを施
す本発明に係るレーザマーキング装置(第3実施例)の
第3変形例を示す図。
【図13】本発明に係るレーザマーキング装置の第4実
施例を概略的に示す図。
【図14】気体を吹き付けながらステンレス鋼製対象部
材にレーザマーキングを施す本発明に係るレーザマーキ
ング装置(第4実施例)の第2変形例を示す図。
【図15】レーザビーム照射部付近の気体を吸引しなが
らステンレス鋼製対象部材にレーザマーキングを施す本
発明に係るレーザマーキング装置(第4実施例)の第3
変形例を示す図。
【符号の説明】
10 レーザマーキング装置 11 レーザ装置 12 走査光学系 13 集束光学系 14 液体 15 容器 16 対象部材 17 反射ミラー 18 集光レンズ 19 加工ヘッド 20 小孔 21 マット(シート)(ガス吹出手段) 22 ガス供給源(ガスボンベ) 23 ガス供給管 25 吹出ノズル 26 ポンプ 27 ホース 28 ホース 29 液体噴出手段 30 吸引ノズル 32 ポンプ 33 ホース 34 フィルタ 35 集光スポット 37 液体吸引手段 40 レーザマーキング装置 41 パルスレーザ装置 42 気体 43 対象部材 44 密閉容器 45 走査光学系 46 集束光学系 47 給気手段 48 排気手段 49 反射ミラー 50 透過窓 51 集光レンズ 52 ホルダ 53 気体供給源(気体ボンベ) 54 給気配管 55,56 バルブ 58 排気配管 60 排気ポンプ 61 バルブ 63 給気ノズル 64 供給配管 65 供給ポンプ 66 バルブ 67 吹付給気手段 68 排気ノズル 69 排気配管 70 排気ポンプ 71 フィルタ 72 吸引排気手段 80 レーザマーキング装置 81 対象部材(ジルコニウム合金製) 82 レーザ装置 83 密閉容器 84 気体(レーザビーム透過媒体,媒質) 85 走査光学系 86 集束光学系 87 給気手段 88 排気手段 89 反射ミラー 91 集光レンズ 92 ホルダ 93 気体供給源(気体ボンベ) 94 給気配管 98 排気配管 100 真空ポンプ 102 吹付給気手段 103 給気ノズル 104 給気配管 105 給気ポンプ 108 吸引排気手段 109 吸引ノズル 110 排気配管 111 バルブ 112 フィルタ 113 排気ポンプ 120 レーザマーキング装置 121 対象部材(ステンレス鋼製) 122 気体(レーザビーム透過媒体,媒質) 123 密閉容器 124 レーザ装置 125 走査光学系 126 集束光学系 127 給気手段 128 排気手段 129 反射ミラー 131 集光レンズ 132 ホルダ 133 気体供給源 134 給気配管 135 除湿装置 138 排気配管 140 真空ポンプ 144 吹付給気手段 145 給気ノズル(吹付ノズル) 146 給気配管 147 給気ポンプ 150 吸引排気手段 151 吸引ノズル
フロントページの続き (72)発明者 佐野 雄二 神奈川県横浜市磯子区新杉田町8番地 株式会社東芝 横浜事業所内 (72)発明者 山本 誠二 神奈川県横浜市磯子区新杉田町8番地 株式会社東芝 横浜事業所内 (56)参考文献 特開 平4−228284(JP,A) 特開 平6−269975(JP,A) 特開 平7−32168(JP,A) 特開 昭61−273294(JP,A) 特開 平2−258183(JP,A) 特開 昭64−55327(JP,A) 特開 平8−215866(JP,A) 特開 平4−172191(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B23K 26/12

Claims (12)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 レーザビームを透過する透過媒体に、過
    酸化水素水(H )を含む液体を用い、この液体中
    に設置された対象部材にレーザ装置から発振されるレー
    ザビームを照射し、上記対象部材の表面に酸化物あるい
    は凹凸のマーキングを施すことを特徴とするレーザマー
    キング方法。
  2. 【請求項2】 レーザビームの透過媒体に窒化ガス含有
    量が所要値以下の液体が用いられ、対象部材ジルコニ
    ウム合金製の部材が用いられることを特徴とする請求項
    1に記載のレーザマーキング方法。
  3. 【請求項3】 レーザビームの透過媒体である液体を収
    容した容器と,この容器の底部に敷設され、多数の小孔
    を備えたマット等のガス吹出手段と,このガス吹出手段
    に連絡配管を介して接続された不活性ガスのガス供給手
    段と,上記容器内で液体中に設置された対象部材と,
    容器の外部に設置されたレーザ装置と,このレーザ装
    置から発振されるレーザビームを走査する走査光学系
    と,走査光学系で走査されるレーザビームを容器内に案
    内し、液体中で対象部材に照射する集束光学系とを備
    え、前記ガス供給手段から供給される不活性ガスをガス
    吹出手段から容器に貯溜された液体中に吹き出し、脱気
    を行なう一方、前記対象部材にレーザビームを照射して
    酸化層あるいは凹凸のマーキングを施すように構成した
    ことを特徴とするレーザマーキング装置。
  4. 【請求項4】 レーザビームを透過する透過媒体に、水
    蒸気(H O)および過酸化水素水蒸気(H )の
    少なくとも一成分を含む気体を用い、この気体中に設置
    された対象部材にパルスレーザ装置から発振されるパル
    スレーザビームを照射し、上記対象部材の表面に酸化層
    あるいは凹凸のマーキングを施すことを特徴とするレー
    ザマーキング方法。
  5. 【請求項5】 レーザビームを透過する透過媒体に、酸
    素ガスと不活性ガスの混合気の気体を用い、この気体中
    に設置された対象部材にパルスレーザ装置から発振され
    るパルスレーザビームを照射し、上記対象部材の表面に
    酸化層あるいは凹凸のマーキングを施すことを特徴とす
    るレーザマーキング方法。
  6. 【請求項6】 レーザビームの透過媒体である気体を充
    填した密閉容器と,この密閉容器内で気体中に設置され
    た対象部材と,この密閉容器の外部に設置されたレーザ
    装置と,このレーザ装置から発振されるレーザビームを
    走査する走査光学系と,走査光学系で走査されるレーザ
    ビームを密閉容器内に案内し、対象部材に照射可能な集
    束光学系と,前記密閉容器にレーザビーム透過媒体の気
    体を供給する給気手段と,密閉容器内の排気を行なう排
    気手段と,前記密閉容器内に設置された対象部材の表面
    にレーザビーム透過媒体の気体を吹き付ける吹付給気手
    段と,この吹付給気手段により対象部材のレーザビーム
    照射部を冷却する冷却手段とを備え、対象部材に気体中
    でレーザビームを照射して酸化層あるいは凹凸のマーキ
    ングを施すように構成したことを特徴とするレーザマー
    キング装置。
  7. 【請求項7】 レーザビームの透過媒体である気体を充
    填した密閉容器と,この密閉容器内で気体中に設置され
    た対象部材と,この密閉容器の外部に設置されたレーザ
    装置と,このレーザ装置から発振されるレーザビームを
    走査する走査光学系と,走査光学系で走査されるレーザ
    ビームを密閉容器内に案内し、対象部材に照射可能な集
    束光学系と,前記密閉容器にレーザビーム透過媒体の気
    体を供給する給気手段と,密閉容器内の排気を行なう排
    気手段と、前記密閉容器内に設置された対象部材の表面
    近傍の気体を吸引する吸引排気手段と、この吸引排気手
    段により対象部材のレーザビーム照射部を冷却する冷却
    手段とを備え、対象部材に気体中でレーザビームを照射
    して酸化層あるいは凹凸のマーキングを施すように構成
    したことを特徴とするレーザマーキング装置。
  8. 【請求項8】 レーザビームの透過媒体に窒素ガス(N
    )含有量が50wt%以下の気体を用い、この気体中
    に設置されたジルコニウム合金製の対象部材にレーザ装
    置からレーザビームを照射し、上記対象部材の表面に酸
    化層あるいは凹凸のマーキングを施すことを特徴とする
    レーザマーキング方法。
  9. 【請求項9】 レーザビームの透過媒体は、酸素ガス
    (O)、水蒸気(HO)、過酸化水素水蒸気(H
    )および不活性ガス(He,Ne,Ar,Kr,X
    e,Rn)の少なくとも一成分を含む組成の気体である
    ことを特徴とする請求項8に記載のレーザマーキング方
    法。
  10. 【請求項10】 レーザビームの透過媒体は気体の組成
    比が制御されることを特徴とする請求項5または8に記
    載のレーザマーキング方法。
  11. 【請求項11】 対象部材に吹付給気手段によりレーザ
    ビーム透過媒体である気体を吹き付け、対象部材の表面
    を冷却することを特徴とする請求項5または8に記載の
    レーザマーキング方法。
  12. 【請求項12】 吸引排気手段により対象部材の表面近
    傍の気体を吸引して外部に排出し、対象部材の表面を冷
    却することを特徴とする請求項5または8に記載のレー
    ザマーキング方法。
JP18833695A 1995-06-30 1995-06-30 レーザマーキング方法および装置 Expired - Lifetime JP3492032B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP18833695A JP3492032B2 (ja) 1995-06-30 1995-06-30 レーザマーキング方法および装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP18833695A JP3492032B2 (ja) 1995-06-30 1995-06-30 レーザマーキング方法および装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH0919788A JPH0919788A (ja) 1997-01-21
JP3492032B2 true JP3492032B2 (ja) 2004-02-03

Family

ID=16221838

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP18833695A Expired - Lifetime JP3492032B2 (ja) 1995-06-30 1995-06-30 レーザマーキング方法および装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3492032B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2015150969A1 (de) * 2014-04-02 2015-10-08 BSH Hausgeräte GmbH Verfahren zum aufbringen eines symbols auf eine oberfläche eines bauteils für ein haushaltsgerät, bauteil und haushaltsgerät

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009282340A (ja) * 2008-05-23 2009-12-03 Kyocera Corp 構造体、及び光学部品
JP5816160B2 (ja) * 2012-12-06 2015-11-18 本田技研工業株式会社 ミッションケース刻印方法及びミッションケース
JP6998177B2 (ja) * 2017-11-02 2022-01-18 株式会社ディスコ レーザー加工装置

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2015150969A1 (de) * 2014-04-02 2015-10-08 BSH Hausgeräte GmbH Verfahren zum aufbringen eines symbols auf eine oberfläche eines bauteils für ein haushaltsgerät, bauteil und haushaltsgerät

Also Published As

Publication number Publication date
JPH0919788A (ja) 1997-01-21

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US20070000875A1 (en) Method and apparatus for assisting laser material processing
KR100445836B1 (ko) 레이저 용접 방법 및 레이저 용접 장치
JP5954923B2 (ja) ガス支援レーザ・アブレーション
US4368080A (en) Method of removing rust from metallic objects
US20090020511A1 (en) Ablation
JP2007181830A (ja) 紫外線レーザビームによって物体を清掃または汚染除去するための方法および装置
JP2007109943A (ja) レーザアニール方法およびその装置
JP3492032B2 (ja) レーザマーキング方法および装置
US20220023975A1 (en) Unsealing method of semiconductor device package and unsealing device of semiconductor device package
WO2003028943A1 (en) Method and apparatus for fine liquid spray assisted laser material processing
JP2002126892A (ja) レーザ加工方法及びレーザ加工装置
JPS60240395A (ja) レ−ザ溶接法
JP5809445B2 (ja) レーザ処理装置及び方法
AU759331B2 (en) Foam control
JP3468949B2 (ja) レーザマーキング方法およびその装置
CN111495883B (zh) 辐射探测器Be窗口去氧化处理装置及方法
JP2006253285A (ja) レーザ照射装置及びレーザ照射方法
JP2000317661A (ja) レーザビームによる切断方法および装置並びに原子炉廃炉を解体するときの黒鉛ブロックの切断方法
JP2002018586A (ja) レーザ加工方法及びレーザ加工装置
CN108620737A (zh) 激光直写玻璃表面制备光学微结构的方法
JPH06333910A (ja) レーザによるエッチング方法
JP2782595B2 (ja) 紫外レーザーを用いるフッ素系高分子成形品の表面改質方法
WO2023037800A1 (ja) 熱加工装置および熱加工方法
JP3052226B2 (ja) レーザ加工法および加工装置
JPH11183693A (ja) 除染方法およびその装置

Legal Events

Date Code Title Description
FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20071114

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20081114

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20091114

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20101114

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20101114

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111114

Year of fee payment: 8

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121114

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131114

Year of fee payment: 10

EXPY Cancellation because of completion of term