JP3491164B2 - 反射防止性プラスチックレンズ - Google Patents

反射防止性プラスチックレンズ

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JP3491164B2
JP3491164B2 JP16928292A JP16928292A JP3491164B2 JP 3491164 B2 JP3491164 B2 JP 3491164B2 JP 16928292 A JP16928292 A JP 16928292A JP 16928292 A JP16928292 A JP 16928292A JP 3491164 B2 JP3491164 B2 JP 3491164B2
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敏彦 堀部
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、薄型軽量で優れた透明
性、耐擦傷性、密着性、反射防止性を有するプラスチッ
クレンズに関する。
【0002】
【従来の技術】近年、レンズ材料として従来のガラスに
代わってプラスチックが使用されるようになってきた。
特に眼鏡用レンズ材料としてその傾向は顕著なものがあ
る。プラスチックレンズ成形物は、軽量、易加工性、耐
衝撃性などの長所がある反面、硬度が不十分で傷がつき
易い、溶媒に侵されやすい、帯電し易くほこりを吸着す
る、耐熱性が不十分、などの欠点がある。ところで、従
来、プラスチック製眼鏡用レンズは、大半が、CR−39
という商品名で市販されているアリルジグリコールカー
ボネート(以下ADCと略す)というモノマーを注型重
合することにより製造されていた。このレンズは、屈折
率が約1.50であり、ガラスレンズの屈折率約1.5
2〜1.80に比べ低いことから、近視用レンズの場
合、縁の厚さが厚くなり、老視用レンズでは中心部が厚
くなるという欠点があり、装用者から嫌われる主因とな
っていた。
【0003】そこで、ADCの屈折率より高い屈折率を
有するモノマーの開発が進められ、例えば、特開昭55
−13747号、特開昭56−166214号、特開昭
57−23611号、特開昭57−54901号などが
提案された。特開昭60−199016号公報で提案さ
れているポリイソシアネートとポリオールおよび/また
はポリチオール化合物によるポリウレタン系プラスチッ
クレンズもその一つである。ポリウレタン系プラスチッ
クレンズは、屈折率が高く(例えば1.60、1.6
6)、優れた透明性、染色性、耐衝撃性を有しており、
眼鏡用プラスチックレンズとして実用化されている。
【0004】しかし、ポリウレタン系プラスチックレン
ズは他のプラスチックレンズに比べて比較的柔らかく耐
擦傷性が不充分である。他のプラスチックレンズにおい
ては耐擦傷性を改善するために、「有機ケイ素化合物又
はその加水分解物を主成分(樹脂成分又は塗膜形成成
分)とするコーティング組成物」(例えば、特開昭52
−11261号参照)等の提案、あるいは、「有機ケイ
素化合物又はその加水分解物」にコロイド状に分散した
シリカゾルを添加したものが提案され(例えば、特開昭
53−111336号参照)、眼鏡レンズ用として実用
化されている。
【0005】また、プラスチックレンズにおける多層膜
反射防止コートとしては、SiO 2とAl2 3 に加え
てZrO2 あるいはTiO2 を用いる多層膜コーティン
グの提案(特開昭52−156643号)、Ta2 5
とZrO2 を高屈折率成分として含む提案(特開昭55
−22704号)、SiO2 ないしはSiOに加えてT
2 5 を用いる提案(特開昭60−225101号)
等がなされている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ポリウレタン系プラス
チックレンズは従来のADC樹脂のレンズ比べてに屈折
率が高いために前述の有機ケイ素化合物あるいは有機ケ
イ素化合物にシリカゾルを加えたコーティングでは、硬
質塗膜に干渉縞が見え、レンズの見栄えが悪いという第
1の問題点があった。
【0007】また、その硬質塗膜上に形成する無機酸化
物よりなる多層膜反射防止コートにも影響を与え、反射
防止コートが設計通りの性能を発揮できなかったり、バ
ラツキを生じるという第2の問題点があった。また、第
2の問題点のために反射防止コートには反射率の低い高
性能なコーティングを施しにくいという第3の問題点が
あった。
【0008】したがって、本発明の第1の目的は、薄
く、軽量な眼鏡用レンズを提供できる高屈折率のポリウ
レタン系プラスチックレンズに対し、硬質塗膜に干渉縞
が見えず、かつ反射色にムラやバラツキがなく、反射率
の低い高性能な反射防止性能を与えることにある。ま
た、本発明の第2の目的は、透明性、耐擦傷性、表面硬
度、耐磨耗性、可撓性、帯電防止性、耐熱性、耐水性、
耐薬品性、などに優れたプラスチックレンズを提供する
ことにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は第1に「ポリイ
ソシアネートとポリオール又はポリチオールとの重合時
に、前記ポリイソシアネートの−NCO基の数を1とし
たとき前記ポリオールの−OH基又は前記ポリチオール
の−SH基の数が0.5〜1.5の比率になるように混
合して得られるポリウレタン系プラスチックレンズ基材
と、前記プラスチックレンズ基材上に設けられ、 一般式:R1 a2 bSi(OR3)4-(a+b)・・・・・・・・(式I) (但し、式中、R1は、官能基を有する有機基又は不飽
和二重結合を有する炭素数4〜14の有機基であり、R
2は、炭素数1〜6の炭化水素基又はハロゲン化炭化水
素基であり、R3は、炭素数1〜4のアルキル基、アル
コキシアルキル基又はアシル基であり、a及びbは、そ
れぞれ0又は1であり、かつa+bは、1又は2であ
る。)で表される有機ケイ素化合物又はその加水分解物
中に、酸化アンチモンゾル、酸化ジルコニウムゾル、酸
化チタンゾル、酸化スズゾル、酸化タンタルゾル、酸化
タングステンゾル、酸化アルミニウムゾル、酸化チタン
と酸化セリウムの複合ゾル、酸化チタンと鉄の複合ゾ
ル、酸化スズと酸化タングステンの複合ゾルで酸化スズ
ゾルを被覆したゾルから選ばれる少なくとも1種以上の
無機微粒子を含有する有機ケイ素系コーティング組成物
を塗布してなる硬質塗膜を有することを特徴とする反射
防止性プラスチックレンズ(請求項1)」を提供する。
第2に「ポリイソシアネートとポリオール及びポリチオ
ールとの重合時に、前記ポリイソシアネートの−NCO
基の数を1としたとき、前記ポリオールの−OH基の数
と前記ポリチオールの−SH基の数の和が0.5〜1.
5の比率になるように混合して得られるポリウレタン系
プラスチックレンズ基材と、前記プラスチックレンズ基
材上に設けられ、 一般式:R1 a2 bSi(OR3)4-(a+b)・・・・・・・・(式I) (但し、式中、R1は、官能基を有する有機基又は不飽
和二重結合を有する炭素数4〜14の有機基であり、R
2は、炭素数1〜6の炭化水素基又はハロゲン化炭化水
素基であり、R3は、炭素数1〜4のアルキル基、アル
コキシアルキル基又はアシル基であり、a及びbは、そ
れぞれ0又は1であり、かつa+bは、1又は2であ
る。)で表される有機ケイ素化合物又はその加水分解物
中に、酸化アンチモンゾル、酸化ジルコニウムゾル、酸
化チタンゾル、酸化スズゾル、酸化タンタルゾル、酸化
タングステンゾル、酸化アルミニウムゾル、酸化チタン
と酸化セリウムの複合ゾル、酸化チタンと鉄の複合ゾ
ル、酸化スズと酸化タングステンの複合ゾルで酸化スズ
ゾルを被覆したゾルから選ばれる少なくとも1種以上の
無機微粒子を含有する有機ケイ素系コーティング組成物
を塗布してなる硬質塗膜を有することを特徴とする反射
防止性プラスチックレンズ(請求項2)」を提供する。
第3に「前記有機ケイ素化合物又はその加水分解物に下
記を添加したことを特徴とする請求項1又は2に記載の
プラスチックレンズ。 一般式:M(CH2N(CHCOO)22NaX(X=1
〜3)で示されるエチレンジアミン四酢酸金属塩化合物
(請求項3)」を提供する。第4に「前記エチレンジア
ミン四酢酸金属塩化合物は、エチレンジアミン四酢酸カ
ルシウム、エチレンジアミン四酢酸マグネシウム、エチ
レンジアミン四酢酸アルミニウム、エチレンジアミン四
酢酸マンガン、エチレンジアミン四酢酸銅、エチレンジ
アミン四酢酸亜鉛、エチレンジアミン四酢酸鉄、エチレ
ンジアミン四酢酸コバルト、エチレンジアミン四酢酸ビ
スマスから選択されることを特徴とする請求項3に記載
のプラスチックレンズ(請求項4)」を提供する。第5
に「前記硬化塗膜上に高屈折率層と低屈折率層の交互積
層膜からなる反射防止膜を有することを特徴とする請求
項1又は2又は3又は4に記載のプラスチックレンズ
(請求項5)」を提供する。
【0010】
【作用】
(1)プラスチックレンズ基材の説明:本発明におい
て、プラスチックレンズ基材を製造するために使用する
イソシアネート系モノマー成分には特に限定はないが、
ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネー
ト、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイ
ソシアネート、ポリメリック型ジフェニルメタンジイソ
シアネート、ナフチレンジイソシアネート、ヘキサメチ
レンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシ
アネート、リジンジイソシアネート、トリフェニルメタ
ンジイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニ
ル)チオフォスフェート、トランス−シクロヘキサレン
1,4−ジイソシアネート、P−フェニレンジイソシア
ネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネー
トメチルオクタン、リジンエステルトリイソシアネー
ト、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、
ビシクロヘキサントリイソシアネート、イソホロンジイ
ソシアネート等の化合物及びそれらの化合物の、アロフ
ァネート変成体、ビュレット変成体、イソシアヌレート
変成体、ポリオール変成体又は、ポリチオールとのアダ
クト変成体等がある。また、上記化合物を単独又は混合
物として用いてもよい。上記の他には2以上の官能基を
有するイソシアネート化合物も用いることができる。さ
らに、芳香族イソシアネート化合物にハロゲン(Clな
いしはBr)を導入してもよい。
【0011】特に好ましいイソシアネート化合物として
は、キシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシア
ネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の無黄変型
イソシアネート化合物である。ポリオールおよびまたは
ポリチオール化合物についても特に限定はない。ポリオ
ールの例として挙げられる化合物は、エチレングリコー
ル、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グ
リセリンブタンジオール、グリセロール、ペンタンジオ
ール、ヘキサントリオール、シクロヘキサンジオール、
シクロヘキサントリオール、モノチオグリセロール、1
−メルカプトメチル1,1−ジヒドロキシプロパン、ま
たポリチオールの例としては、エタンジチオール、ジメ
ルカプトプロパノール、4−ジメルカプト−2,3−ヒ
ドロキシブタン、プロパンジチオール、ペンタンジチオ
ール、ブタンジチオール、ヘプタンジチオール、オクタ
ンジチオール、シクロヘキサンジチオール、シクロヘプ
タンジチオール、2,5−ジクロロベンゼン−1,3−
ジチオール、ペンタエリスリトールテトラキス−3−メ
ルカプトプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラ
キスチオグリコレート等が挙げられる。
【0012】特に好ましいのはメルカプト基を分子内に
2個以上有するチオールの誘導体である。なお、これら
のポリオールおよびまたはポリチオールは1種で用いて
もよいし、2種以上で用いることもできる。本発明にお
いては、上記のような、ポリイソシアネートと、ポリオ
ール及びまたはポリチオールとを、−NCO基/−OH
基及びまたは−SH基の和=0.5〜1.5の比率、好
ましくは1.0の比率となるように混合重合する。この
範囲を外れると、屈折率や加工性等、レンズとして望ま
しい物性が悪化する。
【0013】上記成分の重合は、重合開始剤の存在で行
うのが一般的である。開始剤としては、例えばジブチル
錫ジアセテート、ジブチル錫ジ−2−エチルヘキソエー
ト、ジブチル錫ジマレエート、ジブチル錫ジラウレー
ト、ジブチル錫ジクロライド等の有機錫化合物、メチル
アミン、エチルアミン、t−ブチルアミン、メチルエチ
ルアミン、N,N−ジエタノール−p−トルイジン、ジ
メチル−p−トルイジン、ジフェニルアミン、o−ニト
ロアミン、p−ブロモアニリン、2,4,6−トリブロ
モアニリン等のアミン化合物等を使用することができ
る。開始剤の使用量は、用いるモノマーの種類や他の状
況にも左右されるが、一般にはモノマー混合物中に0.
03〜0.3重量%、好ましくは0.05〜0.15重
量%とする。
【0014】本発明においては、更に離型剤をモノマー
混合物に添加してもよい。使用しうる離型剤は、鉱油系
離型剤、リン酸エステル系離型剤、脂肪酸アルキルエス
テル系離型剤、有機酸のグリセリドと合成樹脂とを複合
させた縮合体型離型剤等のうちいずれか1種である。こ
の離型剤の使用量は、モノマー混合物中に通常10〜5
000ppm、好ましくは500〜2000ppmの濃
度とする。
【0015】上記のような成分の他、原料混合物に紫外
線吸収剤、酸化防止剤等を添加してもよい。重合方法と
しては、通常注型重合方法が用いられ、上記のような各
種成分を均一に混合し、脱気した後、ガラス製または金
属製の鋳型中に注入し、重合反応を適切な温度で行う。
重合は低温で行うこともできる。重合温度は、使用する
モノマーの組み合わせや他の状況によって変動するが、
通常−10℃〜150℃で行うのが好ましい。殊に、中
心厚の厚いレンズを製造する場合には、厚い部分におけ
る熱の発散が悪く、歪の原因となるので、このような場
合には、冷却しながら重合を行うのが好ましい。
【0016】反応時間は、使用するモノマーや開始剤、
重合温度等によって一義的には決定できないが、通常5
〜50時間、好ましくは10〜25時間である。このよ
うにして得られるポリウレタン系プラスチックレンズ基
材は、高屈折率を有し、しかも重合歪あるいは成形歪を
有しない。 (2)有機ケイ素系コーティング組成物からなる硬質塗
膜の説明:有機ケイ素系コーティング組成物のビヒクル
成分として用いられる一般式(I)の化合物のうち、R1
が官能基としてエポキシ基を有するものについて言う
と、例えば、次のものが使用される。
【0017】(1) 一般式(II):
【0018】
【化1】
【0019】(但し、式中、R4 は、炭素数1〜4のア
ルキル基又はアルコキシアルキル基又はアシル基、 R5
は、炭素数1〜6の炭化水素基又はハロゲン化炭素化水
素基、R6 は、水素またはメチル基、mは2又は3、p
は1〜6、qは0〜2である。)で表わされる化合物。
【0020】(2) 一般式(III ):
【0021】
【化2】
【0022】(但し、R7 は、炭素数1〜4のアルキル
基又はアルコキシアルキル基又はアシル基、R8 は、炭
素数1〜4の炭化水素基又はハロゲン化炭素化水素基、
1は2又は3、rは1〜4である。)で表わされる化合
物。上記一般式で表される化合物は、いずれもエポキシ
基を有するので、エポキシシランとも呼ばれる。
【0023】エポキシシランの具体例としては、例え
ば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ
−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリ
シドキシプロピルトリメトキシエトキシシラン、γ−グ
リシドキシプロピルトリアセトキシシラン、γ−グリシ
ドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシド
キシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−
エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランな
どが挙げられる。
【0024】また、一般式(I) の化合物のうち、R1
官能基としてエポキシ基を有するもの以外(a=0のも
のを含む)の例としては、例えば、次の化合物が挙げら
れる。メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシ
シラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキ
シシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメ
トキシエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルト
リメトキシシラン、アミノメチルトリメトキシシラン、
3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプ
ロピルトリエトキシシラン、フエニルトリメトキシシラ
ン、フエニルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピル
トリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエト
キシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメ
トキシシランなどの各種トリアルコキシシラン、トリア
シロキシシランあるいはトリアルコキシアルコキシシラ
ン化合物。
【0025】以上例示した一般式(I) の化合物は、いず
れもSi原子に結合するOR3 基が3個ある(a+b=
1)3官能の例であるが、OR3 基が2個ある(a+b
=2)2官能の相当する化合物ももちろん使用すること
ができる。2官能の相当する化合物の例としては、ジメ
チルジメトキシシラン、ジフエニルジメトキシシラン、
メチルフエニルジメトキシシラン、メチルビニルジメト
キシシラン、ジメチルジエトキシシランなどがある。
【0026】一般式(I) の化合物は、1種で使用しても
よいが、目的に応じて2種以上を混合して使用してもよ
い。特に、2官能の化合物を使用するときには、3官能
の化合物と併用することが好ましい。併用した場合に
は、平均で2>a+b>1となる。更に、a+b=0の
4官能の相当する化合物を併用することも可能である。
4官能の相当する化合物の例としては、メチルシリケー
ト、エチルシリケート、イソプロピルシリケート、n−
プロピルシリケート、n−ブチルシリケート、t−ブチ
ルシリケート、sec−ブチルシリケートなどが挙げら
れる。
【0027】一般式(I) の化合物は、そのまま使用して
もよいが、反応速度を増し、硬化温度を下げる目的で加
水分解物として使用することが望ましい。2〜4官能の
化合物の中で同一官能数の化合物を2種以上を併用する
場合、或いは異なる官能数の化合物を2種以上併用する
場合、加水分解後に併用してもよいし、加水分解前に併
用して共加水分解を行なってもよい。加水分解によりH
OR3 なるアルコールが遊離され、一般式(I) の化合物
は、相当するシラノール:
【0028】
【化3】
【0029】になる。シラノールは、速やかに脱水縮合
が進み、オリゴマーになる。したがって、この反応が十
分に進むように、加水分解後、1〜24時間放置(養
生)させてもよい。無機微粒子成分として用いられるも
のはコロイド状に分散した五酸化あるいは三酸化アンチ
モンゾル、酸化ジルコニウムゾル、酸化チタンゾル、酸
化スズゾル、酸化タンタルゾル、酸化タングステンゾ
ル、酸化アルミニウムゾル、酸化チタンと酸化セリウム
の複合ゾル、酸化チタンと鉄の複合ゾル、酸化スズと酸
化タングステンの複合ゾルで酸化スズゾルを被覆したゾ
ル(変性ゾル)から選ばれる少なくとも1種のゾルであ
る。
【0030】ゾルの粒子径は1〜200mμ、特に5〜
100mμのものが好ましい。これより小さいと製造が
困難であり、ゾル自身の安定性も悪く、かつ効果も小さ
い。これより大きいと、コーティング組成物の安定性、
硬質塗膜の透明性、平滑性などが低下する。これらのゾ
ルは各々公知であり、一部市販品として入手可能であ
る。
【0031】上記ゾルのうち、酸化スズゾルの微粒子を
酸化タングステンと酸化スズの複合ゾルで被覆した変性
ゾルが好ましく、これは、以下のようなものである。こ
の変性ゾルは、「酸化スズ(ゾル)のコロイド粒子を
核に、その周囲を酸化スズ−酸化タングステン複合体
(ゾル)のコロイド粒子が完全に又は不完全に取り囲
んだ、二重構造を持つコロイド粒子」が分散媒中にコロ
イド状に分散したものである。核となる酸化スズのコロ
イド粒子の粒径は一般に4〜50nmである。周囲を取り
囲む複合体のコロイド粒子の粒径は、一般に2〜7nm
である。核となる酸化スズ粒子は、正に帯電してい
る。そのため、これをそのまま成分(a)に混合する
と、成分(a)の分子は−SiO- + に由来して、負の
電荷を持つので、凝集(ゲル化)する。それに対して、
複合体粒子は負に帯電している。そのため、これを成
分(a)と混合しても凝集しない。
【0032】酸化スズ−酸化タングステン複合体ゾル
は、一般には、タングステン酸ナトリウム水溶液をイオ
ン交換して製造したタングステン酸水溶液に、スズ酸ナ
トリウム水溶液を室温にて強撹拌下に加えることによっ
て、製造される。複合体ゾルのWO3 /SnO2 の重量比
は一般に0.5 〜100 である。0.5 より小さくても100 よ
り大きくとも、本発明の構成要件であるコーティング組
成物を調製して硬質塗膜を形成したとき、性能の劣った
硬質塗膜しか得られない。
【0033】変性ゾルは、酸化スズの水性ゾルの“Sn
2 換算で100 重量部”に対して、複合体の水性ゾル
を“WO3 とSnO2 の合計重量換算で2〜100 重量部”
を、室温にて強撹拌下に加えることによって、製造され
る。この場合も、2重量部より少なくとも100 重量部よ
り多くとも、本発明のコーティング組成物を調製して硬
質塗膜を形成したとき、性能の劣った硬質塗膜しか得ら
れない。変性ゾルの二重構造コロイド粒子の粒径は、一
般に4.5 〜60nmである。酸化スズの水性ゾルに複合体
の水性ゾルを混合すると、酸化スズの粒子と複合体
の粒子とは、化学的に結合するものと推定される。そ
のため、製造された変性ゾルは安定に存在するものと推
定される。このような変性ゾル自身は特開平3−217230
号に詳細に記載されているように公知である。
【0034】ゾルは水又は有機溶媒又は両者の混合溶媒
に分散させたコロイド溶液であり、適当なアルカリ、特
に有機アミンを添加して安定化させたり、各種有機酸を
用いて安定化させたり、あるいは界面活性剤によって安
定化させたものを用いることができる。上述した酸化ア
ンチモンゾル、酸化ジルコニアゾル、酸化チタンゾル、
酸化スズゾル、酸化タンタルゾル、酸化タングステンゾ
ル、酸化チタンと酸化セリウムの複合ゾル、酸化チタン
と鉄の複合ゾル並びに酸化スズと酸化タングステンの複
合ゾルで酸化スズゾルを被覆したゾル(変性ゾル)は屈
折率が高く好ましい。これらのゾルは単独で用いてもあ
るいは2種類以上の混合物として用いてもよい。
【0035】コーティング組成物には、ビヒクル成分を
重合させて3次元網目構造の硬質塗膜を形成させる上で
時間を短縮させるために、必要に応じ、硬化触媒を使用
することができる。但し、コーティング組成物の安定性
を損なうものは好ましくなく、好ましくは、例えば次の
ようなものが使用される。
【0036】1.アミン類:モノエタノールアミン、ジ
エタノールアミン、イソプロパノールアミン、エチレン
ジアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミ
ン、モルホリン、トリエタノールアミン、ジアミノプロ
パン、アミノエチルエタノールアミン、ジシアンジアミ
ド、トリエチレンジアミン、2−エチル−4−メチルイ
ミダゾール。
【0037】2.各種金属錯化合物:一般式:AlXn
3-n (但し、式中、XはOL(Lは低級アルキル
基)、Yは一般式M1 COCH2 CO2 2 (M1 、M
2 は低級アルキル基)及びM1 COCH2 COOM2
由来する配位子から選ばれる少くとも1つで、nは0又
は1又は2である)で示されるアルミニウムキレート化
合物。
【0038】特に有用なキレート化合物としては、溶解
性、安定性、触媒効果の観点から、アルミニウムアセチ
ルアセトネート、アルミニウムビスエチルアセトアセテ
ートモノアセチルアセトネート、アルミニウム−ジ−n
−ブトキシド−モノエチルアセトアセテート、アルミニ
ウム−ジ−iso−プロポキシドーモノメチルアセトア
セテートなどである。
【0039】その他、クロムアセチルアセトネート、チ
タニルアセチルアセトネート、コバルトアセチルアセト
ネート、鉄(3)アセチルアセトネート、マンガンアセ
チルアセトネート、ニッケルアセチルアセトネート。そ
の他の金属錯化合物としては、 一般式:M(CH2 N(CH2 COO)2 2 Na
X (x =1〜3)で示されるエチレンジアミン四酢酸金
属塩化合物。
【0040】特に有用な化合物は、エチレンジアミン四
酢酸カルシウム、エチレンジアミン四酢酸マグマネシウ
ム、エチレンジアミン四酢酸アルミニウム、エチレンジ
アミン四酢酸マンガン、エチレンジアミン四酢酸銅、エ
チレンジアミン四酢酸亜鉛、エチレンジアミン四酢酸
鉄、エチレンジアミン四酢酸コバルト、エチレンジアミ
ン四酢酸ビスマスである。
【0041】3.金属アルコキシド:アルミニウムトリ
エトキシド、アルミニウムトリn−プロポキシド、アル
ミニウムトリn−ブトキシド、テトラエトキシチタン、
テトラn−ブトキシチタン、テトラi−プロポキシチタ
ン。 4.有機金属塩:酢酸ナトリウム、ナフテン酸亜鉛、ナ
フテン酸コバルト、オクチル酸亜鉛、オクチル酸スズ。
【0042】5.過塩素酸塩:過塩素酸マグネシウム、
過塩素酸アンモニウム。 6.有機酸又はその無水物:マロン酸、コハク酸、酒石
酸、アジピン酸、アゼライン酸、マレイン酸、O−フタ
ル酸、テレフタル酸、フマル酸、イタコン酸、オキザロ
酢酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水イタコン
酸、1,2−ジメチルマレイン酸無水物、無水フタル
酸、ヘキサヒドロフタル酸無水物、無水ナフタル酸。
【0043】7.ルイス酸:塩化第二鉄、塩化アルミニ
ウム。 8.ハロゲン化金属:塩化第一スズ、塩化第二スズ、臭
化スズ、塩化亜鉛、臭化亜鉛、四塩化チタン、臭化チタ
ン、臭化タリウム、塩化ゲルマニウム、塩化ハフニウ
ム、塩化鉛、臭化鉛。
【0044】以上の触媒は、単独で使用することなく2
種以上混合して使用してもよい。特にビヒクル成分がエ
ポキシ基を持つときには、エポキシ基の開環重合触媒を
兼ねるものを使用してもよい。コーティング組成物の粘
度を低くするために、必要に応じて溶媒を使用すること
ができ、例えば、水、低級アルコール、アセトン、エー
テル、ケトン、エステルなどが使用される。
【0045】本発明の構成要件であるコーティング組成
物においては、ビヒクル成分の100重量部(固形分)
当たり、無機微粒子成分を10〜400重量部(固形
分)好ましくは50〜250重量部(固形分)使用し、
ビヒクル成分と無機微粒子成分の合計100重量部(固
形分)当たり、硬化触媒を0.00001〜20重量部
使用することが適当である。
【0046】溶媒は、組成物の粘度に応じて適当量使用
される。以上の成分の外に、更に必要に応じて、例え
ば、塗布される側の基材(成形物)との接着性改良、耐
候性向上などを目的として、或いはコーティング組成物
の安定性を向上させる目的で各種添加剤を併用してもよ
い。添加剤の例としてはpH調節剤、粘度調節剤、レベ
リング剤、つや消し剤、染料、顔料、安定剤、紫外線吸
収剤、酸化防止剤、帯電防止剤などがある。
【0047】その他、硬質塗膜の可撓性を向上させる目
的でエポキシ樹脂その他の有機ポリマーを併用してもよ
い。エポキシ樹脂としては、塗料、注形用に汎用されて
いる、ポリオレフィン系エポキシ、シクロペンタジエン
オキシドや、シクロヘキセンオキシド、あるいは、ポリ
グリシジルエステルなどの脂環式エポキシ樹脂、ポリグ
リシジルエーテル、エポキシ化植物油、ノボラック型フ
ェノール樹脂とエピクロルヒドリンから成る、エポキシ
ノホラック、更にはグリシジルメタクリレートとメチル
メタクリレートの共重合体などがある。
【0048】その他の有機ポリマーとしては、例えば、
ポリオール、繊維素系樹脂、メラミン樹脂などがある。
塗布時におけるフローを向上させ、硬質塗膜の平滑性を
向上させて硬質塗膜表面の摩擦係数を低下させる目的
で、各種の界面活性剤をコーティング組成物に併用する
ことも可能であり、とくにジメチルシロキサンとアルキ
レンオキシドとのブロックまたはグラフト共重合体、さ
らにはフッ素系界面活性剤などが有効である。
【0049】コーティング組成物を塗布し硬化させて得
られる硬質塗膜は、特にポリウレタン系プラスチックレ
ンズ基材の傷付き防止膜として有用である。塗布手段
は、刷毛塗り、浸漬、ロール塗り、スプレー塗装、流し
塗りなど通常の塗装法を用いることができる。更に、こ
のコーティング組成物を鋳型に塗布後、基材成形物とな
る原料注形重合してプラスチック成形物を成形したり、
コーティング組成物を成形物に塗布した後、未だ硬化し
ていない硬質塗膜表面を鋳型と密着させ、その上で硬質
塗膜を硬化させることもできる。
【0050】このコーティング組成物は、塗布した後、
多くの場合、加熱処理することにより硬化させて硬質塗
膜を得る。加熱温度は約50〜200℃好ましくは80
〜140℃で十分な効果が得られる。硬質塗膜の厚さ
は、一般に乾燥後で3〜30μ好ましくは5〜10μも
あれば十分である。
【0051】硬質塗膜は、透明で硬度特に耐スクラッチ
性に優れ、プラスチックレンズの問題点であった引っか
き傷による外観の低下を起こすことがなく、商品価値の
著しく高いレンズを提供できる。 (3)多層反射防止膜の説明:本発明における反射防止
膜は、低屈折率膜と高屈折率膜を交互に積層させ、この
時の高屈折率層として酸化チタン(TiO2 )、低屈折
率層として二酸化珪素(SiO2 )を用いたものが好ま
しい。基本的な膜構成としては、中屈折層と高屈折層と
低屈折層の膜厚(屈折率を考慮)が、それぞれλ/4、
λ/2、λ/4であるものや、高屈折層と低屈折層の膜
厚が、それぞれλ/2、λ/4であるものが好ましく、
前者の構成の場合は、基材側から数えて第1層目の膜は
TiO2とSiO2 を用いた3層等価膜あるいは2層の
コンポジット膜としてもよい。また、第1層目には酸化
ジルコニウム(ZrO2 )と酸化アルミニウム(Al2
3 )の混合物質、または酸化プラセオジウム(Pr6
11)とAl2 3 の混合物も用いることができる。
【0052】TiO2 を真空蒸着法により成膜する場
合、TiO2 自身を蒸着源として用いることができる
が、一般にTiO2 はガス放出が多く、成膜時の安定性
に欠ける場合がある。この場合、蒸着源としてチタンの
低級酸化物、好ましくはTiOX(1≦X<2)を用
い、蒸着槽内にO2 ガスを導入する反応性蒸着法を用い
ることができる。この方法によると、極めて安定してT
iO2 膜を成膜することができる。
【0053】TiO2 膜はプラスチックレンズ基材上に
使用した場合でも十分な耐久性があり、さらに2.25
程度の高い屈折率を有するため、反射防止膜の設計上も
有利である。すなわち、反射率が低く、反射防止効果を
持つ波長域を広げることができ、上記の効果を得るため
の層数を減らすことができる。上記の反射防止膜を製膜
するに当たっては一般に真空蒸着法を用いることができ
るほか、上記の物質の焼結体を用いたスパッタリング法
や、イオンプレ−ティング法等の方法も用いることがで
きる。
【0054】以上のようにしてポリウレタン系プラスチ
ックレンズ基材上に有機ケイ素系コーティング組成物か
らなる硬質塗膜を形成し、その上に多層反射防止膜を形
成したレンズは、薄型軽量で、優れた透明性、耐擦傷
性、密着性、反射防止性を有する。以下、実施例により
本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれに限ら
れるものではない。
【0055】
【実施例】
〔実施例1〕 (ポリウレタン系プラスチックレンズ基材の作成)m−
キシレンジイソシアネート100重量部と、ペンタエリ
スリトールテトラキス−3−メルカプトプロピオネート
130重量部と、離型剤としてリン酸ジ−n−ブチル1
重量部と、重合開始剤としてジブチル錫ジクロライド
0.02重量部と、紫外線吸収剤として2−(2’−ヒ
ドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリア
ゾール0.2重量部とを混合し、1×10-1Torrの
真空下で冷却しながら30分間脱気を行った。
【0056】次に、ガラス製のレンズ成形用型と合成樹
脂製ガスケットを組み合わせて成形用鋳型を作成し、前
述の混合物を注入した。室温から120℃まで15時間
かけて連続的に昇温し、120℃で2時間保持して重合
を行った。重合終了後ガスケットを外し、レンズ成形用
型から成形物取り外し、ポリウレタン系プラスチックレ
ンズ基材を得た。
【0057】得られたレンズ基材は無色透明で屈折率が
1.597と高く、アッベ数が34と良好な光学特性を
持ち、歪がなく、耐衝撃性、切削性及び研磨性も優れて
いた。 (有機ケイ素系コーティング組成物からなる硬質塗膜の
作成) 1.予備組成物Aの調整:回転子を備えた反応容器中に
γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン24
8重量部を仕込み、マグネチックスターラーを用いて激
しく撹拌しながら、0.05規定塩酸水溶液36重量部
を一度に添加した。
【0058】添加直後は不均一溶液であったが、数分で
発熱しながら均一で無色透明な溶液になった。更に1時
間撹拌を続け、ビヒクル成分に相当する加水分解物を得
た。得られた加水分解物に、溶媒としてエタノール5
6.6重量部及びエチレングリコール53.4重量部を
添加した後、硬化触媒としてアルミニウムアセチルアセ
トネート4.7重量部を加え、十分に混合溶解させて、
予備組成物Aを調整した。 2.予備組成物Bの調製:回転子を備えた反応容器中に
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン212.
4重量部を仕込み、容器内の温度を10℃に保ち、マグ
ネチックスターラーを用いて激しく撹拌しながら、0.
01規定塩酸水溶液48.6重量部を徐々に滴下した。
滴下終了後は直ちに冷却を止めると、均一で無色透明な
溶液状のビヒクル成分に相当する加水分解物を得た。
【0059】得られた加水分解物に、溶媒としてエタノ
ール77.1重量部及びエチレングリコール37.7重
量部を添加した後、硬化触媒としてアルミニウムアセチ
ルアセトネート7.65重量部を加え、十分に混合溶解
させて、予備組成物Bを調整した。 3.コーティング組成物の調製:ガラス容器に、前述の
1、2で調整した予備組成物Aを20重量部、Bを80
重量部(固形分割合ではない)を秤量して注ぎいれ、そ
こへ市販の五酸化アンチモンゾルゾルを150重量部
(固形分ではない)、シリコーン系界面活性剤を0.4
5重量部添加し、十分に撹拌混合することにより、均一
で無色透明な溶液状のコーティング組成物を調製した。 4.塗布:前述のレンズ基材上に浸漬法(引上げ速度1
0cm/分)で上記コーティング組成物を塗布し、10
0℃で2時間加熱処理して、硬質塗膜を硬化させた。こ
うして硬質塗膜が形成された。 (多層反射防止膜の作成)市販の真空蒸着装置を使用し
て真空蒸着法により多層膜反射防止コートを形成した。
低屈折率膜の蒸着原料としてSiO2 を用い、高屈折率
膜の蒸着原料としてTi3 5 を用いた。
【0060】前述の硬質塗膜を施したレンズ基材を真空
装置内に入れ、約80℃に加熱しながら排気を行い、1
×10-5Torrまで排気した。電子ビーム加熱法によ
り上記蒸着原料を蒸着させた。Ti3 5 の蒸着時は1
×10-4Torrになるように酸素ガスを導入して蒸着
を行った。反射防止膜の構成を表1に示す。
【0061】
【表1】
【0062】(評価)以上のようにして作製したレンズ
を次の試験に供し、性能を評価した。 1.外観 通常の白色蛍光灯を光源にした照度1000ルックスの
照明装置を用いて目視判定により次の項目の評価を行っ
た。 (1)透明性……着色あるいは白濁等がないこと (2)レンズ内部の均一性……レンズ内部に脈理等の不
均一がないこと (3)反射防止膜の均一性……反射色が均一であること 評価は下記のように行った。
【0063】○……問題がない △……やや問題がある ×……問題がある 2.反射特性 350nm〜800nmの分光反射率を、株式会社日立
製作所製330型分光光度計により測定した。 3.視感透過率の測定 旭分光株式会社製モデル304型視感度透過率計を用い
て視感度透過率を測定した。 4.密着性 作成したレンズを90℃の熱水に2時間浸漬後、硬質塗
膜と反射防止膜とを施したレンズ表面にナイフで1mm
おきに縦方向横方向にカット線を入れることにより10
0個のゴバンの目を作り、その後、セロハン粘着テープ
(商品名“セロテープ”ニチバン株式会社製)を強く張
り付けた。テープの一端を手に持って90度方向に急速
にはがし、レンズ表面のゴバンの目が何個剥がれるかを
調べた。剥がれたゴバンの目の数Xを分子にしてX/1
00で表す。Xが小さいほど密着性がよい。 5.耐摩傷性試験 スチールウール#0000でレンズ表面を摩擦し傷付き
難さを調べた。尚、評価は次のように行なった。
【0064】◎……強く摩擦しても傷がつかない。 ○……かなり強く摩擦すると少し傷がつく。 ×……弱い摩擦でも傷がつく。 ちなみに硬質塗膜なしのレンズの評価は×であった。以
上の評価結果を図1及び表2に示す。
【0065】
【表2】
【0066】〔実施例2〕実施例1において、五酸化ア
ンチモンゾルに代えて、酸化チタンと酸化セリウムの複
合ゾルを使用した外は実施例1と全く同様にして硬質塗
膜を形成した。そして、硬質塗膜上に実施例1と同じ真
空蒸着法によって表3に示す構成の多層反射防止膜を作
成した。
【0067】
【表3】
【0068】評価結果を図2及び表2に示す。 〔実施例3〕実施例1において、五酸化アンチモンゾル
に代えて、酸化チタンと鉄の複合ゾルを用いた外は実施
例1と全く同様にして硬質塗膜を形成した。
【0069】そして、硬質塗膜上に実施例1と同じ真空
蒸着法によって表4に示す構成の多層反射防止膜を作成
した。
【0070】
【表4】
【0071】ここで、Z+Aは酸化ジルコニウムと酸化
アルミニウムの混合物質を示し、P+Aは酸化プラセオ
ジウムと酸化アルミニウムの混合物質を示す。評価結果
を図3及び表2に示す。 〔実施例4〕実施例1において、五酸化アンチモンゾル
に代えて、酸化スズと酸化タングステンの複合ゾルで酸
化スズゾルを被覆したゾル(変性ゾル)を用いた外は、
実施例1と全く同様にして硬質塗膜を形成した。
【0072】そして、硬質塗膜上に実施例1と同じ真空
蒸着法により、表5に示す構成の多層反射防止膜を作成
した。
【0073】
【表5】
【0074】評価結果を図4及び表2に示す。 〔比較例1〕実施例1において、五酸化アンチモンゾル
に代えて、二酸化ケイ素ゾルを用いてコーティング組成
物を用いた外は、実施例1と全く同様にして硬質塗膜を
作成した。
【0075】そして、硬質塗膜上に実施例1と同じ真空
蒸着法により、表6の構成の多層反射防止膜を作成し
た。
【0076】
【表6】
【0077】反射特性を図5に示す。反射特性に細かい
凸凹があり、反射色にムラが著しかった。また、透過率
もやや劣るものであった。 〔比較例2〕実施例1において、レンズ基材としてポリ
カーボネート系射出成形レンズ基材を用いた外は、実施
例1と全く同様に硬質塗膜及び多層反射防止膜を作成し
た。
【0078】反射特性は図1とほぼ同じであったが、透
明性、内部の均一性、密着性、耐擦傷性に劣るものであ
った。比較例1、2の評価結果は表2に示す。比較例2
の密着性において、8/100とあるのは、ゴバン目に
おいて、硬質塗膜と多層反射防止膜とを施したレンズか
ら、8枚のゴバン目が硬質塗膜ごと剥がれたことを意味
している。
【0079】
【発明の効果】以上の通り、本発明によれば、反射防止
性プラスチックレンズに関して次のような効果が得られ
る。 (1)透明性、内部の均一性に優れ、薄型軽量である。 (2)反射防止性に優れ、表面のギラツキが少なくメガ
ネレンズに使用した場合目元がすっきりと見える。 (3)透過率が良く、メガネレンズに使用した場合すっ
きりとした視界を得ることができる。 (4)反射防止膜の反射色にムラがない。 (5)反射率の低い高性能な反射防止膜が少ない層数で
形成できる。 (6)耐擦傷性、表面硬度、耐摩耗性に優れ、硬質塗膜
および反射防止膜の密着性も優れる 。 (7)可撓性、耐熱性、耐温水性、耐薬品性に優れる。 (8)帯電防止性が優れ、汚れが比較的付きにくい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1におけるレンズの反射特性を
表したグラフである。
【図2】本発明の実施例2におけるレンズの反射特性を
表したグラフである。
【図3】本発明の実施例3におけるレンズの反射特性を
表したグラフである。
【図4】本発明の実施例4におけるレンズの反射特性を
表したグラフである。
【図5】比較例1におけるレンズの反射特性を表したグ
ラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 吉田 好徳 東京都品川区西大井1丁目6番3号 株 式会社ニコン 大井製作所内 (72)発明者 斉藤 誠治 東京都品川区西大井1丁目6番3号 株 式会社ニコン 大井製作所内 (72)発明者 瀧 和也 東京都品川区西大井1丁目6番3号 株 式会社ニコン 大井製作所内 (72)発明者 成澤 孝司 東京都品川区西大井1丁目6番3号 株 式会社ニコン 大井製作所内 (56)参考文献 特開 平3−72302(JP,A) 特開 平4−55426(JP,A)

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリイソシアネートとポリオール又はポ
    リチオールとの重合時に、前記ポリイソシアネートのー
    NCO基の数を1としたとき前記ポリオールの−OH基
    又は前記ポリチオールの−SH基の数が0.5〜1.5
    の比率になるようにに混合して得られるポリウレタン系
    プラスチックレンズ基材と、 前記プラスチックレンズ基材の表面に設けられ、 一般式:R1 a2 bSi(OR34-(a+b)…(式I) (但し、式中、R1 は、官能基を有する有機基又は不飽
    和二重結合を有する炭素数4〜14の有機基であり、 R2 は、炭素数1〜6の炭化水素基又はハロゲン化炭化
    水素基であり、 R3 は、炭素数1〜4のアルキル基、アルコキシアルキ
    ル基又はアシル基であり、 a及びbは、それぞれ0又は1であり、かつa+bは、
    1又は2である。)で表される有機ケイ素化合物又はそ
    の加水分解物中に、酸化チタン又は酸化スズの無機微粒
    子ゾルを含有する有機ケイ素系コーティング組成物から
    なる硬質塗膜と、 前記硬質塗膜上に設けられ、酸化チタンまたは酸化ジル
    コニウムを含む高屈折層と低屈折層との交互積層膜から
    なる反射防止膜と、 を有することを特徴とする反射防止性プラスチックレン
    ズ。
  2. 【請求項2】前記コーティング組成物は、 一般式:M(CH2N(CHCOO)22NaX (X=
    1〜3、Mは金属原子) で示されるエチレンジアミン四酢酸金属塩化合物を含む
    ことを特徴とする請求項1に記載の反射防止性プラスチ
    ックレンズ。
  3. 【請求項3】前記エチレンジアミン四酢酸金属塩化合物
    は、エチレンジアミン四酢酸カルシウム、エチレンジア
    ミン四酢酸マグネシウム、エチレンジアミン四酢酸アル
    ミニウム、エチレンジアミン四酢酸マンガン、エチレン
    ジアミン四酢酸銅、エチレンジアミン四酢酸亜鉛、エチ
    レンジアミン四酢酸鉄、エチレンジアミン四酢酸コバル
    ト、エチレンジアミン四酢酸ビスマスから選択されるこ
    とを特徴とする請求項2に記載の反射防止性プラスチッ
    クレンズ。
  4. 【請求項4】前記酸化チタンの無機微粒子ゾルは、酸化
    チタンと鉄の複合ゾル又は酸化チタンと酸化セリウムの
    複合ゾルであることを特徴とする請求項1に記載の反射
    防止性プラスチックレンズ。
  5. 【請求項5】前記酸化スズの無機微粒子ゾルは、「酸化
    スズと酸化タングステンの複合ゾルで酸化スズゾルを被
    覆したゾル」であることを特徴とする請求項1に記載の
    反射防止性プラスチックレンズ。
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