JP3490026B2 - 自硬性安定液 - Google Patents

自硬性安定液

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ベントナイトの配
合量の減少を図るとともに、ブリージング率が小さく、
強度の高い固化壁を形成できる自硬性安定液に関する。
【0002】
【従来の技術】地中連続壁を構築する工法の一種とし
て、ベントナイト安定液或いはポリマー安定液を掘削溝
内に満して溝壁の崩壊を防止しながら掘り下げていき、
掘削終了後、安定液の溜まっている溝内に鉄筋籠を下ろ
し、さらにコンクリートを打設して前記安定液をコンク
リートに置き換えることによって鉄筋コンクリート製の
地中連続壁を造る方法が知られており、この方法は強固
な壁体を造るのに適している。
【0003】この方法とは別に、強度的には劣るが仮設
土留壁などとして十分な程度の地中連続壁を安価に作る
方法がある。それは、掘削時に自硬性安定液を使用する
とともに、掘削終了後この安定液をそのまま放置してお
くことによって、固化壁が形成されるもので、自硬性安
定液工法と称されている。なお、これの変形工法とし
て、泥水を用いて掘削後に前記コンクリートに代えて自
硬性安定液を打設して固化壁を形成する方法もあり、こ
れらの工法に用いられる自硬性安定液に要求される性能
は次の通りである。
【0004】(1)固化前の性能:固化する前は、まず
掘削溝の崩壊を防止する機能とともに、掘削された土砂
との分離性が要求される。そのためには、適度の比重と
粘性が必要であり、一般に比重としては1.15〜1.
25、粘性としてはファンネル粘度で約25〜35秒が
適当であるとされている。
【0005】なお、ファンネル粘度の範囲を25〜35
秒にするのは、25秒以下であると後述するブリージン
グが非常に大きくなり、35秒以上になると掘削土砂の
分離が困難になるのでこの範囲に保つ。
【0006】次に重要なことはブリージング水が少ない
ことである。ブリージングとは自硬性安定液を掘削終了
後に放置した際、固化するまでの間に内部の水分の一部
が上方に次第に移動して上面に溜る現象である。これが
多いと、その分だけ固体化部分の体積が少なくなり、上
部に欠損を生ずるので、欠損分は後日自硬性安定液を補
給しなければならないだけでなく、ブリージングが発生
した部分で溝壁が崩壊する危険性さえ出てくる。それゆ
え、ブリージング率は小さい程よく、10%以下におさ
えることが好ましい。
【0007】(2)固化後の性能:固化後で最も重要な
性能は、強度である。目標強度は、工事の目的や構造物
の種類などによっても異るが、例えば材冷28日におい
てその1軸圧縮強度が5〜15Kgf /cm2 程度である
ことが要求される。
【0008】このような性能を得るため、従来、自硬性
安定液は、「水+ベントナイト+セメント系固化材+硬
化遅延剤」、または、「水+ベントナイト+活性の低い
一般の粘土+セメント系固化材+硬化遅延剤」を混合し
て作製されている。この場合、水は、コンクリートでい
う混練水に相当し、できる限り清水を使用することが望
ましいが、工事現場での入手困難などの事情により海水
を用いざるを得ない場合もあり、前者を清水練、後者を
海水練りと称している。また、硬化遅延剤は、掘削中の
自硬性安定液の流動性保持のために使われるもので、そ
の使用量は作業時間などに応じて適宜調整される。そし
て、ベントナイトは、一般に天然のものが使用されてい
る。しかしながら、このような従来の自硬性安定液に
は、以下に説明する技術的課題があった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】(1)海水練りにおけ
る問題点:海水練りの場合に自硬性安定液中の固化材の
反応にはまったく問題ないが、ベントナイトの挙動は、
清水の場合とまったく異なり、膨潤が著しく抑制され
る。その結果、自硬性安定液の粘性が小さくなるだけで
なく、ブリージングが極端に大きくなり、自硬性安定液
として機能しなくなる。なお、ベントナイトは、モンモ
リロナイトという非常に膨潤性の高い粘土鉱物を主体と
する粘土であるが、その膨潤性が海水などのように電解
質を多く含む液体中で抑制されることは、コロイド化学
では良く知られている。
【0010】このような問題の解決策として、海水練り
の場合には、ベントナイト量を清水配合の標準に対し
て、2倍以上に増量し、かつ、例えばカオリンなどの一
般粘土を併用している。また、他の対策としては、標準
量のベントナイトと、例えば、アタパルジャイト,セピ
オライトなどの繊維構造を有する粘土鉱物を併用した
り、さらにこのベントナイト,繊維構造粘土に水溶性セ
ルロース系高分子などを併用する場合もある。
【0011】しかし、このような解決策は、材料の配合
量が多くなり、材料コストが非常に高くなるだけでな
く、扱う材料の種類が増え、施工が煩雑になるなどの問
題があった。
【0012】(2)清水練りにおける問題点:清水練り
においても、自硬性安定液が硬化するまでにはブリージ
ング水が発生し、その発生量はかなりの数値を示してい
る。元の自硬性安定液の体積を100とした場合のブリ
ージング水の体積をブリージング率(%)として表示さ
れるが、標準配合のものでは、清水練りであっても5%
前後となっている。通常の工事ではこの程度のブリージ
ング率は翌日にブリージングによる欠損部分に自硬性安
定液を補給することで対処できる。
【0013】しかしながら、欠損部分ができることによ
って、その間に欠損部分の溝壁が崩壊する惧れのある軟
弱な地盤での工事や、空洞部の充填工事などではこのブ
リージング率が問題になってくる。なお、この対策とし
てベントナイトの量を前記標準配合の2〜5割増しにす
ることが行われているが、やはり材料コストが増加する
欠点があった。
【0014】本発明者らは、以上の問題を解決するため
に種々の材料を用いて実験した結果、活性化ベントナイ
トに着目した。そしてこれを自硬性安定液の材料に用い
ることにより、少ない配合量であっても適正比重および
粘度を保持し、ブリージング率を小さく押さえることが
出来、しかも硬化後は圧縮強度の高い壁部を形成できる
自硬性安定液を得られることが知見し、もって本発明を
完成した。
【0015】
【課題を解決するための手段】以上の目的を達成するた
め本発明は、水、ベントナイト、セメント系固化材のみ
を主材とする配合の自硬性安定液において、前記ベント
ナイトの全部もしくは一部を、活性化ベントナイトによ
って構成した。前記自硬性安定液は、ファンネル粘度で
25〜35secの範囲になるように前記ベントナイト
の全部もしくは一部を活性化ベントナイトとすることが
できる。また、前記自硬性安定液は、ブリージング率が
10%以下になるように前記ベントナイトの全部もしく
は一部を活性化ベントナイトとすることができる。な
お、本発明でいう天然ベントナイトと活性化ベントナイ
トの相違は次のように定義される。
【0016】天然ベントナイト:原鉱を採掘して乾燥,
粉砕し必要な粒径にふるい分ける操作によって得られ
る。必要に応じて炭酸ナトリウムなどの膨潤剤を少量添
加する程度の人為的処理をおこなったものもあるが、性
状としてはふるい分け操作しただけのものと本質的な差
異はない。
【0017】活性化ベントナイト:原料は前記と同様に
天然の粘土であり、例えば特開昭63−50310号公
報に示すように、酸性白土中に不可避的に含有されるク
リストバライトをケイ酸ナトリウムに変化させることな
しにアルカリ処理したもの、或いはその類似のものであ
る。その性状は、天然ベントナイトに比べて著しく大き
い膨潤性と新規なレオロジー特性を有し、海水などに含
まれる電解質に対して秀れた耐性を有する物質となる。
【0018】また、この活性化ベントナイトは、海水だ
けでなく他の塩類などの電解質を含む溶液や、例えば工
場排水、コンクリートアク抜き使用水、干潮域の河川
水、温泉地帯の湧水、地中連続壁工法においてコンクリ
―トを打設した際の回収泥水など、従来ベントナイトの
膨潤に悪影響を与えるとされていた各種の水に対しても
膨潤性を示すことも特徴となっている。
【0019】次に各材料および配合量について説明す
る。
【0020】(1)水として海水を用いる場合:従来の
技術の項で示す標準組成のうち、ベントナイトの全て或
いは一部を活性化ベントナイトで置き換える。また、こ
の際の活性化ベントナイトの配合量を60〜160Kg
とすることで、粘度がファンネル粘度で25〜35se
cの範囲に設定され、またブリージング率が10%以下
に設定されることになる。
【0021】(2)水として清水を用いる場合:前記従
来の標準組成のうち、ベントナイトの全て或いは一部を
活性化ベントナイトで置き換える。また、この際の活性
化ベントナイトの配合量を20〜70Kgとすること
で、粘度がファンネル粘度で25〜35secの範囲に
設定され、またブリージング率が10%以下に設定され
ることになる。なお、活性化ベントナイトは天然ベント
ナイトとの間で相互に何等悪影響を及ぼさないため、前
述のごとく天然ベントナイトとの併用が可能となる。
【0022】次に、セメント系固化材としては通常ブレ
ーン値4000cm2 /g程度に微粉砕した高炉水滓ス
ラグを多く含むセメントが固化強度の面で秀れている
が、これにこだわるものでなく、普通ポルトランドセメ
ント,高炉セメント,フライアッシュセメント,その他
地盤改良用に作られた各種のセメント系固化材を用いる
ことができる。
【0023】さらに、作業の必要に応じて硬化遅延材を
少量添加する場合がある。この硬化遅延材としては、例
えば、ポリカルボン酸塩系,オキシカルボン酸塩系,リ
グニンスルホン酸塩系,ナフタリンスルホン酸塩系,グ
ルマン酸塩系などを用いることができる。
【0024】なお、セメント系固化材,硬化遅延剤の双
方とも活性化ベントナイトに対する悪影響はないため、
その配合量は適正な基本配合の下に得ようとする圧縮強
度や、作業性などに応じて適宜増減できる。
【0025】配合操作方法は天然ベントナイトを使用し
たそれとまったく変わりなく、ミキサーに水(清水又は
海水)を入れ、水1000リットルあたりについて前記
活性化ベントナイト、および必要に応じて一般粘土或い
は繊維構造粘土を前述の数値範囲に基づき所定量投入
し、約3〜5分間混合(但し、繊維構造粘土を用いる場
合には10〜20分間の混合が必要)し、これをアジテ
ータに移して攪拌し、ベントナイトを充分に膨張させ
る。このようにして得られた泥水を再び別のミキサ―に
移し、これにセメント系固化材,および必要に応じて硬
化遅延材を加えて3〜5分間混合する。これらの操作に
よって所定量の自硬性安定液を得ることができる。
【0026】海水練り或いは他の塩類などの電解質を含
む水であっても膨潤性が十分にあるため、清水練りと同
じ簡単な材料配合で自硬性安定液を作ることができ、所
期の性能を得るための組成割合も清水練りよりベントナ
イト量をやや増加するだけである。清水練りの場合に
は、さらにベントナイト量を減ずることができる。さら
に、固化後の強度は特に海水練りにおいて、天然ベント
ナイトを用いた場合よりもかなり大きいものとなる。
【0027】
【発明の効果】まず海水練りにおいても簡単な材料組成
でよく、しかも活性化ベントナイトの配合割合を清水の
場合よりも多少増すことによって所期の性能を得るた
め、施工が簡単で材料コストも低減できる上、海水に限
らずあらゆる水を有効利用できる。また、清水練りにお
いてはベントナイト量を従来より大巾に削減ができ、材
料コストの低減ができる。さらに、固化後の強度も従来
より大巾に増すことができることから、一定強度を得る
ための固化材の量も削減できる。
【0028】
【発明の実施の形態】以下実施例につき説明する。但し
本発明は以下の実施例のみに限定されるものでない。
【0029】実施例1:海水練りによる自硬性安定液の
製作および測定: 図1に示す性状の活性化ベントナイトA,Bと、比較例
として用いる従来の天然ベントナイトとを、海水1リッ
トルにそれぞれ80〜200g投入し、これらをそれぞ
れ家庭用ジューサミキサ―で30秒間攪拌混合し、直ち
に得られた各泥水のファンネル粘度を測定したところ、
図2に示す測定結果が得られた。なお、図2以下は水1
000リットルに対する配合量(Kg)の比率に換算し
てある。この結果からは同一投入量では天然ベントナイ
トの粘度の方が全般的に低いことが示されている。
【0030】次いでそれぞれの泥水にセメント系固化材
を加え、同じく家庭用ジューサーミキサーで30秒間混
合して自硬性安定液とし、直ちにファンネル粘度を測定
したところ、図3に示す測定結果が得られた。この測定
結果からは例えばファンネル粘度を24秒にするため
に、天然ベントナイトでは、海水1000リットルに対
し200Kg必要であることが示されている。これに対
し、活性化ベントナイトでは、100Kgと、従来の半
分程度でよいことが理解される。
【0031】次に得られた自硬性安定液を直径3cm,長
さ7cmの円筒中に流し込み、20℃水中に所定期間養生
した後ブリージング率および1軸圧縮強度を測定したと
ころ、図4,図5に示す結果が得られた。図4は養生完
了時点におけるブリージング率を示すもので、ベントナ
イト量が同じ場合で比較すると、活性化ベントナイトを
用いた場合のブリージング率は天然ベントナイトのそれ
と比較して1/2以下であり、活性化ベントナイトのブ
リージング抑止効果が非常に大きいことが示されてい
る。
【0032】図5は材齢3,7,28日における1軸圧
縮強度を示すものでセメント系固化材料は同一である。
この測定結果からは、活性化ベントナイトを使用した場
合、材齢3日において天然ベントナイトの強度をかなり
上回り、材齢7日では天然ベントナイトの28日に匹敵
する強度が示され、さらに材齢28日では天然ベントナ
イトの約2倍の強度が示された。このことから、活性化
ベントナイトは天然ベントナイトに比べて固化強度の面
でも非常に有利であり、その逆に同一強度を得るために
セメント系固化材の使用量も減らすことができるので、
コスト上でも有利であることを示唆している。
【0033】実施例2:清水練りによる自硬性安定液の
製作および測定: 前記実施例1における海水を清水に変更し、後は同一の
方法で泥水化した状態におけるファンネル粘度を測定
し、また、自硬性安定液が得られた段階でファンネル粘
度を測定し、養生後のブリージング率,1軸圧縮強度を
測定したところ、図6〜図9に示す測定結果がそれぞれ
得られた。
【0034】まず、図6,図7の泥水化した状態或いは
自硬性安定液に作られた段階でもそのファンネル粘度は
活性化ベントナイトが高い値を示している。なお、図7
に示す結果からはファンネル粘度を25秒に調整するた
めに、天然ベントナイトでは清水1000リットルにつ
き50Kgを必要とするのに対し、活性化ベントナイト
では20Kgでよく、従来の6割程度材料を節減できる
ことが示唆されている。また、図8のブリージング率か
らは、活性化ベントナイトを用いたブリージング率は天
然ベントナイトの1/4となり、その抑止効果が非常に
大きいことを示唆している。
【0035】さらに、図9の1軸圧縮強度を比較した結
果からは、材齢3,7日では有意差は生じてはいないも
のの、28日では明らかな差が生じており、清水を用い
た場合でも圧縮強度の点で有利であることが示唆されて
いる。
【0036】なお、前記各実施例では単純に活性化ベン
トナイトのみを用い、これと天然ベントナイトと比較し
た場合を示したが、得ようとする特性に応じて活性化ベ
ントナイトと天然ベントナイトを混合して用いても良い
し、他の例えば繊維構造粘土を混合して用いても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例で用いた活性化ベントナイトA,Bと比
較例で用いた天然ベントナイトのそれぞれの物理的性質
を示す図表である。
【図2】実施例1において活性化ベントナイトA,Bと
天然ベントナイトの泥水化した状態におけるファンネル
粘度を示すグラフである。
【図3】同活性化ベントナイトA,Bと天然ベントナイ
トを用いた自硬性安定液の製作直後の状態におけるファ
ンネル粘度を比較したグラフである。
【図4】同自硬性安定液のブリージング率を比較したグ
ラフである。
【図5】同自硬性安定液の1軸圧縮強度を比較したグラ
フである。
【図6】実施例2において活性化ベントナイトA,Bと
天然ベントナイトの泥水化した状態におけるファンネル
粘度を示すグラフである。
【図7】同活性化ベントナイトA,Bと天然ベントナイ
トを用いた自硬性安定液の製作直後の状態におけるファ
ンネル粘度を比較したグラフである。
【図8】同自硬性安定液のブリージング率を比較したグ
ラフである。
【図9】同自硬性安定液の1軸圧縮強度を比較したグラ
フである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭63−50310(JP,A) 特開 昭60−101181(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C09K 7/02,17/10

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水、ベントナイト、セメント系固化材の
    みを主材とする配合の自硬性安定液において、前記ベン
    トナイトの全部もしくは一部を、活性化ベントナイトに
    よって構成したことを特徴とする自硬性安定液。
  2. 【請求項2】 前記水として清水を用いることを特徴と
    する請求項1記載の自硬性安定液。
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