JP3486936B2 - 時計外装部品用材料および時計用外装部品 - Google Patents
時計外装部品用材料および時計用外装部品Info
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Description
マンガンを含有するオーステナイト鋼を生地とした時計
外装部品用材料及び時計用外装部品に関するものであ
る。
食性に優れた材料として主にニッケル系のオーステナイ
ト系ステンレス鋼が使用されている。しかし、ニッケル
は耐食性、靭性、延性に有効な元素であるが高価であ
る。このために、例えば特開平2−310037号公報
に開示されているように、ニッケルを含有しないフェラ
イト系ステンレス鋼を使用し、それに有機被膜を形成さ
せることが提案されている。しかし、フェライト系ステ
ンレス鋼は非磁性でないことや耐食性などにおいて、時
計用外装部品として使用するにはなお問題があった。
を解決するものであって、マンガンを含有するオーステ
ナイト鋼あるいはその微粉末に、選択した成分を含有さ
せることによって、非磁性でかつ耐食性を有し、さらに
加工性、切削性の優れた時計用外装部品材料、および非
磁性で耐食性の優れた時計用外装部品を提供することに
ある。
分系と熱処理条件の製造実験を行い、該時計用外装部品
として非磁性で優れた耐食性を確保することができるマ
ンガンを含有する成分系と、耐食性および磁気特性につ
いて検討を行った結果、これらの関係について解明し、
安定して良好な製品の製造を可能ならしめるように該成
分の選択によって上記問題が有利に解決できることを見
出だした。
たフェライト量(Fcal%)およびマルテンサイト量
(Mcal%)の指標値をFcal%<0%、Mcal
%<0%とするクロム−マンガン系オーステナイト鋼を
生地としたことを特徴とする時計外装部品用材料および
時計外装部品である。
−6 Mcal%=−0.82Creq−Nieq+33 ここで、Creq=Cr%+1.5Si%+Mo% Nieq=Ni%+30C%+30N%+0.5Mn%
+0.5Cu% なお、本発明における材料とは前記成分から成る非磁性
オーステナイト鋼を溶製して、連続鋳造または造塊した
鋳造品を熱間圧延し、または熱間圧延と冷間圧延した板
状またはコイル状にしたもの、および該オーステナイト
溶鋼を水アトマイズ法またはガスアトマイズ法などによ
り20μm以下の粉末状にしたものを称する。また時計
用外装品は前記粉末から射出成形したものをも含むもの
である。
オーステナイト鋼について製造実験を行い、試験片につ
いて人口汗浸漬による腐食試験および磁気特性調査を行
った結果、該時計用外装部品として非磁性で優れた耐食
性を確保することができるニッケルを含有しない鋼が開
発でき、安定して良好な該時計外装用部品の製造を可能
ならしめることができた。
いて、必要な成分調整を行い、フェライト量(F値)お
よびマルテンサイト量(M値)が零以下である実施例1
〜5は何れも非磁性を示し、また耐食性(人口汗浸漬試
験結果)も良好であった。しかし、Mn含有量の低い比
較例6は耐食性は良好であるが、F値およびM値が高
く、非磁性とはならず、時計外装部品用材料としては不
向である。また、F値、M値共に低い比較例7は非磁性
であるが、Mo,Cuが低い成分構成であるため、耐食
性に劣る。比較例8はCr含有量が高くF値がプラスと
なっている磁性鋼であり、かつMo,Cu等が低いので
耐食性も十分ではない。比較例9,10はいずれも耐食
性は良好であるが、共に磁性を有し時計外層部品として
適していない。図1はNieqとCreqとの関係でフ
ェライト量(Fcal)と、マルテンサイト量(Mca
l)が<0の領域を示すものであり、この図に表1の試
料をプロットしている。
しフェライト≦0%、マルテンサイト≦0%で時計用外
装部品として使用可能な非磁性となり、そして成分とし
ては、重量%で炭素含有量0.01〜0.6%、シリコ
ン含有量0.05〜2.0%、マンガン含有量9.0〜
20.0%、クロム含有量12.0〜20.0%、モリ
ブデン含有量1.0〜5.0%、銅含有量0.05〜
4.0%、窒素含有量0.1〜0.5%、また硫黄含有
量0.005〜0.4%および錫含有量0.05〜2.
0%の一種または二種、残部を鉄と不可避不純物から構
成された成分系であり、望ましくは炭素0.03〜0.
3%、シリコン0.2〜1%、マンガン11〜15%、
クロム13〜18%、モリブデン1.5〜3.0%、銅
0.1〜3%、窒素0.2〜0.4%、またはさらに硫
黄0.05〜0.3%および錫0.2〜1.5%の一種
または二種添加されたオーステナイト鋼にすることによ
り切削性が良好で、人口汗に対する耐食性は一般的なニ
ッケルを含有するオーステナイト系ステンレス鋼のSU
S304よりも良好なことがわかった。
オーステナイト系ステンレス鋼のようにオーステナイト
鋼にする必要があるが、そのためには図1に示したよう
に、Weld.J.,52(1973),p281に示
されたW.T.DeLongの提案した鋼の成分とフェ
ライト量の関係図を参考にし修正数式化した(1)、
(2)式で示されるフェライト量(Fcal%)および
マルテンサイト量(Mcal)の値を零以下にする必要
がある。以下含有量は全て重量%とする。 Fcal%=1.38Creq−Nieq−6・・・・・・・・・(1) Mcal%=−0.82Creq−Nieq+33・・・・・・・(2) ここで Creq=Cr%+1.5Si%+Mo% Nieq=Ni%+30C%+30N%+0.5Mn%
+0.5Cu% すなわち、ニッケル、炭素、窒素、マンガン、銅はオー
ステナイト安定化元素であり含有量は高い方が良く、ク
ロム、シリコン、モリブデンはフェライト安定元素であ
るため低くした方がよいが、上記成分のうちオーステナ
イト生成元素として、高価なニッケルの代わりに、炭
素、マンガン、窒素、銅を高める必要がある。
明する。炭素は極めて優れたオーステナイト形成元素で
あり、かつ強度を付与する元素であり、その効果を得る
ために下限を0.01%とする必要があるが、高い場合
クロム炭化物が生成され、その結果その隣接部にクロム
量が低くなるクロム欠乏層が生成され耐食性が悪くなる
ため上限は0.6%とし、0.01〜0.6%、望まし
くは0.03〜0.3%とした。
て安定化させるとともに加工硬化能と耐食性を付与する
元素であり、その効果を得るために下限を0.1%とす
る必要があるが、高過ぎた場合、窒化物の生成や溶湯か
らの凝固時に過飽和による窒素ガス気泡の生成の問題が
あるため上限を0.5%とし0.1〜0.5%、望まし
くは0.2〜0.4%とした。
ために高い方がよく、その効果を得るために下限を9%
とする必要があるが、マンガン15%以上ではクロム1
5%以上になると衝撃値や耐食性を低下させるσ相が生
成されるので上限は20%とし、9〜20%、望ましく
は11〜15%とした。また銅添加はオーステナイト生
成元素であり耐食性も向上し、その効果を得るために下
限は0.05%必要であるが、高すぎると脆化するので
上限は4%とし、0.05〜4%、望ましくは0.1〜
3%とした。
を保つ最低限として12%が必要であるが、フェライト
形成元素のため上限は20%、望ましくは13〜18%
とした。モリブデンは不動態を非常に安定化し耐食性を
向上させるため下限を1%とする必要があるが、高すぎ
るとフェライトを生成し非磁性が不安定となるととも
に、σ相が析出し衝撃値や耐食性を低下させる危険性が
あるため、モリブデンの必要十分な量として1〜5%、
望ましくは1.5〜3.0%とした。
固過程でCOガスの発生のないように0.05以上必要
であるが、フェライト形成元素のため上限は2%とし、
0.05〜2%、望ましくは0.2〜1%とした。アル
ミニュームは脱酸として0.02%以下を添加すること
もできる。
な機械加工成形法や粉末成形法で行われる。特に、精密
な機械仕上げ加工が必要な時計外装用部品において良好
な切削性が要求されるが、切削性が改善される元素の添
加は一般的に加工性を悪くする。しかし、粉末成形法は
圧延や鍛造加工はないので切削性を改善した高硫黄含有
鋼や高錫含有鋼など加工性が悪い成分系においてでも該
問題はなく良好な製品が歩留よく製造できる。この粉末
成形用材料の粒径は細い方が成形後の製品密度が高くな
り良好であるが、該密度を96%以上にするために、該
平均粒径は20μm以下にする必要がある。
び錫含有量0.05〜2.0%、望ましくは硫黄0.0
5〜0.3%および錫0.2〜1.5%の一種または二
種を添加することによって、切削性が大きく改良され
た。しかし、硫黄または錫の添加は鋼の靭性など機械的
性質を悪くするため上記範囲を超える添加はよくない。
耐食性のある非磁性のマンガンを含有するオーステナイ
ト鋼あるいは該粉末からなる時計外装部品用材料および
これらの材料を加工、成形して得られる時計用外装部
品、射出成形部品が安定して製造することが可能になっ
た。
含有量0.24%、マンガン含有量13.5%、クロム
含有量16.4%、モリブデン含有量1.8%、窒素含
有量0.30%、銅含有量1.60%、硫黄含有量0.
008%、残部を鉄と不可避不純物から構成され、フェ
ライト量<0%となった成分の溶鋼をAOD炉で溶製し
た。ニッケルは不純物として0.07%であった。その
溶鋼を造塊した鋼塊から、鍛造と熱間圧延によって製造
された熱延鋼板から時計ケース、バンド裏蓋部品を制作
し、常温と50℃の人口汗に20〜48時間浸漬し腐食
および変色の発生を調査した結果、オーステナイト系ス
テンレス鋼のSUS304Lより良好でSUS316L
並であり、透磁率計による磁気特性調査結果、非磁性で
あり、時計用外装部品材として十分使用可能なことがわ
かった。
%、シリコン含有量0.32%、マンガン含有量14.
1%、クロム含有量17.2%、モリブデン含有量2.
4%、銅2.2%、窒素含有量0.32%、さらに切削
性を良くするために硫黄含有量0.23%添加し、残部
を鉄と不可避不純物から構成されるフェライト量<0%
となったマンガン系オーステナイト溶鋼を溶製し、その
注入流に1500kg/cm2 の高圧水アトマイズにより噴
霧急冷し、平均粒径6μmの微粉末を製造した後、射出
成形法によって時計用バンド部品を製造した。時計ケー
ス、バンド裏蓋部品を製作し、常温と50℃の人口汗に
20〜48時間浸漬し腐食および変色の発生を調査した
結果、オーステナイト系ステンレス鋼のSUS316L
並であり、非磁性部品の製造ができた。
%、シリコン含有量0.35%、マンガン含有量14.
5%、クロム含有量15.3%、モリブデン含有量2.
1%、窒素含有量0.32%、銅含有量0.15%、硫
黄含有量0.31%、残部を鉄と不可避不純物から構成
されるフェライト量が0%以下のマンガン−クロム系オ
ーステナイト溶鋼を溶製し、1500kg/cm2 高圧水に
より平均粒径6μmの微粉末を製造した後、射出成形法
によって時計用バンド部品を製造した。その部品を常温
と50℃の人口汗に20〜48時間浸漬し腐食および変
色の発生を調査した結果、オーステナイト系ステンレス
鋼のSUS316L並であり、非磁性部品の製造ができ
た。
%、実施例5では硫黄含有量0.23%および錫含有量
0.6%添加した場合について、実施例3と同じ方法で
時計外装用部品を製造した結果、実施例3と同様の結果
が得られた。また、比較例6〜10はFcal%及び/
又はMcal%の値が正の値となった場合で図1に×印
しで示したように非磁性とならなかったものであり、比
較例7と8はMo<1.0%,Cu<0.05%であっ
て本発明の範囲外であり、耐食性が不良となった例であ
る。
材料およびその部品や腕時計はマンガンを含有するオー
ステナイト鋼であり、非磁性で耐食性、被削性に優れ、
アレルギー感作性を保持する人物でも皮膚炎およびかぶ
れを起こすことがなくなる効果を発揮する。
Mcal<0となる領域を示す図である。
Claims (4)
- 【請求項1】 重量%で 炭素含有量:0.01〜0.6%、 シリコン含有量:0.05〜2.0%、 マンガン含有量:9.0〜20.0%、 クロム含有量:12.0〜20.0%、 モリブデン含有量:1.0〜5.0%、 銅含有量:0.1〜4.0%、 窒素含有量:0.1〜0.5%、 さらに 硫黄含有量:0.005〜0.4%および 錫含有量:0.05〜2.0%の一種または二種、 残部を鉄と不可避不純物から構成され、下式により求め
たフェライト量(Fcal%)<0%、マルテンサイト
量(Mcal%)<0%とするクロム−マンガン系オー
ステナイト鋼を生地としたことを特徴とする時計外装部
品用材料。 Fcal%=1.38Creq−Nieq−6 Mcal%=−0.82Creq−Nieq+33 ここで、Creq=Cr%+1.5Si%+Mo% Nieq=Ni%+30C%+30N%+0.5Mn%
+0.5Cu% - 【請求項2】 請求項1記載の組成よりなるクロム−マ
ンガン系オーステナイト鋼を生地としたことを特徴とす
る時計外装部品。 - 【請求項3】 請求項1或いは2記載の科学成分を有す
るオーステナイト鋼の溶湯より平均粒径が20μm以下
の微粉末にしたことを特徴とする時計外装部品成形用微
粉末材料。 - 【請求項4】 請求項3の微粉末から射出成形によって
製造されたことを特徴とする時計用外装部品。
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Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP30838493A Expired - Fee Related JP3486936B2 (ja) | 1993-12-08 | 1993-12-08 | 時計外装部品用材料および時計用外装部品 |
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EP3739076A1 (fr) * | 2019-05-16 | 2020-11-18 | The Swatch Group Research and Development Ltd | Composition de poudre d'acier inoxydable austenitique sans nickel et piece realisee par frittage au moyen de cette poudre |
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- 1993-12-08 JP JP30838493A patent/JP3486936B2/ja not_active Expired - Fee Related
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