JP3486356B2 - 振動抑制用ダンパ - Google Patents

振動抑制用ダンパ

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、鉄道車両の走行に
おいて発生する車体の横揺れを抑制し、乗り心地を向上
させるためのダンパに関する。
【0002】
【従来の技術】鉄道車両では、一般に台車と車体の間に
空気バネが設けられ、台車からの振動を緩和して乗り心
地を良くしているが、空気バネは振動を減衰させること
ができないので、振動が持続したり、外乱に対して共振
する問題がある。そこで、この空気ばねの横方向振動を
減衰させるために台車と車体間にダンパが設けられてい
る。
【0003】このダンパは、種々のものが使用されてい
るが、横方向振動の程度によって、制振度合いを変動可
能にしたいわゆるセミアクティブダンパが知られてお
り、例えば、特開平9−301164号公報に記載され
ている。このセミアクティブダンパの構成を図で説明
する。
【0004】ダンパ1は、シリンダ3と油タンク7およ
びシリンダ3のロッド側室6aとヘッド側室4aからそ
れぞれ油タンク7へ連通する油圧回路から構成されてい
る。シリンダ3は、ピストンロッド6の末端が台車に、
シリンダヘッド4は車体に固定されている(もしくは、
その逆向きに取り付けられる場合もある)。そしてシリ
ンダ3のヘッド側室4aは、ピストン5に設けられたチ
ェック弁5aを介してロッド側室6aと連通されてい
る。
【0005】油圧回路は、ヘッド側室4aはチェック弁
8を介して油タンク7に接続され、ロッド側室6aは流
路19からオリフィス55または高速電磁弁51〜54
を介して、流路20から油タンク7へ還流するように接
続されている。ピストンロッド6の縮小時は、ヘッド側
室4aのオイルがチェック弁5aを通ってロッド側室6
aに流れ、さらに流路19へ送られる。また、ピストン
ロッド6の伸長時は、ヘッド側室4aが負圧になり油タ
ンク7からチェック弁8を介してオイルが吸入されると
ともに、ロッド側室6aのオイルが流路19へ排出され
る。
【0006】ピストンロッド6の伸縮によって流路19
に送られたオイルは、オリフィス55または高速電磁弁
51〜54を介して流路20から油タンク7へ還流され
るが、オンロード(ダンパに減衰力を発生させる)の場
合は、高速電磁弁51〜53のソレノイドのON,OF
Fが適宜組み合わせて開閉され、オリフィス55〜57
を通過させてオリフィスの絞り効果による減衰力を発生
させる。なお、オリフィス56、57の径はオリフィス
55より大きく設定されている。
【0007】また、高速電磁弁54を介して流路20へ
オイルを還流させるアンロード(ダンパに減衰力を発生
させない)経路や、無通電状態(フェイル時ともいう)
においてオリフィス16を介して流路20へオイルを還
流させるフェイル用流路が備えられている。
【0008】ダンパ定数は、車体に設けた左右方向の加
速度を検知する加速度検出手段から、車体4の左右方向
の速度を算出して制御入力信号とし、一方、ダンパのピ
ストンロッド6の伸縮速度を変位検出手段の微分演算に
て検出し、該制御入力信号とからダンパ定数を設定して
いる。
【0009】この変位検出手段は、ピストンロッド6の
側面に、軸方向に等間隔にて埋めこまれた磁性体ビット
60と、磁性体ビット60に対向して配置された磁気セ
ンサ61が設けられている。そしてピストンロッド6が
伸縮すると、磁気センサ61が磁性体ビット60をカウ
ントし、所定サンプリング時間内の変位値からピストン
速度を出力するようにされている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、こうし
た従来のセミアクティブダンパには、車体の多様な振動
状態に対応して制振力をきめ細かく与えるために制振力
を多段にしており、高速電磁弁を多数必要とし、油圧回
路の構成が複雑となっているばかりでなく、変位検出手
段の磁気センサがシリンダ外に設けているためセンサ長
分ピストンロッドを長くしなければならないなどダンパ
の重量が大きくなっている。とくに、車体の振動状態に
即応してリアルタイムに的確な制振力を作動させるため
には、ピストンロッドの伸縮速度を正確に把握して迅速
に処理し対応する高速電磁弁を作動させる必要があり、
高価なものとなっている割りには、制御力が制振対象の
振動に対して不十分である場合に、ON−OFF的に制
御力を変化させた場合と比較して効果に大差なく、また
複雑な制御演算を高速で処理する必要があるため制御装
置の発熱量が大きく、耐久性を低下させる要因となって
いる。さらに、車体の振動状態を検知するセンサが故障
した場合には、最小の制振力が選定されるため、極端に
乗り心地が悪くなってしまうという問題もあった。
【0011】そこで、本発明は、上記問題点を解消し、
コンパクトで耐久性のある鉄道車両の振動抑制用ダンパ
を提供することを目的とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明の振動抑制用ダンパでは次の手段を採った。
即ち、シリンダのヘッド側室からロッド側室へ連通する
チェック弁をピストンに設け、ピストンロッドの伸長に
ともなって油タンクからヘッド側室へ連通するチェック
弁をヘッド側壁に設け、ロッド側室から油タンクへ複数
の流路を備えた鉄道車両の台車と車体間に連結される振
動抑制用ダンパにおいて、該ロッド側室から油タンクへ
の流路をオンロード時とアンロード時の2経路とし、該
2経路の流路を選定するため、該ヘッド側壁に設けたチ
ェック弁にチェック弁の動作を検知してON・OFF信
号を制御装置へ出力する近接スイッチを付設したことを
特徴としている。
【0013】この発明のダンパは、能動的に力を発生さ
せて振動を押さえるアクティブダンパではなく、振動状
態に対して適応的にこれを減衰させることにより効率良
くエネルギを散逸させる、いわゆるセミアクティブダン
パである。また、ダンパのヘッド側室の断面積は、ピス
トンロッド径の断面積の2倍とし、ピストンロッドが伸
びた時と縮んだ時でロッド側室から排出されるオイルの
量が同一になるようにして、制御系を簡素にするのが一
般的である。
【0014】本発明による振動抑制用ダンパは、上記従
来例のようにロッド側室から油タンクへの流路を、オン
ロード時に車体の加速度とダンパのシリンダの伸縮速度
から複数の径の異なるオリフィスの中から最適なものを
選択するものとは異なり、オンロードかアンロードの2
段切換えである。
【0015】そして、オンロードかアンロードかの判断
は、シリンダのヘッド側壁に設けられている油タンクへ
連通するチェック弁の動作を近接スイッチで検知したO
N・OFF信号を使用することを特徴としている。即
ち、ヘッド側壁のチェック弁の動作を近接スイッチで
知することによって、ヘッド側室が圧力のある状態か負
圧もしくはゼロ近傍の状態であるかを判断してピストン
ロッドが伸びたか縮んだかを間接的に検知しているので
ある。
【0016】しかし、オンロードかアンロードかの判断
をこのON・OFF信号のみによっている訳ではない。
ピストンロッドの伸縮速度の検知は必要としないが、車
体の加速度の情報は必要である。なお、チェック弁は開
閉の動作が近接スイッチで検知できるものであればよ
く、特に限定しないが、請求項2に記載のように、ヘッ
ド側壁のチェック弁はヘッド側壁に設けた複数の通孔を
開閉する塞板を備えたものとし、通孔の一つに近接スイ
ッチを埋設すれば、さらにダンパをコンパクトにするこ
とができる
【0017】
【0018】
【発明の実施の形態】以下本発明の振動抑制用ダンパの
実施形態を図面に基づいて説明する。図1〜図3は
発明の実施形態例の一例を示す図で、シリンダ3の構成
は、上記図で説明した従来例と同じであり、符号は同
一にしてある。
【0019】即ち、シリンダ3は、ピストンロッド6の
末端が台車に、シリンダヘッド4は車体に固定されてい
る(逆向きにしてもよい)。そしてシリンダ3のヘッド
側室4aは、ピストン5に設けたチェック弁5aを介し
てロッド側室6aと連通されている。なお、ヘッド側室
4aの断面積はピストンロッド6の断面積の2倍に設定
され、ピストンロッド6の伸長時と圧縮時のストローク
に対してシリンダ3から排出されるオイル量は同一とな
っている。
【0020】そして、ヘッド側室4aは流路9によって
油タンク7に接続され、この流路9には油タンク7から
ヘッド側室4aへ連通するチェック弁8とこのチェック
弁8の動作を検知する近接スイッチ37が設けられてい
る。一方、ロッド側室6aは流路19からフェールセー
フ弁14を介して流路21のオリフィス17を通って流
路20から油タンク7へ還流するように接続されてい
る。また、流路21にはオリフィス17の手前でバイパ
スして流路18から流路20に連通する分岐流路13が
設けられており、この分岐流路13には、高速電磁弁1
0の切換え操作によって開閉されるシーケンスアンロー
ド弁15が設けられている。なお、オリフィス16はオ
リフィス17に比べて大きな流路となっている。
【0021】流路9に設けられている近接スイッチ37
は、高速電磁弁10の切換制御の判断要素の一つの情報
であるピストンロッド6aの伸縮を検出するためのもの
で、ヘッド側室4aが圧力のある状態か負圧の状態であ
るかをチェック弁8の動作を検知することによって判断
している。この具体的な構成を図2および図3で説明す
る。シリンダ3の外周には油タンク7が形成され、ヘッ
ド側室4aのヘッド側壁30には、チェック弁8と近接
スイッチ37が一体に付設されている。
【0022】ヘッド側壁30には複数の通孔30aが設
けられており、この通孔30aは流路9によって油タン
ク7と連通されている。そして、通孔30aの一つに
接スイッチ37が埋設されている。
【0023】ヘッド側壁30には上記通孔30aを開閉
する塞板32とバネ33とバネ押さえ34がスナップリ
ング35によって組み込まれており、チェック弁8を構
成している。なお、塞板32とバネ押さえ34にはその
中央部に孔が設けられている。
【0024】このように構成されているので、ピストン
ロッド6aが縮み側へ移動したときは、ヘッド側壁30
の通孔30aは塞板32によって塞がれるので油タンク
7との流路9は遮断され、ヘッド側室4aは高圧にな
る。そして、ヘッド側室4aのオイルはピストン5に付
設したチェック弁5aを通ってロッド側室6aへ流れ
る。このとき、近接スイッチ37は塞板32の変位を検
知するので、ONの信号を制御装置へ出力する。
【0025】一方、ピストンロッド6aが伸び側へ移動
したときは、ヘッド側室4aは負圧になり塞板32はバ
ネ押さえ34側へ引き込まれるので、通孔30aは開放
され油タンク7から通孔30aを通って塞板32の中央
部の孔およびバネ押さえの孔を通ってオイルが流入す
る。
【0026】そして、このとき、塞板32は当たり面3
0bから離れるので近接スイッチ37はOFFとなる。
図1に戻り、この油圧回路において、制御装置からオン
ロードの信号が出された場合は、高速電磁弁10のソレ
ノイドSOL1がOFFの状態となり、シーケンスアン
ロード弁15は遮断されるので、ロッド側室6aのオイ
ルは流路19を通ってフェールセーフ弁14を介して流
路21からオリフィス17を通って流路20へと還流す
る。したがって、流路抵抗が大きく、ダンパの制振力も
大きくなる。そして、ピストンロッド6の速度が速くロ
ッド側室6aからの吐出流量が大きい場合は高圧リリー
フ弁11が作動する。
【0027】一方、制御装置からアンロードの信号が出
された場合は、高速電磁弁10のソレノイドSOL1が
ONの状態となり、シーケンスアンロード弁15が開か
れるので、ロッド側室6aのオイルは流路19を通っ
て、流路21から分岐流路13を通り、シーケンスアン
ロード弁15を通って流路18から流路20へと還流す
る。このとき、上記の流路21からオリフィス17を通
って流路20へと還流するものもあるが、殆どは流路1
8を通ることになる。
【0028】また、無通電状態になった場合はフェール
セーフ弁14のソレノイドSOL2がOFFになるの
で、ロッド側室6aのオイルは流路19から、フェール
セーフ弁14を通りオリフィス16を通って流路20へ
と還流する。ロッド側室6aからの吐出流量が大きい場
合はリリーフ弁12が作動する。
【0029】上記説明したピストンロッド6の伸縮の検
出信号は、別途検出した車体の左右方向の加速度の検出
信号と併せて処理され高速電磁弁10の切換えを判断し
SOL1へONまたはOFFの信号を出力する。これを
で説明する。ピストンロッド6の伸縮の検出信号
は、上記したように近接スイッチ37から送られてきた
信号を伸縮判断部76で制御信号(正負符号付き)に直
している。そして、車体の加速度の検出信号を処理した
入力速度信号とから、ダンパに減衰力を発生させるか否
かをアンロード・オンロード判定部77で判定し、ダン
パに設けられた油圧回路の有する高速電磁弁10のソレ
ノイドSOL1へ指令するソレノイドドライバ78へ信
号が出力される。
【0030】ここで、伸縮判断部76から出力される信
号は、1か0のビット信号で、例えばピストンロッド6
が伸びた場合は1、縮んだ場合は0として出力される。
一方、車体の左右方向の加速度は、車体に設けられたG
センサ70で検出され、出力された加速度信号をGアン
プ71で増幅し、A/D変換器72でデジタル信号に変
換してから、補正部73でこの出力に重力加速度gを乗
して実加速度とし、積分部74でこの実加速度を積分し
て車体の左右方向の速度を算出する。そして、波形フィ
ルタ処理部75で不要な周波成分をカットされたものが
アンロード・オンロード判定部77に出力される。
【0031】アンロード・オンロード判定部77では、
算出された速度に所定の制御ゲイン=−Kを乗して制御
入力信号としている。なお、制御入力信号は、1か0の
ビット信号に変換され、例えば制御入力信号が負であれ
ば0、正であれば1で速度の絶対値は除かれる。
【0032】ダンパはその性質上、ピストンロッド6の
移動方向と同じ方向には減衰力を発生できないので、制
御入力速度信号の方向(ビット)とピストンロッド6の
移動の方向(ビット)が等しい場合には、アンロードの
判定がなされ、ビットが異なる場合には、オンロードの
判定がなされる。
【0033】
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
【発明の効果】以上説明したように、本発明はロッド側
室から油タンクへの流路をオンロード時とアンロード時
の2経路とし、該2経路の流路を選定するため、該ヘッ
ド側壁に設けたチェック弁にチェック弁の動作を検知し
てON・OFF信号を制御装置へ出力する近接スイッチ
を付設したので、簡便かつ小型で耐久性があり、ダンパ
をコンパクトにできるばかりでなく制御系も極めて簡素
化される。したがって制御電力も小さいので、電源部分
を小さくでき制御装置全体を小型化できる。とくに制御
装置の小ボード化によりダンパ本体に制御装置を一体に
設置できるという効果がある。
【0042】さらに、従来加速度センサまたはピストン
ロッドの速度センサが故障した場合は、最小のオンロー
ド選択による制振が行われるため、乗り心地が極端に悪
くなってしまう可能性があったが、本発明では、オンロ
ードの場合には常に最大値が選択されるため、このよう
な問題が起こらないといった効果ある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態としての振動抑制用ダンパ
の構成を示す回路図である。
【図2】同ダンパのピストンロッドの伸縮を検知する実
形態を示す正面図である。
【図3】図2のヘッド側壁30の詳細を示す正面図であ
る。
【図4】同 ダンパの制振制御の流れを示すブロック図
である
【図5】従来の振動抑制用ダンパを例示するブロック図
である
【符号の説明】
1…ダンパ 3…シリンダ 4…シリンダヘッド 4a…ヘッド側室 5…ピストン 5a…チェック弁 6…ピストンロッド 6a…ロッド側室 7…油タンク 8…チェック弁 9…流路 10…高速電磁弁 11…高圧リリーフ弁 12…リリーフ弁 13…分岐流路 14…フェイルセーフ弁 15…シーケンスアンロード弁 16、17…オリフィス 18、19、20、21…流路 25、26…取付金具 30…ヘッド側壁 30a…通孔 32…塞板 33…バネ 34…バネ押さえ 35…スナップリング 37…近接スイッチ 51、52…高速電磁弁 53…高速電磁弁(3方弁) 54…高速電磁弁 55、56、57…オリフィス 60…磁性体ビット 61…磁気センサ 70…Gセンサ 71…Gアンプ 72…A/D変換器 73…補正部 74…積分部 75…波形フィルタ処理部 76…伸縮判断部 77…アンロード・オンロード判定部 78…ソレノイドドライバ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B61F 5/24 B61F 5/12

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】シリンダのヘッド側室からロッド側室へ連
    通するチェック弁をピストンに設け、ピストンロッドの
    伸長にともなって油タンクからヘッド側室へ連通するチ
    ェック弁をヘッド側壁に設け、ロッド側室から油タンク
    へ複数の流路を備えた鉄道車両の台車と車体間に連結さ
    れる振動抑制用ダンパにおいて、該ロッド側室から油タ
    ンクへの流路をオンロード時とアンロード時の2経路と
    し、該2経路の流路を選定するため、該ヘッド側壁に
    けたチェック弁にチェック弁の動作を検知してON・O
    FF信号を制御装置へ出力する近接スイッチを付設した
    ことを特徴とする振動抑制用ダンパ。
  2. 【請求項2】前記ヘッド側壁のチェック弁はヘッド側壁
    に設けた複数の通孔を開閉する塞板を備えたものとし、
    該通孔の一つに前記近接スイッチを埋設したことを特徴
    とする請求項1記載の振動抑制用ダンパ。
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