JP3480851B2 - ホットメルト型インクジェット・プリンターで印字された被記録媒体の再生方法 - Google Patents

ホットメルト型インクジェット・プリンターで印字された被記録媒体の再生方法

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JP3480851B2 JP28329393A JP28329393A JP3480851B2 JP 3480851 B2 JP3480851 B2 JP 3480851B2 JP 28329393 A JP28329393 A JP 28329393A JP 28329393 A JP28329393 A JP 28329393A JP 3480851 B2 JP3480851 B2 JP 3480851B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はホットメルト型インクジ
ェット・プリンターで印字された被記録媒体を再生する
方法、再生するために用いる処理液、再生を容易にする
ためのインク処方に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、普通紙への印字が可能なこと、比
較的安価で印字を行うためのヘッドの製造が可能なこ
と、熱転写記録のインクリボンのように不必要な消耗品
を使用することがなく、ランニング・コストが安いこと
などの理由から、インクジェット・プリンターの市場が
大きくなってきている。性能面からもヘッドのマルチ・
チャンネル化、駆動周波数の向上などの検討がなされ高
速印字が可能となってきている。一方、一般に被記録媒
体として用いられる紙は木材より得られるパルプを原料
とするため、紙を大量に消費することは、森林の伐採、
地球環境の悪化につながることになり、近年、社会問題
となってきつつある。
【0003】また、オーバーヘッド・プロジェクター
(OHP)用の透明シートを被記録媒体として用いる時
には、通常、ポリエステル・フィルム等のプラスチック
・フィルムがベース材料として用いられる。フィルムの
原材料はほとんど石油等の化石材料から来るものであ
り、この場合にも資源の有効活用が望まれている。フィ
ルムの場合には、特に資源の有効活用の面ばかりでな
く、プラスチック・フィルムの多くが生物分解性のない
ものであり、これらが海洋に浮遊するなどのゴミとして
環境破壊の原因となりうることが問題となっている。こ
れらの問題に対処するため、不要になったこれらの被記
録媒体を回収し、一旦、パルプの状態まで叩解したり、
再溶融したりして再利用する方法が行われている。しか
しながら、この方法では再生のためのエネルギー効率が
悪く、再生された製品は、新しい原料を用いるよりも割
高になってしまうという欠点がある。従来より一般のイ
ンクジェット・プリンターに用いられているインクは水
を主成分とする水性インクである。水性インクを用いて
印字した被記録媒体を再生するには、上記の方法による
ことが一般的であり、叩解、再溶融時に漂白剤で、イン
ク中の染料を分解、脱色せしめる。
【0004】上記の問題を解決する方法として公開特許
平成5−179188号公報には、色材としてヘテロポ
リ酸又はヘテロポリ酸塩を用いた水で画像が完全に溶出
するインクが開示されている。しかし、このインクでは
白色のインクしか得られず、着色した特定の紙を用いな
ければならないという欠点がある。また、公開特許平成
4−325573号公報には、キサンテン系染料と平均
分子量が10,000〜2,200,000のポリアル
キレングリコールと水よりなる消色性インクが開示され
ている。このインクでは印字後の消去は可能となる反
面、保存が必要な画像の安定性も悪くなってしまうとい
う欠点がある。公開特許平成1−101576号公報、
公開特許平成1−101577号公報には、電子写真方
式により形成されたトナー像を、トナーを溶解する溶剤
中に浸漬し、超音波振動を印加し、溶剤に溶解したトナ
ーを紙面あるいはフィルム面より遊離せしめて画像が形
成された用紙を再生する方法が開示されている。この方
法では溶剤としてアセトン/トリクレン、メチルイソブ
チルケトンを用いているが、これらの溶剤を用いること
は、発火、毒性等の問題があり、安全衛生上好ましくな
い。また、この場合、トナーが溶剤に溶解するため、溶
剤が急速に汚れてしまうため大量の溶剤を必要とするこ
とになる。公開特許平成1−297294号公報には、
プラスチック、金属、液浸透性の悪い紙あるいはセラミ
ックス等で被吸収性材料で形成された被記録媒体を使用
し、該被記録媒体上に重ねられた熱溶融性剥離体を介在
させて加熱し、画像を被記録媒体から剥ぎ取る方法が開
示されている。しかし、この方法では被記録媒体とし
て、表面に離型処理を施した特別な用紙を使用しなけれ
ばならないし、また、特別の紙を使用したとしても、従
来のインクジェット記録方法で形成された画像を剥離す
ることは困難であった。
【0005】ホットメルト・インクを用いたインクジェ
ット記録方法は、USP.3,653,932号、US
P.4,390,369号、特開昭55−54368
号、特開昭61−83268号、特開昭62−4877
4号等に常温で固体のインクを液体状態にまで加熱して
吐出するインクジェット記録方法及びそれに用いるイン
クが提案されており、公知の技術である。ホットメルト
・インクジェット記録方法は、水性インクでは画像にじ
みを生じてしまうような普通紙やプラスチックフィル
ム、織布、金属面等非吸収性の部材上でも鮮明な画像を
得ることができることから、近年、注目されている。水
性インクを用いたインクジェット記録方法では、色再現
性の良いカラー画像を得ようとする場合、顔料及びバイ
ンダーを主成分とする水吸収層を表面にコーティングし
た専用紙が用いられるが、このような紙は再生再利用す
るには極めて都合が悪い。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来の上記
問題を解決しようとするものである。すなわち、特別の
被記録媒体を用いることなく普通紙あるいは通常のフィ
ルム上にインクジェット記録方法により形成された画像
を消去し、不要な被記録媒体を再使用できる方法、手段
を提供することである。更に本発明の他の目的は、イン
クジェット記録方法により画像が形成された被記録媒体
の再生を安全で、コストが安くできる方法、手段を提供
することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は本発明者によ
り、インクとして常温で固体の所謂ホットメルト・イン
クを用いてインクジェット記録方法で印字された被記録
媒体が、特定の液体を付与することにより被記録媒体と
インクとの結合力が弱められ、剥離部材を該被記録媒体
と圧接せしめることにより被記録媒体上のインクが剥離
部材側に転写し、再生可能であることを見出すことによ
りなされたものである。すなわち、本発明の構成は、印
字された被記録媒体に剥離液を含浸させた後、剥離部材
を該被記録媒体と圧接せしめ、該被記録媒体上のインク
を該剥離部材に転写せしめ剥離することを特徴とするホ
ットメルト型インクジェット・プリンターで印字された
被記録媒体の再生方法である。
【0008】図1〜4に従って本発明の原理を説明す
る。図1にはホットメルト・インクジェット記録方法に
従って画像2が被記録媒体1上に印字された状態を示し
ている。図2は剥離液容器4の中の剥離液3(被記録媒
体1とインク画像2との結合力を弱めるための液体)に
被記録媒体1を浸漬した状態を示している。次に図3に
示すように、被記録媒体1は、剥離材、例えば天然ゴム
層7を表面に有する剥離ローラー8と加圧ローラー5と
の間に送られ、画像2が剥離材に圧着されると画像2を
形成しているホットメルトインク6が剥離材である天然
ゴム層7に転写され被記録媒体1から剥離される。
【0009】天然ゴム層7の表面に付着したホットメル
トインク6は剥離ローラー8の回転にともなって、ブレ
ード10によって剥離ローラーの表面から掻き取られ、
容器9の中に溜る。この容器9の中のインクを再利用す
ることもできる。画像2を剥離された被記録媒体1は図
4に示すように二つの熱ローラー11の間を通過させて
剥離液を蒸発させ、乾燥し、再生される。本発明におい
て使用される剥離液、剥離材はホットメルト・インクの
処方、被記録媒体の材質が多岐に渡ることにより、それ
らに対応して適切な材料が選択される。
【0010】ホットメルト・インクの主成分となるビー
クル材料としては天然ワックスや種々の合成ワックスが
用いられるが、インク中に使用される染料や他の添加剤
によっても被記録媒体や転写材との付着性が微妙に変化
する。被記録媒体としてはセルロース繊維を主体とした
紙、ポリエステル、アセテート、ポリカーボネート等の
プラスチック・フィルム等が用いられるが、紙において
もセルロース繊維の長さや太さ、表面あるいは内添サイ
ズ剤の種類や量等の紙の組成や構造の変化により被記録
媒体や剥離材との付着性が変化する。しかしながら、発
明者の検討により、剥離液として安全性、コストなどの
点から特に好ましい剥離液は水、エタノール、あるいは
水/エタノールの混合系であり、これらが全成分の70
重量%以上含有されたものであること、更に剥離液に界
面活性剤及び/又はこれらの溶媒に溶解する高分子化合
物を添加することにより、広い範囲のインク組成、被記
録媒体に対応できることが判明した。
【0011】特に通常の紙のように繊維素を主体として
構成された被記録媒体上の画像は、水を主体とした剥離
液によりインク画像と被記録媒体との結合力が著しく弱
められる。プラスチック・フィルムの場合にはエタノー
ルあるいは水とエタノールとの混合溶媒を用いることが
好ましい。これらの剥離液には界面活性剤が0.01〜
20重量%添加されることが好ましく、更に0.01〜
5重量%の範囲で添加することが、特に好ましい。界面
活性剤を添加することによりインクと被記録媒体との結
合力を弱めることができるのは、剥離液の被記録媒体へ
の浸透速度が著しく高まることによるものと推定される
が、添加量が0.01重量%では効果が小さく、20重
量%以上添加した場合には、再生後の被記録媒体の表面
近傍にも界面活性剤が残留し、インクの拡がりやしみこ
み状態が初期のものと変わってしまうという問題を生じ
る。界面活性剤には非常に多くの種類が開示されている
が、一般的に界面活性剤分子は親油性部分と親水性部分
とから構成される。表1に親油性部分、表2に親水性部
分の例を示す。実際に使用される界面活性剤はこれらの
親水性部分と親油性部分との多種の組み合わせが可能で
あり、代表的な例を表1〜表7に示す。
【0012】
【表1】
【0013】
【表2】
【0014】
【表3】
【0015】
【表4】
【0016】
【表5】
【0017】
【表6】
【0018】
【表7】
【0019】本発明においては、剥離液にあるいは剥離
部材に付与する液体に、そのベースとなる液体に溶解す
る高分子化合物を添加することができる。例えば剥離液
が水をベースとするとき水溶性の高分子化合物を添加す
ることができる。本発明に使用できる水溶性高分子化合
物の代表例はベースとなる液体がアルコールであるとき
に用いられる高分子化合物の例としては、ポリビニルピ
ロリドン、アルコール溶解性ポリアミド樹脂、フェノー
ル樹脂、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセル
ロースなどを挙げることができる。これらの高分子化合
物は剥離液に0.1〜20重量%含有させることが好ま
しく、更に0.5〜10重量%含有させることが、特に
好ましい。含有量が0.1重量%以下では後述する効果
が得られにくく、20重量%以上では粘度が高くなりす
ぎ、剥離液の浸透速度が遅くなり充分な剥離効果が得ら
れにくくなる。
【0020】上述の高分子化合物を添加することによ
り、被記録媒体上の画像と剥離部材との間の粘着力を増
すことが可能となり、インク画像をスムーズに被記録媒
体より剥離材側へ転写することが可能となる。また、前
述のようにインク画像と剥離部材との粘着性を上げるた
めに、剥離部材側にこれらの高分子化合物を溶解せしめ
た液を付与することも同様に効果がある。この場合液を
付与した後、溶媒を蒸発せしめて、粘着性を強くするこ
ともできる。また、被記録媒体側に付与する液を2段階
に分け、第1に界面活性剤を含有する液を付与してイン
ク画像と被記録媒体との結合力を弱め、次に高分子化合
物を含有する第2の液を被記録媒体に付与することによ
っても同様に効果があることは明らかである。
【0021】剥離液を被記録媒体に含浸させる方法とし
て、図1では浸漬による例を示したが、溝付きローラ
ー、ねじ溝ローラー、エンボス加工ローラー、キスロー
ラーなどを使用したり、スプレーを使用したり、これら
のローラーをタイミングを合わせて記録媒体に接するこ
とにより、被記録媒体の片面から剥離液を付与したり、
一定面積の被記録媒体に一定量の剥離液が付着するよう
にすることは、粘着力を一定にしたり、後の乾燥条件が
一定になって乾燥を容易にするなどの効果がある。ま
た、剥離時の温度を常温よりも高くしたり、低くしたり
して、インク画像と剥離部材との粘着力を高めることも
できる。
【0022】本発明におけるホットメルト型インクジェ
ット・プリンターで印字された被記録媒体の再生方法に
おける課題は、インクと被記録媒体との組合せによって
は被記録媒体の再生が容易ではない場合がある。この課
題は特定の被記録媒体や特定の組成のインクを使用する
ことにより解決されうるが、被記録媒体として特定のも
のを用いることはユーザーの要求に反するものであり、
特定組成のインクを用いることにより解決することが好
ましい。発明者の鋭意検討の結果、少なくとも分子量2
000以上の熱溶融性高分子化合物がインクに含有され
ている場合、インク中に使用されている色材の50重量
%以上が顔料である場合、印字されたインク画像は被記
録媒体から極めて良好に剥離されることが明らかになっ
た。
【0023】インクに添加することのできる分子量20
00以上の熱溶融性高分子化合物としては、ポリスチレ
ン、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール、ポリエチ
レン、ポリプロピレン、ポリブテン、低分子量の石油樹
脂、スチレン−アクリル共重合体、スチレン−ブタジエ
ン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン
共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル
−酢酸ビニル共重合体、クロトン酸−酢酸ビニル共重合
体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、
ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重
合体、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ
アミド樹脂、α−オレフィン−無水マレイン酸共重合
体、ポリエチルヘキシルアクリレート等のアクリル樹
脂、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、
メトキシセルロース、セルロースアセテートブチレート
等のセルロース樹脂、ポリビニルアルコール、酸化ポリ
エチレン、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレア樹脂、
ポリウレタン樹脂、天然ゴム、塩化ゴム、ポリイソブチ
レン、ポリクロロプレン、ポリイソプレン等のゴム系樹
脂等の例が挙げられる。
【0024】これらの高分子化合物をホットメルト・イ
ンク中に添加することにより本発明の被記録媒体の再生
方法を用いたときの剥離が良好となる理由は、これらの
樹脂の添加によりインク内部の結合力が増すため、剥離
時にインク内部での切断が生じることを防止するため、
被記録媒体上に残留するインクが少なくなったり、なく
なるためと推定される。分子量が2000以下の樹脂を
用いたときには、この結合力を上げる効果が小さくイン
クの被記録媒体上の残留がみられる。これらの高分子化
合物のインクへの添加量は0.01〜25重量%が好ま
しく、特に0.5〜10重量%が好ましい。インクへの
高分子化合物の添加量が少なすぎると前述の改善効果が
なく、高分子化合物の添加量が多すぎるとインクの粘度
が高くなりすぎるなどの理由によりインクのノズルから
の吐出が不安定となってしまう。
【0025】インクのベースとなるビークル材料には、
上記の高分子化合物の他に、従来から用いられている天
然あるいは合成のワックス類を使用することができる。
それらのワックス類としては次のような化合物を挙げる
ことができる。密ロウ、カルナウバ・ワックス、ライス
・ワックス、木ロウ、ホホバ油、鯨ロウ、カンデリラ・
ワックス、ラノリン、モンタン・ワックス、オゾケライ
ト、セレシン、パラフィン・ワックス、マイクロクリス
タリン・ワックス、ペトロラクタムなどの天然ワック
ス。ポリエチレン・ワックスおよびその誘導体、塩素化
炭化水素、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、チ
グリン酸、2−アセトナフトンベヘン酸、12−ヒドロ
キシステアリン酸、ジヒドロキシステアリン酸等の有機
酸、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノー
ル、エイコサノール、ドコサノール、テトラコサノー
ル、ヘキサコサノール、オクタコサノール、9−ドデセ
ン−1−オール、ミリシルアルコール、9−テトラセン
−1−オール、9−ヘキサデセン−1−オール、9−エ
イコセン−1−オール、13−ドコセン−1−オール、
ピネングリコール、ヒノキオール、ブチンジオール、ノ
ナンジオール、イソフタリルアルコール、メシセリン、
テレアフタリルアルコール、ヘキサンジオール、デカン
ジオール、ドデカンジオール、テトラデカンジオール、
ヘキサデカンジオール、ドコサンジオール、テトラコサ
ンジオール、テレビネオール、フェニルグリセリン、エ
イコサンジオール、オクタンジオール、フェニルプロピ
レングリコール等のアルコール類、ベンゾイルアセト
ン、ジアセトベンゼン、ベンゾフェノン、トリコサノ
ン、ヘプタコサノン、ヘプタトリアコンタノン、ヘント
リアコンタノン、ステアロン、ラウロン、ジアニソール
等のケトン類、上記の酸類とグリセリン、ジエチレング
リコール、エチレングリコール等のアルコール類とのエ
ステル類、p−トルエンスルホンアミド、N−エチル−
p−トルエンスルホンアミド、エチルベンゼンスルホン
アミド、ブチルベンゼンスルホンアミド等のスルホンア
ミド化合物等の合成ワックス類。
【0026】これらのワックス材料の中で、本発明にお
ける被記録媒体の再生方法を用いるときに、剥離液とし
てエタノールを主成分とした液を用いるときには、エタ
ノールに溶解しないワックスを用いることが好ましい。
従来のホットメルト・インクでは色材としては、染料を
用いることが大半であったが、本発明の被記録媒体の再
生方法を用いるとき、色材として色材中の50重量%以
上を顔料とすることにより、特に再生後の画像の残りを
少なくすることができる。これはインクに染料を用いた
場合、染料の一部がインクより記録媒体側に拡散し被記
録媒体に染着し、剥離後も被記録媒体上に残りやすいた
めと考えられる。これを防止するために、被記録媒体に
染着しにくい染料を選択したり、染料のインクへの添加
量を少なくしたりすること、剥離液中に染料を酸化ある
いは還元分解するような漂白剤を添加する等の方法も考
えられる。しかし、染料の選択は、インクのビークルへ
の溶解度、色相、耐光性など他の選択条件が支配的にな
り被記録媒体に染着し難い染料を選定することは、困難
を伴う。添加量を少なくすると記録された画像の濃度が
薄くなってしまう。漂白剤を添加しても色材が染料だけ
の場合には充分な漂白効果が得られ難い。
【0027】色材として色材中の50重量%以上を顔料
とすることにより、再生後の被記録媒体上の画像の残り
を少なくすることができるが、用いられる顔料として
は、有機顔料としてアゾ系、フタロシアニン系、アンス
ラキノン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、インジ
ゴ系、チオインジゴ系、ペリノン系、ペリレン系、イソ
インドレノン系、アニリン・ブラック、アゾメチンアゾ
系、レーキ顔料、カーボン・ブラック等が挙げられ、よ
り具体的にはベンジジンイエロー、ハンザイエローG、
ハンザイエロー10G、ベンジジンオレンジ2G、ウォ
ッチングレッド、ピグメントスカーレット3B、ブリリ
アントカーミン6B、ローダミンBレーキ、アリザリン
レーキ、アリザリンレーキローズ、パーマネントレッド
AG、フタロシアニンブルー、メチルバイオレットレー
キなどが挙げられる。無機顔料としては酸化鉄、酸化亜
鉛、酸化チタン、酸化鉛、クロム酸鉛、酸化ジルコニウ
ム、モリブデン酸鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、
オーレオリン、二酸化珪素、バリウムイエロー、紺青、
カドミウムレッド、クロムイエロー、金属粉などが挙げ
られる。
【0028】これらの顔料の中で有機顔料の方がその比
重が小さくインク中の分散安定性に優れること、色調の
選択範囲が広いこと等の点で好ましい。耐光性、色調、
分散安定性から特に好ましいものは、ハンザイエロー
G、ハンザイエロー10G、アリザリンレーキ、アリザ
リンレーキローズ、ローダミンBレーキ、ブリリアント
カーミン6B、フタロシアニンブルー、カーボンブラッ
クである。本発明に使用できる顔料の量はインク組成中
0.2〜20wt%の範囲であるが、より好ましくは
0.3〜8wt%の範囲である。これよりも濃度が小さ
いと得られる画像の濃度が低すぎると、これよりも濃く
すると画像の色調が悪くなる、顔料の分散安定性が悪く
なり、ノズルの目詰まりを生じやすくなるという問題を
生じる。
【0029】色材として顔料だけを使用する必要はな
く、色材中の50重量%未満の範囲で従来よりホットメ
ルト・インクに使用されている染料を使用することがで
きるが、それらの染料としては、 C.I.ソルベント・イエロー 1,2,3,4,5,
6,7,8,9,10,11,12,14,16,1
7,26,27,29,30,39,40,46,4
9,50,51,56,61,80,86,87,8
9,96, C.I.ソルベント・オレンジ 12,23,31,4
3,51,61, C.I.ソルベント・レッド 1,2,3,16,1
7,18,19,20,22,24,25,26,4
0,52,59,60,63,67,68,121, C.I.ソルベント・バイオレット 7,16,17, C.I.ソルベント・ブルー 2,6,11,15,2
0,30,31,32,35,36,55,58,7
1,72, C.I.ソルベント・ブラウン 2,10,15,2
1,22, C.I.ソルベント・ブラック 3,10,11,1
2,13, 等を例示することができる。
【0030】インクには上記の成分の他に必要に応じ
て、例えば2,6−Di−tert−butyl−p−
cresol,2−tert−butyl−4−met
hoxyphenol,3−tert−butyl−4
−methoxyphenol,2,6−Di−ter
t−butyl−4−ethylphenol等の酸化
防止剤や界面活性剤、紫外線吸収剤、熱安定化剤、防腐
剤等の添加物を加えることができる。
【0031】
【実施例】以下、実施例によって、本発明を具体的に説
明する。なお実施例に記載の各成分の量は重量基準であ
る。 実施例1 インクの組成 ローダミンBレーキ顔料 3.0% C.I.ソルベントレッド49 0.5% 密ロウ 48.0% パラフィン・ワックス 10.0% ステアリン酸アミド 36.3% 酢酸ビニル−エチレン共重合体(分子量約30000) 1.8% 2−tert−butyl−4−methoxyphenol 0.38% 3−tert−butyl−4−methoxyphenol 0.02% 上記組成の混合物を130℃に加熱しながらボールミル
で分散・撹拌溶解し、熱時遠心分離を行い、粗大粒子を
除去してホットメルト・インク組成物を得た。公知の圧
電素子を用いたオンディマンド型のホットメルト・イン
クジェット・プリンターを用い、ヘッドが120℃にな
るように加熱して上記のインクをヘッドに充填し、通常
の上質紙(リコーPPC用紙タイプ6200)へ印字を
行った。
【0032】 剥離液の組成 ノニオン系界面活性剤(ポリオキシエチレン2級アルキルエー テル HLB=12.0) 0.5% カルボキシメチルセルロース 1.5% エタノール 5.0% 防腐剤(デヒドロ酢酸ナトリウム塩) 0.5% 水 92.5% この剥離液に先にホットメルト・インクで印字した上質
紙を浸漬した後、この紙に天然ゴムの表面を有するロー
ラーと圧接しながら転がしたところ、紙上のインクはロ
ーラー側に剥離転写され、目視では紙上の残存画像は観
察されなかった。この紙を加熱されたローラーの間を通
過させることにより、乾燥、およびしわの除去をした。
以上の方法により再生された紙に前記のホットメルト・
インクを用いて同様に印字したところ、未使用の紙に印
字したのとは目視では区別できない品質の画像が得られ
た。また、この紙の上の画像を前記と同じ剥離液を用い
て前記と同様に剥離し、乾燥、しわの除去を行ったとこ
ろ前回同様、目視では残存画像は観察できなかった。同
様の印字及び再生操作を15回繰り返した後も、再生後
の紙には画像の残存は観察されず、印字された画像は未
使用の紙に印字したのとは目視では区別できない品質の
ものであった。上記で用いた上質紙に替えて、市販のボ
ンド紙、中質紙を用いて同様の印字・再生操作を行った
が、上記の上質紙と同様に、再生後の紙には残存画像が
観察されず、再生後の紙への印字画像品質は未使用紙と
大差がなかった。
【0033】比較例1 実施例1の組成のホットメルト・インクを用いて、実施
例1と同様に上質紙に印字を行った。この紙を剥離液に
浸漬することなしに、50℃に加熱したゴム・ローラー
を圧接・回転したが画像はまったく剥がれなかった。同
様にして印字し、印字後の紙を剥離液に浸漬することな
しに、室温、60℃、70℃、80℃、90℃、100
℃、110℃と温度を変えたゴム・ローラーを圧接・回
転せしめた。70℃より高温側ではローラーへのインク
の付着は観察されたが、同時に紙の中へもインクが浸透
してしまい紙の上の画像は少し薄くなったものの紙の再
使用はできなかった。また、室温、60℃で圧接した場
合には、50℃と同様に、画像はまったく剥がれなかっ
た。
【0034】比較例2 実施例1の組成のホットメルト・インクを用いて、実施
例1と同様に上質紙に印字を行った。印字された紙をト
ルエンの入ったビーカーに浸漬し、そのビーカーを超音
波洗浄機に入れて超音波を印加したところ、画像の剥離
は観察されたが、トルエンにインク中の染料が溶解し液
が赤く着色した。このように処理した紙を乾燥したとこ
ろ、画像のなかった地肌部まで染料・顔料による着色が
あり、再使用することはできないものであった。
【0035】実施例2 インキの組成 フタロシアニン顔料 2.5% C.I.ソルベントブルー73 0.5% Orient Oil Blue #603(オリエント社) 0.5% カンデリラ・ワックス 55.0% カルナバ・ワックス 8.0% ヘキサデカンジオール 30.9% α−オレフィン−無水マレイン酸共重合体(分子量約 15000) 2.3% 2,6−di−tert−butyl−p−cresol 0.5% 上記組成の混合物を130℃に加熱しながらボールミル
で分散・撹拌溶解し、熱時遠心分離を行い、粗大粒子を
除去してホットメルト・インク組成物を得た。また、こ
のインクを用いて、実施例1と同様に公知の圧電素子を
用いたオンディマンド型のホットメルト・インクジェッ
ト・プリンターを用い、ヘッドが120℃になるように
加熱して上質紙(リコーPPC用紙タイプ6200)へ
印字を行った。剥離液として下記組成の液を調合した。
【0036】 アニオン系界面活性剤(ジ−2−エチルヘキシルスルホコハ ク酸ナトリウム塩) 0.1% ポリビニルアルコール 2.0% 防腐剤(ソルビン酸カリウム塩) 0.3% 水 97.6% この剥離液を図5に示した被記録媒体再生装置の剥離液
容器16に充填した。先にホットメルト・インクで印字
した上質紙の印字面が図5の剥離ローラー25側にくる
ように給紙トレイ21に充填し装置を作動させた。この
装置において剥離液17は給液ローラー26により汲み
上げられ、多量の剥離液が再生処理する被記録媒体に付
着し過ぎるのを防止できるよう、剥離ローラー8に定量
的に転移するように調整されている。印字された紙は給
紙ローラー22、搬送ローラー24により剥離液の付着
した剥離ローラー25に送られ、剥離ローラー上に付着
した剥離液は紙に吸収される。剥離液を吸収した紙は、
加圧ローラー18と剥離ローラー8との圧接部に搬送さ
れ、画像は剥離ローラー側へ転写された。このように処
理された紙は分離爪19により剥離ローラー8から分離
され、乾燥ベルト12を通過し排紙トレー13に排出さ
れる。
【0037】排出された記録紙上のインクは完全に除去
され、目視では紙上の残存画像は観察されなかった。以
上の方法により再生された紙に前記のホットメルト・イ
ンクを用いて同様に印字したところ、未使用の紙に印字
したのとは目視では区別できない品質の画像が得られ
た。また、この再生された紙の上の画像を前記と同じ被
記録媒体再生装置、剥離液を用い、前記と同様に再生操
作を行ったところ前回同様、目視では残存する画像は観
察できなかった。同様の印字及び再生操作を10回繰り
返した後も、再生後の紙には画像の残存は観察されず、
印字された画像は未使用の紙に印字したのとは目視では
区別できない品質のものであった。上記で用いた上質紙
に替えて、市販のボンド紙、中質紙を用いて同様の印字
・再生操作を行ったが、上記の上質紙と同様に、再生後
の紙には残存画像が観察されず、再生後の紙への印字画
像品質は未使用紙と大差がなかった。
【0038】実施例3 下記組成の混合物を実施例1と同様に130℃に加熱し
ながらボールミルで分散・撹拌溶解し、熱時遠心分離を
行い、粗大粒子を除去してホットメルト・インク組成物
を得た。また、このインクを用いて、実施例1と同様
に、公知の圧電素子を用いたオンディマンド型のホット
メルト・インクジェット・プリンターを用い、ヘッドが
120℃になるように加熱して上質紙(リコーPPC用
紙タイプ6200)へ印字を行った。
【0039】 インクの組成 顔料カーボンブラック 4.2% ニグロシン 0.3% ベヘン酸アミド 27.0% 12−ヒドロキシステアリン酸アミド 21.5% パラトルエンスルホンアミド 16.5% ブチルベンゼンスルホンアミド 26.0% ポリアミド(分子量約3500) 4.5% 剥離液の組成 アニオン系界面活性剤(ドデシル硫酸ナトリウム) 0.05% アニオン系界面活性剤(ポリオキシエチレンノニルフェニル エーテル HLB=12) 0.07% エタノール 8.4% 防腐剤(安息香酸カリウム塩) 0.4% 水 91.08% 実施例2と同様にこの剥離液を図5に示した被記録媒体
再生装置の剥離液容器16に充填し、先にホットメルト
・インクで印字した上質紙の再生操作を行った。排出さ
れた記録紙上のインクは完全に除去され、目視では紙上
の残存画像は観察されなかった。以上の方法により再生
された紙に前記のホットメルト・インクを用いて同様に
印字したところ、未使用の紙に印字したのとは目視では
区別できない品質の画像が得られた。また、この再生さ
れた紙の上の画像を前記と同じ被記録媒体再生装置、剥
離液を用い、前記と同様に再生操作を行ったところ前回
同様、目視では残存する画像は観察できなかった。同様
の印字及び再生操作を10回繰り返した後も、再生後の
紙には画像の残存は観察されず、印字された画像は未使
用の紙に印字したのとは目視では区別できない品質のも
のであった。上記で用いた上質紙に替えて、市販のボン
ド紙、中質紙を用いて同様の印字・再生操作を行った
が、上記の上質紙と同様に、再生後の紙には残存画像が
観察されず、再生後の紙への印字画像品質は未使用紙と
大差がなかった。
【0040】参考例1 実施例3において色材として顔料であるカーボンブラッ
クを用いる代りに染料を用い、高分子化合物ポリアミド
を用いない下記の組成のホットメルト・インクを実施例
3と同様に加熱時溶解、濾過することにより得た。
【0041】 インキの組成 C.I.ソルベント・ブラック 2.2% ニグロシン 0.3% ベヘン酸アミド 30.5% 12−ヒドロキシステアリン酸アミド 21.5% パラトルエンスルホンアミド 16.5% ブチルベンゼンスルホンアミド 29.0% このインクを用いて実施例1と同様に、ヘッドが120
℃になるように加熱して上質紙(リコーPPC用紙タイ
プ6200)へ印字を行った。実施例3と同様に実施例
3で用いた剥離液と同じ組成の剥離液を用い、先にホッ
トメルト・インクで印字した上質紙の再生操作を行っ
た。排出された記録紙上には剥離されていないインク画
像部分とほぼ剥離された部分とが混じっており、剥離は
可能であるが安定した剥離状態が得られなかった。ま
た、画像の大部分が剥離された箇所にも一部のインクが
薄く着色して残存しており、これは紙が染料により着色
されたものと推定された。上記で用いた上質紙に替え
て、市販のボンド紙、中質紙を用いて同様の印字・再生
操作を行ったが、上記の上質紙と同様に傾向がみられ、
排出された記録紙上には剥離されていないインク画像部
分とほぼ剥離された部分とが混じっていた。 参考例2 実施例3において色材として顔料であるカーボンブラッ
クを用いる代わりに染料を用いた下記の処方のホットメ
ルト・インクを実施例3と同様に加熱時溶解、濾過する
ことにより得た。
【0042】 インキの組成 C.I.ソルベント・ブラック 2.2% ニグロシン 0.3% ベヘン酸アミド 29.0% 12−ヒドロキシステアリン酸アミド 21.5% パラトルエンスルホンアミド 16.5% ブチルベンゼンスルホンアミド 26.0% ポリアミド(分子量約3500) 4.5% このインクを用いて実施例1と同様に、ヘッドが120
℃になるように加熱して上質紙(リコーPPC用紙タイ
プ6200)へ印字を行った。実施例3と同様に実施例
3で用いた剥離液と同じ組成の剥離液を用い、先にホッ
トメルト・インクで印字した上質紙の再生操作を行っ
た。排出された記録紙を観察したところ、剥離されてい
ないインク画像部分とほぼ剥離された部分とが混じって
おり、剥離は紙の全面に渡ってほぼ均一に行われていた
が、剥離された箇所にインクが薄く着色して残存してお
り、これは紙が染料により着色されたものと推定され
た。上記で用いた上質紙に替えて、市販のボンド紙、中
質紙を用いて同様の印字・再生操作を行ったが、上記の
上質紙と同様に傾向がみられ、剥離された箇所にインク
が薄く着色して残存していた。
【0043】実施例4 実施例1で用いたホットメルト・インクジェットプリン
ターはヘッドに取り付けられたヒーターの作動を、ヘッ
ド近傍に設けられたサーミスタで測定されたヘッドの温
度をフィードバックして行いヘッド温度を一定に保つ方
式を採用したものである。このプリンターのパネルにユ
ーザーが任意にインクの定着状態が選択できるスイッチ
を設け、紙再生モードを選択したときにヘッド温度が1
00℃になるように、ファイナル・モードを選択したと
きにはヘッド温度が120℃となるようにヒーターの制
御回路を調整した。参考例1で用いたホットメルト・イ
ンクを用い、定着状態選択スイッチを紙再生モードとし
て参考例1と同様に印字を行った。印字された紙を参考
例1と同様に再生処理したところ、紙上の画像はきれい
に剥離されており、目視では残存する画像は観察できな
かった。
【0044】実施例5 実施例4においてヘッド温度を低くして印字された画像
ではベタ画像の埋まりが悪かった。そこで定着状態選択
スイッチを紙再生モードとして印字するときに、ヘッド
温度を低くすると同時にファイナル・モードよりもヘッ
ドの駆動電圧(圧電素子PZTへの印加電圧)を高くし
てノズルより吐出する液滴の量を大きくなるようにPZ
T駆動制御回路も調整した。このプリンターで実施例4
と同じインクを用いて、定着状態選択スイッチを紙再生
モードとして印字したところ、ベタ画像は完全に埋ま
り、ファイナル・モードと同等品質の画像が得られた。
このヘッド温度を低くすると同時にインク滴の量を増し
て印字した紙の再生処理を実施例4と同様に行ったとこ
ろ、この場合にも紙上の画像はきれいに剥離されてお
り、目視では残存する画像は観察できなかった。
【0045】参考例3 実施例1で用いたプリンターに圧力定着装置として、ロ
ーラー間に150kgfの圧力がかかるようにバネ部材
で保持された2本のクロム鍍金を施した鋼製ローラーを
用意した。このプリンターのパネルにユーザーが任意に
インクの定着状態が選択できるスイッチを設け、紙再生
モードを選択したときにこの圧力定着装置を通過せずに
被記録媒体がプリンターより排出され、ファイナル・モ
ードを選択したときには前記の圧力定着装置を通過して
被記録媒体が排出されるように電磁クラッチを作動させ
て被記録媒体の排出経路を変えるための進路変更板およ
び前記の圧力定着装置を取り付けた。
【0046】ヘッド温度が100℃となるようにヒータ
ーの制御回路を調整し、実施例4と同じ処方のホットメ
ルト・インクを用いて印字を行った。定着状態選択スイ
ッチをファイナル・モードとして圧力定着装置を通過し
てきた紙を実施例4と同じ剥離液、再生装置を用いて再
生操作を行った。再生装置から排出された記録紙上には
剥離されていないインク画像部分とほぼ剥離された部分
とが混じっており、剥離は可能であるが安定した剥離状
態が得られなかった。この例ではユーザーのプリンター
・パネルでのスイッチの切り替えにより、圧力定着装置
を通過するか否かを選択する方法の例を示したが、圧力
定着装置をプリンター本体と別個にするかあるいは、プ
リンターの排紙経路にバイパスを設けて、ユーザーが印
字された画像を確認した後、不要なもののみを圧力定着
装置を通過するようにすることも可能である。
【0047】実施例6 実施例1で用いたホットメルト・インクジェットプリン
ターのプラテン部分に面状ヒーターと温度検出素子とし
てサーミスタを設けて、ヘッドからのインクが被記録媒
体に付着するときに、被記録媒体を一定温度に加熱でき
るような装置を設けたプリンターを用意した。このプリ
ンターのパネルにユーザーが任意にインクの定着状態が
選択できるスイッチを設け、紙再生モードを選択したと
きに印字中の被記録媒体の温度が室温となり、ファイナ
ル・モードを選択したときには被記録媒体の温度が50
℃となるようにプラテン加熱用ヒーターの制御回路を調
整した。
【0048】参考例1で用いたホットメルト・インクを
用い、ヘッド温度が100℃となるようにヘッド温度制
御回路を調整して、参考例1と同様に印字した。このプ
リンターの定着状態選択スイッチを紙再生モードとして
プラテン温度を室温として印字したときには、実施例4
に示したとおり、印字された紙を参考例1と同様に再生
処理することによりしたところ、紙上の画像はきれいに
剥離されており、目視では残存する画像は観察できず、
記録紙の再生が可能であった。しかし、紙再生モードで
印字された画像のベタ画像の埋まり具合は十分ではなか
った。一方、このプリンターの定着状態選択スイッチを
ファイナル・モードとしてプラテン・ヒーターを作動さ
せて紙を加熱しながら印字したときには、ベタ画像の埋
まりは十分であり高品位の画像が得られた。
【0049】実施例7 実施例6と同様に実施例1で用いたホットメルト・イン
クジェットプリンターのプラテン部分に面状ヒーターと
温度検出素子としてサーミスタを設けて、ヘッドからの
インクが被記録媒体に付着するときに、被記録媒体を一
定温度に加熱できるような装置を設けたプリンターを用
意した。実施例6と同様にプリンターのパネルにユーザ
ーが任意にインクの定着状態が選択できるスイッチを設
け、紙再生モードを選択したときに印字中の被記録媒体
の温度が室温となり、ファイナル・モードを選択したと
きには被記録媒体の温度が50℃となる様にプラテン加
熱用ヒーターの制御回路を調整した。更にユーザーが印
字品位モードとしてドット抜いて印字するドラフト・モ
ードを選択したときには自動的にプラテンヒーターが作
動せずに室温の被記録媒体に印字が行われ、印字品位モ
ードとしてドット抜きなしの高品位モードが選択された
ときには、被記録媒体の温度が50℃となる様にプラテ
ン加熱用ヒーターの制御回路を調整した。そしてこの印
字品位切り替えモードによるプラテン加熱の有無の選択
が、ユーザーが印字品位切り替えモードを変更した後で
印字動作に入る前に前述の定着状態切り替えスイッチを
操作した場合以外は、定着状態切り替えスイッチの切り
替えによるプラテン加熱の有無の選択に優先するように
回路を構成した。
【0050】このように構成することによりユーザーが
ドラフト・モードで印字する場合に定着状態切り替えス
イッチを操作することなしに、自動的に再生が良好にで
きる印字状態に入るプリンターを構成することができ
た。
【0051】実施例8 下記組成の混合物を実施例1と同様に130℃に加熱し
ながらボールミルで分散・撹拌溶解し、熱時遠心分離を
行い、粗大粒子を除去してホットメルト・インク組成物
を得た。また、このインクを用いて実施例1と同様に、
公知の圧電素子を用いたオンディマンド型のホットメル
ト・インクジェット・プリンターを用い、ヘッドが12
0℃になるように加熱して上質紙(リコーPPC用紙タ
イプ6200)へ印字を行った。
【0052】 インクの組成 顔料フタロシアニン・ブルー 2.2% C.I.ソルベントブルー73 1.5% パルミチン酸ラクトース 32.0% グリセリンモノステアレート 35.0% ステアロン 17.1% カルナウバ・ワックス 9.0% ヒドロキシエチルセルロース 3.0% 2,6−di−tert−butyl−p−cresol 0.2% 剥離液の組成 アニオン系界面活性剤(ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム塩) 0.1% アニオン系界面活性剤(ポリオキシエチレンソルビタンオー レート HLB=11) 0.07% 防腐剤(2−ピリジンチオールオキサイドナトリウム塩) 0.15% 水 99.68% 剥離材付与液の組成 水溶性ポリアミド樹脂 0.7% エタノール 16.0% 水 83.3% 被記録媒体として図6に示す構成の装置を用いた。上記
の剥離液を図6に示した被記録媒体再生装置の剥離液容
器31に充填した。剥離材付与液を容器36に充填し
た。この再生装置においてはホットメルト・インクで印
字された被記録媒体は給紙ローラー22により給紙トレ
ー21より装置内に搬送される。剥離液17は定量ロー
ラー14により汲み上げられて剥離液付与ローラー25
により被記録媒体に付与される。剥離材付与液26は同
様にローラー27により汲み上げられて剥離材表面を有
する剥離ローラー8に付与される。この実施例のように
剥離液と剥離材付与液とを別個とすることにより剥離操
作をより確実にするなどの目的で、プロセス上の自由度
を増すことができる。例えば本実施例では剥離材付与液
に先記の実施例の剥離液中の高分子化合物の含有量より
も多い量を含有させ、また、エタノール分を多く含有さ
せることにより剥離ローラーへ付着した液の液媒体の蒸
発を促進することにより付着剥離材へのインクの付着力
を高めている。更にこの構成にすることにより剥離液が
被記録媒体に付着してから剥離材に転写されるまでの時
間を長くすることができ、剥離が確実となる。
【0053】この装置を用いて上記のホットメルト・イ
ンクを用いて印字した紙の再生操作を行ったところ、目
視では残存する画像は観察できない水準までの再生が可
能であった。また、このようにして再生された紙を同様
な方法で印字を行ったところ、未使用の紙に印字したの
とは目視では区別できない品質の画像が得られた。同様
の再生操作及び印字を10回繰り返した後も、再生後の
紙には画像の残存は観察されず、印字された画像は未使
用の紙に印字したのとは目視では区別できない品質のも
のであった。上記で用いた上質紙に替えて市販のボンド
紙、中質紙を用いて同様の印字・再生操作を行ったが、
上記の上質紙と同様に再生後の紙には残存画像が観察さ
れず、再生後の紙への印字画像品質は未使用紙と大差が
なかった。
【0054】
【発明の効果】以上、説明した本発明の効果を列記する
と下記のとおりである。 (1)請求項1の発明の被記録媒体の再生方法において
は、ホットメルト・インクを用いて印字された記録画像
にインクと被記録媒体との結合力を弱めるための液体を
付与した後、画像の剥離操作を行うので、水性インクを
用いた場合には困難であった、使用済みの記録紙を一度
叩解することなしにコストの安い再生をすることが可能
となるばかりでなく、地肌汚れのない高い水準まで再生
された被記録媒体を得ることができ、剥離液の汚れも容
易に除去できるためメンテナンス性にも優れる。
【0055】(2)請求項2の発明のホットメルト・イ
ンクを用いて印字された被記録媒体の再生方法において
は、インクと被記録媒体との結合力を弱めるため液体と
して、水、エタノール、あるいは水とエタノールの混合
液が主体の液が使用されるので、安全性、経済性に優
れ、且つ高い水準にまで再生することができる。 (3)請求項3の発明のホットメルト・インクを用いて
印字された被記録媒体の再生方法においては、インクと
被記録媒体との結合力を弱めるため液体として、水、エ
タノール、あるいは水とエタノールの混合液が主体の液
体が用いられ、界面活性剤及び/又は液媒体に溶解する
高分子化合物が液に含まれているので、インクと被記録
媒体との結合力を迅速且つ確実に弱めることができ、ま
た、剥離体とインクとの接着力を強めることができるの
で、効率良く高い水準にまで再生することができる。
【0056】(4)請求項4の発明のホットメルト・イ
ンクを用いて印字された被記録媒体の再生方法において
は、剥離材側に水、エタノール、あるいは水とエタノー
ルの混合液を基材とし、それに溶解する高分子化合物を
含有しているので、この高分子化合物の粘着力により、
剥離転写を確実にし、高い水準の再生が可能となる。 (5)請求項5の発明のホットメルト・インクを用いて
印字された被記録媒体の再生方法においては、ホットメ
ルト・インクに、少なくとも分子量が2000以上の熱
溶融性高分子化合物を含有しているので、剥離時のイン
ク内の凝集力が高まることにより、剥離を容易にするこ
とができ、かつ、剥離液の汚れの除去も容易となりメン
テナンス性を良好とすることが可能となる。 (6)請求項6の発明のホットメルト・インクを用いて
印字された被記録媒体の再生方法においては、ホットメ
ルト・インクの色材の50重量%以上が顔料であるの
で、被記録媒体のインクによる染着が生じにくく、イン
クを剥離することにより、汚れのない高い水準まで再生
された被記録媒体を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法の一工程の説明図、
【図2】本発明の方法の一工程の説明図、
【図3】本発明の方法の一工程の説明図、
【図4】本発明の方法の一工程の説明図、
【図5】本発明の方法に用いる装置の一例の説明図、
【図6】本発明の方法に用いる装置の一例の説明図。
【符号の説明】
1 被記録媒体 2 画像 3 剥離液 4 剥離液容器 5 加圧ローラー 6 ホットメルトインク 7 天然ゴム層 8 剥離ローラー 9 容器 10 ブレード 11 熱ローラー 12 乾燥ベルト 13 排紙トレー 14 定量ローラー 15 回収トナー容器 16 剥離液容器 17 剥離液 18 加圧ローラー 19 分離爪 20 搬送ローラー 21 給紙トレイ 22 給紙ローラー 23 ガイド板 24 搬送ローラー 25 剥離液付与ローラー 26 剥離材付与液 27 剥離材付与液ローラー 28 剥離材付与液容器
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平4−39041(JP,A) 特開 平5−270105(JP,A) 特開 平4−89271(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B41J 29/373 C09D 9/04 C09D 11/00

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 印字された被記録媒体に剥離液を含浸さ
    せた後、剥離部材を該被記録媒体と圧接せしめ、該被記
    録媒体上のインクを該剥離部材に転写せしめ剥離するこ
    とを特徴とするホットメルト型インクジェット・プリン
    ターで印字された被記録媒体の再生方法。
  2. 【請求項2】 剥離液が水、エタノール、あるいは水と
    エタノールとの混合溶媒を70重量%以上含む液体であ
    ることを特徴とする請求項1記載のホットメルト型イン
    クジェット・プリンターで印字された被記録媒体の再生
    方法。
  3. 【請求項3】 剥離液が水、エタノール、あるいは水と
    エタノールとの混合溶媒を70重量%以上含み、且つ界
    面活性剤及び/又はこれらの溶媒に可溶な高分子化合物
    が含有された液体であることを特徴とする請求項1また
    は請求項2記載のホットメルト型インクジェット・プリ
    ンターで印字された被記録媒体の再生方法。
  4. 【請求項4】 剥離液が水、エタノール、あるいは水と
    エタノールとの混合溶媒を70重量%以上含む液体であ
    り、剥離材側にこれらの液体に溶解する高分子化合物を
    溶解した液を付与することにより、被記録媒体上のイン
    ク画像に対する粘着性を付与せしめて、該インク画像を
    剥離材側に転写せしめることを特徴とする請求項1乃至
    請求項3の何れかに記載のホットメルト型インクジェッ
    ト・プリンターで印字された被記録媒体の再生方法。
  5. 【請求項5】 印字に用いられたインクが分子量200
    0以上の熱溶融性高分子化合物を含有することを特徴と
    する請求項1乃至請求項4の何れかに記載のホットメル
    ト型インクジェット・プリンターで印字された被記録媒
    体の再生方法。
  6. 【請求項6】 印字に用いられたインクに含まれている
    色材の50重量%以上が顔料であることを特徴とする請
    求項1乃至請求項5の何れかに記載のホットメルト型イ
    ンクジェット・プリンターで印字された被記録媒体の再
    生方法。
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