JP3475788B2 - 加工性の優れた高張力熱延鋼板の製造方法 - Google Patents
加工性の優れた高張力熱延鋼板の製造方法Info
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Description
材等に使用される、引張り強度が590〜780MPa
級で残留オーステナイトを5%以上含有する、材質の均
一性および加工性に優れた高張力熱延鋼板の製造方法に
関するものである。 【0002】 【従来の技術】自動車の燃費向上を目的とした車体構造
部材として、軽量化と衝突安全性とを共に満足させるた
めに、加工性の優れた590〜780MPa級の高張力
熱延鋼板が要求されている。 【0003】590〜780MPa級の高張力熱延鋼板
に優れた加工性を付与するためには、強度と延性のバラ
ンスを向上させることが必要であり、また、その用途に
よっては、強度および延性と共に、良好な伸びフランジ
を有していることが必要とされている。 【0004】強度と延性のバランスが優れた高張力熱延
鋼板を製造する手段として、残留オーステナイトを含有
させ、この相の変形時におけるTRIP現象を利用して
鋼板の延性を高める方法が提案されている。 【0005】例えば、特開昭63−4017号公報およ
び特開昭64−79345号公報には、C:0.1 5
〜0.4wt.% 、Si:0.5〜2.0wt.% 、Mn:
0.5〜2.0wt.% を含有し、残り、Feおよび不可
避不純物からなる化学成分組成を有する鋼片を、仕上げ
圧延温度Ar3 ±50℃、全圧下率80%以上の条件で
熱間圧延し、次いで、冷却制御を行いながら、350〜
500℃の温度で巻き取ることにより、残留オーステナ
イトを5%以上含有し、残部がフェライトとベイナイト
とからなる、強度と延性のバランスを表す「引張り強さ
(TS)×伸び(El)」の値が24000MPa・%
以上の高張力熱延鋼板を製造する方法(以下、先行技術
1という )が開示されている。 【0006】先行技術1によれば、熱間圧延の圧下率、
仕上げ圧延温度、ランナウト冷却条件および巻取り温度
を、特定の範囲に規定することにより、オーステナイト
からポリゴナルフェライトの生成を促進し、オーステナ
イトにCを濃化させ、更に、ベイナイト変態させること
によりCの濃化をさらに進行させ、オーステナイトの安
定化を図り、これによって、最終的に5%以上の残留オ
ーステナイトを含有するフェライトとベイナイトとの混
合組織が得られるとされている。 【0007】先行技術1のような、残留オーステナイト
を含有する熱延鋼板は、加工性に優れているが、一方、
鋼板の機械的性質特に引張り強さの変動が大きいため
に、歩留りが悪いという問題がある。高張力熱延鋼板の
引張り強さの変動は、例えば590MPa級の場合に
は、590〜690MPaの範囲内に収めることが必要
であるが、この鋼板では、しばしば100MPaを超え
る大きな変動が生じ、そのために、大きな変動の生じた
材質不良部分を切断除去せざるを得ず、製品歩留りが低
下する問題が生ずる。 【0008】熱延ままで製造した残留オーステナイトを
含有する熱延鋼板の材質の変動は、熱延過程における鋼
帯の長さ方向および幅方向の温度条件の変動と、コイル
に巻き取った後のコイル外周部、内周部およびエッジ部
と内部の冷却速度の変動により、ミクロ組織が変化する
ことによるものであり、従来、やむを得ないことと考え
られている。 【0009】そこで、このような残留オーステナイトを
含有する熱延鋼板の材質の変動を解決し、加工性の良好
な残留オーステナイトを含有する熱延鋼板を効率よく製
造する製造する方法について研究開発が進められてお
り、例えば、特開平5−271764号公報には、C:
0.10〜0.25mass% 、Si:0.8〜3.0mass
% 、Mn:1.0〜3.0mass% 、S:0.005mass
% 以下、Al:0.01〜0.10mass% を含有し、残
り、Feおよび不可避不純物からなる化学成分組成を有
する熱延鋼帯を再加熱し、再加熱時の最高到達温度T1
℃が、(Ac1 +(Ac3−Ac1)/6〜Ac3 −(Ac3 −Ac1)/
6)の温度範囲であり、かつ、この温度で1sec 以上保
持した後、20℃/sec 以上の平均冷却速度で冷却し、
350〜450℃の温度域で巻き取るか、または、この
温度域で100sec 以上保持し次いで50℃以下まで冷
却した後巻き取ることによって、体積率6%以上の残留
オーステナイトを含有する高強度熱延鋼板を製造する方
法(以下、先行技術2という)が開示されている。 【0010】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、先行技
術2によると再加熱による最高到達温度T1℃が(Ac1
+(Ac3−Ac1)/6〜Ac3 −(Ac3 −Ac1)/6)の温度範
囲、即ち、「フェライト+オーステナイト」の2相混合
領域の中央部に限定されている。そのために、熱延鋼帯
の長手方向や幅方向のミクロ組織が大幅に変動している
と、これを熱処理によって均一化することが困難にな
る。 【0011】従って、この発明の目的は、上述した問題
を解決し、残留オーステナイトを5%以上含有する59
0〜780MPa級の高張力熱延鋼板を製造するに際
し、材質の変動が大きくても、熱処理によって、熱延鋼
帯の長手方向および幅方向における材質の均一性を安定
して高めることができる、加工性に優れた高張力熱延鋼
板を製造する方法を提供することにある。 【0012】 【課題を解決するための手段】本発明者等は、上述した
問題を解決し、残留オーステナイトを5% 以上含有す
る、材質の均一性に優れた高張力熱延鋼板の製造方法を
開発すべく鋭意研究を重ねた。その結果、次の知見を得
た。 【0013】残留オーステナイトを5% 以上含有する、
材質の均一性に優れた高張力熱延鋼板を製造するために
は、鋼の化学成分組成が、C:0.08〜0.20mass
% 、Si:0.80〜1.80mass% 、Mn:1.0〜
2.0mass% およびP:0.005〜0.04mass% を
含有していることが必要である。 【0014】このような化学成分組成を有する鋼片を、
仕上げ圧延温度Ar3 点以上、巻取り温度650℃以下
の条件で熱間圧延したときに、巻取り温度および巻取り
後の冷却条件によって、鋼のフェライト+パーライト、
フェライト+ベイナイト、フェライト+マルテンサイト
などのミクロ組織が変動しているため、熱延鋼板の機械
的性質が大きく変化することから、熱延鋼板に対し均一
なミクロ組織と機械的性質を付与するためには、熱延鋼
板に対し連続焼鈍設備により熱処理を施し、これによっ
て、同一のミクロ組織にする必要がある。 【0015】そこで、熱処理後のミクロ組織と機械的性
質に及ぼす再加熱後の影響について調査したところ、フ
ェライト+オーステナイト2相域では、熱処理前のミク
ロ組織の影響を十分になくすことはできないが、フェラ
イト+オーステナイト2相域の組織でも、その鋼板を、
オーステナイトの体積率が80%以上になるAc3 変態
点直下まで加熱するか、または、オーステナイト単相と
なるAc3 変態点直上の温度領域に加熱すれば、熱処理
前におけるミクロ組織の影響がなくなり、熱処理後に同
一のミクロ組織と機械的性質が得られる。 【0016】この発明は、上記知見に基づいてなされた
ものであって、請求項1に記載の発明は、C:0.08
〜0.20mass%、Si:0.80〜1.80ma
ss%、Mn:1.0〜2.0mass%、P:0.0
05〜0.04mass%、sol.Al:0.085
mass%以下、および、S:0.001mass%以
下を含有し、残部が実質的に鉄から成る化学成分組成を
有する鋼片を調製し、前記鋼片を、仕上げ圧延温度Ar
3点以上、巻取り温度650℃以下の条件で連続的に熱
間圧延して熱延鋼帯を調製し、前記熱延鋼帯を酸洗した
後、酸洗された熱延鋼帯に対し、連続焼鈍設備におい
て、AC3−25℃〜AC3+25℃の温度範囲に再加熱
し、その温度に1sec以上保持した後、10℃/se
c以上の温度で冷却し、次いで、350〜450℃の温
度範囲で30sec以上保持した後、常温まで冷却し、
次いで、これを巻き取ることに特徴を有するものであ
る。 【0017】 【発明の実施の形態】この発明の方法において、鋼の化
学成分組成を、上述したように限定した理由を以下に述
べる 。 【0018】C:C含有量が0.08mass% 未満では、
残留オーステナイトを5%以上とすることができず、一
方、C含有量が0.20mass% を超えるとスポット溶接
性が低下する。従って、C含有量は0.08〜0.20
mass% の範囲内に限定すべきである。 【0019】Si:Siは、フェライト形成元素であ
り、後述する鋼帯の熱処理時におけるオーステナイト単
相域またはAc3 変態点直下のフェライトーオーステナ
イト2相域に加熱後の冷却過程において、フェライトの
生成を促進し、オーステナイトへのCの濃化を助け、冷
却後350〜450℃の温度範囲で保持する際の、オー
ステナイトからのセメンタイトへの析出を遅らせる作用
を有している。従って、Siは残留オーステナイトを確
保する上で有効な元素である。 【0020】しかしながら、Si含有量が0.80mass
% 未満では、上述した作用に所望の効果が得られない。
一方、Si含有量が1.80mass% を超えると、鋼帯を
酸洗ラインを通して酸洗する際の、入側におけるフラッ
シュ溶接性が劣化する問題が生ずる。従って、Si含有
量は、0.80〜1.80mass% の範囲内に限定すべき
である。 【0021】Mn:Mnは、後述する鋼帯の熱処理時に
おける、オーステナイト単相域またはAc3 変態点直下
のフェライトーオーステナイト2相域に加熱後の冷却過
程において、オーステナイト中に濃化して、オーステナ
イトの安定度を高め、パーライト変態やマルテンサイト
変態を抑制する作用を有している。 【0022】しかしながら、Mn含有量が1.0mass%
未満では、上述した作用に所望の効果が得られない。一
方、Mn含有量が2.0mass% を超えると、冷却過程に
おけるフェライトの生成が不十分になり、これに伴っ
て、オーステナイトへの濃化が不十分になるため、オー
ステナイトが残留しにくくなる。従って、Mn含有量は
1.0〜2.0mass% の範囲内に限定すべきである。 【0023】P:Pは、Siと同様にフェライト中に固
溶して鋼板の強度を高め、且つ、Siの添加によって生
ずる赤スケールの発生を抑制する作用を有している。し
かしながら、P含有量が0.005mass% 未満では、上
述した作用に所望の効果が得られない。一方、P含有量
が0.04mass% を超えると、Pの偏析により伸びフラ
ンジ性が低下する問題が生ずる。従って、P含有量は、
0.005〜0.04mass% の範囲内に限定すべきであ
る。 【0024】本発明においては、上記以外の元素の含有
について特に限定されるものではなく、例えば、脱酸剤
として使用されるsol.Al、SおよびN等の元素は、本発
明の効果を阻害しない範囲で含有されていてもよい。 【0025】上述した化学成分組成を有する鋼は、転炉
法および電気炉法のいずれの方法によって溶製してもよ
く、また、鋼片は、連続鋳造法および造塊法のいずれの
方法によって鋳造してもよい。 【0026】次に、この発明において、熱間圧延機にお
ける熱延条件即ち熱延鋼帯の仕上げ圧延温度および巻取
り温度を、上述したように限定した理由について以下に
述べる。 【0027】仕上げ圧延温度:熱間圧延機での鋼帯の仕
上げ圧延温度は、Ar3 変態点以上のオーステナイト単
相域とすべきである。仕上げ圧延温度がAr3 変態点未
満で、フェライト+オーステナイト2相混合域の場合に
は、層状組織が形成され、熱処理時の加熱温度をAc3
変態点直上まで高めても十分な組織にならず、伸びフラ
ンジ性が低下する問題が生ずる。 【0028】巻取り温度:熱間圧延機での鋼帯の巻取り
温度は、650℃以下とすべきである。本発明におい
て、残留オーステナイトを5%以上とする組織の調整
は、鋼帯の熱処理時に行われるので、熱延工程において
は、特別な組織調整を行う必要がなく、フェライト+パ
ーライト、ベイナイト、マルテンサイトのどのような混
合組織でも対応が可能であり、種々の組織が鋼帯の長手
方向および幅方向に変動して分布していても、巻取り温
度を650℃以下とすることによって、所定の熱処理条
件による熱処理後に均一な組織となり、機械的性質の均
一性を高めることができる。しかしながら、巻取り温度
が650℃を超えると、粗大なセメンタイトが形成され
ると共に、フェライト粒の粗大化が生じやすくなり、伸
びフランジ性を低下させる原因になる。 【0029】鋼帯を巻き取るまでの、ランナウトテーブ
ルにおける冷却制御は必要でなく、通常の条件でよい。
なお、冷却制御を行い、ベイナイト単相組織にすると、
熱処理時の加熱時間を短くすることができるメリットが
ある。 【0030】上述した条件で熱間圧延された熱延鋼帯
は、酸洗後、連続焼鈍設備に導かれて熱処理が施される
が、鋼帯の形状が悪い場合には、スキンパス圧延を施す
必要がある。その際のスキンパス量はできるだけ低くす
ることが好ましい。 【0031】上記により熱間圧延された熱延鋼帯は、酸
洗した後、連続焼鈍設備において、Ac3 −25℃〜A
c3 +25℃の温度範囲に再加熱し、その温度に1sec
以上保持した後、10℃/sec 以上の速度で冷却し、次
いで、350〜450℃の温度範囲で30sec 以上保持
し次いで常温まで冷却した後、巻き取る。 【0032】次に、この発明において連続焼鈍設備にお
ける熱処理条件を、上述したように限定した理由につい
て述べる。 再加熱条件:熱延鋼帯に対し、その長手方向および幅方
向でミクロ組織が、フェライト+パーライト、フェライ
ト+ベイナイト、フェライト+マルテンサイトなどと異
なっていても、熱処理によって均一な機械的性質を付与
するためには、場所によらず同一なミクロ組織とする必
要がある。 【0033】熱処理前の不均一なミクロ組織を、熱処理
後に同一で均一なミクロ組織とするためには、フェライ
ト+オーステナイト2相域でも、オーステナイトの体積
率が80%以上になるAc3 変態点直下から、オーステ
ナイト単相となるAc3 変態点直上の温度領域、即ち、
Ac3 −25℃〜Ac3 +25℃の温度領域で再加熱
し、且つ、その温度に1sec 以上保持することが必要で
ある。 【0034】従って、この発明においては、連続焼鈍設
備における鋼帯に対する再加熱温度を上述した範囲に限
定した。これによって、鋼帯の組織を、熱処理後に均一
なミクロ組織とすることができる。 【0035】冷却・保持条件:上述した条件で鋼帯を再
加熱し、オーステナイトの体積率が80%以上のフェラ
イト+オーステナイト2相組織またはオーステナイト単
相組織とした後、10℃/sec 以上の速度で冷却し、次
いで、350〜450℃の温度範囲で30sec以上保持
し、常温まで冷却した後、巻き取る。 【0036】冷却速度を10℃/sec 以上とした理由
は、途中でオーステナイトがパ−ライトに変態するのを
抑制し、ベイナイト変態させるためである。また、保持
温度を350〜450℃の範囲とし、この温度で30se
c 以上保持する理由は、ベイナイト変態に進行させるた
めであり、ベイナイト変態が進むに従って、残っている
オーステナイトにCが濃化して安定性が高まり、常温に
冷却してもオーステナイトが残留しやすくなる。 【0037】保持温度が450℃を超えると、オーステ
ナイトがパーライトに変態し、一方、保持温度が350
℃未満では、オーステナイトがマルテンサイトに変態す
るため、残留オーステナイトの体積率を5%以上に確保
することができなくなる。なお、ベイナイト変態をさ
せ、オーステナイトにCを濃化させ安定性を高めるため
には、この温度範囲で30sec 以上保持することが必要
である。 【0038】 【実施例】次に、この発明を実施例により、比較例と対
比しながら説明する。表1に示す、本発明の範囲内の化
学成分組成を有する鋼A〜F、および、本発明の範囲外
の鋼G〜Mを転炉にて溶製し、次いで、連続鋳造するこ
とによってスラブを調製した。 【0039】 【表1】【0040】上記スラブを、表2に示す本発明の範囲内
および範囲外の圧延条件で熱間圧延し、板厚1.6 mm
の熱延鋼帯を調製した。得られた熱延鋼帯に対し、酸洗
後、同じく表2に示す本発明の範囲内および範囲外の熱
処理条件で熱処理を施し、次いで、1%のスキンパス圧
延を施して、本発明供試体No. 1〜10および比較用供
試体No. 1から11を調製した。 【0041】このようにして調製された本発明供試体お
よび比較用供試体の各々について、下記によりその残留
オーステナイト体積率および機械的性質を調べ、表2に
併せて示した。 【0042】 【表2】【0043】引張り試験:引張り試験は、板幅中央部と
エッジ部から25mmの位置から圧延方向にJIS5号
試験片を 切り出して行い、幅中央部の機械的性質と幅
方向の変動を評価した。 【0044】穴広げ試験:穴広げ試験は、150×15
0mmの試験片の中央部に直径10mmの穴を打抜き、
生成した バリをポンチ側とし、これを頂角60°の円
錐ポンチで押し広げ、穴縁に板厚を貫通して亀裂が入っ
た時点での穴径を測定し、次式により穴広がり率(λ)
を求めた。 【0045】 穴広がり率(λ)=(df −do )/do ×100
(%) 但し、do :初期穴径、 df :破断時の穴径。 残留オーステナイト体積率(γ):残留オーステナイト
体積率(γ)は、供試体の板厚1/4のオーステナイト
量をX線回析により測定することによって求めた。 【0046】表2から明らかなように、本発明の範囲内
の成分組成を有し且つ本発明の範囲内の熱延条件お よ
び熱処理条件で調製した本発明供試体No. 1〜10は、
いずれも残留オーステナイト体積率(γ)が5%以上で
あって、良好な伸びおよび穴広がり率(λ)を有してお
り、且つ、幅方向の引張り強さ(TS)の変動は50M
Pa以内であって、機械的性質の均一性も良好であっ
た。 【0047】これに対し、化学成分組成が本発明の範囲
内である鋼(C)を使用しても、熱処理条件のうち再加
熱温度が本発明の範囲を外れて低い比較用供試体No.
1およびNo.2は、幅方向中央部の伸びおよび穴広げ
率(λ)は良好であったが、幅方向の引張り強さ(T
S)の変動が50MPa以上であって大きかった。 【0048】また、同じく、成分組成が本発明の範囲内
である鋼(C)を使用しても、熱処理条件のうち、再加
熱温度が本発明の範囲を超えて高い比較用供試体No.
3は、残留オーステナイト量(γ)が少なく、良好な伸
びが得られなかった。 【0049】同じく、成分組成が本発明の範囲内である
鋼(C)を使用しても、熱延時の巻取り温度が本発明の
範囲を超えて高い比較用供試体No.4は、熱延鋼帯の
ミクロ組織即ちフェライト結晶粒およびセメンタイトが
粗大化しており、熱処理後の残留オーステナイト体積率
(γ)は5%以上であっても穴広がり率(λ)が悪く、
幅方向の機械的性質の変動も大きかった。 【0050】熱延条件および熱処理条件が本発明の範囲
内であっても、鋼の成分組成が本発明の範囲を外れてい
るものは、残留オーステナイト量(γ)が本発明の範囲
外で、良好な伸びが得られなかったり、あるいは、残留
オーステナイト量(γ)が本発明の範囲内で良好な伸び
は得られたものの、穴広がり率(λ)が悪かった。 【0051】即ち、C量が本発明の範囲を外れて少ない
比較用供試体No.5は、残留オーステナイト体積率
(γ)が少なく良好な伸びは得られなかった。C量が本
発明の範囲を超えて多い比較用供試体No.6は、残留
オーステナイト量(γ)は5%以上で機械的性質は良好
であったが、スポット溶接性が悪く、実用的ではなかっ
た。 【0052】Si量が本発明の範囲を外れて少ない比較
用供試体No.7は、残留オーステナイト体積率(γ)
が0で、良好な伸びは得られなかった。また、Si量が
本発明の範囲を超えて多い比較用供試体No.8は、残
留オーステナイト量(γ)は5%以上であったが、酸洗
でのフラッシュ溶接性が劣っていた。 【0053】Mn量が本発明の範囲を外れて少ない比較
用供試体No.9も、残留オーステナイト体積率(γ)
が少なく、良好な伸びは得られなかった。Mn量が本発
明の範囲を超えて多い比較用供試体No.10は、残留
オーステナイト体積率(γ)が少ない上、穴広がり率
(λ)も悪かった。P量が本発明の範囲を超えて多い比
較用供試体No.11は、残留オーステナイト体積率
(γ)は5%以上であったが、穴広がり率(λ)が低か
った。 【0054】 【発明の効果】以上述べたように、この発明によれば、
材質の変動が大きくても、熱延鋼帯の長手方向および幅
方向における材質の均一性を、熱処理によって安定して
高めることができ、残留オーステナイトを5% 以上含有
する、加工性に優れた590〜780MPa級の高張力
熱延鋼板を製造することができる、工業上有用な効果が
もたらされる。
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】C :0.08〜0.20mass%、 Si:0.80〜1.80mass%、 Mn:1.0〜2.0mass%、 P :0.005〜0.04mass%、sol.Al:0.085mass%以下、および、 S :0.001mass%以下 を含有し、残部が実質的に鉄から成る化学成分組成を有
する鋼片を調製し、 前記鋼片を、仕上げ圧延温度Ar3点以上、巻取り温度
650℃以下の条件で連続的に熱間圧延して熱延鋼帯を
調製し、 前記熱延鋼帯を酸洗した後、酸洗された熱延鋼帯に対
し、連続焼鈍設備において、AC3−25℃〜AC3+2
5℃の温度範囲に再加熱し、その温度に1sec以上保
持した後、10℃/sec以上の温度で冷却し、次い
で、350〜450℃の温度範囲で30sec以上保持
した後、常温まで冷却し、次いで、これを巻き取ること
により、残留オーステナイトを5%以上含有する、材質
の均一性に優れた高張力熱延鋼板を製造することを特徴
とする、加工性の優れた高張力熱延鋼板の製造方法。
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