JP3466350B2 - 象牙質知覚過敏症用歯科用組成物 - Google Patents

象牙質知覚過敏症用歯科用組成物

Info

Publication number
JP3466350B2
JP3466350B2 JP32282895A JP32282895A JP3466350B2 JP 3466350 B2 JP3466350 B2 JP 3466350B2 JP 32282895 A JP32282895 A JP 32282895A JP 32282895 A JP32282895 A JP 32282895A JP 3466350 B2 JP3466350 B2 JP 3466350B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
emulsion
component
water
acid
dentin
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Lifetime
Application number
JP32282895A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH08225424A (ja
Inventor
宣男 中林
隆司 山本
靖和 細美
正三 荒田
晴美 田中
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sun Medical Co Ltd
Original Assignee
Sun Medical Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sun Medical Co Ltd filed Critical Sun Medical Co Ltd
Priority to JP32282895A priority Critical patent/JP3466350B2/ja
Publication of JPH08225424A publication Critical patent/JPH08225424A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3466350B2 publication Critical patent/JP3466350B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、象牙質細管を封鎖
するための歯科用組成物に関する。さらに詳しくは、冷
・温水痛、甘味痛、酸味痛および擦過痛など疼痛が生じ
る象牙質知覚過敏を象牙質細管を封鎖して抑制するため
の歯科用組成物に関する。さらには、本発明は安定して
衛生的に保存し得る歯科用組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】体温と異なる温度の空気や水などに接触
した際に生じる冷温感痛、甘い食物や酸味のある食物を
口にした際に感じる甘味痛および酸味痛、ハブラシなど
が接触した場合に生じる擦過痛などの疼痛が象牙質知覚
過敏症または歯髄炎によって発生する。歯髄炎は歯髄に
細菌などが感染し炎症を起こした結果として発生するの
で、この疼痛は比較的持続して発生し抜髄するしか治療
法はない。一方、象牙質知覚過敏は、物理的もしくは化
学的刺激に対して発生する一過性の誘発痛である。従っ
て、刺激に対する反応が過敏となっている歯髄神経を緩
和する手法と歯髄への外的刺激を遮断する手法が象牙質
知覚過敏症対策として提案されている。
【0003】Pashleyらは米国特許第4,057,
621号明細書において、2重量%〜飽和液までの濃度
範囲にある、1または2置換のアルカリ金属もしくはア
ンモニウムのシュウ酸からなる知覚過敏症抑制用組成物
と知覚過敏症抑制方法を提案している。特開平4−21
7904号公報において、今井らは混合することによっ
て難溶性の沈澱を生じる物質を含むAおよびBの2液を
順次塗布して沈澱を形成させる歯科用処置材組成物を提
案している。該提案では、A液が無機または有機酸のナ
トリウム塩、カリウム塩、リチウム塩の1〜70%水溶
液であり、B液がカルシウム、亜鉛、ストロンチウム、
マグネシウム、アルミニウム、バリウム、鉄、銅、銀、
鉛もしくはスズの塩化物、硝酸塩、硫酸塩および酢酸塩
から選択される1種以上の物質を含有する混合物あるい
は塩化カルシウム、塩化亜鉛または塩化ストロンチウム
の1〜70%含有水溶液である。
【0004】特開平6−145020号公報において
は、1〜35%シュウ酸カリウム溶液(A)、シュウ酸
アルミニウム(B)、2%硝酸(C)からなる結晶生成
性歯質前処理剤を提案している。特開平5−70358
号公報においては、下記(A)成分と(B)成分を含有
する象牙質知覚過敏治療剤で、(A)成分は、水溶性亜
鉛塩とポリオールリン酸エステルおよび/またはその塩
とを水性媒体中で混合することにより得られる水酸化亜
鉛および/または酸化亜鉛のコロイド、(B)成分はポ
リオール酸エステルの亜鉛塩であることを提案してい
る。特開平5−255029号公報において、今井らは
混合することによって速やかにフルオロアパタイトを生
じることが可能な物質を含むA、Bの2液を順次塗布し
て沈澱を形成させる歯科用処理用組成物を提案してい
る。ここで、A液は水溶性リン酸塩を1〜3%濃度範囲
で含有し、且つ水溶性のフッ化物を0.01〜5重量%
含有し、B液は水溶性のカルシウム塩を1〜30重量%
含有する。
【0005】特開平6−116153号公報において
は、アルミニウム化合物を含有する第一液とリン酸化合
物、シュウ酸化合物、ケイ酸化合物、フッ化物およびア
ルカリ性を与える化合物から選ばれる1種以上の化合物
を含有する第二液とからなる知覚過敏症用塗布剤が提案
されている。この提案は、歯質表面で沈澱が生成する化
合物や組成物の溶液を塗布することによって露出した象
牙質表面で開口した象牙細管内に沈澱を析出させ封鎖す
ることを目的としている。また、カリウムイオンなどの
ある種の化合物によって知覚神経の活動を緩和させる効
果も併用している。しかしながら、直径1〜3μmと言
われる象牙細管を封鎖するだけの大きさの沈澱を一定量
象牙質表面で新たに形成させることは、歯の性質や象牙
質表面の衛生状態などの阻害条件によって困難であっ
た。また、この目的を達成するために処置に長時間を要
したり何度も処置を繰り返すなどの方法が採用され、そ
れに伴って患者への苦痛が多くなっていた。
【0006】歯髄神経を緩和する手法は、薬剤などによ
って過敏になっている神経を麻痺または緩和させること
が目的であるが、そのメカニズムは十分に解明されてい
ない。歯髄への外的刺激を遮断する手法として、外界と
歯髄をつなぐ象牙細管を塞ぐ方法があり、既に記載した
ように歯質表面に沈澱を発生させ形成した沈澱物によっ
て象牙細管を封鎖する提案がある。しかしながら、象牙
質表面付近の象牙細管の開口具合いや性質などによっ
て、沈澱の発生や象牙細管内への沈着が十分に行うこと
ができず、長期的に安定して封鎖状態を維持できなかっ
た。中林らは、特開平6−57080号公報において
(メタ)アクリル酸エステルから誘導される繰返し単
位、および官能基−SO3R(Rは水素、アルカリ金属
またはアンモニウムイオン)を有するビニル化合物から
誘導される繰返し単位からなる乳化重合体のエマルジョ
ンとこれを使用した象牙知覚過敏抑制の方法を提案し
た。高分子エマルジョンを象牙質知覚過敏症に適用する
利点として、比較的粘性の低い液体で多量の高分子重合
体を塗布できること、さらに乾燥して成膜すると水に不
溶になることである。特に、高分子重合体の水性エマル
ジョンでは溶媒が水であるので毒性や換気などの取扱い
に問題が極めて少ない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、上記中
林らの提案を追試験した結果、象牙知覚過敏症を有する
患者17名中15名に知覚過敏抑制効果が認められた。
しかし、残る2名には顕著な抑制効果が認められなかっ
た。本発明者らは、効果が得られなかった原因について
鋭意研究したところ、患者の象牙質細管の開口状態およ
び象牙質の部位と性質の相違によって象牙質細管に充填
されるエマルジョンの量ならびに形成被膜の安定性(維
持力)が異なることを見い出した。すなわち、象牙質細
管の開口度合いが小さい場合はエマルジョンは十分に充
填されないことがある。また、深部象牙質や歯根象牙質
のようなハイドロキシアパタイト含量が少ない歯質の場
合には形成被膜の象牙質表面への密着性や密着性の維持
が十分でないときがあることを見い出した。本発明の目
的は、象牙質知覚過敏症を象牙質細管を封鎖することに
より抑制するために用いられる歯科用組成物を提供する
ことにある。本発明の他の目的は、象牙質細管の開口度
合いが小さい場合でも、象牙質細管を封鎖し得る歯科用
組成物を提供することである。本発明のさらなる他の目
的は、象牙質知覚過敏症の抑制を即効的および長期的に
行うことができ、且つ保持安定性に優れた歯科用組成物
を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、本発明
の上記目的および利点は、 (A)(1)象牙質細管径よりも小さい粒子径を有し、
カルシウム化合物と反応して象牙細管径よりも大きな凝
集体を形成する重合体粒子をエマルジョン粒子として含
有し、そして (2)加水限外濾過により精製されて分散媒中の金属イ
オン濃度が1000ppm以下とされた、水性エマルジ
ョン成分および (B)水溶性有機酸またはその水溶性塩成分、ここで該
有機酸のカルシウム塩は水不溶性ないし水難溶性であ
る、を含有することを特徴とする象牙質知覚過敏症用歯
科用組成物によって達成される。以下、本発明を詳述す
るが、それにより本発明の別の目的、利点が明らかとな
ろう。
【0009】(A)成分は高分子エマルジョン(ラテッ
クスと呼ぶ場合もある)であり、天然樹脂や合成樹脂を
水中に乳化または分散させたものである。そして(A)
成分は乳化または分散している重合体が象牙細管径(直
径)よりも小さい粒子径を有するエマルジョン粒子を含
み、しかも該エマルジョン粒子がカルシウム化合物と反
応することによって象牙質細管径よりも大きな径の凝集
体を形成することができることに特徴がある。象牙質細
管を封鎖するのに十分な深さにまで水性エマルジョンを
侵入させるために、重合体のエマルジョン粒子の粒径は
象牙質細管の直径よりも小さいことが必要である。象牙
細管の直径は、位置や深さ、また個体差があるものの通
常1〜3μmの範囲にある。従って、(A)成分中の重
合体のエマルジョン粒子の平均粒径は3μm以下である
ことが好ましく、より好ましくは1μm以下である。な
お、象牙質細管の直径は、通常、抜去した歯牙のエナメ
ル質を削り取って露出した象牙質表面を歯磨剤と歯ブラ
シを使って1分以上ブラッシングを行った後、水中で超
音波洗浄を施し、走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察
することによって計測できる。
【0010】また、(A)成分のエマルジョン粒子の粒
径には分布があり、すべてのエマルジョン粒子の粒径が
象牙細管径よりも小さい必要はない。(A)成分中のエ
マルジョン粒子のうち、粒径が3μm未満のものが50
重量%以上占めることが好ましく、そしてすべてのエマ
ルジョン粒子の粒径が3μm未満であることがより好ま
しい。上記の条件に加えて、(A)成分のエマルジョン
粒子のうち、粒径が1μm以下のものが65重量%以上
占めることが特に好ましく、75重量%以上占めること
がとりわけ好ましい。エマルジョン粒子が上記のような
粒径分布を有することにより本発明の目的が優れて達成
される。
【0011】本発明の(A)成分として使用できる重合
体としては、ラジカル重合性単量体から合成される単独
重合体または共重合体を挙げることができる。ラジカル
重合性単量体としては、例えばブタジエン、イソプレン
などの共役ジエン単量体類;スチレン、α−メチルスチ
レン、クロルスチレンなどの芳香族ビニル単量体類;ア
クリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビ
ニル単量体類;(メタ)アクリル酸(以下、アクリル酸
とメタクリル酸の総称としてこのように記載する)メチ
ル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブ
チルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;塩
化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニリデ
ンなどのハロゲン化ビニルおよびビニリデン類;酢酸ビ
ニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類など
を挙げることができる。これらの単量体は単独であるい
は2種以上併用して重合に用いられる。
【0012】上記ラジカル重合性単量体から合成される
重合体は、カルシウム化合物と反応する官能基と化学結
合していることが好ましい。カルシウム化合物と反応す
る官能基としては、例えばカルボキシル基、少なくとも
1個の水酸基がリン原子に結合している基およびスルホ
ン酸基よりなる群から選択される少なくとも一種が挙げ
られる。上記官能基を導入する方法として、例えばポリ
スチレンをスルホン化する方法で代表されるポリマーへ
官能基を導入する方法、カルボン酸エステルまたはリン
酸エステルを含有するポリマーを加水分解する方法を挙
げることができる。さらに、上記のラジカル重合性単量
体と上記官能基あるいは上記官能基に水中で容易に変換
し得る官能基を有するラジカル重合性単量体を共重合さ
せる方法があり、この方法が好ましい。カルシウム化合
物と反応する官能基を有するラジカル重合性単量体とし
て、以下の化合物を例示することができる。
【0013】カルボキシル基あるいはカルボキシル基に
水中で容易に変換し得る官能基を有するラジカル重合性
単量体としては、例えばモノカルボン酸、ジカルボン
酸、トリカルボン酸およびテトラカルボン酸、これらの
塩および無水物を挙げることができる。具体的には(メ
タ)アクリル酸、マレイン酸、p−ビニル安息香酸、1
1−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ウンデカン
ジカルボン酸(MAC−10)、1,4−ジ(メタ)ア
クリロイルオキシエチルピロメリット酸、6−(メタ)
アクリロイルオキシエチルナフタレン−1,2,6−トリ
カルボン酸、4−(メタ)アクリロイルオキシメチルト
リメリット酸およびその無水物、4−(メタ)アクリロ
イルオキシエチルトリメリット酸およびその無水物、4
−(メタ)アクリロイルオキシブチルトリメリット酸お
よびその無水物、4−[2−ヒドロキシ−3−(メタ)
アクリロイルオキシ]ブチルトリメリット酸およびその
無水物、2,3−ビス(3,4−ジカルボキシベンゾイル
オキシ)プロピル(メタ)アクリレート、N,O−ジ
(メタ)アクリロイルオキシチロシン、O−(メタ)ア
クリロイルオキシチロシン、N−(メタ)アクリロイル
オキシチロシン、N−(メタ)アクリロイルオキシフェ
ニルアラニン、N−(メタ)アクリロイルp−アミノ安
息香酸、N−(メタ)アクリロイルO−アミノ安息香
酸、2または3または4−(メタ)アクリロイルオキシ
安息香酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート
とピロメリット酸二無水物の付加生成物(PMDM)、
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと無水マレ
イン酸または3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカ
ルボン酸二無水物(BTDA)または3,3',4,4'−
ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の付加反応物、2
−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)1,3−
ジ(メタ)アクリロイルオキシプロパン、N−フェニル
グリシンまたはN−トリルグリシンとグリシジル(メ
タ)アクリレートとの付加物、4−[(2−ヒドロキシ
−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)アミノ]
フタル酸、3または4−[N−メチルN−(2−ヒドロ
キシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)アミ
ノ]フタル酸などを挙げることができる。これらのう
ち、11−メタクリロイルオキシ−1,1−ウンデカン
ジカルボン酸(MAC−10)および4−メタクリロイ
ルオキシエチルトリメリット酸(4−MET)またはそ
の無水物(4−META)が好ましく用いられる。
【0014】少なくとも1個の水酸基がリン原子に結合
している基および水中で容易に該基に変換し得る官能基
として、例えばリン酸エステル基で水酸基を1個または
2個を有する基およびその塩を好ましく例示することが
できる。このような基を有する重合性単量体としては、
例えば2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシドホ
スフェート、2および3−(メタ)アクリロイルオキシ
プロピルアシドホスフェート、4−(メタ)アクリロイ
ルオキシブチルアシドホスフェート、6−(メタ)アク
リロイルオキシヘキシルアシドホスフェート、8−(メ
タ)アクリロイルオキシオクチルアシドホスフェート、
10−(メタ)アクリロイルオキシデシルアシドホスフ
ェート、12−(メタ)アクリロイルオキシドデシルア
シドホスフェート、ビス{2−(メタ)アクリロイルオ
キシエチル}アシドホスフェート、ビス{2または3−
(メタ)アクリロイルオキシプロピル}アシドホスフェ
ート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル
アシドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシ
エチルp−メトキシフェニルアシドホスフェートなどを
挙げることができる。これらの化合物におけるリン酸基
を、チオリン酸基に置き換えた化合物も例示することが
できる。これらのうち、2−(メタ)アクリロイルオキ
シエチルフェニルアシドホスフェート、10−(メタ)
アクリロイルオキシデシルアシドホスフェートが好まし
く用いられる。
【0015】スルホン酸基あるいはスルホン酸基に容易
に水中で変換し得る官能基を有する重合性単量体とし
て、例えば2−スルホエチル(メタ)アクリレート、2
または1−スルホ−1または2−プロピル(メタ)アク
リレート、1または3−スルホ−2−ブチル(メタ)ア
クリレート、3−ブロモ−2−スルホ−2−プロピル
(メタ)アクリレート、3−メトキシ−1−スルホ−2
−プロピル(メタ)アクリレート、1,1−ジメチル−
2−スルホエチル(メタ)アクリルアミド、スチレンス
ルホン酸などの酸およびそれらの塩を挙げることができ
る。これらのうち、2−メチル−2−(メタ)アクリル
アミドプロパンスルホン酸またはスチレンスルホン酸お
よびこれらの塩が好ましく用いられる。
【0016】(A)成分に含まれる重合体の数平均分子
量Mnは、GPC法で測定して通常3,000以上であ
り、好ましくは7,000以上、さらに好ましくは10,
000以上である。数平均分子量の上限は通常500万
である。(A)成分はエマルジョン粒子としての高分子
重合体を0.1〜60重量%、好ましくは0.5〜40重
量%、さらに好ましくは1〜20重量%の範囲で含有す
ることができる。
【0017】好ましい(A)成分は、乳化剤を使用しな
い重合法、いわゆるソープフリーエマルジョン重合法に
よって得られる、炭素数4〜8の(メタ)アクリル酸ア
ルキルエステル単位とスチレンスルホン酸単位をモル比
(アクリル酸アルキルエステル単位/スチレンスルホン
酸単位)で50/50〜99.5/0.5含有する共重合
体をエマルジョン粒子として含有するエマルジョンであ
る。この共重合体のエマルジョンは、特開平6−570
80号公報に提案したものを使用することができる。さ
らに好ましい(A)成分として、例えば該共重合体のエ
マルジョン粒子を高速ミキサーやホモジナイザーなどの
分散・粉砕器で直径3μm以下、好ましくは直径1μm
以下、最も好ましくは直径0.5μm以下のエマルジョ
ン粒子となし、このエマルジョン粒子が(A)成分の中
に0.5重量%以上存在するように調製して分散安定性
を向上させたものを使用することができる。また、粒径
が1.0μm以下の上記共重合体のエマルジョン粒子
が、エマルジョン粒子全体の50重量%以上、特には7
5重量%以上占めることが好ましく、そしてエマルジョ
ン粒子の全体を占めることが最も好ましい。
【0018】(A)成分に含まれる象牙質細管径よりも
小さい粒子径を有するエマルジョン粒子は、カルシウム
化合物、例えば塩化カルシウムを(A)成分中に添加し
たときに、該カルシウム化合物と反応して象牙質細管径
よりも大きな径を有する凝集体を形成し得る。通常、該
凝集体の径は3μmを超え、好ましくは10μm以上、
より好ましくは50〜数千μmに達するものである。上
記カルシウム化合物の添加量は、エマルジョン中の不揮
発性成分100重量部に対して10〜100重量部の範
囲である。
【0019】このような性質を有する成分(A)を本発
明の組成物に用いることにより、象牙質細管に侵入した
小さい径のエマルジョン粒子は、主に象牙質細管を形成
する管周象牙質中に存在するハイドロキシアパタイトか
ら溶出したカルシウムイオンや象牙質中に含まれる髄液
中のカルシウムイオンと反応して、大きな凝集体が多数
形成される。この形成された多数の大凝集体は、象牙質
細管内の長さ方向に連続的に充填された状態(被膜)と
なる。このような状態が形成されることにより、該細管
は封鎖される。該細管が封鎖された状態は、本発明の
(B)成分を使用することにより速く形成される。また
この状態は、凝集体と象牙質の密着性が長く維持される
ので、長期間保持される。
【0020】(A)成分100重量部中の不揮発成分が
0.1〜60重量部、好ましくは0.5〜40重量部、さ
らに好ましくは1〜20重量部の量割合にあるのが望ま
しい。
【0021】本発明の組成物の(B)成分は、(A)成
分に含まれる重合体のエマルジョン粒子の凝集速度、す
なわち難溶性ゲル(凝集体)の形成速度を調整するとと
もに、(B)成分が水に不溶性または難溶性のカルシウ
ム塩を形成することによって難溶性ゲルからなる被膜の
耐久性を向上させる役割を果たす。また、(B)成分の
カルシウム塩は種々の形態を有する結晶であり、一般的
には球状、比較的丸みのあるラウンド状、板状および針
状などの形態を示し、その大きさは結晶形態によって異
なるが、球状あるいはラウンド状では平均直径0.1〜
10μmの範囲、板状では平均的な1辺の長さが0.1
〜10μmの範囲、針状では太さが0.1〜5μm、長
さが1〜10μmの範囲である。このような形状のカル
シウム塩は、歯質表面および象牙質細管内に(A)成分
から生成する難溶性ゲルとともに存在し、象牙質細管の
封鎖を促進し、該難溶性ゲル形成時あるいは乾燥時の体
積収縮量を減少させる役割を果たす。
【0022】本発明における(B)成分は、水溶性有機
酸またはその水溶性塩である。該有機酸のカルシウム塩
は、水不溶性あるいは難溶性塩である。水不溶性または
難溶性は、(B)成分を含む溶液とカルシウムイオンを
含む溶液を混合した際の沈殿生成の有無で判別される。
沈澱生成の有無は、一般的に溶解度積とイオン積の関係
で知ることができる。すなわち、(B)成分のカルシウ
ム塩のイオン積が溶解度積と等しい場合、もしくはイオ
ン積が溶解度積よりも大きい場合に水難溶性および水不
溶性とすることができる。簡便な沈澱生成の目安とし
て、水溶性有機酸またはその水溶性塩成分の1〜5重量
%の濃度範囲の水溶液と同濃度範囲の塩化カルシウム水
溶液を混合した場合に肉眼的に沈澱の生成を確認する方
法がある。
【0023】本発明における(B)成分は、シュウ酸、
シュウ酸金属塩、シュウ酸アンモニウム塩およびシュウ
酸のアミン塩から選択されるシュウ酸または水溶性シュ
ウ酸塩;プロピオン酸、プロピオン酸金属塩、プロピオ
ン酸アンモニウム塩、プロピオン酸のアミン塩から選択
されるプロピオン酸または水溶性プロピオン酸塩などを
挙げることができる。
【0024】水溶性の目安としては、25℃における水
への溶解度が0.5g/100ml以上である。かかる
化合物として具体的にシュウ酸、シュウ酸水素ナトリウ
ム、シュウ酸ナトリウム、シュウ酸水素カリウム、シュ
ウ酸カリウム、シュウ酸水素リチウム、シュウ酸リチウ
ム、シュウ酸水素アンモニウム、シュウ酸アンモニウ
ム、シュウ酸アニリン、シュウ酸亜鉛カリウム、シュウ
酸アルミニウム、シュウ酸アルミニウムアンモニウム、
シュウ酸アルミニウムナトリウム、シュウ酸アンチモン
カリウム、シュウ酸クロムカリウム、シュウ酸水素バリ
ウム、シュウ酸鉄カリウムなどが挙げられる。なかでも
シュウ酸、シュウ酸水素カリウムおよびシュウ酸鉄カリ
ウムが好ましい。
【0025】本発明において、(A)および(B)成分
の合計100重量部のうち(A)成分が、好ましくは5
0〜99.5重量部、より好ましくは70〜99重量
部、最も好ましくは90〜98重量部の範囲にあること
により、本発明の効果が顕著に現れる。
【0026】本発明の(B)成分の配合量は、(B)成
分のカルシウム塩の大きさと析出量に影響する。上記の
濃度範囲から外れた低い濃度では析出量が少なかった
り、結晶サイズが小さ過ぎたりするため、期待される効
果が十分に発揮されないことあある。一方、(B)成分
が上記の範囲から外れた高い濃度では、飽和濃度に達し
て溶液から析出したり、エマルジョン粒子を著しく凝集
させたりする場合がある。
【0027】(A)成分および(B)成分を含有する組
成物の使用方法として、(1)(A)成分と(B)成分
を一緒に含む容器に混合して保存し、塗布によって被膜
を形成して使用する方法、(2)(A)成分を含む組成
物の入った容器Aと(B)成分を含む組成物の入った容
器Bによって保存して、それぞれの組成物を任意の順で
逐次的に塗布または使用直前に混合し、塗布によって被
膜を形成して使用する方法、などを例示することができ
る。
【0028】本発明の歯科用組成物には、発明の効果を
損なわない濃度範囲において凝集促進剤を添加すること
ができる。沈殿促進剤の具体的な例として、塩酸、硝酸
などの無機酸;鉄、銅、亜鉛、ストロンチウム、銀、ス
ズなどの塩化物および酸化物;蟻酸、酢酸、乳酸、クエ
ン酸、イタコン酸、マレイン酸、コハク酸、リンゴ酸、
タンニン酸、トルエンスルホン酸、アジピン酸、酒石
酸、アスコルビン酸、有機酸およびその金属塩;さらに
はEDTAなどが挙げられる。また、必要に応じてフッ
化ナトリウムやフッ化カリウムなどのフッ化物を使用す
ることができる。
【0029】また、発明の効果を損なわない濃度範囲に
おいて、塩化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸水素
カルシウム、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、リン酸
水素カルシウム、リン酸カルシウム、ハイドロキシアパ
タイトなどの無機カルシウム塩や有機酸カルシウム塩な
どを使用することができる。
【0030】本発明者らのさらなる研究によれば、本発
明の(A)および(B)成分からなる組成物によって象
牙質表面上に形成された被膜の耐久性は、エマルジョン
の分散媒に含まれている金属イオンの濃度によって影響
を受け、金属イオン濃度が高いほど被膜の耐久性は低下
することが明らかになった。そのため、エマルジョンの
分散媒中の金属イオンと被膜の耐久性を検討したとこ
ろ、エマルジョンを精製し、金属イオン濃度を好ましく
は1000ppm以下、より好ましくは800ppm以
下、最も好ましくは500ppm以下にすることによっ
て良好な被膜の耐久性が得られることが判明した。
【0031】金属イオン濃度を上記のように低濃度にす
る方法として、加水限外濾過法が用いられる。加水限外
濾過法は膜濾過や膜分離手法のひとつとして食料品、医
薬をはじめ工業的にも使用されている。限外濾過装置お
よび膜は、編集幹事・清水博、監修・中垣正幸、「膜処
理技術大系」(フジテクノシステム出版)において記載
されている。本発明においては、上記の書物記載の装置
を使用することができ、月刊フードケミカル'90 1
2月号、日笠勝著「平膜型UF装置の最近の応用」に記
載のUF装置および膜を使用することも出来る。さらに
具体的には、例えば、ローヌ・プーラン製PCカセット
システムを使用することができる。また、カセット状に
なった膜の素材としては、ポリアクリロニトリル共重合
体、ポリフッ化ビニリデン、スルホン化ポリスルホンお
よびポリエーテルスルホンなどが挙げることができ、特
にスルホン化ポリスルホンが好ましく使用できる。
【0032】本発明において、エマルジョンの分散媒中
の金属イオン濃度を減少するために使用できる水とし
て、通常の蒸留水、脱イオン水、精製水などを挙げるこ
とができる。さらに、例えば水の電気分解などによって
得られる強酸化水や強酸性水などと呼ばれる水も使用す
ることができる。上記の水は、含有する金属イオン濃度
が、好ましくは100ppm以下、より好ましくは10
ppm以下、最も好ましくは1ppm以下であることが
望ましい。さらに、本発明においては、口腔内で使用さ
れる組成物であることを考慮して、日本薬局法の基準に
適合した水および食品添加物として認可された水など医
療、医薬および食品などの基準に適合した水を使用する
ことが好ましい。
【0033】本発明の(A)成分は、分散媒中の金属イ
オン濃度を1000ppm以下にすることによって良好
な被膜の耐久性が得られる効果の他に、驚くべきことに
は、特に加水限外濾過法により該濃度を1000ppm
以下にすることによって微生物の繁殖を抑制でき、さら
にカビを混入させても生育しないことが明らかになっ
た。このようなカビなどの微生物の発生および繁殖は、
衛生的でないばかりでなく、悪臭の発生やエマルジョン
粒子の凝集によってエマルジョンが破壊されやすいので
好ましくない。
【0034】エマルジョン中の微生物の発生を防ぐため
に、防腐剤成分(C)を使用することができる。ここ
で、防腐剤は防ばい剤を含む概念である。使用しうる防
腐剤としては、工業的に使用しうる一般的な防腐剤を挙
げることができる。しかしながら、本発明の目的に好適
な防腐剤としては、人体に対して毒性が低く、衛生的な
ものであり、エマルジョン粒子を短期的、長期的に著し
く凝集させずに知覚過敏抑制効果を損なわないものを選
択すべきである。エマルジョン粒子の凝集性は防腐剤の
化学構造や使用量によって強く影響を受ける。一方、防
腐剤の防腐効果はエマルジョンを構成する重合体の成分
や組成、エマルジョン中の種々のカチオンやアニオンな
どの溶解成分の濃度およびエマルジョンのpHなどによ
って強く影響を受ける。従って、人体に対する毒性・衛
生、エマルジョン粒子が凝集しないことおよび防腐効果
の3要素を満たす組合せを選定する。
【0035】本発明の歯科用組成物に好適に使用しうる
防腐剤(C)成分として、具体的にはエタノール、n−
プロパノール、イソプロパノールなどの脂肪族アルコー
ル類;クロロブタノールや2−ブロモ−2−ニトロ−プ
ロパノール−1,3−ジオール(以下、ブロノポールと
略記する)などのハロゲン化脂肪族アルコール類;2,
4−ジクロロベンジルアルコール、2−フェノキシエタ
ノール、フェノキシイロプロパノール、フェニルエチル
アルコール、3−(4−クロロフェノキシ)−1,2−
プロパンジオールなどの芳香族アルコール;5−ブロモ
−5−ニトロ−1,3−ジオキサン、ホルムアルデヒ
ド、パラホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドなどの
アルデヒド類およびヘキサメチレンテトラミン、モノメ
チロールジメチルヒダントイン、ジメチロールメチルヒ
ダントインなどの酸性条件下でアルデヒド類を生成させ
うるアルデヒド徐放剤類;クロロアセトアミドなどのア
ミド類;N,N’−メチレン−ビス(N’−(1−(ヒ
ドロキシメチル)−2,5−ジオキソ−4−イミダゾリ
ジニル)ウレア、N−(ヒドロキシメチル)−N−
(1,3−ジヒドロキシメチル−2,5−ジオキソ−4−
イミダゾリジニル)−N’−(ヒドロオキシメチル)ウ
レアなどのウレア類;
【0036】亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、重亜
硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウム、ピロ亜硫酸ナトリ
ウム、ピロ亜硫酸カリウムなどの無機亜硫酸塩類、重亜
硫酸塩類およびピロ亜硫酸塩類;ホウ酸などの無機酸
類;ギ酸、プロピオン酸、10−ウンデセン酸、ソルビ
ン酸、安息香酸、サリチル酸、2−アセチル−5−ヒド
ロキシ−3−オキソ−4−ヘキサン酸δラクトンなどの
有機酸化合物類;2,6−ジアセチル−7,9−ジヒドロ
キシ−8,9b−ジメチル−1.3−(2H、9bH)−
ジベンゾフランジオンなどの抗生物質類;p−ヒドロキ
シ安息香酸メチル、p−ヒドロキシ安息香酸エチル、p
−ヒドロキシ安息香酸n−プロピルならびにイソプロピ
ル、p−ヒドロキシ安息香酸n−ブチルまたはイソブチ
ルまたはt−ブチル、p−ヒドロキシ安息香酸ベンジル
などのp−ヒドロキシ安息香酸エステル化合物類;
【0037】4−クロル−3−メチルフェノール、4−
クロル−3,5−キシレノール、3,4,5,6−テトラブ
ロモ−o−クレゾール、2,4−ジクロロ−3,5−キシ
レノール、2−ベンジル−4−クロロ−フェノール、
2,2’−メチレン−ビス−(4−クロロフェノー
ル)、3,3’−ジブロモ−5,5’−ジクロロ−2,
2’−ジヒドロキシ−ジフェニルメタン、2,2’−メ
チレンビス(3,4,6−トリクロロフェノール)などの
ハロゲン化フェノール化合物類;4−クロル−5−メチ
ル−2−(1−メチルエチル)フェノール、1−メチル
−2−ヒドロキシ−4−イソプロピルベンゼン、2−フ
ェニルフェノール、4−イソプロピル−3−メチル−フ
ェノールなどのフェノール化合物類;2,4,4’−トリ
クロロ−2’−ヒドロキシジフェニルエーテルなどのジ
フェニルエーテル化合物類;
【0038】3,4,4’−トリクロロカルバニリド、
4,4’−ジクロロ−3−(3−フルオロメチル)カル
バニリドなどのカルバニリド化合物類;4,4’−ジア
ミジノ−α,ωジフェノキシプロパンイセチオネート、
4,4’−(トリメチレンジオキサン)−ビス−(3−
プロモベンザミジン)ジイセチオネート(以下、ジブロ
モプロパミジンと略記する)、1,6−ジ(4−アミジ
ノフェノキシ)−n−ヘキサン(以下、ヘキサミジンイ
セチオネートと略記する)などのベンザミジン化合物
類;ピリジン−1−オキサイド−2−チオール−ナトリ
ウム塩、ジンクビス−(2−ピリジンチオール−1−オ
キサイド)ビス−(2−ピリジルチオ)ジンク−1,
1’−ジオキサイド(ジンクピリジオン)などの環状チ
オヒドロキサム酸類またはその塩類;5 アミノ−1,
3−ビス(2−エチルヘキシル)−5−メチルヘキサヒ
ドロピリミジン(ヘイセチジン)、トリス−ヒドロキシ
エチルヘキサヒドロトリアジンなどのN−アセタール化
合物類;N−(トリクロロメチルチオ)−4−シクロヘ
キサン−1,2−ジカルボキシミド(カプタン)などの
フタルイミド誘導体類;6−アセトキシ−2,4−ジメ
チル−m−ジオキサン(ジメトキサン)などのo−アセ
タール化合物類;
【0039】4,4−ジメチル−1,3−オキサゾリジン
(オキサジンA)などのオキサゾリジン化合物類;8−
ヒドロキシキノリンなどのキノリン化合物類;ビス(p
−クロロフェニルジグアナイド)ヘキサン、ポリヘキサ
メチレンビグアナイド塩酸塩などの陽イオン性物質類;
アルキルトリメチルアンモニウムブロマイド、N−ドデ
シル−N,N−ジメチルベンジルアンモニウム、N,N−
ジメチル−N−(2−(2−(4−(1,1,3,4−テ
トラメチルブチル)フェノキシ)エトキシ)エチル)ベ
ンゼンメタンアンモニウムクロライドなどの4級塩化合
物類;エチルマーキュリーチオサリシレート、酢酸フェ
ニル水銀などの有機水銀化合物類;よう素酸ナトリウム
などのよう素化合物類;グリセリルモノラウレート類;
1−ヒドロキシ−4−メチル−6−(2,4,4−トリメ
チルペンチル)−2−(1H)ピリドンエタノールアミ
ン塩などのピリドン誘導体類などを挙げることができ
る。これらの防腐剤は使用するエマルジョンの著しい凝
集または象牙細管封鎖性を阻害しないものを選択使用す
ることが好ましい。
【0040】(メタ)アクリル酸アルキルエステルとス
チレンスルホン酸の共重合体からなるエマルジョンと好
適に組合せる防腐剤としては、2−フェノキシエタノー
ル、安息香酸およびフェネチルアルコールを挙げること
ができる。これらの防腐剤・防ばい剤についての毒性に
ついては、安息香酸が香粧品用に最終的に認可されてお
り、2−フェニルアルコールおよびフェネチルアルコー
ルは、香粧品用に暫定的に認可を受けている化合物であ
る(香粧品・医薬品、防腐殺菌剤の科学、ジョン・J・
カバラ編、フレグランスジャーナル社を参照のこと)。
【0041】防腐剤成分(C)は、使用する化合物とエ
マルジョンによって使用量が異なるが、(A)成分およ
び(C)成分の合計量100重量部に対して0.01〜
50重量部、好ましくは0.01〜20重量部、最も好
ましくは0.01〜10重量部用いられる。
【0042】
【実施例】以下、本発明を実施例により説明するが、本
発明はこれら実施例に限定されるものではない。 (知覚過敏象牙質モデルの作製)抜去して冷凍保存した
牛歯前歯を使用直前に解凍し、低速回転式ダイヤモンド
カッター(ISOMET、BUHLER)にて注水下
で、約10×10×2mmの象牙質板を切り出した。象
牙質表面の片面をハミガキ清掃剤(ホワイトサンスター
F、サンスター)のついたハブラシ(GUM、バトラ
ー)を用いて注水下約20〜30g/cm2の力で約2
〜3分間ブラッシングした。十分に水洗して、さらに水
中で超音波を10分間かけることによって洗浄し、ブラ
ッシングした表面を知覚過敏象牙質モデルとした。その
後、以下の実験に使用するまでの間水中で保管した。た
だし、調製した知覚過敏象牙質モデルは24時間以内に
使用した。
【0043】(知覚過敏抑制効果の評価方法)水中から
取り出した知覚過敏象牙質モデル表面からエアブローに
よって見かけ上の水分を取り除き乾燥した。1ヶのスポ
ンジ球(スーパーボンドC&B附属スポンジ、サイズ
S)をピンセットで挟んで、本発明の歯科用組成物を十
分に浸したスポンジにて知覚過敏象牙質モデル表面に塗
布して20秒間静置、さらに液が飛散しないようにエア
ブローによって乾燥することによって、象牙質知覚過敏
抑制のための被膜を形成した。被膜形成した知覚過敏象
牙質モデルは、条件(i)水中において超音波を5分間
かける処理を行った後に、あるいは条件(ii)ハブラシ
を用いて注水下100gの荷重で1000回ブラッシン
グし水洗する処理を行った後に、象牙細管の封鎖状態を
1000倍に拡大した走査型電子顕微鏡(SEM)写真
にて観察した。象牙細管の封鎖状態は、次式の象牙質細
管の封鎖率によって評価した。
【0044】
【数1】
【0045】吉山らはJ.dDent.Res.68(11),1498-1502,N
ovember,1989において、象牙質細管の開口率を算出して
おり、象牙質知覚過敏症の象牙質細管は約75%開口し
ており、知覚過敏症状のない象牙質の象牙質細管は約2
5%しか開口していないことを報告している。該報告を
もとに評価すると、本発明における象牙質細管封鎖率が
約75%以上の場合には象牙質知覚過敏症を十分に抑制
しており、約25%以下の場合には抑制できていないと
評価できる。上記評価を行うに当り、条件(i)を行う
ことによって表面上の被膜に吸着した異物を除去して被
膜による象牙質細管の封鎖状態のみを評価することがで
きる。条件(ii)によって被膜の歯ブラシ磨耗耐久性と
封鎖耐久性を評価することができ、実際の口腔内におけ
る耐久性を評価することができる。
【0046】(エマルジョン合成例)蒸留水50mlを
60℃に昇温し、窒素ガスを1時間バブリングした。窒
素雰囲気下、メチルメタクリレート(MMA)2.0
g、スチレンスルホン酸ソーダ(SSNa)0.54
g、過硫酸カリウム30mg、亜硫酸水素ナトリウム1
0mgを添加し、2.5時間60℃で激しく攪拌した。
さらに、MMA1.0g、過硫酸カリウム15mg、亜
硫酸水素ナトリウム7mgを30分間隔で4回添加した
後、さらに19.5時間激しく攪拌した。室温に冷却
後、濃塩酸0.19mlを加えて2時間攪拌し、透析チ
ュ−ブに入れて蒸留水を5日間毎日交換しながら透析を
繰り返した。このチュ−ブを常温、常圧下、乾燥して、
固形分10.9wt%のエマルジョンを得た。元素分析
からこの重合体のMMAユニットの含量は96.9mo
l%であった。得られた重合体を分子量既知のポリメタ
クリル酸メチルを標準試料としてGPCを用いて分析し
たところ数平均分子量(Mn)は1.0×106であっ
た。透過型顕微鏡観察より、この乳化重合体エマルジョ
ン粒子は直径0.1〜0.5μmの範囲にあり、レーザ回
折/散乱式粒度分布測定装置(LA−910、ホリバ)
により全ての重合体のエマルジョン粒子の直径が1μm
以下であることが確認された。以下、このエマルジョン
をMSEと略記する。
【0047】上記エマルジョンMSEを蒸留水で希釈し
て、不揮発性成分5重量%のエマルジョンMSEに、カ
ルシウム化合物としての塩化カルシウムを1重量%溶解
する水溶液を等重量添加し、攪拌した後、粒度分布測定
装置LA−910にて同様に粒径を測定した。エマルジ
ョンMSEに存在していた重合体エマルジョン粒子は、
凝集しており、その粒径は0.1〜700μmの広範囲
に分布し、約0.3および約40μmにピークを有して
いた。
【0048】実施例1 本発明の歯科用組成物として、MSEを蒸留水で希釈し
て5重量%の重合体を水中に含むエマルジョンと3重量
%のシュウ酸水溶液を別の容器に保存し、使用直前に
0.05gずつ取り出して十分に混合し、液の混合から
1分以内の歯科用組成物を使用した。その結果、条件
(i)および(ii)の処理を行った後の象牙細管封鎖率
はいずれも100%であった。
【0049】実施例2 患部が過度のハブラシ使用によって歯牙が摩耗した状態
である、主に冷水痛および擦過痛を誘発する象牙質知覚
過敏症に悩むボランティア患者20名に対して、実施例
1の歯科用組成物を適用した。象牙質表面は比較的清潔
であるため表面を緩やかなエアブローによって乾燥し、
実施例1の歯科用組成物を同様の手順で適用し被膜を形
成した。その結果、全患者において冷水痛および擦過痛
ともに適用直後および約3カ月経過後の現在に至っても
知覚過敏は感じられていない。
【0050】実施例3 患部が歯肉後退によって露出した歯根部分であり、主に
冷水痛を誘発する象牙質知覚過敏症に悩むボランティア
患者10名に対して、実施例1の歯科用組成物を適用し
た。象牙質表面は比較的清潔であったため表面を緩やか
なエアブローによって乾燥し、実施例1の歯科用組成物
を同様の手順で適用し被膜を形成した。その結果、全患
者において冷水痛は適用直後および約3カ月経過後の現
在に至っても知覚過敏は感じられていない。
【0051】比較例1 実施例1において本発明の歯科用組成物を使用せずに、
条件(i)および(ii)の処理を行った後の象牙細管封
鎖率を調べた結果、両条件ともに0%であり全ての象牙
細管が全て開口していた。
【0052】比較例2 実施例1において本発明の歯科用組成物の代わりとし
て、5重量%の重合体を含むエマルジョンのみを使用し
た。その結果、条件(i)の処理を行った後の象牙細管
封鎖率は約10%であり、条件(ii)の処理を行った後
は0%であった。
【0053】比較例3 実施例3において、本発明の歯科用組成物の代わりに、
比較例2のエマルジョンを使用して実施例3を繰返し
た。すなわち、患部が歯肉後退によって露出した歯根部
分であり、主に冷水痛を誘発する象牙質知覚過敏症に悩
むボランティア患者5名に対して、上記エマルジョンを
適用した。その結果、4名の患者において冷水痛は適用
直後に抑制され知覚過敏は感じなくなったものの約3〜
4日後には象牙質知覚過敏症が再発した。1名は適用直
後にも効果が認められなかった。
【0054】比較例4 実施例1において本発明の歯科用組成物の代わりとし
て、30重量%のシュウ酸カリウム水溶液のみを使用し
た。その結果、条件(i)の処理を行った後の象牙細管
封鎖率は約70%であり、条件(ii)の処理を行った後
の象牙細管封鎖率は10%であった。
【0055】実施例4 前記エマルジョン合成例において、透析チューブの代わ
りに加水限外濾過装置を用いる他は、該合成例を繰返
し、エマルジョンを合成した。加水限外濾過装置として
限外濾過装置PCカセットシステム(ローヌ・プーラン
製)とスルホン化ポリスルホン膜のIRIS3026を用いて加
水倍率5倍まで精製をおこなった。限外濾過装置の膜面
積は0.506m2、平均操作圧は0.5〜3kgf/c
mであった。以下、限外濾過装置および濾過膜は同じ物
を使用し実験に供した。該エマルジョンを不揮発成分濃
度5重量%まで蒸留水で希釈した。サンプルの一部を取
り出して、エマルジョン粒子を限外濾過装置にて濾過し
て濾液中の金属イオン濃度を卓上型プラズマ発光分光分
析装置(SPS7700、セイコー電子工業株式会社
製)にて行った。以下の実験においても同測定装置を使
用した。測定した分散媒中の金属イオンは、モノマーや
重合開始剤由来のナトリウムおよびカリウムイオンが大
部分を占め、その他の金属はほとんど検出されなかった
ため、NaとKに限定して定量した。その結果、金属イ
オン濃度(Na+K)は230ppmであった。該エマ
ルジョンをふた付ポリ容器中に移し、約3ヶ月間室温暗
所中で保存した。その結果、カビの発生は認められなか
った。該観察に用いた容器は、容器内のに付着した微生
物の影響をなくするために、あらかじめエタノールにて
洗浄し乾燥した物を使用した。以下、容器は同様に洗浄
して実験に供した。上記で合成した5重量%の重合体を
含むエマルジョンと3重量%シュウ酸(2水和物)水溶
液をべつの容器に保存し、使用直前に0.05gずつ取
り出して混合し、液の混合から1分以内の本発明の歯科
用組成物を使用して、知覚過敏抑制効果の評価および耐
久性評価を行った。その結果、条件(i)および条件
(ii)の試験における象牙細管封鎖率はいずれも100
%であり、条件(i)において超音波を5分間かける代
わりに35分間かける処理(以下、「条件(iii)」と
いう)による試験においては約40%であった。条件
(ii)では、象牙質表面に形成した被膜の歯ブラシ磨耗
耐久性と細管封鎖性を調べることができる。しかし、歯
ブラシの毛先の直径が通常100〜400μmであるの
で、細管内部に形成された被膜の封鎖耐久性を評価でき
ない。そこで、実際には超音波が照射されることがない
けれども、細管内部の封鎖耐久性を評価する目安とし
て、超音波を35分照射する試験(条件(iii))を行
った。
【0056】カビ発生実験および防腐剤の適正実験 実験No.1 エマルジョン合成実施例に準じて新たに合成し透析チュ
ーブにて精製したエマルジョンを、不揮発成分濃度5重
量%まで蒸留水で希釈した。サンプルの一部を取り出し
て、エマルジョン粒子を実施例4に準じて濾液の金属イ
オン濃度を測定した。その結果、金属イオン濃度(Na
+K)は1200ppmであった。該エマルジョンをふ
た付ポリ容器中に移し、約3ヶ月間室温暗所中で保存し
た。エマルジョン中には0.1〜3mm程度の黒色のカ
ビが多数発生していた。 実験No.2 実験No.1の精製直後の5重量%の重合体を含むエマ
ルジョンと3重量%シュウ酸(2水和物)水溶液をべつ
の容器に保存し、使用直前に0.05gずつ取り出して
混合し、液の混合から1分以内の本発明の歯科用組成物
を使用して、知覚過敏抑制効果の評価および耐久性評価
を行った。その結果、条件(i)および条件(ii)の試
験における象牙細管封鎖率はいずれも約100%であっ
たが、条件(iii)の試験においては0%であった。
【0057】実験No.3 エマルジョン合成実施例に準じて新たに合成し透析チュ
ーブにて精製したエマルジョンを、不揮発成分濃度5重
量%まで蒸留水で希釈した。サンプルの一部を取り出し
て、エマルジョン粒子を実施例4に準じて濾液の金属イ
オン濃度を測定した。その結果、金属イオン濃度(Na
+K)は300ppmであった。該エマルジョンをふた
付ポリ容器中に移し、約3ヶ月間室温暗所中で保存し
た。エマルジョン中には0.1〜3mm程度の黒色のカ
ビが数個発生していた。 実験No.4 エマルジョン合成実施例に準じて合成し、加水限外濾過
装置を用いて加水倍率0.3倍で精製をおこなった。該
エマルジョンを不揮発成分濃度5重量%まで蒸留水で希
釈した。サンプルの一部を取り出して、エマルジョン粒
子を実施例4に準じて濾液の金属イオン濃度を測定し
た。その結果、金属イオン濃度(Na+K)は約150
0ppmであった。該エマルジョンをふた付ポリ容器中
に移し、約3ヶ月間室温暗所中で保存した。その結果、
カビの発生は認められなかった。しかし、知覚過敏抑制
効果の評価および被膜の耐久性評価の結果、条件(i)
および条件(ii)の試験ではいずれも約80%であった
が、条件(iii)の試験では0%であった。本実験と実
験No.3との対比によって、加水限外濾過装置を用い
ることによるカビ発生の防止効果が確認できた。しか
し、被膜の耐久性は不十分であった。
【0058】実験No.5 エマルジョン合成実施例に準じて合成し、加水限外濾過
装置を用いて加水倍率2倍で精製をおこなった。該エマ
ルジョンを不揮発成分濃度5重量%まで蒸留水で希釈し
た。サンプルの一部を取り出して、実施例4に準じて濾
液の金属イオン濃度を測定した。その結果、金属イオン
濃度(Na+K)は約970ppmであった。該エマル
ジョンをふた付ポリ容器中に移し、約3ヶ月間室温暗所
中で保存した。その結果、カビの発生は認められなかっ
た。また、知覚過敏抑制効果の評価および耐久性評価の
結果、およびの試験ではいずれも約90%であり、
の試験でも約20%であった。本実験と実験No.4
との対比によって、分散媒中の金属イオンの削減による
被膜耐久性の向上が確認できた。 実験No.6 エマルジョン合成実施例に準じて合成し、加水限外濾過
装置を用いて加水倍率5倍で精製をおこなった。該エマ
ルジョンを不揮発成分濃度5重量%まで蒸留水で希釈し
た。サンプルの一部を取り出して、エマルジョン粒子を
実施例4に準じて濾液の金属イオン濃度を測定した。そ
の結果、金属イオン濃度(Na+K)は約300ppm
であった。該エマルジョンをポリ容器中に移し、約3ヶ
月間室温暗所中で保存した。その結果、カビの発生は認
められなかった。また、知覚過敏抑制効果の評価および
耐久性評価の結果、条件(i)および条件(ii)の試験
ではいずれも100%であり、条件(iii)の試験では
約40%であった。
【0059】実験No.7 実験No.5に記載のエマルジョン(金属イオン:97
0ppm)をそれぞれプラスチックねじ蓋付き20cc
容量の褐色ガラス瓶に10g入れ、このサンプルを各エ
マルジョン3本ずつ作製した。さらに、実験No.1の
エマルジョンに発生したカビを1〜2mmサイズにして
各サンプル中に入れ、サイズをノギスにて測定後、室温
暗所で2ヶ月間静置してカビを生育させた。その結果、
3本のサンプル中1本のエマルジョンにおけるカビのサ
イズが約25%大きくなっていたが、他の2本のエマル
ジョンにおけるカビのサイズに変化がなかった。この結
果は、加水限外濾過後にカビなどの微生物が混入しても
生育を抑制することができることを示唆する。 実験No.8 実験No.6に記載のエマルジョン(金属イオン:30
0ppm)をそれぞれプラスチックねじ蓋付き20cc
容量の褐色ガラス瓶に10g入れ、このサンプルを各エ
マルジョン3本ずつ作製した。さらに、実験No.1の
エマルジョンに発生したカビを1〜2mmサイズにして
各サンプル中に入れ、サイズをノギスにて測定後、室温
暗所で1〜2ヶ月間静置してカビを生育させた。その結
果、3本のサンプル中のすべてのエマルジョンにカビの
サイズに変化は認められなかった。
【0060】実験No.9 実験No.4に記載のエマルジョン(金属イオン:15
00ppm)をそれぞれプラスチックねじ蓋付き20c
c容量の褐色ガラス瓶に10g入れ、このサンプルを各
エマルジョン3本ずつ作製した。さらに、実験No.1
のエマルジョンに発生したカビを1〜2mmサイズにし
て各サンプル中に入れ、サイズをノギスにて測定後、室
温暗所で1〜2ヶ月間静置してカビを生育させた。その
結果、3本のサンプル中のすべてのエマルジョンにカビ
のサイズ10〜50%の拡大が認められた。この結果
は、加水限外濾過後にカビなどの微生物が混入すると生
育してしまい、本発明の組成物における衛生性を損なう
ので好ましくないことを示す。
【0061】実験No.10 実験No.4におけるエマルジョン(1500ppm)
に防腐剤として3重量%の2−フェニルアルコールを添
加し、実験No.7と同様にカビを加え1ヶ月間室温暗
所で保管したところ、全てのサンプルにカビのサイズ拡
大は認められず、さらにエマルジョンの状態にも変化が
なかった。 実験No.11 実験No.4におけるエマルジョン(1500ppm)
に防腐剤として0.3重量%の安息香酸を添加しし、実
験No.7と同様にカビを入れて1ヶ月間室温暗所で保
管したところ、全てのサンプルにカビのサイズ拡大は認
められず、さらにエマルジョンの状態にも変化がなかっ
た。 実験No.12 実験No.4におけるエマルジョン(1500ppm)
に防腐剤として2重量%のフェネチルアルコールを添加
し、実験No.7と同様にカビを入れて1ヶ月間室温暗
所で保管したところ、全てのサンプルにカビのサイズ拡
大は認められず、さらにエマルジョンの状態にも変化が
なかった。
【0062】実験No.13 実験No.4におけるエマルジョン(1500ppm)
に防腐剤とし0.5重量%サリチル酸を使用したとこ
ろ、サリチル酸がエマルジョンには溶解しなかった。 実験No.14 実験No.4におけるエマルジョン(1500ppm)
に防腐剤として0.5重量%ホルムアルデヒドを使用し
たところ、エマルジョンが1週間以内に凝集した。 実験No.15 実験No.4におけるエマルジョン(1500ppm)
に防腐剤として0.5重量%グルタールアルデヒドを使
用したところ、エマルジョンが1週間以内に凝集した。 実験No.16 実験No.4におけるエマルジョン(1500ppm)
に防腐剤として0.5重量%ジンクビス−(2−ピリジ
ンチオール−1−オキサイド)ビス−(2−ピリジルチ
オ)ジンク−1,1’−ジオキサイド(ジンクピリジオ
ン)を使用したところ、エマルジョンが直ちに凝集し
た。
【0063】
【発明の効果】本発明の歯科用組成物は、象牙質知覚過
敏症の治療において患部の性質に影響されずに知覚過敏
症の原因となる開口した象牙細管を封鎖し、即効的ある
いは持続的に知覚過敏を抑制できる。また、該歯科用組
成物は、保存安定性に優れる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C08L 33/08 C08L 33/08 101/00 101/00 C09D 5/00 C09D 5/00 //(A61K 31/78 A61K 31:19 31:19) (72)発明者 細美 靖和 滋賀県守山市古高町571−2 サンメデ ィカル株式会社内 (72)発明者 荒田 正三 滋賀県守山市古高町571−2 サンメデ ィカル株式会社内 (72)発明者 田中 晴美 滋賀県守山市古高町571−2 サンメデ ィカル株式会社内 (56)参考文献 特開 平6−57080(JP,A) 特開 平5−255029(JP,A) 特開 平4−217904(JP,A) 特開 平6−145020(JP,A) 特開 平5−70358(JP,A) 特開 平6−116153(JP,A) 特開 平2−261442(JP,A) 特開 昭59−145211(JP,A) 特開 昭61−136503(JP,A) 国際公開96/017581(WO,A1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A61K 6/08 C08L 33/08 C08L 101/00

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (A)(1)象牙質細管径よりも小さい
    粒子径を有し、カルシウム化合物と反応して象牙細管径
    よりも大きな凝集体を形成する重合体粒子をエマルジョ
    ン粒子として含有し、そして (2)加水限外濾過により精製されて分散媒中の金属イ
    オン濃度が1000ppm以下とされた、 水性エマルジョン成分、および (B)水溶性有機酸またはその水溶性塩成分、ここで該
    有機酸のカルシウム塩は、水不溶性ないし水難溶性であ
    る、を含有することを特徴とする象牙質知覚過敏症用歯
    科用組成物。
  2. 【請求項2】 (A)および(B)成分の合計100重
    量部に対して、(A)成分が50〜99.5重量部であ
    る請求項1に記載の歯科用組成物。
  3. 【請求項3】 該歯科用組成物100重量部のうち、固
    形分換算で、(A)成分中の重合体が0.1〜60重量
    部の範囲にある請求項1または2に記載の歯科用組成
    物。
  4. 【請求項4】 (A)成分中の重合体のエマルジョン粒
    子が粒径3μm未満の粒子を含有する請求項1〜のい
    ずれかに記載の歯科用組成物。
  5. 【請求項5】 (A)成分がカルボキシル基、少なくと
    も1個の水酸基がリン原子に結合している基およびスル
    ホン酸基よりなる群から選択される少なくとも1種の、
    カルシウム化合物と反応し得る官能基を有する重合体の
    エマルジョンである請求項1〜のいずれかに記載の歯
    科用組成物。
  6. 【請求項6】 (A)成分が、共重合体を構成する成分
    として(メタ)アクリル酸アルキルエステル成分とスチ
    レンスルホン酸成分を含む共重合体のエマルジョンであ
    る請求項1〜のいずれかに記載の歯科用組成物。
  7. 【請求項7】 (B)成分がシュウ酸、シュウ酸金属
    塩、シュウ酸アンモニウム塩およびシュウ酸のアミン塩
    よりなる群から選択される少なくとも1種の水溶性シュ
    ウ酸化合物である請求項1〜のいずれかに記載の歯科
    用組成物。
  8. 【請求項8】 (C)無機および有機の防腐剤から選択
    される少なくとも1種の防腐剤成分を含有する請求項1
    のいずれかに記載の歯科用組成物。
JP32282895A 1994-12-13 1995-12-12 象牙質知覚過敏症用歯科用組成物 Expired - Lifetime JP3466350B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP32282895A JP3466350B2 (ja) 1994-12-13 1995-12-12 象牙質知覚過敏症用歯科用組成物

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP6-308666 1994-12-13
JP30866694 1994-12-13
JP32282895A JP3466350B2 (ja) 1994-12-13 1995-12-12 象牙質知覚過敏症用歯科用組成物

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH08225424A JPH08225424A (ja) 1996-09-03
JP3466350B2 true JP3466350B2 (ja) 2003-11-10

Family

ID=26565633

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP32282895A Expired - Lifetime JP3466350B2 (ja) 1994-12-13 1995-12-12 象牙質知覚過敏症用歯科用組成物

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3466350B2 (ja)

Families Citing this family (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
AU719836B2 (en) * 1997-01-09 2000-05-18 Bifodan A/S Use of dichlorobenzyl alcohol for preparing a preparation for topical treatment of inflammation and a preparation containing dichlorobenzyl alcohol
US6241972B1 (en) * 1999-02-19 2001-06-05 Block Drug Company, Inc. Oral care formulation for the treatment of sensitivity teeth
JP4922779B2 (ja) * 2006-02-06 2012-04-25 サンメディカル株式会社 歯牙用漂白剤組成物
JP4832129B2 (ja) * 2006-03-20 2011-12-07 サンメディカル株式会社 歯科用組成物
JP2008184436A (ja) * 2007-01-30 2008-08-14 Sun Medical Co Ltd 知覚過敏抑制性歯科用研磨材組成物
JP4693191B2 (ja) 2009-08-06 2011-06-01 日本歯科薬品株式会社 口腔用剤
JP4662294B1 (ja) * 2010-02-17 2011-03-30 日本歯科薬品株式会社 口腔用剤
US8932060B2 (en) * 2011-09-30 2015-01-13 Kuraray Noritake Dental Inc. Dental treatment method
JP6738136B2 (ja) * 2015-10-02 2020-08-12 サンメディカル株式会社 歯科用組成物

Also Published As

Publication number Publication date
JPH08225424A (ja) 1996-09-03

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR100294395B1 (ko) 상아질지각과민반응증용치과용조성물
JP3502390B2 (ja) 象牙質知覚過敏症用歯科用組成物
US3956480A (en) Treatment of teeth
JP5628031B2 (ja) 治療用歯科用組成物及び関連する方法
JP3466350B2 (ja) 象牙質知覚過敏症用歯科用組成物
JP4852223B2 (ja) 口腔細菌の共凝集抑制剤
CH678598A5 (ja)
JPS59225109A (ja) 口腔内用組成物
WO2021059151A1 (en) Oral care composition with ammonium alkyl sulfonate or carbonate components for treating caries
JP4832129B2 (ja) 歯科用組成物
EP3866934A1 (en) Acyl-n-methylglucamide containing oral care composition for treating caries by reducing lactic acid release in oral biofilms
AU2021203112A1 (en) Composition for the prevention of microbial growth
JPS5849309A (ja) 口腔適用組成物
JP2006056846A (ja) 漂白時の知覚過敏を抑制する歯牙用漂白剤キット
CA2182796C (en) Dental composition for dentin hypersensitivity
CN114948765B (zh) 一种漱口水及其制备方法
JPH0665036A (ja) 口腔用組成物
JP2006298856A (ja) 象牙質知覚過敏予防剤
WO2021140437A1 (en) Anionic alkyl sulphate component for treating caries
EP4065067A1 (en) Oral care composition with cholic acid components for treating caries
WO2020222095A1 (en) Quaternary ammonium alkyl component containing oral care composition for treating caries
RU1799268C (ru) Зубна паста
JP2004091413A (ja) キトサンオリゴ糖含有齲蝕予防・抑制剤
JPH0717499B2 (ja) う蝕菌生育阻害剤
Mukherjee Chemical Plaque Control

Legal Events

Date Code Title Description
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20030818

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090829

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090829

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120829

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130829

Year of fee payment: 10

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

EXPY Cancellation because of completion of term