JP2006298856A - 象牙質知覚過敏予防剤 - Google Patents

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久 久光
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照夫 東光
Mutsuyo Hoshino
睦代 星野
Ko Nishimura
香 西村
Shiro Suzuki
司郎 鈴木
Akihito Kanematsu
昭仁 兼松
Shigemichi Honda
成道 本田
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隆司 山本
Harumi Tanaka
晴美 田中
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Sun Medical Co Ltd
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Abstract

【課題】 象牙質知覚過敏、特に歯の漂白治療時の感受性増加、知覚過敏症を事前に処置することにより予め予防しかつ治療することができる象牙質知覚過敏予防剤並びにそれを有する歯牙用漂白剤キットを提供すること。
【解決手段】 歯牙用漂白剤による処理の前に適用しても実用的に効果を発揮する象牙質知覚過敏予防剤、および歯牙用漂白剤と象牙質知覚過敏予防剤を別個の容器に収納して含有する歯牙用漂白キット。
【選択図】 なし

Description

本発明は、象牙質知覚過敏、特に歯の漂白治療時の感受性増加、知覚過敏症を事前に処置することにより予め予防しかつ治療することができる象牙質知覚過敏予防剤に関する。
更に詳しくは、過酸化水素等を用いた歯牙漂白剤ならびに歯牙漂白時に誘引される冷・温水痛、甘味痛、酸味痛および擦過痛など疼痛が生じる象牙質知覚過敏を事前に予防するための象牙質知覚過敏予防剤並びにそれを有する歯牙用漂白剤キットに関する。
近年、口腔内の審美性に関する意識の向上により、変色歯や着色歯の審美性改善を求める患者が増大している。従来、これらの審美性改善のためには、歯質を一定量削除し、歯冠補綴やラミネートベニア等のテクニックを用いて人工物で置き換える治療が主に行われてきた。
しかしながら、これらの治療法では、審美的な理由のみで多くの歯質を削除することになり、歯牙は再生できない組織でもあることから、近年の歯科治療のトレンドであるミニマルインターベンション(最小限の侵襲)という概念とも相容れない。
その様な状況の中で、全く歯牙を削除しない審美性回復手段として、歯牙漂白法が多く用いられるようになってきた。歯牙漂白法としては、無髄歯に対して、髄腔内に過硼酸ナトリウムと高濃度(30−35%)の過酸化水素水の混合物を封入して漂白するウォーキングブリーチ法、有髄歯に対して高濃度(30−35%)の過酸化水素水を用いて歯科医院内で漂白するオフィスブリーチ法、比較的低濃度(10−22%)の過酸化尿素を用いて患者自身が自宅で漂白するホームブリーチ法などがある。
過酸化水素水を用いた有髄歯の漂白を行うオフィスブリーチ法やホームブリーチ法においては、いずれも感受性増加による知覚過敏症を引き起こす危険を有している。
その対応として、非特許文献1には、漂白剤使用時の主な不快症状である知覚過敏の基本処置として、元の感覚に戻るまで次の処置を先延ばしにするか、積極的に中性フッ化ナトリウムや硝酸カリウムを含有した「知覚過敏予防ジェル」を使用して、短時間で鎮静させることが提案されている。
一方、過度のブラッシングに起因するエナメル質の磨損や歯肉の後退などによって、象牙質が露出乃至はそれに近い状態になることによる、いわば、物理的現象に基づく知覚過敏に適用される知覚過敏予防薬が報告されている。しかし、そのような物理的現象によらない化学的現象に基づくと推定される、漂白治療時の知覚過敏への適用の例はなく、その知覚過敏の詳細なメカニズムさえ未だ不明であるため、前記適用の有効性は知られておらず、もちろん、漂白剤と組み合わせたキットというものも知られていなかった。
歯牙漂白剤による処理等、化学的現象に基づくと推定される知覚過敏素因が歯牙において展開される前に、事前に歯牙に塗布することにより、象牙質知覚過敏症を未然に予防する知覚過敏予防剤については、報告は皆無である。まず、係る予防剤には、前記化学的現象、例えば、歯牙漂白という過酷な化学処理等に対する耐久性が要求されるという困難な条件が求められる。更に、その様な耐久性があったとしても、更に厳しい要求性能が必須である。つまり、歯牙を漂白するには、漂白剤がエナメル質に浸透して、汚れに到達することが重要であると考えられるが、通常の知覚過敏予防剤は、微小なクラックや亀裂を被膜により封鎖し知覚過敏を予防するものである。従って、当該塗布面には、漂白剤の浸透が困難であって、効果的な歯牙漂白は実質上不可能であると考えらてきており、実際、その様な知覚過敏予防剤というものは知られていなかった。
「歯科展望別冊 ホワイトニング」、医歯薬出版 2003
本発明の目的は、前述した従来技術の問題点を解消し、知覚過敏予防剤並びにそれよりなるキットを提供することにある。
本発明の他の目的および利点は以下の説明から明らかになろう。
本発明者は、歯牙漂白等に関し上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、象牙質知覚過敏予防剤を漂白前などに用いることにより歯牙漂白時などに起こる象牙質知覚過敏を予防することを見出し、本発明を完成した。
さらに本発明は、歯牙用漂白剤による処理の前に適用しても実用的に効果を発揮する象牙質知覚過敏予防剤および歯牙用漂白剤と象牙質知覚過敏予防剤を別個の容器に収納した組合せからなる、歯牙漂白時の知覚過敏を予防するための歯牙用漂白剤キットである。
本発明の歯牙用漂白剤キットは、歯牙漂白並びにそれに伴う象牙質知覚過敏の治療において患部の性質に影響されずに着色歯の漂白ならびに知覚過敏を予防することを可能とする。
即ち、漂白前に事前に処置することにより、漂白効果を顕著に妨げずに未然に知覚過敏を予防するものである。
以下、本発明の詳細を説明する。
本発明の象牙質知覚過敏予防剤において好適に対応できる歯牙用漂白剤としては、特に限定されないが以下の態様のものが好適である。
歯牙用漂白剤としては、例えば、過酸化水素、過酸化水素を発生する化合物、無機過酸化物、有機過酸化物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化性化合物を含むものが好ましい。更に具体的に、過酸化水素を発生する化合物としては、例えば過ほう酸塩、過炭酸塩、過硫酸塩、過リン酸塩、ケイ酸ナトリウムの過酸化水素付加物等を挙げることができる。無機過酸化物としては、例えば、過酸化カルシウム、過酸化マグネシウムを挙げることができる。また有機過酸化物としては、例えば、過酸化尿素、ペルオキシ−t−ブトキシド、過安息香酸等の有機過酸が挙げられる。等過ほう酸塩としては、例えば、過ほう酸ナトリウム等が挙げられる。過炭酸塩としては、例えば、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム等が挙げられる。過硫酸塩としては、例えば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等が挙げられる。過リン酸塩としては、例えば、過リン酸ナトリウム等が挙げられる。これらのうち、過酸化水素、過酸化尿素、過ホウ酸ナトリウムが好ましく、更には、過酸化水素、過酸化尿素が特に好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を混合ないしは化合(複塩など)させるなどして組み合わせて用いてもよい。
また、歯牙用漂白剤は、上記の如き酸化性化合物に加えて、
(i)下記式(a)及び(b):
(式中、Rは炭素数2〜19の直鎖状または分岐鎖状アルキル基であり、Mはアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンまたは水素イオンであり、nは1または2であり、Mがアルカリ金属イオンもしくは水素イオンのときはn=1であり、Mがアルカリ土類金属イオンのときは、n=2である。)のそれぞれで表される化合物のうちの少なくとも一種をさらに含むことが好ましい。更に具体的で好適な例としては、(i)に加えて、
(ii)過酸化水素、過酸化水素を発生する化合物、無機過酸化物、有機過酸化物のうち、少なくとも一種の過酸化物および
(iii)水
を含有する歯牙用漂白剤を挙げることができる。
また、前記成分(i)としては下記式(c):
(式中、mは7〜13の整数を表す。)で表される化合物が好ましく、前記成分(i)としては下記式(d):
(式中、kは7〜13の整数を表す。)で表される化合物が好ましい。
上記成分(i)の式(a)で表わされる化合物としては、例えばプロパノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、ブタノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、ペンタノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、ヘキサノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、ヘプタノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、オクタノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、ノナノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、デカノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、ウンデカノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデカノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、トリデカノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、テトラデカノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、ペンタデカノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、ヘキサデカノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、ヘプタデカノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、オクタデカノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、及び、これらのカリウム塩などが挙げられる。その中では、オクタノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、ノナノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、デカノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、ウンデカノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデカノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、トリデカノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、テトラデカノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、及び、これらのカリウム塩が好ましく、更には、オクタノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、ノナノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、デカノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデカノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウムが特に好ましい。
上記成分(i)の式(b)で表わされる化合物としては、例えばプロパノイルオキシ安息香酸、ブタノイルオキシ安息香酸、ペンタノイルオキシ安息香酸、ヘキサノイルオキシ安息香酸、ヘプタノイルオキシ安息香酸、オクタノイルオキシ安息香酸、ノナノイルオキシ安息香酸、デカノイルオキシ安息香酸、ウンデカノイルオキシ安息香酸、ドデカノイルオキシ安息香酸、トリデカノイルオキシ安息香酸、テトラデカノイルオキシ安息香酸、ペンタデカノイルオキシ安息香酸、ヘキサデカノイルオキシ安息香酸、ヘプタデカノイルオキシ安息香酸、オクタデカノイルオキシ安息香酸、及びこれらのナトリウム塩、カリウム塩などが挙げられる。その中では、オクタノイルオキシ安息香酸、ノナノイルオキシ安息香酸、デカノイルオキシ安息香酸、ウンデカノイルオキシ安息香酸、ドデカノイルオキシ安息香酸、トリデカノイルオキシ安息香酸が好ましく、更には、オクタノイルオキシ安息香酸、ノナノイルオキシ安息香酸、デカノイルオキシ安息香酸、ドデカノイルオキシ安息香酸が特に好ましい。
基本的には、式(a)、(b)に示された基本骨格を有していることが肝要であり、式(a)、(b)中の芳香環や置換基Rに発明の効果を実質上妨げないような置換基(たとえば低級アルキル基等)が存在していてもよいが、通常は存在しない方が好ましい。また、芳香環上の配置はパラ位が好ましいが、オルト、メタ位あってもよい。これらなどを勘案すると、式(a)、(b)で示される化合物は、上記の如く、それぞれ式(c)、(d)で示される化合物であることが好ましい。
成分(i)は歯牙用漂白剤中に、好ましくは0.01〜40重量%、より好ましくは0.1〜30重量%、さらに好ましくは0.2〜20重量%含まれる。
本発明における歯牙用漂白剤は、二酸化チタンおよび/または光触媒を、さらに含有することができる。二酸化チタンとしては、光照射により光触媒作用を生じる二酸化チタンであればその形態、性状を問わずいかなるものも使用することができる。好ましくは、アナターゼ型、ルチル型及びブルッカイト型のいずれかであり、特にルチル型が好ましい。また、アナターゼ型、ルチル型及びブルッカイト型の二酸化チタンの表面にリン酸カルシウムをコーティングすることによって、歯牙表面との親和性を改良したものを用いることもできる。前記コーティングは、平均膜厚0.1〜500nmであることが好ましい。
二酸化チタンは微粒子状であることが好適であり、その平均粒径は好ましくは0.1〜500nm、より好ましくは0.5〜200nm、さらに好ましくは1〜100nmである。更に、光触媒作用を起こす光としては、その波長が380nm以下の紫外線だけでなく450nm以上の可視光を使用することもできる。
なお、平均粒径は、エタノール溶媒中でレーザー回折散乱法(測定条件:懸濁用液体250ml、測定試料20mg、試料投下から測定完了まで5分以内)を用いて測定した。
二酸化チタンは歯牙用漂白剤中に、好ましくは0.00001〜10重量%、より好ましくは0.00001〜5重量%、さらに好ましくは0.0001〜2重量%含まれる。
また、過酸化物の活性や漂白効果をより高めるためのpH調整剤、歯面への塗布性を高めるための増粘剤、塗布範囲を明確にするための着色剤、上記化合物の保存安定性を向上させるための安定剤等を添加することができる。安定剤は歯牙用漂白剤中に、好ましくは0.05〜10重量%、より好ましくは0.08〜5重量%、さらに好ましくは0.1〜3重量%含まれる。前記下限値を下回ると安定効果が十分発揮されず、一方、上限値を上回ると漂白効果を低減することがあり、好ましくない場合がある。
また、安定剤としては、例えばケイ酸ソーダのような過酸化水素安定剤、ジエチレントリアミン五酢酸のようなキレート剤等が挙げられる。
無機増粘剤は歯牙用漂白剤中に、好ましくは0.1〜20重量%、より好ましくは0.2〜15重量%、さらに好ましくは0.3〜10重量%含まれる。増粘剤としては、例えばサポナイト、モンモリロナイト、スチブンサイト、ヘラトライト、スメクナイト、ネクタイト及びセピオライトからなる群から選ばれる少なくとも1種の無機粘土鉱物を使用することもできる。前記下限値を下回ると増粘効果が十分発揮されず、一方、上限値を上回ると粘度が上昇しすぎて取り扱いが困難となることがあり、好ましくない場合がある。
本発明の象牙質知覚過敏予防剤は、歯牙用漂白剤による処理の前に適用しても実用的に効果を発揮することが可能なものである。より具体的には、歯牙用漂白剤による処理の漂白効果を実質上妨げないことを特徴とする象牙質知覚過敏予防剤である。又、歯牙用漂白剤による処理に対して実質上耐久性を有することを特徴とする象牙質知覚過敏予防剤である。
歯牙用漂白剤による処理の漂白効果を実質上妨げないとは、例えば、VITA(Vita Zahnfabrik・H.Rauter GmbH&Co.KG)のVMK-シェイドガイド(色見本)を用いて、視認同定して、評価、測定し評価結果は当該色見本のインデックス記号(A1、A2、・・・等)にて示した値で、好ましくはA2以上、より好ましくはA1-A2以上の白色度、あるいは、色彩計の測定にて、漂白前後の色差が好ましくは4以上、より好ましくは6以上、更に好ましくは7以上である。或いは、象牙質知覚過敏予防剤無処理のものと比較しての漂白前後の色差の差の、処理済みのものに対する比({[予防剤処理済の漂白前後の色差] −[予防剤無処理の漂白前後の色差]}/[予防剤処理済の漂白前後の色差])が好ましくは30%以下、より好ましくは20%以下、更に好ましくは10%以下である。
歯牙用漂白剤による処理に対して実質上耐久性を有するとは、例えば、好ましくは、歯牙エナメル質表面のクラックなどに浸透した象牙質知覚過敏予防剤の充填が分解若しくは消失せず、残存し得ることである。より好ましくは、例え最表面の象牙質知覚過敏予防剤の保護膜層が剥離してもその下層の象牙質知覚過敏予防剤の保護膜層が残存して歯牙表面が露呈しない程度に当該保護膜層が保持され得ることであり、更に好ましくは、歯牙表面に形成された象牙質知覚過敏予防剤の保護膜層が漂白剤にて浸食されず、実質上無傷にて残存し得ることである。
前記の通りの特性を有するならば、本発明の象牙質知覚過敏予防剤としては、特に限定されるものではない。それでも、例えば
(A)象牙質細管径よりも小さい粒子径を有し、カルシウム化合物と反応して象牙細管径よりも大きな凝集体を形成する重合体粒子をエマルジョン粒子として含有する水性エマルジョン成分、および
(B)水不溶性ないし水難溶性のカルシウム塩を形成しうる、水溶性有機酸またはその水溶性塩成分、
を含有する組成物が好ましい。
より好ましくは、
(A)(1)象牙質細管径よりも小さい粒子径を有し、カルシウム化合物と反応して象牙細管径よりも大きな凝集体を形成する重合体粒子をエマルジョン粒子として含有し、そして
(2)分散媒中の金属イオン濃度が1000ppm以下である、
水性エマルジョン成分および
(B)水不溶性ないし水難溶性のカルシウム塩を形成しうる、水溶性有機酸またはその水溶性塩成分、
を含有する組成物である。
以下、象牙質知覚過敏予防剤を詳述する。
(A)成分は高分子エマルジョン(ラテックスと呼ぶ場合もある)であり、天然樹脂や合成樹脂を水中に乳化または分散させたものである。そして(A)成分は乳化または分散している重合体が象牙細管径(直径)よりも小さい粒子径を有するエマルジョン粒子を含み、しかも該エマルジョン粒子がカルシウム化合物と反応することによって象牙質細管径よりも大きな径の凝集体を形成することができることに特徴がある。
象牙質細管を封鎖するのに十分な深さにまで水性エマルジョンを侵入させるために、重合体のエマルジョン粒子の粒径は象牙質細管の直径よりも小さいことが必要である。象牙細管の直径は、位置や深さ、また個体差があるものの通常1〜3μmの範囲にある。従って、(A)成分中の重合体のエマルジョン粒子の平均粒径は3μm以下であることが好ましく、より好ましくは1μm以下である。
なお、象牙質細管の直径は、通常、抜去した歯牙のエナメル質を削り取って露出した象牙質表面を歯磨剤と歯ブラシを使って1分以上ブラッシングを行った後、水中で超音波洗浄を施し、走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察することによって計測できる。
また、(A)成分のエマルジョン粒子の粒径には分布があり、すべてのエマルジョン粒子の粒径が象牙細管径よりも小さい必要はない。(A)成分中のエマルジョン粒子のうち、粒径が3μm未満のものが50重量%以上占めることが好ましく、90重量%以上のエマルジョン粒子の粒径が3μm未満であることがより好ましい。上記の条件に加えて、(A)成分のエマルジョン粒子のうち、粒径が1μm以下のものが65重量%以上占めることが特に好ましく、75重量%以上占めることがとりわけ好ましい。エマルジョン粒子が上記のような粒径分布を有することにより本発明の目的が優れて達成される。
前記(A)成分として使用できる重合体としては、ラジカル重合性単量体から合成される単独重合体または共重合体を挙げることができる。ラジカル重合性単量体としては、例えばブタジエン、イソプレンなどの共役ジエン単量体;スチレン、α−メチルスチレン、クロルスチレンなどの芳香族ビニル単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル単量体;(メタ)アクリル酸(以下、アクリル酸とメタクリル酸の総称としてこのように記載する)メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル;塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニリデンなどのハロゲン化ビニルおよびビニリデン;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステルなどを挙げることができる。これらの単量体は単独であるいは2種以上併用して重合に用いられる。
上記ラジカル重合性単量体から合成される重合体は、カルシウム化合物と反応する官能基で化学結合していることが好ましい。カルシウム化合物と反応する官能基としては、例えばカルボキシル基、少なくとも1個の水酸基がリン原子に結合している基およびスルホン酸基よりなる群から選択される少なくとも一種が挙げられる。上記官能基を導入する方法として、例えばポリスチレンをスルホン化する方法で代表されるポリマーへ官能基を導入する方法、カルボン酸エステルまたはリン酸エステルを含有するポリマーを加水分解する方法を挙げることができる。さらに、上記のラジカル重合性単量体と上記官能基あるいは上記官能基に水中で容易に変換し得る官能基を有するラジカル重合性単量体を共重合させる方法があり、この方法が好ましい。カルシウム化合物と反応する官能基を有するラジカル重合性単量体として、以下の化合物を例示することができる。
カルボキシル基あるいはカルボキシル基に水中で容易に変換し得る官能基を有するラジカル重合性単量体としては、例えばモノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸およびテトラカルボン酸、これらの塩および無水物を挙げることができる。より具体的には(メタ)アクリル酸、マレイン酸等のα不飽和カルボン酸、p−ビニル安息香酸のようにビニル芳香環類が付加したカルボン酸、11−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸(MAC−10)等の、(メタ)アクリロイルオキシ基とカルボン酸基の間に直鎖炭化水素基が存在するカルボン酸、1,4−ジ(メタ)アクリロイルオキシエチルピロメリット酸、6−(メタ)アクリロイルオキシエチルナフタレン−1,2,6−トリカルボン酸等のさらに芳香環を有するカルボン酸、4−(メタ)アクリロイルオキシメチルトリメリット酸およびその無水物、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリット酸およびその無水物、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルトリメリット酸およびその無水物等の4−(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリメリット酸およびその無水物、4−[2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシブチル]トリメリット酸およびその無水物等のさらにアルキル鎖に水酸基等の親水基を有するカルボン酸およびその無水物、2,3−ビス(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)プロピル(メタ)アクリレート等のカルボキシベンゾイルオキシを有する化合物、N,O−ジ(メタ)アクリロイルオキシチロシン、O−(メタ)アクリロイルオキシチロシン、N−(メタ)アクリロイルオキシチロシン、N−(メタ)アクリロイルオキシフェニルアラニン等のN−および/またはO−モノまたはジ(メタ)アクリロイルオキシアミノ酸、N−(メタ)アクリロイル−p−アミノ安息香酸、N−(メタ)アクリロイル−o−アミノ安息香酸等のN−(メタ)アクリロイルアミノ安息香酸、2または3または4−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとピロメリット酸二無水物の付加生成物(PMDM)、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと無水マレイン酸または3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)または3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の付加反応物等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと不飽和ポリカルボン酸無水物の付加反応物、
2−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)−1,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロパン等のポリカルボキシベンゾイルオキシと(メタ)アクリロイルオキシを有する化合物、N−フェニルグリシンまたはN−トリルグリシンとグリシジル(メタ)アクリレートとの付加物、4−[(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)アミノ]フタル酸、3または4−[N−メチル−N−(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)アミノ]フタル酸などを挙げることができる。これらのうち、11−メタクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸(MAC−10)および4−メタクリロイルオキシエチルトリメリット酸(4−MET)またはその無水物(4−META)が好ましく用いられる。
少なくとも1個の水酸基がリン原子に結合している基および水中で容易に該基に変換し得る官能基として、例えばリン酸エステル基で水酸基を1個または2個を有する基およびその塩を好ましく例示することができる。このような基を有する重合性単量体としては、例えば2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシドホスフェート、2および3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルアシドホスフェート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルアシドホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルアシドホスフェート、8−(メタ)アクリロイルオキシオクチルアシドホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルアシドホスフェート、12−(メタ)アクリロイルオキシドデシルアシドホスフェート、ビス{2−(メタ)アクリロイルオキシエチル}アシドホスフェート、ビス{2または3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル}アシドホスフェート等の1つ以上の(メタ)アクリロイルオキシアルキル基を有するリン酸エステル、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルアシドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−p−メトキシフェニルアシドホスフェートなどの(メタ)アクリロイルオキシ基とリン酸基の間に直鎖炭化水素基が存在し、かつ芳香族基も有するするリン酸エステルを挙げることができる。これらの化合物におけるリン酸基を、チオリン酸基に置き換えた化合物も例示することができる。これらのうち、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルアシドホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルアシドホスフェートが好ましく用いられる。
スルホン酸基あるいはスルホン酸基に容易に水中で変換し得る官能基を有する重合性単量体として、例えば2−スルホエチル(メタ)アクリレート、2または1−スルホ−1または2−プロピル(メタ)アクリレート、1または3−スルホ−2−ブチル(メタ)アクリレート等のスルホアルキル(メタ)アクリレート、3−ブロモ−2−スルホ−2−プロピル(メタ)アクリレート、3−メトキシ−1−スルホ−2−プロピル(メタ)アクリレート等のヘテロを含む置換基(ハロゲンやアルコキシ等)を有する炭化水素にスルホン酸基を有する(メタ)アクリレート、1,1−ジメチル−2−スルホエチル(メタ)アクリルアミド等のスルホアルキル(メタ)アクリルアミド、スチレンスルホン酸などの酸およびそれらの塩を挙げることができる。これらのうち、2−メチル−2−(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸またはスチレンスルホン酸およびこれらの塩が好ましく用いられる。
(A)成分に含まれる重合体の数平均分子量Mnは、GPC法で測定して通常3,000以上であり、好ましくは7,000以上、さらに好ましくは10,000以上である。数平均分子量の上限は通常500万である。(A)成分はエマルジョン粒子としての高分子重合体を、好ましくは0.1〜60重量%、より好ましくは0.5〜40重量%、さらに好ましくは1〜20重量%の範囲で含有することができる。
好ましい(A)成分は、乳化剤を使用しない重合法、いわゆるソープフリーエマルジョン重合法によって得られる、炭素数4〜8の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位とスチレンスルホン酸単位をモル比(アクリル酸アルキルエステル単位/スチレンスルホン酸単位)で50/50〜99.5/0.5含有する共重合体をエマルジョン粒子として含有するエマルジョンである。この共重合体のエマルジョンは、特開平6−57080号公報に開示されたものを使用することができる。さらに好ましい(A)成分として、例えば該共重合体のエマルジョン粒子を高速ミキサーやホモジナイザーなどの分散・粉砕器で、好ましくは直径3μm以下、より好ましくは直径1μm以下、最も好ましくは直径0.5μm以下のエマルジョン粒子となし、このエマルジョン粒子が(A)成分の中に0.5重量%以上存在するように調製して分散安定性を向上させたものを使用することができる。また、粒径が1.0μm以下の上記共重合体のエマルジョン粒子が、エマルジョン粒子全体の50重量%以上、特には75重量%以上占めることが好ましく、そしてエマルジョン粒子の全体を占めることが最も好ましい。
(A)成分に含まれる象牙質細管径よりも小さい粒子径を有するエマルジョン粒子は、カルシウム化合物、例えば塩化カルシウムを(A)成分中に添加したときに、該カルシウム化合物と反応して象牙質細管径よりも大きな径を有する凝集体を形成し得る。
通常、該凝集体の径は3μmを超え、好ましくは10μm以上、より好ましくは50〜数千μmに達する。
上記カルシウム化合物の添加量は、エマルジョン中の不揮発性成分100重量部に対して、好ましくは10〜100重量部の範囲である。
このような性質を有する成分(A)を本発明の組成物に用いることにより、象牙質細管に侵入した小さい径のエマルジョン粒子は、主に象牙質細管を形成する管周象牙質中に存在するハイドロキシアパタイトから溶出したカルシウムイオンや象牙質中に含まれる髄液中のカルシウムイオンと反応して、大きな凝集体が多数形成される。
この形成された多数の大凝集体は、象牙質細管内の長さ方向に連続的に充填された状態(被膜)となる。このような状態が形成されることにより、該細管は封鎖される。該細管が封鎖された状態は、本発明の(B)成分を使用することにより速く形成される。またこの状態は、凝集体と象牙質の密着性が長く維持されるので、長期間保持される。
(A)成分100重量部中の不揮発成分が、好ましくは0.1〜60重量部、より好ましくは0.5〜40重量部、さらに好ましくは1〜20重量部の量割合にあるのが望ましい。
象牙質知覚過敏予防剤の(B)成分は、(A)成分に含まれる重合体のエマルジョン粒子の凝集速度、すなわち難溶性ゲル(凝集体)の形成速度を調整するとともに、(B)成分が水に不溶性または難溶性のカルシウム塩を形成することによって難溶性ゲルからなる被膜の耐久性を向上させる役割を果たす。
また、(B)成分のカルシウム塩は種々の形態を有する結晶であり、一般的には球状、比較的丸みのあるラウンド状、板状および針状などの形態を示し、その大きさは結晶形態によって異なるが、例えば球状あるいはラウンド状では平均直径0.1〜10μmの範囲、板状では平均的な1辺の長さが0.1〜10μmの範囲、針状では太さが0.1〜5μm、長さが1〜10μmの範囲である。このような形状のカルシウム塩は、歯質表面および象牙質細管内に(A)成分から生成する難溶性ゲルとともに存在し、象牙質細管の封鎖を促進し、該難溶性ゲル形成時あるいは乾燥時の体積収縮量を減少させる役割を果たす。
象牙質知覚過敏予防剤における(B)成分は、好適には水溶性有機酸またはその水溶性塩である。該有機酸のカルシウム塩は、水不溶性あるいは難溶性塩である。水不溶性または難溶性は、(B)成分を含む溶液とカルシウムイオンを含む溶液を混合した際の沈殿生成の有無で判別される。沈澱生成の有無は、一般的に溶解度積とイオン積の関係で知ることができる。すなわち、(B)成分のカルシウム塩のイオン積が溶解度積と等しい場合、もしくはイオン積が溶解度積よりも大きい場合に水難溶性および水不溶性とすることができる。簡便な沈澱生成の目安として、水溶性有機酸またはその水溶性塩成分の1〜5重量%の濃度範囲の水溶液と同濃度範囲の塩化カルシウム水溶液を混合した場合に肉眼的に沈澱の生成を確認する方法がある。
象牙質知覚過敏予防剤における(B)成分としては、シュウ酸、シュウ酸金属塩、シュウ酸アンモニウム塩およびシュウ酸のアミン塩から選択されるシュウ酸または水溶性シュウ酸塩;プロピオン酸、プロピオン酸金属塩、プロピオン酸アンモニウム塩、プロピオン酸のアミン塩から選択されるプロピオン酸または水溶性プロピオン酸塩などを挙げることができる。
水溶性の目安は、25℃における水への溶解度が0.5g/100ml以上である。かかる化合物として具体的にシュウ酸、シュウ酸水素ナトリウム、シュウ酸ナトリウム、シュウ酸水素カリウム、シュウ酸カリウム、シュウ酸水素リチウム、シュウ酸リチウム、シュウ酸水素アンモニウム、シュウ酸アンモニウム、シュウ酸アニリン、シュウ酸亜鉛カリウム、シュウ酸アルミニウム、シュウ酸アルミニウムアンモニウム、シュウ酸アルミニウムナトリウム、シュウ酸アンチモンカリウム、シュウ酸クロムカリウム、シュウ酸水素バリウム、シュウ酸鉄カリウムなどが挙げられる。なかでもシュウ酸、シュウ酸水素カリウムおよびシュウ酸鉄カリウムが好ましい。
象牙質知覚過敏予防剤において、(A)および(B)成分の合計100重量部のうち(A)成分が、好ましくは50〜99.5重量部、より好ましくは70〜99重量部、最も好ましくは90〜98重量部の範囲にあることにより、本発明の効果が顕著に現れる。
象牙質知覚過敏予防剤の(B)成分の配合量は、(B)成分のカルシウム塩の大きさと析出量に影響する。上記の濃度範囲から外れた低い濃度では析出量が少なかったり、結晶サイズが小さ過ぎたりするため、期待される効果が十分に発揮されないことがある。一方、(B)成分が上記の範囲から外れた高い濃度では、飽和濃度に達して溶液から析出したり、エマルジョン粒子を著しく凝集させたりする場合がある。
(A)成分および(B)成分を含有する組成物の使用方法としては、例えば、
(1)(A)成分と(B)成分を一緒に混合して含む容器に保存し、塗布によって被膜を形成して使用する方法、
(2)(A)成分を含む組成物の入った容器Aと(B)成分を含む組成物の入った容器Bによって保存して、それぞれの組成物を任意の順で逐次的に塗布するかまたは使用直前に混合して塗布することによって被膜を形成して使用する方法、
などを例示することができる。
象牙質知覚過敏予防剤には、発明の効果を損なわない濃度範囲において凝集促進剤を添加することができる。沈殿促進剤の具体的な例として、塩酸、硝酸などの無機酸;鉄、銅、亜鉛、ストロンチウム、銀、スズなどの塩化物および酸化物;蟻酸、酢酸、乳酸、クエン酸、イタコン酸、マレイン酸、コハク酸、リンゴ酸、タンニン酸、トルエンスルホン酸、アジピン酸、酒石酸、アスコルビン酸、有機酸およびその金属塩;さらにはEDTAなどが挙げられる。また、必要に応じてフッ化ナトリウムやフッ化カリウムなどのフッ化物を使用することができる。
また、象牙質知覚過敏予防の効果を損なわない濃度範囲において、塩化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、ハイドロキシアパタイトなどの無機カルシウム塩や有機酸カルシウム塩などを使用することができる。
本発明者らのさらなる研究によれば、象牙質知覚過敏予防剤の(A)および(B)成分からなる組成物によって象牙質表面上に形成された被膜の耐久性は、エマルジョンの分散媒に含まれている金属イオンの濃度によって影響を受け、金属イオン濃度が高いほど被膜の耐久性は低下することが明らかになった。そのため、エマルジョンの分散媒中の金属イオンと被膜の耐久性を検討したところ、エマルジョンを精製し、金属イオン濃度を、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは800ppm以下、最も好ましくは500ppm以下にすることによって良好な被膜の耐久性が得られることが判明した。
金属イオン濃度を上記のように低濃度にする方法として、加水限外濾過法および透析法を用いることができる。なかでも、加水限界濾過法が好ましい方法である。
加水限外濾過法は膜濾過や膜分離手法のひとつとして食料品、医薬をはじめ工業的にも使用されている。限外濾過装置および膜は、編集幹事・清水博、監修・中垣正幸、「膜処理技術大系」(フジテクノシステム出版)において記載されている。
本発明においては、上記の書物記載の装置を使用することができ、月刊フードケミカル’90 12月号、日笠勝著「平膜型UF装置の最近の応用」に記載のUF装置および膜を使用することもできる。さらに具体的には、例えば、ローヌ・プーラン製PCカセットシステムを使用することができる。また、カセット状になった膜の素材としては、ポリアクリロニトリル共重合体、ポリフッ化ビニリデン、スルホン化ポリスルホンおよびポリエーテルスルホンなどが挙げることができ、特にスルホン化ポリスルホンが好ましく使用できる。
象牙質知覚過敏予防剤において、エマルジョンの分散媒中の金属イオン濃度を減少するために使用できる水として、通常の蒸留水、脱イオン水、精製水などを挙げることができる。さらに、例えば水の電気分解などによって得られる強酸化水や強酸性水などと呼ばれる水も使用することができる。上記の水は、含有する金属イオン濃度が、好ましくは100ppm以下、より好ましくは10ppm以下、最も好ましくは1ppm以下であることが望ましい。
さらに、象牙質知覚過敏予防剤においては、口腔内で使用される組成物であることを考慮して、日本薬局法の基準に適合した水および食品添加物として認可された水など医療、医薬および食品などの基準に適合した水を使用することが好ましい。
象牙質知覚過敏予防剤の(A)成分は、分散媒中の金属イオン濃度を1000ppm以下にすることによって良好な被膜の耐久性が得られる効果の他に、驚くべきことには、特に加水限外濾過法により該濃度を1000ppm以下にすることによって微生物の繁殖を予防でき、さらにカビを混入させても生育しないことが明らかになった。このようなカビなどの微生物の発生および繁殖は、衛生的でないばかりでなく、悪臭の発生やエマルジョン粒子の凝集によってエマルジョンが破壊されやすいので好ましくない。
エマルジョン中の微生物の発生を防ぐために、防腐剤成分(C)を使用することができる。ここで、防腐剤は防ばい剤を含む概念である。
使用しうる防腐剤としては、工業的に使用しうる一般的な防腐剤を挙げることができる。しかしながら、本発明の目的に好適な防腐剤としては、人体に対して毒性が低く、衛生的なものであり、エマルジョン粒子を短期的、長期的に著しく凝集させずに知覚過敏予防効果を損なわないものを選択すべきである。エマルジョン粒子の凝集性は防腐剤の化学構造や使用量によって強く影響を受ける。一方、防腐剤の防腐効果はエマルジョンを構成する重合体の成分や組成、エマルジョン中の種々のカチオンやアニオンなどの溶解成分の濃度およびエマルジョンのpHなどによって強く影響を受ける。従って、人体に対する毒性・衛生、エマルジョン粒子が凝集しないことおよび防腐効果の3要素を満たす組合せを選定する。
象牙質知覚過敏予防剤に好適に使用しうる防腐剤(C)成分として、具体的にはエタノール、n−プロパノール、イソプロパノールなどの脂肪族アルコール;クロロブタノールや2−ブロモ−2−ニトロ−プロパノール−1,3−ジオール(以下、ブロノポールと略記する)などのハロゲン化脂肪族アルコール;2,4−ジクロロベンジルアルコール、2−フェノキシエタノール、フェノキシイロプロパノール、フェニルエチルアルコール、3−(4−クロロフェノキシ)−1,2−プロパンジオールなどの芳香族アルコール;5−ブロモ−5−ニトロ−1,3−ジオキサン、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドなどのアルデヒド類およびヘキサメチレンテトラミン、モノメチロールジメチルヒダントイン、ジメチロールメチルヒダントインなどの酸性条件下でアルデヒド類を生成させうるアルデヒド徐放剤;クロロアセトアミドなどのアミド類;N,N’−メチレン−ビス(N’−(1−(ヒドロキシメチル)−2,5−ジオキソ−4−イミダゾリジニル)ウレア、N−(ヒドロキシメチル)−N−(1,3−ジヒドロキシメチル−2,5−ジオキソ−4−イミダゾリジニル)−N’−(ヒドロオキシメチル)ウレアなどのウレア類;
亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウムなどの無機亜硫酸塩、重亜硫酸塩およびピロ亜硫酸塩;ホウ酸などの無機酸;ギ酸、プロピオン酸、10−ウンデセン酸、ソルビン酸、安息香酸、サリチル酸、2−アセチル−5−ヒドロキシ−3−オキソ−4−ヘキサン酸 δ−ラクトンなどの有機酸化合物;2,6−ジアセチル−7,9−ジヒドロキシ−8,9b−ジメチル−1,3(2H,9bH)−ジベンゾフランジオンなどの抗生物質;p−ヒドロキシ安息香酸メチル、p−ヒドロキシ安息香酸エチル、p−ヒドロキシ安息香酸n−プロピルならびにイソプロピル、p−ヒドロキシ安息香酸n−ブチルまたはイソブチルまたはt−ブチル、p−ヒドロキシ安息香酸ベンジルなどのp−ヒドロキシ安息香酸エステル化合物;
4−クロル−3−メチルフェノール、4−クロル−3,5−キシレノール、3,4,5,6−テトラブロモ−o−クレゾール、2,4−ジクロロ−3,5−キシレノール、2−ベンジル−4−クロロフェノール、2,2’−メチレン−ビス−(4−クロロフェノール)、3,3’−ジブロモ−5,5’−ジクロロ−2,2’−ジヒドロキシジフェニルメタン、2,2’−メチレンビス(3,4,6−トリクロロフェノール)などのハロゲン化フェノール化合物;4−クロル−5−メチル−2−(1−メチルエチル)フェノール、1−メチル−2−ヒドロキシ−4−イソプロピルベンゼン、2−フェニルフェノール、4−イソプロピル−3−メチル−フェノールなどのフェノール化合物;2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニルエーテルなどのジフェニルエーテル化合物;
3,4,4’−トリクロロカルバニリド、4,4’−ジクロロ−3−(3−フルオロメチル)カルバニリドなどのカルバニリド化合物;4,4’−ジアミジノ−α,ω−ジフェノキシプロパンイセチオネート、4,4’−(トリメチレンジオキシ)−ビス(3−ブロモベンザミジン)ジイセチオネート(以下、ジブロモプロパミジンと略記する)、1,6−ジ(4−アミジノフェノキシ)−n−ヘキサン(以下、ヘキサミジンイセチオネートと略記する)などのベンザミジン化合物;ピリジン−1−オキサイド−2−チオール−ナトリウム塩、ビス(2−ピリジルチオ)ジンク−1,1’−ジオキサイド(ジンクピリチオン)などの環状チオヒドロキサム酸またはその塩;5−アミノ−1,3−ビス(2−エチルヘキシル)−5−メチルヘキサヒドロピリミジン(ヘキセチジン)、トリス−ヒドロキシエチルヘキサヒドロトリアジンなどのN−アセタール化合物;N−(トリクロロメチルチオ)−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシミド(カプタン)などのフタルイミド誘導体;6−アセトキシ−2,4−ジメチル−m−ジオキサン(ジメトキサン)などのo−アセタール化合物;
4,4−ジメチル−1,3−オキサゾリジン(オキサジンA)などのオキサゾリジン化合物;8−ヒドロキシキノリンなどのキノリン化合物;ビス(p−クロロフェニルジグアナイド)ヘキサン、ポリヘキサメチレンビグアナイド塩酸塩などの陽イオン性物質;アルキルトリメチルアンモニウムブロマイド、N−ドデシル−N,N−ジメチルベンジルアンモニウム、N,N−ジメチル−N−(2−(2−(4−(1,1,3,4−テトラメチルブチル)フェノキシ)エトキシ)エチル)ベンゼンメタンアンモニウムクロライドなどの4級塩化合物;エチルマーキュリーチオサリシレート、酢酸フェニル水銀などの有機水銀化合物;よう素酸ナトリウムなどのよう素化合物;グリセリルモノラウレート類;1−ヒドロキシ−4−メチル−6−(2,4,4−トリメチルペンチル)−2(1H)−ピリドンエタノールアミン塩などのピリドン誘導体類などを挙げることができる。これらの防腐剤は使用するエマルジョンの著しい凝集または象牙細管封鎖性を阻害しないものを選択使用することが好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとスチレンスルホン酸の共重合体からなるエマルジョンと好適に組合せる防腐剤としては、2−フェノキシエタノール、安息香酸およびフェネチルアルコールを挙げることができる。これらの防腐剤・防ばい剤についての毒性については、安息香酸が香粧品用に最終的に認可されており、2−フェニルアルコールおよびフェネチルアルコールは、香粧品用に暫定的に認可を受けている化合物である(香粧品・医薬品、防腐殺菌剤の科学、ジョン・J・カバラ編、フレグランスジャーナル社を参照のこと)。
防腐剤成分(C)は、使用する化合物とエマルジョンによって使用量が異なるが、(A)成分および(C)成分の合計量100重量部に対して0.01〜50重量部、好ましくは0.01〜20重量部、最も好ましくは0.01〜10重量部用いられる。
本発明のさらに好ましい実施態様を記載すれば次のとおりである。
(A)象牙質細管よりも小さい粒子径を有し、カルシウム化合物と反応して象牙細管径よりも大きな凝集体を形成する水性エマルジョン成分、および(B)水溶性有機酸またはその水溶性塩成分、ここで該有機酸のカルシウム塩は、水不溶性ないし水難溶性である、を含有する象牙質知覚過敏予防剤が用いられる。
上記の(A)成分としては、カルボキシル基、少なくとも1個の水酸基がリン原子に結合している基およびスルホン酸基よりなる群から選択される少なくとも1種の、カルシウム化合物と反応し得る官能基を有する重合体のエマルジョンであるか、あるいは、共重合体を構成する成分として(メタ)アクリル酸アルキルエステル成分とスチレンスルホン酸成分を含む共重合体のエマルジョンが用いられる。
一方、上記の(B)成分としては、シュウ酸、シュウ酸金属塩、シュウ酸アンモニウム塩およびシュウ酸のアミン塩よりなる群から選択される少なくとも1種の水溶性シュウ酸化合物が用いられる。
本発明の(A)成分として使用できる重合体としては、ラジカル重合体単量体としては、例えばブタジエン、イソプレンなどの共役ジエン単量体;スチレン、α―メチルスチレン、クロルスチレンなどの芳香族ビニル単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル単量体;(メタ)アクリル酸(以下、アクリル酸とメタクリル酸の総称としてこのように記載する)メチル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ブチルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル;塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニリデンなどのハロゲン化ビニルなどのビニルエステル類などを挙げることができる。これらの単量体は単独であるいは2種以上併用して重合に用いられる。
上記ラジカル重合性単量体から合成される重合体は、カルシウム化合物と反応する官能基と化学結合していることが好ましい。カルシウム化合物と反応する化合物としては、例えばカルボキシル基、少なくとも1個の水酸基がリン原子に結合している基、およびスルホン酸基よりなる群から選択される少なくとも一種が挙げられる。上記官能基を導入する方法として、例えばポリスチレンをスルホン化する方法で代表されるポリマーへ官能基を導入する方法、カルボン酸、カルボン酸エステルまたはリン酸エステルを含有するポリマーを加水分解する方法を挙げることができる。さらに、上記のラジカル重合性単量体と上記官能基あるいは上記官能基に水中で容易に変換し得る官能基を有するラジカル重合性単量体を共重合させる方法があり、この方法が好ましい。カルシウム化合物と反応する官能基を有するラジカル重合性単量体として、以下の化合物を例示することができる。
本発明の歯牙用漂白剤キットは、前記した如き歯牙用漂白剤と象牙質知覚過敏予防剤を別個の容器に収納した組合せからなる。そのため、歯牙用漂白剤で歯牙を漂白する際に、象牙質知覚過敏が患者に発生するのを予防することが容易である。本発明のキットを構成する上記2つの剤は、例えば漂白の対象となる歯牙を漂白剤で漂白する前に、象牙質知覚過敏予防剤で処理するようにして用いられる。
従来、歯牙を漂白するには、漂白剤がエナメル質に浸透して、汚れに到達することが重要であると考えられており、一方、知覚過敏予防剤は、歯牙の微小なクラックや亀裂を被膜により封鎖し知覚過敏を予防するものなので、当該予防剤塗布面には、漂白剤の浸透が困難、即ち、効果的な歯牙漂白は実質上不可能であると考えられてきた。しかしながら、特に前記の通りの処方の知覚過敏予防剤においては、驚くべきことに、歯牙の微小なクラックや亀裂を予防剤被膜により封鎖されているにも関わらず、実用的な漂白が可能である。そのメカニズムに関しては、まだ、詳細が解明されていない。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の例により何ら限定されない。
処置前の歯牙の着色と処置後の歯牙の着色は、下記の色彩計を用いて以下の方式にて色差を測定算出した。
シェードアイNCC(株式会社松風)歯科用色彩計
測色分光光度計(CMS−35FS 株式会社 村上色彩技術研究所)
測色表示にはL、a、b表色系を用い、色差ΔEは次式により算出した。
ΔE=√{(L-L)+(a−a+(b−b
ここで、L、a、bは漂白前の、L、a、bは漂白後の測定値である。
知覚過敏予防効果
走査電子顕微鏡(JSM−5610LV 日本電子(株)社製)を用い、知覚過敏予防剤処置後の漂白前後の表面状態を観察した。
すなわち、知覚過敏予防状態をエナメル質上のMSポリマー被膜状態より評価を行った。
すなわち、知覚過敏予防剤皮膜の最表層が一部剥離していても、歯面全面を当該被膜が全体を覆っていれば、十分に知覚過敏予防されていると判断できる。仮にエナメル表面の露出があっても、当該皮膜の封鎖・充填にて、マイクロクラックが観察されなければ、やはり、知覚過敏予防されていると判断できる。
実施例1
人の抜去歯を半分に分割したサンプル6個に対して、過酸化水素35%含む有髄歯漂白剤「ハイライト」(株式会社松風製)を用い業者指示にて漂白を行った。漂白時間は、光照射時間を含めて約10分であった。
緩やかなエアブローによって乾燥し、以下の調整例1の象牙質知覚過敏予防剤を適用し被膜を形成した。即ち、当該予防剤を30秒かけて擦って塗布することを1回行なった。
続いて、前記と同様の漂白を3回繰り返した。
その結果、平均色差9.0(標準偏差1.1)の変化であった。
比較例1
人の抜去歯を半分に分割したサンプル6個に対して、象牙質知覚過敏予防剤を適用しない以外は、実施例1と同様の操作を行なった。
その結果、平均色差9.7(標準偏差3.8)の変化であった。
実施例1と比較例1を比較して、統計的には有為な差違はなかった。
参考例1
人の抜去歯を半分に分割したサンプル2個に対して、実施例1の通りの象牙質知覚過敏予防剤被膜形成を、3回行なった。
その結果、図1、2の通りの走査型電子顕微鏡観察像が得られた。即ち、エナメル面がフィルム様構造にて覆われていたり(図1)、小孔を有するフィルム様構造が観察された(図2)。
実施例2
人の抜去歯を半分に分割したサンプル2個に対して、実施例1の通りの象牙質知覚過敏予防剤被膜形成を、3回行なったのち、実施例1と同様の漂白を3回繰り返した。
その結果、図3〜5の通りの走査型電子顕微鏡観察像が得られた。即ち、歯牙表面の象牙質知覚過敏予防剤の保護膜について、いずれも微細な亀裂のある膜様構造物が一部剥がれたような像が観察された (図3)。フィルムが部分的に剥がれていた(図4)。フィルムの下に粒状構造が観察された(図5)。しかしながら、予防剤被膜が完全に剥離して歯牙エナメル質表面が明確に露呈している様子は観察されなかった。
比較例2
人の抜去歯を半分に分割したサンプル2個に対して、象牙質知覚過敏予防剤を適用しない以外は、実施例2と同様の操作を行なった。
その結果、図6の通りの走査型電子顕微鏡観察像が得られた。
実施例3
人の抜去歯を半分に分割したサンプル16個に対して、実施例1の通りの象牙質知覚過敏予防剤被膜形成を、3回行なったのち、過酸化尿素10%含む有随歯漂白剤「NITEホワイト・エクセル」(ディスカス・デンタル製)を用い業者指示にて漂白を行った。即ち、サンプルを人工唾液で浸したガーゼで覆い、37℃相対湿度100%状態にて2時間保持した。その後、水洗し、乾燥して、前記漂白剤を塗布した。この操作を14回繰り返した。その結果、色差7.5(標準偏差1.3)の変化であった。
比較例3
人の抜去歯を半分に分割したサンプル16個に対して、象牙質知覚過敏予防剤を適用しない以外は、実施例3と同様の操作を行なった。
その結果、平均色差10.0(標準偏差2.0)の変化であった。
実施例3と比較例3を比較して、統計的には有為な差違はあったが、軽微なものであり、実用上の支障はなかった。
実施例4
人の抜去歯を半分に分割したサンプル2個に対して、実施例1の通りの象牙質知覚過敏予防剤被膜形成を、3回行なったのち、実施例1と同様に漂白を14回繰り返した。
その結果、図7、8の通りの走査型電子顕微鏡観察像が得られた。フィルムは部分的に損傷を受けていた(図7)。又、複層構造が見られた(図8)。しかしながら、実施例2よりも、損傷などは少なく、予防剤被膜が完全に剥離して歯牙エナメル質表面が明確に露呈している様子は観察されなかった。
比較例4
人の抜去歯を半分に分割したサンプル2個に対して、象牙質知覚過敏予防剤を適用しない以外は、実施例4と同様の操作を行なった。
その結果、図9の通りの走査型電子顕微鏡観察像が得られた。
(エマルジョン合成例)
蒸留水50mlを60℃に昇温し、窒素ガスを1時間バブリングした。窒素雰囲気下、メチルメタクリレート(MMA)2.0g、スチレンスルホン酸ソーダ(SSNa)0.54g、過硫酸カリウム30mg、亜硫酸水素ナトリウム10mgを添加し、2.5時間60℃で激しく撹拌した。さらに、MMA1.0g、過硫酸カリウム15mg、亜硫酸水素ナトリウム7mgを30分間隔で4回添加した後、さらに19.5時間激しく撹拌した。室温に冷却後、濃塩酸0.19mlを加えて2時間撹拌し、透析チュ−ブに入れて蒸留水を5日間毎日交換しながら透析を繰り返した。このチュ−ブを常温、常圧下、乾燥して、固形分10.9wt%のエマルジョンを得た。元素分析からこの重合体のMMAユニットの含量は96.9mol%であった。得られた重合体を分子量既知のポリメタクリル酸メチルを標準試料としてGPCを用いて分析したところ数平均分子量(Mn)は1.0×10であった。透過型顕微鏡観察より、この乳化重合体エマルジョン粒子は直径0.1〜0.5μmの範囲にあり、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(LA−910、ホリバ)により全ての重合体のエマルジョン粒子の直径が1μm以下であることが確認された。以下、このエマルジョンをMSEと略記する。
上記エマルジョンMSEを蒸留水で希釈して、不揮発性成分5重量%のエマルジョンMSEに、カルシウム化合物としての塩化カルシウムを1重量%溶解する水溶液を等重量添加し、撹拌した後、粒度分布測定装置LA−910にて同様に粒径を測定した。エマルジョンMSEに存在していた重合体エマルジョン粒子は、凝集しており、その粒径は0.1〜700μmの広範囲に分布し、約0.3および約40μmにピークを有していた。
象牙質知覚過敏予防剤調整例1
前記エマルジョン合成例において、透析チューブの代わりに加水限外濾過装置を用いる他は、該合成例を繰返し、エマルジョンを合成した。加水限外濾過装置として限外濾過装置PCカセットシステム(ローヌ・プーラン社製)とスルホン化ポリスルホン膜のIRIS3026を用いて加水倍率5倍まで精製をおこなった。限外濾過装置の膜面積は0.506m、平均操作圧は0.5〜3kgf/cmであった。以下、限外濾過装置および濾過膜は同じ物を使用し実験に供した。該エマルジョンを不揮発成分濃度5重量%まで蒸留水で希釈した。サンプルの一部を取り出して、エマルジョン粒子を限外濾過装置にて濾過して濾液中の金属イオン濃度を卓上型プラズマ発光分光分析装置(SPS7700、セイコー電子工業株式会社製)にて行った。以下の実験においても同測定装置を使用した。測定した分散媒中の金属イオンは、モノマーや重合開始剤由来のナトリウムおよびカリウムイオンが大部分を占め、その他の金属はほとんど検出されなかったため、NaとKに限定して定量した。その結果、金属イオン濃度(Na+K)は230ppmであった。該エマルジョンをふた付ポリ容器中に移し、約3ヶ月間室温暗所中で保存した。その結果、カビの発生は認められなかった。該観察に用いた容器は、容器内のに付着した微生物の影響をなくするために、あらかじめエタノールにて洗浄し乾燥した物を使用した。以下、容器は同様に洗浄して実験に供した。
上記で合成した5重量%の重合体を含むエマルジョンと3重量%シュウ酸(2水和物)水溶液を別の容器に保存し、使用直前に0.05gずつ取り出して混合し、液の混合から1分以内の本発明の歯科用組成物を使用して、知覚過敏予防効果の評価および耐久性評価を行った。
参考例1の歯牙表面の走査型電子顕微鏡写真である。 参考例1の歯牙表面の別の領域の走査型電子顕微鏡写真である。 実施例2の歯牙表面の走査型電子顕微鏡写真である。 実施例2の歯牙表面の別の領域の走査型電子顕微鏡写真である。 実施例2の歯牙表面の別の領域の走査型電子顕微鏡写真である。 比較例2の歯牙表面の走査型電子顕微鏡写真である。 実施例4の歯牙表面の走査型電子顕微鏡写真である。 実施例4の歯牙表面の別の領域の走査型電子顕微鏡写真である。 比較例4の歯牙表面の走査型電子顕微鏡写真である。

Claims (15)

  1. 歯牙用漂白剤による処理の前に適用して実用的に効果を発揮することを特徴とする象牙質知覚過敏予防剤。
  2. 歯牙用漂白剤による処理の漂白効果を実質上妨げない請求項1に記載の象牙質知覚過敏予防剤。
  3. 歯牙用漂白剤による処理に対して実質上耐久性を有する請求項1に記載の象牙質知覚過敏予防剤。
  4. 前記歯牙用漂白剤が、過酸化水素、過酸化水素を発生する化合物、無機過酸化物および有機過酸化物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化性化合物を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の象牙質知覚過敏予防剤。
  5. 前記歯牙用漂白剤が、過酸化水素、過ほう酸塩、過炭酸塩、過硫酸塩、過リン酸塩、過酸化カルシウム、過酸化マグネシウム及び過酸化尿素からなる群から選ばれる少なくとも1種の過酸化物を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の象牙質知覚過敏予防剤。
  6. 前記歯牙用漂白剤が、
    下記式(a)及び(b):
    (式中、Rは炭素数2〜19の直鎖状または分岐鎖状アルキル基、Mはアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンまたは水素イオンを表し、Mがアルカリ金属イオンもしくは水素イオンのときはn=1であり、Mがアルカリ土類金属イオンのときは、n=2である。)のそれぞれで表される化合物のうちの少なくとも一種の化合物を、さらに含有する請求項1〜5のいずれかに記載の象牙質知覚過敏予防剤。
  7. 前記式(a)で表される化合物が、下記式(c):
    (式中、mは7〜13の整数を表す。)で表される化合物である請求項6に記載の象牙質知覚過敏予防剤。
  8. 前記式(b)で表される化合物が、下記式(d):

    (式中、kは7〜13の整数を表す。)で表される化合物である請求項6に記載の象牙質知覚過敏予防剤。
  9. 前記歯牙用漂白剤は、二酸化チタンおよび/または光触媒を含有する請求項1〜8のいずれかに記載の象牙質知覚過敏予防剤。
  10. 前記歯牙用漂白剤は、増粘剤、リン酸、リン酸塩、縮合リン酸および縮合リン酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種を、さらに含有する請求項1〜9のいずれかに記載の象牙質知覚過敏予防剤。
  11. 前記象牙質知覚過敏予防剤が、(A)象牙質細管よりも小さい粒子径を有し、カルシウム化合物と反応して象牙細管径よりも大きな凝集体を形成する水性エマルジョン成分、および(B)水不溶性ないし水難溶性のカルシウム塩を形成しうる水溶性有機酸またはその水溶性塩成分を含有する請求項1〜10のいずれかに記載の象牙質知覚過敏予防剤。
  12. 前記(A)成分がカルボキシル基、少なくとも1個の水酸基がリン原子に結合している基およびスルホン酸基よりなる群から選択される少なくとも1種の、カルシウム化合物と反応し得る官能基を有する重合体のエマルジョンである請求項11に記載の象牙質知覚過敏予防剤。
  13. 前記(A)成分が、共重合体を構成する成分として(メタ)アクリル酸アルキルエステル成分とスチレンスルホン酸成分を含む共重合体のエマルジョンである請求項11または12に記載の象牙質知覚過敏予防剤。
  14. 前記(B)成分が、シュウ酸、シュウ酸金属塩、シュウ酸アンモニウム塩およびシュウ酸のアミン塩よりなる群から選択される少なくとも1種の水溶性シュウ酸化合物である請求項11〜13のいずれかに記載の象牙質知覚過敏予防剤。
  15. 該歯牙用漂白剤と、該象牙質知覚過敏予防剤を別個の容器に収納した組合せよりなる請求項1〜14のいずれかに記載の象牙質知覚過敏予防剤のための歯牙用漂白剤キット。
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