JP2006298856A - 象牙質知覚過敏予防剤 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 歯牙用漂白剤による処理の前に適用しても実用的に効果を発揮する象牙質知覚過敏予防剤、および歯牙用漂白剤と象牙質知覚過敏予防剤を別個の容器に収納して含有する歯牙用漂白キット。
【選択図】 なし
Description
更に詳しくは、過酸化水素等を用いた歯牙漂白剤ならびに歯牙漂白時に誘引される冷・温水痛、甘味痛、酸味痛および擦過痛など疼痛が生じる象牙質知覚過敏を事前に予防するための象牙質知覚過敏予防剤並びにそれを有する歯牙用漂白剤キットに関する。
しかしながら、これらの治療法では、審美的な理由のみで多くの歯質を削除することになり、歯牙は再生できない組織でもあることから、近年の歯科治療のトレンドであるミニマルインターベンション(最小限の侵襲)という概念とも相容れない。
その様な状況の中で、全く歯牙を削除しない審美性回復手段として、歯牙漂白法が多く用いられるようになってきた。歯牙漂白法としては、無髄歯に対して、髄腔内に過硼酸ナトリウムと高濃度(30−35%)の過酸化水素水の混合物を封入して漂白するウォーキングブリーチ法、有髄歯に対して高濃度(30−35%)の過酸化水素水を用いて歯科医院内で漂白するオフィスブリーチ法、比較的低濃度(10−22%)の過酸化尿素を用いて患者自身が自宅で漂白するホームブリーチ法などがある。
過酸化水素水を用いた有髄歯の漂白を行うオフィスブリーチ法やホームブリーチ法においては、いずれも感受性増加による知覚過敏症を引き起こす危険を有している。
その対応として、非特許文献1には、漂白剤使用時の主な不快症状である知覚過敏の基本処置として、元の感覚に戻るまで次の処置を先延ばしにするか、積極的に中性フッ化ナトリウムや硝酸カリウムを含有した「知覚過敏予防ジェル」を使用して、短時間で鎮静させることが提案されている。
歯牙漂白剤による処理等、化学的現象に基づくと推定される知覚過敏素因が歯牙において展開される前に、事前に歯牙に塗布することにより、象牙質知覚過敏症を未然に予防する知覚過敏予防剤については、報告は皆無である。まず、係る予防剤には、前記化学的現象、例えば、歯牙漂白という過酷な化学処理等に対する耐久性が要求されるという困難な条件が求められる。更に、その様な耐久性があったとしても、更に厳しい要求性能が必須である。つまり、歯牙を漂白するには、漂白剤がエナメル質に浸透して、汚れに到達することが重要であると考えられるが、通常の知覚過敏予防剤は、微小なクラックや亀裂を被膜により封鎖し知覚過敏を予防するものである。従って、当該塗布面には、漂白剤の浸透が困難であって、効果的な歯牙漂白は実質上不可能であると考えらてきており、実際、その様な知覚過敏予防剤というものは知られていなかった。
「歯科展望別冊 ホワイトニング」、医歯薬出版 2003
本発明の他の目的および利点は以下の説明から明らかになろう。
さらに本発明は、歯牙用漂白剤による処理の前に適用しても実用的に効果を発揮する象牙質知覚過敏予防剤および歯牙用漂白剤と象牙質知覚過敏予防剤を別個の容器に収納した組合せからなる、歯牙漂白時の知覚過敏を予防するための歯牙用漂白剤キットである。
即ち、漂白前に事前に処置することにより、漂白効果を顕著に妨げずに未然に知覚過敏を予防するものである。
本発明の象牙質知覚過敏予防剤において好適に対応できる歯牙用漂白剤としては、特に限定されないが以下の態様のものが好適である。
(i)下記式(a)及び(b):
(ii)過酸化水素、過酸化水素を発生する化合物、無機過酸化物、有機過酸化物のうち、少なくとも一種の過酸化物および
(iii)水
を含有する歯牙用漂白剤を挙げることができる。
また、前記成分(i)としては下記式(c):
成分(i)は歯牙用漂白剤中に、好ましくは0.01〜40重量%、より好ましくは0.1〜30重量%、さらに好ましくは0.2〜20重量%含まれる。
二酸化チタンは微粒子状であることが好適であり、その平均粒径は好ましくは0.1〜500nm、より好ましくは0.5〜200nm、さらに好ましくは1〜100nmである。更に、光触媒作用を起こす光としては、その波長が380nm以下の紫外線だけでなく450nm以上の可視光を使用することもできる。
なお、平均粒径は、エタノール溶媒中でレーザー回折散乱法(測定条件:懸濁用液体250ml、測定試料20mg、試料投下から測定完了まで5分以内)を用いて測定した。
二酸化チタンは歯牙用漂白剤中に、好ましくは0.00001〜10重量%、より好ましくは0.00001〜5重量%、さらに好ましくは0.0001〜2重量%含まれる。
また、安定剤としては、例えばケイ酸ソーダのような過酸化水素安定剤、ジエチレントリアミン五酢酸のようなキレート剤等が挙げられる。
(A)象牙質細管径よりも小さい粒子径を有し、カルシウム化合物と反応して象牙細管径よりも大きな凝集体を形成する重合体粒子をエマルジョン粒子として含有する水性エマルジョン成分、および
(B)水不溶性ないし水難溶性のカルシウム塩を形成しうる、水溶性有機酸またはその水溶性塩成分、
を含有する組成物が好ましい。
(A)(1)象牙質細管径よりも小さい粒子径を有し、カルシウム化合物と反応して象牙細管径よりも大きな凝集体を形成する重合体粒子をエマルジョン粒子として含有し、そして
(2)分散媒中の金属イオン濃度が1000ppm以下である、
水性エマルジョン成分および
(B)水不溶性ないし水難溶性のカルシウム塩を形成しうる、水溶性有機酸またはその水溶性塩成分、
を含有する組成物である。
以下、象牙質知覚過敏予防剤を詳述する。
2−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)−1,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロパン等のポリカルボキシベンゾイルオキシと(メタ)アクリロイルオキシを有する化合物、N−フェニルグリシンまたはN−トリルグリシンとグリシジル(メタ)アクリレートとの付加物、4−[(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)アミノ]フタル酸、3または4−[N−メチル−N−(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)アミノ]フタル酸などを挙げることができる。これらのうち、11−メタクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸(MAC−10)および4−メタクリロイルオキシエチルトリメリット酸(4−MET)またはその無水物(4−META)が好ましく用いられる。
通常、該凝集体の径は3μmを超え、好ましくは10μm以上、より好ましくは50〜数千μmに達する。
上記カルシウム化合物の添加量は、エマルジョン中の不揮発性成分100重量部に対して、好ましくは10〜100重量部の範囲である。
この形成された多数の大凝集体は、象牙質細管内の長さ方向に連続的に充填された状態(被膜)となる。このような状態が形成されることにより、該細管は封鎖される。該細管が封鎖された状態は、本発明の(B)成分を使用することにより速く形成される。またこの状態は、凝集体と象牙質の密着性が長く維持されるので、長期間保持される。
(A)成分100重量部中の不揮発成分が、好ましくは0.1〜60重量部、より好ましくは0.5〜40重量部、さらに好ましくは1〜20重量部の量割合にあるのが望ましい。
(1)(A)成分と(B)成分を一緒に混合して含む容器に保存し、塗布によって被膜を形成して使用する方法、
(2)(A)成分を含む組成物の入った容器Aと(B)成分を含む組成物の入った容器Bによって保存して、それぞれの組成物を任意の順で逐次的に塗布するかまたは使用直前に混合して塗布することによって被膜を形成して使用する方法、
などを例示することができる。
また、象牙質知覚過敏予防の効果を損なわない濃度範囲において、塩化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、ハイドロキシアパタイトなどの無機カルシウム塩や有機酸カルシウム塩などを使用することができる。
金属イオン濃度を上記のように低濃度にする方法として、加水限外濾過法および透析法を用いることができる。なかでも、加水限界濾過法が好ましい方法である。
エマルジョン中の微生物の発生を防ぐために、防腐剤成分(C)を使用することができる。ここで、防腐剤は防ばい剤を含む概念である。
亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウムなどの無機亜硫酸塩、重亜硫酸塩およびピロ亜硫酸塩;ホウ酸などの無機酸;ギ酸、プロピオン酸、10−ウンデセン酸、ソルビン酸、安息香酸、サリチル酸、2−アセチル−5−ヒドロキシ−3−オキソ−4−ヘキサン酸 δ−ラクトンなどの有機酸化合物;2,6−ジアセチル−7,9−ジヒドロキシ−8,9b−ジメチル−1,3(2H,9bH)−ジベンゾフランジオンなどの抗生物質;p−ヒドロキシ安息香酸メチル、p−ヒドロキシ安息香酸エチル、p−ヒドロキシ安息香酸n−プロピルならびにイソプロピル、p−ヒドロキシ安息香酸n−ブチルまたはイソブチルまたはt−ブチル、p−ヒドロキシ安息香酸ベンジルなどのp−ヒドロキシ安息香酸エステル化合物;
4−クロル−3−メチルフェノール、4−クロル−3,5−キシレノール、3,4,5,6−テトラブロモ−o−クレゾール、2,4−ジクロロ−3,5−キシレノール、2−ベンジル−4−クロロフェノール、2,2’−メチレン−ビス−(4−クロロフェノール)、3,3’−ジブロモ−5,5’−ジクロロ−2,2’−ジヒドロキシジフェニルメタン、2,2’−メチレンビス(3,4,6−トリクロロフェノール)などのハロゲン化フェノール化合物;4−クロル−5−メチル−2−(1−メチルエチル)フェノール、1−メチル−2−ヒドロキシ−4−イソプロピルベンゼン、2−フェニルフェノール、4−イソプロピル−3−メチル−フェノールなどのフェノール化合物;2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニルエーテルなどのジフェニルエーテル化合物;
3,4,4’−トリクロロカルバニリド、4,4’−ジクロロ−3−(3−フルオロメチル)カルバニリドなどのカルバニリド化合物;4,4’−ジアミジノ−α,ω−ジフェノキシプロパンイセチオネート、4,4’−(トリメチレンジオキシ)−ビス(3−ブロモベンザミジン)ジイセチオネート(以下、ジブロモプロパミジンと略記する)、1,6−ジ(4−アミジノフェノキシ)−n−ヘキサン(以下、ヘキサミジンイセチオネートと略記する)などのベンザミジン化合物;ピリジン−1−オキサイド−2−チオール−ナトリウム塩、ビス(2−ピリジルチオ)ジンク−1,1’−ジオキサイド(ジンクピリチオン)などの環状チオヒドロキサム酸またはその塩;5−アミノ−1,3−ビス(2−エチルヘキシル)−5−メチルヘキサヒドロピリミジン(ヘキセチジン)、トリス−ヒドロキシエチルヘキサヒドロトリアジンなどのN−アセタール化合物;N−(トリクロロメチルチオ)−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシミド(カプタン)などのフタルイミド誘導体;6−アセトキシ−2,4−ジメチル−m−ジオキサン(ジメトキサン)などのo−アセタール化合物;
4,4−ジメチル−1,3−オキサゾリジン(オキサジンA)などのオキサゾリジン化合物;8−ヒドロキシキノリンなどのキノリン化合物;ビス(p−クロロフェニルジグアナイド)ヘキサン、ポリヘキサメチレンビグアナイド塩酸塩などの陽イオン性物質;アルキルトリメチルアンモニウムブロマイド、N−ドデシル−N,N−ジメチルベンジルアンモニウム、N,N−ジメチル−N−(2−(2−(4−(1,1,3,4−テトラメチルブチル)フェノキシ)エトキシ)エチル)ベンゼンメタンアンモニウムクロライドなどの4級塩化合物;エチルマーキュリーチオサリシレート、酢酸フェニル水銀などの有機水銀化合物;よう素酸ナトリウムなどのよう素化合物;グリセリルモノラウレート類;1−ヒドロキシ−4−メチル−6−(2,4,4−トリメチルペンチル)−2(1H)−ピリドンエタノールアミン塩などのピリドン誘導体類などを挙げることができる。これらの防腐剤は使用するエマルジョンの著しい凝集または象牙細管封鎖性を阻害しないものを選択使用することが好ましい。
(A)象牙質細管よりも小さい粒子径を有し、カルシウム化合物と反応して象牙細管径よりも大きな凝集体を形成する水性エマルジョン成分、および(B)水溶性有機酸またはその水溶性塩成分、ここで該有機酸のカルシウム塩は、水不溶性ないし水難溶性である、を含有する象牙質知覚過敏予防剤が用いられる。
上記の(A)成分としては、カルボキシル基、少なくとも1個の水酸基がリン原子に結合している基およびスルホン酸基よりなる群から選択される少なくとも1種の、カルシウム化合物と反応し得る官能基を有する重合体のエマルジョンであるか、あるいは、共重合体を構成する成分として(メタ)アクリル酸アルキルエステル成分とスチレンスルホン酸成分を含む共重合体のエマルジョンが用いられる。
一方、上記の(B)成分としては、シュウ酸、シュウ酸金属塩、シュウ酸アンモニウム塩およびシュウ酸のアミン塩よりなる群から選択される少なくとも1種の水溶性シュウ酸化合物が用いられる。
本発明の(A)成分として使用できる重合体としては、ラジカル重合体単量体としては、例えばブタジエン、イソプレンなどの共役ジエン単量体;スチレン、α―メチルスチレン、クロルスチレンなどの芳香族ビニル単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル単量体;(メタ)アクリル酸(以下、アクリル酸とメタクリル酸の総称としてこのように記載する)メチル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ブチルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル;塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニリデンなどのハロゲン化ビニルなどのビニルエステル類などを挙げることができる。これらの単量体は単独であるいは2種以上併用して重合に用いられる。
処置前の歯牙の着色と処置後の歯牙の着色は、下記の色彩計を用いて以下の方式にて色差を測定算出した。
シェードアイNCC(株式会社松風)歯科用色彩計
測色分光光度計(CMS−35FS 株式会社 村上色彩技術研究所)
測色表示にはL、a、b表色系を用い、色差ΔEは次式により算出した。
ΔE=√{(L2-L1)2+(a2−a1)2+(b2−b1)2}
ここで、L1、a1、b1は漂白前の、L2、a2、b2は漂白後の測定値である。
走査電子顕微鏡(JSM−5610LV 日本電子(株)社製)を用い、知覚過敏予防剤処置後の漂白前後の表面状態を観察した。
すなわち、知覚過敏予防状態をエナメル質上のMSポリマー被膜状態より評価を行った。
すなわち、知覚過敏予防剤皮膜の最表層が一部剥離していても、歯面全面を当該被膜が全体を覆っていれば、十分に知覚過敏予防されていると判断できる。仮にエナメル表面の露出があっても、当該皮膜の封鎖・充填にて、マイクロクラックが観察されなければ、やはり、知覚過敏予防されていると判断できる。
人の抜去歯を半分に分割したサンプル6個に対して、過酸化水素35%含む有髄歯漂白剤「ハイライト」(株式会社松風製)を用い業者指示にて漂白を行った。漂白時間は、光照射時間を含めて約10分であった。
緩やかなエアブローによって乾燥し、以下の調整例1の象牙質知覚過敏予防剤を適用し被膜を形成した。即ち、当該予防剤を30秒かけて擦って塗布することを1回行なった。
続いて、前記と同様の漂白を3回繰り返した。
その結果、平均色差9.0(標準偏差1.1)の変化であった。
人の抜去歯を半分に分割したサンプル6個に対して、象牙質知覚過敏予防剤を適用しない以外は、実施例1と同様の操作を行なった。
その結果、平均色差9.7(標準偏差3.8)の変化であった。
実施例1と比較例1を比較して、統計的には有為な差違はなかった。
人の抜去歯を半分に分割したサンプル2個に対して、実施例1の通りの象牙質知覚過敏予防剤被膜形成を、3回行なった。
その結果、図1、2の通りの走査型電子顕微鏡観察像が得られた。即ち、エナメル面がフィルム様構造にて覆われていたり(図1)、小孔を有するフィルム様構造が観察された(図2)。
人の抜去歯を半分に分割したサンプル2個に対して、実施例1の通りの象牙質知覚過敏予防剤被膜形成を、3回行なったのち、実施例1と同様の漂白を3回繰り返した。
その結果、図3〜5の通りの走査型電子顕微鏡観察像が得られた。即ち、歯牙表面の象牙質知覚過敏予防剤の保護膜について、いずれも微細な亀裂のある膜様構造物が一部剥がれたような像が観察された (図3)。フィルムが部分的に剥がれていた(図4)。フィルムの下に粒状構造が観察された(図5)。しかしながら、予防剤被膜が完全に剥離して歯牙エナメル質表面が明確に露呈している様子は観察されなかった。
人の抜去歯を半分に分割したサンプル2個に対して、象牙質知覚過敏予防剤を適用しない以外は、実施例2と同様の操作を行なった。
その結果、図6の通りの走査型電子顕微鏡観察像が得られた。
人の抜去歯を半分に分割したサンプル16個に対して、実施例1の通りの象牙質知覚過敏予防剤被膜形成を、3回行なったのち、過酸化尿素10%含む有随歯漂白剤「NITEホワイト・エクセル」(ディスカス・デンタル製)を用い業者指示にて漂白を行った。即ち、サンプルを人工唾液で浸したガーゼで覆い、37℃相対湿度100%状態にて2時間保持した。その後、水洗し、乾燥して、前記漂白剤を塗布した。この操作を14回繰り返した。その結果、色差7.5(標準偏差1.3)の変化であった。
人の抜去歯を半分に分割したサンプル16個に対して、象牙質知覚過敏予防剤を適用しない以外は、実施例3と同様の操作を行なった。
その結果、平均色差10.0(標準偏差2.0)の変化であった。
実施例3と比較例3を比較して、統計的には有為な差違はあったが、軽微なものであり、実用上の支障はなかった。
人の抜去歯を半分に分割したサンプル2個に対して、実施例1の通りの象牙質知覚過敏予防剤被膜形成を、3回行なったのち、実施例1と同様に漂白を14回繰り返した。
その結果、図7、8の通りの走査型電子顕微鏡観察像が得られた。フィルムは部分的に損傷を受けていた(図7)。又、複層構造が見られた(図8)。しかしながら、実施例2よりも、損傷などは少なく、予防剤被膜が完全に剥離して歯牙エナメル質表面が明確に露呈している様子は観察されなかった。
人の抜去歯を半分に分割したサンプル2個に対して、象牙質知覚過敏予防剤を適用しない以外は、実施例4と同様の操作を行なった。
その結果、図9の通りの走査型電子顕微鏡観察像が得られた。
蒸留水50mlを60℃に昇温し、窒素ガスを1時間バブリングした。窒素雰囲気下、メチルメタクリレート(MMA)2.0g、スチレンスルホン酸ソーダ(SSNa)0.54g、過硫酸カリウム30mg、亜硫酸水素ナトリウム10mgを添加し、2.5時間60℃で激しく撹拌した。さらに、MMA1.0g、過硫酸カリウム15mg、亜硫酸水素ナトリウム7mgを30分間隔で4回添加した後、さらに19.5時間激しく撹拌した。室温に冷却後、濃塩酸0.19mlを加えて2時間撹拌し、透析チュ−ブに入れて蒸留水を5日間毎日交換しながら透析を繰り返した。このチュ−ブを常温、常圧下、乾燥して、固形分10.9wt%のエマルジョンを得た。元素分析からこの重合体のMMAユニットの含量は96.9mol%であった。得られた重合体を分子量既知のポリメタクリル酸メチルを標準試料としてGPCを用いて分析したところ数平均分子量(Mn)は1.0×106であった。透過型顕微鏡観察より、この乳化重合体エマルジョン粒子は直径0.1〜0.5μmの範囲にあり、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(LA−910、ホリバ)により全ての重合体のエマルジョン粒子の直径が1μm以下であることが確認された。以下、このエマルジョンをMSEと略記する。
前記エマルジョン合成例において、透析チューブの代わりに加水限外濾過装置を用いる他は、該合成例を繰返し、エマルジョンを合成した。加水限外濾過装置として限外濾過装置PCカセットシステム(ローヌ・プーラン社製)とスルホン化ポリスルホン膜のIRIS3026を用いて加水倍率5倍まで精製をおこなった。限外濾過装置の膜面積は0.506m2、平均操作圧は0.5〜3kgf/cmであった。以下、限外濾過装置および濾過膜は同じ物を使用し実験に供した。該エマルジョンを不揮発成分濃度5重量%まで蒸留水で希釈した。サンプルの一部を取り出して、エマルジョン粒子を限外濾過装置にて濾過して濾液中の金属イオン濃度を卓上型プラズマ発光分光分析装置(SPS7700、セイコー電子工業株式会社製)にて行った。以下の実験においても同測定装置を使用した。測定した分散媒中の金属イオンは、モノマーや重合開始剤由来のナトリウムおよびカリウムイオンが大部分を占め、その他の金属はほとんど検出されなかったため、NaとKに限定して定量した。その結果、金属イオン濃度(Na+K)は230ppmであった。該エマルジョンをふた付ポリ容器中に移し、約3ヶ月間室温暗所中で保存した。その結果、カビの発生は認められなかった。該観察に用いた容器は、容器内のに付着した微生物の影響をなくするために、あらかじめエタノールにて洗浄し乾燥した物を使用した。以下、容器は同様に洗浄して実験に供した。
Claims (15)
- 歯牙用漂白剤による処理の前に適用して実用的に効果を発揮することを特徴とする象牙質知覚過敏予防剤。
- 歯牙用漂白剤による処理の漂白効果を実質上妨げない請求項1に記載の象牙質知覚過敏予防剤。
- 歯牙用漂白剤による処理に対して実質上耐久性を有する請求項1に記載の象牙質知覚過敏予防剤。
- 前記歯牙用漂白剤が、過酸化水素、過酸化水素を発生する化合物、無機過酸化物および有機過酸化物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化性化合物を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の象牙質知覚過敏予防剤。
- 前記歯牙用漂白剤が、過酸化水素、過ほう酸塩、過炭酸塩、過硫酸塩、過リン酸塩、過酸化カルシウム、過酸化マグネシウム及び過酸化尿素からなる群から選ばれる少なくとも1種の過酸化物を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の象牙質知覚過敏予防剤。
- 前記歯牙用漂白剤が、
下記式(a)及び(b):
- 前記式(a)で表される化合物が、下記式(c):
- 前記式(b)で表される化合物が、下記式(d):
(式中、kは7〜13の整数を表す。)で表される化合物である請求項6に記載の象牙質知覚過敏予防剤。 - 前記歯牙用漂白剤は、二酸化チタンおよび/または光触媒を含有する請求項1〜8のいずれかに記載の象牙質知覚過敏予防剤。
- 前記歯牙用漂白剤は、増粘剤、リン酸、リン酸塩、縮合リン酸および縮合リン酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種を、さらに含有する請求項1〜9のいずれかに記載の象牙質知覚過敏予防剤。
- 前記象牙質知覚過敏予防剤が、(A)象牙質細管よりも小さい粒子径を有し、カルシウム化合物と反応して象牙細管径よりも大きな凝集体を形成する水性エマルジョン成分、および(B)水不溶性ないし水難溶性のカルシウム塩を形成しうる水溶性有機酸またはその水溶性塩成分を含有する請求項1〜10のいずれかに記載の象牙質知覚過敏予防剤。
- 前記(A)成分がカルボキシル基、少なくとも1個の水酸基がリン原子に結合している基およびスルホン酸基よりなる群から選択される少なくとも1種の、カルシウム化合物と反応し得る官能基を有する重合体のエマルジョンである請求項11に記載の象牙質知覚過敏予防剤。
- 前記(A)成分が、共重合体を構成する成分として(メタ)アクリル酸アルキルエステル成分とスチレンスルホン酸成分を含む共重合体のエマルジョンである請求項11または12に記載の象牙質知覚過敏予防剤。
- 前記(B)成分が、シュウ酸、シュウ酸金属塩、シュウ酸アンモニウム塩およびシュウ酸のアミン塩よりなる群から選択される少なくとも1種の水溶性シュウ酸化合物である請求項11〜13のいずれかに記載の象牙質知覚過敏予防剤。
- 該歯牙用漂白剤と、該象牙質知覚過敏予防剤を別個の容器に収納した組合せよりなる請求項1〜14のいずれかに記載の象牙質知覚過敏予防剤のための歯牙用漂白剤キット。
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Non-Patent Citations (3)
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