JP3460788B2 - 低水素系被覆アーク溶接棒 - Google Patents

低水素系被覆アーク溶接棒

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JP3460788B2
JP3460788B2 JP3515698A JP3515698A JP3460788B2 JP 3460788 B2 JP3460788 B2 JP 3460788B2 JP 3515698 A JP3515698 A JP 3515698A JP 3515698 A JP3515698 A JP 3515698A JP 3460788 B2 JP3460788 B2 JP 3460788B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は造船、橋梁及び建築
等の構造物の製造工程において、本溶接の前に被溶接物
を仮付け固定するための仮溶接等に使用される低水素系
被覆アーク溶接棒に関し、特に、優れた再アーク性、絶
縁性及び溶接作業性を得ることができる低水素系被覆ア
ーク溶接棒に関する。
【0002】
【従来の技術】低水素系被覆アーク溶接棒は、他のイル
ミナイト系及びライムチタニア系等の非低水素系被覆ア
ーク溶接棒と比較して、溶着金属中の拡散性水素量及び
酸素量が少ないので、低水素系被覆アーク溶接棒を使用
して溶接すると、耐低温割れ性、延性、靭性及びX線性
能が優れた溶着金属を得ることができるという特長を有
している。このため、低水素系被覆アーク溶接棒は、軟
鋼から、引張強度が980N/mm2級の高張力鋼及び
低合金鋼等まで、広い分野において使用されている。
【0003】一般的に、低水素系被覆アーク溶接棒にお
いて心線に被覆されている被覆剤は、CaCO3及びB
aCO3等の金属炭酸塩を主成分として、CaF2、Ti
2及びSiO2等のスラグ生成剤、Fe−Si、Fe−
Mn及び金属単体等の脱酸剤並びに合金剤等により構成
されている。そして、この被覆剤は、適量の水ガラスが
添加されて、捏和された後、鋼心線の表面に塗布され
る。その後、被覆剤が塗布された心線は400乃至50
0℃の温度で乾燥処理されることにより、低水素系被覆
アーク溶接棒が作製される。
【0004】低水素系被覆アーク溶接棒の溶接対象物、
即ち、造船、橋梁、建築物及び各種タンク等の重要構造
物に対しては、溶接能率が高いサブマージアーク溶接
(SAW)、マグ(MAG)溶接及びミグ(MIG)溶
接等の溶接方法が主に本溶接時に使用されている。しか
し、本溶接の前に被溶接物を固定するために施される仮
付(タック)溶接においては、電源等の装置が簡便で機
動的であると共に、全姿勢での溶接が容易であるという
利点を有する被覆アーク溶接が主に使用されている。
【0005】仮付溶接の溶接部は、本溶接の前に削除さ
れることが殆どないので、仮付用被覆アーク溶接棒とし
ては、X線性能が優れており、低温割れを引き起こす拡
散性水素量が低いと共に、溶接時の再アーク性及び絶縁
性、並びに得られる溶着部のビード形状及び外観等が優
れていること等の要求を満足していることが必要であ
る。特に、仮付溶接は、アークを繰り返し発生させるの
で、アークを切った後に再び容易にアークを発生させる
ことができるという特性(再アーク性)が優れているこ
とが要求される。また、仮付溶接時においては、ホルダ
により溶接棒を掴んだ状態で溶接位置まで溶接棒を移動
させるので、溶接者の安全を確保するために、被覆剤の
先端部以外からの再点弧を防止するための絶縁性が優れ
ていることが要求される。
【0006】X線性能が優れた被覆アーク溶接棒として
は、低水素系被覆アーク溶接棒があるが、従来の低水素
系被覆アーク溶接棒は、他の種類の被覆アーク溶接棒と
比較して、再アーク性が低いという問題点がある。これ
は、アークを再発生させるためには、電極(溶接棒先
端)の電気抵抗が低いことが必要であるが、従来の低水
素系被覆アーク溶接棒では、被覆剤の先端部における電
気抵抗が高いので、通電性が不良となるからである。但
し、低水素系被覆アーク溶接棒を使用した場合であって
も、溶接してから数秒後であって、溶接対象物又は被覆
剤の先端部が高温状態である場合は、被覆剤の先端部の
電気抵抗が低くなるので、再アーク性が良好となる。し
かし、溶接してから十数秒経過後又は被覆剤の先端部が
所望の温度以下に冷却された状態で溶接すると、再アー
クは困難となる。
【0007】従来においては、例えば、再アークの際に
溶接棒先端の被覆部分を除去して、心線を露出させるこ
とにより、再アーク性を高める方法が使用されている。
しかし、この方法によると、溶接スタート時に被覆剤の
欠乏によるシールド不足が生じるので、溶着金属にブロ
ーホール及びピット等の溶接欠陥が発生する。
【0008】この問題点を解決するために、仮溶接を開
始した位置から一旦後戻りして運棒する後戻りスタート
運棒法、又は被溶接部以外の場所でアークを発生させる
捨て金法が使用されている。しかし、これらの方法は、
煩雑であると共に、高度な運棒技術が必要であるという
問題点がある。従って、後戻りスタート運棒法及び捨て
金法等を使用することなく、優れた品質の溶着金属を得
ることができると共に、再アーク性が良好である低水素
系被覆アーク溶接棒の開発が要求されている。
【0009】そこで、再アーク性の改善を図った種々の
仮付用低水素系被覆アーク溶接棒が提案されている。例
えば、被覆剤中の鉄粉の粒度等を規制した低水素系被覆
アーク溶接棒が特許第1278688号公報、特許第1
278685号公報及び特開昭55−161596号公
報等に開示されている。また、被覆剤中のFe−Siの
粒度等を規制した低水素系被覆アーク溶接棒が、特許第
1527612号公報に開示されている。更に、被覆剤
中の鉄粉及びTiO2の粒度を規制した低水素系被覆ア
ーク溶接棒が特開昭60−30597号公報に開示され
ており、被覆剤中の鉄粉の見掛密度を規制した低水素系
被覆アーク溶接棒が特許第1209931号公報に記載
されている。更にまた、被覆剤中の鉄粉の粒度及び鉄粉
中のC量等を規制した低水素系被覆アーク溶接棒が特開
平9−70690号公報に開示されている。これらの低
水素系被覆アーク溶接棒により溶接すると、優れた再ア
ーク性を得ることができる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】ところで、被覆アーク
溶接を実施する場合は、溶接作業者を電撃事故から保護
するために、溶接機に電撃防止装置が取り付けられてお
り、これにより、出力側無負荷電圧を70乃至80Vか
ら25V以下に降下させている。この電撃防止装置は、
アークが発生しないときは溶接機本体の一次回路が切れ
て、補助変圧器により出力側無負荷電圧が25V以下に
なるような仕組みを有している。そして、溶接棒の先端
が被溶接物に接触すると、流れる電流を感知して補助変
圧器の回路が切れ、本体の一次回路が接続されてアーク
が発生する。このような電撃防止装置には、JIS C
9311に規定されているように、被覆剤の先端部の抵
抗が高抵抗であっても、補助回路から本体の一次回路に
切り替わる高感度型のものと、被覆剤の先端部の抵抗が
低抵抗でないと一次回路が始動しない低感度型のものと
の2種類がある。
【0011】しかし、特に、低感度型の電撃防止装置を
使用した場合は、被覆剤の先端部が低抵抗でないと始動
しないので、再アーク性が極めて困難になるという問題
点がある。このため、低感度型の電撃防止装置が取り付
けられた溶接機で、前述の従来の低水素系被覆アーク溶
接棒を使用して溶接した場合であっても、再アーク性が
不良になることがある。このように、近時、被覆剤先端
部の電気抵抗を更に一層低下させた低水素系被覆アーク
溶接棒が要求されている。
【0012】本発明はかかる問題点に鑑みてなされたも
のであって、仮付用低水素系被覆アーク溶接棒として、
被覆部の絶縁性が優れていると共に、再アーク性がより
一層優れており、溶接作業性が良好である低水素系被覆
アーク溶接棒を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明に係る低水素系被
覆アーク溶接棒は、鋼心線の表面に被覆剤が塗布されて
いる低水素系被覆アーク溶接棒において、前記被覆剤は
被覆剤全重量あたり鉄粉を20乃至60重量%含有し、
前記鉄粉の平均粒径は30乃至80μm、前記鉄粉の比
表面積は0.02乃至0.20m2/gであることを特
徴とする。
【0014】前記鉄粉の見掛密度は2.0乃至3.0g
/cm3であることが好ましく、前記鉄粉の含有量は4
0乃至50重量%であることが望ましい。また、前記鉄
粉の平均粒径は40乃至60μmであることが好まし
い。
【0015】
【発明の実施の形態】本願発明者等が前記課題を解決す
るために鋭意実験研究を重ねた結果、特に、溶接棒中の
鉄粉の含有量、粒径及び比表面積を適切に規定すること
により、被覆部の絶縁性が優れていると共に、再アーク
性がより一層優れており、溶接作業性が良好である低水
素系被覆アーク溶接棒を得ることができることを見い出
した。
【0016】被覆部を除去することなく再アーク性を良
好にするためには、被覆剤の先端部に通電性を与えるこ
とが必要であり、仮付用低水素系被覆アーク溶接棒の被
覆剤中に含有される鉄粉が被覆剤の通電性に重要な影響
を及ぼす。そこで、本願発明者等は、被覆剤先端部の通
電性を高めるために、被覆剤に配合する鉄粉の量、粒径
及び比表面積と被覆剤の通電性との関係について実験研
究を進めると共に、鉄粉の見掛密度と被覆剤の通電性と
の関係についても実験研究を行った。その結果、被覆剤
中の鉄粉の含有量が被覆剤全重量あたり20乃至60重
量%であること、被覆剤中の鉄粉の平均粒径が30乃至
80μmであること、及び被覆剤中の鉄粉の比表面積が
0.02乃至0.20m2/gであることを満足してい
ると、仮付用低水素系被覆アーク溶接棒の性能を十分に
向上させることができることを見い出した。なお、被覆
剤中の鉄粉の見掛密度が2.0乃至3.0g/cm3
あると、より一層再アーク性を向上させることができ
る。
【0017】以下、本発明に係る低水素系被覆アーク溶
接棒の鉄粉含有量、平均粒径、比表面積及び見掛密度の
限定理由について説明する。
【0018】被覆剤中の鉄粉の含有量:20乃至60重
量% 鉄粉は、仮付用低水素系被覆アーク溶接棒により溶接す
る場合に、再アーク性を良好に維持するために最も多く
配合される必須原料である。従って、被覆剤中の鉄粉の
含有量を調整することにより、被覆剤の通電性が向上
し、鋼心線と溶接対象物との間に介在する被覆剤先端部
(保護筒)の通電が確実となり、鋼心線を露出させるこ
となく再アークを可能にすることができる。特に、鉄粉
の含有量は、被覆剤中で鉄粉同士が接触する割合に大き
な影響を与える。被覆剤中の鉄粉の含有量が20重量%
未満であると、被覆剤先端部において鉄粉同士が接触し
ないので、再アークを行う際に被覆剤先端部が通電せ
ず、良好な再アーク性を維持することができない。一
方、被覆剤中の鉄粉の含有量が60重量%を超えると、
被覆剤先端部以外からの再点弧を防止するための絶縁性
が低下すると共に、アークが不安定となって溶接ビード
にピット及びブローホール等の欠陥が発生する。
【0019】図1は横軸に鉄粉含有量をとり、縦軸に再
アーク性をとって、鉄粉の含有量と再アーク性との関係
を示すグラフ図である。なお、鉄粉の平均粒径は50μ
m、比表面積は0.07m2/g、見掛密度は2.8g
/cm3である。また、再アーク性は、低感度型電撃防
止装置付きの交流電源を使用して、最初に溶接棒の長さ
で50mm溶接した後、アークを切り30秒間保持し、
再び供試棒先端(保護筒)を試験板に軽く接触させて、
そのときにアークが発生するか否かを観察する試験を、
繰り返し数30本以上で実施することにより評価したも
のであり、繰り返し数に対する再アーク発生率(%)で
示している。図1に示すように、被覆剤中の鉄粉の含有
量が20重量%以上になると、再アーク性が向上して、
鉄粉含有量が40重量%以上になると、再アーク性は更
に良好となる。但し、被覆剤中の鉄粉含有量が50重量
%を超えると、被覆剤先端部以外からの再点弧を防止す
るための絶縁性及び溶接作業性が若干低下する。従っ
て、被覆剤中の鉄粉含有量は20乃至60重量%とす
る。更に好ましくは、被覆剤中の鉄粉含有量は40乃至
50重量%である。
【0020】鉄粉の平均粒径:30乃至80μm 鉄粉の平均粒径は、鉄粉含有量と同様に、再アーク性、
絶縁性及び溶接作業性に大きな影響を及ぼす。鉄粉は重
量比で被覆剤中に配合されるので、鉄粉の平均粒径が3
0μm未満であると、被覆剤全体に対する鉄粉の粒子数
が過多となり、鉄粉同士が接触しやすくなって絶縁性が
不良となる。また、鉄粉の平均粒径が80μmを超える
と、被覆剤全体に対する鉄粉の粒子数が過少となり、鉄
粉同士が接触しなくなるので、良好な再アーク性を維持
することができなくなる。
【0021】図2は横軸に鉄粉の平均粒径をとり、縦軸
に再アーク性をとって、鉄粉の平均粒径と再アーク性と
の関係を示すグラフ図である。なお、被覆剤中の鉄粉含
有量は40重量%、比表面積は0.03乃至0.19m
2/g、見掛密度は2.0乃至2.9g/cm3である。
また、再アーク性は、図1に示す再アーク性と同様の方
法で評価し、鉄粉の平均粒径は、市販のレーザ回折・散
乱法による粒度分布計(例えば、日機装(株)マイクロ
トラック)で測定している。図2に示すように、鉄粉の
平均粒径が80μm以下になると再アーク性が向上して
おり、この平均粒径が60μm以下のとき、再アーク性
は最も良好となる。但し、鉄粉の平均粒径が40μm未
満になると、被覆剤先端部以外からの再点弧を防止する
ための絶縁性が若干低下する。従って、鉄粉の平均粒径
は30乃至80μmとする。更に好ましくは、鉄粉の平
均粒径は40乃至60μmである。
【0022】鉄粉の比表面積:0.02乃至0.20m
2/g 鉄粉の比表面積は、鉄粉含有量及び平均粒径と同様に、
再アーク性、絶縁性及び溶接作業性に大きな影響を及ぼ
す。鉄粉の含有量及び平均粒径が上記範囲に規制されて
いる場合であっても、鉄粉の比表面積が0.20m2
gを超えると、鉄粉の表面の凹凸が大きくなり、鉄粉同
士が接触しやすくなる。従って、被覆剤全体の通電性が
過剰になり、被覆剤先端部以外からの再点弧を防止する
ための絶縁性が不良となる。また、鉄粉表面の凹凸が大
きいと、鉄粉同士が接触してもその間の間隔が大きいの
で、被覆部の強度が低下する。そうすると、被覆部の強
度低下が原因となって溶接時の保護筒が十分に形成され
ず、アークが弱く広がらないので、溶接作業性の中で
も、特にビード外観が劣化する。一方、鉄粉の比表面積
が0.02m2/g未満であると、鉄粉の表面の凹凸が
小さくなって、鉄粉同士が接触しにくくなるので、再ア
ーク性が劣化する。
【0023】図3は横軸に鉄粉の比表面積をとり、縦軸
に再アーク性をとって、鉄粉の比表面積と再アーク性と
の関係を示すグラフ図である。なお、被覆剤中の鉄粉含
有量は40重量%、平均粒径は30乃至80μm、見掛
密度は2.0乃至3.0g/cm3である。また、再ア
ーク性は、図1及び2に示す再アーク性と同様の方法で
評価し、比表面積は市販のBET法による比表面積測定
装置(例えば、ユアサアイオニクス(株)NOVA22
00)で測定している。また、図中で○は絶縁性及び溶
接作業性が良好であるものを示し、●は絶縁性及び溶接
作業性が低下したことを示している。図3に示すよう
に、鉄粉の比表面積が0.02m2/g以上になると、
再アーク性が向上するが、鉄粉の比表面積が0.20m
2/gを超えると、絶縁性及び溶接作業性が劣化する。
従って、鉄粉の比表面積は0.02乃至0.20m2
gとすることが必要である。
【0024】鉄粉の見掛密度:2.0乃至3.0g/c
3 被覆剤中の鉄粉の含有量、平均粒径及び比表面積が上記
範囲に規制されていれば、再アーク性、絶縁性及び溶接
作業性を良好にすることができるが、鉄粉の見掛密度
も、これらの特性に影響を及ぼす。見掛密度が0.7乃
至1.5g/cm3の範囲内である鉄粉を、被覆剤中に
3乃至40重量%含有することにより、再アーク性を向
上させることができることは、特許第1209931号
に開示されている。しかし、上述の如く鉄粉の含有量、
平均粒径及び比表面積を規制した本発明においては、鉄
粉の見掛密度が2.0g/cm3未満であると、鉄粉の
形状が球状ではなく歪な形状となるので、溶接時の鉄粉
の溶融状態が不安定となり、保護筒が安定して形成され
ず、アークが不安定になると共に、溶接作業性が低下す
ることがある。また、鉄粉同士が接触しやすくなるの
で、絶縁性が劣化することがある。一方、鉄粉の見掛密
度が3.0g/cm3以下であると、再アーク性を良好
に維持することができるが、鉄粉の見掛密度が3.0g
/cm3を超えると再アーク性が劣化することがある。
【0025】図4は横軸に鉄粉の見掛密度をとり、縦軸
に再アーク性をとって、鉄粉の見掛密度と再アーク性と
の関係を示すグラフ図である。なお、被覆剤中の鉄粉含
有量は20乃至60重量%、平均粒径は30乃至80μ
m、比表面積は0.02乃至0.20m2/gである。
また、再アーク性は、図1乃至3に示す再アーク性と同
様の方法で評価しており、図中で○は絶縁性及び溶接作
業性が良好であるものを示し、●は絶縁性及び溶接作業
性が若干低下したものがあったことを示している。図4
に示すように、鉄粉の見掛密度が3.0g/cm3以下
である場合は、見掛密度が3.0g/cm3を超える場
合と比較して、より一層再アーク性を向上させることが
できる。一方、鉄粉の見掛密度が2.0g/cm3未満
である場合には、見掛密度が2.0g/cm3以上であ
る場合と比較して、使用上問題となるレベルではない
が、絶縁性及び溶接作業性が若干低下する。従って、鉄
粉の見掛密度は2.0乃至3.0g/cm3とすること
が好ましい。
【0026】なお、本発明において、鉄粉の見掛密度
は、JIS Z2504に準じて測定した値である。
【0027】本発明においては、被覆剤成分として、鉄
粉の他に通常の低水素系被覆アーク溶接棒の被覆剤とし
て使用されるフッ化物、炭酸塩並びにTiO2及びSi
2等の酸化物があり、脱酸剤及び合金剤としては、F
e−Si、Fe−Mn及びNi−Mg等を添加してもよ
く、これらの成分は本発明の効果を損なうものではな
い。
【0028】
【実施例】以下、本発明に係る低水素系被覆アーク溶接
棒の実施例について、その比較例と比較して具体的に説
明する。
【0029】先ず、直径が4.0mm、長さが400m
mである炭素鋼心線の表面に種々の被覆剤を塗布して被
覆アーク溶接棒を作製し、これらの溶接棒を使用して被
覆アーク溶接を実施することにより、再アーク性、絶縁
性及び溶接作業性を評価した。なお、本実施例において
は、心線としてJIS G3503 SWRY11(被
覆アーク溶接棒心線用線材)を伸線及び切断加工するこ
とにより作製したものである。被覆剤中の鉄粉の含有
量、平均粒径、比表面積及び見掛密度を下記表1及び2
に示し、鉄粉以外の被覆剤組成を下記表3及び4に示
す。また、再アーク性、絶縁性及び溶接作業性等の評価
結果を下記表5及び6に示す。
【0030】なお、再アーク性は、低感度型電撃防止装
置付きの交流電源又は高感度型電撃防止装置付きの交流
電源を使用して、最初に溶接棒の長さで50mm溶接し
た後、アークを切り30秒間保持し、再び供試棒先端
(保護筒)を試験板に軽く接触させて、そのときにアー
クが発生するか否かを観察する試験を、繰り返し数30
本以上で実施することにより評価した。下記表5及び6
に示す再アーク性の評価結果欄においては、繰り返し数
に対する再アーク発生率が95%以上である場合を◎、
80%以上で95%未満である場合を○とし、再アーク
発生率が60%以上で80%未満である場合を△、60
%未満である場合を×とした。
【0031】また、絶縁性は電撃防止装置を取り付けて
いない交流電源(無負荷電圧:80V)を使用して、予
め供試棒を350℃の温度で1時間乾燥させた後に、常
温まで放冷し、200A−24Vの溶接条件で供試棒の
被覆部を試験板に接触させたときに、発火するか否かを
観察する試験を、繰り返し数30本以上で実施すること
により評価した。そして、絶縁性の評価結果欄において
は、全く発火しなかった場合を◎、繰り返し数に対する
発火率が10%未満である場合を○とし、発火率が10
%以上で30%未満である場合を△、発火率が30%以
上である場合を×とした。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
【表3】
【0035】
【表4】
【0036】
【表5】
【0037】
【表6】
【0038】上記表1乃至6に示すように、実施例N
o.1乃至17は被覆剤中の鉄粉含有量、平均粒径及び
比表面積が適切に規制されているので、再アーク性、絶
縁性及び溶接作業性が良好となった。特に、実施例N
o.1乃至3、7乃至9、11、12、15及び16
は、鉄粉の含有量、平均粒径及び見掛密度が本発明の好
ましい範囲内であるので、鉄粉の見掛密度が本発明の好
ましい範囲の下限未満である実施例No.4及び5と比
較して、より一層絶縁性及び溶接作業性が優れており、
見掛密度及び平均粒径が本発明の好ましい範囲の上限を
超えている実施例No.6と比較して、再アーク性がよ
り一層優れたものとなった。また、これらの実施例は、
鉄粉の平均粒径が本発明の好ましい範囲の下限未満であ
る実施例No.10、及び鉄粉の含有量が本発明の好ま
しい範囲の上限を超えている実施例No.17と比較し
て、より一層絶縁性及び溶接作業性が優れており、鉄粉
の平均粒径が本発明の好ましい範囲の上限を超えている
実施例No.13、及び鉄粉の含有量が本発明の好まし
い範囲の下限未満である実施例No.14と比較して、
より一層再アーク性が優れたものとなった。
【0039】一方、比較例No.18は鉄粉の比表面積
が本発明範囲の下限未満であるので、再アーク性が劣化
した。比較例No.19及び20は鉄粉の比表面積が本
発明範囲の上限を超えているので、絶縁性及び溶接作業
性が低下した。比較例No.21及び22は鉄粉の平均
粒径が本発明範囲の下限未満であるので、絶縁性及び溶
接作業性が低下した。比較例No.23及び24は鉄粉
の平均粒径が本発明範囲の上限を超えているので、再ア
ーク性が低下した。
【0040】比較例No.25及び26は被覆剤中の鉄
粉含有量が本発明範囲の下限未満であるので、再アーク
性が低下した。比較例No.27及び28は被覆剤中の
鉄粉含有量が本発明範囲の上限を超えているので、絶縁
性及び溶接作業性が劣化した。
【0041】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明によれば、
低水素系被覆アーク溶接棒の心線に被覆される被覆剤中
の鉄粉含有量、鉄粉の平均粒径、比表面積を適切に規定
しているので、仮付用低水素系被覆アーク溶接棒として
好適であり、優れた再アーク性、絶縁性及び溶接作業性
を得ることができる。また、鉄粉の見掛密度を規制する
と、より一層再アーク性、絶縁性及び溶接作業性を向上
させることができる。従って、本発明は仮付溶接の高能
率化と鋼構造物の安全性等に多大の貢献をなす。
【図面の簡単な説明】
【図1】横軸に鉄粉含有量をとり、縦軸に再アーク性を
とって、鉄粉の含有量と再アーク性との関係を示すグラ
フ図である。
【図2】横軸に鉄粉の平均粒径をとり、縦軸に再アーク
性をとって、鉄粉の平均粒径と再アーク性との関係を示
すグラフ図である。
【図3】横軸に鉄粉の比表面積をとり、縦軸に再アーク
性をとって、鉄粉の比表面積と再アーク性との関係を示
すグラフ図である。
【図4】横軸に鉄粉の見掛密度をとり、縦軸に再アーク
性をとって、鉄粉の見掛密度と再アーク性との関係を示
すグラフ図である。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平9−70690(JP,A) 特開 昭56−71596(JP,A) 特開 昭55−64996(JP,A) 特開 昭54−159353(JP,A) 特開 平10−296485(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B23K 35/365

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋼心線の表面に被覆剤が塗布されている
    低水素系被覆アーク溶接棒において、前記被覆剤は被覆
    剤全重量あたり鉄粉を20乃至60重量%含有し、前記
    鉄粉の平均粒径は30乃至80μm、前記鉄粉の比表面
    積は0.02乃至0.20m2/gであることを特徴と
    する低水素系被覆アーク溶接棒。
  2. 【請求項2】 前記鉄粉の見掛密度は2.0乃至3.0
    g/cm3であることを特徴とする請求項1に記載の低
    水素系被覆アーク溶接棒。
  3. 【請求項3】 前記鉄粉の含有量は40乃至50重量%
    であることを特徴とする請求項1又は2に記載の低水素
    系被覆アーク溶接棒。
  4. 【請求項4】 前記鉄粉の平均粒径は40乃至60μm
    であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項
    に記載の低水素系被覆アーク溶接棒。
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