JP3460187B2 - キャンディ及びその製造方法 - Google Patents

キャンディ及びその製造方法

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、キャンディおよび
その製造方法に関し、より詳しくは、キシリトールとソ
ルビトールを含有するキャンディ、およびその製造方法
に関する。
【0002】
【従来の技術】近年数多くの新しい糖質が開発され、キ
ャンディの分野でもそれらの特長を生かした種々の商品
が検討されており、冷涼感を感じるキャンディもその一
つである。冷涼感を得られる糖質としては、ソルビトー
ル、エリスリトール、キシリトールなどが知られている
が、その冷涼感の強さ、味質の良さ、虫歯予防に対する
有益性などから、キシリトールをキャンディに利用する
技術が特に求められていた。
【0003】これまで、キシリトールの粉末をキャンデ
ィ表面に付着させたり、キャンディのセンターに封入し
たりする方法は用いられているが、これらの方法では冷
涼感を得られる時間が短く、かつキャンディのなめ始
め、キャンディをかみ砕いた時、あるいはほとんどなめ
終わる時点でのみ冷涼感が得られるだけであり、キャン
ディが口中に滞留している間、長時間にわたって冷涼感
を得られるものではなかった。
【0004】キシリトールを利用し冷涼感を持続して得
られるキャンディに関する技術としては、例えば特開平
9−47222号公報に開示されている方法があるが、
この方法によると溶融状態の成分に種結晶を投入した直
後、あるいは攪拌により微細結晶を析出させた直後か
ら、キシリトールの結晶化、すなわち溶融状態にあった
キャンディの固化が、不可逆的かつ非常に短時間に進行
するため、キャンディを連続的に大量生産することは不
可能であった。また、結晶化の進行をコントロールする
ためには、きわめて厳密な温度コントロールが要求さ
れ、通常のキャンディの工業的生産設備では、事実上実
現不可能なものであった。
【0005】また、キシリトールはキャンディの原材料
としては高価格であり、冷涼感を維持しつつできるだけ
配合量を下げられることが望まれているが、同じく特開
平9−47222号公報に開示されている方法では、こ
れも実現不可能であった。
【0006】かかる状況において、キシリトールを利用
し、その冷涼感が口中にキャンディが滞留している時間
全てにわたって得られ、工業的大量生産が容易で、かつ
キシリトールの配合量をできるだけ低下させることがで
きるキャンディ、およびその製造方法の出現が望まれて
いたのである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、キシリトー
ルを利用し、その冷涼感がキャンディが口中に滞留して
いる間、長時間にわたって得られ、工業的大量生産が容
易で、かつキシリトール配合量をできるだけ低下させる
ことができるキャンディ、およびその製造方法を提供す
ることを課題とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者は、前記課題を
解決するために、キシリトールの結晶化のコントロール
を容易にし、かつ実用的にキャンディを製造できる方法
について鋭意研究を重ねてきた。その結果、キシリトー
ルとソルビトールを併用することによって、前記課題を
解決できることを見出し、本発明を完成させるにいたっ
た。
【0009】すなわち、キシリトールとソルビトールを
併用すると、キシリトールの結晶化の進行を緩慢にし、
あるいは流動性を維持したままキシリトールの結晶部分
の割合を一定の範囲に維持することができ、かつそれら
をコントロールするための温度管理は、通常のキャンデ
ィの生産設備で十分対応可能な範囲であること、得られ
たキャンディは十分な冷涼感があり、かつ高価格なキシ
リトールの配合割合を下げられること、等の事実を見出
し、またその製造方法を確立して本発明を完成させた。
【0010】すなわち、本発明にかかるキャンディの製
造方法は、キシリトールと、該キシリトールに対する割
合が重量比で0.06〜0.50のソルビトールを含む
配合物を加熱して溶融する溶融工程と、得られた溶融液
をキシリトールの融点以下でかつその流動性が維持され
る温度に保持して、キシリトールの一部又は大部分が結
晶化した流動体とする保温工程と、当該保温工程の温度
で流動体を所望の形状に成形する成形工程と、得られた
成形体を室温まで冷却する冷却工程とを経て、キシリト
ールの一部が非結晶状態の滑らかで適度の固さを有する
キャンディを得ることを特徴としている。上記保温工程
における流動体の保持温度は、60〜85℃が好まし
い。また、本発明のキャンディの好ましい例としては、
キシリトールと、該キシリトールに対する割合が重量比
で0.06〜0.50のソルビトールを含み、キシリト
ールの一部又は大部分が結晶化したキャンディ層の両側
に公知のキャンディ層を重ね合わせてなる複合キャンデ
ィがある。
【0011】上記キシリトールとソルビトールの比率に
ついては、キシリトールの含有量に対するソルビトール
の含有量の割合が重量比で0.10〜0.30であるの
がより好ましかった。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て具体例をあげつつ詳細に説明する。本発明において
は、キシリトールとソルビトールを必須成分として使用
する。キシリトールはキシリットとも呼ばれ、ペンチト
ールの一種であり、D−キシロースの糖アルコールに相
当する。ソルビトールはソルビットとも呼ばれ、ヘキシ
トールの一種であり、D−グルコースの糖アルコールに
相当する。それぞれ食品添加物(甘味料)として、厚生
省告示の「食品、添加物等の規格基準」にその性状など
規格が定められている。ソルビトールには、固形物ある
いは液状物(水溶液)が市販されているが、いずれも使
用可能である。
【0013】本発明者はキシリトールとソルビトールを
併用することによって、キシリトールの結晶化のコント
ロールが容易にできることを見出した。キシリトールの
含有量に対するソルビトールの含有量の割合(重量比、
以下同じ)と、キシリトールの結晶化コントロールの容
易さ、あるいは工業的大量生産に対する適応性の関係を
検討したところ、ソルビトールの割合が0.06より小
さいと、結晶化の進行が早くかつ結晶部分の割合が大き
くなり、任意の形状に成形することが困難となること、
あるいは、成形性を確保できる温度範囲が非常に狭く、
たとえば成形性を良化させようとわずかに加温すると、
結晶が全て溶融した状態になってしまい、冷却しても固
化しなくなってしまうことがわかった。また、ソルビト
ールの割合が0.10以上であれば、成形性を確保でき
る温度範囲が5℃以上となり、十分に実用的であること
がわかった。
【0014】また、キシリトールの含有量に対するソル
ビトールの割合が0.50より大きいと、冷却後固化す
るまでに長時間を要し生産性を著しく損なうこととな
り、大量生産には対応できないこと、さらにソルビトー
ルの割合が0.65より大きいと、キャンディとして十
分な固さまで固化しないことがわかった。逆に、ソルビ
トールの割合が0.30以下であれば、常温まで冷却し
た場合のキャンディの固化時間が5〜6分間と短時間で
あり、十分に実用的であることがわかった。すなわち、
本発明のキャンディにおけるキシリトールの含有量に対
するソルビトールの含有量の割合は、0.06〜0.5
0であることが必要であり、さらに高い生産性を得るた
めに、望ましくは0.10〜0.30であることが好適
である。
【0015】キシリトールとソルビトール以外の成分に
ついては、通常キャンディの生産に用いられるもの、た
とえば酸味料、香料、着色料、果汁、乳製品、他の糖
質、各種薬効成分など特に制限はないが、キシリトール
の結晶化に影響を与えない範囲にとどめるべきである。
【0016】本発明のキャンディを製造するためには、
まず、キシリトールとソルビトールを含有する組成物
を、溶融状態にする必要がある。その場合、粉体状のキ
シリトールとソルビトールを混合し、これを加熱溶融し
た後他の成分を添加混合しても良いし、粉体状のキシリ
トールに水溶液状のソルビトールと適量の水を混合し加
熱溶解した後、さらに加熱および減圧濃縮によって水分
を蒸発させ、これに他の成分を添加混合しても良く、各
成分が均一に混合されかつ溶融状態になっていれば、そ
の製造過程は問わない。
【0017】次に溶融状態の組成物をキシリトールの融
点以下まで冷却し、含有するキシリトールの一部あるい
は大部分を結晶化させる。結晶を析出させる方法は、微
細な種結晶を添加混合しても良いし、撹拌により起晶さ
せても良い。結晶を析出させる温度は、キシリトールの
含有量に対するソルビトールの含有量の割合によってそ
の最適値は異なるが、およそ60〜85℃の範囲が好適
である。本発明のキャンディは、含有するキシリトール
の一部あるいは大部分を結晶化させた後、引き続き60
〜85℃の温度を保つことによって、驚くべきことに、
不可逆的に結晶化がそれ以上急速に進行することがな
く、結晶部分の割合が一定の範囲に維持され、任意の形
に自由に成形できる流動性を長時間保持することができ
る。その上、成形後室温まで冷却すれば速やかに固化す
るという、連続して大量生産するために最適な性状を有
するものである。
【0018】キャンディの成形方法は特に問わないが、
含有するキシリトールの一部あるいは大部分を結晶化さ
せた状態で、保温により十分な流動性を保持できること
から、型に流し込むことにより成形する方式に非常に適
している。他の成形方式としては、例えば、型押し方
式、押出し方式、球断方式等が採用できる。
【0019】以下に、具体的な実施例をあげて本発明を
さらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によ
って何等限定されるものではない。
【0020】
【実施例1】市販の結晶状のキシリトール(商品名「キ
シリトールC」、カルター・フードサイエンス株式会
社)80gと粉末状のソルビトール(商品名「ソルビッ
トW−パウダー」、東和化成工業株式会社)20gを粉
体混合し、120℃まで加熱・溶融した。この糖溶融液
を70℃まで冷却し、微粉末状のキシリトール(商品名
「キシリトールCM90」、カルター・フードサイエン
ス株式会社)5gを加えた後よく攪拌し、キシリトール
の結晶を析出させた。このものを70〜80℃に保温し
たところ、流動可能な状態が長時間保持できた。このも
のをシリコンゴム製の型に流し込み、20℃にて5分間
冷却固化した後型から取り出した。このものは、口中で
解け始めてから終りまで十分な冷涼感と優れた甘味を持
ち、さらに滑らかな食感と適度な固さを持った、優れた
キャンディであった。得られたキャンディを偏光顕微鏡
を用いて観察したところ、結晶の存在が認められた。
【0021】
【比較例1】「実施例1」の結晶状キシリトールを95
gに、粉末状のソルビトールを5gにそれぞれ変更し、
その他の点は「実施例1」と全く同様にしてキャンディ
の製造を試みた。ところが、微粉末状のキシリトールを
加え攪拌した時点で急激に結晶化が進行し、流動性がな
い状態になってしまったため型に流し込む成形方式では
ことができず、キャンディを得ることが困難であった。
【0022】
【比較例2】「実施例1」の結晶状キシリトールを60
gに、粉末状のソルビトールを40gにそれぞれ変更
し、微粉末状のキシリトールを添加する温度を60℃と
し、その他の点は「実施例1」と全く同様にしてキャン
ディの製造を試みた。このものは、型に流し込んだ後2
0℃にて1時間冷却しても固化せず、よほど低温化しな
い限り、通常の冷却条件では型から取り出すことができ
なかった。
【0023】
【実施例2】市販の結晶状のキシリトール(商品名「キ
シリトールC」、カルター・フードサイエンス株式会
社)85gと粉末状のソルビトール(商品名「ソルビッ
トW−パウダー」、東和化成工業株式会社)15gを粉
体混合し、120℃まで加熱・溶解した。この糖溶融液
を70℃まで冷却し、微粉末状のキシリトール(商品名
「キシリトールCM90」、カルター・フードサイエン
ス株式会社)5gを加えた後よく攪拌し、キシリトール
の結晶を析出させた。このものを70〜80℃に保温し
た状態で保持した。
【0024】別に、市販の液状の還元麦芽糖水飴(商品
名「マビット」、株式会社林原商事)280gを185
℃まで加熱し水分を蒸発させた後、150℃まで冷却
し、適当量の酸味料・香料・色素を加えよく攪拌した。
このものを140〜150℃に保温した状態でテフロン
加工した金属製の型(取り出し用ピン付)に約1g流し
込み、その後その上に速やかに先に準備したキシリトー
ル・ソルビトール混合物を約1g流し込んだ。これを2
0℃で1分間冷却した後、さらにその上に初めに流し込
んだものと同じ還元麦芽糖水飴混合物を約1g流し込
み、20℃にて5分間冷却・固化した後型から取りだし
た。
【0025】このようにして、本発明のキャンディを中
間層とし、両側に従来公知のキャンディ層を配した複合
キャンディを得た。このものは、口中溶解中の全時間に
わたって十分な冷涼感を得られるとともに、非常に優れ
た甘味質を持ち、風味豊かで滑らかな食感を有し、か
つ、視覚的にも色調のコントラストが美しい、優れたキ
ャンディであった。
【0026】
【発明の効果】本発明によれば、キシリトールを利用
し、その冷涼感が口中で長時間にわたって得られ、工業
的大量生産が容易で、かつキシリトール配合量をできる
だけ低下させることができるキャンディを提供すること
ができる。

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 キシリトールと、該キシリトールに対す
    る割合が重量比で0.06〜0.50のソルビトールを
    含む配合物を加熱して溶融する溶融工程と、得られた溶
    融液をキシリトールの融点以下でかつその流動性が維持
    される温度に保持して、キシリトールの一部又は大部分
    が結晶化した流動体とする保温工程と、当該保温工程の
    温度で流動体を所望の形状に成形する成形工程と、得ら
    れた成形体を室温まで冷却する冷却工程とを経て、キシ
    リトールの一部が非結晶状態の滑らかで適度の固さを有
    するキャンディを得ることを特徴とするキャンディの製
    造方法。
  2. 【請求項2】 保温工程における流動体の保持温度が6
    0〜85℃である請求項1に記載のキャンディの製造方
    法。
  3. 【請求項3】 請求項1に記載の製造方法により製造さ
    れたキャンディの層の両側に、公知のキャンディ層を重
    ね合わせてなる複合キャンディ。
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