JP3455416B2 - インクジェット記録装置 - Google Patents
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Description
して、被記録体上に飛翔させることにより、画像を記録
するインクジェット記録装置に関し、特に圧電素子によ
り放射される超音波ビームの圧力によりインク滴を吐出
させて被記録体上に飛翔させるインクジェット記録装置
に関する。
して記録媒体上に飛翔させることにより、画点を形成し
て画像を記録する装置は、インクジェットプリンタとし
て実用化されている。このインクジェットプリンタは、
他の記録方法と比べて騒音が少なく、現像や定着などの
処理が不要であるという利点を有し、普通紙記録技術と
して注目されている。
ンタの方式が考案されているが、特に、発熱体の熱によ
り発生する蒸気の圧力でインク滴を飛翔させる方式や圧
電体の変位による圧力パルスによりインク滴を飛翔させ
る方式が代表的なものである。
の先端からインクを飛翔させている。そのため、インク
中の溶媒の蒸発によって局所的なインクの濃縮が生じ、
ノズルでの目詰まりという問題がある。さらに、従来の
インクジェットプリンタは、飛翔させるインク滴の粒径
を小さく(例えば直径20μm以下)することが難し
く、画像を構成する画点が大きくなり、解像度を上げる
ことが困難であった。
層により構成された圧電素子によって発生する超音波ビ
ームの圧力を用いてインク液面からインクを飛翔させる
方式が提案されている。
は、インク吐出部の各々に個別のノズルを形成する必要
がなく、自由液面からインク滴を吐出させることができ
るのが大きな特徴である。しかし、実際に超音波方式の
インクジェットヘッドとして使用する場合は、インクの
蒸発を抑制したり、インク液面を保持したりするため
に、インク滴が吐出する部位にスリットが形成されたス
リット部材が必要である。ここで、従来よりインク滴の
飛翔効率や飛翔安定性の観点から、スリット部材の断面
構造や表面処理などに関する検討がなされてきた。しか
しながら、スリットの幅については必ずしも十分な検討
がなされていない。そのために、特に高速で印字を行う
場合、スリット幅が最適化されていないことにより、イ
ンク滴の吐出不良が起こり、所望の高速印字が達成でき
ないという問題があった。
超音波方式のインクジェット記録装置はスリット幅が最
適化されていないため、高速印字を行う場合にインク滴
の吐出不良が起こり、所望の高速印字が達成できないと
いう問題があった。本発明は高速印字を行う場合にも、
安定なインク滴の吐出が可能なインクジェット記録装置
を提供することを目的とする。
超音波ビームを超音波集束手段を用いてインク液面に集
束させ、スリットで保持されたインク液面からインク滴
を飛翔させる場合、インク滴の飛翔安定性が低下しない
ことが重要である。特に、高速でインク滴を飛翔させる
場合にも、安定なインク滴飛翔が得られることが重要で
ある。
ンク液があふれ出すことによりインク飛翔が不安定化
し、逆にスリット幅が広すぎるとインク液面の制動効果
が弱まり、液面回復時間が遅くなることによりインク滴
の安定飛翔が損なわれることが分かった。
結果、超音波ビームのビーム幅及びインクとスリット部
材の接触角を考慮してスリット幅を最適化することによ
り、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成
するに至った。
と、少なくとも一つの圧電素子と、この圧電素子を駆動
する駆動手段と、この駆動手段により放射される超音波
ビームをインク液の液面近傍に集束させてインク液面か
らインク滴を吐出させるための超音波集束手段と、前記
インク滴の吐出する部位にスリットが形成されたスリッ
ト部材とを具備し、前記スリットの幅をL、前記インク
滴を連続的に吐出させる時のインク液面の盛り上がりの
最高到達高さをhmax、第一のインク滴吐出後から次の
第二のインク滴を吐出させるための駆動を開始した後
に、インク液面の盛り上がりが成長し始めるまでの時間
をt、液面近傍に集束した前記超音波ビームの、前記ス
リットの幅方向のビーム幅をwy、前記インク液が前記
スリット部材表面にあふれ出す時の臨界接触角をθc、
前記インク液の表面張力波の前記スリットの幅方向への
伝搬速度をcyした時、前記スリット部材は、以下の式
を満たす前記スリットを有することを特徴とするインク
ジェット記録装置である。 (2w y 2 h max /|tanθ c |) 1/3 ≦L≦w y +2c y
t
圧電素子を主走査方向にアレイ状に配列して構成される
圧電素子アレイと、この圧電素子を駆動する駆動手段
と、この駆動手段により放射される超音波ビームをイン
ク液の液面近傍に集束させてインク液面からインク滴を
吐出させるための超音波集束手段と、前記インク滴の吐
出する部位にスリットが形成されたスリット部材とを具
備し、前記インク滴を連続的に吐出させる場合、前記ス
リットの幅をL、インク液面の盛り上がりの最高到達高
さをhmax、第一のインク滴吐出後から次の第二のイン
ク滴を吐出させるための駆動を開始した後に、インク液
面の盛り上がりが成長し始めるまでの時間をt、前記超
音波ビームの副走査方向のビーム幅をwy、前記インク
液がスリット部材表面にあふれ出す時の臨界接触角をθ
c、前記インク液の表面張力波の副走査方向への伝搬速
度をcyした時、前記スリット部材は、以下の式を満た
す前記スリットを有することを特徴とするインクジェッ
ト記録装置である。 (2w y 2 h max /|tanθ c |) 1/3 ≦L≦w y +2c y
t
のスリット開口部に仕切る、前記主走査方向に垂直な複
数の仕切りを有し、前記スリット開口部の主走査方向の
幅M 2 、前記超音波ビームの、前記主走査方向のビーム幅
をw x 前記インク液の表面張力波の主走査方向への伝搬
速度をc x 、とした時、前記スリット部材は、以下の式
を満たす前記スリット開口部を有することが好ましい。 (2wx 2hmax/|tanθc|)1/3≦M2≦wx+2cx
t
施の形態を説明する。図1は本発明の実施の形態に関す
るインクジェット記録装置のヘッド部の概略斜視図であ
る。超音波発生手段を構成する平板状圧電体12が支持
部材11上に設けられている。圧電体12は超音波の周
波数や素子の大きさなどによって、チタン酸鉛(P
T)、ジルコン・チタン酸鉛(PZT)などのセラミッ
ク材料、フッ化ビニリデンと三フッ化エチレンとの共重
合体等の高分子材料、ニオブ酸リチウム等の単結晶材
料、酸化亜鉛等の圧電半導体材料で形成することができ
る。支持部材11はガラス等の材料で形成することがで
きる。
数のストライプ状の個別電極13が主走査方向(図1の
x方向)に対して垂直に配置されている。圧電体12は
これらの個別電極13により、機能的に複数の圧電素子
に区分される。他方、圧電体12の上面には一体の共通
電極14が全面にわたって形成されている。これらの電
極13及び14は、チタン、ニッケル、アルミニウム、
銅、金等の金属材料を蒸着やスパッタにより薄膜として
形成することができる。あるいは、これらの電極13及
び14はガラスフリットを銀ペーストに混合したものを
スクリーン印刷法により印刷し、これを焼き付けること
によっても形成することができる。
12の下面に形成された個別電極13と同じ間隔で複数
のアレイ電極15が形成されており、この支持部材11
上の各アレイ電極15と圧電体12下面上の各個別電極
13とは、図示しない導電性接着剤を介して整合して圧
着され、電気的に接続されている。支持部材11上のア
レイ電極15は、支持部材11の端部上に設置された駆
動回路16にボンディングワイヤ17によって接続さ
れ、圧電体12の上面に形成された共通電極14も、図
示しない配線により駆動回路16に接続されている。
音響マッチング層を兼ねた音響レンズとしてフレネルレ
ンズ18を設けた。フレネルレンズ18はフレネルの輪
帯理論に基づいて微細な凹凸形状を形成した平面レンズ
である。
図である。凹凸形状寸法rn は、フレネル輪帯理論に基
づき、式(1)によって決定される。 rn =√〔(2n−1)λi {F+(2n−1)λi /8}/2〕 (n=1, 2,3...)…(1) ここで、F:焦点距離、λi :インク中を伝搬する超音
波の波長である。
ンズ18において、凸部のレンズ中を伝搬した超音波の
位相と、凹部の媒質中を伝搬した超音波の位相とが逆位
相になる、つまり、式(2)を満足するように設定す
る。
音波の波長である。
れる。 dl =1/{2(1/λi −1/λl )} …(3) 式(2)、(3)及び対称性を考慮して、複数のフレネ
ルレンズの溝(図1の溝18a〜18f)を形成する。
と底面から放射される超音波の位相を半波長シフトさせ
るものであり、フレネルレンズ溝18a〜18fのそれ
ぞれは主走査方向に平行に形成される。
から発生した超音波をインク液中へ伝搬させる場合、超
音波の減衰を極力少なくすべく、圧電素子12とインク
液20との音響マッチングを取るためのものである。音
響マッチング層の音響インピーダンスZm は、圧電体の
音響インピーダンスZp とインク液の音響インピーダン
スZi との積の平方根(Zm =(Zp ×Zi )1/2 )に
近い値の音響インピーダンスを有する材料で形成するこ
とが望ましい。そのような音響マッチング材料としては
エポキシ樹脂、ポリイミド等の高分子材料、あるいはそ
れらの高分子材料に音響インピーダンスを調整するため
に繊維またはアルミナもしくはタングステン等の粉末を
混合したものを例示することができる。本実施形態では
フレネルレンズ18が音響マッチング層として機能させ
るために、フレネルレンズ18を前述の材料で形成する
ことが望ましい。
ズ18を底部としてインク液20を収容・保持するイン
ク液保持室19が設けられている。このインク液保持室
19はインク液20を囲む側壁が、フレネルレンズ18
の両端から上方に向かって合わさるように傾斜してお
り、その上部はスリット部材21により閉じられてい
る。あるいは、インク保持室19の上面に直接スリット
を構成してもよい。
12により構成することができる。尚、個別電極13を
圧電体12の上に、共通電極14を圧電体12の下に配
置することもできる。
て、圧電素子12から発生される超音波の集束方法及び
圧電素子12の駆動方法の基本的な例を概略説明する。
まず、個別電極13によりアレイ状態に区分された圧電
素子12の配列方向(主走査方向)における超音波の集
束方法としては、フレネル輪帯理論に基づき、圧電素子
アレイ(例えば、1200素子)の一部の圧電素子群
(例えば、16素子)を同時に駆動し、その時に各圧電
素子12から放射される超音波の位相を制御して、イン
ク液面近傍で超音波の強度が局所的に強くなるように、
すなわち焦点を結ぶように動作させる。一方、主走査方
向に対して直交する方向(副走査方向、図1のy方向)
における超音波の集束は、音響レンズ、ここではフレネ
ルレンズ18によって行う。このように二方向からの超
音波の集束により、インク液面上の任意の位置から超音
波の圧力でインク滴を吐出、飛翔させる。あるいは、超
音波ビームの圧力が大きい近距離音場内に焦点位置を設
定することにより、主走査方向の超音波ビームの集束は
考慮せず、圧電素子アレイの一部の駆動素子群を同一位
相で同時に駆動し、超音波ビームの集束は副走査方向の
音響レンズによって行うという手法でインク滴を飛翔さ
せる駆動方法もある。インク滴の飛翔位置は、同時に駆
動する圧電素子群を電気的に走査することによって変化
させることが可能である。すなわち、アレイ状に配列さ
れた圧電素子の中で、前記同時駆動素子群を複数個設け
ることにより、同時に複数のインク滴を飛翔させること
ができる。
させる場合にインク滴飛翔が不安定化する原因の究明を
行った。その結果、圧電素子の駆動を開始した後にイン
ク的飛翔時の液面の盛り上がりが成長し始める時のイン
ク液面の高さが焦点深度の半分よりも大きくなると、超
音波ビームの音圧が不足することにより、インク滴の飛
翔が不安定化することを確認した。
の超音波集束手段の必要条件を、インク滴吐出後から時
間t経過後のメニスカスの高さをh、音響レンズの焦点
深度をdとした時、 h≦(d/2) …(4) と規定した。
ェット記録装置において、インク滴の飛翔を高速に行う
ための手段について検討を行ってきた。特に、圧電素子
の駆動を開始した後のインク液面の盛り上がり(以下、
メニスカスという)が成長し始めた時のスリット幅を最
適化することが重要であるとの観点から鋭意検討を行っ
た。その結果、インク滴を連続的に吐出させる場合、ス
リットからのインクのあふれ出しがなく、かつ、スリッ
トによるインク液面の制動効果が得られる範囲にスリッ
ト幅を設定することが重要であることを見出した。
場合、スリット幅をL、メニスカスの最高到達高さをh
max 、1インク滴吐出後から次のインク滴を吐出させ
るための駆動を開始した後にメニスカスが成長し始める
までの時間をt、集束超音波の主走査方向と副走査方向
のビーム幅をそれぞれwx 、wy 、インクがスリット
部材の表面にあふれ出す時の臨界接触角をθc 、表面
張力波の主走査方向と副走査方向への伝搬速度をそれぞ
れcx 、cy とした時、 (2wy 2hmax/|tanθc|)1/3≦L≦wy+2cy
t ・・・(5) 満たせば、インク滴の吐出不良を解消できることを見出
した。
の関係を表す模式図を用いてより詳しく説明する。図3
は、1つのインク滴を飛翔させた時のメニスカスの最高
到達高さhmax と、1インク滴吐出後から次のインク滴
を吐出させるために圧電素子の駆動を開始した後にメニ
スカスが成長し始めるまでの時間をtとした時、1イン
ク滴吐出した後に時間t経過した時点でのメニスカス高
さhと、音響レンズの焦点深度dとの関係を模式的に表
している。本発明者らは、式(4)のようにh≦(d/
2)とし、メニスカス高さを焦点深度の半分内に設定す
ることにより、超音波ビームの音圧が十分になることよ
り、インク滴の飛翔が安定化することを確認した。
の模式図である。ここでは、1つのインク滴が飛翔する
時(メニスカスの最高到達高さhmax 、ビーム幅wx
、wy)のメニスカスの体積V1 =πwx ・wy ・
hmax /12が、1インク滴吐出した後に時間t経過
した時点(メニスカス高さh、スリット幅L)でのメニ
スカスの体積V2 =πL2 ・wx ・h/(12・wy
)と等しいという条件(a)と、メニスカス高さhに
おけるインクとスリット部材の表面との接触角θが、イ
ンクがスリット部材上にあふれ出さないための臨界接触
角θc 以下であるという条件(b)、という2つの条
件(a)、(b)より、 (2wy 2hmax/|tanθc|)1/3≦L ・・・(6) という関係を導き出した。
の模式図である。高速印字を行う場合、スリット幅が適
正幅より広いと、インク液面の制動効果が損なわれ、徐
々に液面のベースラインが隆起し、吐出不良を起こすと
いう知見を得ている。本発明者らは、インク滴の吐出後
にメニスカスの回復という形で伝搬する表面波が、少な
くとも時間t経過した後にはスリット端部に到達するよ
うなスリット幅Lに設定することにより、スリットのイ
ンク液面制動効果を発揮させることが可能になることを
見出し、この条件に基づいて、 L≦wy +2cy t …(7) という関係式を導き出した。そして、この関係式
(6)、(7)、すなわち、式(5)を満たすスリット
幅Lにおいては、高速印字を行う場合にも、スリットか
らのインクのあふれ出しがなく、安定なインク滴飛翔が
達成できることを見出した。
(5)の範囲内に規定することにより、インクがスリッ
トの端部からあふれ出すことがなく、また、スリットに
よるインク液面の制動効果も十分に発揮されるため、イ
ンク滴飛翔の繰り返し周期を短くしていった場合にも、
インク滴の吐出不良がなくなり、高速な印字が可能とな
る。
直に仕切りを設けた場合は、上記と同様の考え方に基づ
いて、超音波ビームの主走査方向のビーム幅をwx 、ス
リット開口部の主走査方向の幅をM2 、表面張力波の主
走査方向への伝搬速度をcxとした時に、 (2wx 2 hmax /|tanθc |)1/3 ≦M2 ≦wx +2cx t …(8) とすると、より一層、インク液面の制動効果が高まるこ
とによって、より一層、高速な印字が達成できることを
見出した。
する。 (実施例1)本実施例では図1に示す構造のヘッドを有
するインクジェット記録装置を作製した。まず、平板状
チタン酸鉛(PbTiO3 )系セラミック圧電体の両面
にTi及びAuをそれぞれ厚さ0.05μm及び0.5
μmにスッパタ法で形成してTi/Au電極13を作製
した。引き続き4kV/mmの電界を印加して分極処理
を行うことにより、強誘電性を有する圧電セラミック素
子を作製した。分極後の比誘電率は約215であった。
その後、化学エッチングにより幅60μm、電極間隔2
6μm(配列ピッチは86μm)の個別電極13を形成
した。
μm、電極間隔26μmのTi/Auのアレイ電極15
との位置合わせを行いながら、エポキシ樹脂で接着し、
両電極13、15を導通させた。
ために、セラミック圧電体を厚さ45μmまで研磨し、
さらにAlを圧電体12の上面に電子ビーム蒸着するこ
とにより共通電極14を形成した。この時、副走査方向
の電極の長さ、すなわち口径は2.0mmとした。
ネルレンズ18にはエポキシ樹脂とアルミナ粉末との混
合物を用いた。まず、音速が3×103 m/秒近傍にな
るように混合比を調整し、密度2.20×103 kg/
m3 、音速2.95×103m/sを得た。これを共通
電極14の表面に塗布して硬化させ、厚さが約45μm
になるように研磨した。その後、焦点距離、すなわち、
圧電素子12の上面からスリットまでの距離が2.7m
mになるように深さ1/2波長(約30μm)の溝を主
走査方向に平行に形成して、フレネルレンズ18を形成
した。その後、圧電素子12の上面とインク液面との距
離が約2.7mmとなる側壁(インク保持室19)を形
成し、さらに駆動回路16を搭載してスリットの無いイ
ンクジェット記録装置を作製した。
て形成するための予備試験を行った。具体的には、市販
の水性アゾ染料系インクを用い、これにジエチレングリ
コールを約30重量%添加することにより、インクとS
iの臨界接触角を約20°、インクの表面張力を約50
×10-3N/mとした。ここで、臨界接触角はSi基板
上にインク滴を滴下し、顕微鏡下で断面方向から観察す
ることにより、幾何学的に求めた。このインクをインク
保持室に充填し、インク液面の高さをほぼ2.7mmに
設定して、自由インク液面からインク滴を一滴だけ安定
に飛翔させるための最適駆動条件を求めた。ここで、焦
点距離2.7mm、副走査方向の口径2.0mmである
本実施例のインクジェットヘッドにおいて、同時駆動素
子数は16素子とし、これらを二つの同時駆動素子グル
ープに振り分け、各々の同時駆動素子グループに180
°の位相差を与えて同時駆動するという駆動方法を用い
た。その結果、サテライトの発生が無く、また、数m/
sの初速度を有する安定なインク滴飛翔を得るための最
適駆動条件は圧電素子への平均印加電圧Vave =25
V、バースト印加時間(Burst Time)BST
=20μsであった。
件におけるインク滴の飛翔状態の撮影を行ったところ、
メニスカスの最高到達高さhmax は約160μmであっ
た。また、この時のメニスカスの底辺の長さは、主走査
方向が120μm、副走査方向が80μmであった。
点距離、口径、超音波の波長)に基づいて、式(9)で
表される簡易音場の式から求められる。 wi =2Fi λ (i=x,y) …(9) ここで、Fi はFi ナンバーであり、焦点距離と口径の
比(焦点距離/口径)で与えられ、またλは超音波の波
長である。本実施例では焦点距離2.7mm、主走査方
向の口径(Dx )1.38mm、副走査方向の口径(D
y )2.0mmであるから、主走査方向と副走査方向の
Fi ナンバーを、それぞれFx 、Fy とすると、Fx =
1.96、Fy =1.35となる。また、波長λはイン
クの音速が約1500m/sであるから、周波数50M
Hzでは約30μmとなる。従って、式(9)より、主
走査方向のビーム幅wx は118μm、副走査方向のビ
ーム幅wy は81μmとなる。これらの値は、上記のメ
ニスカスの底辺の長さの実測値とよく一致していること
から、メニスカスの底辺の長さは式(9)の簡易音場の
式で与えられるビーム幅が反映されていると考えられ
る。
波の速度ci は、 ci =√(2πγ/(ρ・λi )) (i=x、y) …(10) で与えられる。ここで、γはインクの表面張力、ρはイ
ンクの密度、λi は表面張力波の波長である。今、γ=
50×10-3N/m、ρ=1.05g/cm3 であるか
ら、主走査方向では、λx =2wx =236μmより、
cx =1.12×106 μm/s、副走査方向では、λ
y =2wy =162μmより、cy =1.35×106
μm/sと求まる。
辺は(2wy 2 hmax /|tanθc |)1/3 =179
μmと求まる。また、1インク滴吐出後から次のインク
滴を吐出させるための駆動を開始した後にメニスカスが
成長し始めるまでの時間tを、例えばt=100μsと
すると、(数式3)の右辺は(wy +2cy t)=35
1μmとなる。
程度の高速印字を実現するためには、スリット幅Lを1
79μm≦L≦351μmに設定すれば良いと言える。
そこで、本実施例においては300μm幅のスリットを
形成し、図1に示すインクジェット記録装置を完成し
た。
を用いて、インク滴飛翔実験を行った。具体的には、圧
電素子への平均印加電圧Vave とバースト印加時間BS
Tを変動パラメータとして、インク滴を繰り返し吐出さ
せる場合の最短吐出繰り返し周期Tmin の評価を実施し
た。その結果、Vave =25V、BST=20μsの時
に最高の印字速度が得られ、この場合のTmin は140
μsであった。
ジェット記録装置について、実施例1の最適駆動条件
(Vave =25V、BST=20μs)において、T
min =140μsよりも短い吐出繰り返し周期T=12
0μsでインク飛翔実験を行った。その結果、インク滴
が飛翔しなかったり、あるいは、インク滴の着弾位置が
大きくずれるといった不良モードが発生した。
因を究明するための検討を行った。具体的には、超高速
度カメラを用いてインク滴の飛翔状態の撮影を行い、実
施例1と比較例1について、それぞれ1インク滴吐出後
から次のインク滴を吐出させるための駆動を開始した後
にメニスカスが成立し始めるまでの時間tと、その時の
メニスカス高さhを測定した。その結果、実施例1では
t=100μs、h=75μmであったのに対し、比較
例1ではt=85μs、h=110μmであった。この
結果に基づいて式(7)の右辺を計算し直してみると、
実施例1では(wy +2cy t)=351μm、比較例
1では(wy +2cy t)=311μmとなる。よっ
て、実施例1と比較例1のいずれもスリット幅300μ
mは適正範囲に入っていると言える。
その高さを変えた場合の音圧の測定を行うことにより、
超音波の音圧のインク液面高さ依存性を調べた。図3に
測定結果を示す。ここでは超音波の音圧を相対値で表し
ている。このように、焦点距離2.7mmに対して、イ
ンク液面が上下に100μm以上ずれると、超音波の音
圧が10%以上低下することが分かった。つまり、超音
波の音圧が焦点位置における最高音圧に対して、90%
以上になる領域を焦点深度dと定義した時、本インクジ
ェットヘッドの焦点深度dは200μmであり、d/2
=100μmとなる。上記のメニスカス高さhの実測値
と比較すると、実施例1においては、h<d/2になっ
ているのに対し、比較例1ではh>d/2となり、イン
ク滴を連続吐出させるための必要条件を規定した式
(4)が有効であることを確認できた。
る以外は、実施例1と全く同様のインクジェット記録装
置を作製し、実施例1と同様の手法でインク滴飛翔実験
を行いTmin の評価を行った。その結果、最適駆動条件
はVave =25V、BST=15μsであり、この時の
Tmin は360μsであった。
影を行ったところ、吐出繰り返し周期をTmin (=36
0μs)より短くした場合には、スリットの端部からイ
ンクがあふれ出すことが確認された。
る以外は、実施例1と全く同様のインクジェット記録装
置を作製し、実施例1と同様の手法でインク滴飛翔実験
を行いTmin の評価を行った。その結果、最適駆動条件
はVave =25V、BST=25μsであり、この時の
Tmin は280μsであった。
影を行ったところ、吐出繰り返し周期をTmin (=28
0μs)より短くした場合にはインク液面が全体的に隆
起し、1インク滴吐出後から次のインク滴を吐出させる
ための駆動を開始した後にメニスカスが成長し始めるま
での時間t経過した後のメニスカスの高さhが実質的に
焦点深度dの半分(=100μm)以上になっているこ
とが判明した。これはスリット幅が広すぎるため、イン
ク液面の制動効果が不十分なことに起因していると考え
られる。
リットに主走査方向と垂直に仕切り部24を設けてスリ
ット開口部25を形成することと、(b)主走査方向の
記録ドットの間隔を344μmピッチとすること以外
は、実施例1の場合と同様の超音波インクジェット記録
装置を作製した。この時、焦点距離2.7mm、主走査
方向の口径(Dx)は、1.38mmであるから、主走
査方向のFナンバー(Fx)は、Fx =1.96、副走
査方向のビーム幅wxは式(9)より、wx=118μm
となる。よって、式(8)の左辺は(2wx 2・hmax/
|tanθc|)1/3=230μmとなる。また、t=1
00μsとすると、式(8)の右辺は、(wx+2c
xt)=342μmとなる。従って、吐出繰り返し周期
が100μs程度の高速印字を実施するには、スリット
開口部の主走査方向の幅M2を、230μm≦M2≦34
2μmに設定すればよいと言える。本実施例において
は、図7に示すように、スリット幅L=300μm、仕
切り部の幅M1=44μm、スリット開口部の幅M2=3
00μmとした。
隔は344μmピッチであるが、スリット開口部に仕切
り部を設けない超音波インクジェット記録装置も作製し
た。実施例2と比較例4の超音波インクジェット記録装
置を用いて、実施例1と同様の手法でインク滴飛翔実験
を行いTmin の評価を行った。その結果、比較例4では
Tmin =140μsであったのに対し、実施例2では、
Tmin =120μsとなり、より一層、高速に印字でき
ることが検証された。仕切り部を設けることにより、実
施例1に比べて、主走査方向の液面制動効果が大きくな
ったと考えられる。
ット幅の最適化を規定することにより、インクがスリッ
トの端部からあふれ出すことがなく、また、スリット開
口部によるインク液面の制動効果も十分に発揮されるた
め、インク滴飛翔の繰り返し周期を短くしていった場
合、すなわち、高速印字を行う場合にも、インク滴の吐
出不良がなくなり、安定なインク滴の吐出が可能な、信
頼性の高いインクジェット記録装置を提供することがで
きる。
録装置のヘッド部の概略斜視図である。
の概略図である。
焦点深度との関係を表す模式図である。
ある。
ある。
ンク液面高さ依存性を示すグラフである。
面図である。
出させるための駆動を開始した後にメニスカスが成長し
始めるまでの時間 h 1インク滴吐出後から時間t経過後のメ
ニスカスの高さwy集束超音波の副走査方向のビーム幅 d 音響レンズの焦点深度 dl フレネルレンズの溝の深さ θ メニスカス高さhにおけるインクとスリ
ット部材表面との接触角 θc インクがスリット部材表面にあふれ出す
時の臨界接触角 cy 表面張力波の副走査方向への伝搬速度 M1 仕切り部の幅 M2 スリット開口部の幅 F 焦点
Claims (3)
- 【請求項1】インク保持室と、少なくとも一つの圧電素
子と、この圧電素子を駆動する駆動手段と、この駆動手
段により放射される超音波ビームをインク液の液面近傍
に集束させてインク液面からインク滴を吐出させるため
の超音波集束手段と、前記インク滴の吐出する部位にス
リットが形成されたスリット部材とを具備し、 前記スリットの幅をL、 前記インク滴を連続的に吐出させる時のインク液面の盛
り上がりの最高到達高さをhmax、 第一のインク滴吐出後から次の第二のインク滴を吐出さ
せるための駆動を開始した後に、インク液面の盛り上が
りが成長し始めるまでの時間をt、 液面近傍に集束した前記超音波ビームの、前記スリット
の幅方向のビーム幅をwy、前記 インク液が前記スリット部材表面にあふれ出す時の
臨界接触角をθc、前記インク液の 表面張力波の前記スリットの幅方向への
伝搬速度をcy とした時、前記スリット部材は、以下の式を満たす前記スリットを
有することを特徴とするインクジェット記録装置。 (2w y 2 h max /|tanθ c |) 1/3 ≦L≦w y +2c y
t - 【請求項2】インク保持室と、複数の圧電素子を主走査
方向にアレイ状に配列して構成される圧電素子アレイ
と、この圧電素子を駆動する駆動手段と、この駆動手段
により放射される超音波ビームをインク液の液面近傍に
集束させてインク液面からインク滴を吐出させるための
超音波集束手段と、前記インク滴の吐出する部位にスリ
ットが形成されたスリット部材とを具備し、 前記 インク滴を連続的に吐出させる場合、前記 スリットの幅をL、 インク液面の盛り上がりの最高到達高さをhmax、 第一のインク滴吐出後から次の第二のインク滴を吐出さ
せるための駆動を開始した後に、インク液面の盛り上が
りが成長し始めるまでの時間をt、 前記超音波ビームの副走査方向のビーム幅をwy、 前記インク液がスリット部材表面にあふれ出す時の臨界
接触角をθc、前記インク液の 表面張力波の副走査方向への伝搬速度を
cy とした時、前記スリット部材は、以下の式を満たす前記スリットを
有することを特徴とするインクジェット記録装置。 (2w y 2 h max /|tanθ c |) 1/3 ≦L≦w y +2c y
t - 【請求項3】前記スリット部材は、前記スリットを複数
のスリット開口部に仕切る、前記主走査方向に垂直な複
数の仕切りを有し、 前記スリット開口部の主走査方向の幅M 2 、 前記超音波ビームの、前記主走査方向のビーム幅をw x 前記インク液の表面張力波の主走査方向への伝搬速度を
c x 、 とした時、 前記スリット部材は、以下の式を満たす前記スリット開
口部を有することを特徴とする請求項2記載のインクジ
ェット記録装置。 (2w x 2 h max /|tanθ c |) 1/3 ≦M 2 ≦w x +2c x
t
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP8309698A JP3455416B2 (ja) | 1998-03-30 | 1998-03-30 | インクジェット記録装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP8309698A JP3455416B2 (ja) | 1998-03-30 | 1998-03-30 | インクジェット記録装置 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH11277735A JPH11277735A (ja) | 1999-10-12 |
JP3455416B2 true JP3455416B2 (ja) | 2003-10-14 |
Family
ID=13792666
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP8309698A Expired - Fee Related JP3455416B2 (ja) | 1998-03-30 | 1998-03-30 | インクジェット記録装置 |
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Country | Link |
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JP (1) | JP3455416B2 (ja) |
-
1998
- 1998-03-30 JP JP8309698A patent/JP3455416B2/ja not_active Expired - Fee Related
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Publication number | Publication date |
---|---|
JPH11277735A (ja) | 1999-10-12 |
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