JP3453748B2 - 磁気駆動バルブ及びその製造方法 - Google Patents

磁気駆動バルブ及びその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、気体・液体の流量
を制御する磁気駆動バルブ及びその製造方法に係り、特
に、シリコンを基材として化学エッチングを用いて製造
される超小形の磁気駆動バルブとその製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】従来の第1の磁気駆動マイクロバルブと
しては、シリコン結晶で作製したバルブにニッケルなど
の磁性薄膜をスパッタリング或いはメッキなどにより成
長させてこの磁性薄膜を外部磁場で駆動するものがあ
る。
【0003】具体的には、例えば、B.Lochel、A.Macioss
ek、H.J.Quenzer、B.Wagner、G.Engelmann "Magnetically
driven microstructurs fabricated with multilayer e
lectroplating" Sensors and Actuators A、46-47(1995)
pp.98-103などの雑誌に開示されている。
【0004】従来の第2の磁気駆動マイクロバルブとし
ては、シリコン結晶で作製したバルブに小さく切断した
磁性体を個別に接着し、この磁性体を外部磁場で駆動す
るものがある。
【0005】具体的には、例えば、B.Wagner、W.Beneck
e、G.Engelmann、J.Simon "Microstructurs with moving
magnets for linear、torsional or multiaxial motion"
Sensors and Actuators A、32 (1992) pp.598-603など
の雑誌に開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、以上の
ような従来の第1の磁気駆動マイクロバルブの場合は、
チップ個別の工程がなく、シリコンウエハ単位の工程の
みで製造できるので、工数が少なく安価に製造できる利
点があるが、磁性膜の厚さをせいぜい0.1mm程度ま
でしか厚くできない。
【0007】磁気力は磁場中の磁性体の体積に比例する
が、磁性体の体積を大きくすることができないので、例
えば外部磁気回路を配置して磁束を薄膜に集中させる
と、すぐに磁束密度が飽和してしまい、結局大きな磁気
力を得ることが期待できない。
【0008】次に、従来の第2の磁気駆動マイクロバル
ブの場合は、逆に、磁性体の体積は大きくとることは可
能であるが、極めて小さな部品を一つ一つ接着する必要
があるので手間が多くかかりコストアップになるという
問題がある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、以上の課題を
解決するための主な構成として、磁気駆動バルブとし
て、シリコンウエハ中に開口部が形成されると共にこの
開口部を閉塞する可動部が前記シリコンウエハと一体に
形成されかつ前記可動部を中心としてブリッジ状にバネ
性のある梁が周辺に延長されて上面に空間と連通する
放部が形成され、前記可動部には中間接合材を介して強
磁性体ウエハが固着され、磁場の印加によりこの強磁性
体ウエハを吸引解放して前記可動部が上方に引き上げら
れることにより前記開口部を開閉するようにしたもので
ある。
【0010】また、磁気駆動バルブの製造方法として
は、シリコンウエハ中に開口部を形成すると共にこの開
口部を閉塞する複数の可動部と前記可動部を中心として
周辺にブリッジ状に延長されたバネ性のある梁及び上面
空間と連通する開放部を前記シリコンウエハと一体に
形成する第1工程と、複数の前記可動部を中間接合材を
介して強磁性体ウエハを全体として接合する第2工程
と、前記各可動部を単位として接合された前記各ウエハ
を一体としてダイシングする第3工程と、この後で前記
強磁性体ウエハに磁気力を付与する第4工程とを具備す
るようにしたものである。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て図を用いて説明する。図1は本発明の1実施形態の縦
断面を示す縦断面図である。10は非磁性体のケースで
あり、このケース10の中には駆動コイル11が固定さ
れている。
【0012】さらに、ケース10は矩形状をなしてお
り、その上部中央に流体が流入する流入口10Aが、下
部中央に流体が流出する流出口10Bがそれぞれ形成さ
れ、この流出口10Bを覆うようにバルブ素子12が固
定されている。
【0013】このバルブ素子12は、シリコンウエハ1
3、中間接合材として機能するパイレックスガラスで出
来たガラス部材14、およびコバール合金でできた強磁
性体ウエハ15より構成されており、このシリコンウエ
ハ13の上部から、つまりガラス部材14側からみた平
面図は図2に示すようになっている。
【0014】先ず、シリコンウエハ13の構成について
説明する。シリコンウエハ13はその外径が矩形状に形
成されており、その中央部には下端の矩形状の開口部1
3Aより上端部に向かって徐々に開口面積が狭くなるよ
うに開口されている。
【0015】一方、矩形状にスリット状の空間13Bが
シリコンウエハ13の中に形成されているが、この空間
13Bの上部は図2に示すように中央部で若干突出した
形であって矩形状として可動部13Cが形成されてい
る。
【0016】そして、この可動部13Cを中心としてブ
リッジ状に梁13D〜13Gが周辺に延長されて上面に
空間13Bと連通する4個の開放部13H〜13Kが形
成されている。
【0017】さらに、開口部13Aより延長され空間1
3Bと連通する部分の矩形状の開口部13Lは、矩形状
の可動部13Cの押圧により完全に閉塞できる大きさに
選定されている。そして、梁13D〜13Gは、物性に
基づくバネ性があり、通常は可動部13Cにより開口部
13Lは閉塞されている。
【0018】以上のような構造は、一般的な半導体プロ
セスであるフオトリソグラフイと化学エッチング技術を
用いることにより作製することができる。このようにし
て作られたシリコンウエハ13は、ガラス部材14を介
して強磁性体ウエハ15に陽極接合により接合されて、
バルブ素子12として形成される。
【0019】このバルブ素子12は、その開口部13A
が流出口10Bと一致するように固定され、強磁性体ウ
エハ15が駆動コイル11の中に入るようにケース10
の内部に配置されて、磁気駆動バルブ16が構成され
る。
【0020】次に、以上のように構成された磁気駆動バ
ルブ16の動作について図3を用いて説明する。駆動コ
イル11に電流が流れていない状態では、可動部13C
が開口部13Lを閉塞して流体は流れないようになって
いる。
【0021】しかし、駆動コイル11に電流が流れると
磁場が発生し、強磁性体ウエハ15を磁場の強さの2乗
の勾配に比例する磁気力で吸引して矢印の方向に引き上
げるので、可動部13Cが上方に引き上げられ、開口部
13Lが開口する。
【0022】この結果、流体は流入口10Aから流入
し、駆動コイル11と強磁性体ウエハ15との間を通っ
て矢印で示すように開放部13H〜13Kを通過して流
出口10Bに流れる。以上の動作から分かるようにこの
磁気駆動バルブ16はノーマリ・クローズ型のバルブと
して動作する。
【0023】次に、以上のような磁気駆動バルブを製造
する製造方法について図4、図5を用いて説明する。図
4は図1に示すバルブ素子12を切り出して製造する前
のウエハ状態を示している。
【0024】シリコンウエハ17の上には、鉄、ニッケ
ル、コバルトなどの成分を持つコバール合金などの磁性
体ウエハ18を接合することとなるが、陽極接合法の場
合はシリコンウエハ17に直接この磁性体ウエハ18を
接合することは出来ない。
【0025】そこで、シリコンウエハ17と磁性体ウエ
ハ18の間に線膨張係数がこれ等と近いガラス、例えば
パイレックスガラス19などを介して陽極接合を行う。
陽極接合に当たっては、先ず、シリコンウエハ17とパ
イレックスガラス19とを陽極接合した後、パイレック
スガラス19にコバール合金を陽極接合する。
【0026】陽極接合は、400°C程度の高温中で、
600V〜1000V程度の電圧を印加してガラスと導
体とを接合するものであるが、シリコン−パイレックス
ガラス−コバール合金は互いに線膨張係数がほぼ一致し
ているので、陽極接合を行っても不具合は生じない。
【0027】このようにしてシリコンウエハ17と、磁
性体ウエハ18と、中間接合材として機能するパイレッ
クスガラス19とが3層状態に接合された3層構造のウ
エハが一体として出来るが、このウエハには複数のバル
ブ素子が構成されているので、これを線X1〜X2、線X
3〜X4、線Y1〜Y2、線Y3〜Y4で切り出す。
【0028】これ等の線X1〜X2、線X3〜X4、線Y1
〜Y2、線Y3〜Y4で囲まれる1素子分(A部分)だけ
ダイシングして切り出し、これを拡大した結果が図5に
縦断面図として示されている。
【0029】図5において、シリコンウエハ17から切
り出したシリコンウエハ17´には、予め、フオトリソ
グラフイと化学エッチング技術を用いることにより開口
部17A´、17L´、空間17B´、可動部17C´
などが図1、図2に示すものと同様に作製されている。
【0030】なお、図5に示すシリコンウエハ17´の
サイズは大略5mm×5mm、パイレックスガラス19
´の厚さは0.5mm、および磁性体ウエハ18´は1
mm程度である。
【0031】以上のようにして、シリコンウエハ17の
各部で切り出して複数のバルブ素子をチップ単位の工作
を行うことなしに、大きな磁性体を付加した形でバルブ
素子を作ることが出来る。
【0032】図6と図7は、図1に示すバルブ素子を駆
動するための磁気回路の変形実施形態を示した縦断面図
である。図6は磁性体ウエハを外部磁気回路の一部とし
て組込んで駆動力を向上させるように改良した磁気駆動
バルブの縦断面図を示している。
【0033】この場合のバルブ素子は、図1に示すバル
ブ素子12と同一のものであるが、この磁性体ウエハ1
5はΣ形の磁性体のヨーク20の開放部の一部に挿入さ
れて全体としてケース21の中に組み込まれている。
【0034】そして、この場合は、図1におけるケース
10の場合と異なり、流体の流出口10Bに対応する流
出口21Bと同一面側に流体の流入口21Aが形成され
ている。
【0035】この場合の駆動コイル22に電流を流すこ
とにより、図1に示す単体の駆動コイル11だけで駆動
する場合に比べて、同じ消費電力で100倍近い磁気力
を得ることができる。
【0036】図7は磁性体ウエハを外部磁気回路の一部
として組込んで駆動力を向上させるように改良した点で
は図6と同様であるが、外部磁気回路の構成を変えた磁
気駆動バルブの縦断面図を示している。
【0037】この場合の外部磁気回路は、磁性体のヨー
ク23としてC形のコアを用いたものであり、C形のコ
アの開放面の外部に沿ってバルブ素子12の磁性体ウエ
ハ15を配置する構成としている。
【0038】開放面の反対側に駆動コイル24を巻回し
てあり、この駆動コイル24に電流を流すことによりコ
アの開放部に磁場が発生するが、この磁場の勾配を利用
して磁気力を発生させる。
【0039】図7に示す磁気駆動バルブにおいて、磁性
体ウエハ15の厚さを変えて、有限要素法による磁気シ
ュミレーションで計算した結果によると、厚さ1mmで
は磁性体の磁束密度は0.6T程度であるが、厚さを
0.1mmでは5Tに達してしまうことが分かった。
【0040】一般的な金属磁性材料では1T程度で磁束
密度の飽和が起こるので、従来のような磁性薄膜では磁
気ヨークにより磁束を集中させても有効に利用すること
ができないが、図7に示すような構成により磁束を集中
すると磁気力を有効に活用することができる。なお、図
6に示す構成の場合にも同様な効果がある。
【0041】今までの説明では、バルブ素子12を構成
するシリコンウエハ17に磁性体ウエハ15を接合する
のに陽極接合を用いることとして説明したが、図4に示
すシリコンウエハ17´に、例えば磁性金属或いは磁性
セラミックスなどの磁性体ウエハ18´を中間接合材と
して機能する接着剤を用いて直接接着してからダイシン
グすることも可能である。この場合は、接着の手間が1
回ですむメリットがある。
【0042】
【発明の効果】以上、発明の実施の形態と共に具体的に
説明したように、第1請求項に記載された発明によれ
ば、強磁性体ウエハとして1mm程度の厚い磁性体を接
合することができるので、せいぜい0.1mm程度の厚
さしか実現できない磁性薄膜を用いる従来の場合に比べ
て、大きな駆動力を得ることができ、より高圧で大流量
の流体をより高速に制御することができる。
【0043】また、第2請求項に記載された発明によれ
ば、厚みのある強磁性体ウエハを外部磁気回路の一部と
して構成するので、磁束を集中させることができ、磁束
を集中しても磁気飽和を避け易く、このため強い磁気力
を得ることが出来るメリットがある。
【0044】さらに、第3請求項に記載された発明によ
れば、磁性体ウエハの接合は複数のバルブ素子を含むウ
エハ単位で行うので、個別に磁性体を接着してバルブを
製造する従来の製造方法に比べて、接合に要する工数と
費用は大幅に低減させることができるメリットがある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1実施の形態を示す縦断面図である。
【図2】図1に示すガラス部材側からシリコンウエハ側
をみた平面図である。
【図3】図1に示す実施の形態の動作を説明する動作説
明図である。
【図4】図1に示すバルブ素子を製造する構成を示した
斜視図である。
【図5】図4における一部を拡大した拡大図である。
【図6】図1に示す実施の形態とは異なる第1の変形実
施形態を示す縦断面図である。
【図7】図1に示す実施の形態とは異なる第2の変形実
施形態を示す縦断面図である。
【符号の説明】
10、21 ケース 11、22、24 駆動コイル 12 バルブ素子 13 シリコンウエハ 14 ガラス部材 15 強磁性体ウエハ 16 磁気駆動バルブ 17 シリコンウエハ 18 磁性体ウエハ 19 パイレックスガラス 20、23 ヨーク
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平7−229579(JP,A) 特開 平3−103680(JP,A) 特開 平4−19479(JP,A) 特開 平3−84270(JP,A) 特開 平4−136577(JP,A) 実開 平4−74467(JP,U) 実開 昭61−75565(JP,U) 実公 平5−619(JP,Y2) 実公 平4−1418(JP,Y2) 特表 平7−508085(JP,A) 特表 平4−501593(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F16K 31/00 - 31/11

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】シリコンウエハ中に開口部が形成されると
    共にこの開口部を閉塞する可動部が前記シリコンウエハ
    と一体に形成されかつ前記可動部を中心としてブリッジ
    状にバネ性のある梁が周辺に延長されて上面に空間と連
    通する開放部が形成され、前記可動部には中間接合材を
    介して強磁性体ウエハが固着され、磁場の印加によりこ
    の強磁性体ウエハを吸引解放して前記可動部が上方に引
    き上げられることにより前記開口部を開閉することを特
    徴とする磁気駆動バルブ。
  2. 【請求項2】前記強磁性体ウエハは外部磁気回路の一部
    として形成され駆動コイルにより発生する磁場の磁気力
    で吸引されることを特徴とする請求項1記載の磁気駆動
    バルブ。
  3. 【請求項3】シリコンウエハ中に開口部を形成すると共
    にこの開口部を閉塞する複数の可動部と前記可動部を中
    心として周辺にブリッジ状に延長されたバネ性のある梁
    及び上面に空間と連通する開放部を前記シリコンウエハ
    と一体に形成する第1工程と、複数の前記可動部を中間
    接合材を介して強磁性体ウエハを全体として接合する第
    2工程と、前記各可動部を単位として接合された前記各
    ウエハを一体としてダイシングする第3工程と、この後
    で前記強磁性体ウエハに磁気力を付与する第4工程とを
    具備することを特徴とする磁気駆動バルブの製造方法。
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DE102006040343A1 (de) * 2006-08-29 2008-03-06 Robert Bosch Gmbh Verfahren zur Herstellung von Bauteilen zur Steuerung eines Fluidflusses sowie Bauteile, hergestellt nach diesem Verfahren
CN104956279B (zh) * 2013-01-28 2018-02-27 株式会社岛津制作所 气体压力控制器

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