JP3453681B2 - 地下水浄化構造及び地下水浄化方法 - Google Patents

地下水浄化構造及び地下水浄化方法

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、有機ハロゲン化合
物や重金属等により汚染された地下水(以下、「汚染地
下水」という)を浄化する地下水浄化構造及び地下水浄
化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】汚染地下水を原位置において浄化する方
法(以下、「原位置浄化方法」という)として、透過性
地下水浄化壁工法が存在しており、メンテナンスフリー
の浄化工法として注目を集めている。この透過性地下水
浄化壁工法は、図4に示すように、汚染地盤G’中にお
ける汚染地下水W’の流れの下流側に、透過性の浄化材
料を含む透過性地下水浄化壁(以下、「透過性浄化壁1
1’」という)と、必要に応じて当該透過性浄化壁1
1’の両側に一対の止水壁12’を構築し、透過性浄化
壁11’に汚染地下水W’を透過させることにより、こ
れを浄化する工法である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、汚染地盤G’
の透水性が小さい場合には、汚染地下水W’が透過性浄
化壁11’へ到達し、通過するまでの時間が非常に長
く、浄化の効果が現れるまでに長期間を要するという問
題点があった。
【0004】なお、前記のような場合には、汚染地盤
G’の全域を浄化材料で置換してしまうことも考えられ
るが、汚染地下水W’が広範囲に亘っている場合には、
施工作業及び施工費用が膨大になってしまうことから実
用化が困難であった。
【0005】本発明は、前記の各問題点を解決するため
になされたものであり、透水性が小さい汚染地盤におい
て、早期に浄化の効果を発生させることができるととも
に、施工費用の低廉化を図りながら広範囲に亘る汚染地
下水を原位置において浄化することができる地下水浄化
構造及び地下水浄化方法を提供することを目的としてい
る。
【0006】
【課題を解決するための手段】前記問題を解決するため
に、請求項1に記載の本発明は、地下水流動の流速が極
めて小さい汚染地盤中の全域において、所定位置に打設
された所定本数の浄化杭を備え、前記浄化杭は金属還元
を含んでおり、左右方向、上下方向又は斜め方向に隣
接する前記浄化杭の間隔が杭径の1/2以上乃至5倍以
下であることを特徴とする地下水浄化構造を提供するも
のである。
【0007】ここで、地下水の流速が極めて小さい
は、地盤の透水係数が10-5cm/sec以下であり、地下
水流速にして年間5cm以下をいう。
【0008】また、浄化杭とは、金属還元剤を構成材料
として含む杭体をいう
【0009】
【0010】また、前記浄化材料として、特に、金属還
元剤と、珪砂あるいは砕石等の透水性を有する細骨材と
を混合した材料を用いると、浄化材料に透過性が確保さ
れているため、金属還元剤の腐食やカルシウム塩の沈殿
による目詰まりを回避し、供用開始後長期間に亘り所望
の透水性を維持することが可能となり、有機ハロゲン化
合物や重金属による汚染水を浄化する際に非常に好適で
ある。
【0011】従って、本発明によれば、汚染地盤に直
接、所定本数の浄化杭を打設することにより、地下水流
動がない汚染地盤においても原位置で汚染地下水の浄化
が可能となる。
【0012】また、請求項1に記載の地下水浄化構造に
おいて、左右方向、上下方向又は斜め方向に隣接する前
記浄化杭の間隔を杭径の1/2以上乃至5倍以下の範囲
内で適切に設定することにより、最も効率的に浄化杭の
配置を定めることができるため、最小の施工費用とする
ことができる。
【0013】また、請求項に記載の本発明のように、
請求項1に記載の地下水浄化構造において、前記汚染地
盤の所定位置に、モニタリング孔を形成することによ
り、汚染地盤の浄化の状態を容易に観測し、適切な措置
等を講じることが可能となる。
【0014】さらに、請求項に記載の本発明は、地下
水流動の流速が極めて小さい汚染地盤中の全域におい
て、金属還元剤を含む所定本数の浄化杭を、所定位置に
打設することにより、原位置において地下水を浄化する
方法であり、左右方向、上下方向又は斜め方向に隣接す
る前記浄化杭の間隔が杭径の1/2以上乃至5倍以下で
あることを特徴とする地下水浄化方法を提供するもので
ある。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明の実施の一形態について、
図面を参照して詳細に説明する。なお、対象地盤Gは、
工場の敷地内等の汚染源を有する広範な地盤であり、透
水性が小さく、地下水流動がほとんど生じていない地盤
である。
【0016】図1に示すように、本発明の地下水浄化構
造10は、汚染地盤Gに打設された複数の浄化杭11
と、当該汚染地盤Gの所定位置に形成されたモニタリン
グ孔12とから構成されている。前記浄化杭11は、金
属還元剤である鉄粉と珪砂とを混合した円柱杭である。
ここで、鉄粉のみではなく、珪砂を混合した理由は、浄
化杭11の透過性を十分に確保することにより、鉄粉の
腐食が発生したり、カルシウム塩が間隙中に沈殿した場
合を考え、本地下水浄化構造10のロングライフ化をね
らったものである。従って、同様の目的を達成できるな
らば、珪砂に代えて、珪砂に相当する透水性を有する細
骨材等を用いても差し支えない。
【0017】また、前記浄化杭11は、汚染地盤Gの全
域にわたり、上下方向、左右方向及び斜め方向に隣接す
る浄化杭11A〜11Iの間隔が杭径の5倍以下の範囲
となるように、格子状に打設されている。なお、浄化杭
11は、格子状でなく、千鳥状や、同心形状に打設する
もの等、汚染地盤Gの状況により、適切に選択すること
ができる。
【0018】モニタリング孔12は、汚染地盤中Gから
汚染地下水を取水して、水質の観測を行うために設ける
ものであり、汚染地盤Gの所望位置、所定深さに所定数
設けることができる。本実施形態では、汚染地盤Gの略
中央部であって、隣接する浄化杭11A,11Cの中間
部に設けられている。
【0019】なお、本発明は、ケーシングパイプを用い
て地山の崩壊を防止しながら削孔した孔に浄化材料を埋
設することにより、容易に複数の円柱杭を形成する施工
方法を用いることができる。従って、通常避けられない
とされる透過性を有する浄化材料の材料分離を大幅に抑
制することができ、汚染地下水の透過性能が十分に担保
されることとなり、長期間に及ぶ透過性の維持をより完
全かつ容易に達成できることとなる。
【0020】本発明の地下水浄化構造10の作用は以下
の通りである。本発明は、汚染地盤Gに直接、複数の浄
化杭11を打設することによって、鉄粉(金属還元剤)
と汚染物質Bとの還元反応により、汚染地下水中から汚
染物質を除去することができる。そのため、地下水流動
がない汚染地盤Gにおいても原位置で汚染地下水の浄化
が可能となる。これは、浄化杭11の内部で汚染物質濃
度が低下することで、浄化杭11の周辺部と浄化杭11
の内部との間に汚染物質の濃度差が生じ、地下水の流れ
が生じていなくても濃度拡散の効果で汚染物質Bのみが
浄化杭部分に集まり浄化されるというメカニズムによる
ものである。(図2参照)。
【0021】これにより、複数の浄化杭11が格子状
(間欠的に列状配置)に打設されている場合であって
も、鉄粉(金属還元剤)と汚染物質Bとの還元反応によ
る浄化力が、各浄化杭11の断面領域のみならず外側領
域Rにまで実質的に及ぶことになる。そのため、汚染地
盤Gの全体領域を浄化材料で置換する必要がなく、施工
費用の大幅な低減を図ることができる。このとき、1本
の浄化杭11は、杭径の2.5倍までの影響範囲(外側
領域Rに対応)を有していることが実証されている(実
施例参照)ので、隣接する浄化杭11A〜11Iの間隔
を杭径の5倍以下とすることにより、最も効率的に浄化
杭11の配置を定めることができる。
【0022】また、本発明の地下水浄化構造10では、
汚染地盤Gの所定位置に、モニタリング孔12が形成さ
れているため、当該モニタリング孔12の水質を常時又
は、所定時間毎に監視することにより、汚染地盤Gの浄
化の状態を容易に観測し、必要に応じて適切な措置等を
講じることが可能となる。
【0023】以上、本発明について、好適な実施形態の
一例を説明した。しかし、本発明は、前記実施形態に限
られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を
逸脱しない範囲で、適宜設計変更が可能であるまた、
浄化杭の数、径、杭長等についても、適宜、選択が可能
であり、杭径の異なる浄化杭を打設してもよい。さら
に、浄化材料の割合を適宜変更した複数の浄化杭を打設
するものであってもよい。
【0024】
【実施例】本発明の地下水浄化構造10における浄化杭
の効果を確認するために原位置試験を行った。試験は、
汚染地盤中に、直径1.0mの浄化杭(浄化材料は鉄
粉)を打設し、当該浄化杭と20cm離間させて設置さ
れているモニタリング孔内の汚染地下水の濃度を計測し
た。図3は、モニタリング孔内における汚染地下水の濃
度の経時変化を示したものであり、横軸は経過日数
(日)、縦軸は測定開始時における地下水の濃度を1.
0とした、汚染地下水W中に含まれる汚染物質の相対濃
度を示している。
【0025】この結果によると、浄化杭から離間して設
置されているモニタリング孔においても濃度の低下が見
られ、特に10日経過までの間に、劇的な濃度の低下が
観測された。これは、浄化杭の内部で汚染物質濃度が低
下することで、浄化杭の周辺部と浄化杭の内部との間に
汚染物質の濃度差が生じ、地下水の流れが生じていなく
ても速度拡散の効果で汚染物質のみが浄化杭部分に集ま
り浄化されるというメカニズムによるものである。この
ように、汚染地盤に適当な間隔をもって浄化杭を設置す
ることで、地下水流動が無い場合においても効率的に汚
染地下水を浄化することができる。
【0026】なお、汚染地盤における汚染物質の初期濃
度(C0)、当該汚染地盤を形成する地盤の乾燥密度及
び間隙率、汚染物質の拡散係数(D)を、境界条件を付
与した支配方程式(汚染地盤における汚染物質の拡散方
程式、(下式))に代入して解き、汚染地盤の汚染物質
濃度が5年以内に初期濃度の1/10になるような浄化
杭の杭径(r0)と、その影響範囲を求めると、その影
響範囲は杭径に対して、2.5倍であること確認され
た。従って、隣接する浄化杭の間隔は、杭径の5倍以下
にすることが好ましく、この範囲内で、浄化を完了する
期間及び汚染地盤の初期濃度等により、浄化杭の間隔を
適切に決定することが必要となる。
【0027】
【式1】
【0028】
【発明の効果】本発明の地下水浄化構造及び地下水浄化
方法によれば、透水性が小さい汚染地盤において、早期
に浄化の効果を発生させることができるとともに、施工
費用の低廉化を図りながら広範囲に亘る汚染地下水を原
位置で処理することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の地下水浄化構造を示す図であり、
(a)は平面図、(b)は側断面図である。
【図2】本発明の地下水浄化構造の作用を説明する平面
図である。
【図3】本発明の地下水浄化構造を用いた場合におけ
る、モニタリング孔内における汚染物質濃度の経時変化
を示すグラフである。
【図4】従来の透過性地下水浄化壁工法を示す平面図で
ある。
【符号の説明】
G 汚染地盤 10 地下水浄化構造 11(11A〜11I) 浄化杭 12 モニタリング孔
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 池上 和広 東京都新宿区西新宿一丁目25番1号 大 成建設株式会社内 (56)参考文献 特開2000−117237(JP,A) 特公 昭61−44814(JP,B1) 特表 平5−501520(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C02F 1/70 B09C 1/08

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 地下水流動の流速が極めて小さい汚染地
    盤中の全域において、 所定位置に打設された所定本数の浄化杭を備え、 前記浄化杭は金属還元剤を含んでおり、 左右方向、上下方向又は斜め方向に隣接する前記浄化杭
    の間隔が杭径の1/2以上乃至5倍以下である ことを特
    徴とする地下水浄化構造。
  2. 【請求項2】 前記汚染地盤の所定位置に、モニタリン
    グ孔を形成したことを特徴とする請求項1に記載の地下
    水浄化構造。
  3. 【請求項3】 地下水流動の流速が極めて小さい汚染地
    盤中の全域において、金属還元剤 を含む所定本数の浄化杭を、所定位置に打設
    することにより、原位置において地下水を浄化する方法
    であり、 左右方向、上下方向又は斜め方向に隣接する前記浄化杭
    の間隔が杭径の1/2以上乃至5倍以下である ことを特
    徴とする地下水浄化方法。
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