JP3451007B2 - 降伏強さが低く、且つ、降伏強さの異方性が少ない構造用鋼およびその製造方法 - Google Patents

降伏強さが低く、且つ、降伏強さの異方性が少ない構造用鋼およびその製造方法

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JP3451007B2
JP3451007B2 JP35015697A JP35015697A JP3451007B2 JP 3451007 B2 JP3451007 B2 JP 3451007B2 JP 35015697 A JP35015697 A JP 35015697A JP 35015697 A JP35015697 A JP 35015697A JP 3451007 B2 JP3451007 B2 JP 3451007B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】建築などの鋼構造物に用いら
れる、降伏強さが低く、且つ、降伏強さの異方性が少な
い構造用鋼およびその製造方法に関するものである。好
ましくは、降伏強さが200MPa以下、更に好ましく
は、降伏強さが140MPa以下の鋼およびその製造方
法に関する。
【0002】
【従来の技術】建築構造物が地震に遭遇した際に、地震
のエネルギーを部材の塑性変形により吸収し、構造物全
体としての健全性を確保する観点から、降伏強さが低
く、高伸びを有する鋼に関する知見がこれまでに、開示
されている。
【0003】特開平5−214442号公報では、C:
0.005%以下、Si:0.04%以下、Mn:0.
20%以下、Ti:0.03〜0.07%、Al:0.
060%以下、N:0.004%以下で、熱間圧延と熱
処理の条件を規定することにより降伏強さが低く、伸び
の高い構造用鋼が製造できることが示されている。
【0004】また、特開平6−235042号公報で
は、C、Si、Mn、P、S、Al、固溶Nの上限を規
定した上で、平均粒径が1〜30μmの六方晶BN粒子
を0.01〜0.25%含有する鋼において、極めて低
い降伏強さが実現できることが記載されている。
【0005】このうち、特開平5−214442号公報
で開示された技術はTiの炭窒化物を形成し、降伏強さ
を低くすることに効果があるが、粗大な析出物が生成し
やすいために伸びの向上には限度がある。
【0006】また、 特開平6−235042号公報に
開示された技術においてはすべり変形を生じ易い六方晶
析出物により降伏強すを低くすることができるが、析出
物起点のミクロボイドが生成しやすいために伸びの向上
には限度があり、また、板厚方向にBNを粒子を均一に
分散させ、板厚方向全体にわたって降伏強さを低く抑え
ることは困難である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、降伏強さを
低く押さえた上で、さらに降伏強さの異方性が少ない鋼
およびその製造法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は上記課題を解決
するためになされたものであり、降伏強さを低く保ち、
且つ、降伏強さの異方性を少なくするためには炭窒化物
形成元素の量および形態を制御する必要があるとの知見
に基づいたものである。
【0009】本発明の要旨は次のとおりである。
【0010】(1) 重量%で、 C :0.005%以下、 Si:0.04%以下、 Mn:0.4%以下、 P :0.02%以下、 S :0.02%以下、 Al:0.06%以下、 N :0.004%以下、 Ti:0.0003〜0.03%未満、 Nb:0.002〜0.01%未満、 を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼に
おいて、固溶Cと固溶Nの合計が0.006%以下であ
り、かつ、Ti炭窒化物、Nb炭窒化物の1種または2
微小炭窒化物を含有することを特徴とする、降伏強
さが低く、且つ、降伏強さの異方性が少ない構造用鋼。
【0011】(2) 重量%で、 C :0.005%以下、 Si:0.04%以下、 Mn:0.4%以下、 P :0.02%以下、 S :0.02%以下、 Al:0.06%以下、 N :0.004%以下、 Ti:0.003〜0.03%未満、 Nb:0.002〜0.01%未満、 V :0.002〜0.06%未満、 を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼に
おいて、固溶Cと固溶Nの合計が0.006%以下であ
り、かつ、Ti炭窒化物、Nb炭窒化物、V炭窒化物
1種または2種以上微小炭窒化物を含有することを特
徴とする、降伏強さが低く、且つ、降伏強さの異方性が
少ない構造用鋼。
【0012】(3) 重量%で、B :0.0002〜
0.003%を含有することを特徴とする、前記(1)
または(2)に記載の、降伏強さが低く、且つ、降伏強
さの異方性が少ない構造用鋼。
【0013】(4) 重量%で、Mg:0.0003〜
0.005%を含有することを特徴とする、前記(1)
ないし(3)のいずれかに記載の、降伏強さが低く、且
つ、降伏強さの異方性が少ない構造用鋼。
【0014】(5) 前記(1)ないし(4)のいずれ
かに記載の鋼と同一成分を有する鋼片、または、鋳片を
1050〜1250℃に加熱し、仕上げ温度を800℃
以上となるように熱間圧延を行った後、910〜960
℃に加熱後空冷することを特徴とする、降伏強さが低
く、且つ、降伏強さの異方性が少ない構造用鋼の製造方
法。
【0015】(6) 前記(1)ないし(4)のいずれ
かに記載の鋼と同一成分を有する鋼片、または、鋳片を
1050〜1250℃に加熱し、仕上げ温度を800℃
以上となるように熱間圧延を行った後、800〜910
℃未満に加熱後空冷することを特徴とする、降伏強さが
低く、且つ、降伏強さの異方性が少ない構造用鋼の製造
方法。
【0016】(7) 前記(1)ないし(4)のいずれ
かに記載の鋼と同一成分を有する鋼片、または、鋳片を
1050〜1250℃に加熱し、仕上げ温度を800℃
以上となるように熱間圧延を行った後、800〜960
℃に加熱後空冷する過程で、600〜910℃に保熱後
空冷することを特徴とする、降伏強さが低く、且つ、降
伏強さの異方性が少ない構造用鋼の製造方法。
【0017】(8) 前記(1)ないし(4)のいずれ
かに記載の鋼と同一成分を有する鋼片、または、鋳片を
1050〜1250℃に加熱し、仕上げ温度を800℃
以上となるように熱間圧延を行った後、800〜960
℃に加熱後空冷し、さらに、600〜910℃に加熱後
空冷することを特徴とする、降伏強さが低く、且つ、降
伏強さの異方性が少ない構造用鋼の製造方法。
【0018】ここで、固溶Cと固溶Nの合計量は内部摩
擦法により測定するものとする。
【0019】構造用鋼の降伏強さを低下させるために
は、通常、置換型固溶硬化元素(Si、Mn、P、C
u、Niなど)を低減することに加えて、固溶C、N量
を低減することが必要である。このためにはTi、N
b、Vの炭窒化物生成元素を含有させ、炭窒化物として
C、Nを固定して固溶C、N量を低減することが有効で
あることは従来より知られている。降伏強さを低くする
ためには、C、N量を低下させた上で、 Ti、Nb、
Vの含有量を適正な範囲内に限定する必要がある。これ
ら元素の含有量が少ないと、鋼中のC、Nを十分に固定
することができず、固溶C、N量が増加するために降伏
強さを低く保つことができなくなる。逆に、これら元素
を多量に含有すると、固溶C、N量を十分に低減し、降
伏強さの低下には効果を発揮するが、炭窒化物が粗大、
多量に生成するためにミクロボイドが生成しやすくなっ
て伸びを向上させることが困難となる。
【0020】一方、Nb、Ti、Vは熱間圧延における
オーステナイトの再結晶を抑制する効果のあることが知
られている。特に、板厚が10mm以下の薄手の鋼板を
圧延する際に、圧延中の鋼板温度が低下しやすく、N
b、Ti、またはVを多量に含有する鋼においては未再
結晶域圧延となる可能性が高くなる。この場合、圧延方
向とこれに直角方向の降伏強さの差が大きくなる。一般
に、未再結晶域圧延材では圧延直角方向の降伏強さが高
くなり、特に、本発明のように降伏強さを低くすること
を目的とした鋼では圧延直角方向の降伏強さ上昇が問題
となる。降伏応力の異方性が大きい鋼材を等方性体と仮
定して構造物を設計すると、想定した形態の塑性変形が
得られないことが考えられ、不具合を生じる場合もあ
る。
【0021】上記問題を解決するためには、Nb、T
i、またはVによる再結晶抑制効果をできるだけ低くし
て再結晶域で圧延を終了することが有効である。このた
めにNb、Ti、Vの含有量を適正値以下に抑える必要
がある。図1に、実験室溶解鋼により調査した降伏強さ
のNb含有量依存性を示す。ここで、C:0.002
%、Si:0.02%、Mn:0.08%、P:0.0
06%、S:0.005%、Al:0.03%、N:
0.003%、Ti:0.015%を基本成分としてN
b含有量を変化させた。実験室熱間圧延機により板厚が
8mmの鋼板を製造したが、鋼塊加熱温度を1150
℃、仕上げ温度を850℃とした。Nb含有量が0.0
1%以上では再結晶抑制効果が顕著となり、未再結晶域
圧延となるために圧延直角方向(C)の降伏強さが圧延
方向(L)の降伏強さに比べて著しく高くなる場合があ
る。Nb含有量が0.01%未満ではL、C方向の差が
小さい。なお、Nb含有量が高くなるほど降伏強さが低
下するが、これはNbの炭化物生成により固溶Cが低下
するためである。Nbが0.002%未満では降伏強さ
を低く抑えることが困難となる。
【0022】これらの新知見をもとに、合金元素の量を
以下の理由で限定した。
【0023】Cは固溶硬化、および、転位固着作用によ
り降伏強さを上昇させるので、低い方が好ましい。Cを
0.005%超含有すると、炭化物形成元素を含有して
いても固溶C量を低くすることが困難となり、降伏強さ
を低く抑えることができないし、粗大炭化物を多量に生
成して伸びを低下させる。従って、上限を0.005%
とした。
【0024】Siは固溶硬化能を有するので低い方がよ
い。0.04%超含有すると降伏強さを低く抑えること
ができないので上限を0.04%とした。
【0025】Mnは固溶硬化能を有するので低い方がよ
い。0.4%超含有すると降伏強さを低く抑えることが
できないので上限を0.4%とした。
【0026】Pは固溶硬化能と粒界脆化傾向を有するの
で低い方がよい。0.02%超含有すると降伏強さを低
く抑えることができないことに加えて、粒界に偏析して
粒界脆化を助長するので、上限を0.02%とした。
【0027】Sは硫化物を生成して伸びを低下させるの
で、低い方がよい。0.02%超含有すると伸びの向上
ができなくなるので、上限を0.02%とした。
【0028】Alは脱酸に効果あるが、0.06%超で
はむしろアルミナ系介在物が増加して伸びを低下させる
とともに、靭性も低下するので、0.06%を上限とし
た。
【0029】NはCと同様に、固溶硬化、および、転位
固着作用により降伏強さを上昇させるので、低い方が好
ましい。Nを0.004%超含有すると、窒化物形成元
素を含有していても固溶N量を低くすることが困難とな
り、降伏強さを低く抑えることができないし、粗大窒化
物を多量に生成して伸びを低下させる。従って、上限を
0.004%とした。
【0030】Tiは炭窒化物を形成し、固溶C、N量を
低下させることにより降伏強さを低く抑えるために必要
な元素である。0.003%未満ではその効果が顕著で
ないので、下限を0.003%とした。0.03%以上
含有すると、固溶C、Nを十分に低減し、降伏強さを顕
著に低下させるが、粗大な析出物を生成するために伸び
の向上が困難となる。従って、0.03%を上限とし
た。Tiは再結晶を抑制する効果を有するが、0.03
%未満であればその効果は少なく、降伏強さの異方性は
顕著でない。しかしながら、Tiを0.003%未満の
極微量添加するとNbとVは再結晶を抑制する効果が生
じ易いので、これら元素の含有量を制限する必要があ
り、このためにTiを含有させて固溶C、N量を低減す
ることが必須となる。
【0031】NbはTiと同様に降伏強さを抑える効果
を有する。0.002%未満では固溶C、N量の低下が
顕著でないので、下限を0.002%とした。逆に0.
01%以上含有すると、熱間圧延における未再結晶温度
域を広げるため、特に、圧延温度が低下しやすい板厚が
10mm以下の鋼板を製造する際に、未再結晶域の圧延
となりやすくなる。その結果、圧延方向とそれに直角方
向の強度差が顕著となる場合がある。従って、Nb量の
上限を0.01%未満とした。
【0032】VもNbが0.01%未満の極微量添加し
てあるとNbと同様な効果を有する。0.002%未満
では固溶C、N量の低下が顕著でないので、下限を0.
002%とした。Vは、メカニズムは定かではないがN
bが0.01%以上の含有では異方性改善効果が顕著で
はない。またVは、いかにNbが0.01%未満含有し
ていても、0.06%以上含有すると、再結晶抑制が顕
著となり、特に、圧延温度が低下しやすい板厚が10m
m以下の鋼板において、未再結晶域圧延となりやすく、
鋼板の異方性が強くなる。従って、V量の上限を0.0
6%未満とした。
【0033】本発明では降伏強さを低く抑えるためには
鋼中の固溶Cと固溶Nの量を低く抑える必要がある。両
元素はほぼ同様な作用を有するので固溶Cと固溶Nの合
計量で評価ができる。この値が0.006%を超えると
これら元素の固溶硬化と転位固着効果により降伏強さの
上昇が顕著となる。従って、上限を0.006%とし
た。固溶Cと固溶Nの合計量は内部摩擦法により測定す
るものとする。
【0034】Bは粒界に偏析し、粒界強度を上昇させ
る。特に、固溶C、Nが低い構造用鋼ではこれら元素の
粒界偏析量が低下し、Pなどの粒界脆化元素の偏析を助
長しやすいので、B添加による粒界強化は靭性確保の観
点から効果がある。B含有量が0.0002%未満では
粒界強化の効果が得られないのでこれを下限とした。逆
に、0.003%超含有すると粗大なBN析出物を生成
し、これが破壊起点となって靭性低下を招くので、上限
を0.003%とした。
【0035】Mgは微細なMgOを生成してこれがピン
止めの粒子として作用することにより、粒成長抑制の効
果を発揮する。特に900℃以上に加熱すると粒成長が
著しくなるが、Mgを含有させることにより、本発明の
Nb添加、Nb+V複合添加と合わせて著しい粒成長を
抑制して高い靭性を得ることができる。Mg含有量が
0.0003%未満ではこの効果が得られない。また、
0.005%超含有すると粗大なMgOを生成して靭性
がむしろ低下する。従って、Mg含有量を0.0003
〜0.005%に限定した。なお、微細MgOを生成す
るためにはAl含有量を0.01%以下とすることが望
ましい。
【0036】Ti、Nb、および、Vにより炭窒化物を
形成するが、この析出物が粗大になるとこれがミクロボ
イドの起点となり、伸びを低下させる原因となる。従っ
て、この析出物を微細に分散させる必要がある。好まし
くはNb、Ti、Vの少なくとも1種からなる炭窒化物
の析出物径を3.0μm以下とすることが望ましい。
【0037】不可避的不純物としてはAs、Sb、Sn
などがあるがこれらは粒界偏析して靭性低下を招くの
で、不純物総量を0.01%以下とすることが望まし
い。
【0038】次に、前記鋼組成において圧延および熱処
理条件を限定した理由を以下に述べる。加熱温度を10
50℃未満とすると、最終熱処理後の粒径が小さくな
り、降伏強さが上昇する。また、鋳造後冷却過程で析出
したTi、Nb、Vの炭窒化物が粗大のまま残存するの
で、靭性低下を招く。逆に、1250℃超の加熱は加熱
のコストが上昇し、工業的に不利となる。従って、加熱
温度の範囲を1050〜1250℃とした。
【0039】圧延仕上げ温度を800℃未満とすると、
フェライト粒径が小さくなり、降伏強さが上昇するとと
もに、強度の異方性が顕著となるので、下限を800℃
とした。
【0040】次に、請求項5の製造方法は熱間圧延後、
熱処理により一旦オーステナイト化し、その後の冷却過
程でフェライトを生成させるのが目的である。熱処理加
熱温度を910℃未満では相変態が全く生じることはな
く、目標とする変態が生じないので、下限を910℃と
した。逆に、960℃超とすると、オーステナイト粒が
粗大化し、変態後のフェライト粒も粗大化して靭性低下
を招く。従って上限を960℃とした。オーステナイト
化後の冷却は空冷とすることが必要である。水冷など空
冷よりも速い冷却速度の冷却方法では変態時に生じる転
位が残存し、降伏強度を低く抑えることができない。
【0041】請求項6では、熱間圧延後、変態点以下に
加熱して再結晶を生じさせることにより転位密度が低い
フェライトを生成させ、降伏強さの低下を図る。熱間圧
延後の熱処理温度が800℃未満では再結晶が十分に進
行しないので800℃を下限とする。910℃を超える
と逆変態を生じるため目標とする回復フェライト組織が
得られなくなる。従って、上限を910℃とした。
【0042】請求項7では、請求項6と同様に再結晶フ
ェライトを生成させて降伏強度の低下を図るが、800
〜960℃の熱処理の冷却過程において600〜900
℃に保熱することによって再結晶を促進させ、降伏強度
を効率的に低下させることができる。保熱温度が600
℃未満では再結晶促進効果は顕著でなく、逆に、900
℃超ではオーステナイト域にかかるのでフェライトの再
結晶が進行しない。なお、保熱に先立つ熱処理温度が9
10℃以上では逆変態を生じるが、その後の冷却過程に
おける保持が600〜910℃であれば、変態したフェ
ライトの回復が進行するので、降伏強度を顕著に下げる
ことができる。保熱の方法は恒温炉に挿入するなど方法
は問わない。
【0043】請求項8では、熱間圧延後、800〜96
0℃に加熱後空冷し、さらに600〜910℃の再加熱
により転位密度の低下を図るが、この範囲に限定した理
由は上記と同じである。この温度範囲における保持時間
を10〜60分とすることが望ましい。
【0044】なお、請求項5〜8において、熱間圧延後
の熱処理加熱前の冷却は必ずしも必要ではないが、鋼板
表面の形状手入れなどのために150℃以下まで冷却し
てもよい。
【0045】熱処理後のフェライト粒径は特定するもの
ではないが、フェライト地の回復と炭窒化物の形成を板
厚方向にほぼ均一に行うためには30〜200μmとす
ることが望ましい。
【0046】本発明鋼を建築などの鋼構造物(例えば制
震ダンパー用部材等)に使用する場合には、使用中に圧
縮応力が負荷されることも考慮する必要がある。板厚が
4mm未満では圧縮応力により座屈変形を生じやすくな
るので、板厚を4mm以上とすることが好ましい。更
に、板厚8mm以上であれば、繰返し圧縮応力による座
屈変形も生じ難いのでより好ましい。板厚の上限は特に
限定するものではないが、通常の構造物に適用する場合
には100mm程度の板厚でもかまわない。
【0047】即ち、本発明の対象の構造物としては、板
厚または肉厚が4mm以上のものであればよく、厚板、
条鋼、鋼管など鋼材の断面形状に依らない。
【0048】
【発明の実施の形態】(実施例)以下に、本発明の実施
例を示す。転炉により鋼を溶製し、連続鋳造により厚さ
が240mmのスラブ製造を製造した。表1に鋼材の化
学成分を示す。表中には内部摩擦法により測定した固溶
C、Nの量も示す。表2に示す条件で熱間圧延、熱処理
を行い、鋼板を製造した。表3に引張り試験結果を示
す。試験片の平行部直径を14mm(板厚8mm材は6
mm)、標点間距離を50mm(板厚8mm材は20m
m)とした。引張り試験は圧延方向と平行に採取した試
験片(L)と、これに直角方向に採取した試験片(C)
について実施した。
【0049】番号1〜8が発明鋼、9〜13が比較鋼で
ある。本発明の鋼はすべて降伏強さが200MPa以下
であるが、特に発明鋼1〜8は140MPa以下であり
良好な降伏強さを示し、伸びも60%以上と高い。さら
に、L方向とC方向の降伏強さの差が10MPa以下と
極めて小さいのが特徴である。これに対し、比較鋼9は
固溶C、Nの固定が不十分で、降伏強さが高い。比較鋼
10、11、及び13はNbまたはVが本発明範囲外で
あり、降伏強さは低いが、L方向とC方向の差が30M
Pa超と大きい。また、比較鋼12は降伏強さが低く、
降伏強さの異方性も小さが、Tiが本発明範囲外であ
り、粗大介在物を生成しているために伸びが低い。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
【表3】
【0053】
【発明の効果】以上説明したとおり、本発明により、
C、Nをはじめとする合金元素、特に、Ti、Nb、V
の量を限定することにより鋼中の固溶C、N量を低減し
て降伏強さを低く抑えるとともに、熱間圧延中の再結晶
抑制効果を低減することにより降伏強さの異方性を小さ
くすることができる。したがって、構造物を製造する際
に降伏強さの低い等方性材料として設計することができ
る。加えて、高伸びを有するため、塑性変形によるエネ
ルギー吸収を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】降伏強さの異方性に及ぼすNbの影響を示す図
である。

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、 C :0.005%以下、 Si:0.04%以下、 Mn:0.4%以下、 P :0.02%以下、 S :0.02%以下、 Al:0.06%以下、 N :0.004%以下、 Ti:0.0003〜0.03%未満、 Nb:0.002〜0.01%未満、 を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼に
    おいて、固溶Cと固溶Nの合計が0.006%以下であ
    り、かつ、Ti炭窒化物、Nb炭窒化物の1種または2
    微小炭窒化物を含有することを特徴とする、降伏強
    さが低く、且つ、降伏強さの異方性が少ない構造用鋼。
  2. 【請求項2】 重量%で、 C :0.005%以下、 Si:0.04%以下、 Mn:0.4%以下、 P :0.02%以下、 S :0.02%以下、 Al:0.06%以下、 N :0.004%以下、 Ti:0.003〜0.03%未満、 Nb:0.002〜0.01%未満、 V :0.002〜0.06%未満、 を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼に
    おいて、固溶Cと固溶Nの合計が0.006%以下であ
    り、かつ、Ti炭窒化物、Nb炭窒化物、V炭窒化物
    1種または2種以上微小炭窒化物を含有することを特
    徴とする、降伏強さが低く、且つ、降伏強さの異方性が
    少ない構造用鋼。
  3. 【請求項3】 重量%で、B :0.0002〜0.0
    03%を含有することを特徴とする、請求項1または2
    に記載の、降伏強さが低く、且つ、降伏強さの異方性が
    少ない構造用鋼。
  4. 【請求項4】 重量%で、Mg:0.0003〜0.0
    05%を含有することを特徴とする、請求項1ないし3
    のいずれかに記載の、降伏強さが低く、且つ、降伏強さ
    の異方性が少ない構造用鋼。
  5. 【請求項5】 請求項1ないし4のいずれかに記載の鋼
    と同一成分を有する鋼片、または、鋳片を1050〜1
    250℃に加熱し、仕上げ温度を800℃以上となるよ
    うに熱間圧延を行った後、910〜960℃に加熱後空
    冷することを特徴とする、降伏強さが低く、且つ、降伏
    強さの異方性が少ない構造用鋼の製造方法。
  6. 【請求項6】 請求項1ないし4のいずれかに記載の鋼
    と同一成分を有する鋼片、または、鋳片を1050〜1
    250℃に加熱し、仕上げ温度を800℃以上となるよ
    うに熱間圧延を行った後、800〜910℃未満に加熱
    後空冷することを特徴とする、降伏強さが低く、且つ、
    降伏強さの異方性が少ない構造用鋼の製造方法。
  7. 【請求項7】 請求項1ないし4のいずれかに記載の鋼
    と同一成分を有する鋼片、または、鋳片を1050〜1
    250℃に加熱し、仕上げ温度を800℃以上となるよ
    うに熱間圧延を行った後、800〜960℃に加熱後空
    冷する過程で、600〜910℃に保熱後空冷すること
    を特徴とする、降伏強さが低く、且つ、降伏強さの異方
    性が少ない構造用鋼の製造方法。
  8. 【請求項8】 請求項1ないし4のいずれかに記載の鋼
    と同一成分を有する鋼片、または、鋳片を1050〜1
    250℃に加熱し、仕上げ温度を800℃以上となるよ
    うに熱間圧延を行った後、800〜960℃に加熱後空
    冷し、さらに、600〜910℃に加熱後空冷すること
    を特徴とする、降伏強さが低く、且つ、降伏強さの異方
    性が少ない構造用鋼の製造方法。
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