JP2006233328A - 低温靭性に優れた低降伏点厚鋼板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】低降伏点化と低温靭性を両立させた制震デバイス用の低降伏点鋼材を、製鋼工程やそれ以後の製造工程での大きな負荷やコスト増なしに製造する方法を提供すること。特に、従来の技術で難しかった板厚30mm以上の厚肉材であっても、低温靭性を合金添加や追加の熱処理によるコストアップなしに向上させて、降伏強さのばらつきを小さくして200〜250MPaの範囲に制御する低降伏点厚鋼板の製造方法を提供すること。
【解決手段】C:0.02〜0.06mass%、Si:0.2mass%以下、Mn:0.8mass%以下、N:0.004mass%以下、Al:0.005〜0.05mass%を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなる成分を有する鋼を熱間圧延したのち、直接焼入れにより鋼板温度が880〜600℃の範囲を平均3〜30℃/sの冷却速度で冷却することを特徴とする低温靭性に優れた低降伏点厚鋼板の製造方法を用いる。
【選択図】なし
【解決手段】C:0.02〜0.06mass%、Si:0.2mass%以下、Mn:0.8mass%以下、N:0.004mass%以下、Al:0.005〜0.05mass%を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなる成分を有する鋼を熱間圧延したのち、直接焼入れにより鋼板温度が880〜600℃の範囲を平均3〜30℃/sの冷却速度で冷却することを特徴とする低温靭性に優れた低降伏点厚鋼板の製造方法を用いる。
【選択図】なし
Description
本発明は、地震等による振動のエネルギーを吸収して鋼構造物の耐震性を向上するためのデバイス(制震ダンパー)に用いる鋼材として好適な200〜250MPaの狭い範囲の降伏強さを有する耐震部材用低降伏点鋼材の厚鋼板の製造方法に関する。
建築構造物の耐震性を向上する方法として、変形能力に優れた低降伏点鋼をエネルギー吸収デバイスとして鋼構造物の一部に配し、大地震等の振動エネルギーを塑性変形によって吸収する方法が用いられている。このような制震デバイスに使用される鋼材は、鋼構造物の他の部位、例えば、通常の柱や梁などの構造材よりも早期に塑性変形を開始する必要があるため、極めて低い降伏点が要求される。
上記のような低降伏点鋼として、純鉄に近い成分にすることにより低降伏点を実現する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。また、純鉄に近い成分の鋼をさらに高温で焼準処理することにより低降伏点化を実現する技術が提案されている(例えば、特許文献2、特許文献3参照。)。これらはいずれもフェライト粒を粗粒にすることにより降伏点を低下させるものであり、靭性に劣るという欠点があった。また、いずれもCを0.01%未満まで低減する必要があり、製鋼工程のコストが増大することや、C含有量を極めて低減することにより粒界強度が低下し、粒界破壊が起きる場合があるなどの問題があった。大地震の際には、衝撃的な変形荷重が付加されるため、制震デバイスに用いる低降伏点鋼が十分な靭性を有していないと、塑性変形によってエネルギーを吸収することなく破壊してしまい、デバイスの機能を果たすことができない。したがって、靭性の優れた低降伏点鋼が必要とされている。
靭性の優れた低降伏点鋼として、C、Ti、N量間の関係を適切に制御することにより、Cを極端に低減することなく実効的なCを低減するとともに、靭性を劣化させる固溶Nを低減し、低降伏点化と同時に粗粒フェライト粒でありながら優れた低温靭性を達成する方法が知られている(例えば、特許文献4、特許文献5、特許文献6参照。)。特許文献4〜特許文献6には、Nb、V、Ta等の元素もC、Nを炭窒化物として固定し、実効的なC量を低減する効果を有することが示されている。
また、圧延後に再加熱焼入れを施し、フェライト粒径を適切な範囲に整える方法が知られている(例えば、特許文献7、特許文献8参照。)。この方法では、C含有量を極端に低減したり、C、N等を固定するための添加元素を必要とせず、熱処理によってミクロ組織を制御して優れた特性が得られる。
特開平3−31467号公報
特開平5−320760号公報
特開平5−320761号公報
特開平10−183293号公報
特開平11−229076号公報
特開2000−109953号公報
特開2004−59995号公報
特開2005−23410号公報
しかしながら、特許文献4〜特許文献6に記載の低降伏点鋼では、C、Ti、N、あるいはその他のC固定元素といった複数の元素の含有量を同時に制御する必要があり、製鋼工程において多大な労力が必要であり、C、Nを十分に低減できない場合には、Ti添加量を増加せざるを得ず、合金コストが増大するという問題があった。また、これらの方法によっても、フェライト粒径が著しく粗大な場合や、靭性を劣化させるパーライトなどの第2相が増加した場合には、必ずしも十分な低温靭性が得られないという問題があった。
また、板厚の増加に伴って靭性は低下し、特許文献4〜特許文献6に記載の技術によっても、板厚30mm以上の厚肉材において優れた低温靭性を確保することは困難であった。
さらに、特許文献7、特許文献8に記載の鋼材の製造方法では、圧延終了後に再加熱して、追加の熱処理を行なう必要があるため、製造コストやリードタイムが増大してしまうという問題があった。
したがって本発明の目的は、このような従来技術の課題を解決し、低降伏点化と低温靭性を両立させた制震デバイス用の低降伏点鋼材を、製鋼工程やそれ以後の製造工程での大きな負荷やコスト増なしに製造する方法を提供することにある。特に、従来の技術で難しかった板厚30mm以上の厚肉材であっても、低温靭性を合金添加や追加の熱処理によるコストアップなしに向上させて、降伏強さのばらつきを小さくして200〜250MPaの範囲に制御する低降伏点厚鋼板の製造方法を提供することを目的とする。
このような課題を解決するための本発明の特徴は以下の通りである。
(1)C:0.02〜0.06mass%、Si:0.2mass%以下、Mn:0.8mass%以下、N:0.004mass%以下、Al:0.005〜0.05mass%を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなる成分を有する鋼を熱間圧延したのち、直接焼入れにより鋼板温度が880〜600℃の範囲を平均3〜30℃/sの冷却速度で冷却することを特徴とする低温靭性に優れた低降伏点厚鋼板の製造方法。
(2)鋼を、900〜1200℃に加熱し、980℃以下の温度域で累積圧下率30%以上で圧延を行なうことを特徴とする(1)に記載の低温靭性に優れた低降伏点厚鋼板の製造方法。
(3)冷却後、さらに、730℃以下の温度で焼戻しを行うことを特徴とする(1)または(2)に記載の低温靭性に優れた低降伏点厚鋼板の製造方法。
(4)鋼が、さらに、Ti:0.005〜0.05mass%、Zr:0.005〜0.05mass%、Nb:0.005〜0.05mass%、V:0.005〜0.05mass%、B:0.0003〜0.0030mass%、Cr:0.05〜0.30mass%のうち1種または2種以上を含有することを特徴とする(1)ないし(3)のいずれかに記載の低温靭性に優れた低降伏点厚鋼板の製造方法。
(5)鋼が、さらに、Ca:0.002〜0.02mass%、REM:0.002〜0.02mass%のうち1種または2種を含有することを特徴とする(1)ないし(4)のいずれかに記載の低温靭性に優れた低降伏点厚鋼板の製造方法。
(1)C:0.02〜0.06mass%、Si:0.2mass%以下、Mn:0.8mass%以下、N:0.004mass%以下、Al:0.005〜0.05mass%を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなる成分を有する鋼を熱間圧延したのち、直接焼入れにより鋼板温度が880〜600℃の範囲を平均3〜30℃/sの冷却速度で冷却することを特徴とする低温靭性に優れた低降伏点厚鋼板の製造方法。
(2)鋼を、900〜1200℃に加熱し、980℃以下の温度域で累積圧下率30%以上で圧延を行なうことを特徴とする(1)に記載の低温靭性に優れた低降伏点厚鋼板の製造方法。
(3)冷却後、さらに、730℃以下の温度で焼戻しを行うことを特徴とする(1)または(2)に記載の低温靭性に優れた低降伏点厚鋼板の製造方法。
(4)鋼が、さらに、Ti:0.005〜0.05mass%、Zr:0.005〜0.05mass%、Nb:0.005〜0.05mass%、V:0.005〜0.05mass%、B:0.0003〜0.0030mass%、Cr:0.05〜0.30mass%のうち1種または2種以上を含有することを特徴とする(1)ないし(3)のいずれかに記載の低温靭性に優れた低降伏点厚鋼板の製造方法。
(5)鋼が、さらに、Ca:0.002〜0.02mass%、REM:0.002〜0.02mass%のうち1種または2種を含有することを特徴とする(1)ないし(4)のいずれかに記載の低温靭性に優れた低降伏点厚鋼板の製造方法。
本発明によれば、制震ダンパー等に好適に使用できる、低降伏点化と低温靭性を両立させた低降伏点鋼材を製造工程での大きな負荷やコスト増なしに製造することが可能となる。特に、板厚30mm以上の厚肉材であっても、低温靭性を合金添加によるコストアップなしに向上させて、降伏強さ200〜250MPaの範囲でばらつきの小さな低降伏点厚鋼板を製造できる。
低降伏点鋼の靭性を向上するために、一般的には、CやNなどの侵入型元素を極力低減し、パーライトなどの靭性を劣化させる第2相の生成を押さえる方法が取られる。パーライトはセメンタイト(Fe3C)とフェライト(α−Fe)の層状組織であるが、衝撃的に荷重が負荷される際にフェライト/セメンタイト界面が剥離して破壊の起点となることにより、靭性を低下させる。しかしながら、C量を極端に低減した場合、合金元素の添加なしではフェライト粒が粗大化し、厚肉材の降伏強さと靭性が顕著に低下してしまう。
本発明者らは、適量のCを含有させた鋼のオーステナイト組織を圧延時の再結晶により整粒化(均一化)、細粒化したうえで、直接焼入れを施すことによって、フェライト粒径とセメンタイト形状を制御し、特別な合金元素の添加なしでも、目標レベルの降伏強さと優れた低温靭性を同時に達成することができることを明らかにした。
オーステナイト組織の整粒化、細粒化は、特定の温度域で圧延を行ない、オーステナイトの再結晶を促進することによって達成される。そして、その後に直接焼入れを適用することにより、γ→α変態時の冷却速度が増加し、フェライト粒径が微細化する。それに加えて、パーライトや粗大なセメンタイトの形成を抑制、セメンタイトを微細化することによって、フェライト/セメンタイト界面からの破壊を抑制し、靭性を向上させることができる。これらの効果は、圧延後の冷却速度の制御によってもたらされるものであり、その後の焼入れ、焼きならし等の熱処理は必要としない。
本発明は、C含有量の適正化と圧延条件やγ→α変態時の冷却速度制御などの製造条件とを組み合わせることによって、靭性に優れた低降伏点鋼を経済的に得るための技術であり、C:0.02〜0.06mass%、Si:0.2mass%以下、Mn:0.8mass%以下、N:0.004mass%以下、Al:0.005〜0.05mass%を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなる成分を有する鋼を熱間圧延したのち、直接焼入れにより鋼板温度が880〜600℃の範囲を平均3〜30℃/sの冷却速度で冷却することを特徴とする低温靭性に優れた低降伏点厚鋼板の製造方法である。
本発明を構成する技術のうち、まず鋼材の化学成分の限定理由について説明する。以下の説明において%で示す単位は全て質量%である。
C:0.02〜0.06mass%とする。C量の増加は、パーライト等の第2相を増加させることによって、強度の上昇と靭性の劣化の原因となる。一方、固溶Cを極端に少なくすると、合金元素の添加なしではフェライト粒が粗大化し、厚肉材の降伏強さと靭性が顕著に低下してしまう。適量のCを含有させて焼入れ性を適正化し、さらにγ→α変態時の冷却速度を制御することによって、必要な強度と延性を確保することができる。Cが0.02%以下では、焼入れによってもフェライト粒径が粗大化してしまい、合金添加なしでは、200MPa程度以上の降伏強さと低温靭性を確保することができない。また、0.06%を超えると降伏強さが250MPaを超えてしまい、低降伏点鋼としての強度特性を維持できず、低温靭性も劣化してしまう。そこで、C含有量を0.02〜0.06mass%と規定する。
Si:0.2mass%以下とする。Siは固溶強化によって鋼の強度を上昇させる元素であるので、必要に応じて添加することができる。ただし、0.2masss%を超えて添加すると靭性が著しく劣化するため、0.2mass%以下とする。
Mn:0.8mass%以下とする。Mnは固溶強化とフェライト粒微細化によって強度を上昇させる元素である。Mn含有量の適正化により、降伏強さを調整することができる。しかしながら、0.8%を超えると降伏強さが必要以上に増加してしまい、低降伏点化が難しくなってしまうため、0.8%以下に限定する。
Al:0.005〜0.05mass%とする。Alは溶鋼の脱酸材として作用する元素であり、十分な脱酸効果を得るためには、0.005%以上の添加を必要とする。また、鋼中の固溶Nと結びついて窒化物を形成し、靭性を改善する効果も有する。一方、0.05%を超えると鋼の清浄度が低下し、靭性が低下するため、0.005〜0.05%の範囲に限定する。
N:0.004mass%以下とする。鋼中の固溶Nは靭性を著しく劣化させる。固溶Nの靭性への悪影響を少なくするため、N量は0.004%以下とした。
本発明では、Ti:0.005〜0.05masss%、Zr:0.005〜0.05mass%、Nb:0.005〜0.05mass%、B:0.0003〜0.0030mass%、Cr:0.05〜0.30mass%のうち1種または2種以上を含有してもよい。
Ti、Zr、Nb、B、Crは鋼中の固溶Nと結びつき窒化物としてNを固定する作用を有する元素である。N固定により靭性が向上するため、必要に応じて添加することができる。
Ti、Zr、Nb、V、B、Crのうち1種または2種以上に加えてさらに、またはTi、Zr、Nb、V、B、Crを含有しない場合に、Ca:0.002〜0.02mass%、REM:0.002〜0.02mass%のうち1種または2種を含有してもよい。
Ca、REMは、酸硫化物を形成することによって鋼中のSを固定する作用を有する元素である。Sは粒界に偏析して粒界強度を弱めることがあるので、鋼中の固溶Sを固定することにより、延性および靭性の向上が期待できる。また、粗大なMnSは、圧延方向に垂直な板面方向(C方向)、あるいは板厚方向(Z方向)の延性および靭性を劣化させることが知られているが、これらの元素の添加により、粗大なMnSの生成を抑制することができる。このような効果を得るためには、CaあるいはREMを0.002%以上添加する必要があるが、0.02%を超えるとCa、REM系介在物の量が増加し、かえって靭性が劣化してしまうので、0.002〜0.02%の範囲に限定する。
上記以外の残部は、Fe及び不可避的不純物からなる。
次に、低降伏点厚鋼板の製造条件の限定理由について説明する。なお、鋼板の温度は、板厚方向の平均温度に近い、板厚の1/4の位置(1/4t位置)での温度を、鋼板の冷却速度も板厚の1/4の位置(1/4t位置)での冷却速度を、代表値とする。
本発明の低降伏点厚鋼板は上記の成分組成を有する鋼を用い、圧延後の冷却速度を、880〜600℃の温度範囲で平均3〜30℃/sで冷却することが重要である。上記の化学組成を有する鋼板をオーステナイト温度域から前記の条件で冷却することにより、フェライト粒組織を微細整粒化することができる。それにより、強度・靭性のばらつきを低減し、特性を安定化することができ、厚肉材においても必要な降伏強さと低温靭性を確保することができる。このような冷却条件を達成するために、直接焼入れを行なうことが望ましい。圧延後の鋼板を再加熱して、焼入れする方法では、製造コストが増加し、生産効率が低下する。また、直接焼入れ後のミクロ組織は、直接焼入れ前のオーステナイト組織の影響を強く受けるので、圧延条件によって強度と靭性などの特性を制御することができる。
880〜600℃の範囲を平均3〜30℃/sの冷却速度で冷却する。
γ→α変態が進行する880〜600℃の温度域で加速冷却することにより、α粒の微細化と、パーライトや粗大なセメンタイトの形成抑制を達成することができる。そのためには、この温度域で3℃/s以上の冷却速度で冷却する必要があるが、30℃/sを超えるとベイナイトが生成して靭性が劣化するので、3〜30℃/sに限定した。上記の冷却速度は1/4t位置で確保する必要がある。
γ→α変態が進行する880〜600℃の温度域で加速冷却することにより、α粒の微細化と、パーライトや粗大なセメンタイトの形成抑制を達成することができる。そのためには、この温度域で3℃/s以上の冷却速度で冷却する必要があるが、30℃/sを超えるとベイナイトが生成して靭性が劣化するので、3〜30℃/sに限定した。上記の冷却速度は1/4t位置で確保する必要がある。
熱間圧延後に880℃以上の温度から直接焼入れを行なう。オーステナイト単相域からの直接焼入れであれば、880〜600℃の温度範囲を平均3〜30℃/sで冷却することができる。1/4t位置の温度が880℃未満にまで低下すると、焼入れ開始前にγ→α変態が開始してしまい焼入れによるγ→α変態制御効果を得ることができないため、焼入れ温度を880℃以上とすることが望ましい。
さらに、直接焼入れ後に730℃以下で焼戻しを行なうことが望ましい。
降伏強さを所定の範囲に調整するために、焼戻しを行なうことができる。焼入れによってフェライト粒径が微細化し、降伏強さが必要以上に上昇してしまった場合でも、焼戻しによって降伏強さを低下することができる。また、靭性を劣化させる島状マルテンサイトなどの第2相を分解することによって低温靭性を向上させることができる。焼戻し温度が高すぎると、フェライト粒が粗大化して靭性が低下するので、焼戻し温度は730℃以下とすることが望ましい。
降伏強さを所定の範囲に調整するために、焼戻しを行なうことができる。焼入れによってフェライト粒径が微細化し、降伏強さが必要以上に上昇してしまった場合でも、焼戻しによって降伏強さを低下することができる。また、靭性を劣化させる島状マルテンサイトなどの第2相を分解することによって低温靭性を向上させることができる。焼戻し温度が高すぎると、フェライト粒が粗大化して靭性が低下するので、焼戻し温度は730℃以下とすることが望ましい。
上記の直接焼入れによる熱処理を行なう際には、鋼板を圧延する際に、加熱温度と累積圧下率とを以下の範囲とすることが好ましい。
加熱温度を900〜1200℃とする。
上記の化学組成を有する鋼板をオーステナイト温度域に再加熱し、その後の圧延と冷却の条件を制御することによりフェライト粒組織を微細整粒化する。このような効果を得るには、900℃以上に加熱して完全にオーステナイト化することが好ましい。加熱温度が1200℃を超えると加熱時のオーステナイトが極端に粗大化してしまうので、900〜1200℃の範囲とする。
上記の化学組成を有する鋼板をオーステナイト温度域に再加熱し、その後の圧延と冷却の条件を制御することによりフェライト粒組織を微細整粒化する。このような効果を得るには、900℃以上に加熱して完全にオーステナイト化することが好ましい。加熱温度が1200℃を超えると加熱時のオーステナイトが極端に粗大化してしまうので、900〜1200℃の範囲とする。
980℃以下の温度域で累積圧下率30%以上とする。
圧延前の加熱直後のγ粒は不均一であり、一部に粗大なγ粒が存在している場合がある。熱間圧延時にγ組織を再結晶させることによって、均一微細なγ粒組織が得られ、その後のγ→α変態において微細なα粒組織を得ることができる。このような効果を得るためには少なくとも30%以上の累積圧下率で圧延を行なうことが好ましい。また、980℃を超える温度では、再結晶したγ粒が速やかに成長して粗大化してしまうので、980℃以下の温度で圧延することが好ましい。980℃以下の累積圧下率を十分に確保し、組織の微細化を図るため、圧延終了温度は950℃以下にすることが望ましい。
圧延前の加熱直後のγ粒は不均一であり、一部に粗大なγ粒が存在している場合がある。熱間圧延時にγ組織を再結晶させることによって、均一微細なγ粒組織が得られ、その後のγ→α変態において微細なα粒組織を得ることができる。このような効果を得るためには少なくとも30%以上の累積圧下率で圧延を行なうことが好ましい。また、980℃を超える温度では、再結晶したγ粒が速やかに成長して粗大化してしまうので、980℃以下の温度で圧延することが好ましい。980℃以下の累積圧下率を十分に確保し、組織の微細化を図るため、圧延終了温度は950℃以下にすることが望ましい。
表1に示す組成の300mm厚の鋼スラブを素材(鋼No.1〜15)として、表2に示す条件の熱間圧延により15〜80mm厚の鋼板(鋼板No.1−1〜15−1)を製造した。圧延後に表2に示す条件で直接焼入れを行い、また一部の鋼板については焼戻しも行なった。尚、表中に示す温度および冷却速度は、1/4t位置での値である。
得られた鋼板の引張特性、シャルピー特性を調査した。引張試験およびシャルピー試験は、板厚中央部から圧延方向に試験片を採取して行った。引張特性は、降伏強度(YS)および引張強度(TS)を測定した。靭性については、0℃での吸収エネルギー(vE0℃)と破面遷移温度(vTrs)を測定した。強度と靭性の測定結果を表3に示す。
組成が本発明の範囲内であり、本発明の製造方法を用いた本発明例の鋼板では、200〜250MPaの降伏強さを得ることができ、低温靭性についても0℃でのシャルピー吸収エネルギーが250J以上であり、破面遷移温度は0℃未満となり、優れた低温靭性を有していた。一方で、組成や製造方法が本発明の範囲外である比較例の鋼板では、ほとんどのものが降伏強度が本発明の範囲外であり、低温靭性も非常に劣るものであった。
Claims (5)
- C:0.02〜0.06mass%、Si:0.2mass%以下、Mn:0.8mass%以下、N:0.004mass%以下、Al:0.005〜0.05mass%を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなる成分を有する鋼を熱間圧延したのち、直接焼入れにより鋼板温度が880〜600℃の範囲を平均3〜30℃/sの冷却速度で冷却することを特徴とする低温靭性に優れた低降伏点厚鋼板の製造方法。
- 鋼を、900〜1200℃に加熱し、980℃以下の温度域で累積圧下率30%以上で圧延を行なうことを特徴とする請求項1に記載の低温靭性に優れた低降伏点厚鋼板の製造方法。
- 冷却後、さらに、730℃以下の温度で焼戻しを行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の低温靭性に優れた低降伏点厚鋼板の製造方法。
- 鋼が、さらに、Ti:0.005〜0.05mass%、Zr:0.005〜0.05mass%、Nb:0.005〜0.05mass%、V:0.005〜0.05mass%、B:0.0003〜0.0030mass%、Cr:0.05〜0.30mass%のうち1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の低温靭性に優れた低降伏点厚鋼板の製造方法。
- 鋼が、さらに、Ca:0.002〜0.02mass%、REM:0.002〜0.02mass%のうち1種または2種を含有することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の低温靭性に優れた低降伏点厚鋼板の製造方法。
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