JP3448783B2 - 超音波モータ - Google Patents

超音波モータ

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JP3448783B2
JP3448783B2 JP15347294A JP15347294A JP3448783B2 JP 3448783 B2 JP3448783 B2 JP 3448783B2 JP 15347294 A JP15347294 A JP 15347294A JP 15347294 A JP15347294 A JP 15347294A JP 3448783 B2 JP3448783 B2 JP 3448783B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、超音波振動を利用した
超音波モータに関する。
【0002】
【従来の技術】従来この種の超音波モータとして、例え
ば「第5回電磁力関連のダイナミックスシンポジウム講
演論文集」に記載されている「異形縮退縦L1−屈曲B
4モード・平板モータ」が知られている。図5は上記文
献に記載されている超音波モータの構造を示す図であ
り、図5(a)はこの超音波モータを真上から見た図、
図5(b)はこの超音波モータを図のP方向から見た断
面図、図5(c)は図のQ方向から見た断面図である。
図5において、1は弾性体であり、その上面には圧電素
子2a,2bが接着され、圧電素子2a,2bの上面に
は不図示の電極がそれぞれ接着されている。また、弾性
体1の下面には突起部3a,3bが形成され、この突起
部3a,3bによって弾性体1に発生した振動が取り出
される。以下、この突起部3a,3bを駆動力取り出し
部と呼ぶ。圧電素子2a,2bは同一方向に分極してお
り、各圧電素子2a,2bには電極を介して互いに90
度(π/2)位相の異なる高周波電圧が印加される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】図5に示す突起部3
a,3bの下面に図6のような移動子4を接触させる
と、突起部3a,3bが行なう楕円運動が移動子4に伝
達し、移動子4は図示の矢印方向に移動する。また、移
動子4の代わりに固定部材を設置すると、超音波モータ
自身が移動する。さらに、弾性体の形状を円形にすれ
ば、移動子または超音波モータは回転駆動する。ところ
が、この種の超音波モータは、一次元方向にしか移動で
きず、2次元方向に移動させる場合には、各方向ごとに
別々の超音波モータを設ける必要がある。このため、超
音波モータを小型化できず、コストダウンも図れないと
いう問題があった。
【0004】本発明の目的は、2次元方向に移動させる
ことができる超音波モータを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】実施例を示す図1に対応
づけて本発明を説明すると、本発明は、電気機械変換素
子2a,2b,2c,2dと、電気機械変換素子2a,
2b,2c,2dが一面に設けられた弾性体1とから構
成され、電気機械変換素子2a,2b,2c,2dに入
力される周波電圧に応じて弾性体1の他面の所定箇所に
楕円運動を発生させ、対象物との間で相対運動を生じさ
せる超音波モータに適用され、第1方向に関して第1モ
ード振動の共振周波数と第2モード振動の共振周波数が
略一致する形状を有し、電気機械変換素子2a,2b,
2c,2dに第1周波電圧が入力されると、第1モード
振動および第2モード振動の縮退による楕円運動によっ
て対象物との間で第1方向への相対運動を行う第1方向
運動モードと、第2方向に関して第3モード振動の共振
周波数と第4モード振動の共振周波数が略一致する形状
を有し、電気機械変換素子2a,2b,2c,2dに第
1周波電圧とは異なる周波数の第2周波電圧が入力され
ると、第3モード振動および第4モード振動の縮退によ
る楕円運動によって対象物との間で第2方向への相対運
動を行う第2方向運動モードとを有するように弾性体1
を構成することにより、上記目的は達成される。請求項
2に記載の発明は、請求項1に記載された超音波モータ
において、弾性体1に対象物と接触される複数の突起部
3a,3b,3c,3dを取り付け、各突起部3a,3
b,3c,3dを第1方向または第2方向に平行に並べ
て配置するものである。請求項3に記載の発明は、請求
項1または2に記載された超音波モータにおいて、第1
モード振動、第2モード振動、第3モード振動および第
4モード振動の各モード次数と、第1周波電圧および第
2周波電圧の周波数とを、弾性体1の材質、面積、形状
および厚さに基づいて定めるものである。請求項4に記
載の発明は、請求項3に記載された超音波モータにおい
て、第2モード振動のモード次数と第4モード振動のモ
ード次数とが一致しないように、弾性体1の材質、面
積、形状および厚さを定めるものである。請求項5に記
載の発明は、請求項1〜4に記載された超音波モータに
おいて、第1モード振動および第3モード振動を縦振動
とし、第2モード振動および第4モード振動を屈曲振動
としたものである。請求項6に記載の発明は、請求項1
〜3に記載された超音波モータにおいて、第1モード振
動および第3モード振動を1次の縦振動とし、かつ第2
モード振動を4次の屈曲振動とし、かつ第4モード振動
を6次の屈曲振動としたものである。
【0006】
【作用】請求項1に記載の超音波モータの弾性体1は、
第1方向に関して第1モード振動の共振周波数と第2モ
ード振動の共振周波数が略一致し、第2方向に関して第
3モード振動の共振周波数と第4モード振動の共振周波
数が略一致する形状を有し、電気機械変換素子2a,2
b,2c,2dに第1周波電圧が入力されたときに行う
第1方向運動モードと、第1周波電圧とは異なる周波数
の第2周波電圧が入力されたときに行う第2方向運動モ
ードを有する。すなわち、第1周波電圧が入力される
と、弾性体1に共振周波数が略一致する第1モード振動
と第2モード振動が発生し、これらの振動が縮退して電
気機械変換素子2a,2b,2c,2dが一面に設けら
れた面の他面の所定箇所が楕円運動を行い、この楕円運
動によって、弾性体1は対象物との間で第1方向への相
対運動を行う。一方、第1周波電圧とは異なる周波数の
第2周波電圧が入力されると、弾性体1に共振周波数が
略一致する第3モード振動と第4モード振動が発生し、
これらの振動が縮退して所定箇所が楕円運動を行い、こ
の楕円運動によって、弾性体1は対象物との間で第2方
向への相対運動を行う。請求項2に記載の発明では、弾
性体1に、第1の方向または第2の方向に平行に複数の
突起部3a,3b,3c,3dを取り付けて、これら突
起部3a,3b,3c,3dを対象物に接触させる。こ
れにより、突起部3a,3b,3c,3dが楕円運動を
行うと、この運動が対象物に伝達し、弾性体1と対象物
との間で相対運動が行われる。請求項3に記載の発明で
は、弾性体1の材質、面積、形状および厚さが異なる
と、弾性体1に発生する振動も異なるため、これら材質
等に基づいて、第1モード振動〜第4モード振動の各モ
ード次数と、第1周波電圧および第2周波電圧の周波数
を定める。請求項4に記載の発明では、第2モード振動
のモード次数と第4モード振動のモード次数が一致する
と、相対運動の際に弾性体1が振動するおそれがあるた
め、一致しないように弾性体1の形状等を定める。請求
項5に記載の発明では、弾性体1に縦振動と屈曲振動を
発生させるため、これらの振動の合成によって突起部3
a,3b,3c,3dは安定した楕円運動を行う。請求
項6に記載の発明では、第1方向に相対運動させる場合
には、弾性体1に1次の縦振動と4次の屈曲振動を発生
させ、第2方向に相対運動させる場合には、弾性体1に
1次の縦振動と6次の屈曲振動を発生させるため、これ
ら振動が弾性体1内部で縮退しやすくなり、楕円運動の
運動軌跡が大きくなる。
【0007】なお、本発明の構成を説明する上記課題を
解決するための手段と作用の項では、本発明を分かり易
くするために実施例の図を用いたが、これにより本発明
が実施例に限定されるものではない。
【0008】
【実施例】本発明による超音波モータの一実施例を説明
する前に、まず図4を用いて図5の構造を有する超音波
モータの動作原理を説明する。なお以下では、図5の圧
電素子2aに印加される高周波電圧を高周波電圧A、圧
電素子2bに印加される高周波電圧を高周波電圧Bと呼
ぶ。また図4では、各圧電素子2a,2bが同一方向に
分極している例を示すが、逆方向に分極していてもよ
い。図5の超音波モータでは、各圧電素子に高周波電圧
が印加されると、各圧電素子2a,2bは高周波電圧の
周波数に応じて振動する。この振動は弾性体1に伝達さ
れ、弾性体1は屈曲振動と縦振動を行う。ここで屈曲振
動とは、図5(b)と同一方向から見た場合に弾性体1
が図4(b)のように振動することをいい、一方縦振動
とは、図5(a)と同一方向から見た場合に弾性体1が
図4(c)のように振動することをいう。弾性体1に発
生した屈曲振動と縦振動は弾性体1内部で合成され、弾
性体1の駆動力取り出し部3a,3bはこれらの振動の
合成によって楕円振動を行う。
【0009】図4(a)は圧電体に印加される高周波電
圧A,Bの時間的変化を示す図であり、図示の時間t1
〜t9はそれぞれπ/4ずつ異なる時間を示す。また、
図4(a)の横軸は高周波電圧の振幅値を示し、図4
(a)の角度θは高周波電圧の位相を示す。一方、図4
(b)は弾性体1に発生する屈曲振動の波形図、図4
(c)は弾性体1に発生する縦振動の波形図、図4
(d)は弾性体1の駆動力取り出し部の楕円振動の波形
図である。図4(b)〜図4(d)はいずれも図4
(a)に対応して描かれている。
【0010】まず時間t1では、図4(a)に示すよう
に、ともに正の電圧である高周波電圧A,Bを圧電素子
11,12に印加する。高周波電圧Aによって弾性体1
に発生する屈曲振動と、高周波電圧Bによって弾性体1
に発生する屈曲振動の位相は互いにπ/2相違するた
め、これら屈曲振動は互いに打ち消し合い、弾性体1に
は屈曲振動は起こらない。
【0011】図4(b)では、弾性体1の駆動力取り出
し部での屈曲振動の振幅をそれぞれ質点Y1,Z1で示
しており、この質点Y1,Z1の振幅はいずれも0にな
る。また時間t1において弾性体1に働く縦振動は、図
4(c)のように弾性体1を縦方向に伸ばす方向に働
く。図4(c)では、駆動力取り出し部での縦振動の振
幅を質点Y2,Z2で示しており、縦振動による弾性体
1の伸び量は時間t1において最大となる。駆動力取り
出し部には質点Y1とY2を合成した質点Yで示す振動
が発生し、駆動力取り出し部14には質点Z1とZ2を
合成した質点Zで示す振動が発生する(図4(d)参
照)。
【0012】時間t2では、図4(a)に示すように、
高周波電圧Aは最大になり、高周波電圧Bは0になる。
このため、弾性体1に発生する屈曲振動は図4(b)の
ようになり、質点Y1は正方向に屈曲し、質点Z1は負
方向に屈曲する。また時間t2では、時間t1と同様に
弾性体1を縦方向に伸ばす方向に縦振動するが、その伸
び量は図4(c)に示すように時間t1よりも小さい。
したがって、質点Y、Zはともに、図4(d)に示すよ
うに時間t1から右回りに45度楕円状に移動する。
【0013】時間t3では、図4(a)に示すように、
高周波電圧Aは正の電圧に、高周波電圧Bは負の電圧に
なる。このため、弾性体1に発生する屈曲振動は図4
(b)のようになり、質点Y1の屈曲量は正方向に最大
になり、質点Z1の屈曲量は負方向に最大になる。ま
た、この場合の縦振動は、図4(c)に示すように0に
なる。したがって、質点Y,Zはともに、図4(d)に
示すように時間t2から右方向に45度楕円状に移動す
る。
【0014】時間t4では、図4(a)に示すように、
高周波電圧Aは0になり、高周波電圧Bは負の最大値に
なる。このため、弾性体1に発生する屈曲振動は図4
(b)のようになり、質点Y1は正方向に屈曲し、質点
Z1は負方向に屈曲する。また、時間t4では、図4
(c)に示すように弾性体を縮める方向に縦振動する。
したがって、質点Y,Zはともに、図4(d)に示すよ
うに時間t3から右方向に45度楕円状に移動する。
【0015】時間t5では、図4(a)に示すように、
高周波電圧A,Bはともに負の電圧になるため、図4
(b)に示すように弾性体1は屈曲振動を起こさない。
またこの場合にも弾性体1を縮める方向に縦振動が発生
し、図4(c)に示すように弾性体が縮む量は最大にな
る。したがって、質点Y,Zはともに、図4(d)に示
すように時間t4から右方向に45度楕円状に移動す
る。
【0016】以下同様に、時間t6〜t9の場合にも弾
性体1に屈曲振動と縦振動が発生し、この結果、質点
Y,Zは右方向に45度ずつ楕円状に移動する。
【0017】このように、図4,5の超音波モータで
は、弾性体1に発生する屈曲振動と縦振動との合成によ
って、弾性体1の駆動力取り出し部3a,3bに楕円運
動を発生させる。したがって、駆動力取り出し部3a,
3bに接する位置に例えば図6に示すような移動子4を
設ければ、図示の矢印の向きに移動子4を移動させるこ
とができる。また、圧電素子2a,2bに印加する高周
波電圧の周波数を変化させると、それに応じて弾性体1
に発生する屈曲振動と縦振動の周波数が変化するため、
駆動力取り出し部3a,3bの楕円運動の周波数も変化
し、したがって移動子2の移動速度も変化する。すなわ
ち、図4,5の超音波モータでは、圧電素子2a,2b
に印加する高周波電圧の周波数を制御することにより、
超音波モータの速度を制御することができる。
【0018】以下、図1〜3を用いて本発明による超音
波モータの一実施例を説明する。図1は、本発明による
超音波モータの構造を示す図であり、図1(a)は上面
図、図1(b)は右側面図、図1(c)は正面図、図1
(d)は背面図を示す。なお、図1では、図5に示す従
来の超音波モータと共通する構成部分には同一符号を付
しており、以下では相違点を中心に説明する。図1の弾
性体1の材料としては、ステンレスやアルミ合金などの
金属、またはプラスチックなどが用いられる。図1で
は、弾性体1の厚さをH、長さをWx、幅をWyとし、
弾性体1の長さ方向をX軸方向、幅方向をY軸としてい
る。
【0019】弾性体1の下面には、4個の駆動力取り出
し部3a,3b,3c,3dが取り付けられている。駆
動力取り出し部3a,3bを結ぶ方向と駆動力取り出し
部3c,3dを結ぶ方向はいずれもX軸に平行とされ、
駆動力取り出し部3a,3cを結ぶ方向と駆動力取り出
し部3b,3dを結ぶ方向はいずれもY軸に平行とされ
ている。駆動力取り出し部3a,3b,3c,3dの材
料としては、テフロンや二硫化モリブデン等を含有した
プラスチック等が用いられる。駆動力取り出し部3a,
3b,3c,3dの下面に移動子を接触すると、この移
動子は、駆動力取り出し部3a,3b,3c,3dの楕
円運動に応じて、図1のX軸方向またはY軸方向に移動
する。
【0020】弾性体1の上面には4個の圧電素子2a,
2b,2c,2dが接着されており、これら圧電素子2
a,2b,2c,2dの上面にはそれぞれ不図示の電極
が焼き付けられている。これら圧電素子2a,2b,2
c,2dには、電極を介して高周波電圧が印加される。
【0021】図2は本発明による超音波モータの動作原
理を示す図である。図2示す弾性体1の長さWX
(1)式のように設定し、弾性体1の縦弾性係数をE、
密度をρとすると、X軸方向における1次の縦振動の共
振周波数ΩL1Xは(2)式で示される。
【数1】 WX=32×π×H/√(12) ・・・(1)
【数2】 ΩL1X={π×√(E/ρ)}/(2×WX) ={√(12×E/ρ)}/(64×H) ・・・(2) 図2(c)は、弾性体1のX軸方向に発生する1次の縦
振動の様子を示す。
【0022】また、X軸方向における6次の屈曲振動の
共振周波数ΩB6Xは、弾性体1の断面2次モーメントを
I、断面積をAとすると、(3)式で示される。
【数3】 ΩB6X={16×π×π×√(E×I/ρ×A)}/(WX×WX) ={√(12×E/ρ)}/(64×H) ・・・(3) 図2(b)は弾性体1のX軸方向に発生する6次の屈曲
振動の様子を示す。
【0023】上記(2),(3)式に示すように、弾性
体1のX軸方向に発生する1次の縦振動の共振周波数と
6次の屈曲振動の共振周波数は一致する。このため、こ
の周波数で弾性体1を振動させると、縦振動と屈曲振動
が縮退し、駆動力取り出し部3a,3b,3c,3dの
楕円運動の軌跡は最大になる。すなわち、弾性体1のX
軸方向に1次の縦振動と6次の屈曲振動を発生させる
と、移動子はX軸方向に最も効率よく移動する。
【0024】一方、弾性体1のY軸方向の弾性体1の長
さWYを(4)式のように設定し、弾性体1の縦弾性係
数をE、密度をρとすると、Y軸方向における1次の縦
振動の共振周波数ΩL1Yは(5)式で示される。
【数4】 WY=72×π×H/√(12) ・・・(4)
【数5】 ΩL1Y={π×√(E/ρ)}/(2×WY) ={√(12×E/ρ)}/(144×H) ・・・(5) 図2(e)は、弾性体1のY軸方向に発生する1次の縦
振動の様子を示す。
【0025】また、Y軸方向における4次の屈曲振動の
共振周波数ΩB4Yは、弾性体1の断面2次モーメントを
I、断面積をAとすると、(6)式で示される。
【数6】 ΩB4Y={16×π×π×√(E×I/ρ×A)}/(WY×WY) ={√(12×E/ρ)}/(144×H) ・・・(6) 図2(d)は弾性体1のY軸方向に発生する4次の屈曲
振動の様子を示す。
【0026】上記(5),(6)式に示すように、弾性
体1のY軸方向に発生する1次の縦振動の共振周波数と
4次の屈曲振動の共振周波数は一致する。このため、こ
の周波数で弾性体1を振動させると、縦振動と屈曲振動
が縮退し、駆動力取り出し部3a,3b,3c,3dの
楕円運動の周期は最大になる。すなわち、弾性体1のY
軸方向に1次の縦振動と4次の屈曲振動を発生させる
と、移動子はY軸方向に最も効率よく移動する。
【0027】上記のように、X軸方向に移動させるため
の共振周波数((2)式)と、Y軸方向に移動させるた
めの共振周波数((5)式)とは異なるため、どちらか
一方の方向への移動を予め選択して、その方向に上記周
波数で移動子を移動させればよい。なお、(1)〜
(6)式を求める際には、本来は圧電素子2a,2b,
2c,2dや駆動力取り出し部3a,3b,3c,3d
の取り付け位置等の影響も考慮に入れる必要があり、よ
り精度を高めたい場合には、これらの影響を考慮に入れ
た式によって共振周波数が一致する振動モードを検出す
ればよい。ただし、X軸方向の屈曲振動のモード次数
と、Y軸方向の屈曲振動のモード次数が等しい場合に
は、移動子の移動の際に弾性体が振動するおそれがある
ため、これらのモード次数が相違するように、弾性体の
形状等を定めるのが望ましい。あるいは、X軸方向の屈
曲振動のモード次数と、Y軸方向の屈曲振動のモード次
数が等しい場合には、圧電素子2a,2b,2c,2d
に印加する高周波電圧の周波数を変えればよい。
【0028】図3は本実施例による超音波モータの駆動
回路のブロック図である。11は圧電素子2a,2b,
2c,2dに印加する高周波電圧の周波数を設定する周
波数設定部、12は周波数設定部11に設定された周波
数の信号を出力する発振器、13は発振器12から出力
された信号の位相を変更する位相器、14は位相器13
に対して位相の切り換えを指示する位相指示部である。
15は発振器12から出力された信号を増幅して高周波
電圧を出力する増幅器、16は位相器13から出力され
た信号を増幅して高周波電圧を出力する増幅器、17は
移動子の移動方向を指示する移動方向指示部であり、移
動方向指示部17からはX軸方向への移動を指示する信
号L1と、Y軸方向への移動を指示する信号L2が出力
される。
【0029】18〜21は圧電素子2a,2b,2c,
2dと増幅器15,16との接続を切り換えるアナログ
スイッチであり、アナログスイッチ18,20は信号L
1によってオン・オフが切り換えられ、アナログスイッ
チ19,21は信号L2によってオン・オフが切り換え
られる。なお、上述した移動方向指示部17、位相指示
部14および周波数設定部11は不図示のCPUによっ
て制御される。
【0030】以下、図3の超音波モータの駆動回路の動
作を説明する。移動子を図1に示すX軸の正方向に移動
させる場合には、移動方向指示部17から出力される信
号L1によってX軸の正方向への移動が指示される。こ
れにより、アナログスイッチ18,20がオンして増幅
器16と圧電素子2a,2cが接続され、同時に増幅器
15と圧電素子2b,2dが接続される。次に、位相指
示部14から位相器13に発振器12の出力を+π/2
ずらすことが指示される。次に、移動方向指示部17か
ら信号L1を介して周波数設定部11に対して移動子の
移動が指示され、周波数設定部11から指示を受けた発
振器12は第1周波数の高周波信号を出力する。この高
周波信号は増幅器15で増幅されて高周波電圧Aとなっ
て圧電素子2b,2dに印加される。一方、位相器13
で+π/2位相がずれた高周波信号は、増幅器16で増
幅されて高周波電圧Bとなって圧電素子2a,2cに印
加される。これにより、弾性体1には(2)式に示す1
次の縦振動と(3)式に示す6次の屈曲振動が発生し、
これら2種類の振動の縮退によって、駆動力取り出し部
3a,3b,3c,3dは楕円運動を行ない、この楕円
運動によって移動子はX軸の正方向に移動する。
【0031】一方、X軸の負方向に移動させる場合に
は、移動方向指示部17からの信号L1によってアナロ
グスイッチ18,20はオンに設定される。次に、位相
指示部14から位相器13に発振器12の出力を−π/
2ずらすことが指示される。次に、移動方向指示部17
から信号L1を介して周波数設定部11に移動子の移動
が指示され、周波数設定部11からの指示を受けた発振
器12は第1周波数の高周波信号を出力する。これによ
り、弾性体1には(2)式に示す1次の縦振動と(3)
式に示す6次の屈曲振動が発生し、これら振動の縮退に
より、駆動力取り出し部3a,3b,3c,3dは楕円
運動を行ない、この楕円運動によって移動子はX軸の負
方向に移動する。
【0032】一方、Y軸の正方向に移動させる場合に
は、移動方向指示部17からの信号L2によってアナロ
グスイッチ19,21はオンに設定される。次に、位相
指示部14から位相器13に発振器12の出力を+π/
2ずらすことが指示される。次に、移動方向指示部17
から信号L2を介して周波数設定部11に移動子の移動
が指示され、周波数設定部11から指示を受けた発振器
12は第2周波数の高周波信号を出力する。これによ
り、弾性体1には(5)式に示す1次の縦振動と(6)
式に示す4次の屈曲振動が発生し、これら振動の縮退に
より、駆動力取り出し部3a,3b,3c,3dは楕円
運動を行ない、この楕円運動によって移動子はY軸の正
方向に移動する。
【0033】一方、Y軸の負方向に移動させる場合に
は、移動方向指示部17からの信号L2によってアナロ
グスイッチ19,21はオンに設定される。次に、位相
指示部14から位相器13に発振器12の出力を−π/
2ずらすことが指示される。次に、移動方向指示部17
から信号L2を介して周波数設定部11に移動子の移動
が指示され、周波数設定部11から指示を受けた発振器
12は第2周波数の高周波信号を出力する。これによ
り、弾性体1には1次の縦振動と4次の屈曲振動が発生
し、これら振動の縮退により、駆動力取り出し部3a,
3b,3c,3dは楕円運動を行ない、この楕円運動に
よって移動子はY軸の負方向に移動する。
【0034】以上、図3の超音波モータの駆動回路の動
作をまとめると、移動子をX軸方向に移動させるのかY
軸方向に移動させるのかを移動方向指示部17によって
指示し、この移動方向指示部17の出力に応じてアナロ
グスイッチ18〜21を切り換える。4個の圧電素子2
a,2b,2c,2dを2個ずつ2組に分け、組とする
圧電素子をアナログスイッチ18〜21の切り換えに応
じて変更する。X軸方向に移動子を移動させる場合には
Y軸方向に並んだ圧電素子(2a,2c)、(2b,2
d)を組とし、Y軸方向に移動子を移動させる場合には
X軸方向に並んだ圧電素子(2a,2b)、(2c,2
d)を組とする。そして、各組にそれぞれ互いにπ/2
位相の異なる高周波電圧を印加して駆動力取り出し部3
a,3b,3c,3dに楕円運動を発生させ、X軸方向
またはY軸方向に移動子を移動させる。一方、正負のど
ちらに移動させるかは位相指示部14から位相器13に
入力される信号によって切り換える。
【0035】このように、上記実施例では、一つの超音
波モータで二次元方向に移動子を移動させることができ
るため、超音波モータを複数設ける必要がなく、コスト
ダウンと超音波モータの小型化が図れる。
【0036】上記実施例では、弾性体1に圧電素子2
a,2b,2c,2dが接着されている例を示したが、
電気信号を機械的な振動に変換できる部材であれば圧電
素子に限定されず、例えば印加電圧のn乗に比例して振
動する電歪素子などを用いてもよい。上記実施例では、
X軸方向には1次の縦振動と4次の屈曲振動を発生さ
せ、Y軸方向には1次の縦振動と6次の屈曲振動を発生
させるようにしたが、上述した(2),(3),
(5),(6)式に示すように、弾性体1の材質、厚さ
等が変わると、共振周波数も変化するため、弾性体1の
材質、面積、形状および厚さ等に基づいて振動のモード
次数を決定するのが望ましい。上記実施例では、90度
隔てた2方向に移動子を移動させる例を説明したが、移
動させる方向は実施例に限定されない。図3に示す移動
方向指示部17、位相指示部14および周波数設定部1
1をCPUの中に含め、ソフト的に処理してもよい。上
記実施例では、超音波モータの駆動力取り出し部3a,
3b,3c,3dに移動子を接触させて、この移動子を
移動させる例を説明したが、駆動力取り出し部3a,3
b,3c,3dに固定部材を接触させて、超音波モータ
自身を移動させるようにしてもよい。
【0037】このように構成した実施例にあっては、圧
電素子2a,2b,2c,2dが電気機械変換素子に、
駆動力取り出し部3a,3b,3c,3dが突起部に、
それぞれ対応する。
【0038】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明によ
れば、弾性体は第1方向に関する第1モード振動と第2
モード振動の共振周波数、および第2方向に関する第3
モード振動と第4モード振動の共振周波数がそれぞれ略
一致する形状とし、電気機械変換素子に入力する第1周
波電圧および第1周波電圧とは異なる周波数の第2周波
電圧に応じて、弾性体が第1方向または第2方向に相対
運動するようにした。そのため、2次元座標系のどの方
向にも超音波モータを最も効率よく駆動させることがで
き、弾性体に発生する不所望の振動を抑えることができ
る。請求項2に記載の発明によれば、弾性体に、第1の
方向または第2の方向に平行に複数の突起部を取り付け
るため、突起部に発生した楕円運動によって、対象物を
2次元方向に相対運動させることができる。請求項3に
記載の発明によれば、弾性体の材質等を考慮に入れて、
弾性体に発生する各振動のモード次数と周波電圧の周波
数を設定するため、いつも最適な状態で弾性体を振動さ
せることができる。請求項4に記載の発明によれば、第
2モード振動のモード次数と第4モードのモード次数を
変えるようにしたため、弾性体に発生する不所望の振動
を抑えることができる。請求項5に記載の発明によれ
ば、弾性体に縦振動と屈曲振動を発生させるようにした
ため、これらの振動の合成により、突起部に安定した楕
円運動を発生させることができる。請求項6に記載の発
明によれば、弾性体に発生した各振動が縮退するように
したため、突起部の楕円運動の軌跡を最大にすることが
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による超音波モータの構造を示す図。
【図2】本発明による超音波モータの動作原理を説明す
る図。
【図3】超音波モータの駆動回路のブロック図。
【図4】図5の超音波モータの動作原理を説明する図。
【図5】L1−B4モード平板モータの構造を示す図。
【図6】図5のモータによって駆動される移動子を示す
図。
【符号の説明】
1 弾性体 2a,2b,2c,2d 圧電素子 3a,3b,3c,3d 駆動力取り出し部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H02N 2/00

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電気機械変換素子と該電気機械変換素子
    が一面に設けられた弾性体とから構成され、前記電気機
    械変換素子に入力される周波電圧に応じて前記弾性体の
    他面の所定箇所に楕円運動を発生させ、対象物との間で
    相対運動を生じさせる超音波モータにおいて、 前記弾性体は、第1方向に関して第1モード振動の共振周波数と第2モ
    ード振動の共振周波数が略一致する形状を有し、 前記電
    気機械変換素子に第1周波電圧が入力されると、前記
    1モード振動および前記第2モード振動の縮退による前
    記楕円運動によって前記対象物との間で前記第1方向へ
    の相対運動を行う第1方向運動モードと、第2方向に関して第3モード振動の共振周波数と第4モ
    ード振動の共振周波数が略一致する形状を有し、 前記電
    気機械変換素子に前記第1周波電圧とは異なる周波数の
    第2周波電圧が入力されると、前記第3モード振動およ
    前記第4モード振動の縮退による前記楕円運動によっ
    て前記対象物との間で前記第2方向への相対運動を行う
    第2方向運動モードとを有することを特徴とする超音波
    モータ。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載された超音波モータにお
    いて、 前記弾性体には前記対象物と接触される複数の突起部が
    取り付けられ、前記各突起部は前記第1方向または前記
    第2方向に平行に並べて配置されることを特徴とする超
    音波モータ。
  3. 【請求項3】 請求項1または2に記載された超音波モ
    ータにおいて、 前記第1モード振動、前記第2モード振動、前記第3モ
    ード振動および前記第4モード振動の各モード次数と、
    前記第1周波電圧および前記第2周波電圧の周波数と
    を、前記弾性体の材質、面積、形状および厚さに基づい
    て定めることを特徴とする超音波モータ。
  4. 【請求項4】 請求項3に記載された超音波モータにお
    いて、 前記第2モード振動のモード次数と前記第4モード振動
    のモード次数とが一致しないように、前記弾性体の材
    質、面積、形状および厚さを定めることを特徴とする超
    音波モータ。
  5. 【請求項5】 請求項1〜に記載された超音波モータ
    において、 前記第1モード振動および前記第3モード振動は縦振動
    で、前記第2モード振動および前記第4モード振動は屈
    曲振動であることを特徴とする超音波モータ。
  6. 【請求項6】 請求項1〜3に記載された超音波モータ
    において、 前記第1モード振動および前記第3モード振動が1次の
    縦振動で、かつ前記第2モード振動が4次の屈曲振動
    で、かつ前記第4モード振動が6次の屈曲振動であるこ
    とを特徴とする超音波モータ。
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