JP3439195B2 - 抗原の定量的検出方法 - Google Patents

抗原の定量的検出方法

Info

Publication number
JP3439195B2
JP3439195B2 JP2000620173A JP2000620173A JP3439195B2 JP 3439195 B2 JP3439195 B2 JP 3439195B2 JP 2000620173 A JP2000620173 A JP 2000620173A JP 2000620173 A JP2000620173 A JP 2000620173A JP 3439195 B2 JP3439195 B2 JP 3439195B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
antibody
gene
fab
amino acid
chain
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2000620173A
Other languages
English (en)
Inventor
素 久田
由紀子 伊藤
浩幸 松本
清仁 志村
献一 笠井
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Hamamatsu Photonics KK
Original Assignee
Hamamatsu Photonics KK
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Hamamatsu Photonics KK filed Critical Hamamatsu Photonics KK
Application granted granted Critical
Publication of JP3439195B2 publication Critical patent/JP3439195B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K16/00Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies
    • C07K16/38Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies against protease inhibitors of peptide structure
    • GPHYSICS
    • G01MEASURING; TESTING
    • G01NINVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
    • G01N33/00Investigating or analysing materials by specific methods not covered by groups G01N1/00 - G01N31/00
    • G01N33/48Biological material, e.g. blood, urine; Haemocytometers
    • G01N33/50Chemical analysis of biological material, e.g. blood, urine; Testing involving biospecific ligand binding methods; Immunological testing
    • G01N33/53Immunoassay; Biospecific binding assay; Materials therefor
    • G01N33/558Immunoassay; Biospecific binding assay; Materials therefor using diffusion or migration of antigen or antibody
    • G01N33/561Immunoelectrophoresis
    • GPHYSICS
    • G01MEASURING; TESTING
    • G01NINVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
    • G01N33/00Investigating or analysing materials by specific methods not covered by groups G01N1/00 - G01N31/00
    • G01N33/48Biological material, e.g. blood, urine; Haemocytometers
    • G01N33/50Chemical analysis of biological material, e.g. blood, urine; Testing involving biospecific ligand binding methods; Immunological testing
    • G01N33/68Chemical analysis of biological material, e.g. blood, urine; Testing involving biospecific ligand binding methods; Immunological testing involving proteins, peptides or amino acids
    • G01N33/6854Immunoglobulins
    • G01N33/6857Antibody fragments
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K2317/00Immunoglobulins specific features
    • C07K2317/50Immunoglobulins specific features characterized by immunoglobulin fragments
    • C07K2317/54F(ab')2

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Immunology (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Biomedical Technology (AREA)
  • Urology & Nephrology (AREA)
  • Hematology (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Microbiology (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • Food Science & Technology (AREA)
  • General Physics & Mathematics (AREA)
  • Biotechnology (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Analytical Chemistry (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
  • Cell Biology (AREA)
  • Pathology (AREA)
  • Biophysics (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Electrochemistry (AREA)
  • Peptides Or Proteins (AREA)
  • Investigating, Analyzing Materials By Fluorescence Or Luminescence (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】 技術分野 本発明は抗原の定量的検出方法に関し、より詳しく
は、荷電性アミノ酸残基を含むアミノ酸配列が付加さ
れ、発蛍光団色素で標識されており、且つ分析用試料に
含まれる抗原と免疫複合体を形成する等電点均一化Fa
b’抗体を用いた抗原の定量的検出方法に関する。
背景技術 電荷を有する物質を電解質溶液に浮遊させて電圧を印
加すると、物質の電荷とは逆の電極へ向かって物質が移
動するという電気泳動の現象は、様々な物質の分離の手
段として広く利用されている。一般的な電気泳動は、一
定pHの泳動用担体中で分析試料の泳動を行うものであ
るが、泳動担体にpH勾配を持たせその担体中で試料の
電気泳動を行うという等電点電気泳動法が開発されて以
来、アミノ酸やタンパク質などの両性電解質の分離の手
段としてその用途が拡大してきている。
両性電解質は、等電点と呼ばれる、実効電荷がゼロと
なるようなpH値を有する。等電点電気泳動法により両
性電解質試料の電気泳動を行うと、試料がある一定の位
置に濃縮されて静止するが、その位置は、泳動用担体中
のpHが試料の等電点と等しくなっている点である。そ
の際、試料は焦点的に濃縮されて分離されるので、等電
点電気泳動法は非常に高い分離能を有している。
また、近年、電気泳動を内径が数十μm、長さが数百
mm程度の毛細管(キャピラリー)の中で行なうキャピ
ラリー電気泳動法が考案され、微量な分析試料でも高い
分離能を有することから、タンパク質のみならず、無機
イオン、低分子化合物、核酸等の分離・分析に応用され
ている。キャピラリー電気泳動を行う際に、キャピラリ
ーの一端に検出器を装着し分離されてきた試料成分を検
出することにより、温度を定量化する試みもなされてい
る。
電気泳動により分離された試料の検出は、試料に紫外
光あるいは可視光を照射し吸収される光量の変化を測定
する紫外可視検出法が一般的であるが、さらに高感度な
検出方法として、あらかじめ分析試料を発蛍光団色素で
標識(蛍光標識)し分離された試料成分に、励起光を照
射して蛍光を発生させることで濃度を定量化する蛍光検
出法がある。
上記の等電点電気泳動法とキャピラリー電気泳動法を
組み合わせ、さらに検出を蛍光検出法で行うことも可能
である(蛍光検出キャピラリー等電点電気泳動法)。す
なわち、pH勾配を有した泳動担体に含まれる蛍光標識
された試料をキャピラリー中で電気泳動させ、励起光を
照射して生じる蛍光を光検出器等で検出する。この方法
によれば、微量の試料であっても高精度の定量的検出が
可能であるため、タンパク質等の超高感度分析方法とし
て注目されている。
近年、生体内の微量成分を上記のような電気泳動法の
分析の対象物とする場合が増加している。このような分
析を行う場合は、生体内の微量成分と、該微量成分を抗
原として認識する抗体とを結合させ免疫複合体を形成さ
せて、該免疫複合体を検出することが行われる。高精度
の検出のためには免疫複合体が蛍光標識されていること
が好ましい。このとき、抗原もしくは抗体のいずれかが
蛍光標識されている必要があるが、抗原もしくは抗体を
一般的な標識方法により蛍光標識することは以下に述べ
る理由により好ましくない。
すなわち、抗原の多くと抗体はタンパク質からなって
おり、タンパク質のN末端のアミノ基およびリシン側鎖
のアミノ基の数とその解離状態は、タンパク質の等電点
を決める大きな要因となるので(続生化学実験講座2、
タンパク質の化学−上、日本生化学会、1987)、ア
ミノ基を利用して発蛍光団色素を化学結合させる一般的
な標識方法によれば、タンパク質自身の等電点が大きく
変化してしまう。
また、タンパク質には蛍光標識物質と反応可能なアミ
ノ酸が多く存在するため、結合する蛍光標識物質の数と
位置が不特定となり、結果として、一つのタンパク質で
あるにもかかわらず複数の等電点を示す混合物となって
しまう。このため、等電点電気泳動で正確な分析をする
ことが困難となる。さらに、発蛍光団色素による標識の
ためタンパク質の3次構造が変化するために、タンパク
質自身の化学的安定性が悪くなるという問題もある。
検出に用いる抗体として、ハイブリドーマにより産出
させて得られた、分子量が均一なモノクローナル抗体を
用いた場合でも等電点電気泳動法で正確な分析ができな
い場合がある。これは、ハイブリドーマ産出の分子量が
均一なモノクローナル抗体であっても、等電点が必ずし
も均一とならないmicroheterogeneityと呼ばれる現象が
生じるからである(Bouman H et al. Z Immunitatsfors
ch. Exp Klin Immunol. 1975 Oct; 150(4): 370-7)。
このような等電点不均一の原因としては、タンパク質
の脱アミド化(Robinson ABら,Proc Natl Acad Sci U
SA.1970 Jul;66(3):753-7)、N末端のピログルタミ
ル化(Stott DIら,Biochem J 1972 Aug:128(5):1221-7
)、糖鎖の付加(Cohenford MAら,Immunol Commun 198
3;12(2):189-200)、ミリストイル化(Pillai Sら,Proc
Natl Acad Sci USA 1987 Nov;84(21):7654-8)等が
提唱されているが、タンパク質の等電点不均一性のメカ
ニズムは、未だ特定されていない。
したがって、等電点電気泳動を行った結果、試料が複
数の等電点を有することが判明したとしても、それが抗
原に起因するのか抗体に起因するのかわからないことが
ある。これは、上述のように、抗原および抗体の両者と
も等電点の不均一性を有する可能性があるからである。
上記のことから、抗原抗体反応を利用して電気泳動法
により分析を行う場合は、少なくとも抗体は等電点的に
均一である必要があり、等電点が均一な抗体を発蛍光団
色素で標識する場合は、上述のようなアミノ基を利用し
た蛍光標識方法は好ましくないということができる。
等電点が均一な抗体を用いて抗原を定量的に検出する
方法としては、Shimura Kおよび Karger BLの方法が知
られている(Anal Chem 1994 Jan 1;66(1):9-15、また
は特表平8−506182号公報参照 )。これらの文献
に開示の方法を模式的に示すと図8A〜Gのようにな
る。すなわち、ハイブリドーマ産出のIgG抗体(図8
A)をタンパク質分解酵素(ペプシン)により切断し、
得られたF(ab’)2抗体(図8B)を分離する。こ
れをメルカプトエチルアミン等の還元剤で処理して3つ
の連結ジスルフィド結合(S−S結合)を還元し、Fa
b’抗体を得る(図8C)。このFab’抗体を酸化し
て反応性チオール基(SH基)を1つだけ残すようにし
て(図8D)、このチオール基に発蛍光団色素を結合さ
せる(図8E)。得られた蛍光標識Fab’抗体を用い
て等電点電気泳動を行い、等電点が均一な蛍光標識Fa
b’抗体を泳動担体から取り出す(図8F)。取り出し
た等電点が均一な蛍光標識Fab’抗体を抗原と結合さ
せ電気泳動を行い励起光で生じた蛍光を測定する(図8
G)。
発明の開示 しかしながら、上記のShimura Kおよび Karger BLの
文献に開示の方法により等電点電気泳動を行う場合にお
いては、等電点が均一なFab’抗体を得るまでの工程
が煩雑であることに加えて、測定対象である抗原の等電
点と蛍光標識された抗体の等電点が近い場合、電気泳動
の結果、抗原と抗体からなる免疫複合体と、余剰の抗原
および/または抗体がほぼ等しい移動時間で検出される
ために、ピークが重なってしまい精度の高い検出ができ
ないという問題点がある。
本発明は上記の従来技術の問題点を鑑みてなされたも
のであり、測定対象である抗原の等電点と蛍光標識され
た抗体の等電点が近い場合であっても、高精度で抗原を
分析することが可能な、抗原の定量的検出方法を提供す
ることを目的とする。
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、荷電性アミノ酸
残基を含むアミノ酸配列が付加された蛍光標識等電点均
一化Fab’抗体を用いることにより、測定対象である
抗原の等電点と蛍光標識された抗体の等電点が近い場合
であっても、高精度で抗原を分析することが可能である
ことを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、荷電性アミノ酸残基を含むアミ
ノ酸配列が付加され、発蛍光団色素で標識されており、
且つ分析用試料に含まれる抗原と免疫複合体を形成する
等電点均一化Fab’抗体を提供する第1の工程と、前
記等電点均一化Fab’抗体と、前記抗原を含む前記分
析用試料とを混合し、前記免疫複合体を含む混合物を得
る第2の工程と、前記混合物を担体中で電気泳動させ、
前記混合物を分離させる第3の工程と、前記第3の工程
で分離された前記混合物に、前記発蛍光団色素を励起可
能な励起光を照射して、前記免疫複合体に蛍光を生じせ
しめる第4の工程と、前記蛍光を検出する第5の工程と
を含む抗原の定量的検出方法を提供するものである。
本発明の抗原の定量的検出方法においては、前記アミ
ノ酸配列が、前記等電点均一化Fab’抗体のL鎖のC
末端に隣接するように付加されていることが好ましく、
前記発蛍光団色素が、前記等電点均一化Fab’抗体の
CH1領域のC末端に隣接するアミノ酸配列におけるL
鎖との結合に関与しないシステイン残基に結合している
ことが好ましい。
本発明の抗原の定量的検出方法においては、前記電気
泳動が、等電点電気泳動法により実施されることが好ま
しく、また、前記電気泳動が、キャピラリー電気泳動法
により実施されることが好ましい。
また、前記等電点均一化Fab’抗体が、Fab’抗
体のVH領域、CH1領域、および該CH1領域のC末
端に隣接しL鎖との結合に関与しないシステイン残基を
含むアミノ酸配列をコードするFd鎖遺伝子を提供する
第1の工程と、前記Fd鎖遺伝子において、前記CH1
領域のアミド基含有アミノ酸残基をコードするコドンの
少なくとも一つを、システインを除くアミド基非含有ア
ミノ酸残基をコードするコドンに部位特異的変異させ
て、改変Fd鎖遺伝子を得る第2の工程と、前記改変F
d鎖遺伝子と、前記Fab’抗体のL鎖をコードするL
鎖遺伝子とを発現可能な状態で連結させ、改変Fab’
抗体発現遺伝子を得る第3の工程と、前記改変Fab’
抗体発現遺伝子を、前記L鎖のC末端に隣接して荷電性
アミノ酸残基を含むアミノ酸配列が発現するように改変
し、荷電性付与改変Fab’抗体発現遺伝子を得る第4
の工程と、前記荷電性付与改変Fab’抗体発現遺伝子
で宿主細胞を形質転換し、得られた形質転換体を培養す
ることにより、L鎖のC末端に隣接して荷電性アミノ酸
残基を含むアミノ酸配列が付加され、且つCH1領域の
C末端に隣接してL鎖との結合に関与しないシステイン
残基を含むアミノ酸配列が形成された、等電点均一化F
ab’抗体を得る第5の工程と、前記第5の工程で得ら
れた等電点均一化Fab’抗体におけるL鎖との結合に
関与しないシステイン残基に発蛍光団色素を結合させる
第6の工程とを含む方法により製造されたものであるこ
とが好ましい。
さらに、前記等電点均一化Fab’抗体が、Fab’
抗体のVH領域、CH1領域、および該CH1領域のC
末端に隣接しL鎖との結合に関与しないシステイン残基
を含むアミノ酸配列をコードするFd鎖遺伝子を提供す
る第1の工程と、前記Fd鎖遺伝子において、前記CH
1領域のアミド基含有アミノ酸残基をコードするコドン
の少なくとも一つを、システインを除くアミド基非含有
アミノ酸残基をコードするコドンに部位特異的変異させ
て、改変Fd鎖遺伝子を得る第2の工程と、前記Fa
b’抗体のL鎖をコードするL鎖遺伝子を提供する第3
の工程と、前記L鎖遺伝子を、前記L鎖のC末端に隣接
して荷電性アミノ酸残基を含むアミノ酸配列が発現する
ように改変し、荷電性付与L鎖遺伝子を得る第4の工程
と、前記改変Fd鎖遺伝子と、前記荷電性付与L鎖遺伝
子を発現可能な状態で連結させ、荷電性付与改変Fa
b’抗体発現遺伝子を得る第5の工程と、前記荷電性付
与改変Fab’抗体発現遺伝子で宿主細胞を形質転換
し、得られた形質転換体を培養することにより、L鎖の
C末端に隣接して荷電性アミノ酸残基を含むアミノ酸配
列が付加され、且つCH1領域のC末端に隣接してL鎖
との結合に関与しないシステイン残基を含むアミノ酸配
列が形成された、等電点均一化Fab’抗体を得る第6
の工程と、前記第6の工程で得られた等電点均一化Fa
b’抗体におけるL鎖との結合に関与しないシステイン
残基に発蛍光団色素を結合させる第7の工程とを含む方
法により製造されたものであることが好ましい。
また、前記等電点均一化Fab’抗体が、Fab’抗
体のVH領域、CH1領域、および該CH1領域のC末
端に隣接しL鎖との結合に関与しないシステイン残基を
含むアミノ酸配列をコードするFd鎖遺伝子と、該Fa
b’抗体のL鎖をコードするL鎖遺伝子とを提供する第
1の工程と、前記Fd鎖遺伝子と前記L鎖遺伝子とを発
現可能な状態で連結させ、Fab’抗体発現遺伝子を得
る第2の工程と、前記Fab’抗体発現遺伝子を、前記
L鎖のC末端に隣接して荷電性アミノ酸残基を含むアミ
ノ酸配列が発現するように改変し、且つ、前記Fab’
抗体発現遺伝子における前記CH1領域のアミド基含有
アミノ酸残基をコードするコドンの少なくとも一つを、
システインを除くアミド基非含有アミノ酸残基をコード
するコドンに部位特異的変異させて、荷電性付与改変F
ab’抗体発現遺伝子を得る第3の工程と、前記荷電性
付与改変Fab’抗体発現遺伝子で宿主細胞を形質転換
し、得られた形質転換体を培養することにより、L鎖の
C末端に隣接して荷電性アミノ酸残基を含むアミノ酸配
列が付加され、且つCH1領域のC末端に隣接してL鎖
との結合に関与しないシステイン残基を含むアミノ酸配
列が形成された、等電点均一化Fab’抗体を得る第4
の工程と、前記第4の工程で得られた等電点均一化Fa
b’抗体におけるL鎖との結合に関与しないシステイン
残基に発蛍光団色素を結合させる第5の工程とを含む方
法により製造されたものであることが好ましい。
さらに、前記等電点均一化Fab’抗体が、第1のF
ab’抗体のCH1領域、および該CH1領域のC末端
に隣接しL鎖との結合に関与しないシステイン残基を含
むアミノ酸配列をコードするCH1遺伝子と、該第1の
Fab’抗体のCL領域をコードするCL遺伝子とを提
供する第1の工程と、前記CH1遺伝子において、CH
1領域のアミド基含有アミノ酸残基をコードするコドン
の少なくとも一つを、システインを除くアミド基非含有
アミノ酸残基をコードするコドンに部位特異的変異させ
て、改変CH1遺伝子を得る第2の工程と、前記改変C
H1遺伝子を制限酵素で切断しCH1領域をコードする
遺伝子を含む遺伝子断片を得る第3の工程と、第2のF
ab’抗体のVH領域をコードするVH遺伝子と、該第
2のFab’抗体のVL領域をコードするVL遺伝子を
提供する第4の工程と、前記遺伝子断片、前記CL遺伝
子、前記VH遺伝子および前記VL遺伝子を発現可能な
状態で連結し、改変Fab’抗体発現遺伝子を得る第5
の工程と、前記改変Fab’抗体発現遺伝子を、前記C
L領域のC末端に隣接して荷電性アミノ酸残基を含むア
ミノ酸配列が発現するように改変し、荷電性付与改変F
ab’抗体発現遺伝子を得る第6の工程と、前記荷電性
付与改変Fab’抗体発現遺伝子で宿主細胞を形質転換
し、得られた形質転換体を培養することにより、L鎖の
C末端に隣接して荷電性アミノ酸残基を含むアミノ酸配
列が付加され、且つCH1領域のC末端に隣接してL鎖
との結合に関与しないシステイン残基を含むアミノ酸配
列が形成された、等電点均一化Fab’抗体を得る第7
の工程と、前記第7の工程で得られた等電点均一化Fa
b’抗体におけるL鎖との結合に関与しないシステイン
残基に発蛍光団色素を結合させる第8の工程とを含む方
法により製造されたものであることが好ましい。
加えて、前記等電点均一化Fab’抗体が、第1のF
ab’抗体のCH1領域、および該CH1領域のC末端
に隣接しL鎖との結合に関与しないシステイン残基を含
むアミノ酸配列をコードするCH1遺伝子と、該第1の
Fab’抗体のCL領域をコードするCL遺伝子とを提
供する第1の工程と、前記CH1遺伝子において、CH
1領域のアミド基含有アミノ酸残基をコードするコドン
の少なくとも一つを、システインを除くアミド基非含有
アミノ酸残基をコードするコドンに部位特異的変異させ
て、改変CH1遺伝子を得る第2の工程と、前記改変C
H1遺伝子を制限酵素で切断しCH1領域をコードする
遺伝子を含む遺伝子断片を得る第3の工程と、前記CL
遺伝子を、前記CL領域のC末端に隣接して荷電性アミ
ノ酸残基を含むアミノ酸配列が発現するように改変し、
荷電性付与CL遺伝子を得る第4の工程と、第2のFa
b’抗体のVH領域をコードするVH遺伝子と、該第2
のFab’抗体のVL領域をコードするVL遺伝子を提
供する第5の工程と、前記遺伝子断片、前記荷電性付与
CL遺伝子、前記VH遺伝子および前記VL遺伝子を発
現可能な状態で連結し、荷電性付与改変Fab’抗体発
現遺伝子を得る第6の工程と、前記荷電性付与改変Fa
b’抗体発現遺伝子で宿主細胞を形質転換し、得られた
形質転換体を培養することにより、L鎖のC末端に隣接
して荷電性アミノ酸残基を含むアミノ酸配列が付加さ
れ、且つCH1領域のC末端に隣接してL鎖との結合に
関与しないシステイン残基を含むアミノ酸配列が形成さ
れた、等電点均一化Fab’抗体を得る第7の工程と、
前記第7の工程で得られた等電点均一化Fab’抗体に
おけるL鎖との結合に関与しないシステイン残基に発蛍
光団色素を結合させる第8の工程とを含む方法により製
造されたものであることが好ましい。
図面の簡単な説明 図1は、ヒトのIgG1抗体を示す模式的に示す図で
ある。
図2Aは、等電点均一化Fab’抗体発現遺伝子の構
成図である。
図2Bは、等電点均一化Fab’抗体発現遺伝子が導
入されたpCANTAB5Eプラスミドベクターを示す図であ
る。
図3は、改変を行っていない抗ヒト アルファ1アン
チトリプシンFab’抗体を用いて蛍光検出キャピラリ
ー等電点電気泳動を行った際の移動時間と蛍光強度を示
す図である。
図4は、改変を行った抗ヒト アルファ1アンチトリ
プシンFab’抗体(H−N162D改変Fab’抗
体)を用いて蛍光検出キャピラリー等電点電気泳動を行
った際の移動時間と蛍光強度を示す図である。
図5は、等電点均一化Fab’抗体と抗原の免疫複合
体を電気泳動で分離した際の移動時間と蛍光強度を示す
図である。
図6は、荷電性のアミノ酸残基を含むアミノ酸配列が
付加された等電点均一化Fab’抗体と抗原の免疫複合
体を電気泳動で分離した際の移動時間と蛍光強度を示す
図である。
図7Aは、等電点均一化Fab’抗体を発現する遺伝
子を組み込んだ大腸菌を模式的に示す図である。
図7Bは、IPTGによる抗体誘導により生じた等電点均
一化Fab’抗体を模式的に示す図である。
図7Cは、蛍光標識された等電点均一化Fab’抗体
を模式的に示す図である。
図7Dは、蛍光標識された等電点均一化Fab’抗体
と抗原の免疫複合体を電気泳動で分離したときに得られ
る、移動時間と蛍光強度の関係を模式的に示す図であ
る。
図8Aは、ハイブリドーマ産出のIgG抗体を模式的
に示す図である。
図8Bは、ハイブリドーマ産出のIgG抗体をタンパ
ク質分解酵素により切断して得られたF(ab’)2
体を模式的に示す図である。
図8Cは、F(ab’)2抗体を還元剤で処理してジ
スルフィド結合を還元して得られたFab’抗体を模式
的に示す図である。
図8Dは、酸化により反応性チオール基を1つだけ残
したFab’抗体を模式的に示す図である。
図8Eは、蛍光標識されたFab’抗体を模式的に示
す図である。
図8Fは、蛍光標識されたFab’抗体を等電点電気
泳動した時に得られる電気泳動像を模式的に示す図であ
る。
図8Gは、等電点電気泳動して取り出された蛍光標識
された等電点均一化Fab’抗体と、抗原の免疫複合体
を電気泳動で分離したときに得られる、移動時間と蛍光
強度の関係を模式的に示す図である。
発明を実施するための最良の形態 本発明の抗原の定量的検出方法は、荷電性アミノ酸残
基を含むアミノ酸配列が付加され、発蛍光団色素で標識
されており、且つ分析用試料に含まれる抗原と免疫複合
体を形成する等電点均一化Fab’抗体を提供する第1
の工程と、前記等電点均一化Fab’抗体と、前記抗原
を含む前記分析用試料とを混合し、前記免疫複合体を含
む混合物を得る第2の工程と、前記混合物を担体中で電
気泳動させ、前記混合物を分離させる第3の工程と、前
記第3の工程で分離された前記混合物に、前記発蛍光団
色素を励起可能な励起光を照射して、前記免疫複合体に
蛍光を生じせしめる第4の工程と、前記蛍光を検出する
第5の工程とを含むものである。
抗体は、ヒトIgG1抗体を例にとると、図1の模式
図に示すように、L鎖(light chain、軽鎖)と呼ばれ
るポリペプチド鎖2本と、H鎖(heavy chain、重鎖)
と呼ばれるポリペプチド鎖2本が、Y字型の対をなした
構造を有しており、Fab’抗体とは、VH領域および
CH1領域からなるFd鎖(ヒンジ領域よりN末端側の
H鎖)と、VL領域およびCL領域とからなるL鎖とが
−S−S−結合で連結したFab部分に、ヒンジ領域ま
たはその一部が付加した抗体の断片をいう。
本発明で用いるFab’抗体は、抗原の検出のために
用いることから、分析用試料に含まれる該抗原と特異的
に反応して、免疫複合体を形成するものでなければなら
ない。本発明の定量的検出方法の検出対象である抗原の
種類に関しては、抗原抗体反応を生じるものであればよ
く、特に制限はない。分析用試料に関しても特に制限は
なく、検出対象である抗原を含むものであればよい。
また、本発明で用いるFab’抗体は、荷電性アミノ
酸残基を含むアミノ酸配列が付加されているが、本発明
において荷電性アミノ酸残基を含むアミノ酸配列が付加
されたFab’抗体とは、+または−に荷電する荷電性
アミノ酸残基を含むアミノ酸配列が、Fab’抗体のF
d鎖、L鎖、ヒンジ領域(またはその一部)のいずれか
の部位に少なくとも1つ付加したものをいう。+に荷電
する荷電性アミノ酸としては、アルギニン、リシン等が
挙げられ、−に荷電する荷電性アミノ酸としては、アス
パラギン酸、グルタミン酸等が挙げられる。荷電性アミ
ノ酸残基を含むアミノ酸配列が付加されるFab’抗体
の部位は特に制限されないが、Fab’抗体が抗原と結
合する部位はVH領域およびVL領域に存在しているた
め、抗原抗体反応になるべく影響を与えないという観点
から、荷電性アミノ酸残基を含むアミノ酸配列は、Fa
b’抗体のH鎖またはL鎖にC末端側に付加されている
ことが好ましい。なかでも、L鎖のC末端に隣接するよ
うに付加されていることが好ましい。また、荷電性アミ
ノ酸残基を含むアミノ酸配列のアミノ酸残基の数は1以
上であればよく特に制限されないが、その数は1〜50
であることが好ましい。また、当該アミノ酸配列中の荷
電性アミノ酸残基の数も特に制限されないが、その数は
1〜30であることが好ましい。
Fab’抗体に、荷電性アミノ酸残基を含むアミノ酸
配列を付加する方法に関して特に制限はないが、例え
ば、後述するように、等電点均一化Fab’抗体を発現
する遺伝子を鋳型として、荷電性アミノ酸残基を含むア
ミノ酸配列を付加するためのプライマーを用いてポリメ
ラーゼ連鎖反応(PCR)を行うことにより、荷電性ア
ミノ酸残基を含むアミノ酸配列が付加された等電点均一
化Fab’抗体を発現する遺伝子が得られるので、これ
により形質転換された宿主細胞を培養すればよい。ま
た、等電点均一化Fab’抗体に別途合成した荷電性ア
ミノ酸残基を含むアミノ酸配列を結合させてもよい。
本発明で用いるFab’抗体は、荷電性アミノ酸残基
を含むアミノ酸配列の付加されていることに加えて、等
電点も均一化されている。Fab’抗体に等電点の均一
性を付与する方法については、特に制限はないが、後述
するように、Fab’抗体のCH1領域におけるアミド
基含有アミノ酸(アスパラギンおよび/またはグルタミ
ン)を、システインを除くアミド基非含有アミノ酸に遺
伝子工学的に変異させることにより等電点の均一性を付
与することが好ましい。
本発明で用いるFab’抗体は、荷電性アミノ酸残基
を含むアミノ酸配列が付加され、等電点が均一化されて
いるが、これに加え発蛍光団色素により標識されてい
る。発蛍光団色素としては、ローダミン、フルオレセイ
ン、シアニン、インドシアニン、インドカルボシアニ
ン、ピロニン、ルシファーイエロー、キナクリン、スク
エア酸、クマリン、フルオロアンセニルマレイミド、ア
ントラセン等を挙げることができる。発蛍光団色素とし
てはローダミンおよび/またはシアニンを用いることが
好ましく、ローダミンを用いることがより好ましい。ロ
ーダミンは、メタノール中において、556nmに極大
吸収(モル吸光係数93,000)を有し、また576
nmを極大とする蛍光を発する。ローダミンに関して
は、Handbook of Fluorescent Probes and Research Ch
emicals, 5th Edition MOLECULAR PROBES, INC.,1992
を参照することができる。
更に、本発明においては、アントラセン、ナフタレ
ン、フェナントレン、キノリン、ピレン、ペリレン等に
代表される芳香族複素環式化合物や多環芳香族炭化水素
を発蛍光団色素として用いることも可能である。このよ
うな発蛍光団色素に関しては、例えば、蛍光リン光分
析、西川泰治、平木敬三著、共立出版、1989を参照
することができる。
上記の発蛍光団色素とFab’抗体とを反応させる場
合、発蛍光団色素により標識されるFab’抗体の部位
には特に制限はないが、発蛍光団色素はFab’抗体の
システイン残基のSH基に結合することが好ましく、F
ab’抗体のCH1領域のC末端に隣接するアミノ酸配
列におけるL鎖との結合に関与しないシステイン残基の
SH基に結合させることがより好ましい。
上記の発蛍光団色素とFab’抗体とを反応させる場
合、反応により生じる結合の種類に関しても特に制限は
ないが、結合は、チオエステル結合、ジチオエステル結
合、チオエーテル結合からなる群より選ばれる少なくと
も1つの結合であることが好ましい。このとき、Fa
b’抗体のアミノ酸残基が有するSH基等の官能基に発
蛍光団色素を直接反応させてもよいが、発蛍光団色素中
の官能基(例えば、ハロゲン化メチル基、活性エステル
基、酸塩化物基、酸無水物基、マレイミド基等)に反応
性の官能基と、Fab’抗体のアミノ酸残基が有するS
H基等の官能基に反応性の官能基とをそれぞれ少なくと
も1個有した多官能化合物を介して結合させてもよい。
本発明においては、第1の工程に続く第2の工程とし
て、荷電性アミノ酸残基を含むアミノ酸配列が付加さ
れ、且つ発蛍光団色素で標識された上記の等電点均一化
Fab’抗体と、上記の抗原を含む分析用試料とを混合
し、免疫複合体を含む混合物を得る。
第2の工程において複合体を形成せしめる方法は特に
制限されない。例えば、抗原を含む分析用試料を所望の
濃度で超純水もしくは緩衝液に溶解した溶液と、荷電性
アミノ酸残基を含むアミノ酸配列が付加され発蛍光団色
素で標識された等電点均一化Fab’抗体(以下、場合
により、荷電性の蛍光標識等電点均一化Fab’抗体と
呼ぶことがある)を所望の濃度で超純水もしくは緩衝液
に溶解した溶液を混合し、低温(4℃程度)〜室温(2
5℃程度)で数分〜数十分保持することにより、複合体
を形成させることが可能である。抗原と、荷電性の蛍光
標識等電点均一化Fab’抗体との混合溶液は、さらに
電気泳動用の泳動担体に溶解させる。泳動担体は電気泳
動の種類によって異なり、例えば、スラブゲル等電点電
気泳動を行う場合は、ポリアクリルアミドゲル等が泳動
担体として用いられ、キャピラリー等電点電気泳動を行
う場合は、Pharmalyte(アマシャム ファルマシアバイ
オテク社製)等の両性担体が用いられる。なお、キャピ
ラリー等電点電気泳動を行う場合は、電気浸透流やタン
パク質の吸着を防ぐために、ヒドロキシプロピルメチル
セルロース等をさらに添加してもよい。
第3の工程では、第2の工程で得られた混合物を担体
中で電気泳動させ、該混合物を分離させる。
第3の工程において実施する電気泳動の方法に関して
は、特に制限はないが、検出精度が高いことから等電点
電気泳動法によることが好ましい。また、免疫複合体が
微量しか存在しない場合であっても検出が可能なことか
ら、キャピラリー電気泳動法を用いることが好ましい。
また、マイクロセル電気泳動法やチップ電気泳動法を用
いることも可能である。本発明においては、微量の免疫
複合体を高精度で検出が可能なキャピラリー等電点電気
泳動法を用いることがより好ましい。
キャピラリー電気泳動を行う場合のキャピラリーとし
ては、例えば、ソーダ石灰ガラス等からなり、内径が数
〜百μm程度、外径が数百μm程度、長さが数十〜百c
m程度のものが用いられる。なお、これらの寸法、特に
長さは、測定しようとする免疫複合体の種類等によって
適宜選択される。
印加する電圧に関しても特に制限はなく、電気泳動の
種類、測定しようとする免疫複合体の種類や濃度、泳動
担体の形状や長さ、用いる電気泳動装置の種類等により
適宜選択が可能である。
第4の工程においては、第3の工程で分離された混合
物に、発蛍光団色素を励起可能な励起光を照射して、免
疫複合体に蛍光を生じせしめる 励起光の種類に関して特に制限はない。発蛍光団色素
としてローダミンを用いる場合は、アルゴンレーザー、
半導体励起YAGレーザー、ヘリウムネオンレーザー等
を好適に用いることができる。
第5の工程では、第4の工程で生じた蛍光を検出す
る。蛍光を掲出する手段としては蛍光検出が可能な光検
出器を用いることができる。光検出器としては、例え
ば、デンシトメータ(例えば、島津製作所製、島津二波
長フライングスポットスキャニングデンシトメータCS
9300PC)を好適に用いることができる。
光検出器により蛍光強度が測定されるが、用いた発蛍
光団色素に関して、濃度−蛍光強度との関係をあらかじ
め測定して得られたデータに基づいて、検出した複合体
の濃度を定量化することが可能である。
以上説明したように、本発明においては用いられる抗
体は、等電点が均一であるため、電気泳動の結果複数の
ピークが観察された場合は、その複数のピークは抗原の
等電点の不均一性に起因するものであると特定すること
ができる。また、本発明において用いられる抗体は、発
蛍光団色素等により蛍光標識されているため高精度の検
出が可能である。さらに、本発明において用いられる抗
体は、荷電性アミノ酸残基を含むアミノ酸配列が付加さ
れているために、荷電性アミノ酸残基の種類および/ま
たは導入量を変化させることにより、等電点の均一性を
保ったまま等電点を所望の値に変化させることができる
ため、測定対象である抗原の等電点と抗体の等電点が近
い場合であっても、電気泳動の結果、免疫複合体と、余
剰の抗原および/または抗体がほぼ等しい移動時間で検
出されることがなく、精度の高い検出が可能になる。
上述したShimura Kおよび Karger BLの方法で用いら
れるFab’抗体も、化学変性することにより電荷を付
与し等電点を抗体の等電点と異なるようにすることも不
可能ではないが、化学変性のために使用するFab’抗
体の官能基(例えば、アミノ基)は、抗体中にランダム
に分布しているため均一な変性が不可能であり、また、
変性によって等電点の均一性が損なわれることも考えら
れる。したがって、Shimura Kおよび Karger BLの方法
では、測定対象である抗原の等電点と蛍光標識された抗
体の等電点が近い場合、精度の高い検出をすることが不
可能である。
本発明においては、抗体の定量的検出に用いる荷電性
の蛍光標識等電点均一化Fab’抗体は、以下に述べる
遺伝子工学的手法による第1〜第5の製造方法のいずれ
かにより製造することが好ましい。
遺伝子工学的手法による第1の製造方法は、Fab’
抗体のVH領域、CH1領域、および該CH1領域のC
末端に隣接しL鎖との結合に関与しないシステイン残基
を含むアミノ酸配列をコードするFd鎖遺伝子を提供す
る第1の工程と、前記Fd鎖遺伝子において、前記CH
1領域のアミド基含有アミノ酸残基をコードするコドン
の少なくとも一つを、システインを除くアミド基非含有
アミノ酸残基をコードするコドンに部位特異的変異させ
て、改変Fd鎖遺伝子を得る第2の工程と、前記改変F
d鎖遺伝子と、前記Fab’抗体のL鎖をコードするL
鎖遺伝子とを発現可能な状態で連結させ、改変Fab’
抗体発現遺伝子を得る第3の工程と、前記改変Fab’
抗体発現遺伝子を、前記L鎖のC末端に隣接して荷電性
アミノ酸残基を含むアミノ酸配列が発現するように改変
し、荷電性付与改変Fab’抗体発現遺伝子を得る第4
の工程と、前記荷電性付与改変Fab’抗体発現遺伝子
で宿主細胞を形質転換し、得られた形質転換体を培養す
ることにより、L鎖のC末端に隣接して荷電性アミノ酸
残基を含むアミノ酸配列が付加され、且つCH1領域の
C末端に隣接してL鎖との結合に関与しないシステイン
残基を含むアミノ酸配列が形成された、等電点均一化F
ab’抗体を得る第5の工程と、前記第5の工程で得ら
れた等電点均一化Fab’抗体におけるL鎖との結合に
関与しないシステイン残基に発蛍光団色素を結合させる
第6の工程とを含む製造方法である。
第1の工程において、Fab’抗体のVH領域、CH
1領域、および該CH1領域のC末端に隣接しL鎖との
結合に関与しないシステイン残基を含むアミノ酸配列を
コードするFd鎖遺伝子を提供する方法には特に制限は
なく、例えば、以下に述べるような方法により得ること
ができる。
すなわち、抗原で動物を免疫した後、例えば、Autibo
dies : A Laboratory Manual, Chapter 6, Cold Spring
harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY, 1988に
記載の方法に準じて、モノクローナル抗体生産細胞(ハ
イブリドーマ)を調製し、このモノクローナル抗体生産
細胞から、例えば、BioMag mRNA purification kit (Pe
rSeptive社)のプロトコールに従って全mRNAを抽出
して、このmRNAを用いて1本鎖cDNAを合成する
(例えば、アマシャム ファルマシアバイオテク社製、
cDNA合成システム・プラスを好適に使用することが
できる)。
次いで、この1本鎖cDNAを鋳型にして、CH1領
域のC末端に隣接する部分にL鎖との結合に関与しない
システイン残基を含むアミノ酸配列を導入するように設
計したFd鎖遺伝子単離用のDNAプライマーを用いて
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行うことによりFd
鎖遺伝子を得ることができる。このFd鎖遺伝子単離用
のDNAプライマーは、例えば、Kabatらの分類した可
変領域(V領域)と定常領域(C領域)の核酸塩基配列
(Sequences of Proteins of Immunological Interest
5th ed., Public Health Service, NIH, Washington D
C, 1991)を参考にすることができる。また、CH1領
域のC末端に隣接する部分にL鎖との結合に関与しない
システイン残基を含むアミノ酸配列を導入するためのプ
ライマーの設計には、Hoogenboom HR et al. (Nucleic
Acids Res 1991 Aug 11;19(15):4133-7) , Kang AS et
al. (Methods (San Diego) (1991), 2(2), 111 -18)等
の各種文献を参考にすることができる。
CH1領域のC末端に隣接する部分に導入するアミノ
酸配列のアミノ酸残基の数は1以上であればよく特に制
限されないが、その数は1〜30であることが好まし
い。また、当該アミノ酸配列中のシステイン残基の数も
特に制限されないが、その数は1〜3であることが好ま
しく、1であることがより好ましい。
なお、モノクローナル抗体生産細胞を調製するにあた
り、動物を免疫する抗原の種類、および抗原で免疫され
る動物の種類には特に制限はない。抗体遺伝子として
は、例えば、マウス、ラット、ウサギ由来のものが使用
できる。抗体のクラスおよびサブクラスについても特に
制限はないが、全抗体中に占める割合が多いことからI
gG抗体を構成する配列を用いることが好ましい。
第2の工程では、前記Fd鎖遺伝子において、前記C
H1領域のアミド基含有アミノ酸残基をコードするコド
ンの少なくとも一つを、システインを除くアミド基非含
有アミノ酸残基をコードするコドンに部位特異的変異さ
せるが、この変異の方法については特に制限はない。例
えば、遺伝子のヌクレオチド配列の変異法として多用さ
れる部位特異的突然変異誘発(site-specific mutagene
sis)が適用可能である。部位特異的突然変異誘発の方
法に関しては、例えば、Sambrook et al., Molecular C
loning : A Laboratory Manual 2nd Edition, 15.2- 1
5.113, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbo
r, NY, 1989を参考にすることができる。
上記の部位特異的変異は、CH1領域のアミド基含有
アミノ酸残基の少なくとも一つをシステインを除くアミ
ド基非含有アミノ酸残基に置換するように設計されたC
H1領域増幅用プライマーを用いて、ポリメラーゼ連鎖
反応により実施されることが好ましい。このCH1領域
増幅用プライマーは、Fd鎖のCH1領域における少な
くとも一つのアミド基含有アミノ酸残基を含む領域をコ
ードする塩基配列に相補的な塩基配列を有するプライマ
ーであって、該塩基配列におけるアミド基含有アミノ酸
をコードするコドンに相補的なコドンの少なくとも一つ
が、システインを除くアミド基非含有アミノ酸をコード
するコドンに相補的なコドンに置換されたプライマーで
ある。
上記のアミド基含有アミノ酸残基とは、側鎖にアミド
基を有するアミノ酸残基を意味し、このようなアミノ酸
残基としては、アスパラギン残基およびグルタミン残基
が挙げられる。第2の工程においては、これらのアミノ
酸残基をコードするコドンの少なくとも一つを、システ
インを除くアミド基非含有アミノ酸残基をコードするコ
ドンに部位特異的変異させる。ここで、アミド基非含有
アミノ酸残基とは、側鎖にアミド基を有しないアミノ酸
残基を意味する。システインを除くアミド基非含有アミ
ノ酸残基としては、天然アミノ酸残基および非天然アミ
ノ酸残基のいずれも適用可能である。天然アミノ酸残基
としては、グリシン残基、アラニン残基、バリン残基、
ロイシン残基、イソロイシン残基、セリン残基、トレオ
ニン残基、メチオニン残基、アスパラギン酸残基、グル
タミン酸残基、リシン残基、アルギニン残基、フェニル
アラニン残基、チロシン残基、プロリン残基、ヒスチジ
ン残基、およびトリプトファン残基が挙げられる。ま
た、非天然アミノ酸残基としては、天然アミノ酸の側鎖
を芳香環等で置換したアミノ酸、化学合成したアミノ酸
等の人工アミノ酸の残基等が挙げられる。
本発明においては、アミド基含有アミノ酸残基の少な
くとも一つをシステインを除くアミド基非含有アミノ酸
残基に変異させることが好ましいが、アミド基非含有ア
ミノ酸残基としてシステイン残基を用いた場合は、得ら
れるFab’抗体の等電点は均一になるものの、L鎖と
の結合に関与しないシステイン残基が多数導入されるこ
ととなり、システイン残基を介して発蛍光団色素を結合
させた場合、発蛍光団色素の数と位置が不特定となり、
複数の等電点を示す混合物となってしまう。このため
に、本発明においては、アミド基非含有アミノ酸残基と
してシステイン残基を用いないことが好ましい。
本発明においては、得られる等電点均一化Fab’抗
体の等電点の均一性が優れることから、上記のアミド基
含非有アミノ酸残基は、アスパラギン酸残基、グルタミ
ン酸残基、グリシン残基、またはセリン残基であること
が好ましい。また、用いるFab’抗体が、カバットの
番号付けによるH鎖第162番にアスパラギン残基を有
するFab’抗体であって、このアスパラギン残基をシ
ステインを除くアミド基非含有アミノ酸残基に部位特異
的変異させることが好ましい。本発明においては、カバ
ットの番号付けによるH鎖第162番のアスパラギン残
基を、アスパラギン酸残基に変異させることが更に好ま
しい。カバットの番号付けによるH鎖第162番にアス
パラギン残基を有するFab’抗体としては、マウスI
gG抗体由来のFab’抗体や、ヒトIgG抗体由来の
Fab’抗体が挙げられる。マウスIgG抗体およびヒ
トIgG抗体には様々なサブクラスが存在するが、サブ
クラスが異なるものであっても、これらの抗体由来のF
ab’抗体はカバットの番号付けによるH鎖第162番
にアスパラギン残基を有している。ここで、カバットの
番号付けによるH鎖162番のアミノ酸残基とは、Fa
b’抗体のH鎖(Fd鎖)における162番目のアミノ
酸残基を意味し、この162番は、Elvin A Kabatによ
る、Sequences of Proteins of Immunological Interes
t (Paperback 5th edition (September 1992)) に記載
の方法に基づいて特定されるアミノ酸残基の位置を意味
する。なお、Fab’抗体のカバットの番号付けによる
H鎖第162番はFd鎖のCH1領域中に存在する。
第3の工程において、上述した第2の工程により得ら
れた改変Fd鎖遺伝子を、Fab’抗体のL鎖をコード
するL鎖遺伝子と発現可能な状態で連結させ、改変Fa
b’抗体発現遺伝子を得る。
Fab’抗体のL鎖をコードするL鎖遺伝子は、第1
の工程においてFd鎖遺伝子を得る方法と同様の方法に
より得ることができる。すなわち、抗原で動物を免疫し
た後、モノクローナル抗体生産細胞(ハイブリドーマ)
を調製し、このモノクローナル抗体生産細胞から、全m
RNAを抽出して、このmRNAを用いて1本鎖cDN
Aを合成し、このcDNAを鋳型としてL鎖遺伝子単離
用DNAプライマーを用いてPCRを行えばよい。L鎖
遺伝子は、第1の工程においてFd鎖遺伝子を単離する
のと同時に得ることもできる。この場合は、第1の工程
において、Fd鎖遺伝子単離用DNAプライマーとL鎖
遺伝子単離用DNAプライマーを併用し、cDNAを鋳
型としてPCRを行えばよい。
本発明においては、Fd鎖遺伝子におけるCH1領域
のアミド基含有アミノ酸残基をコードするコドンの少な
くとも一つをシステインを除くアミド基非含有アミノ酸
残基をコードするコドンに部位特異的変異させることに
加え、上記のようにして得られたL鎖遺伝子における、
CL領域のアミド基含有アミノ酸残基(アスパラギン残
基および/またはグルタミン残基)をコードするコドン
の少なくとも一つを、システインを除くアミド基非含有
アミノ酸残基をコードするコドンに部位特異的変異させ
てもよい。この部位特異的変異は、改変Fd鎖遺伝子と
発現可能な状態で連結させる前もしくは後に行うことが
できる。この場合、用いるFab’抗体が、カバットの
番号付けによるL鎖第157番、L鎖第161番、L鎖
第190番(いずれもCL領域中に存在)の少なくとも
1つにアスパラギン残基を有するFab’抗体であるこ
とが好ましく、このアスパラギン残基の少なくとも一つ
を、システインを除くアミド基非含有アミノ酸残基に部
位特異的変異させることが好ましい。なかでも、カバッ
トの番号付けによるL鎖第161番のアスパラギン残基
を、システインを除くアミド基非含有アミノ酸残基に部
位特異的変異させることが好ましく、L鎖第161番の
アスパラギン残基をアスパラギン酸残基に変異させるこ
とが更に好ましい。部位特異的変異の方法に関しては、
上記のように、Sambrook et al., Molecular Cloning :
A Laboratory Manual 2nd Edition, 15.2- 15.113, Co
ld Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, NY, 19
89を参考にすることができる。また、CH1領域の場合
と同様に、CL領域の部位特異的変異は、CL領域のア
ミド基含有アミノ酸残基の少なくとも一つをシステイン
を除くアミド基非含有アミノ酸残基に置換するCL領域
増幅用プライマーを用いて、ポリメラーゼ連鎖反応によ
り実施されることが好ましい。
このようにして得られたL鎖遺伝子と上記の改変Fd
鎖遺伝子とを、リンカー塩基配列等を介して連結させる
ことにより、両遺伝子が発現可能な改変Fab’抗体発
現遺伝子を得ることができる。より詳しくは、L鎖遺伝
子、改変Fd鎖遺伝子およびリンカー塩基配列を、例え
ば低融点アガロースゲル電気泳動で精製し、適当な制限
酵素を用いてこれらを消化させ、改変Fd鎖遺伝子、リ
ンカー塩基配列、L鎖遺伝子の順番に並ぶようにしてラ
イゲーションすることにより、L鎖遺伝子と改変Fd鎖
遺伝子とが発現可能な状態で連結した改変Fab’抗体
発現遺伝子を得ることができる。なお、リンカー塩基配
列は、例えば、タンパク質発現用プラスミドベクターを
鋳型とし、リンカー塩基配列単離用のDNAプライマー
を用いてPCRにより得ることができる。
上記の第3の工程に続く第4の工程において、前記改
変Fab’抗体発現遺伝子を、L鎖のC末端に隣接して
荷電性アミノ酸残基を含むアミノ酸配列が発現するよう
に改変し、荷電性付与改変Fab’抗体発現遺伝子を得
る。
この改変の方法は特に制限されないが、例えば、改変
Fab’抗体発現遺伝子を鋳型として、Fab’抗体の
L鎖のC末端に隣接する部分に荷電性アミノ酸残基を含
むアミノ酸配列を付加するように設計されたプライマー
を用いてPCRを行うことにより得ることが可能であ
る。
第5の工程においては、前記荷電性付与改変Fab’
抗体発現遺伝子で宿主細胞を形質転換し、得られた形質
転換体を培養することにより、L鎖のC末端に隣接して
荷電性アミノ酸残基を含むアミノ酸配列が付加され、且
つCH1領域のC末端に隣接してL鎖との結合に関与し
ないシステイン残基を含むアミノ酸配列が形成された、
等電点均一化Fab’抗体を得る。
すなわち、第4の工程で得られた荷電性付与改変Fa
b’抗体発現遺伝子を適当なベクターに連結し、それを
宿主細胞に導入し形質転換する。ベクターとしては、プ
ラスミドに由来するもの、ファージに由来するもの、コ
スミド等様々な公知のベクターを使用することができ
る。宿主細胞としては、例えば、原核細胞すなわち、大
腸菌(SOLR,JM109,XL1-BlueKRF',BL21(DE3),HB2151)、
枯草菌、バチルス・ブレビス(Bacillus brevis)菌、
真核細胞すなわち、酵母、動物由来の細胞(HB101、CHO
細胞、 COS 細胞、COP-5 、 C127、 3T3細胞等)を挙げ
ることができる。宿主細胞としては、Fab’抗体が分
解されにくい点から、タンパク質分解酵素非生産菌を使
用することが好ましい。
ベクターを宿主細胞に導入する方法としては、マイク
ロインジェクション法、エレクトロポレーション法等を
含む公知の方法が適用可能である。形質転換体の培養方
法に関しても特に制限はなく、形質転換体の培養に適し
た培地を選択すればよい。また、形質転換体の培養によ
り生産された等電点均一化Fab’抗体を抽出する方法
としては、細胞をホモジナイズする方法、SDS等の界
面活性剤や酵素を用いて細胞膜を溶解させる方法、超音
波処理等がある。抽出された等電点均一化Fab’抗体
の精製法としては、例えば、超遠心や密度勾配遠心を利
用した遠心分離法、アフィニティーカラム等を利用した
カラム分離法、ポリアクリルアミドゲル等を利用したゲ
ル分離法等が挙げられる。
第6の工程では、第5の工程で得られた等電点均一化
Fab’抗体のL鎖との結合に関与しないシステイン残
基に発蛍光団色素を結合させる。
発蛍光団色素としては上述したようなものを用いるこ
とができ、発蛍光団色素と等電点均一化Fab’抗体と
を反応させたときに生じる結合としては、上述のよう
に、チオエステル結合、ジチオエステル結合、チオエー
テル結合からなる群より選ばれる少なくとも1つの結合
であることが好ましい。このとき、等電点均一化Fa
b’抗体のCH1領域のC末端に隣接するアミノ酸配列
中のシステイン残基のSH基に発蛍光団色素を直接反応
させてもよいが、発蛍光団色素中の官能基に反応性の官
能基と、等電点均一化Fab’抗体の前記SH基に反応
性の官能基とをそれぞれ少なくとも1個有した多官能化
合物を介して結合させてもよい。
以上述べた遺伝子工学的手法による第1の製造方法で
は、第3の工程において改変Fd鎖遺伝子とL鎖遺伝子
を発現可能な状態で連結させた後に、第4の工程におい
て、L鎖のC末端に隣接して荷電性アミノ酸残基を含む
アミノ酸配列が発現するように改変したが、改変Fd鎖
遺伝子とL鎖遺伝子を連結させる前に、L鎖のC末端に
隣接して荷電性アミノ酸残基を含むアミノ酸配列が発現
するように、L鎖遺伝子を改変してもよい(この手法
を、遺伝子工学的手法による第2の製造方法と呼ぶ)。
すなわち、遺伝子工学的手法による第2の製造方法に
おいては、第1の工程において、Fab’抗体のVH領
域、CH1領域、および該CH1領域のC末端に隣接し
L鎖との結合に関与しないシステイン残基を含むアミノ
酸配列をコードするFd鎖遺伝子を提供し、第2の工程
において、前記Fd鎖遺伝子の前記CH1領域のアミド
基含有アミノ酸残基をコードするコドンの少なくとも一
つを、システインを除くアミド基非含有アミノ酸残基を
コードするコドンに部位特異的変異させて、改変Fd鎖
遺伝子を得る。
この第1の工程および第2の工程は、上記の遺伝子工
学的手法による第1の製造方法における第1の工程およ
び第2の工程と同様に行うことができる。なお、CH1
領域のC末端に隣接する部分に導入するアミノ酸配列の
アミノ酸残基の数の好適な範囲、および当該アミノ酸配
列中のシステイン残基の数の好適な範囲、抗原や抗体の
種類は、遺伝子工学的手法による第1の製造方法の第1
の工程に記載と同様である。また、用いることのできる
アミド基含有アミノ酸残基およびアミド基非含有アミノ
酸残基の種類や好適な残基は、遺伝子工学的手法による
第1の製造方法の第2の工程に記載の方法と同様であ
る。
第3の工程において、Fab’抗体のL鎖をコードす
るL鎖遺伝子を提供するが、L鎖遺伝子は、上記の遺伝
子工学的手法による第1の製造方法における第3の工程
に記載の方法と同様にして得ることができる。また、L
鎖遺伝子は、本製造方法の第1の工程においてFd鎖遺
伝子を得るのと同時に得ることもできる。
第3の工程に続く第4の工程においては、L鎖遺伝子
を、L鎖のC末端に隣接して荷電性アミノ酸残基を含む
アミノ酸配列が発現するように改変し、荷電性付与L鎖
遺伝子を得る。この工程における改変は、上記の遺伝子
工学的手法による第1の製造方法における第4の工程に
記載の方法と同様に行うことができる。なお、L鎖遺伝
子における、CL領域のアミド基含有アミノ酸残基をコ
ードするコドンの少なくとも一つを、システインを除く
アミド基非含有アミノ酸残基をコードするコドンに部位
特異的変異させてもよい。この部位特異的変異は第3の
工程において行うこともできる。
第5の工程においては、上記改変Fd鎖遺伝子と、上
記荷電性付与L鎖遺伝子を発現可能な状態で連結させ、
荷電性付与改変Fab’抗体発現遺伝子を得る。この工
程において、発現可能な状態で連結させる条件に関して
は、上記の遺伝子工学的手法による第1の製造方法にお
ける第3の工程に記載の方法と同様である。
次いで、第6の工程において、前記荷電性付与改変F
ab’抗体発現遺伝子で宿主細胞を形質転換し、得られ
た形質転換体を培養することにより、L鎖のC末端に隣
接して荷電性アミノ酸残基を含むアミノ酸配列が付加さ
れ、且つCH1領域のC末端に隣接してL鎖との結合に
関与しないシステイン残基を含むアミノ酸配列が形成さ
れた、等電点均一化Fab’抗体を得て、第7の工程に
おいて、等電点均一化Fab’抗体におけるL鎖との結
合に関与しないシステイン残基に発蛍光団色素を結合さ
せる。この第6の工程および第7の工程は、上記の遺伝
子工学的手法による第1の製造方法における第5の工程
および第6の工程にそれぞれ記載の方法と同様である。
以上述べた遺伝子工学的手法による第1および第2の
製造方法では、Fd鎖遺伝子の部位特異的変異を行った
後に、L鎖遺伝子と連結を行ったが、遺伝子工学的手法
による第3の製造方法として、Fd鎖遺伝子とL鎖遺伝
子とを連結した後に、Fd鎖遺伝子の部位特異的変異を
行うことも可能である。
すなわち、まず、第1の工程として、Fab’抗体の
VH領域、CH1領域、および該CH1領域のC末端に
隣接しL鎖との結合に関与しないシステイン残基を含む
アミノ酸配列をコードするFd鎖遺伝子と、該Fab’
抗体のL鎖をコードするL鎖遺伝子とを提供する工程を
実施し、それに続く第2の工程において、このFd鎖遺
伝子とL鎖遺伝子とを発現可能な状態で連結させ、Fa
b’抗体発現遺伝子を得る。ここで、Fd鎖遺伝子は、
上述の遺伝子工学的手法による第1の製造方法における
第1の工程に記載の方法と同様にして得ることができ、
L鎖遺伝子は、遺伝子工学的手法による第1の製造方法
における第3の工程に記載の方法と同様にして得ること
ができる。Fd鎖遺伝子およびL鎖遺伝子を発現可能な
状態で連結させる方法も、遺伝子工学的手法による第1
の製造方法における第3の工程に記載の方法と同様であ
る。すなわち、タンパク質発現用プラスミドベクターを
鋳型とし、リンカー塩基配列単離用のDNAプライマー
を用いてリンカー塩基配列を得て、このリンカー塩基配
列とFd鎖遺伝子およびL鎖遺伝子をライゲーションす
ればよい。なお、CH1領域のC末端に隣接する部分に
導入するアミノ酸配列のアミノ酸残基の数の好適な範
囲、および当該アミノ酸配列中のシステイン残基の数の
好適な範囲も、遺伝子工学的手法による第1の製造方法
と同様である。
第3の工程では、前記Fab’抗体発現遺伝子を、前
記L鎖のC末端に隣接して荷電性アミノ酸残基を含むア
ミノ酸配列が発現するように改変し、且つ、前記Fa
b’抗体発現遺伝子における前記CH1領域のアミド基
含有アミノ酸残基をコードするコドンの少なくとも一つ
を、システインを除くアミド基非含有アミノ酸残基をコ
ードするコドンに部位特異的変異させて、荷電性付与改
変Fab’抗体発現遺伝子を得る。
ここで、L鎖のC末端に隣接して荷電性アミノ酸残基
を含むアミノ酸配列が発現するようにする改変と、CH
1領域のアミド基含有アミノ酸残基をコードするコドン
の少なくとも一つを、システインを除くアミド基非含有
アミノ酸残基をコードするコドンに部位特異的変異する
改変とを行う順には特に制限はない。
例えば、Fab’抗体発現遺伝子を、L鎖のC末端に
隣接して荷電性アミノ酸残基を含むアミノ酸配列が発現
するように改変し、荷電性付与Fab’抗体発現遺伝子
を得て、該荷電性付与Fab’抗体発現遺伝子におけ
る、CH1領域のアミド基含有アミノ酸残基をコードす
るコドンの少なくとも一つを、システインを除くアミド
基非含有アミノ酸残基をコードするコドンに部位特異的
変異し、荷電性付与改変Fab’抗体発現遺伝子を得て
もよく、Fab’抗体発現遺伝子における、CH1領域
のアミド基含有アミノ酸残基をコードするコドンの少な
くとも一つを、システインを除くアミド基非含有アミノ
酸残基をコードするコドンに部位特異的変異し、改変F
ab’抗体発現遺伝子を得て、該改変Fab’抗体発現
遺伝子を、L鎖のC末端に隣接して荷電性アミノ酸残基
を含むアミノ酸配列が発現するように改変し、荷電性付
与改変Fab’抗体発現遺伝子を得てもよい。
第3の工程における、部位特異的変異の方法は、上記
の遺伝子工学的手法による第1の製造方法における第2
の工程に記載の方法と同様に行うことができる。用いる
ことのできるアミド基含有アミノ酸およびアミド基非含
有アミノ酸残基の種類や好適な残基に関しても、上記の
遺伝子工学的手法による第1の製造方法と同様である。
また、L鎖のC末端に隣接して荷電性アミノ酸残基を含
むアミノ酸配列が発現するようにする改変は、上記の遺
伝子工学的手法による第1の製造方法における第4の工
程に記載の方法と同様に行うことができる。
なお、第3の工程において、Fab’抗体発現遺伝子
におけるCL領域のアミド基含有アミノ酸残基をコード
するコドンの少なくとも一つを、システインを除くアミ
ド基非含有アミノ酸残基をコードするコドンに部位特異
的変異させてもよい。この部位特異的変異は第1の工程
において行うこともできる。
第4の工程においては、第3の工程において得られた
荷電性付与改変Fab’抗体発現遺伝子で宿主細胞を形
質転換し、得られた形質転換体を培養することにより、
L鎖のC末端に隣接して荷電性アミノ酸残基を含むアミ
ノ酸配列が付加され、且つCH1領域のC末端に隣接し
てL鎖との結合に関与しないシステイン残基を含むアミ
ノ酸配列が形成された、等電点均一化Fab’抗体を得
る。このとき用いられる宿主細胞の種類、宿主細胞に導
入されるベクターの種類、ベクターを宿主細胞に導入す
る方法、および形質転換体の培養により生産された等電
点均一化Fab’抗体を抽出する方法に関しては、上記
の遺伝子工学的手法による第1の製造方法における第5
の工程に記載の方法と同様である。
第5の工程においては、第4の工程で得られた等電点
均一化Fab’抗体におけるL鎖との結合に関与しない
システイン残基に発蛍光団色素を結合させる。用いられ
る発蛍光団色素および好適なものの種類、システイン残
基と発蛍光団色素との結合に関しては、上記の遺伝子工
学的手法による第1の製造方法における第6の工程に記
載の方法と同様である。
上記の遺伝子工学的手法による第1〜第3の製造方法
に加えて、以下に述べる遺伝子工学的手法による第4の
製造方法も適用可能である。
すなわち、まず、第1の工程として、第1のFab’
抗体のCH1領域、および該CH1領域のC末端に隣接
しL鎖との結合に関与しないシステイン残基を含むアミ
ノ酸配列をコードするCH1遺伝子と、該第1のFa
b’抗体のCL領域をコードするCL遺伝子とを提供す
る工程を行う。
第1の工程におけるCH1遺伝子は、例えば、上述の
ように、モノクローナル抗体生産細胞(ハイブリドー
マ)細胞から、全mRNAを抽出して、このmRNAを
用いて1本鎖cDNAを合成し、このcDNAを鋳型と
してCH1領域をカバーするプライマーであって、CH
1領域のC末端に隣接する部分にL鎖との結合に関与し
ないシステイン残基を含むアミノ酸配列を導入するため
のプライマーを用いてPCRを行うことにより得ること
ができる。CH1遺伝子はCH1領域を含む領域をコー
ドするものであればよく、CH1領域のみをコードする
ものでも、CH1領域とVH領域をコードするものでも
よい。また、CH1領域とヒンジ領域をコードするもの
でも、CH1領域とVH領域とヒンジ領域とをコードす
るものでもよい。なお、VH領域およびヒンジ領域に関
してはその少なくとも一部をコードすればよい。なお、
CH1領域のC末端に隣接する部分に導入するアミノ酸
配列のアミノ酸残基の数の好適な範囲、および当該アミ
ノ酸配列中のシステイン残基の数の好適な範囲、抗原や
抗体の種類は、遺伝子工学的手法による第1の製造方法
の第1の工程に記載の方法と同様である。
第1の工程におけるCL遺伝子は、上記のCH1遺伝
子を得るのと同時にまたは別に、モノクローナル抗体生
産細胞細胞由来のmRNAを用いて合成された1本鎖c
DNAを鋳型として、CL遺伝子単離用プライマーを用
いてPCRを行うことにより得ることができる。
なお、第1の工程で得られたCL遺伝子におけるアミ
ド基含有アミノ酸残基をコードするコドンの少なくとも
一つを、システインを除くアミド基非含有アミノ酸残基
をコードするコドンに部位特異的変異させてもよい。
上記の第1の工程に続く第2の工程では、前記CH1
遺伝子において、CH1領域のアミド基含有アミノ酸残
基をコードするコドンの少なくとも一つを、システイン
を除くアミド基非含有アミノ酸残基をコードするコドン
に部位特異的変異させて、改変CH1遺伝子を得る。
この部位特異的変異の方法は、上記の遺伝子工学的手
法による第1の製造方法における第2の工程に記載の方
法と同様に行うことができる。用いることのできるアミ
ド基含有アミノ酸残基およびアミド基非含有アミノ酸残
基の種類や好適な残基に関しても、上記の遺伝子工学的
手法による第1の製造方法と同様である。
次いで、第3の工程において、前記改変CH1遺伝子
を制限酵素で切断しCH1領域をコードする遺伝子を含
む遺伝子断片を得る。ここで用いられる制限酵素に関し
ては特に制限はないが、制限酵素としては、例えば、Ba
mHI、BglIを挙げることができる。
第4の工程において、第2のFab’抗体のVH領域
をコードするVH遺伝子と、該第2のFab’抗体のV
L領域をコードするVL遺伝子とを提供する。ここで第
2のFab’抗体のVH遺伝子とVL遺伝子は、例え
ば、第2のFab’抗体が由来する抗体のmRNAを用
いて1本鎖cDNAを合成し、このcDNAを鋳型とし
てVH鎖遺伝子単離用DNAプライマーおよびVL遺伝
子単離用DNAプライマーを用いてPCRを行うことに
より得ることができる。なお、第2のFab’抗体は、
そのクラスやサブクラスが第1のFab’抗体のものと
異なっていても同一であってもよい。例えば、第2のF
ab’抗体がマウスIgA抗体であり、第1のFab’
抗体がマウスIgG抗体であってもよい。更に、第2の
Fab’抗体が由来する動物種は、第1のFab’抗体
のものと異なっていても同一であってもよい。例えば、
第2のFab’抗体がヒトIgG抗体であり、第1のF
ab’抗体がマウスIgG抗体であってもよい。
第4の工程に続く第5の工程においては、上記遺伝子
断片、上記CL遺伝子、上記VH遺伝子、および上記V
L遺伝子を発現可能な状態で連結し、改変Fab’抗体
発現遺伝子を得る。発現可能な状態で連結させる方法
は、遺伝子工学的手法による第1の製造方法における第
3の工程に記載の方法と同様である。
第6の工程として、前記改変Fab’抗体発現遺伝子
を、前記Fab’抗体のL鎖のC末端に隣接して荷電性
アミノ酸残基を含むアミノ酸配列が発現するように改変
し、荷電性付与改変Fab’抗体発現遺伝子を得る。第
6の工程における改変は、上記の遺伝子工学的手法によ
る第1の製造方法における第4の工程に記載の方法と同
様に行うことができる。
次いで第7の工程において、前記荷電性付与改変Fa
b’抗体発現遺伝子で宿主細胞を形質転換し、得られた
形質転換体を培養することにより、L鎖のC末端に隣接
して荷電性アミノ酸残基を含むアミノ酸配列が付加さ
れ、且つCH1領域のC末端に隣接してL鎖との結合に
関与しないシステイン残基を含むアミノ酸配列が形成さ
れた、等電点均一化Fab’抗体を得る。
このとき用いられる宿主細胞の種類、宿主細胞に導入
されるベクターの種類、ベクターを宿主細胞に導入する
方法、および形質転換体の培養により生産された等電点
均一化Fab’抗体を抽出する方法に関しては、上記の
遺伝子工学的手法による第1の製造方法における第5の
工程に記載の方法と同様である。
第8の工程において、第7の工程で得られた等電点均
一化Fab’抗体におけるL鎖との結合に関与しないシ
ステイン残基に発蛍光団色素を結合させる。用いられる
発蛍光団色素および好適なものの種類、システイン残基
と発蛍光団色素との結合に関しては、上記の遺伝子工学
的手法による第1の製造方法における第6の工程に記載
の方法と同様である。
以上述べた遺伝子工学的手法による第4の製造方法で
は、第5の工程において改変CH1遺伝子の遺伝子断
片、CL遺伝子、VH遺伝子およびVL遺伝子を発現可
能な状態で連結させた後に、第6の工程において、CL
領域のC末端に隣接して荷電性アミノ酸残基を含むアミ
ノ酸配列が発現するように改変したが、CL遺伝子をそ
の他の遺伝子(または遺伝子断片)と連結させる前に、
L鎖のC末端に隣接して荷電性アミノ酸残基を含むアミ
ノ酸配列が発現するように改変してもよい(この手法
を、遺伝子工学的手法による第5の製造方法と呼ぶ)。
すなわち、遺伝子工学的手法による第5の製造方法に
おいては、第1の工程において、第1のFab’抗体の
CH1領域、および該CH1領域のC末端に隣接しL鎖
との結合に関与しないシステイン残基を含むアミノ酸配
列をコードするCH1遺伝子と、該第1のFab’抗体
のCL領域をコードするCL遺伝子とを提供し、第2の
工程では、前記CH1遺伝子において、CH1領域のア
ミド基含有アミノ酸残基をコードするコドンの少なくと
も一つを、システインを除くアミド基非含有アミノ酸残
基をコードするコドンに部位特異的変異させて、改変C
H1遺伝子を得る。さらに、第3の工程において、前記
改変CH1遺伝子を制限酵素で切断しCH1領域をコー
ドする遺伝子を含む遺伝子断片を得る。
遺伝子工学的手法による第5の製造方法における第1
〜第3の工程は、遺伝子工学的手法による第4の製造方
法における第1〜第3の工程と同様に行うことができ
る。また、第1の工程で得られたCL遺伝子におけるア
ミド基含有アミノ酸残基をコードするコドンの少なくと
も一つを、システインを除くアミド基非含有アミノ酸残
基をコードするコドンに部位特異的変異させてもよい。
次いで、第4の工程において、前記CL遺伝子を、前
記CL領域のC末端に隣接して荷電性アミノ酸残基を含
むアミノ酸配列が発現するように改変し、荷電性付与C
L遺伝子を得る。第4の工程における改変は、上記の遺
伝子工学的手法による第1の製造方法における第4の工
程に記載の方法と同様に行うことができる。なお、この
第4の工程は、第2の工程の前に行うこともできる。
次いで、第5の工程として、第2のFab’抗体のV
H領域をコードするVH遺伝子と、該第2のFab’抗
体のVL領域をコードするVL遺伝子を提供する工程を
行い、第6の工程として、前記遺伝子断片、前記荷電性
付与CL遺伝子、前記VH遺伝子および前記VL遺伝子
を発現可能な状態で連結し、荷電性付与改変Fab’抗
体発現遺伝子を得る。
VH遺伝子およびVL遺伝子を提供する工程は、遺伝
子工学的手法による第4の製造方法における第4の工程
と同様にして行うことができ、発現可能な状態で連結さ
せる方法は、遺伝子工学的手法による第1の製造方法に
おける第3の工程に記載の方法と同様にして行うことが
できる。
次いで第7の工程において、前記荷電性付与改変Fa
b’抗体発現遺伝子で宿主細胞を形質転換し、得られた
形質転換体を培養することにより、L鎖のC末端に隣接
して荷電性アミノ酸残基を含むアミノ酸配列が付加さ
れ、且つCH1領域のC末端に隣接してL鎖との結合に
関与しないシステイン残基を含むアミノ酸配列が形成さ
れた、等電点均一化Fab’抗体を得る。
このとき用いられる宿主細胞の種類、宿主細胞に導入
されるベクターの種類、ベクターを宿主細胞に導入する
方法、および形質転換体の培養により生産された等電点
均一化Fab’抗体を抽出する方法に関しては、上記の
遺伝子工学的手法による第1の製造方法における第5の
工程に記載の方法と同様である。
第8の工程において、第7の工程で得られた等電点均
一化Fab’抗体におけるL鎖との結合に関与しないシ
ステイン残基に発蛍光団色素を結合させる。用いられる
発蛍光団色素および好適なものの種類、システイン残基
と発蛍光団色素との結合に関しては、上記の遺伝子工学
的手法による第1の製造方法における第6の工程に記載
の方法と同様である。
(実施例) 以下、本発明の好適な実施例についてさらに詳細に説
明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるもので
はない。なお、実施例において、遺伝子工学的手法に関
して特に記載のないものはSambrook et al., Molecular
Cloning : A Laboratory Manual 2nd Edition, Cold S
pring Harbor Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989に
従った。また、特に、記載のない試薬類は宝酒造株式会
社または和光純薬工業株式会社より購入の試薬を使用し
た。
本実施例において使用する略語の名称を以下に示す。
PCR : ポリメラーゼ連鎖反応(遺伝子増幅法) BAP : bacterial alkaline phospbatase IPTG : isopropyl-β-D-thiogalactopyranoside PBS : phosphate buffered saline BSA : bovine serum albumin (1)ハイブリドーマの樹立 ヒト アルファ1アンチトリプシン(カルビオケム-ノ
バビオケム社製)を免疫抗原として用い、抗ヒト アル
ファ1アンチトリプシン抗体を産生するハイブリドーマ
を以下に示す方法により作製した。
上記免疫原でBALB/cマウスを4回免疫後、脾細胞を採
取し、培養マウス骨髄細胞[X63Ag8]とポリエチレング
リコールを用いて細胞融合を行い、クローニングした。
得られたクローンの培養上清中の抗体の前述の免疫原へ
の結合活性を酵素抗体法にて測定し、反応が陽性と思わ
れるクローンについて、さらに、間接蛍光法を用いて確
認し、抗アルファ1アンチトリプシン抗体を産生するハ
イブリドーマを9種類確立した。これらハイブリドーマ
産出の抗体はヒト アルファ1アンチトリプシンに結合
するものである。以下に述べる等電点均一化Fab’抗
体のFd鎖遺伝子、L鎖(κ鎖)遺伝子の調製には、抗
アルファ1アンチトリプシン活性を有するこれらの抗ヒ
ト アルファ1アンチトリプシン抗体を産生する細胞を
使用した。
(2)抗ヒト アルファ1アンチトリプシンFab’抗
体発現遺伝子の単離 ヒト アルファ1アンチトリプシンに対するIgG1
抗体を産出するハイブリドーマより抗ヒト アルファ1
アンチトリプシンFab’抗体発現遺伝子を以下のよう
に単離した。
すなわち、抗ヒト アルファ1アンチトリプシンFa
b’抗体を産生する細胞からBioMag mRNA purification
kit (PerSeptive) のプロトココールに従って全RN
Aを抽出し、cDNA合成システム・プラス(アマシャ
ム ファルマシアバイオテク社製)を用いて1本鎖cDN
Aを合成した。Kabatら(Sequences of Proteins of Im
munological Interest 5th ed., Public Health Servic
e, NIH,Washington DC, 1991)の分類した可変領域(V
領域)と定常領域(C領域)の核酸塩基配列をもとにし
て合成した、Fd鎖遺伝子単離用DNAプライマーおよ
びL鎖遺伝子単離用DNAプライマーを用いて、上記1
本鎖cDNAを鋳型としてポリメレース連鎖反応(PC
R)を行った。ここで、プライマー設計には、Hoogenbo
om HR ら(Nucleic Acids Res 1991 Aug 11;19(15);413
3-7)、及びKang AS ら(Methods (San Diego) (1991),
2(2),111 -18)の文献を参考にした。
ヒト アルファ1アンチトリプシンに対して結合する
抗体は、Fab’抗体として発現させるため、重鎖(H
鎖)、軽鎖(L鎖)ともに定常領域を含むようにDNA
プライマーを設計した。すなわち、Fd鎖遺伝子単離用
DNAプライマーとして、5’側プライマー(以下に示
すF5−1プライマー)および3’側プライマー(以下
に示すF3プライマー)を設計し、L鎖遺伝子単離用D
NAプライマーとして、5’側プライマー(以下に示す
Kapper5プライマー)および3’側プライマー
(以下に示すK3−1プライマー)を設計した。
Fd鎖遺伝子単離用の5’側プライマーであるF5−
1プライマーは、以下に示す配列(配列番号1)を有す
るものを用い、Fd鎖遺伝子単離用の3’側プライマー
であるF3プライマーは、以下に示す配列(配列番号
2)を有するものを用いた。なお、以下の配列におい
て、5’、3’は、それぞれプライマーの5’側、3’
側を表し、SはCまたはG、MはAまたはC、RはAま
たはG、WはAまたはTを示す。
なお、F3プライマーは、CH1領域のC末端に隣接
する部分にL鎖とのジスルフィド結合に関与しないシス
テイン残基を含む塩基配列を導入可能なように設計し、
また、リンカーを介してL鎖と連結させるため、Xba I
サイトが付加するように設計した。
L鎖遺伝子単離用の5’側プライマーであるKapp
er5プライマーは、以下に示す配列(配列番号3)を
有するものを用い、L鎖遺伝子単離用の3’側プライマ
ーであるK3−1プライマーは、以下に示す配列(配列
番号4)を有するものを用いた。なお、WはAまたは
T、SはCまたはG、BはA以外の塩基、NはA,T,
G,C、MはAまたはC、DはC以外の塩基、YはCま
たはT、HはG以外の塩基をそれぞれ表す。
PCRの条件は、94℃1分、55℃1分、72℃1
分で30サイクル行った。PCR後、得られたFd鎖、
リンカー塩基配列、L鎖(κ鎖)のDNA断片を、低融
点アガロースゲル電気泳動で精製し、Fd鎖をXbaIで、
リンカー塩基配列をXbaI、SacIで、L鎖(κ鎖)をSacI
で消化した。リンカー塩基配列を挟んで、Fd鎖、リン
カー塩基配列、L鎖(κ鎖)の順番に並ぶように、各D
NA断片をライゲーションした。ライゲーション産物を
フェーノール/クロロフォルム/イソアミルアルコール
(25/24/1)で抽出した。これをTEバッファーに溶解し
鋳型として、Fd鎖の5’側にSfiIサイト、L鎖の3’
側にNot Iサイトを付加するように設計されたプライマ
ーで再度、PCRを行った。PCRは、94℃1分、5
5℃1分、72℃2.5分で25サイクル行った。
得られたPCR増幅産物を精製後、SfiI (20U per re
action)で50℃にて4時間、Not I (40U per reactio
n)で37℃にて4時間で消化した。これをpCANTAB5Eプ
ラスミドベクター(アマシャム ファルマシアバイオテク
社製)にクローニングした(図2AおよびB参照)。pCAN
TAB5Eプラスミドベクターは、ベクターに組み込まれた
遺伝子を発現し、大腸菌のペリブラズム外に遺伝子由来
の蛋白質を分泌するシグナルペプチドを含有している。
ベクター構築の手順および方法に関しては、遺伝子工学
の分野で慣用されているものを用いることができる。
(3)抗ヒト アルファ1アンチトリプシンFab’抗
体発現のための形質転換 抗ヒト アルファ1アンチトリプシンFab’抗体発
現遺伝子をpCANTAB5Eプラスミドベクターにクローニン
グした抗ヒト アルファ1アンチトリプシンFab’抗
体発現プラスミドを、市販の大腸菌HB2151(アマシャム
ファルマシアバイオテク社製)に形質転換した。大腸菌H
B2151のコンピテント細胞化はExpression Module/Recom
binant Pharge Autbody System(アマシャム ファルマ
シアバイオテク社製)のプロトコールに従った。形質転
換した大腸菌HB2151をSOBAG培地に播き、30℃でオー
バーナイトでインキュベーションした。生じたコロニー
でHRP/Auti-E tag Conjugate(アマシャム ファルマシア
バイオテク社製)のプロトコールに従いコロニーリフト
アッセイ(colony lift assay)を行ない、ヒト アルフ
ァ1アンチトリプシンに対して抗原抗体反応を起すFa
b’抗体発現菌をスクリーニングした。
スクリーニングしたFab’抗体発現菌を複数個選択
してExpression Module/Recombinant Pharge Antbody S
ystem(アマシャム ファルマシアバイオテク社製)のプ
ロトコールに従い、2YT-AG培地に接種し、30℃で一夜
振盪培養した。振盪培養した培養液を10倍量の2YT-AG
培地に加え、30℃でA600が、0.5になるまで振盪培養
した。室温で遠心分離して、集菌し、上清を除いた。菌
を同量の、2YT-AI(グルコース不含、100μg/mlアン
ピシリン、1mM IPTGを含む)培地に懸濁して、30℃
で終夜振盪培養し、抗体を誘導した。次いで、遠心分離
で菌を沈殿化して、上清を取り、IPTGにより誘導された
抗ヒト アルファ1アンチトリプシンFab’抗体を含
む培養上清を100 μl用い、マイクロタイタープレ
ートを抗原吸着プレートとして、ヒト アルファ1アン
チトリプシン(カルビオケム-ノバビオケム社製)を固
定化し、HRP/Anti-E tag Conjugate(アマシャム ファル
マシアバイオテク社製)のプロトコールに従い、ELI
SAを行い抗ヒト アルファ1アンチトリプシンFa
b’抗体発現菌をスクリーニングした。
(4)塩基配列決定用の形質転換と抗体遺伝子の塩基配
列の決定 スクリーニングにより得られた抗ヒト アルファ1ア
ンチトリプシンFab’抗体発現菌よりプラスミドDN
Aを抽出し、塩基配列決定用に、市販の大腸菌XL10-GOL
D(Stratagene社製)に形質転換した。抗ヒト アルファ1
アンチトリプシンFab’抗体発現遺伝子で形質転換し
たXL10-GOLDはEpicurian Coli XL10-Gold ultracompete
nt Cells (Stratagene社製)に従い、抗体遺伝子を発現
するベクターのDNA(約10ng)を混合し、30分
間氷中に放置した。次いで42℃で30秒間 熱処理を
行った後、NZY培地(NZアミン10g、酵母エキス5g、
塩化ナトリウム5g、塩化マグネシウム12.5mM、硫酸
マグネシウム12.5mM、グルコース20mM:、pH7,
5:1リットルあたり)900μLを加え、37℃で約
1時間振盪培養した。50μg/mlアンピシリンを含
むLB寒天培地(トリプシン10g、酵母エキス5g、
塩化ナトリウム5g、寒天15g〔pH7〕:1リット
ルあたり)に塗り広げ、形質転換された抗ヒト アルフ
ァ1アンチトリプシンFab’抗体発現遺伝子を含む耐
性株を選抜した。
選抜した耐性株より、抗ヒト アルファ1アンチトリ
プシンFab’抗体発現遺伝子を含むpCANTAB5Eプラス
ミドを抽出して、ジデオキシヌクレオチド(パーキンエ
ルマー社製)を用いたチェーンターミネータ法により抗
ヒト アルファ1アンチトリプシンFab’抗体発現遺
伝子の各部の塩基配列を決定したところ発現可能なオー
プンリーディングフレーム(ORF)をとっていた。ま
た、単離された抗ヒト アルファ1アンチトリプシンF
ab’抗体発現遺伝子は、Fd鎖遺伝子(VH領域およ
びCH1領域の遺伝子)およびL鎖遺伝子(VL領域お
よびCL領域の遺伝子)を含むものであった。
(5)大腸菌産出抗ヒト アルファ1アンチトリプシン
Fab’抗体の誘導と精製 大腸菌産出抗ヒト アルファ1アンチトリプシンFa
b’抗体を以下に示す実験に使用するべく、スクリーニ
ングした細胞株を用い、培養スケールを拡大して抗体を
誘導し、精製した。すなわち、RPAS Purification Modu
le(アマシャム ファルマシアバイオテク社製)のプロ
トコールに従い以下の手順で抗ヒト アルファ1アンチ
トリプシンFab’抗体の誘導および精製を行った。
スクリーニングした抗ヒト アルファ1アンチトリプ
シンFab’抗体発現遺伝子を含む大腸菌HB2151細胞株
より、単一コロニーを拾い、Expression Module/Recomb
inant Pharge Antbody System(アマシャム ファルマシ
アバイオテク社製)のプロトコールに従い、2YT-AG培地
に接種し、30℃で一夜振盪培養した。振盪培養した培
養液を10倍量の2YT-AG培地に加え、30℃でA600が、
0.5になるまで振盪培養した。室温で遠心分離して、集
菌し、上清を除いた。菌を同量の、2YT-AI(グルコース
不含)培地に懸濁して、30℃で終夜振盪培養した。遠
心分離で菌を沈殿化して、上清を取り、0.45umのフィル
ター(ミリポア社製)で濾過したあと、pHを7に調整
して、培養上清とした。
IPTGにより誘導された抗ヒト アルファ1アンチトリ
プシンFab’抗体を含む培養上清を抗E-tagアフィニ
ティカラムを使用し、5ml/分の流速でカラムに結合さ
せ、添付の洗浄バッファー(Binding buffer) 25ml (5m
l/分の流速)を流して、抗体を含まない培養上清を洗い
出し、添付の溶出バッファー(Elution buffer)10m
lにて大腸菌産出抗ヒト アルファ1アンチトリプシンF
ab’抗体を溶出(5ml/分の流速)させた。溶出した抗
ヒト アルファ1アンチトリプシンFab’抗体に、た
だちに、中和バッファー(Neutralization buffer)を溶
出バッファー(Elution buffer)に対して10分の1量加
えて、中和した。以上のように、抗E-tag抗体をリガン
ドとして用いたアフィニティークロマトグラフィーによ
り精製を行った。中和された抗ヒト アルファ1アンチ
トリプシンFab’抗体はマイクロコン(画分 分子量3
0000用) (ミリポア社製)を用いて、濃縮した後、PBSバ
ッファー1mlに溶解して−80℃に保存した。
(6)大腸菌産出抗ヒト アルファ1アンチトリプシン
Fab’抗体の蛍光標識化 蛍光色素(蛍光標識剤)であるテトラメチルローダミ
ン−5−ヨードアセタミドの調製は以下のように行っ
た。すなわち、テトラメチルローダミン−6−ヨードア
セタミド(モレキュラーブローブス社製)1mgを50
%アセトニトリル0.6mlに溶解し、10,000r
pm、5分間遠心分離を行い、沈澱を除去した。上澄を
25%アセトニ トリル−0.1%トリフルオロ酢酸溶液で
平衡化した逆相クロマトグラフカラム(東ソ−ODS-80T
s、直径4.6mm、長さ25cm)にかけ、30分間にわたって
25〜55%の アセトニトリルの濃度直線勾配をかけ
て溶出し、280nmの吸収をモニターすることで検出
を行った。最も大きなピークを分取し、543nmにお
けるモル吸光係数を87,000として吸光度測定によってそ
の濃度を決定した。これを精製テトラメチルローダミン
−5−ヨードアセタミドとして、精製した抗ヒト アル
ファ1アンチトリプシンFab’抗体の蛍光標識に用い
た。
精製した抗ヒト アルファ1アンチトリプシンFa
b’抗体は以下のようにして蛍光標識化した。すなわ
ち、抗ヒト アルファ1アンチトリプシンFab’抗体
濃縮液(100μl)を10倍量の0.1Mリン酸バッファ
ー、5mM EDTA入り(pH7.0)で希釈し、マイクロコ
ン(画分分子量30000用) (ミリポア社製)で遠心分離し
てバッファーを交換した。この操作を2回繰返した。抗
ヒト アルファ1アンチトリプシンFab’抗体200
μlに対して100mMメルカプトエチルアミン(ナカ
ライテスク社製)を20μl加え、攪拌して37℃で3
0分インキュベートした。マイクロコン(画分分子量30
000用) (ミリポア社製)で再び、20μlに濃縮して、
200μlの0.1Mリン酸バッファー、5mM EDTA入り
(pH7.5)で限外濾過を行った。
25n molのテトラメチルローダミン−5−ヨードア
セタミド(モレキュラープローブス社製)を、5μlの
N,N-ジメチルホルムアミド(シグマ社製)に溶解させ、
75μlの0.1Mリン酸バッファー5mM(EDTA入り(p
H7.5)) を加え、1mM メルカプトエチルアミン(ナ
カライテスク社製)を5μl加え、37℃で10分間イ
ンキュベートした。これをメルカプトエチルアミンで処
理した抗ヒト アルファ1アンチトリプシンFab’抗
体と混合し、暗所で一夜反応させた。反応産物は Sepha
dex G-25(アマシャム ファルマシアバイオテク社製)
で、反応していない蛍光色素と、蛍光標識した抗ヒト
アルファ1アンチトリプシンFab’抗体(蛍光色素1
分子により標識されているため、以下場合により一分子
蛍光標識抗ヒト アルファ1アンチトリプシンFab’
抗体と呼ぶことがある)を分離して、以下の実験に用い
た。一分子蛍光標識抗ヒト アルファ1アンチトリプシ
ンFab’抗体の濃度は、543nmにおけるモル吸光
係数を87,000として、吸光度測定によって決定した。
(7)蛍光検出等電点電気泳動による評価 得られた一分子蛍光標識抗ヒト アルファ1アンチト
リプシンFab’抗体をベックマン社製キャピラリー電
気泳動装置P/ACE5510を用いて分離・検出を行った。キ
ャピラリーとしては内壁をポリアクリルアミドで共有結
合的に被覆した内径0.05mm、外径0.375mm、全長2
7cmの溶解シリカキャピラリー(ジーエルサイエンス
社製) を使用し、陽極側から20cmの位置でレーザ
ー励起による蛍光検出を行った。キャピラリーをPharma
lyte3-10(アマシャム ファルマシアバイオテク社製、
原液の40倍希釈)、ヒドロキシプロピルメチルセルロ
ース(Sigma社製、以下HPMCと略、終濃度0.125%)、N,N,
N',N'-テトラメチルエチレンジアミン(TEMED、ファル
マシアバイオテク社製、終濃度0.6%)を含む両性担体液
で満たした後、一分子蛍光標識抗ヒト アルファ1アン
チトリプシンFab’抗体を2 X 10E-8 M含む両性担体
液を陽極より高圧モードにて30秒間注入した。
陽極液としてHPMC(終濃度0.1%)を含む20mMリ
ン酸、陽極液として20mMNaOHを用い、13.5KV(50
0V/cm)の電圧を10分間印荷した後、同じ電圧を維持
したまま、陽極側に低圧モードで陽極液を注入し、pH
勾配中に焦点化した一分子蛍光標識抗ヒト アルファ1
アンチトリプシンFab’抗体を検出した。蛍光色素の
励起はアルゴンイオンレーザー(ベックマン社製、Lase
r Module 488)波長488nmを用い、フィルターハウ
ジングユニットには488nmノッチフィルター(ベッ
クマン社製)とローダミン用バンドパスフィルター(旭
分光社製、特注品)をセットして検出を行った。得られ
た結果を図3に示す。図3からわかるように、大腸菌産
出の一分子蛍光標識抗ヒト アルファ1アンチトリプシ
ンFab’抗体の等電点は不均一であった。
(8)部位特異的変異法による等電点不均一性の是正 抗ヒト アルファ1アンチトリプシンFab’抗体の
等電点は不均一性を是正するために、以下に述べるよう
な、CH1領域に部位特異的変異を生じせしめるDNA
プライマーを設計して、抗体の改変を行った。なお、以
下の実施例において、例えば、カバットの番号付けによ
るH鎖第162番のN(アスパラギン)をD(アスパラギ
ン酸)に変換する(または、変換した)ことを表す場合
は、「H−N162D」なる記載を用いる場合がある。す
なわち、カバットの番号付けによるH鎖第162番のN
(アスパラギン)をD(アスパラギン酸)に変換したFa
b’抗体を「H−N162D改変Fab’抗体」のよう
に表し、この抗体を発現する遺伝子を「H−N162D
改変Fab’抗体発現遺伝子」のように表す場合があ
る。
DNAプライマーとしては、以下の塩基配列を有する
F5−1プライマー(配列表における配列番号5)およ
びH−N162D−BamHIプライマー(配列表にお
ける配列番号6)を用いた。なお、以下の配列におい
て、5’、3’は、それぞれプライマーの5’側、3’
側を表し、SはCまたはG、MはAまたはC、RはAま
たはG、WはAまたはTを示す。
これらのプライマーを用いて、(2)で得られた抗ヒ
ト アルファ1アンチトリプシンFab’抗体発現遺伝
子を鋳型として、PCRを行うことにより、カバットの
番号付けによるH鎖第: 62番のN(アスパラギン)がD
(アスパラギン酸)に変換された遺伝子断片を調製し、
これをBamHIで消化した。この消化産物に、抗ヒト アル
ファ1アンチトリプシンFab’抗体発現遺伝子のBamH
I消化産物を低融点アガロース電気泳動から回収した遺
伝子断片をライゲーションした。
ライゲーションした産物を、(2)で用いたものと同
じpCANTAB5Eプラスミドベクターに連結させるために、
以下の塩基配列を有するF5−2プライマーおよびK3
−2プライマーを用いてPCRを行い、SfiI、Not Iの
制限酵素を用いて消化した後、pCANTAB5Eプラスミドベ
クターにライゲーションし、H−N162D改変Fa
b’抗体発現遺伝子を含む発げベクターを作製した。
上記発現ベクターを、大腸菌HB2151に形質転換した。
上記と同様にして抗体を誘導し、ELISAによるスクリー
ニングをおこなった。陽性反応を示す菌からプラスミド
を抽出して、大腸菌XL10菌へ形質転換した。形質転換さ
れたXL10菌からシークエンス反応に使用する量のプラス
ミドを抽出して、H−N162D改変Fab’抗体発現
遺伝子の塩基配列を確認した。改変体作製においては、
ポリメラーゼとしては、適合度(fidelity)の高いPyro
bestポリメラーゼ(宝酒造社製)を用いた。塩基配列を
確認した後、上記発現ベクターで形質転換された大腸菌
HB2151の培養スケールを拡大して、H−N162D改変
Fab’抗体を産出させ、該抗体をアフィニティーカラ
ムにより精製し、H−N162D改変Fab’抗体の精
製物を得た。
上記の方法により確認された、H−N162D改変F
ab’抗体のCH1領域およびCH1領域のC末端に隣
接する部分の配列(配列表における配列番号9)を以下
に示す。
この配列において、C末端側(右側)のVPRDCGCSRの
配列が、CH1領域のC末端に隣接する部分に導入され
たL鎖との結合に関与しないシステイン残基(C)を含
むアミノ酸配列である。なお、L鎖との結合に関与しな
いシステイン残基はVPRDCGCSRの配列におけるC末端側
のシステイン残基である。また、VPRDCGCSRの配列を除
く部分はCH1領域の配列である。
なお、H−N162D改変を行う前のFab’抗体に
おける同様の部分の配列(配列表における配列番号1
0)は以下のとおりである。
上記2つの配列を比較すると、H−N162D改変を
行う前のFab’抗体における、カバットの番号付けに
よるH鎖第162番のアスパラギン残基(下線を付した
N)が、改変後にはアスパラギン酸(下線を付したD)
になっていることがわかる。また、本実施例において
は、H−N162D改変Fab’抗体におけるCH1領
域のC末端に隣接する部分の配列(VPRDCGCSR)は、H
−N162D改変を行う前のFab’抗体におけるCH
1領域のC末端に隣接する部分の配列(VPRDCGCSR)と
同一となっている。
(9)蛍光標識等電点均一化Fab’抗体の蛍光検出キ
ャピラリー等電点電気泳動による分離・検出 (8)で得られたH−N162D改変Fab’抗体
を、(6)に記載の方法と同様にして、テトラメチルロ
ーダミン−5−ヨードアセタミド(モレキュラープロー
ブス社製)で蛍光標識して、一分子蛍光標識Fab’抗
体を得た。この一分子蛍光標識Fab’抗体を、(7)
と同様にしてベックマン社製キャピラリー電気泳動装置
P/ACE5510を用いて分離・検出を行った。その結果を図
4に示す。
図4からわかるように、一分子蛍光標識されたH−N
162D改変Fab’抗体をキャピラリー電気泳動した
場合は、移動時間29分付近に一つの大きなピークが現
われ、他の部分には実質的にピークが現われなかった。
これは、H−N162D改変Fab’抗体の等電点が均
一であることを意味する。
(10)荷電性アミノ酸残基を含むアミノ酸配列の付加 (8)で得られたH−N162D改変Fab’抗体の
L鎖のC末端に隣接して荷電性アミノ酸残基を含むアミ
ノ酸配列を付加するため、荷電性アミノ酸残基を含むア
ミノ酸配列挿入用のDNAプライマーを設計して、上述
のH−N162D改変Fab’抗体発現遺伝子を鋳型と
して用い、PCRを行うことにより、L鎖のC末端に隣
接して荷電性アミノ酸残基を含むアミノ酸配列が付加さ
れたH−N162D改変Fab’抗体を発現する遺伝子
(以下、場合により、荷電性付与H−N162D改変F
ab’抗体発現遺伝子と呼ぶ)を得た。DNAプライマ
ーとしては、上述のF5−1プライマー(配列番号
5)、F5−2プライマー(配列番号7)、および以下に
示すK3+5RPSプライマー(配列番号11)を用い
た。
荷電性付与H−N162D改変Fab’抗体発現遺伝
子を、制限酵素である SfiI、または SfiI および Not
I を用いて、消化した後、タンパク質発現プラスミドベ
クター(pCANTAB5E プラスミドベクター等)にライゲー
ションを行い、荷電性付与H−N162D改変Fab’
抗体発現遺伝子をを含む発現ベクターを作製した。
この発現ベクターを、大腸菌 HB2151 に形質転換し
た。上記と同様にして抗体を誘導し、ELISA によるスク
リーニングをおこなった。陽性反応を示す菌からプラス
ミドを抽出して、大腸菌 XL10 菌へ形質転換した。形質
転換された XL10 菌からシークエンス反応に使用する量
のプラスミドを抽出して、荷電性付与H−N162D改
変Fab’抗体発現遺伝子の塩基配列を確認した。改変
体作製においては、ポリメラーゼとしては、適合度(fi
delity)の高い Pyrobest ポリメラーゼ(宝酒造社製)
を用いた。塩基配列を確認した後、上記発現ベクターで
形質転換された大腸菌 HB2151 の培養スケールを拡大し
て、L鎖のC末端に隣接して荷電性アミノ酸残基を含む
アミノ酸配列が付加されたH−N162D改変Fab’
抗体(以下、場合により、荷電性付与H−N162D改
変Fab’抗体と呼ぶ)を産出させ、該抗体をアフィニ
ティーカラムにより精製し精製物を得た。
上記の方法により確認された、荷電性付与H−N16
2D改変Fab’抗体のCL領域およびCL領域のC末
端(L鎖のC末端)に隣接する部分の配列(配列表にお
ける配列番号12)を以下に示す。
この配列において、C末端側(右側)の SRPSRPSRPSR
PSRP の配列が、CL領域のC末端(L鎖のC末端)に
隣接して付加された、荷電性アミノ酸残基を含むアミノ
酸配列である。この配列は、SRPなる配列が5回繰り
返したものであり、R(アルギニン)が荷電性アミノ酸
残基である。また、SRPSRPSRPSRPSRPの配列を除く部分
の配列は以下のようであり、 この配列は、CL領域の配列(配列番号13)である。
(11)免疫複合体の蛍光検出キャピラリー等電点電気
泳動による分離・検出 (8)で得られた、H−N162D改変Fab’抗体
を(6)に記載の方法と同様にして、テトラメチルロー
ダミン−5−ヨードアセタミド(モレキュラープローブ
ス社製)で一分子蛍光標識した(蛍光標識して得られた
ものを、以下、蛍光標識等電点均一化Fab’抗体と呼
ぶ場合がある)。一方、(10)で得られた荷電性付与H
−N162D改変Fab’抗体に関しても、(6)に記
載の方法と同様にして、テトラメチルコーダミン−5−
ヨードアセタミド(モレキュラープローブス社製)で一
分子蛍光標識した(蛍光標識して得られたものを、以
下、荷電性が付与された蛍光標識等電点均一化Fab’
抗体と呼ぶ場合がある)。
あらかじめ543nmにおけるモル吸光係数を87,000
として濃度を測定した、蛍光標識等電点均一化Fab’
抗体および荷電性が付与された蛍光標識等電点均一化F
ab’抗体溶液は、それぞれ、マイクロコン−10(分
画分子量10,000)(ミリポア社製)で遠心分離して濃縮
後、高圧蒸気滅菌したMilliQ水を加えて遠心分離する操
作を計2回繰り返して脱塩を行い、最終的に80nMとなる
よう高圧蒸気滅菌したMilliQ水に溶解した。
ヒト アルファ1アンチトリプシン(カルビオケム社
製)は高圧蒸気滅菌したMilliQ水を加えて溶解後、マイ
クロコン−10(分画分子量10,000) (ミリポア社製)
で遠心分離して濃縮後、高圧蒸気滅菌したMilliQ水を加
えて遠心分離する操作を計2回繰り返して脱塩を行い、
最終的に8μMとなるよう高圧蒸気滅菌したMilliQ水に溶
解した。
蛍光標識等電点均一化Fab’抗体溶液とヒトアルフ
ァ1アンチトリプシン溶液を等量混合し、混合溶液と等
量のPhrmalyte3-10(アマシャム ファルマシアバイオテ
ク社製、原液の20倍希釈)、ヒドロキシプロピルメチ
ルセルロース(シグマ社製、終濃度0.8%)を含む両性担
体溶液を混合し、遮光化、室温にて10分間反応させ免
疫複合体を形成させた。荷電性が付与された蛍光標識等
電点均一化Fab’抗体溶液に関しても、同様にして反
応を行い免疫複合体を形成させた。得られた反応溶液
を、それぞれ、ベックマン社製キャピラリー電気泳動装
置P/ACE5510を用いて分離・検出を行った。
蛍光標識等電点均一化Fab’抗体を用いた場合の結
果を図5に示し、荷電性が付与された蛍光標識等電点均
一化Fab’抗体を用いた場合の結果を図6に示す。図
5においては、移動時間が約22分の大きなピークが、
20分〜25分の範囲における多くのピークと重なり合
っているために、十分な分離ができていないのに対し
て、図6においては、移動時間が22分付近の大きなピ
ークと、移動時間が24分より大きい領域に現われたピ
ークが十分分離されている。
以上説明した本発明の抗原の定量的検出方法を、等電
点均一化Fab’抗体を製造する工程を含めて模式的に
表すと図7A〜Dのようになる。図7Aは等電点均一化
Fab’抗体を発現する遺伝子を組み込んだ大腸菌を示
し、この大腸菌に対してIPTG (isopropyl-β-D-thiogal
actopyranoside)を作用させることにより抗体を誘導す
る。図7Bは、この抗体誘導により生じた本発明の等電
点均一化Fab’抗体を示す。この等電点均一化Fa
b’抗体は、アフィニティカラム等で精製した後、蛍光
標識される。図7Cは、この蛍光標識された等電点均一
化Fab’抗体を示す。蛍光標識された等電点均一化F
ab’抗体と抗原とからなる免疫複合体を電気泳動した
結果、図7Dに示すような移動時間と蛍光強度の関係図
が得られる。
一方、特表平8−506182号公報に開示の従来技
術による抗原の定量的検出方法を、等電点均一化Fa
b’抗体を製造する工程を含めて模式的に表すと図8A
〜Gのようになる。図7A〜Dと図8A〜Gを比較して
明らかなように、従来技術の検出方法は、等電点均一化
Fab’抗体を得るまでの工程が非常に多く煩雑である
ことがわかる。これに加えて、上述したように従来技術
の検出方法では、測定対象である抗原の等電点と等電点
均一化Fab’抗体の等電点が近い場合、電気泳動の結
果、免疫複合体と、余剰の抗原および/または等電点均
一化Fab’抗体がほぼ等しい移動時間で検出されるた
めに、ピークが重なってしまい精度の高い検出ができな
い。一方、図7A〜Dに示す本発明の検出方法は、等電
点均一化Fab’抗体を得るまでの工程が簡潔であり、
測定対象である抗原の等電点と等電点均一化Fab’抗
体の等電点が近い場合であっても、ピークを分離して検
出することができるため高精度な検出が可能となる。
産業上の利用可能性 以上説明したように、本発明によれば、測定対象であ
る抗原の等電点と蛍光標識された抗体の等電点が近い場
合であっても、高精度で抗原を分析することが可能な、
抗原の定量的検出方法を提供することが可能となる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 志村 清仁 静岡県浜北市平口5000番地 株式会社分 子バイオホトニクス研究所内 (72)発明者 笠井 献一 静岡県浜北市平口5000番地 株式会社分 子バイオホトニクス研究所内 (56)参考文献 特開 平5−322892(JP,A) 特表 平8−506182(JP,A) 生物物理化学 第39巻、第6号 (1995) 第349−353頁 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01N 33/53 - 33/579

Claims (10)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 荷電性アミノ酸残基を含むアミノ酸配列
    が付加され、発蛍光団色素で標識されており、且つ分析
    用試料に含まれる抗原と免疫複合体を形成する等電点均
    一化Fab’抗体を提供する第1の工程と、 前記等電点均一化Fab’抗体と、前記抗原を含む前記
    分析用試料とを混合し、前記免疫複合体を含む混合物を
    得る第2の工程と、 前記混合物を担体中で電気泳動させ、前記混合物を分離
    させる第3の工程と、 前記第3の工程で分離された前記混合物に、前記発蛍光
    団色素を励起可能な励起光を照射して、前記免疫複合体
    に蛍光を生じせしめる第4の工程と、 前記蛍光を検出する第5の工程と、 を含む、抗原の定量的検出方法。
  2. 【請求項2】前記アミノ酸配列が、前記等電点均一化F
    ab’抗体のL鎖のC末端に隣接するように付加されて
    いる、請求の範囲第1項記載の方法。
  3. 【請求項3】前記発蛍光団色素が、前記等電点均一化F
    ab’抗体のCH1領域のC末端に隣接するアミノ酸配
    列におけるL鎖との結合に関与しないシステイン残基に
    結合している、請求の範囲第1項記載の方法。
  4. 【請求項4】 前記電気泳動が、等電点電気泳動法によ
    り実施される、請求の範囲第1項記載の方法。
  5. 【請求項5】 前記電気泳動が、キャピラリー電気泳動
    法により実施される、請求の範囲第1項記載の方法。
  6. 【請求項6】 前記等電点均一化Fab’抗体が、 Fab’抗体のVH領域、CH1領域、および該CH1
    領域のC末端に隣接しL鎖との結合に関与しないシステ
    イン残基を含むアミノ酸配列をコードするFd鎖遺伝子
    を提供する第1の工程と、 前記Fd鎖遺伝子において、前記CH1領域のアミド基
    含有アミノ酸残基をコードするコドンの少なくとも一つ
    を、システインを除くアミド基非含有アミノ酸残基をコ
    ードするコドンに部位特異的変異させて、改変Fd鎖遺
    伝子を得る第2の工程と、 前記改変Fd鎖遺伝子と、前記Fab’抗体のL鎖をコ
    ードするL鎖遺伝子とを発現可能な状態で連結させ、改
    変Fab’抗体発現遺伝子を得る第3の工程と、 前記改変Fab’抗体発現遺伝子を、前記L鎖のC末端
    に隣接して荷電性アミノ酸残基を含むアミノ酸配列が発
    現するように改変し、荷電性付与改変Fab’抗体発現
    遺伝子を得る第4の工程と、 前記荷電性付与改変Fab’抗体発現遺伝子で宿主細胞
    を形質転換し、得られた形質転換体を培養することによ
    り、L鎖のC末端に隣接して荷電性アミノ酸残基を含む
    アミノ酸配列が付加され、且つCH1領域のC末端に隣
    接してL鎖との結合に関与しないシステイン残基を含む
    アミノ酸配列が形成された、等電点均一化Fab’抗体
    を得る第5の工程と、 前記第5の工程で得られた等電点均一化Fab’抗体に
    おけるL鎖との結合に関与しないシステイン残基に発蛍
    光団色素を結合させる第6の工程と、 を含む方法により製造されたものである、請求の範囲第
    1項記載の方法。
  7. 【請求項7】 前記等電点均一化Fab’抗体が、 Fab’抗体のVH領域、CH1領域、および該CH1
    領域のC末端に隣接しL鎖との結合に関与しないシステ
    イン残基を含むアミノ酸配列をコードするFd鎖遺伝子
    を提供する第1の工程と、 前記Fd鎖遺伝子において、前記CH1領域のアミド基
    含有アミノ酸残基をコードするコドンの少なくとも一つ
    を、システインを除くアミド基非含有アミノ酸残基をコ
    ードするコドンに部位特異的変異させて、改変Fd鎖遺
    伝子を得る第2の工程と、 前記Fab’抗体のL鎖をコードするL鎖遺伝子を提供
    する第3の工程と、 前記L鎖遺伝子を、前記L鎖のC末端に隣接して荷電性
    アミノ酸残基を含むアミノ酸配列が発現するように改変
    し、荷電性付与L鎖遺伝子を得る第4の工程と、 前記改変Fd鎖遺伝子と、前記荷電性付与L鎖遺伝子を
    発現可能な状態で連結させ、荷電性付与改変Fab’抗
    体発現遺伝子を得る第5の工程と、 前記荷電性付与改変Fab’抗体発現遺伝子で宿主細胞
    を形質転換し、得られた形質転換体を培養することによ
    り、L鎖のC末端に隣接して荷電性アミノ酸残基を含む
    アミノ酸配列が付加され、且つCH1領域のC末端に隣
    接してL鎖との結合に関与しないシステイン残基を含む
    アミノ酸配列が形成された、等電点均一化Fab’抗体
    を得る第6の工程と、 前記第6の工程で得られた等電点均一化Fab’抗体に
    おけるL鎖との結合に関与しないシステイン残基に発蛍
    光団色素を結合させる第7の工程と、 を含む方法により製造されたものである、請求の範囲第
    1項記載の方法。
  8. 【請求項8】 前記等電点均一化Fab’抗体が、 Fab’抗体のVH領域、CH1領域、および該CH1
    領域のC末端に隣接しL鎖との結合に関与しないシステ
    イン残基を含むアミノ酸配列をコードするFd鎖遺伝子
    と、該Fab’抗体のL鎖をコードするL鎖遺伝子とを
    提供する第1の工程と、 前記Fd鎖遺伝子と前記L鎖遺伝子とを発現可能な状態
    で連結させ、Fab’抗体発現遺伝子を得る第2の工程
    と、 前記Fab’抗体発現遺伝子を、前記L鎖のC末端に隣
    接して荷電性アミノ酸残基を含むアミノ酸配列が発現す
    るように改変し、且つ、前記Fab’抗体発現遺伝子に
    おける前記CH1領域のアミド基含有アミノ酸残基をコ
    ードするコドンの少なくとも一つを、システインを除く
    アミド基非含有アミノ酸残基をコードするコドンに部位
    特異的変異させて、荷電性付与改変Fab’抗体発現遺
    伝子を得る第3の工程と、 前記荷電性付与改変Fab’抗体発現遺伝子で宿主細胞
    を形質転換し、得られた形質転換体を培養することによ
    り、L鎖のC末端に隣接して荷電性アミノ酸残基を含む
    アミノ酸配列が付加され、且つCH1領域のC末端に隣
    接してL鎖との結合に関与しないシステイン残基を含む
    アミノ酸配列が形成された、等電点均一化Fab’抗体
    を得る第4の工程と、 前記第4の工程で得られた等電点均一化Fab’抗体に
    おけるL鎖との結合に関与しないシステイン残基に発蛍
    光団色素を結合させる第5の工程と、 を含む方法により製造されたものである、請求の範囲第
    1項記載の方法。
  9. 【請求項9】 前記等電点均一化Fab’抗体が、 第1のFab’抗体のCH1領域、および該CH1領域
    のC末端に隣接しL鎖との結合に関与しないシステイン
    残基を含むアミノ酸配列をコードするCH1遺伝子と、
    該第1のFab’抗体のCL領域をコードするCL遺伝
    子とを提供する第1の工程と、 前記CH1遺伝子において、CH1領域のアミド基含有
    アミノ酸残基をコードするコドンの少なくとも一つを、
    システインを除くアミド基非含有アミノ酸残基をコード
    するコドンに部位特異的変異させて、改変CH1遺伝子
    を得る第2の工程と、 前記改変CH1遺伝子を制限酵素で切断しCH1領域を
    コードする遺伝子を含む遺伝子断片を得る第3の工程
    と、 第2のFab’抗体のVH領域をコードするVH遺伝子
    と、該第2のFab’抗体のVL領域をコードするVL
    遺伝子を提供する第4の工程と、 前記遺伝子断片、前記CL遺伝子、前記VH遺伝子およ
    び前記VL遺伝子を発現可能な状態で連結し、改変Fa
    b’抗体発現遺伝子を得る第5の工程と、 前記改変Fab’抗体発現遺伝子を、前記CL領域のC
    末端に隣接して荷電性アミノ酸残基を含むアミノ酸配列
    が発現するように改変し、荷電性付与改変Fab’抗体
    発現遺伝子を得る第6の工程と、 前記荷電性付与改変Fab’抗体発現遺伝子で宿主細胞
    を形質転換し、得られた形質転換体を培養することによ
    り、L鎖のC末端に隣接して荷電性アミノ酸残基を含む
    アミノ酸配列が付加され、且つCH1領域のC末端に隣
    接してL鎖との結合に関与しないシステイン残基を含む
    アミノ酸配列が形成された、等電点均一化Fab’抗体
    を得る第7の工程と、 前記第7の工程で得られた等電点均一化Fab’抗体に
    おけるL鎖との結合に関与しないシステイン残基に発蛍
    光団色素を結合させる第8の工程と、 を含む方法により製造されたものである、請求の範囲第
    1項記載の方法。
  10. 【請求項10】 前記等電点均一化Fab’抗体が、 第1のFab’抗体のCH1領域、および該CH1領域
    のC末端に隣接しL鎖との結合に関与しないシステイン
    残基を含むアミノ酸配列をコードするCH1遺伝子と、
    該第1のFab’抗体のCL領域をコードするCL遺伝
    子とを提供する第1の工程と、 前記CH1遺伝子において、CH1領域のアミド基含有
    アミノ酸残基をコードするコドンの少なくとも一つを、
    システインを除くアミド基非含有アミノ酸残基をコード
    するコドンに部位特異的変異させて、改変CH1遺伝子
    を得る第2の工程と、 前記改変CH1遺伝子を制限酵素で切断しCH1領域を
    コードする遺伝子を含む遺伝子断片を得る第3の工程
    と、 前記CL遺伝子を、前記CL領域のC末端に隣接して荷
    電性アミノ酸残基を含むアミノ酸配列が発現するように
    改変し、荷電性付与CL遺伝子を得る第4の工程と、 第2のFab’抗体のVH領域をコードするVH遺伝子
    と、該第2のFab’抗体のVL領域をコードするVL
    遺伝子を提供する第5の工程と、 前記遺伝子断片、前記荷電性付与CL遺伝子、前記VH
    遺伝子および前記VL遺伝子を発現可能な状態で連結
    し、荷電性付与改変Fab’抗体発現遺伝子を得る第6
    の工程と、 前記荷電性付与改変Fab’抗体発現遺伝子で宿主細胞
    を形質転換し、得られた形質転換体を培養することによ
    り、L鎖のC末端に隣接して荷電性アミノ酸残基を含む
    アミノ酸配列が付加され、且つCH1領域のC末端に隣
    接してL鎖との結合に関与しないシステイン残基を含む
    アミノ酸配列が形成された、等電点均一化Fab’抗体
    を得る第7の工程と、 前記第7の工程で得られた等電点均一化Fab’抗体に
    おけるL鎖との結合に関与しないシステイン残基に発蛍
    光団色素を結合させる第8の工程と、 を含む方法により製造されたものである、請求の範囲第
    1項記載の方法。
JP2000620173A 2000-02-17 2000-02-17 抗原の定量的検出方法 Expired - Fee Related JP3439195B2 (ja)

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
PCT/JP2000/000903 WO2001061351A1 (fr) 2000-02-17 2000-02-17 Detection d'antigene par voie quantitative

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP3439195B2 true JP3439195B2 (ja) 2003-08-25

Family

ID=11735697

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2000620173A Expired - Fee Related JP3439195B2 (ja) 2000-02-17 2000-02-17 抗原の定量的検出方法

Country Status (3)

Country Link
US (2) US7153701B1 (ja)
JP (1) JP3439195B2 (ja)
WO (1) WO2001061351A1 (ja)

Families Citing this family (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US20060062794A1 (en) * 2003-01-10 2006-03-23 Hiroshi Nakayama Composition containing particle surface charge control agent, particle separating method using same, particle separator
EP2489724A4 (en) * 2009-10-16 2013-05-01 Kaneka Corp HANSENULA POLYMORPHA SUITABLE FOR ANTIBODY PRODUCTION, ANTIBODY MANUFACTURING METHODS THEREFOR AND ANTIBODIES MANUFACTURED IN THIS PROCEDURE
JP5852855B2 (ja) * 2010-11-24 2016-02-03 株式会社半導体エネルギー研究所 発光素子、発光装置、照明装置、及び電子機器
IN2014CN03968A (ja) * 2011-11-02 2015-10-23 Ushio Electric Inc
JP7068822B2 (ja) 2014-09-08 2022-05-17 インディアン インスティテゥート オブ サイエンス 電気化学的バイオセンサ及びアルブミンとその複合体の検出方法
EP3757217A1 (en) * 2019-06-27 2020-12-30 GlaxoSmithKline Biologicals S.A. Methods for protein purification

Family Cites Families (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US4816567A (en) * 1983-04-08 1989-03-28 Genentech, Inc. Recombinant immunoglobin preparations
GB8720833D0 (en) * 1987-09-04 1987-10-14 Celltech Ltd Recombinant dna product
US5019521A (en) 1990-03-12 1991-05-28 Photest Diagnostics, Inc. Paired polypeptides
US5348633A (en) * 1993-01-22 1994-09-20 Northeastern University Method for quantitating trace amounts of an analyte in a sample by affinity capillary electrophoresis
US5630924A (en) * 1995-04-20 1997-05-20 Perseptive Biosystems, Inc. Compositions, methods and apparatus for ultrafast electroseparation analysis
CA2249320C (en) * 1996-03-20 2008-12-23 Immunomedics, Inc. Glycosylated humanized b-cell specific antibodies
DE69840723D1 (de) * 1997-02-11 2009-05-20 Immunomedics Inc Stimulation einer immunantwort durch antikörper, welche mit dem alpha-galaktosylepitop markiert sind
JPH11127855A (ja) 1997-10-27 1999-05-18 Japan Energy Corp 組換え型抗ヒトTNF−αヒトモノクローナル抗体

Non-Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
生物物理化学 第39巻、第6号(1995) 第349−353頁

Also Published As

Publication number Publication date
US7153701B1 (en) 2006-12-26
WO2001061351A1 (fr) 2001-08-23
US20050239215A1 (en) 2005-10-27
US8298836B2 (en) 2012-10-30

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4829457B2 (ja) 抗体模倣物および他の結合タンパク質のタンパク質骨格
US7741128B2 (en) Cooperative reporter systems, components, and methods for analyte detection
EP2094845B1 (en) Artificial binding proteins based on a modified alpha helical region of ubiquitin
JP2021193374A (ja) リン酸化アルファ−シヌクレインを検出するための方法
KR20120086346A (ko) 형광 면역 측정 방법
CN112352055A (zh) 用于检测和定量溶液中的生物分子或配体的生物发光生物传感器
Jeong et al. Construction of dye-stapled Quenchbodies by photochemical crosslinking to antibody nucleotide-binding sites
Lundqvist et al. Chromophore pre-maturation for improved speed and sensitivity of split-GFP monitoring of protein secretion
JP3439195B2 (ja) 抗原の定量的検出方法
CN112469826A (zh) 通过磁珠附着至细胞进行的基于磁性的生物淘选方法
JP6781854B1 (ja) モノクローナル抗体の酵母による製造方法およびスクリーニング方法
WO2006080396A1 (ja) 組換え蛋白質の定量法
Yu et al. Fc-specific and covalent conjugation of a fluorescent protein to a native antibody through a photoconjugation strategy for fabrication of a novel photostable fluorescent antibody
EP3872092A1 (en) Recombinant antibody of anti-human cardiac troponin i
CN107924164A (zh) 定量的基于fret的相互作用测定
US20220033484A1 (en) Antibody against human cardiac troponin I and use thereof
JP3461804B2 (ja) 等電点均一化Fab’抗体の製造方法および蛍光標識等電点均一化Fab’抗体
JP6624755B2 (ja) プロテインタグ、タグ化タンパク質及びタンパク質精製方法
Gao et al. Immunosensor for realtime monitoring of the expression of recombinant proteins during bioprocess
CN113841051A (zh) 识别和定量宿主细胞蛋白的方法
JP6683867B1 (ja) モノクローナル抗体の酵母による製造方法およびスクリーニング方法
JP5487570B2 (ja) 抗体と蛋白質との融合蛋白質の製造方法
JP2021016395A (ja) モノクローナル抗体の酵母による製造方法およびスクリーニング方法
CN117417450A (zh) 髓过氧化物酶结合蛋白、制备方法和应用
CN112661843A (zh) Aldosterone重组兔单克隆抗体及其应用

Legal Events

Date Code Title Description
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20030526

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20000426

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313532

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090613

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100613

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110613

Year of fee payment: 8

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120613

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120613

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130613

Year of fee payment: 10

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130613

Year of fee payment: 10

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140613

Year of fee payment: 11

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees