JP3437079B2 - 切りくず処理性に優れた機械構造用鋼 - Google Patents

切りくず処理性に優れた機械構造用鋼

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JP3437079B2
JP3437079B2 JP02494398A JP2494398A JP3437079B2 JP 3437079 B2 JP3437079 B2 JP 3437079B2 JP 02494398 A JP02494398 A JP 02494398A JP 2494398 A JP2494398 A JP 2494398A JP 3437079 B2 JP3437079 B2 JP 3437079B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、切りくず処理性に
優れた機械構造用鋼に関し、特に被削性改善成分として
のPbを実質的に含まない所謂Pbフリーで、切削加工
時の切りくず処理性を改善した機械構造用鋼に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】機械構造用鋼の被削性を改善する方法と
しては、従来より鋼中に被削性改善成分としてPbやS
等を含有させる方法が採用されており、特にPbは、少
量の添加で優れた被削性や切りくず処理性を発揮するこ
とが知られている。ところが最近になって、Pbによる
環境汚染の問題がクローズアップされるに及び、鉄鋼材
料においてもPbの添加が忌避される傾向にあり、所謂
Pbフリーで切りくず処理性を改善する技術についての
研究が積極的に進められている。
【0003】一方、被削性改善成分としてSを用いた硫
黄快削鋼では、Sを多量含有させるとMnSなどの硫化
物を起点として割れが生じ易くなる等の問題を生じるこ
とから、その添加量に制限があり、Pb快削鋼に比べる
と満足のいく被削性が得られない。そこで硫黄快削鋼の
特性を改善するため、MnSなどの硫化物系介在物の形
態制御やCa等の併用なども試みられているが、依然と
してPb添加鋼に匹敵する切りくず処理性は得られてい
ない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは上記の様
な従来技術の下で、被削性についての視点を変え、特に
切削加工を自動化する際に極めて重要となる切りくず処
理性(切削時に生じる切りくずが螺旋状に長く伸びて切
削工具に絡まる等の障害を生じることなく、切りくずが
短尺の分断された状態で生じる特性)を改善すべく鋭意
研究を進めてきた。
【0005】従って本発明の目的は、有害なPbを添加
することなく、特に切りくず処理性に優れた機械構造用
鋼を提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決すること
のできた本発明に係る切りくず処理性に優れた機械構造
用鋼とは、単独で20μm以上の長さの硫化物、あるい
は複数の硫化物が略直列状に連なった長さ20μm以上
の硫化物群が、圧延方向断面1mm2 の視野内に30以
上存在しているところに特徴を有している。
【0007】そして、上記硫化物による切りくず処理性
改善効果を有効に発揮させるには、鋼中のS含有量を
0.015〜0.12%の範囲にする必要があり、また
Pbフリーの特徴を活かすため、鋼中には実質的にPb
を含まず、具体的基準としてPb含有量は0.001%
以下と定めた。
【0008】本発明では、上記の様に切りくず処理性の
向上を目的として、圧延方向断面に現れる上記硫化物の
形態と数を規定し、更にS含有量やPb含有量などを規
定したものであり、鋼材としての成分組成は、機械構造
用鋼として求められる物性などを確保する意味から、鋼
材の化学成分としては、C:0.01〜0.7%、M
n:0.1〜3.0%、Si:2.5%以下(0%を含
まない)、Al:0.1%以下(0%を含まない)、
O:0.003%以下(0%を含まない)、N:0.0
2%以下(0%を含まない)、の要件を満たすものであ
る。更に他の元素として、 (a)B:0.01%以下(0%を含まない)、 (b)Ni:3%以下,Cr:5%以下,Mo:1.2
%以下,Cu:1%以下から選ばれる少なくとも1種、 (c)Ca:0.05%以下,Zr:0.2%以下,R
EM:0.3%以下,Te:0.2%以下,Se:0.
3%以下から選ばれる少なくとも1種、 (d)V:1%以下,Ti:0.3%以下,Nb:0.
3%以下から選ばれる少なくとも1種、 等を含むものが好ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明者らは上記の様な状況のも
とで、特に切削工程を自動化する際に重要となる切屑処
理性の改善を期し、圧延方向断面に現われる硫化物の形
態についてこれまでとは全く異なる観点から検討を進め
た結果、上記本発明に想到したものである。
【0010】即ち本発明では、圧延方向断面に現われる
硫化物のうち単独で20μm以上の長さの硫化物(以
下、長尺硫化物ということがある)、あるいは複数の硫
化物が略直列状に連なった長さ20μm以上の硫化物群
(以下、長尺硫化物群ということがある)が、切りくず
処理性に顕著な影響を及ぼす、という知見に基づくもの
であり、これら長尺硫化物および長尺硫化物群が、機械
構造用鋼の圧延方向断面1mm2 の視野内に30以上存
在するものは、安定して非常に優れた切りくず処理性が
得られることをつきとめた。
【0011】即ち、鋼中に分散して生成する硫化物につ
いて、その寸法・形状が切りくず処理性に及ぼす影響に
ついて様々の角度から研究を進めた結果、上記の様に、
圧延方向断面内に長尺硫化物や長尺硫化物群が多数存在
するときは、これらが切削加工時に応力集中源として作
用すると共に、それらの長さ方向にミクロ的な割れの伝
播を促進し、切りくず剪断域が狭められると共に切りく
ずの剪断応力も減少し、切削抵抗が大幅に低下すること
が確認された。しかも切削により生成する切りくずは、
ミクロ的な亀裂を含む脆弱なものとなって破砕し易くな
る。そして、こうした破砕し易すさが、切りくず処理性
の向上に顕著な影響をもたらすものと考えられる。
【0012】そして、こうした長尺硫化物および長尺硫
化物群による切りくず処理性向上効果を実用レベルで有
効に発現させるには、後記実施例でも明らかにする如
く、機械構造用鋼の圧延方向断面1mm2 の視野内に観
察される上記長尺硫化物および長尺硫化物群が30以上
存在することが必要であり、より好ましく40以上、更
に好ましくは50以上存在することが望ましいことが確
認された。
【0013】本発明で最も重要となる上記長尺硫化物お
よび長尺硫化物群について更に詳細に説明すると、それ
らの測定は、供試鋼材の圧延方向に平行な断面を研磨し
た後、該断面に分散して存在する硫化物の存在形態を定
量的に把握するため、光学顕微鏡を用いて切削加工部位
の面積1mm2 の視野内の硫化物を観察する(実験では
倍率400倍を採用)。そして、単独で存在する長さ2
0μm以上の硫化物の個数と、複数の硫化物が略直列状
に連なった長さ20μm以上の硫化物群の個数を数え
る。
【0014】上記略直列状に連なった硫化物群は、長さ
2μm以上の硫化物について隣り合った2個の硫化物間
の距離を測定し、その距離が、該2個の硫化物のうち長
い方の長さ(L)の2倍以下、即ち(2×L)以下であ
る場合に、該2個の硫化物は連なっていると判定し、同
様にして、隣り合った各硫化物の長さと間隔を順次判定
していき、全体として長さ20μm以上に連なった硫化
物群の個数を数える。ここで連なった長さとは、上記基
準で連なったと判定される硫化物群のうちの両端に存在
する硫化物の端部間の長さをいう。また、これら硫化物
単体の長さとは長径を意味し、同様に連なった硫化物群
の長さも最大長さを意味する。
【0015】なお上記長尺硫化物群を判定する際に、
「連なった」と判定される個々の硫化物の長さを「2μ
m以上」と決めたのは、2μm未満の硫化物は殆んど球
形乃至楕円状であってミクロクラックの発生方向に方向
性が見られず、切りくず処理性との相関性が殆んど認め
られないからであり、又「連なった」と判定される硫化
物間の長さを「2×L」以下と決めたのは、これ以上に
間隔があくと前記ミクロクラックの伝播が該間隔内で分
断され、1つの硫化物群としての機能を失うからであ
る。
【0016】この様にして圧延方向断面1mm2 の視野
内に観察される長さ20μm以上の長尺硫化物と長尺硫
化物群の総和が30以上である鋼材は、それら長尺硫化
物および長尺硫化物群が切削加工中に応力集中源として
個々に有効に作用し、ミクロクラックが発生すると共
に、該ミクロクラックが長尺硫化物および長尺硫化物群
の長手方向に速やかに伝播し、切りくず処理性を飛躍的
に高めるのである。
【0017】ちなみに、長さが20μm未満の硫化物や
硫化物群でもミクロクラックは生じると思われるが、そ
の伝播が十分に進行しないためか、満足のいく切りくず
処理性改善効果を得ることができない。また、断面1m
2 内に観察される20μm以上の硫化物や硫化物群の
数が30個未満では、被切削鋼内におけるミクロクラッ
ク伝播の絶対数が不足するため、切りくずは十分に短尺
化されず、結果として十分な切りくず処理性が得られな
くなる。
【0018】本発明において上記の様な長さと数の長尺
硫化物や長尺硫化物群を生成させるには、機械構造用鋼
中に0.015%以上、より好ましくは0.03%以
上、更に好ましくは0.04%以上のSを含有させるべ
きであるが、多過ぎると機械的特性などに悪影響が現わ
れてくるので、0.12%以下、より好ましくは0.1
0%以下、更に好ましくは0.07%以下に抑えること
が望ましい。なお硫化物としては、例えばMnS,(M
n,Fe)S,(Mn,Ca)S,FeS,(Mn,Z
r)S,CaS,ZrS,TeS,SeS等が挙げら
れ、これらの中には例えばMx (S,O)y (Mは各種
の金属を表わす)で示される様な酸硫化物が少量含まれ
ていても構わない。
【0019】また、上記の様に長尺硫化物もしくは長手
方向に連なった硫化物群を効率よく生成させる手段とし
ては、溶鋼段階での脱ガス・脱酸調整や凝固時の冷却速
度、圧延条件の適正化が挙げられる。即ち溶鋼段階で、
脱酸時に鋼中の酸素量を低減すると、凝固段階に生成す
る硫化物系介在物中の酸素含有量が減少することによっ
て硫化物系介在物の変形能が向上し、圧延後に長尺硫化
物、あるいは長手方向に連なった硫化物群が生成し易く
なる。また鋳造する際の凝固時の冷却速度は、速過ぎる
と微細・短尺の硫化物が均一に多数生成し、遅過ぎると
粗大な硫化物が数少なく生成し易くなり、所望の長尺硫
化物個数を確保し難くなる傾向があるので、鋳造・凝固
時の冷却速度も適正範囲に制御するのがよい。適正な冷
却速度は鋼材の化学成分などによっても変わってくるの
で一律に決めることはできないが、標準的には1〜50
℃/secの範囲、好ましくは2〜40℃/secの範
囲である。
【0020】更に圧延工程では、圧延前の加熱温度や保
持時間の調整、あるいは圧下率を適正化することが有効
となる。即ち加熱温度が高く且つ保持時間が長過ぎる
と、硫化物の変形能が低下して長尺硫化物(群)が生成
し難くなる傾向があるので、圧延前加熱による硫化物系
介在物の変形能を高め、且つ圧下率を適正に制御するこ
とによって、長尺硫化物(群)の生成を促進することが
できる。
【0021】本発明は、上記の様に機械構造用鋼の圧延
方向断面に現われる硫化物(群)の長さと個数を特定し
たところに特徴を有するものであり、鋼材の種類には特
に制限がなく、例えば、JISG4051に規定される機械構造
用炭素鋼、JISG4102に規定されるニッケルクロム鋼、JI
SG4103に規定されるニッケルクロムモリブデン鋼、JISG
4104に規定されるクロム鋼、JISG4105に規定されるクロ
ムモリブデン鋼、JISG4106に規定される機械構造用マン
ガン鋼、あるいはマンガンクロム鋼などに適用できる。
また鋼材の化学成分については、前記S含有量の好適含
有量を示したが、それ以外の成分についても特に制限が
ある訳ではないが、機械構造用鋼としての要求特性を満
たす意味から、鋼材の好ましい化学成分を例示すると次
の通りである。
【0022】C:0.01〜0.7% Cは、最終製品の強度を確保するのに最も重要な元素で
あり、0.01%以上、より好ましくは0.03%以
上、更に好ましくは0.06%以上含有させることが望
ましい。しかし、多過ぎると靱性が低下すると共に工具
寿命など被削性にも悪影響を及ぼす様になるので、0.
7%以下、より好ましくは0.6%以下に抑えることが
望ましい。
【0023】Si:2.5%以下(0%を含まない) Siは、脱酸性元素として有効である他、固溶強化によ
り機械部品の高強度化に寄与するが、多過ぎると被削性
に悪影響が現われてくるので、2.5%以下、より好ま
しくは1.5%以下に抑えるのがよい。
【0024】Mn:0.1〜3% Mnは、鋼材の焼入性を高め強度増大に寄与するばかり
でなく、硫化物系介在物を形成して切りくず処理性の向
上にも寄与する重要な元素であり、これらの効果を有効
に発揮させるには0.1%以上含有させることが望まし
い。しかし多過ぎると、被削性を却って劣化させる傾向
が生じてくるので、3.0%以下、より好ましくは2.
5%以下に抑えるのがよい。
【0025】Al:0.1%以下(0%を含まない) Alは鋼材を溶製する際の脱酸性元素として重要である
他、窒化物を形成してオーステナイト結晶粒の微細化に
も有効に寄与するが、多過ぎると逆に結晶粒が粗大化し
て靱性に悪影響を及ぼす様になるので、0.1%以下、
より好ましくは0.06%以下に抑えることが望まし
い。
【0026】B:0.010%以下(0%を含まない) Bは、微量の添加で焼入性を高める有効な元素であり、
その効果は0.0003%以上、より好ましくは0.0
005%以上含有させることによって有効に発揮され
る。しかし、多量添加してもそれ以上の効果は得られな
いので、0.010%以下、より好ましくは0.005
%以下に抑えることが望ましい。
【0027】O:0.003%以下(0%を含まない) Oは、硫化物の制御に重要な元素であり、多過ぎると硫
化物中の酸素含有量も多くなってその変形能を低下さ
せ、更には酸化物系介在物量の増大によって切削工具の
寿命短縮を招くので、0.003%以下、より好ましく
は0.002%以下に抑えるべきである。
【0028】N:0.02%以下(0%を含まない) Nは、AlやTi等と窒化物を形成し、オーステナイト
結晶粒を微細化して靱性や疲労強度を高めるのに有効な
元素であり、その効果は0.003%以上含有させるこ
とによって有効に発揮される。しかし多過ぎると硬質の
窒化物量が増大して靱性を劣化させるので、0.03%
以下、より好ましくは0.02%以下に抑えるべきであ
る。
【0029】Pb:0.001%以下 Pbは単独で微細に鋼中に分散し、被削性を向上させる
のに非常に有効な元素であるが、有害元素として忌避さ
れていることも先に述べた通りである。そして本発明
は、元々Pbフリーで切りくず処理性を高める発明とし
て開発されたものであるから、有害元素排除の趣旨に沿
ってその含有量は0.001%以下に抑えるべきである
が、許される場合は、従来通り0.15〜0.20%程
度のPbを含有させることも有効である。
【0030】Bi:0.3%以下 Biも単独で微細に鋼中に分散し、被削性を向上させる
のに非常に有効な元素であり、切りくず処理性の向上に
加えて優れた被削性を得るのに少量のBiを含有させる
ことは有効である。しかし0.3%を超えて過多に含有
させる、靱性に顕著な悪影響が現われてくる。
【0031】本発明で用いられる好ましい鋼材の含有元
素は上記の通りであり残部はFeと不可避不純物である
が、その用途や要求特性によっては、更に下記の様な元
素を適量含有させることが有効である。
【0032】Ni:3%以下,Cr:5%以下,Mo:
1.2%以下,Cu:1%以下から選ばれる少なくとも
1種 Ni,Cr,Mo,Cuは、共に高強度化に寄与する有
用な元素であるが、多過ぎると被削性が低下する等の問
題が生じてくるので、用途に応じて適宜選択して、N
i:3%以下,Cr:5%以下,Mo:1.2%以下,
Cu:1%以下を上限として1種もしくは2種以上を適
量含有させることも有効である。
【0033】Ca:0.05%以下,Zr:0.2%以
下,REM:0.3%以下,Te:0.2%以下,S
e:0.3%以下から選ばれる少なくとも1種 これらの元素は、MnSを粒状化し、異方性を改善する
ために有効な元素であり、しかもそれら自身でも被削性
の向上効果を発揮するので、これら元素の1種以上を積
極的に含有させることも極めて有効である。しかしそれ
らの効果は、Caは0.05%程度、Zrは0.2%程
度、REMは0.3%程度、Teは0.2%程度、Se
は0.3%程度で夫々飽和するので、それ以上の添加は
経済的に無駄である。
【0034】V:1%以下,Ti:0.3%以下,N
b:0.3%以下から選ばれる少なくとも1種 これらの元素は、調質後の組織の微細化、強度・靱性バ
ランスの向上に有効な元素である。また、非調質鋼でも
強度が大幅に向上し、組織も微細化して靱性を向上させ
る。しかし多過ぎると、硬質の炭窒化物が多数生成して
被削性に悪影響を及ぼす様になるので、Vは1%程度以
下、Tiは0.3%程度以下、Nbは0.3%程度以下
に夫々抑えることが望ましい。
【0035】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に
説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限
を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範
囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、そ
れらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0036】実施例 機械構造用炭素鋼S45Cをベースとし、0.05%狙
いでSを添加した表1に示す化学成分の鋼材使用し、転
炉または実験炉による溶製、鋳造の後、直径50mmの
圧延棒鋼を製造し、夫々について性能評価を行なった。
なお各鋼種とも、溶鋼段階での脱ガス・脱酸調整、凝固
速度、圧延条件を制御することにより、硫化物の形態を
制御した。
【0037】また発明鋼1〜3および比較鋼5について
は、脱ガスおよび脱酸の程度によって鋼中の酸素レベル
を低く制御した。このうち比較鋼5については、圧延前
に1300℃×10Hrのソーキング処理を行なうこと
によって硫化物系介在物中の酸素含有量を増加させ、変
形能を低下させることによって長尺硫化物および長尺硫
化物群の数を減らした。
【0038】発明鋼4と比較鋼7は、いずれもソーキン
グ処理なしの例であるが、凝固速度と鋳造後の圧延比を
変えることによって、長尺硫化物および長尺硫化物群の
数を変化させた。比較鋼6は発明鋼4とほぼ同じ成分の
鋼であるが、比較鋼5と同様のソーキング処理を施すこ
とによって硫化物の変形能を低下させたものである。
【0039】得られた各圧延棒鋼について、下記の方法
で硫化物調査、被削性および切りくず処理性を調べ、表
1に併記する結果を得た。
【0040】(硫化物調査)上記で得た各圧延材を圧延
方向に切断し、断面を研磨した後、切削性評価に供され
る(D/8)位置(Dは圧延棒鋼の直径を表わす)を光
学顕微鏡(倍率400倍)で観察することによって行な
った。
【0041】(被削性)各棒鋼を直径50×30(mm)に
切断した後、850℃×1Hr油冷→500℃×2Hr
水冷の焼入れ焼戻し処理を行なった後、ドリル試験に供
した。試験条件は、下記の通りとした。 ドリル試験条件 工 具 : SKH51、 φ10ストレートドリル 切削速度: 10 〜50(m/min) 送 り : 0.21(mm/rev) 切削油 :なし(乾式) 穴深さ :22(mm)未貫通穴 切削位置:横断面D/8部 工具寿命判定:溶損
【0042】(切屑処理性)上記被削性試験において、
速度20(m/min) の時の切削開始から3穴加工分の切り
くずを採取して切りくず1g当たりの切りくずの個数を
求め、この値の大小により評価した。ドリル寿命は、切
削速度30(m/min) の時の加工穴の合計を代用して表中
に記載した。
【0043】
【表1】
【0044】表1からも明らかである様に、本発明鋼1
〜4はいずれも長さ20μm以上の長尺硫化物および長
尺硫化物群の数が多く、比較鋼5〜10に比べて切りく
ず処理性が飛躍的に改善されていることが分かる。また
切りくず処理性の向上に伴ってドリル寿命も向上してい
る。
【0045】なお参考のため、上記発明鋼2の光学顕微
鏡写真(倍率400倍)を図1に、又上記発明鋼3の光
学顕微鏡写真(倍率400倍)を図2に示す。
【0046】実施例2 上記実施例1では、炭素鋼をベースに製造条件の影響を
詳細に実施したが、実施例2では、実施例1の効果が他
の鋼種についても同様の効果があるかどうか評価する目
的で実施した。
【0047】そのため発明鋼は、実施例1の発明鋼2に
ついて採用したのと同じ製造条件で製造し、比較鋼は、
前記比較鋼7について採用したのと同じ製造条件で製造
した。結果を表2に一括して示す。
【0048】試験した鋼種は、機械構造用炭素鋼、機械
構造用合金鋼および非調質鋼より代表的なものを選定
し、No.11,23は実施例1と同じ機械構造用炭素
鋼S45CをベースにSを減らしたもの、No.12〜
14は、実施例1と同じ機械構造用炭素鋼S45Cをベ
ースに硫化物形態制御に有効な元素を添加したもの、N
o.15は同じく機械構造用炭素鋼S45Cをベースに
してPbを更に添加し、更なる被削性の向上を狙ったも
のである。
【0049】また、No.16、24は、機械構造用マ
ンガン鋼から、No.17、25はクロム鋼から、N
o.18、26はクロムモリブデン鋼から、No.1
9、27はニッケルクロムモリブデン鋼から、No.2
0、28はボロン鋼から、夫々代表的なものを選定し
た。これらは、実施例1と同様に、直径50×30(mm)
に切断した後、850℃×1Hr油冷→500℃×2H
r水冷の焼入れ焼戻し処理をを行なってからドリル試験
に供した。またNo.21、22、29、30は、熱間
鍛造用非調質鋼より選定したもので、これらは1200
℃×15min空冷後、ドリル試験を行った。
【0050】
【表2】
【0051】表2より次の様に考察できる。No.11
とNo.23は、他の鋼よりSを低くしたものである
が、本発明に合致するNo.11は、S添加量が少ない
にもかかわらず、実施例1の比較鋼より良好な被削性を
有している。
【0052】他の鋼種の実験結果についても表2から、
本発明の要件を満たす鋼は、長さ20μm以上の長尺硫
化物および長尺硫化物群が多数存在しているために、切
りくず処理性が極めて良好であることが分かる。また、
切屑処理性の向上に伴ってドリル寿命も向上している。
【0053】
【発明の効果】本発明は以上の様に構成されており、硫
化物系介在物の形態を最適な状態に制御することによ
り、機械構造用鋼の切りくず処理性を飛躍的に改善し得
ることになった。殊に本発明によれば、Sを過多に添加
せずとも切りくず処理性を著しく改善することができ、
それに伴って、Pb快削鋼並の被削性を示す機械構造用
鋼を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る切りくず処理性に優れた機械構造
溶鋼の圧延方向断面の一例を示す顕微鏡写真(倍率40
0倍)をトレースした図である。
【図2】本発明に係る切りくず処理性に優れた機械構造
溶鋼の圧延方向断面の他の例を示す顕微鏡写真(倍率4
00倍)をトレースした図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 冨岡 活智 兵庫県加古川市金沢町1番地 株式会社 神戸製鋼所 加古川製鉄所内 (72)発明者 家口 浩 神戸市西区高塚台1丁目5番5号 株式 会社神戸製鋼所神戸総合技術研究所内 (72)発明者 工藤 高裕 神戸市西区高塚台1丁目5番5号 株式 会社神戸製鋼所神戸総合技術研究所内 (72)発明者 土田 武広 神戸市西区高塚台1丁目5番5号 株式 会社神戸製鋼所神戸総合技術研究所内 (56)参考文献 特開 平6−212348(JP,A) 特開 平10−310853(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 38/00

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 質量%で、 C:0.01〜0.7%、 Mn:0.1〜3.0%、 Si:2.5%以下(0%を含まない)、 Al:0.1%以下(0%を含まない)、 O:0.003%以下(0%を含まない)、 N:0.02%以下(0%を含まない)、 S:0.015〜0.12%、を夫々含むと共に、 鋼中のPb含量が0.001%以下、 残部がFeおよび不可避不純物の鋼であり、且つ、 単独で20μm以上の長さの硫化物、あるいは複数の硫
    化物が略直列状に連なった長さ20μm以上の硫化物群
    が、圧延方向断面1mm2の視野内に30以上存在して
    いることを特徴とする切りくず処理性に優れた機械構造
    用鋼。
  2. 【請求項2】 鋼が、他の元素として、B:0.01%
    以下(0%を含まない)を含むものである請求項1に
    載の機械構造用鋼。
  3. 【請求項3】 鋼が、更に他の元素として、Ni:3%
    以下,Cr:5%以下,Mo:1.2%以下,Cu:1
    %以下から選ばれる少なくとも1種を含むものである請
    求項1または2に記載の機械構造用鋼。
  4. 【請求項4】 鋼が、更に他の元素として、Ca:0.
    05%以下,Zr:0.2%以下,REM:0.3%以
    下,Te:0.2%以下,Se:0.3%以下から選ば
    れる少なくとも1種を含むものである請求項1〜3のい
    ずれかに記載の機械構造用鋼。
  5. 【請求項5】 鋼が、更に他の元素として、V:1%以
    下,Ti:0.3%以下,Nb:0.3%以下から選ば
    れる少なくとも1種を含むものである請求項1〜4のい
    ずれかに記載の機械構造用鋼。
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