JP3433850B2 - Frp筒体およびその製造方法 - Google Patents

Frp筒体およびその製造方法

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JP3433850B2 JP26636094A JP26636094A JP3433850B2 JP 3433850 B2 JP3433850 B2 JP 3433850B2 JP 26636094 A JP26636094 A JP 26636094A JP 26636094 A JP26636094 A JP 26636094A JP 3433850 B2 JP3433850 B2 JP 3433850B2
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靖之 豊田
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、自動車のプロペラシャ
フト(駆動推進軸)に用いて好適なFRP(繊維強化プ
ラスチック)筒体およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】最近、各種産業分野でFRP筒体が使わ
れてきつつある。たとえば、近年、燃費の向上や環境保
全といった観点から自動車の軽量化が強く望まれている
が、それを達成する一手段としてプロペラシャフトのF
RP化が検討され、一部で既に採用されるに至ってい
る。そのようなFRP製プロペラシャフトは、FRP製
本体筒と、この本体筒の各端部に接合して設けた金属製
継手とを有している。
【0003】ところで、自動車のプロペラシャフトは、
エンジンで発生するトルクを捩りトルクとして駆動輪に
伝達するものであるから、100〜400kgf・m程
度の捩り強度を必要とする。また、高速回転時に共振を
起こさないよう、危険回転数が5,000〜15,00
0rpm程度であることも要求される。そのため、これ
らの基本的要求が満たされるよう、FRP製プロペラシ
ャフトの本体筒は、強化繊維の種類、含有量や、強化繊
維の配列方向、層構成や、外径、内径、肉厚等のパラメ
ータを考慮した設計がなされる。
【0004】たとえば、強化繊維の配列方向の選定に
は、次のようなことが考慮される。すなわち、主として
捩り強度に関しては、強化繊維を本体の筒軸方向に対し
て±45°の角度で配列するのが最も効果的であるが、
主として捩り座屈強度の関しては、筒軸方向に対して±
80〜90°の角度で配列するのが最も効果的である。
また、主として危険回転数に関しては、強化繊維を可能
な限り筒軸方向に配列して筒軸方向における曲げ弾性率
を大きくし、高い曲げ共振周波数が得られるようにす
る。
【0005】このように、FRP製本体筒においては、
捩り強度と危険回転数といった基本的要求に関して最も
効果的な強化繊維の配列方向が存在するので、これらの
要求に好適な配列方向を組み合わせた層構成を採ること
になる。このようなFRP製本体筒は、たとえば樹脂を
含浸した強化繊維束をマンドレル上に所定方向に巻き付
けて硬化、成形する、いわゆるフィラメントワインディ
ング法によって成形され、上述の如き所望の強化繊維の
配列を有する層が構成される。この強化繊維は、通常、
強化繊維束として引き揃えられた連続繊維の形態をなし
ている。
【0006】このように成形されたFRP製本体筒の端
部に、継手がたとえば圧入により接合される。継手の接
合強度を確保するために、継手の圧入部の外径は、本体
筒端部の内径よりも若干大きく設定され、いわゆる圧入
代が設けられる。また、圧入部の接合強度を一層高める
ために、継手圧入部の本体筒との接合面に、本体筒の筒
軸方向に延び周方向に多数配列された切込み歯を設ける
ことが有効であることが知られている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記のよう
に継手に切込み歯が設けられていると、継手が圧入され
る時、切込み歯がFRP製本体筒内周面に食い込んでい
くことになるが、その際、本体筒内周面に配列されてい
る強化繊維を切断してしまうことがある。とくに接合強
度向上の観点から、切込み歯の歯先を鋭く尖らせたり、
周方向に配列される切込み歯の配列ピッチを極端に狭め
ると、本体筒の内周面に切り込み歯が食い込む際その鋭
利な歯先で強化繊維を切断したり、隣接切込み歯間で強
化繊維に過大な引張張力をかけて強化繊維を切断したり
する事態が生じやすくなる。
【0008】強化繊維が切断されると、継手との接合部
における本体筒の強度が部分的に低下し、その部位では
目標とする強度性能が発揮されなくなるので、強化繊維
の切断は極力防止されなければならない。
【0009】本発明の目的は、FRP製プロペラシャフ
トに代表されるような、FRP製本体筒に切込み歯を有
する他部材を圧入接合するFRP筒体において、切込み
歯による圧入時の強化繊維の切断を防止して、接合部に
おける本体筒の強度を向上することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】この目的に沿う本発明の
FRP筒体は、FRP製本体筒に他部材が圧入接合さ
れ、該他部材の本体筒との接合面に、軸方向に延び、か
つ、周方向に配列され、圧入により本体筒の内周面に食
い込む切込み歯が設けられているFRP筒体において、
前記切込み歯の歯先に、前記本体筒に用いられている強
化繊維の直径の5倍以上50倍以下の曲率半径を有する
丸みが付けられていると共に、前記切込み歯の、前記接
合面の周方向における配列ピッチが、前記本体筒に用い
られている強化繊維の直径の50倍以上500倍以下で
あることを特徴とするものからなる。
【0011】この構造は、強化繊維が、前記接合面と対
向する本体筒内周面において前記本体筒の軸方向に配置
されている場合に、とくに有効である。ここで、「本体
筒の軸方向」とは、本体筒の筒軸方向に対して0〜±4
5°の範囲にあることをいう。
【0012】
【0013】この構造は、強化繊維が、前記接合面と対
向する本体筒内周面において前記本体筒の周方向に配置
されている場合に、とくに有効である。ここで、「本体
筒の周方向」とは、本体筒の筒軸方向に対して±45〜
90°の範囲にあることをいう。
【0014】
【0015】このような本発明に係るFRP筒体は、F
RP製プロペラシャフトに適用して最適なものである。
プロペラシャフトに適用する場合、上記本体筒がプロペ
ラシャフト用シャフトに相当し、上記他部材は継手に相
当する。但し本発明は、プロペラシャフトに限らず、切
込み歯を有する他部材が圧入接合される他のFRP筒
体、たとえばFRP製ロール部材や配管部材、FRP製
トラス等にも適用できる。
【0016】上記のようなFRP筒体は、たとえば次の
ように製造される。すなわち、本発明に係るFRP筒体
の製造方法は、FRP製本体筒に他部材を圧入接合して
FRP筒体を製造するに際し、前記本体筒との接合面
に、軸方向に延び、かつ、周方向に配列された、歯先に
前記本体筒に用いられている強化繊維の直径の5倍以上
50倍以下の曲率半径の丸みを有し、前記接合面の周方
向における配列ピッチが前記本体筒に用いられている強
化繊維の直径の50倍以上500倍以下である切込み歯
を有する他部材を、前記切込み歯の歯先が本体筒の内周
面に食い込むように圧入接合することを特徴とする方法
からなる。
【0017】
【作用】上記のようなFRP筒体においては、切込み歯
の歯先に本体筒に用いられている強化繊維の5倍以上
0倍以下の大きな曲率半径の丸みが付けられているの
で、切込み歯の歯先から本体筒内周面へ作用する応力
は、一点に集中することなく、より広く分散され、鋭利
な歯先による強化繊維の切断が減少される。したがっ
て、歯先食い込み部においても、連続繊維からなる強化
繊維の配置による、目標とする強度特性が確保される。
【0018】本体筒の強化繊維が、接合面と対向する本
体筒内周面において本体筒の軸方向に配置されている場
合には、つまり、他部材の切込み歯延設方向と略並行す
る方向に配置されている場合には、他部材圧入時に、歯
先に上述のような丸みを有する切込み歯は、本体筒内周
面の表層部に存在する強化繊維を歯先両側に押しのける
ように本体筒内周面に食い込んでいくので、一層効果的
に強化繊維の切断が防止される。
【0019】また、周方向に配列される切込み歯のピッ
チを、強化繊維の直径の50倍以上500倍以下とする
ことにより、たとえ隣接歯先間で強化繊維に張力が加わ
るような状態になったとしても、隣接歯先間距離が長い
のでこの間で強化繊維の自由度が増し、強化繊維が切断
に至る事態は適切に防止される。とくに、強化繊維が、
圧入される他部材の接合面と対向する本体筒内周面にお
いて本体筒の周方向に配置されている場合には、つま
り、他部材の切込み歯延設方向に対して略直交する方向
に配置されている場合には、上記のような張力がかかり
やすいが、本発明に係る構造により、効果的に強化繊維
の切断が防止される。
【0020】さらに、切込み歯の歯先に強化繊維の直径
の5倍以上50倍以下の丸みを付け、かつ、周方向に配
列される切込み歯のピッチを強化繊維の直径の50倍以
500倍以下とすることにより、前述の両作用がとも
に得られることになり、たとえば本体筒内周面部位が強
化繊維の配列方向が異なる複数の層の積層構造とされて
いる場合にあっても、効率よくかつ効果的に強化繊維の
切断が防止される。
【0021】
【実施例】以下に、本発明のFRP筒体の望ましい実施
例を、その製造方法とともに、図面を参照して説明す
る。図1ないし図3は、本発明の第1実施例に係るFR
P筒体を示しており、本発明をFRP製プロペラシャフ
トに適用した場合を示している。図1において、1はF
RP製本体筒としてのプロペラシャフト用シャフトを示
しており、本体筒1は、炭素繊維、ガラス繊維、ポリア
ラミド繊維等の高強度、高弾性率強化繊維でエポキシ樹
脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ビニル
エステル樹脂、ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂や、ポ
リアラミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル
イミド樹脂等の熱可塑性樹脂を強化してなるものであ
る。本体筒1の一端部および他端部には、他部材として
金属製継手2が圧入接合されている。このプロペラシャ
フトは、長さ方向中心からみて対称形であり、図は一方
の端部側のみを示している。
【0022】継手2の本体筒1への圧入接合面2aに
は、本体筒1の筒軸方向に延び、かつ、周方向に多数配
列された切込み歯3が設けられている。接合面2aの外
径、より正確には、切込み歯3の頂部の外径は、本体筒
1の内径よりも若干大きく設定されており、所定の圧入
代をもって継手2が本体筒1の端部内に圧入されてい
る。この圧入の際、切込み歯3は、その先端歯先側から
本体筒1の内周面1aに食い込んでいく。
【0023】切込み歯3の歯先3aには、図2に示すよ
うに丸み3aが付けられている。丸み3aの曲率半径
は、本体筒1の構成に用いられている強化繊維4(図3
に図示)の直径の5倍以上に設定されている。この丸み
3aの曲率半径は、強化繊維直径の5倍以上とされると
ともに、張力の内周面1aへの食い込みやすさを考慮し
て、強化繊維直径の50倍以下に設定されている。
【0024】本体筒1に用いられている強化繊維4は、
図3に示すように、接合面2aと対向する本体筒1の内
周面において本体筒1の軸方向に配置されている。つま
り本体筒1の筒軸方向に対して0〜±45°の範囲内の
方向に配置されている。
【0025】このような本体筒1は、たとえば次のよう
なフィラメントワインディング法によって成形すること
ができる。マンドレル上に、樹脂を含浸した強化繊維束
を、マンドレル軸方向に移動させながら所定の配列方向
に巻き付けていき、所定回数往復させて積層構造を構成
し、樹脂を硬化または固定させた後成形された本体筒を
マンドレルから引き抜く。必要に応じて後加工を施し、
所望の本体筒を得る。
【0026】得られた本体筒1の端部に、上記のような
切込み歯3を有する継手2が圧入接合される圧入の際、
切込み歯3の歯先3aに丸みが付けられていることによ
り、強化繊維4の切断が次のように防止される。
【0027】すなわち、図3に示すように、切込み歯3
は本体筒1の内周面1aに食い込んでいくが、切込み歯
3の歯先3aに強化繊維4の直径の5倍以上の大きな曲
率半径を有する丸みが設けられているので、歯先3aが
食い込む際、歯先3aと干渉する位置にあった強化繊維
4が上記丸みによって歯先3aの主として両側に押しの
けられる。その結果、歯先3aが、強化繊維を切断する
ことがなくなり、歯先3aは本体筒内周面1aに円滑に
食い込んでいく。強化繊維4が切断されず、該強化繊維
4は内周面1a部位においても確実に連続繊維の形態を
保てるので、この部位における本体筒1の強度は目標と
する特性に確保される。したがって、継手2との接合強
度も高く保たれる。
【0028】図4は、本発明の第2実施例に係るFRP
製プロペラシャフトの、本体筒と継手との接合部の縦断
面を示している。本実施例においては、継手12の接合
面12aに設けられた切込み歯13の周方向配列ピッチ
Pが、本体筒11に用いられている強化繊維14の直径
の50倍以上に設定されている。この構造は、強化繊維
14の配列方向が、接合面12aと対向する本体筒11
の内周面において、本体筒11の周方向に設定されてい
る場合、とくに有効なものである。つまり本体筒11の
筒軸方向と略直交する方向(±45〜±90°の範囲内
の方向)である場合、とくに有効なものである。ピッチ
Pの上限は、あまり大きくなると、切込み歯13の数が
減少し切込み歯13を設けたことによる接合強度向上の
効果が薄れるから、強化繊維14の直径の500倍以下
抑えられている。このような切込み歯13が、圧入に
より本体筒11の内周面11aに食い込んでいる。
【0029】また本実施例においては、上記構成に加
え、前述の第1実施例と同様、切込み歯13の歯先13
aに、強化繊維14の直径の5倍以上50倍以下の曲率
半径を有する丸みが付けられている。
【0030】このような構成においては、まず、切込み
歯13の配列ピッチPが強化繊維14の直径の50倍以
500倍以下と大きく設定されることにより、継手1
2の圧入時に、あるいは圧入後においても、隣接する切
込み歯13間で強化繊維14がつっ張られそれに張力が
加わる場合にあっても、切込み歯13間における強化繊
維14の自由度が大きいため、強化繊維14の切断が適
切に防止される。
【0031】また、切込み歯13の歯先13aの先端部
丸みを強化繊維直径の5倍以上50倍以下と大きく設定
することにより、鋭利な歯先で強化繊維14が切断され
る事態を回避でき、強化繊維14を歯先位置から押しの
けるように、切断させずに適切に屈曲させることができ
る。
【0032】したがって、強化繊維14の切断を確実に
防止でき、継手12との接合部における本体筒11の強
度、および継手12との接合強度を高く確保できる。
【0033】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のFRP筒
体およびその製造方法によるときは、切込み歯を有する
他部材との接合部において、FRP製本体筒内の強化繊
維の切断を効果的に防止でき、この部位における高い本
体筒強度および継手との高い接合強度を得ることができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例に係るFRP製プロペラシ
ャフトの部分縦断面図である。
【図2】図1のプロペラシャフトの拡大部分横断面図で
ある。
【図3】図2に示した部分の拡大部分横断面図である。
【図4】本発明の第2実施例に係るFRP製プロペラシ
ャフトの部分横断面図である。
【符号の説明】
1、11 FRP製本体筒 1a、11a 本体筒内周面 2、12 継手(他部材) 2a、12a 継手接合面 3、13 切込み歯 3a、13a 歯先 4、14 強化繊維
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平5−139170(JP,A) 特開 平4−347006(JP,A) 特開 平6−238659(JP,A) 特開 平4−248944(JP,A) 特開 昭63−199915(JP,A) 特開 平5−180234(JP,A) 特開 平5−92488(JP,A) 特開 平5−24455(JP,A) 特開 昭62−37131(JP,A) 特開 平3−48023(JP,A) 特開 昭56−142053(JP,A) 特開 平6−200951(JP,A) 実開 昭55−142718(JP,U) 特公 昭62−53373(JP,B2) 特表 平5−508115(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F16C 3/00 - 3/03 B60K 17/22 B29C 65/56 B29C 70/06 B29D 23/00

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 FRP製本体筒に他部材が圧入接合さ
    れ、該他部材の本体筒との接合面に、軸方向に延び、か
    つ、周方向に配列され、圧入により本体筒の内周面に食
    い込む切込み歯が設けられているFRP筒体において、
    前記切込み歯の歯先に、前記本体筒に用いられている強
    化繊維の直径の5倍以上50倍以下の曲率半径を有する
    丸みが付けられていると共に、前記切込み歯の、前記接
    合面の周方向における配列ピッチが、前記本体筒に用い
    られている強化繊維の直径の50倍以上500倍以下で
    あることを特徴とするFRP筒体。
  2. 【請求項2】 前記強化繊維が、前記接合面と対向する
    本体筒内周面において前記本体筒の軸方向に配置されて
    いる、請求項1のFRP筒体。
  3. 【請求項3】 前記強化繊維が、前記接合面と対向する
    本体筒内周面において前記本体筒の周方向に配置されて
    いる、請求項1または2のFRP筒体。
  4. 【請求項4】 前記本体筒がプロペラシャフト用シャフ
    トであり、前記他部材が継手である、請求項1ないし3
    のいずれかに記載のFRP筒体。
  5. 【請求項5】 FRP製本体筒に他部材を圧入接合して
    FRP筒体を製造するに際し、前記本体筒との接合面
    に、軸方向に延び、かつ、周方向に配列された、歯先に
    前記本体筒に用いられている強化繊維の直径の5倍以上
    50倍以下の曲率半径の丸みを有し、前記接合面の周方
    向における配列ピッチが前記本体筒に用いられている強
    化繊維の直径の50倍以上500倍以下である切込み歯
    を有する他部材を、前記切込み歯の歯先が本体筒の内周
    面に食い込むように圧入接合することを特徴とする、F
    RP筒体の製造方法。
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