JP3432657B2 - 液晶表示素子用補償板の製造方法 - Google Patents

液晶表示素子用補償板の製造方法

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JP3432657B2
JP3432657B2 JP33639995A JP33639995A JP3432657B2 JP 3432657 B2 JP3432657 B2 JP 3432657B2 JP 33639995 A JP33639995 A JP 33639995A JP 33639995 A JP33639995 A JP 33639995A JP 3432657 B2 JP3432657 B2 JP 3432657B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は色補償、視野角補償
などの補償板として液晶ディスプレイの薄型化・軽量化
に有用なディスコティック液晶のような液晶低分子を用
いた液晶表示素子用補償板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、液晶ディスプレイの薄型化・軽量
化に伴って高分子からなる補償素子が注目されている。
高分子から成る補償素子としては、ポリスルフォン、ポ
リカーボネート、ポリビニルアルコールなどのフィルム
を延伸した位相差フィルムがあり、STNタイプの液晶
ディスプレイの色補償に広く利用されている。また一方
では主鎖型液晶ポリマーあるいは側鎖型液晶ポリマーか
らなる補償用液晶高分子フィルムがあり、中でも液晶性
ポリエステルなどの液晶高分子から成る補償素子は、そ
の液晶の配向形態を固定化することができ、該配向形態
の効果により位相差フィルムでは成し得なかった位相差
と旋光分散を同時に補償することができ、液晶ディスプ
レイの色補償あるいは視野角補償に大きく貢献した(た
とえば特開平3−87720号公報)。
【0003】しかしながら液晶ディスプレイの技術進歩
に伴い、これら補償板に要求される性能も多様化、複雑
化しており、例えば液晶ディスプレイの主流になりつつ
あるTFTあるいはMIMなどの素子でアクティブ駆動
するTNモード液晶ディスプレイの視野角補償板、ある
いはOCBモード液晶ディスプレイの色および視野角補
償板などに対する要求が強まっている。これらの要求に
対しては上記した延伸フィルムを用いる従来タイプの位
相差フィルム、あるいは液晶高分子を用いた補償板では
対応しきれなくなっているのが現状である。
【0004】これらの限界を打ち破るものとして、円盤
状分子であってその屈折率構造が負の一軸性であるディ
スコティック液晶を用いた補償板が最近提案されてい
る。例えば特開平6−214116号、特開平7−14
6409号公報には、ディスコティック液晶分子のダイ
レクター(分子の平均的な光軸の配向方向を指定する単
位ベクトル)を一定方向に傾けて配向させ、補償板とし
ての光軸が傾いた、すなわち屈折率構造が傾いた負の一
軸性とした補償板およびその製造法が開示されている。
しかしながらこれらの技術では、光軸が傾いた配向を得
るためにSiO斜め蒸着膜や特殊変成配向膜を用いるこ
となどの、コスト高の要因となる製造上の不利があっ
た。さらにこれらの技術では、基板として耐熱性の低い
トリアセチルセルロースなどのフィルムを用いるため
に、液晶を配向させるための熱処理温度をあまり高くで
きないという問題点があり、その結果製品としたときの
高温信頼性を得るために、熱処理後にディスコティック
液晶の耐熱性を上げる目的で光架橋を行うことなどのさ
らにコスト高の要因となる製造上の不利があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らはこれら低
分子ディスコティック液晶を用いた光学素子を製造する
に当たって、高価な配向膜を使用することなく、さらに
製品としたときに高い使用温度においても液晶配向が乱
れず十分な高温信頼性を維持できるような液晶転移点の
高いディスコティック液晶を用いることができ、光架橋
のような特別な方法をとることなく補償板を製造できる
方法を開発すべく検討した結果、耐熱性および耐溶剤性
のある配向基板上にまずディスコティック液晶のモノド
メインな配向を形成せしめたのち、この配向を固定化
し、次にディスコティック液晶層を透光性基板上に転写
せしめることにより、上記課題を解決できることを見出
し、本発明に到達した。
【0006】
【課題を解決するための手段】すなわち本発明に第1
は、配向基板上に液晶低分子であるディスコティック液
晶性材料より形成した薄膜であって、ディスコティック
液晶性材料が液晶状態において薄膜の上面と下面におけ
るディスコティック液晶分子のそれぞれのダイレクター
が、配向基板平面への投影ベクトルの方向は同一であ
り、該薄膜平面の法線と該ダイレクターとが成す角度が
異なったハイブリッド配向を形成し、該配向形態を損な
わずに固定化した薄膜を、透光性基板上に転写すること
を特徴とする液晶表示素子用補償板の製造方法に関す
る。また本発明の第2は、透光性基板がプラスチックフ
ィルムであることを特徴とする本発明の第1に記載の液
晶表示素子用補償板の製造方法に関する。また本発明の
第3は、透光性基板が偏光フィルムであることを特徴と
する本発明の第1に記載の液晶表示素子用補償板の製造
方法に関する。さらに本発明の第4は、透光性基板が液
晶表示用駆動セルを構成する上面または/および下面の
ガラス基板若しくはプラスチックフィルム基板であるこ
とを特徴とする本発明の第1に記載の液晶表示素子用補
償板の製造方法に関する。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳しく説明
する。本発明の製造方法によって得られる補償板による
補償対象の液晶装置(液晶ディスプレイ)は、光学的に
異方性を持った液晶ディスプレイであり、該液晶ディス
プレイの種類については、特に限定されない。具体的な
例を挙げるとTN(Twisted Nematic)
液晶ディスプレイやSTN(Super Twiste
d Nematic)液晶ディスプレイなどのねじれネ
マチック液晶配向を利用したディスプレイ、スーパーホ
メオトロピック液晶ディスプレイ(J.F.Cler
c,M.Aizawa,S.Yamauchi,J.D
uchene: JAPAN DISPLAY ’89
p.188(1989))、OCB(Optical
ly Compensated Birefringe
nce)モードの液晶ディスプレイ(C−L.Kuo,
T.Miyashita,M.Suzuki and
T.Uchida:SID 94 DIGEST,p.
927(1994))、ECB(Electrical
ly Controlled Birefringen
ce)モードのディスプレイ、ゲストホストモードの液
晶ディスプレイ、高分子分散型ディスプレイ、強誘電性
液晶ディスプレイ、反強誘電性液晶ディスプレイなどを
挙げることができる。また表示システムの方式として
は、それぞれについて直視型、投射型、反射型がある。
【0008】本発明の製造方法によって得られる補償板
が最も顕著な補償効果を示すディスプレイの一つとして
は、ノーマリホワイトモードで駆動されるTN液晶ディ
スプレイが挙げられる。TN液晶ディスプレイとしては
駆動方式で分類すれば、単純マトリクス方式、TFT
(Thin Film Transistor)電極や
MIM(Metal Insulator Meta
l)電極を用いるアクティブマトリクス方式などのよう
に細分できる。本発明においては駆動方式の違いは本質
的ではなく、駆動される液晶セル中の液晶の配向構造が
ディスプレイの視野角特性を決定する。ここでいうTN
液晶セルとは、ねじれ角が70度から110度の範囲に
あるものであり、最も一般的なTN液晶ディスプレイで
はねじれ角はほぼ90度となっている。セルの電圧無印
可時のリターデーションは通常200nmから1200
nmの範囲であり、好ましくは400nmから600n
mであり、中でも490nm付近のリターデーション値
が最も広く用いられている。上下の偏光板は、ノーマリ
ホワイトモードで駆動されるため、透過軸は互いにほぼ
直交している。本発明の製造方法によって得られる補償
板は、このようなTN液晶セルに対する視野角補償にお
いて特に著しい効果を発揮する。
【0009】尚、公知技術である駆動電極を細分化した
画素分割方式、液晶のプレチルト方向を二方向または多
方向に分割したデュアルドメイン方式やマルチドメイン
方式は、液晶ディスプレイの視野角拡大を液晶セル側か
ら行おうという試みで考えられたものである。この様な
視野角がある程度改善された液晶ディスプレイに対して
も本発明の補償板は、有効に作用し、更なる視野角拡大
が可能となる。
【0010】本発明の液晶表示素子用補償板の製造方法
の概略を図1に基づいて説明する。本発明においては先
ず配向基板11上に液晶低分子であるディスコティック
液晶性材料を塗布する。次に所定の温度で熱処理を行い
ディスコティック液晶を配向させた後冷却して配向形態
を固定化してディスコティック液晶性材料より成る薄膜
の層12を形成させる。次にこの薄膜の上に接着剤また
は粘着剤(以後、粘・接着剤と略す)13を介して透光
性基板14を貼り付ける。次に該薄膜を配向基板と薄膜
との界面で剥離して、ディスコティック液晶性材料より
成る該薄膜を透光性基板側に転写することにより本発明
の液晶表示素子用補償板15を製造することができる。
【0011】本発明において配向基板とは、液晶配向能
を有する基板を意味し、本発明で用いられる配向基板と
してはディスコティック液晶を配向させる能力および所
定の耐熱性、耐溶剤性を有し、かつディスコティック液
晶性材料より成る自己支持性を有しない薄膜を剥離でき
る剥離性をもつものであれば特に限定されない。配向
能、要求される耐熱性、耐溶剤性は、用いるディスコテ
ィック液晶性材料の種類と性質によって異なるため一概
にはいえないが、用いられる配向基板の代表例として
は、アルミニウム、鉄、鋼などの金属板、陶磁器製の
板、ほうろう板、ガラスなどのシート状あるいは板状の
基板の上に、公知の処方により得られる例えばラビング
処理したポリイミド膜、ポリビニルアルコール膜、あた
は酸化珪素の斜め蒸着膜などの配向能を付与した配向膜
を有するものが挙げられる。また他の例としては、ポリ
イミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリ
アミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケ
トン、ポリケトンサルファイド、ポリエーテルスルフォ
ン、ポリスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポ
リフェニレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレー
ト、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、ポ
リカーボネート、アクリル樹脂、ポリビニルアルコー
ル、セルロース系プラスチックス、エポキシ樹脂、フェ
ノール樹脂などのプラスチクスフィルムまたはシート表
面に、ラビング処理したポリイミド膜、ポリビニルアル
コール膜、または酸化珪素の斜め蒸着膜などの配向能を
付与した配向膜を有する基板があげられる。またこれら
のプラスチックフィルム表面を直接ラビング処理した配
向基板などを挙げることができる。またこれらのプラス
チックスフィルムまたはシートのうち結晶性の高いもの
については1軸延伸するだけで低分子液晶の配向能を持
つものもあり、それらについては直接ラビング処理また
はラビングポリイミド膜などの配向膜が必要なく、その
まま配向基板として用いることができる。具体的にはポ
リイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテル
ケトン、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンサルファ
イド、ポリエチレンテレフタレートなどを挙げることが
できる。
【0012】これらの配向基板上にディスコティック液
晶性材料を塗布、乾燥、熱処理、冷却することにより、
液晶状態における配向形態を損なうことなく固定化され
た薄膜を配向基板上に形成する。
【0013】ここで本発明に用いられるディスコティッ
ク液晶性材料とは、液晶低分子であるディスコティック
液晶性化合物単独または実質的にディスコティック液晶
性化合物から成る組成物である。
【0014】一般にディスコティック液晶は、平面性の
高い円盤状の形をしたメソゲンを有する分子により発現
される液晶である。ディスコティック液晶の特徴は、液
晶層中の極微小領域における屈折率が負の一軸性を有す
ることであり、図2のように、ある平面内での屈折率が
等しく(noとする)、その平面に垂直な方向が光軸
(以下、ダイレクターという)であり、該ダイレクター
方向の屈折率をneとしたとき、no>neとなってい
る。こういった微小領域におけるダイレクターが液晶層
中でどの様に配列するかで、得られる構造体の屈折率特
性、ひいては光学特性が決定される。
【0015】本発明におけるディスコティック液晶性材
料より成る薄膜は、その配向条件、ディスコティック液
晶の種類、性質などによってその配向形態が異なる。配
向形態としては、ディスコティック液晶のダイレクター
が配向基板の法線方向にあるホメオトロピック配向(図
3のa)、該ダイレクターが配向基板の法線方向から一
定角度傾いたチルト配向などの負の一軸性構造(図3の
b)、または該ダイレクターがディスコティック液晶か
ら成る層の一方の界面とそれとは逆の他方の界面とでそ
の角度が異なったハイブリッド配向(図3のc)などが
挙げられる。
【0016】本発明における液晶性低分子のディスコテ
ィック液晶性材料より成る薄膜は、上記の配向形態を有
するもののうち、均一でモノドメインなディスコティッ
クネマティック相を示すとともに液晶状態において薄膜
の上界面と下界面との膜厚方向におけるディスコティッ
ク液晶分子のダイレクターが、配向基板平面への投影ベ
クトルは同一でありながら、該薄膜の上界面と下界面と
では該薄膜法線と該ダイレクターとのなす角度が異なっ
たハイブリッド配向を形成し、該配向形態を冷却した
後、該配向形態を固定化した薄膜である。但し以下で
は、他の配向形態を有する薄膜についても参考例として
説明する。
【0017】本発明でいうハイブリッド配向とは、単層
の薄膜において、該薄膜の両界面、すなわち配向基板側
の薄膜界面付近とそれとは逆の薄膜界面付近に存在する
ディスコティック液晶分子のダイレクターが、薄膜平面
での投影ベクトルが同一方向でありながら膜厚方向に於
ける角度が異なった配向形態をいう。その膜厚方向にお
ける角度範囲は、薄膜界面に存在するディスコティック
液晶分子のダイレクターと薄膜平面法線とのなす最小の
角度の絶対値、すなわち該液晶分子のダイレクターと薄
膜平面における法線とがなす鈍角側ではない角度(0度
以上90度以下の範囲となる角度)をa度とした際に、
[90度−a度]により求められる角度が、フィルムの
上面または下面の一方においては、通常60度以上90
度以下の角度をなし、当該面の反対面においては、通常
0度以上50度以下である。より好ましくは一方の角度
の絶対値が80度以上90度以下、他方の角度の絶対値
が0度以上30度以下である。
【0018】本発明の液晶表示素子用補償板を構成する
ディスコティック液晶性材料から成る薄膜は、好ましく
はハイブリッド配向を形成しているためにダイレクター
が厚み方向で異なる方向を向いており、薄膜という構造
体として見た場合、もはや光軸は存在せず一軸性は失わ
れている。このような、液晶の配向形態中を光が通過す
る際、従来得られなかった複雑な複屈折挙動を観察する
ことができる。
【0019】本発明に用いられるディスコティック液晶
性材料は、その液晶状態における配向形態を損なうこと
なく固定化するために、固定化時に液晶相から結晶相へ
の転移が起こらないものが好ましい。また薄膜を形成し
た際、使用条件下で配向形態が保たれ、かつ固体と同様
に取扱いができるものが望ましい。なおここで固定化さ
れた状態とは、液晶構造がアモルファスなガラス状態で
凍結された状態が最も典型的、かつ好ましい態様ではあ
るが、それだけには限定されず、液晶表示素子用補償板
の使用条件下、具体的には、通常0℃から50℃、より
過酷な条件下では−30℃から70℃の温度範囲におい
て、該薄膜に流動性が無く、また外力や外場によって配
向形態に変化を生じさせることなく、液晶状態において
形成した配向形態を安定に保ち続けることがきる状態を
意味する。
【0020】以上のことより、本発明に用いられるディ
スコティック液晶性材料を構成するディスコティック液
晶としては以下のいずれかの性質を持つものが好まし
い。 液晶状態より低温域にガラス相のみを有し、結晶相
を持たない。液晶状態より温度を下げていくとガラス状
態で固定化される。 液晶状態より低温域に結晶相を有し、さらに結晶相
より低温域にガラス相を有するものであって、液晶状態
から温度を下げたとき、結晶相が出現せず(結晶相が過
冷却する場合、または昇温時のみに結晶化を起こすモノ
トロピックな場合)、液晶状態より温度を下げていくと
ガラス状態で固定化される。 液晶状態より低温域に結晶相を有するが、さらに低
温域においては、明瞭なガラス転移を示さないものであ
って、液晶状態から温度を下げたとき、結晶相が出現し
ない(結晶相が過冷却する場合、または昇温時にのみ結
晶化を起こすモノトロピックな場合)。この場合、融点
(固定化した後、再度高温に加熱したとき観測される)
よりさらに低い温度では、分子の流動性が極めて制限さ
れた状態にある、実用上固体のものと見なせる。 液晶状態より低温域で、昇温過程および降温過程に
おいても明瞭な結晶への転移もガラス状態への転移も観
測されないが、液晶状態における配向形態を固定化した
際、液晶表示素子用補償板の使用温度範囲内で流動性が
全く無く、かつズリなどの外力は外場を加えても配向形
態が変化しない。
【0021】上記のうち、より好ましいものはおよび
のいずれかの場合であり、最も好ましいのはの性質
を持ったものを用いる場合である。なお、およびの
いずれの場合でも実用上問題なく用いることができる
が、該補償板としての使用条件下で配向の乱れが起こる
可能性がないことを注意深く確かめる必要性がある。具
体的には、通常0℃から50℃の温度範囲内において、
例えばズリなどを強制的に加え、配向形態に乱れが生じ
なければ特に問題はない。ズリなどによって配向形態に
乱れが生じた場合、本来の光学特性は失われ、その後如
何なる処理を施しても元の配向状態に戻すことは困難で
あり、実際の使用において大きな問題となる。
【0022】次に、ディスコティック液晶性材料を構成
するディスコティック液晶性化合物について具体的に説
明する。該化合物の構造は、主にディスコティック液晶
相を発現するのに必須の円盤状の中心部分(ディスコゲ
ン)と、液晶相を安定化するために必要な置換基とで構
成される。該置換基としては、一官能性、二官能性のも
のなどが用いられ、一官能性の置換基のみで構成される
ディスコティック液晶や、二官能性の置換基でもってデ
ィスコゲン同士が連結したダイマー、トリマーなどのオ
リゴマー化したディスコティック液晶、またはこれらの
組成物などを用いることができる。本発明でいう液晶低
分子とは、これらすべてを含めて定義するものであっ
て、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリシロ
キサン、ポリマロネート、ポリペプチド、ポリエステル
などの主鎖型あるいは側鎖型の高分子の側鎖としてディ
スコティック液晶性の置換基を結合せしめた、液晶高分
子のディスコティック液晶は含まない。以下、本発明に
用いることができるディスコティック液晶の分子構造の
具体例を示す。
【0023】
【化1】
【0024】
【化2】
【0025】
【化3】
【0026】
【化4】
【0027】
【化5】
【0028】
【化6】
【0029】
【化7】
【0030】
【化8】
【0031】
【化9】
【0032】
【化10】
【0033】上記に例示した、分子構造は、ディスコテ
ィック液晶性化合物の典型的な例であり、本発明はこれ
らに限定されるものではない。前記した性質を有する液
晶低分子に相当する化合物であれば、如何なる構造のデ
ィスコティック液晶性化合物でも単一化合物または組成
物として本発明に用いることができるが、中でも本発明
のディスコティック液晶性材料としては、エステル結合
またはエーテル結合、好ましくはエステル結合によって
置換基が結合したトリフェニレン誘導体、トルクセン誘
導体または該誘導体から実質的になる組成物が好まし
い。
【0034】本発明に用いられるディスコティック液晶
性材料を構成するディスコティック液晶性化合物は、液
晶相から結晶相へ転移することを避けるために、ディス
コゲンについた複数の置換基が全て同一ではない該化合
物を用いることが、また、置換基が全ての同一のディス
コティック液晶性化合物を用いる場合には、該化合物と
は異なる少なくとも1種のディスコティック液晶性化合
物(ディスコゲンおよび/または置換基の異なるディス
コティック液晶性化合物)との組成物として用いること
が望ましい。
【0035】なお、上記のディスコティック液晶性化合
物は、分子内にエーテル結合やエステル結合を多く含む
ものが主であるが、これらの結合生成には公知の反応方
法を用いることができる。例えば、エーテル結合生成に
は、第一アルキルのハロゲン化合物に、アルコキシドイ
オンを求核置換反応させるWilliamson法など
が利用でき、エステル結合生成には、酸塩化物とアルコ
ールの反応である酸クロライド法や、アルコールのアセ
チル化物と酸との反応である脱酢酸反応など適宜の方法
を用いることができ、特に限定されない。また本発明に
用いられるディスコティック液晶性化合物は、ディスコ
ゲンを構成する化合物の置換する部位における置換基選
択といった反応制御をする必要性がないので、例えば、
構造式の具体的な描写は難しいが、ディスコゲンを構成
する化合物と該化合物が有する置換部位の数よりも、過
剰の多種類にわたった置換基となりうる化合物とを、一
つの反応系内で反応させ、ディスコティック液晶性化合
物を得ることも可能である。この場合には、ある種の置
換基はあるディスコゲンを構成する化合物の分子中には
結合してはいないが、別の該化合物の分子中には結合し
ている、ということが起こることになる。本発明では、
液晶相から結晶相への転移が起こっては望ましくないの
で、例えば分子構造の対称性を低下させるなど、上記の
如き多種類の置換基を用いることは本発明において好ま
しい態様である。
【0036】なお、市販されているディスコティック液
晶性化合物を単独また組成物として用いる場合、前記の
如き性質を有するものであれば特に問題なく使用できる
ことはいうまでもない。
【0037】以上説明したディスコティック液晶性材料
は、配向基板上に通常溶液塗布により配される。この際
の溶媒としては、ディスコティック液晶性材料の種類に
もよるが、通常、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩
化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリク
ロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼ
ン、オルソジクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素
類、フェノール、パラクロロフェノールなどのフェノー
ル類、ベンゼン、トルエン、キシレン、メトキシベンゼ
ン、1,2−ジメトキシベンゼンなどの芳香族炭化水素
類、アセトン、酢酸エチル、tert−ブチルアルコー
ル、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレング
リコール、ヘキシレングリコール、エチレングリコール
モノメチルエーテル、ジエチリレングリコールジメチル
エーテル、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ、2−
ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ピリジン、
トリエチルアミン、ジメチルホルムアミド、ジメチルア
セトアミド、アセトニトリル、ブチロニトリル、二硫化
炭素など、およびこれらの混合溶媒などが用いられる。
【0038】溶液の濃度は、ディスコティック液晶性材
料の溶解性や薄膜の膜厚に依存するため一概にはいえな
いが、通常1〜60重量%の範囲で用いられ、好ましく
は3〜40重量%の範囲で用いる。
【0039】上記の如きディスコティック液晶性材料溶
液を用いて、配向基板上に薄膜を形成する方法について
さらに詳しく説明する。先ず用いるディスコティック液
晶性材料溶液に応じて配向基板を選ぶことが重要であ
る。すなわち、ディスコティック液晶性材料溶液を調製
するために用いる溶媒に侵されず、熱処理するときの温
度に耐えられる配向基板を選ぶ必要がある。また後の転
写工程においては、薄膜をこの配向基板から剥離するた
めに適度な剥離性を有することが望ましい。
【0040】これらの配向基板としては既に述べたが、
例えばラビングポリイミド膜を有する基板、ラビングポ
リイミド基板、ラビングポリエーテルエーテルケトン基
板、ラビングポリエーテルケトン基板、ラビングポリエ
ーテルスルフォン基板、ラビングポリフェニレンサルフ
ァイド基板、ラビングポリエチレンテレフタレート基
板、ラビングポリエチレンナフタレート基板、ラビング
ポリアリレート基板、セルロース系プラスチックス基板
などがこれらの性質を満足させ特に望ましい。
【0041】これらの配向基板上に、例えばスピンコー
ト法、ロールコート法、プリント法、浸漬引き上げ法、
カーテンコート法(ダイコート法)などによって、ディ
スコティック液晶性材料溶液を塗布する。なお本発明の
製造方法では、1枚または2枚の配向基板を利用して該
薄膜を形成することができるが、通常、配向基板と空気
界面とを利用して、該薄膜を形成する方がコスト面、製
造ラインの簡略化において望ましい。
【0042】塗布した後溶媒を除去し、配向基板上に膜
厚の均一な液晶低分子であるディスコティック液晶性材
料の層を形成する。溶媒除去条件は特に限定されず、溶
媒が概ね除去でき、該液晶性材料の層が流動したり流れ
落ちたりしなければよい。通常、室温での風乾、ホット
プレートでの乾燥、乾燥炉での乾燥、温風や熱風の吹き
付けなどを利用して溶媒を除去する。
【0043】溶媒を除去した後、熱処理によって好まし
くは均一でモノドメインな薄膜を配向基板上に形成す
る。熱処理は、ディスコティック液晶性材料の液晶状態
で配向させるか、または一旦液晶相を呈する温度範囲よ
りもさらに高温の等方性流体状態にした後、液晶相を呈
する温度範囲にまで温度を下げることにより行う。通常
熱処理温度は、50〜300℃の範囲で行われ、特に1
00〜270℃の範囲が好適である。さらに150〜2
50℃の温度が好適である。配向膜上で液晶状態におい
て十分な配向を得るために必要な時間は、ディスコティ
ック液晶性材料の種類、分子量などによって異なり、一
概にはいえないが通常5秒〜2時間の範囲、好ましくは
10秒〜40分の範囲、特に好ましくは20秒〜20分
の範囲で行う。5秒より短い場合、ディスコティック液
晶性材料層の温度が所定温度まで上がりきらず配向不十
分となる恐れがある。また、2時間より長い場合には生
産性が低下するのであまり好ましくない。
【0044】なお、ディスコティック液晶性材料を溶融
状態で、配向基板上に塗布した後熱処理をすることによ
っても、同様の配向形態を得ることができる。また、熱
処理を行いつつディスコティック液晶性材料層に電場や
磁場を印加しながら配向させても特に構わない。
【0045】こうして得られた配向形態を、次に該液晶
性材料のガラス転移点以下の温度に冷却することによっ
て、液晶状態に於ける配向形態を損なわずに固定化でき
る。一般的に冷却の過程で結晶相が出現する場合、液晶
状態における配向は結晶化にともない破壊されてしまう
が、本発明に用いるディスコティック液晶性材料は結晶
相を全く有しないか、潜在的に結晶相を有していても冷
却時には結晶相が現れない性質を持ったもの、あるいは
明瞭な結晶転移点および液晶転移点は確認されないもの
の補償素子としての使用温度範囲内においては流動性が
なく、かつ外場や外力を加えても配向形態が変化しな
い、というような性質のものを用いるため結晶化による
配向形態の破壊は起こらない。冷却の条件は、熱処理雰
囲気中から室温中に取り出すだけで均一に固定化するこ
とができる。また空冷、水冷などの強制冷却、徐冷など
を行っても何ら差し支えなく、さらに冷却速度にも特に
制限はない。
【0046】本発明においてディスコティック液晶性材
料から成る薄膜の液晶分子の配向形態は、該液晶性材料
の種類、配向基板の種類、配向処理の処方、熱処理条件
などによって種々の形態が形成可能であるために一概に
はいえないが、液晶表示素子用の補償板として顕著な補
償効果を発現できるのはハイブリッド配向を形成した薄
膜である。
【0047】上記のハイブリッド配向において、薄膜法
線と薄膜界面に存在するディスコティック液晶分子のダ
イレクターと薄膜平面とのなす角度の絶対値が、薄膜の
上面または下面の一方においては、0度以上90度以下
の範囲内、また当該面の反対面においては、0度以上5
0度以下の範囲内において、使用するディスコティック
液晶性材料、配向基板などを適宜選択することにより所
望の角度にそれぞれ調整することができる。また、いっ
たん薄膜を形成した後でも、例えば、薄膜表面を均一に
削る、溶剤に浸して薄膜の表面を均一に溶かす、などと
いった方法を用いることにより所望の角度に調整するこ
とができる。尚この際に用いられる溶剤は、ディスコテ
ィック液晶性材料、配向基板の種類によって適宜選択す
る。
【0048】次に、転写工程について説明する。先ず、
こうして得られた配向基板上のディスコティック液晶性
材料より成る薄膜と他の透光性基板とを、接着剤または
粘着剤を用いて貼り付ける。次に配向基板とディスコテ
ィック液晶性材料より成る薄膜の界面で配向基板を剥離
し、該薄膜を透光性基板側に転写して本発明の液晶表示
素子用補償板が製造される。
【0049】転写に用いられる透光性基板としては、適
度な平面性を有するものであれば特に限定されないが、
具体的にはガラスや透明で光学的等方性を有するプラス
チックフィルムが好ましい。かかるプラスチックフィル
ムの例としては、ポリメタクリレート、ポリスチレン、
ポリカーボネート、ポリエーテルスルフォン、ポリフェ
ニレンサルファイド、ポリアリレート、アモルファスポ
リオレフィン、トリアセチルセルロースあるいはエポキ
シ樹脂などをあげることができる。なかでもポリメチル
メタクリレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、
トリアセチルセルロース、ポリエーテルスルフォンなど
が好ましく用いられる。また、光学的に異方性であって
も、目的とする補償板として使用に問題とならないもの
であれば使用することができる。このような例として
は、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムやポリカ
ーボネートなどの位相差フィルムがあげられる。
【0050】また用いられる透光性基板の別な種類とし
て偏光フィルムを例示することができる。偏光フィルム
は液晶ディスプレイに必須な光学素子であり、基板とし
て偏光フィルムを用いれば、本発明の補償板と偏光フィ
ルムが一体化された補償板を得ることができ、極めて好
都合である。
【0051】さらに用いられる透光性基板の例として液
晶表示セルそのものをあげることができる。液晶表示セ
ルは、上下2枚の電極付きのガラス基板またはプラスチ
ックフィルム基板から構成されており、この上下いずれ
か、あるいは両面のガラス上またはプラスチック上に本
発明により得られる補償板を転写すれば、表示セルの基
板ガラスまたは基板プラスチックそのものが目的の補償
板となる。
【0052】一方、反射型の液晶表示素子に本発明の補
償板を用いる場合においては、転写に用いられる透光性
基板として、透明および不透明なガラス板、プラスチッ
クフィルム、金属板を例示できる。かかる金属板として
は銅、ステンレス、アルミニウムなどをあげることがで
きる。
【0053】転写に用いられる透光性基板とディスコテ
ィック液晶性材料より成る薄膜とを貼りつける接着剤ま
たは粘着剤(粘・接着剤)は、光学グレードのものであ
れば特に制限はないが、アクリル系、エポキシ系、エチ
レン−酢ビ共重合体系、ゴム系、ウレタン系、およびこ
れらの混合系などを用いることができる。また接着剤と
しては、熱硬化型、光硬化型、電子線硬化型などのいず
れの接着剤でも光学的等方性を有していれば問題なく使
用することができる。
【0054】本発明の転写は、接着後配向基板を該薄膜
との界面で剥離することにより行える。剥離の方法は、
ロールなどを用いて機械的に剥離する方法、構造材料す
べてに対する貧溶媒に浸漬したのち機械的に剥離する方
法、貧溶媒中で超音波をあてて剥離する方法、配向基板
とディスコティック液晶性材料より成る薄膜との熱膨張
係数の差を利用して温度変化を与えて剥離する方法、配
向基板そのもの、または配向基板上の配向膜を溶解除去
する方法などを例示することができる。剥離性は、用い
るディスコティック液晶性材料と配向基板の密着性によ
って異なるため、その系に最も適した方法を採用すべき
である。
【0055】また透光性基板上にディスコティック液晶
性材料より成る薄膜を転写した後、該薄膜表面の保護の
ために透明プラスチックフィルムなどの保護層などを設
けることもできる。
【0056】この様に本発明の製造方法により、各種構
成の補償板が得られ、例えばディスコティック液晶性材
料より成る薄膜層/粘・接着剤層/透光性基板層や、保
護層/該薄膜層/粘・接着剤層/透光性基板層などの積
層補償板が製造される。
【0057】このようにして得られた本発明の補償板
は、前記の通り液晶ディスプレイに対して色・視野角補
償効果をもつ。なかでもTN液晶セルをノーマリホワイ
トモードで駆動するディスプレイに対しては視野角補償
効果およびOCBモードの液晶ディスプレイに対しては
色・視野角補償効果を発現する。本発明の補償板が各種
液晶ディスプレイに対して補償効果を示すための補償層
の膜厚は、対象とする液晶ディスプレイの方式やパラメ
ーターに依存するので一概にはいえないが、通常0.1
μm以上40μm以下の範囲であり、より好ましくは
0.2μm以上20μm以下の範囲、特に好ましくは
0.4μm以上10μm以下の範囲である。膜厚が0.
1μmより薄い場合、補償効果が十分得られない恐れが
ある。膜厚が40μmを越える場合は、ディスプレイの
表示が不必要に色づく恐れがあり好ましくない。
【0058】ただし本発明の補償板の性能をより高く引
き出すためには、補償板のパラメーターや軸配置をさら
に詳細に考慮することが好ましい。一般に、補償板の構
造を特徴づける光学パラメーターや物性値としては、ダ
イレクターの角度、膜厚、見かけの面内リターデーショ
ン、平均チルト角を挙げることができ、それらについて
以下に説明する。
【0059】先ず補償板のダイレクターがディスコティ
ック液晶性材料より成る薄膜平面となす角は、該薄膜の
上面もしくは下面の一方においては60度以上90度以
下の角度をなし、当該面の反対面においては0度以上5
0度以下であることが好ましい。この条件を満たさない
場合、液晶セルの選択表示時における屈折率構造の特徴
である基板界面付近で液晶分子のダイレクターが基板に
略平行、膜厚方向の中央部で略垂直という屈折率の変化
に対し、補償を十分に行えなくなる恐れがある。本補償
板を構成するディスコティック液晶性材料より成る薄膜
のダイレクターが該薄膜平面となす角度は、より好まし
くは一方が70度以上90度以下、他方が0度以上30
度以下である。
【0060】次に補償板の膜厚は、液晶のもつ固有の複
屈折値との関連において制御する必要がある。ここでい
う固有の複屈折値(以下△nとも呼ぶ)とは、本発明の
製造方法により得られる補償板を構成しているディスコ
ティック液晶性材料より成る薄膜に用いているディスコ
ティック液晶性材料が、極微小領域においてもつダイレ
クターに垂直な方向の屈折率(以下noとも呼ぶ)とダ
イレクターに平行な方向の屈折率(以下neとも呼ぶ)
の差のことである。このような屈折率はアッベ屈折計
が、連続的に屈折率が変化する構造であっても、測定界
面近傍の情報を提供する性質があることを利用して求め
ることもできる。また、ディスコティック液晶性材料を
2枚の同じ界面の基板に挟んでハイブリッド配向形態を
抑制し、ダイレクターが一方向に向くように配向せしめ
た試料を測定することに依っても求めることができる。
このようにして得られた固有の複屈折値と補償板を構成
しているディスコティック液晶性材料より成る薄膜の絶
対膜厚との積の絶対値は、TN液晶ディスプレイを補償
する場合、20nm以上1000nm以下の範囲であ
り、好ましくは50nm以上600nm以下であり、特
に好ましくは100nmから400nm以下の範囲であ
る。この範囲にある場合、本発明の製造方法によって得
られた補償板は、十分な補償効果を発現する。20nm
未満の時は、液晶ディスプレイの視野角特性をほとんど
変化させることができない恐れがある。また1000n
mを超える時は、液晶表示に不必要な色付きが生じる恐
れがある。尚、本発明の製造方法によって得られた補償
板は、ディスコティック液晶性材料より成る薄膜を複数
枚または該製造法によって得られた補償板自体を複数枚
で使用することもできるが、その場合、それぞれのディ
スコティック液晶性材料より成る薄膜について、固有の
複屈折値と絶対膜厚との積の値の絶対値が、これらの範
囲内にあることが好ましい。OCBモードのディスプレ
イを補償する場合は、上記の値は通常50nm以上20
0nm以下が好ましい。
【0061】次に正面における、面内の見かけのリター
デーション値について説明する。ハイブリッド配向で
は、ダイレクターが一般に薄膜平面に対して垂直な方向
にないために、薄膜平面に垂直な方向から観察したと
き、見かけ上複屈折が生じることになる。ダイレクター
をディスコティック液晶性材料より成る薄膜面内に投影
したとき得られる方向が、見かけ上進相軸で、それと垂
直な面内の方向が遅相軸となる。この正面における、見
かけのリターデーション値は、エリプソメトリー等の偏
光光学測定により容易に求めることができる。例えば見
かけのリターデーション値を測定した結果が、図4の如
きリターデーション変化をした場合には、このことから
ディスコティック液晶分子は図3の(c)のモデルのよ
うなハイブリッド配向を形成していることが推定され
る。
【0062】本発明の補償板を構成するディスコティッ
ク液晶性材料より成る薄膜における、見かけのリターデ
ーション値は、TN液晶ディスプレイを補償する場合、
550nmの単色光に対し、通常5nmから500nm
の範囲、より好ましくは10nmから300nmの範
囲、特に好ましくは15nmから150nmの範囲であ
る。見かけのリターデーション値が、5nm未満の場合
には、補償効果があまり期待できない恐れがある。また
500nmより大きい場合には、斜めからみたときにT
Nモードの液晶ディスプレイに不必要な色付きが生じる
恐れがある。本発明の補償板またはディスコティック液
晶性材料から成る薄膜を複数枚で使用する場合は、それ
ぞれの該薄膜の見かけのリターデーション値の絶対値が
これらの範囲内にあることが好ましい。
【0063】またOCBモードのディスプレイを補償す
る場合、上記の値は通常10nmから800nmの範囲
が好ましい。次に測定可能なパラメーターとして、見か
けの平均チルト角が挙げられる。これは、ディスコティ
ック液晶分子のダイレクターが基板法線となす角度の平
均的な値である。これは、結晶構造の解析に有効な、ク
リスタルローテーション法を応用して求めることができ
る。測定方法は以下の通りである。
【0064】まず直交した偏光子の間に、本発明の補
償板を挟む。但し、その配置の仕方は、ディスコティッ
ク液晶性材料より成る薄膜面における該薄膜のダイレク
ターの投影ベクトルと、偏光子の透過軸が45度の角度
を成すようにする。 次に、基板上の該薄膜を、基板面における該薄膜のダ
イレクターの投影ベクトル方向に沿って、該薄膜を基板
ごとに傾け、透過率を測定する。 ディスコティック液晶性材料より成る薄膜の傾き角と
透過率の関係から、平均チルト角を計算により求める。
【0065】尚、偏光子を補償板より光源に近い側に1
枚だけ置き、出射光を偏光解析して見かけのリターデー
ション値を求める方法も同様に採用することができる。
但しハイブリッド配向を形成したディスコティック液晶
性材料より成る薄膜を構成部材とした補償板は、光軸が
一定方向にある負の一軸性構造とは完全に等価ではな
い。すなわち、負の一軸性構造では一般に透過率がほぼ
ゼロに落ちつく傾き角度が存在し、これは試料の光軸に
沿って入射光が進んだことに対応している(但し、薄膜
界面での光の屈折を考慮する)。それに対しハイブリッ
ド配向では、光軸が存在しないため完全に透過率がゼロ
になる傾き角度は存在しない。そのため、透過率の極小
値あるいは透過率と傾き角の関係を示す曲線の曲率が最
も近い、均一チルト配向のチルト角を、ハイブリッド配
向を形成した該薄膜の平均チルト角とすることにする。
このようにして求められた平均チルト角は、通常2度か
ら60度の範囲であり、好ましくは5度から50度の範
囲、さらに好ましくは10度から45度の範囲である。
平均チルト角が2度未満の時は、補償効果があまり発現
されない恐れがある。また、平均チルト角が60度を超
える場合には、厚み方向の平均屈折率が、面内のそれに
比べて大きくなりすぎ、補償効果が十分に得られなくな
る恐れがある。
【0066】以上、本発明の製造方法によって得られる
ハイブリッド配向を形成した場合におけるディスコティ
ック液晶性材料より成る薄膜を構成部材とした補償板の
構造を詳述できる光学パラメーターや物性値として、ダ
イレクターの角度、膜厚、面内の見かけのリターデーシ
ョン値、平均チルト角について説明した。上記の値は、
全て測定可能であり、それぞれについて好ましい範囲内
にあることが当然好ましい。しかしながら、補償板の形
態によっては、全てについて測定が困難な場合がある。
このような場合、これらの値は互いに相関があるため、
これらのうち少なくとも2つを測定し、それぞれについ
て上述の好ましい範囲内にあれば実用上差し支えない。
例えば同じ液晶性材料を用い、同様な方法で配向させた
場合、本発明では一般に薄膜界面でのダイレクターの角
度や、平均チルト角は膜厚によらず一定であり、またリ
ターデーション値は膜厚に比例する。さらにディスコテ
ィック液晶性材料より成る薄膜のダイレクターが、該薄
膜の上界面および下界面において、補償板法線との成す
角度の間に平均チルト角は存在することになる。
【0067】本発明の補償板はさらにこれらの光学的に
重要なディスコティック液晶層を保護する目的で、ディ
スコティック液晶の片面または両面をアクリル系あるい
はエポキシ系などのオーバーコート層を設けることもで
きる。これらは本発明の補償板にとって本質的なもので
はないが、光学的には等方的であることが好ましく、こ
れらにより光学素子としての強度を増すことができ、製
品としての耐久性を増すことができる。
【0068】以上説明したように本補償板を、1枚また
は複数枚で使用することによりノーマリーホワイトモー
ドのTN液晶ディスプレイ、OCBモードの液晶ディス
プレイを始めとする種々の液晶ディスプレイに対して特
に視野角改善に絶大な効果を発揮する。また従来の液晶
高分子から成る補償板(補償素子)、例えば負の一軸性
屈折率構造を持つ光学フィルム、正の一軸性屈折率構造
をもつ光学フィルム、または二軸性の屈折率構造を持つ
光学フィルムなどと組み合わせて使用することも可能で
ある。さらに偏光板として、視野角依存性が改良された
偏光板と併せて使用することも可能である。但し、補償
に対して決定的な役割を果たすのは本発明の製造方法に
よって得られた補償板であり、従来の液晶高分子からな
る補償板(補償素子)のみをどのように組み合わせて用
いたとしても、本発明の製造方法によって得られた補償
板の如き優れた補償効果を発現させることは不可能であ
る。
【0069】以上のように、本発明の製造方法によって
得られる補償板を種々の液晶ディスプレイに備えること
によって、視角による僅かな色の変化や、明暗の変化も
殆ど感じることがない。また、ディスプレイを大面積化
した際にも、画面中央部と周辺部とで同一の表示を行う
ことも可能である。
【0070】なお本発明の製造方法によって得られる補
償板において、該補償板を構成しているディスコティッ
ク液晶性材料より成る薄膜を、ハイブリッド配向を形成
した該薄膜にした場合、ハイブリッド配向であるがゆえ
に、補償板の上下は等価でなく、どちらの面を駆動用液
晶セルに近い方にするかによって補償効果に多少の違い
が見られる。さらに該補償板においては、ダイレクター
がフィルム平面となす角は、フィルムの上面もしくは下
面の一方においては60度以上90度以下の角度をな
し、当該面の反対面においては0度以上50度以下であ
り、どちらの面を液晶セルに近い側にしてもよいが、ダ
イレクターがフィルム平面となす角度がより大きい面
(該角度が60度から90度である面)を駆動用液晶セ
ルに近く、偏光板から遠くなるように設置する方が望ま
しい。
【0071】以上のように種々の液晶ディスプレイに対
し優れた補償効果を発現することが可能な本発明の製造
方法によって製造された液晶表示素子用補償板は、液晶
性低分子であるディスコティック液晶を配向・固定化し
たこのであり、一旦固定化した薄膜は配向膜が必要でな
くなるという、これまで液晶低分子では不可能であった
ことを可能としたものであり、技術的価値が高い。また
ディスコティック液晶を用いて、ハイブリッド配向とい
う特異な配向形態でもって固定化できるため、該ハイブ
リッド配向を形成したディスコティック液晶性材料より
成る薄膜は光に対し特異な光学作用を発揮することがで
き、液晶表示素子用補償板をはじめとする様々な光学用
途に用いることが可能である、など工業的価値が極めて
高いものである。
【0072】
【実施例】以下に実施例を挙げ本発明をさらに詳しく説
明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0073】(実施例1)ヘキサヒドロキシトルクセン
50mmol、p−プロピルオキシ安息香酸クロリド
150mmol、p−オクチルオキシ安息香酸クロリ
ド 150mmolを1リットルの乾燥したピリジンに
溶かし、窒素雰囲気下、90℃で5時間溶液を攪拌し
た。次いで反応液を10リットルの水に投入し、沈澱を
ろ過により分離し、0.1N塩酸洗浄、純水洗浄し、乾
燥過程を経て、式(1)のディスコティック液晶性材料
(茶褐色の粉末65g)を得た。
【0074】
【化11】
【0075】この材料をメトラーホットステージ上で観
察すると、シュリーレン模様が見られND(ディスコテ
ィックネマチック)相をもつことがわかり、また冷却し
ても結晶相は全く現れなかった。この材料5gを45g
のクロロホルムに溶解させ10重量%のディスコティッ
ク液晶性材料溶液を調製した。この溶液を30cm角の
ラビング処理をしたポリイミドフィルムに印刷法により
塗布した。次いで80℃のホットプレート上で乾燥し、
オーブンで230℃で20分間熱処理した後、室温中に
取り出して冷却して、まずポリイミドフィルム(図1の
11に相当)上に、配向形態が固定化されたディスコテ
ィック液晶性材料の薄膜(図1の12に相当、液晶層)
を得た。次いで熱硬化型のエポキシ系接着剤(図1の1
3に相当)をディスコティック液晶性材料より成る薄膜
の上に塗布した後、透光性フィルムであるトリアセチル
セルロースフィルム(図1の14に相当)でラミネート
し、90℃で1時間放置して接着剤を硬化させた。次に
ポリイミドフィルムをはがして除去した。ディスコティ
ック液晶性材料より成る薄膜層は接着剤を介してトリア
セチルセルロースフィルム上にあり、該薄膜層/接着剤
/トリアセチルセルロースよりなる補償板(フィルム
1)は無色透明であった。干渉測定により液晶層の厚み
は3.0μmであることがわかった。エリプソメーター
を用いてフィルム1の偏光解析を行ったところ、まず正
面での見かけのリターデーション値は60nmであっ
た。見かけ上の進相軸は剥離前のポリイミドフィルムの
ラビング方向と平行なフィルム面内の方向にあった。次
に直交した偏光子の間にフィルム1を挟み、フィルム中
の液晶のダイレクターのフィルム面への投影ベクトル
と、偏光子の透過軸が45度の角度をなすように配置
し、フィルム1をダイレクターのフィルム面への投影ベ
クトル方向(ラビング方向に対応する方向と一致)にそ
って傾け、みかけのリターデーション値を測定した。図
4のようにリターデーション変化は左右で非対称であ
り、また、極小値に於いてリターデーション値はゼロに
はなっておらず、これらのことから液晶層中のディスコ
ティック液晶は、図3の(c)のモデルで示したよう
な、厚み方向で配向方向の異なるハイブリッド配向をと
っていることがわかった。また図4のリターデーション
変化を計算機によりシミュレーションし、平均チルト角
19度という結果を得た。なお、ディスコティック液晶
の屈折率は、no=1.65 ne=1.56であっ
た。
【0076】(実施例2)ヘキサアセトキシキシトリフ
ェニレン 0.5mol、p−ブトキシ安息香酸1mo
l、6−ヘプチルオキシ−2−ナフトエ酸 2molを
3リットルのセパラブルフラスコに入れ、窒素雰囲気
下、260℃で15時間攪拌しながら反応させた。次い
で270℃、10mmHgで未反応物を除去し、フラス
コから溶融状態の反応生成物を取り出して、式(2)の
ディスコティック液晶性材料700gを得た。
【0077】
【化12】
【0078】この材料をメトラーホットステージ上で観
察すると、シュリーレン模様が見られND相をもつこと
がわかり、また冷却しても結晶相は全く現れなかった。
この材料500gを4.5kgのフェノール/テトラク
ロロエタン混合溶媒(重量比6/4)に溶解させ10重
量%の溶液を調製した。配向基板としては幅40cm、
長さ500mのポリエーテルエーテルケトンフィルムを
選び、このフィルムをフィルム長手方向に沿ってラビン
グした。ディスコティック液晶性材料溶液をロールコー
ト法により、ラビング処理したポリエーテルエーテルケ
トンフィルム上に連続的に塗布した。次いで80℃の温
風で大部分の溶媒を除去した後、長さ10mの220℃
に設定された熱処理炉に1m/分の搬送速度で送り出し
(処理時間10分)、液晶を配向させ、室温中で冷却し
て液晶配向を固定化させた。ディスコティック液晶性材
料より形成された薄膜層の厚みは1.5μmであった。
次いで粘着層を有するトリアセチルセルロースフィルム
を、該薄膜層と粘着層が接するように貼り合わせ、ポリ
エーテルエーテルケトンフィルムを除去することによ
り、トリアセチルセルロースフィルム上に、粘着剤を介
して、液晶層を転写した。転写後のディスコティック液
晶性材料より形成された薄膜層の表面は傷つきやすいた
め、表面にハードコード剤を塗布して保護し、ハードコ
ート層/該薄膜層/粘着層/トリアセチルセルロースの
4層よりなる透明な補償板(フィルム2)を作製した。
エリプソメーターを用いてフィルム2の偏光解析を行っ
たところ、まず正面での見かけのリターデーション値は
40nmであった。見かけ上の進相軸はフィルムの長手
方向にあった。次に直交した偏光子の間にフィルム2を
挟み、フィルム中の液晶のダイレクターのフィルム面へ
の投影ベクトルと、偏光子の透過軸が45度の角度をな
すように配置し、フィルム2をダイレクターのディスコ
ティック液晶性材料より形成された薄膜面への投影ベク
トル方向(ラビング方向に対応する方向と一致)にそっ
て傾け、みかけのリターデーション値を測定した。図5
の結果が得られ、ディスコティック液晶はハイブリッド
配向をとっており、平均チルト角は27度であった。次
にフィルム2を2枚用い、TNセル(90度ねじれ、リ
ターデーション480nm)に対する視角補償効果を調
べた。図6に示した配置でTNセルの上下偏光板間にフ
ィルム2を1枚ずつ挟みコントラストを測定した。その
結果図7に示したように、本発明のフィルム2を用いた
液晶表示装置はフィルム2が無い場合に比べ、コントラ
スト比100以上の領域が大きく広がることがわかっ
た。
【0079】(実施例3)ディスコティック液晶性材料
として、式(3)のテレフタル酸単位で一部トリフェニ
レン骨格を連結させたオリゴマー組成物を合成した。
【0080】
【化13】
【0081】この組成物は、結晶相を持たず、ND相よ
り低温でガラス転移を示した。この組成物を、ブチルセ
ロソルブに加熱しながら溶かし、7重量%のディスコテ
ィック液晶性材料溶液を得た。基板としては厚さ75μ
m、幅60cm、長さ500mのポリエチレンテレフタ
レートフィルムを選び、フィルム長手方向に沿ってラビ
ング処理をした。次いで、ロールコーターによりディス
コティック液晶性材料溶液を塗布し、乾燥、180℃の
熱処理、冷却固定化により、ポリエチレンテレフタレー
ト上のハイブリッド配向したディスコティック液晶性材
料より形成された薄膜を得た。干渉測定により液晶層の
膜厚は1.5μmであった。次に、トリアセチルセルロ
ース上に紫外線硬化性の接着剤を介してディスコティッ
ク液晶性材料より成る薄膜層を転写した(フィルム3−
a)。さらに、トリアセチルセルロース上に沃素を含浸
させたポリビニルアルコールの膜を形成したものを別途
作製した(フィルム3−b)。フィルム3−aとフィル
ム3−bを薄膜層とポリビニルアルコール層を向き合う
ようにし、その間を熱硬化性の接着剤で接合し、複屈折
機能をもつディスコティック液晶性材料より形成された
薄膜層と偏光機能を同時に有する楕円偏光板(フィルム
3−c)を作成した。フィルム3−cの構成は、図8に
示した。
【0082】(実施例4)ディスコティック液晶性材料
として式(4)のオリゴマー組成物を合成し、N−メチ
ルピロリドンに溶かし、20重量%のディスコティック
液晶性材料溶液を得た。
【0083】
【化14】
【0084】基板として厚さ75μm、幅40cm、長
さ500mのポリフェニレンサルファイドフィルムを選
び、このフィルムに対して、ラビングロールを45度傾
け、フィルム長手方向に対して斜めにラビング処理をし
た。次いで、ダイコート法により塗布し、乾燥、230
℃の熱処理、冷却固定化により、ポリフェニレンサルフ
ァイド上の配向したディスコティック液晶性材料より形
成された薄膜を得た。干渉測定により液晶層の膜厚は
5.0μmであった。次に、粘着層を有する偏光板を貼
り合わせディスコティック液晶性材料より成る薄膜層を
転写し、複屈折機能をもつ該薄膜層と偏光機能を同時に
有する楕円偏光板(フィルム4)を作成した。転写後の
液晶層表面に粘着加工を施し、液晶セルなどに貼り合わ
せられるようにした。フィルム4の構成を図9に示し
た。
【0085】(実施例5)ディスコティック液晶性材料
として式(5)の組成物を合成し、ジエチレングリコー
ルジエチルエーテルに溶かし、10重量%のディスコテ
ィック液晶性材料溶液を得た。
【0086】
【化15】
【0087】基板として厚さ75μm、幅40cm、長
さ500mのポリエチレンナフタレートフィルムを選
び、このフィルムに対して、フィルム長手方向に沿って
ラビング処理をした。次いで、ダイコート法により塗布
し、乾燥、200℃の熱処理、冷却固定化により、ポリ
エチレンナフタレート上に配向形態が固定化されたディ
スコティック液晶性材料より成る薄膜を得た。干渉測定
により該薄膜の膜厚は2.5μmであった。次いで紫外
線硬化型のアクリル系の接着剤をディスコティック液晶
性材料より形成された薄膜層の上に塗布した後、透光性
フィルムであるポリエーテルスルフォンでラミネート
し、高圧水銀灯の光を照射して接着剤を硬化させた。次
にポリエチレンナフタレートを剥離して、ポリエーテル
スルフォンに該薄膜層を転写し、さらにディスコティッ
ク液晶性材料より成る薄膜層表面をソフトコート剤で保
護した。液晶ディスプレイの補償板として用いるため
に、ソフトコート剤の上に偏光板を粘着剤を介して貼り
合わせ、ポリエーテルスルフォンの表面に、他の部材に
貼り合わせられるように粘着加工を施した。なお、配向
固定化されたディスコティック液晶性材料より形成され
た薄膜層の光による劣化を防ぐ目的で、粘着剤には紫外
線吸収剤および酸化防止剤を添加したものを用いた。補
償板(フィルム5)を含む構成物を図10に示した。
【0088】
【発明の効果】本発明の液晶表示素子用補償板の製造方
法は、液晶低分子であるディスコティック液晶からなる
薄膜を、配向膜を有しない透光性基板状に液晶状態にお
いて形成した配向形態を保持した状態で維持することが
でき、また配向基板と透光性基板との役割を分離したた
め、用いるディスコティック液晶の選択の自由度および
用いる基板の選択の自由度が大幅に広がり、様々な性能
および形態の各種液晶ディスプレイの視野角改良、色補
償などに効果的な補償板を製造する事ができ極めて工業
的価値が高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の液晶表示素子用補償板の製造方法の模
式図。 11 配向基板 12 ディスコティック液晶層 13 接着剤または粘着剤層 14 透光性基板 15 本発明の補償板
【図2】ディスコティック液晶のもつ固有の屈折率分布
とダイレクターについての関係の図。
【図3】ディスコティック液晶のとり得る配向構造の模
式図、図中の矢印がダイレクター。 (a)はダイレクターが基板面に垂直な負の一軸性構造 (b)は基板面に対して一定角度チルトした負の一軸性
構造 (c)は本発明の補償板が有するダイレクターが厚み方
向で徐々に変化するハイブリッド配向、図中の矢印が液
晶のダイレクター方向、ダイレクター方向は頭と尾の区
別はないが便宜上矢印とした。
【図4】基板上に形成したままの状態の補償フィルム
を、基板のラビング方向に沿って傾け、見かけのリター
デーションを測定した結果、図中にフィルムを傾ける方
向を説明する図を示した、また図中の液晶のダイレクタ
ーの傾き方向は本測定で得られた結果をもとに模式的に
表したもの。
【図5】基板上に形成したままの状態の補償フィルム
を、基板のラビング方向に沿って傾け、見かけのリター
デーションを測定した結果。図中にフィルムを傾ける方
向を説明する図を示した。また図中の液晶のダイレクタ
ーの傾き方向は本測定で得られた結果をもとに模式的に
表したもの。
【図6】実施例2で用いた液晶表示装置の斜視図。 20 偏光板 21 フィルム2 22 ディスコティック液晶層 23 粘着剤付トリアセチルセルロースフィルム 24 TN液晶セル 25 偏光板の透過軸 26 セル基板のラビング方向 27 ポリエーテルエーテルケトンフィルムのラビング
方向に対応する方向
【図7】実施例で得られた視野角特性。図中の曲線がコ
ントラスト100の等コントラスト曲線を示す。3つの
同心円はそれぞれ視角θ=20度、40度および60度
を表し、点線で示した十字は方位角φ=0、90度、1
80度および270度を表す。 (a)補償板(フィルム2)のない場合の比較例 (b)補償板(フィルム2)を用いた場合の実施例
【図8】実施例3で作成した楕円偏光板(フィルム3−
C)の構成を示す断面図 31,35:トリアセチルセルロースフィルム 32:ディスコティック液晶性材料より形成された薄膜
層 33:接着剤層 34:よう素を含むPVA層(偏光層)
【図9】実施例4で作成した楕円偏光板(フィルム4)
の構成を示す断面図。 41:離型フィルム 42,44:粘着剤層 43:ディスコティック液晶性材料より形成された薄膜
層 45:偏光板
【図10】実施例5で作成した補償板(フィルム5)を
含む構成物の断面図 51:離型フィルム 52,57:粘着剤層(紫外線吸収剤、酸化防止剤を含
む) 53:ポリエーテルスルフォンフィルム 54:接着剤層 55:ディスコティック液晶性材料より形成された薄膜
層 56:ソフトコート層 58:偏光板
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 熊谷 吉弘 神奈川県横浜市中区千鳥町8番地 日本 石油株式会社中央技術研究所内 (56)参考文献 特開 平7−287119(JP,A) 特開 平4−57017(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G02B 5/30

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 配向基板上に液晶低分子であるディスコ
    ティック液晶性材料より形成した薄膜であって、ディス
    コティック液晶性材料が液晶状態において薄膜の上面と
    下面におけるディスコティック液晶分子のそれぞれのダ
    イレクターが、配向基板平面への投影ベクトルの方向は
    同一であり、該薄膜平面の法線と該ダイレクターとが成
    す角度が異なったハイブリッド配向を形成し、該配向形
    態を損なわずに固定化した薄膜を、透光性基板上に転写
    することを特徴とする液晶表示素子用補償板の製造方
    法。
  2. 【請求項2】 透光性基板がプラスチックフィルムであ
    ることを特徴とする請求項1記載の液晶表示素子用補償
    板の製造方法。
  3. 【請求項3】 透光性基板が偏光フィルムであることを
    特徴とする請求項1記載の液晶表示素子用補償板の製造
    方法。
  4. 【請求項4】 透光性基板が液晶表示用駆動セルを構成
    する上面または/および下面のガラス基板若しくはプラ
    スチックフィルム基板であることを特徴とする請求項1
    記載の液晶表示素子用補償板の製造方法。
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