JP3431170B2 - 銅酸化物を金属銅に還元するための組成物および方法 - Google Patents

銅酸化物を金属銅に還元するための組成物および方法

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Description

【発明の詳細な説明】 発明の分野 本発明は多層プリント回路板の製造における銅酸化物
を金属銅に還元するための組成物および方法に関する。
発明の背景 多層プリント回路板をうまく製造するためには、銅層
と樹脂層との結合が必要である。しかし、銅層と樹脂層
との直接的な結合では十分な結合強さが得られない。そ
れ故、酸化第一銅および酸化第二銅等のような酸化物層
を銅表面上に付着させることにより、銅−樹脂の結合強
さを改良することが一般的である。ピンクの銅表面を黒
褐色に変える酸化層の生成は銅表面に微細な不均一性を
生じさせ、それが、銅表面と樹脂との間の相互固着効果
を付与し、この為、結合強さは改良される。
しかし、銅酸化物は酸との接触時に容易に加水分解さ
れ、そして溶解する。多層回路板の製造の後期の段階で
種々の酸処理が用いられるので、酸化物層付着は結局の
ところ問題になっている。酸化物層への酸の攻撃は当業
界において一般に「ピンクリング」と呼ばれており、こ
れは、酸が黒褐色の酸化物層を表面から除去するとき
に、裸のピンクの銅のリングが現れるからである。
酸化物層が酸に対して弱いという問題は、Akahoshiら
の米国特許第4,642,161号明細書に記載された方法によ
り解決された。その開示の全体を参照により本明細書中
に取り入れる。Akahoshiらの特許はHitachi,Ltd.に譲渡
されている。Akahoshiらの方法は、Circuit World 14
(1)(1987)、Akahoshiら、および,Hitachi Ltd.の
技術文献“The Chemical Reduction Treatment of Copp
er Oxide,DMAB Method(Technology for the Eliminati
on of Pink Ring)”にも記載されており、それらの文
献の全体を参照により本明細書中に取り入れる。
Akahoshiらの方法において、活性還元剤としてアミン
ボラン化合物を含む還元性溶液により、銅酸化物層は金
属銅に還元される。酸化により銅表面に形成された微細
な不均一性は次の還元でも残り、その為、還元プロセス
の結果として生じた金属銅表面は樹脂と十分に強い結合
を形成するであろう。酸の中に可溶性である酸化第一銅
および酸化第二銅とは対照的に、還元プロセスにより生
じた、酸化物層と同じ黒褐色の金属銅表面は良好な耐酸
性を有する。それ故、銅酸化物を金属銅に還元すること
により、表面またはパネルの耐酸性は上がり、そして、
「ピンクリング」の外観が低減される傾向がある。
酸化第二銅を金属銅に還元することができる、現在知
られている還元剤は、一般式BH3NHRR'(式中、Rおよび
R'は、各々、H、CH3およびCH2CH3からなる群より選ば
れた基である)により表されるアミンボラン、例えば、
ジメチルアミンボラン(DMAB)およびアンモニアボラン
である。アミンボランは製造するのに高い費用がかかる
ので、非常に高価であり、その為、還元プロセスには高
い運転コストがかかる。
この為、アミンボランよりも安い代替還元剤である
が、このような代替還元剤から得られる金属銅層が良好
な結合性および耐酸性を確実に有する代替還元剤を開発
することが明らかに望まれる。
発明の要旨 1つの態様において、本発明は樹脂を金属銅に容易に
結合させるように、銅酸化物層を金属層に還元するため
の組成物を提供する。この組成物はモルホリンボランを
含む水性の還元性溶液を含む。
別の態様において、本発明は、銅酸化物層を金属銅に
還元し、そして金属銅を樹脂に結合させる、銅と樹脂と
を結合させるための改良法を提供する。この改良点はモ
ルホリンボランを含む水性還元性溶液により銅酸化物層
を金属銅に還元することを含む。
本発明の目的は、樹脂を金属銅に容易に結合させるよ
うに、銅酸化物層を金属銅に還元するために用いられる
アミンボランに代わる還元剤を提供することである。
本発明の別の目的は、銅酸化物還元プロセスにかかる
運転コストを低減することである。
本発明の他の目的は、利点および特徴は次の説明から
明らかになるであろう。
発明の詳細な説明 本明細書は多層プリント回路板の製造において銅酸化
物を金属銅に還元するための組成物および方法を記載す
る。
上記の通り、銅酸化物の還元は多層プリント回路板の
製造において特に有用である。というのは、ピンクの銅
表面を黒褐色に変える酸化物層の生成は銅表面上に微細
な不均一性を生じさせ、それが銅表面と樹脂との相互固
着効果を付与し、それにより、層間の結合強さを改良す
るからである。しかし、銅酸化物は酸に可溶性であるか
ら、酸化物層は酸の攻撃に対して弱い。
Akahoshiらの方法は、酸化物層の酸に対する弱さの問
題を解決した。その方法によると、活性還元剤としてア
ミンボラン化合物を含む還元性溶液により、銅酸化物層
は金属銅に還元される。酸化により銅表面上に生じた微
細な不均一性は次の還元でも残り、それにより、還元プ
ロセスの結果として生じた金属銅表面は樹脂と十分に強
い結合を形成するであろう。そして、還元プロセスによ
り生じる金属銅表面は、酸化物層と同じ黒褐色であり、
良好な耐酸性を有する。Akahoshiらの特許明細書に記載
されるように、良好な耐酸性は銅酸化物層がうまく金属
層に還元されたことを示し(表面の色の変化はない
が)、そしてこのような金属銅表面は、前に行った酸化
プロセスにより生じた微細な不均一性を残すので、良好
な耐酸性は、還元プロセスから生じた金属銅表面が樹脂
との優れた結合性を有することをも示す。このような樹
脂は、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹
脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂および熱可塑性
樹脂、例えば、ポリエチレン、ポリフェニレンスルフィ
ド、ポリエーテルイミド樹脂およびフルオロ樹脂を含
む。
Akahoshiらの方法において開示されたアミンボランは
BH3NHRR'(式中、RおよびR'は、各々、H、CH3およびC
H2CH3からなる群より選ばれた基である)の一般式によ
り表され、例えば、 により表される。
これらのアミンボランはジメチルアミンボランおよび
アンモニアボランを含む。しかし、このようなアミンボ
ランは高価であり、さらに、銅酸化物表面の所望の還元
が完了した後に、アミンボランは、このような還元に要
求される理論量よりも非常に過剰の量で還元溶液中にお
いて消費される。この為、アミンボラン化合物による銅
酸化物の還元は、通常、非常に運転コストが高くなる。
本発明の発明者は、環式化合物であるモルホリンボラ
ン、OC4H8NH:BH3を含む水性溶液は、多層プリント回路
板の製造過程において樹脂と金属銅との結合を容易にす
るために、銅酸化物を金属銅に還元するのに非常に有効
であることを発見した。化合物のモルホリンボランは環
形成要素として窒素を含み、下記に示す通りである。
モルホリンボランは、銅酸化物を金属銅に還元するの
に現在用いられているDMABのようなアミンボランよりも
製造するのが安価である。モルホリンボランの融点は98
゜(208゜F)であり、一方、DMABの融点は36゜(97゜
F)である。より融点が高いので、精製されたモルホリ
ンボランは周囲圧力での蒸留により得ることができる。
他方、より低い融点の化合物であるDMABを精製するため
には、真空蒸留を用いなければならず、DMABの製造コス
トはモルホリンボランの製造コストより高くなる。DMAB
のようなアミンボランと比較して、モルホリンボランを
製造することが容易であるので、50%までコスト節約が
行え、その為、銅酸化物の還元プロセスの運転コストを
有意に低減することができる。
モルホリンボランの還元剤としての有効性は、銅酸化
物によりコートされた銅パネルをモルホリンボランを含
む還元性溶液によって処理することにより決定された。
還元により生じた金属銅表面は酸化物層と同じ黒褐色で
あるから、還元プロセスの有効性を試験するために測定
される。外観以外の幾つかのパラメータがある。このよ
うなパラメータは、開始時間(initiation time)、耐
酸性および還元後の銅酸化物コーティングの重量損失を
含む。
開始時間は銅酸化物の還元が開始するのに必要な時間
である。還元反応が開始するときに、銅酸化物から水素
泡が急速に形成され、そして反応が完了するまで続く。
好ましくは開始は4分以内に起こる。耐酸性は還元され
た銅を酸浴に浸漬することにより決定される。金属銅は
銅酸化物よりも長時間、酸浴中に生き延びる。耐酸性の
1つの提案される測定は、金属銅層が少なくとも約30分
間、酸に対して耐性であるかどうかである。このよう
に、還元プロセスの有効性は、酸の攻撃に対する耐性に
より決定されうる。パネルの重量損失も還元プロセスの
有効性を決定する。銅酸化物が還元されるときに、銅酸
化物パネルは重量を失う。銅酸化物パネルの重量損失を
測定することにより、還元がどの程度完了したかが決定
されうる。重量損失が小さいことは、銅酸化物が完全に
は還元されていないことを示し、好ましくは、重量損失
は15%を越える。銅酸化物パネルは、金属銅パネル上に
酸化物層を成長させることにより製造した。
上記のパラメータにより測定して、モルホリンボラン
によりうまく還元されると、酸化により銅表面上に生じ
た微細な不均一性は次の還元で残ることを確保する。こ
の微細な不均一性により、モルホリンボランによる還元
から生じた金属銅表面は樹脂と十分に強固な結合を形成
することができる。このような樹脂は、エポキシ樹脂、
ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、および、熱可塑性樹
脂、例えば、ポリエチレン、ポリフェニレンスルフィ
ド、ポリエーテルイミド樹脂およびフルオロ樹脂を含
む。銅層と樹脂層とを結合することにより、多層プリン
ト回路板はうまく製造されうる。
上記の基準を用い、多層プリント回路板の製造におい
て、樹脂を金属銅に容易に結合するために、銅酸化物を
金属銅に還元するのに、約1g/lから飽和までの濃度でモ
ルホリンボランが有効であることを確認した。好ましい
モルホリンボランの濃度は約2.7g/l〜16.8g/lの範囲で
あり、特に、2.7g/lである。本発明は次の実施例を参照
してさらに説明されそして例示される。
例1 1.6g/lのジメチルアミンボランおよび15.2g/lの水酸
化ナトリウムを用いて還元性水溶液を調製した。室温の
この溶液を対照溶液として用い、上記の銅パネルを還元
性溶液中に4分間の滞留時間、浸漬することにより、パ
ネル上に形成された銅酸化物を還元した。開始時間を記
録した。銅酸化物コーティングのパーセント重量損失、
および、得られたコーティングが10体積%の塩化水素酸
浴中において生き延びる時間を記録した。
2.7g/lのモルホリンボランおよび15.2g/lの水酸化ナ
トリウムを用いて還元性水溶液を調製した。これは、還
元剤としてのモルホリンボランの有効性を決定するため
に用いる実験配合物であり、1.6g/lのDMAB還元溶液中に
含まれる−BH3と理論的に等量の組成の−BH3を含む。パ
ネルを4分間の滞留時間、還元溶液中に浸漬した。開始
時間を記録した。酸化物コーティングのパーセント重量
損失、および、得られたコーティングが10体積%の塩化
水素酸浴中において生き延びる時間を記録した。
DMABおよびモルホリンボランは、両方とも、Aldrich
Chemical Company,Milwaukee,Wisconsinから得られたも
のであった。水酸変ナトリウムはHill Brothers Chemic
al Company,Orange,Californiaから得られたものであっ
た。
下記の表1に示す結果は、モルホリンボランが有効に
銅酸化物を金属銅に還元することを示す。
例2 本発明の発明者は、他の濃度でのモルホリンボランの
有効性を試験した。15.2g/lの水酸化ナトリウムの水溶
液中のモルホリンボランの飽和濃度は約50g/l〜60g/lの
範囲である。下記の表2に示す結果は、モルホリンボラ
ンが約1g/lから飽和濃度までの濃度で還元剤として有効
であることを示す。
アミンボラン還元剤に関して、アミンボランはパネル
上の酸化第二銅の全てが銅金属に還元された後であっ
て、そしてさらなる酸化第二銅が溶液中に導入されなく
ても消費され続けることが知られている。パネルからの
還元された銅酸化物が依然として還元性溶液中に残って
おり、そして再酸化されまたはアミンボランの加水分解
を触媒しうると理論付けられるので、銅酸化物パネルの
還元後にアミンボランの消費は続く。それ故、アミンボ
ランはパネル上の銅酸化物を還元するために必要な理論
量よりも多量に消費される。還元剤の過度の消費は還元
性溶液の使用可能な寿命を短くし、そして最終的にプロ
セスの運転コストが高くなる。
同時係属出願において、本発明の発明者は、アミンボ
ラン還元性溶液に還元安定剤を添加すると、このような
安定剤がないときに観測されるアミンボランの消費量の
約11%〜92%にアミンボランの消費量が低減されること
を開示している。同時係属出願の明細書に開示された適
切な還元安定剤はチオ含有(C(=S)NH2)化合物、
例えば、チオウレア、トリアゾール含有(C2H3N3)化合
物、例えば、トリトリアゾール(tolytriazole)および
ベンゾトリアゾール、イソオキサゾール含有(−C3HN
O)化合物、例えば、3−アミノ−5メチルイソオキサ
ゾール、チアゾール含有(−NCS−)化合物、例えば、
メルカプトベンゾチアゾール、イミダゾール含有(−NC
N−)化合物、例えば、ベンズイミダゾール、およびス
ルホン含有(−SO3H)化合物、例えば、スルファミド酸
を含む。
同時係属出願の明細書に記載されるように、特定の安
定剤および安定剤濃度の選択は幾つかのファクターに基
づき、そのファクターは、与えられた濃度の選ばれた安
定剤により安定化された還元プロセスが合理的な時間内
(好ましくは約4分以内)に開始されるかどうか、この
ように安定化された還元プロセスにより生じる金属銅の
層が酸の攻撃に対して耐性であるかどうか(このような
耐性の1つの提案される測定は金属銅層が酸の攻撃に少
なくとも約30分間耐えうるかどうか)、そして、最後
に、与えられた濃度の選ばれた安定剤が実際にアミンボ
ラン還元剤の消費を低減するかどうか、を含む。
同時係属出願明細書において、80゜Fの1.6g/lのジメ
チルアミンボランおよび15.2g/lの水酸化ナトリウムか
らなるアミンボラン溶液について、上記の基準を用い
て、次の好ましい安定剤および有効濃度を確認した。チ
オウレア(約1ppm〜13ppm)、トリトリアゾール(約0.5
0ppm)、ベンゾトリアゾール(約1.0ppm)、3−アミノ
−5−メチルイソオキサゾール(約100ppm)、メルカプ
トベンゾチアゾール(約10ppm)、ベンゾイミダゾール
(約10ppm)およびスルファミド酸(約10g/l)である。
同時係属出願明細書は還元剤濃度および温度の増加は有
効安定剤濃度の上限を上げることができることも開示し
ている。
本発明の発明者は、モルホリンボランによる銅酸化物
の還元は、モルホリンボランの消費量を低減するために
同様に安定化されうることを発見した。チオウレアによ
り安定化されたモルホリンボラン還元プロセスは合理的
な時間内に開始され、そして安定化された還元プロセス
から得られた金属銅層は酸の攻撃に対して耐性である。
例えば、本発明の発明者は、80゜Fの2.7g/lのモルホリ
ンボランおよび15.2g/lの水酸化ナトリウムからなる還
元性溶液は約2.5ppm〜約15ppmの範囲の濃度のチオウレ
アの添加により安定化されうることを発見した。
本発明の発明者は、また、同時係属出願における場合
と同様に、還元剤濃度および温度は安定剤の有効な濃度
範囲に影響を及ぼすことを発見した。例えば、約2.7g/l
のモルホリンボランおよび15g/lの水酸化ナトリウムか
らなる還元性溶液において、80゜Fから120゜Fに温度を
上げると、チオウレア安定剤の有効な濃度範囲の上限が
約15ppmから約20ppmに上がる。モルホリンボランの濃度
を16.8g/lに上げると、80゜Fにおいて、チオウレア安定
剤の有効濃度範囲の上限が約160ppmに上がる。16.8g/l
のモルホリンボラン濃度では、もし温度を120゜Fに上げ
ると、チオウレアの有効濃度範囲の上限は約200ppmに上
がる。
安定剤を試験するための一般手順 可能性のある安定剤を試験するために、本発明の発明
者は、実際の銅酸化物還元プロセスにおいて用いられる
還元性溶液と同様の還元性溶液を製造した。その後、還
元性溶液を銅酸化物により被毒させた。というのは、実
際の銅酸化物還元プロセスの間に、還元された銅パネル
が取り出された後に、銅酸化物は還元性溶液中に残存す
るからである。残存した銅酸化物はさらなる量の還元剤
を消費し、還元剤の全消費量はパネル上の銅酸化物の還
元に必要とされる理論量よりも多量になる。このように
して、銅酸化物1グラム当たりの還元剤の消費量および
単位時間当たりの還元剤の消費量は決定されうる。還元
剤の濃度はヨウ素滴定により、最初および24時間後に分
析して決定した。
可能性のある安定剤が銅酸化物還元プロセスに与えう
る可能な負の効果は所定の可能性のある安定剤を含む還
元性溶液により銅酸化物を処理することにより決定され
た。上記のように、このような安定化された還元プロセ
スの有効性を決める幾つかのパラメータを調べた:還元
プロセス開始時間、安定化された還元により得られた金
属化銅表面の耐酸性および還元後の銅酸化物コーティン
グの重量損失。
開始時間は銅酸化物の還元が始まるのに必要な時間で
ある。還元反応が始まるときに、水素泡が急速に生成
し、そして反応が完了するまで続く。耐酸性は酸浴中に
金属化された銅表面を浸漬することにより決定した。金
属銅は銅酸化物よりも長く酸浴中において生き延びる。
このように、所定の安定化された還元プロセスが所望の
金属銅表面を製造するための有効性は酸の攻撃に対する
耐性により決定した。
試験されるパネルの重量損失も還元プロセスの有効性
を決定する。銅酸化物は化学的に銅金属に還元されると
きに重量を損失する。パネルの重量損失を測定すること
により、還元の完全度が決定された重量損失が小さい
と、銅酸化物は完全に還元されていないことを示す。銅
酸化物パネルは金属銅パネル上に酸化物層を成長させる
ことにより製造した。
例3 可能な還元安定剤でありチオウレアの効果を試験する
ために、2.7グラム/リットル(g/l)のモルホリンボラ
ンおよび15.2g/lの水酸化ナトリウムを用いて水性還元
溶液を調製した。DMABはAldrich Chemical Company,Mil
waukee,Wisconsinから得られたものである。水酸化ナト
リウムはHill Brothers Chemical Company,Orange,Cali
forniaから得られたものである。その溶液を、室温にお
いて対照溶液として用いた。対照溶液と組成が同一であ
る溶液に2.5ppmのチオウレアを添加することにより実験
溶液を調製した。対照溶液および実験溶液の両方とも、
0.075g/lの銅酸化物で被毒させた。両方の溶液中のモル
ホリンボランの濃度を、銅酸化物を添加する前と、銅酸
化物を加えた24時間後に分析した。結果を表3に示す。
例4 2.7g/lのモルホリンボランおよび15.2g/lの水酸化ナ
トリウムの溶液について、モルホリンボランに対するチ
オウレアの有効安定化範囲を試験し、チオウレアを5ppm
の間隔で添加し、そして銅酸化物を還元することができ
る溶液の能力および安定性を決定した。測定されたパラ
メータは開始時間、パーセント重量損失、耐酸性および
24時間後の消費量であった。結果を表4に示す。
上記の結果は、2.7g/lのモルホリンボラン溶液中にお
いて、チオウレアは約15ppmまでの濃度で添加されてよ
く、そして良好な銅還元が行えることを示す。より多量
のチウレアが還元性溶液に添加されるほど、より少量の
モルホリンボランが消費されるということも明らかであ
る。
例5 本例において、モルホリンボランおよびチオウレアの
両方の濃度を変化させた。(1)8.4g/lのMB、15.2g/l
の水酸化ナトリウム、および(2)16.8g/lのMB、1.2/g
/lの水酸化ナトリウムの還元性溶液を製造した。チオウ
レアを還元浴のわきから添加し、そして銅酸化物パネル
の還元度を決定した。測定したパラメータは開示時間、
パーセント重量損失および耐酸性であった。結果を表5
に示す。
これらの結果は、チオウレアは0ppmより高く、160ppm
までのチオウレアの濃度でモルホリンボラン還元性溶液
中に安定剤として用いてよいことを示す。これらの結果
から明らかな傾向をベースとして、16.8g/lより高いMB
の濃度を有するモルホリンボランの還元性溶液は、160p
pmより高いチオウレアの濃度でチオウレアを安定剤とし
て用いてよいことが予測される。
例6 例5の表5を見て判るように、還元性溶液中の安定剤
の有効濃度範囲は還元剤の濃度による。還元性溶液中の
安定剤の有効濃度範囲は還元性溶液の温度にもよる。
安定剤としてチオウレアを用いたモルホリンボラン還
元性溶液に対する温度の効果を例示するために、同様の
モルホリンボラン濃度およびチオウレア濃度の還元性溶
液を製造し、そして様々な温度での銅酸化物パネルを還
元することができる能力を試験した。
2.7グラム/リットル(g/l)のジメチルアミンボラ
ン、15.2g/lの水酸化ナトリウムおよび20ppmのチオウレ
アの水性溶液を製造した。この溶液が銅酸化物パネルを
還元することができる能力を幾つかの温度で決定した。
結果を下記の表6に示す。
8.4g/lのモルホリンボラン、15.2g/lの水酸化ナトリ
ウムおよび70ppmのチオウレアの水性溶液を製造した。
銅酸化物パネルを還元することができる溶液の能力を幾
つかの温度で決定した。結果を下記の表7に示す。
16.8g/lのモルホリンボラン、15.2g/lの水酸化ナトリ
ウムおよび200ppmのチオウレアの水性溶液を製造した。
銅酸化物パネルを還元することができる溶液の能力を幾
つかの温度で決定した。結果を下記の表8に示す。
本発明の発明者は、アルカンボランの代わりにモルホ
リンボランを用いることにより達成されうる還元プロセ
スのさらなる改良を発見した。チオウレアにより安定化
されたモルホリンボランは、還元浴が連続的に処理され
そして補充された後に、連続的に処理されそして補充さ
れたチオウレアにより安定化された同様のDMAB還元性溶
液よりも安定性を示す。
この改良は、DMAB還元プロセスおよびモルホリンボラ
ン還元プロセスをより詳細に調べ、そして比較すること
により説明することができる。DMAB還元において、1.5g
/lのDMABおよび15.2g/lのNaOHを含む還元浴を最初に製
造する。その後、銅酸化物パネルを還元浴により処理す
る。銅酸化物をジメチルアミンボランにより還元する。
反応において、DMAB中のホウ素原子は酸化され、そして
銅酸化物は還元される。ジメチルアミン官能基は副生成
物として残ると信じられる。
銅酸化物を還元するために用いられるDMABの典型的な
濃度は1.6g/lのDMABである。それ故、自動制御装置はDM
ABを補充し、そして1.6g/lのDMABの一定濃度を維持する
ように設定される。補充を続けると、ジメチルアミン副
生成物はタンク中に蓄積する。それ故、1.6g/lのDMABで
ある一定濃度のDMABが還元浴中に含まれるが、ジメチル
アミン官能基の濃度は連続的に増加する。
生成しているジメチルアミン官能基の量がパネルに接
している還元性溶液から抜き出されるジメチルアミンの
量と等しくなるときに、ジメチルアミン官能基の濃度は
平衡に達する(10〜15ml/ft2パネルの還元性溶液が還元
性溶液タンクから抜き出されるものと概算される)。
それ故、一定の補充時間後に、プロセスは最終的にジ
メチルアミン官能基に関して平衡になるはずである。即
ち、1.6g/lのDMAB、15.2g/lのNaOHおよびおそらく一定
濃度のジメチルアミン官能基副生成物並びにおそらく、
還元プロセスから生じるホウ素を含む副生成物が含まれ
るであろう。これは、プロセスにおいて運転されるとき
の還元浴をより正確に表す。
要するに、初期状態および平衡状態の浴の主に2種の
状態がある。%重量損失、耐酸性、開始時間、1/2ター
ンオーバーでの消費量および24時間後の消費量のパラメ
ータを試験した。還元浴は最初に、1.6g/lのDMABおよび
15.2g/lのNaOHからなる。約20日で到達する平衡を模倣
するために、銅酸化物を最初の浴に添加し、24時間後の
DMABの濃度を半分に低減させる。これを、DMABを20回補
充するまで続ける。1/2初期濃度の合計で20回の補充を1
0ターンオーバーと呼び、初期の浴を0ターンオーバー
と呼ぶ。10ターンオーバーの後、還元性溶液は1.6g/lの
DMABおよび15.2g/lのNaOHとともにほぼ平衡量のジメチ
ルアミン副生成物を含む。これは正確にプロセスを模倣
するものでないことに注意されたい。というのは、実際
のプロセスにおいては、ジメチルアミン副生成物の濃度
が平衡量へと増加している間に、1.6g/lのDMABでDMABレ
ベルを一定に維持するためにDMABを連続的に補充し、即
ち、制御装置は、補充を行う前に含まれるDMABの半分を
反応させるものでないからである。
モルホリンボランであるMBについても上記の通りとし
た。モルホリンボランの初期濃度は2.7g/lのMBであり、
そして15.2g/lのNaOHである。銅酸化物の還元の間に生
成される副生成物はおそらくはモルホリン錯体である。
モルホリンボランは還元プロセスの間に補充されるので
2.7g/lのMBの一定濃度を維持するが、予測される副生成
物であるモルホリン錯体の濃度はモルホリン錯体につい
ての平衡に浴が到達するまで増加し続けるであろう。DM
ABについて上記で行ったのと同一のパラメータについて
最初に試験し、そして、モルホリンボランの20回の補充
後に試験した。上記のように、モルホリンボランの半分
が消費され、そして添加され、そして、1/2初期濃度の
合計で20回の補充を10ターンオーバーと呼び、初期の浴
を0ターンオーバーと呼んだ。
上記議論では、安定剤のチオウレアの添加を行わない
プロセスについて説明した。チオウレアを用いて還元を
安定化させるときには、いずれの還元剤を用いるかによ
ってDMABまたはモルホリンボランとともに安定剤を添加
する。例えば、チオウレアの濃度が最初に2.5ppmであ
り、実際のチオウレアの濃度は2.5ppmで始まり、そして
DMABまたはモルホリンボランの各々の補充とともに増加
され、平衡に達するまでこのことが行われるであろう。
表9に示した結果はDMABとは対照的にMBを用いたとき
の優れた利点を例示する。チオウレアによりDMAB還元溶
液を安定化したときに、24時間後の消費量は、0ターン
オーバーでの24時間後の初期消費量と比較して、10ター
ンオーバーの後では2倍より大きくなる(列8と列2を
比較して、そして列9と列3を比較されたい)。対照的
に、チオウレアにより安定化されたモルホリンボランを
用いたときには、24時間後の消費量は2倍もなく、0タ
ーンオーバーでの24時間後の初期消費量の20〜30%増加
するだけである(列11と列5を比較し、そして列12と列
6を比較されたい)。
本発明は例示されそして説明されてきた特定の構成に
限定されず、次の請求の範囲に当てはまる変更した形態
をも含むことが理解されるべきである。
フロントページの続き (72)発明者 ラッシュ マイケル アメリカ合衆国,アリゾナ 85259,ス コッツダレ,#2032,ノース エフエル ダブリュ ビルディング 11545 (72)発明者 キャンベル スコット アメリカ合衆国,アリゾナ 85268,フ ォンテーンヒルズ,アラモサ アベニュ ー 17018 (56)参考文献 国際公開97/010530(WO,A1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H05K 3/38 C01B 6/06 C23C 22/05

Claims (20)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】銅酸化物層を金属銅に還元し、それによ
    り、樹脂をこの金属銅に容易に結合させるための組成物
    であって、 前記組成物は、モルホリンボランを含む水性還元性溶液
    を含み、さらに、還元安定剤の非存在下において銅酸化
    物の還元プロセスの間に消費されるレベルよりも低いレ
    ベルに、還元の間のモルホリンボランの消費量を低減さ
    せるために十分な量の還元安定剤を含み、 安定化された還元プロセスが合理的な時間内に開始さ
    れ、かつ、安定化された還元プロセスから得られる金属
    銅層は酸の攻撃に対して耐性である、組成物。
  2. 【請求項2】モルホリンボランは1.0g/lから飽和の範囲
    の濃度で含まれる、請求項1記載の組成物。
  3. 【請求項3】モルホリンボランは2.7g/l〜16.8g/lの範
    囲の濃度で含まれる、請求項2記載の組成物。
  4. 【請求項4】還元安定剤はチオウレアである、請求項1
    〜3のいずれか1項記載の組成物。
  5. 【請求項5】チオウレアは2.5ppm〜200ppmの範囲の濃度
    で含まれる、請求項4記載の組成物。
  6. 【請求項6】銅酸化物層を金属銅に還元し、そしてこの
    金属銅を樹脂に結合させる、銅と樹脂とを結合させるた
    めの方法において、 モルホリンボランを含む水性還元性溶液を含み、さら
    に、還元安定剤の非存在下において銅酸化物の還元プロ
    セスの間に消費されるレベルよりも低いレベルに、還元
    の間のモルホリンボランの消費量を低減するために十分
    な量の還元安定剤を含む還元性組成物によって、銅酸化
    物層を金属銅に還元することを含む方法であり、 安定化された還元プロセスは合理的な時間内に開始さ
    れ、かつ、安定化された還元プロセスから得られる金属
    銅層は酸の攻撃に対して耐性である、方法。
  7. 【請求項7】モルホリンボランは1.0g/lから飽和の範囲
    の濃度で含まれる、請求項6記載の方法。
  8. 【請求項8】モルホリンボランは2.7g/l〜16.8g/lの範
    囲の濃度で含まれる、請求項7記載の方法。
  9. 【請求項9】還元安定剤はチオウレアである、請求項6
    〜8のいずれか1項記載の方法。
  10. 【請求項10】チオウレアは2.5ppm〜200ppmの範囲の濃
    度で含まれる、請求項9記載の方法。
  11. 【請求項11】モルホリンボランを含む水性還元性溶液
    と銅酸化物層とを接触させて金属銅を提供しかつ15%を
    超える銅酸化物の重量損失を提供することを含む、銅酸
    化物層を処理して金属銅を製造するための方法。
  12. 【請求項12】銅酸化物の重量損失は20%を超える、請
    求項11記載の方法。
  13. 【請求項13】モルホリンボランは水性還元性溶液中1g
    /l〜飽和の濃度である、請求項11記載の方法。
  14. 【請求項14】モルホリンボランは水性還元性溶液中2.
    7g/l〜16.8g/lの濃度である、請求項11記載の方法。
  15. 【請求項15】金属銅は改良された耐酸性を有する、請
    求項11記載の方法。
  16. 【請求項16】銅金属の表面に樹脂を結合させる工程を
    さらに含む、請求項11記載の方法。
  17. 【請求項17】銅酸化物層の還元の開始時間は4分以内
    である、請求項11記載の方法。
  18. 【請求項18】前記水性還元性溶液は還元安定剤をさら
    に含む、請求項11記載の方法。
  19. 【請求項19】前記還元安定剤はチオ含有化合物、トリ
    アゾール含有化合物、イソオキサゾール含有化合物、チ
    アゾール含有化合物、イミダゾール含有化合物、スルホ
    ン含有化合物又はそれらの混合物である、請求項18記載
    の方法。
  20. 【請求項20】前記チオ含有化合物はチオウレアであ
    る、請求項19記載の方法。
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