JP3429671B2 - 光電陰極及び電子管 - Google Patents

光電陰極及び電子管

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JP3429671B2 JP10136498A JP10136498A JP3429671B2 JP 3429671 B2 JP3429671 B2 JP 3429671B2 JP 10136498 A JP10136498 A JP 10136498A JP 10136498 A JP10136498 A JP 10136498A JP 3429671 B2 JP3429671 B2 JP 3429671B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光子の入射によっ
て光電子を放出する光電陰極(光電子放出面)およびこ
れを用いた電子管に関する。特に、赤外領域の光を検出
するための光電陰極およびこれを用いた電子管に関す
る。
【0002】
【従来の技術】入射光を吸収して光電子を励起してこれ
を真空中に放出する光電陰極のうち、長波長領域に感度
を有する光電陰極に関する技術としては、米国特許39
58143号公報(以下、文献1と呼ぶ)、特開平4−
269419号公報(文献2)、P.E.グレゴリー他
著“Field-assisted photoemission to 2.1 microns fr
om a Ag/ρ-In0.77Ga0.23As photocathode”Ap
pl. Phys. Lett. 36(8),15 April 1980 pp639-640(文
献3)、特開平8−255580号公報(文献4)、特
開平5−234501号公報(文献5)に記載されてい
るような技術がある。
【0003】文献1に開示された技術は、半導体基板上
に光吸収層と電子放出層を積層し、両層にバイアス電圧
を印加して、光吸収層内に電界を形成して、この電界に
より光電子を加速して真空中へ放出する遷移電子型光電
陰極に関する技術である。
【0004】文献2に開示された技術は、この遷移電子
型光電陰極であって、電界を印加するためのショットキ
電極をフォトリソグラフィ技術を用いてパターン状に形
成することにより光入射に対する電子放出の再現性を高
めたものである。
【0005】文献3には、この種の遷移電子型光電陰極
においてIn0.77Ga0.23Asを光吸収層として用い、
波長2.1μmまでの入射光に対して光電子放出を観測
した結果が記載されている。
【0006】文献4に開示された技術は、ショットキ電
極に代えて、p/n接合を用いることにより、界面状態
を安定させて、再現性を向上させたものである。
【0007】文献5に開示された技術は、光吸収層とし
て多重量子井戸層を用いることにより、サブバンド間で
光吸収を行い、長波長領域まで感度を拡大したものであ
る。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかし、これらの技術
を用いても赤外領域、中でも波長1.7μmより長波長
領域に良好な感度を有する光電陰極は実用化されていな
い。
【0009】具体的にいうと、文献3は、文献1、2に
開示された技術を応用した実験結果であるが、波長2.
1μmまでの光電子放出が観測されたときの、光電子変
換効率は0.1%と非常に低く、なおかつ、光電陰極を
125Kと超低温に保持したうえでの観測結果である。
【0010】文献4の技術は、波長1.7μm以上で格
子整合を保ち、再現性を獲得するのが難しいという問題
がある。
【0011】文献5の技術については、サブバンド間で
の光吸収は、従来のバンド間での光吸収に比べて吸収効
率が低く、結果として光電変換効率も低くなるという欠
点が有る。
【0012】このため、赤外領域で良好な感度を有し、
かつ、光電変換効率が高く、再現性の良好な光電陰極は
実用化されていなかった。
【0013】そこで、本発明は、上記問題点に鑑みて、
赤外領域で良好な感度を有し、かつ、光電変換効率が高
く、再現性の良好な光電陰極及びこれを利用した電子管
を提供することを課題とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、本発明の光電陰極は、入射した赤外領域の光に対応
して光電子を放出する光電陰極において、(1)第1導
電型のInPからなる基板と、(2)この基板上に形成
されて、基板と格子整合する第1導電型のInAsx2
P1−x2(0<x2<1)からなるバッファ層と、
(3)このバッファ層上に形成され、バッファ層と格子
整合する第1導電型のInx1Ga1−x1As(0.
53<x1<1)からなる光吸収層と、(4)この光吸
収層上に形成され、光吸収層と格子整合する第1導電型
のInAsx3P1−x3(0<x3<1)からなる電
子放出層と、(5)この電子放出層上に所定のパターン
で形成され、電子放出層を略均一な分布で露出させてい
る第2導電型のInAsx3P1−x3からなるコンタ
クト層と、(6)電子放出層の露出表面に形成されたア
ルカリ金属またはその酸化物若しくはそのフッ化物から
なる活性層と、(7)コンタクト層上に形成された第1
の電極と、(8)基板に形成された第2の電極と、を備
えていることを特徴とする。
【0015】これによれば、光吸収層は、波長2.1μ
m以上の光を吸収して光電子を発生させる。光吸収層と
基板との間にはバッファ層が設けられており、それぞれ
の界面が格子整合しているので、界面状態は良好な状態
となり、安定した光吸収が行われる。第1、第2電極間
にバイアス電圧を印加すると、光電陰極内部に電界が発
生し、この電界によって発生した光電子は加速されて、
電子放出層を経て、真空中へ放出される。電子放出層と
光吸収層の界面もまた格子整合しており、良好な状態に
保たれているので、電子はスムーズに光吸収層の表面に
達する。表面に達した電子は活性層により速やかに真空
中へ放出される。
【0016】バッファ層のAs組成比x2は、基板側か
ら光吸収層側にかけて階段状あるいは連続的に変化して
いることが好ましい。これにより、バッファ層と基板及
び光吸収層との格子不整が緩和される。
【0017】あるいは、バッファ層は、As組成比x2
の異なる複数の薄膜を積層させて構成された超格子層で
あってもよい。この場合も、バッファ層と基板及び光吸
収層との格子不整が緩和される。
【0018】また、本発明の電子管は、上記いずれかの
光電陰極と、陽極とを真空容器内に封入して構成された
電子管であることを特徴とする。
【0019】ここでいう電子管は、光電陰極を用いて微
弱光を検出する装置であり、光電子増倍管(光電管)の
他、ストリーク管(ストリークカメラ)やイメージ管等
の各種の装置を含むものである。本発明の光電陰極を利
用することにより、赤外領域の光を良好に検出する電子
管が提供される。
【0020】
【発明の実施の形態】以下、添付図面を参照して本発明
の好適な実施の形態について説明する。なお、説明の理
解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に
対しては可能な限り同一の参照番号を附し、重複する説
明は省略する。
【0021】図1は、本発明に係る光電陰極の第1の実
施形態の構成を示す概略断面図である。図1に示される
ように、この実施形態は、基板1上に、バッファ層2と
光吸収層3と電子放出層4とを積層し、電子放出層4表
面上に所定のパターン状に形成され、この電子放出層4
を一部露出させているコンタクト層5と、コンタクト層
5上に形成された第1のオーミック電極6と、基板1の
バッファ層2形成面と反対の面に形成された第2のオー
ミック電極7と、電子放出層4表面のコンタクト層5が
形成されていない露出面上に形成された活性層とを備え
ている。
【0022】ここで、この光電陰極の積層方向の組成分
布を図2に示す。図2に示されるように、基板1は、p
+型(キャリア濃度5×1018cm-3)のInPからな
り、バッファ層2は、p-型(キャリア濃度1×1017
cm-3)で、積層方向に組成比が積層方向に階段状に異
なるInAsx1-xからなる。このバッファ層2のAs
組成比xは、基板1側がx=0、光吸収層3側がx=
0.4であって、x=0.05ずつ9段階に変化してい
る。そして、光吸収層3は、p-型(キャリア濃度1×
1016cm-3)のIn0.7Ga0.3Asからなる。図3
は、InxGa1-xAs系材を光吸収層3に用いたときの
検出限界波長とIn組成比xとの対応を示したグラフで
ある。図よりこの光吸収層3では、少なくとも波長1.
8μmまで検出可能であることが分かる。電子放出層4
は、p-型(キャリア濃度1×1016cm-3)のInA
0.40.6からなり、コンタクト層5は、n+型(キャ
リア濃度3×1018cm-3)のInAs0.40.6からな
る。また、活性層8は、CsOからなる。
【0023】この実施形態の製造工程を図2、図4、図
5を参照して説明する。ここで、図4は製造工程を示す
本実施形態の概略断面図であり、図5は、InAsP系
結晶とInGaAs系結晶の組成比と格子定数の関係を
示すグラフである。
【0024】まず図4(a)に示されるように、基板1
上に、バッファ層2を有機金属気相成長法によりエピタ
キシャル成長させる。このときに、As組成比xを0か
ら0.4まで0.05刻みで9段階に異ならせた9つの
層を順次成長させていくことにより、図2に示されるよ
うなAs組成比xが積層方向で階段状に変化しているい
わゆるステップグレーデッド構造とすることができる。
【0025】次に、図4(b)に示されるように、この
バッファ層2上に膜厚約3μmの光吸収層3をエピタキ
シャル成長させる。バッファ層2の最上面の組成は、I
nAs0.40.6であり、図5に示されるように光吸収層
3を構成するIn0.7Ga0.3Asと格子定数が5.93
0オングストロームと一致しているので、格子不整合が
存在せず、欠陥の少ない良好な界面が形成される。これ
により、光吸収層3を高品質で形成することができる。
【0026】続いて、図4(c)に示されるように、光
吸収層3上に膜厚約0.5μmの電子放出層4をエピタ
キシャル成長させる。電子放出層4を構成するInAs
0.40.6は、光吸収層3を構成するInGa0.3As0.7
と上述したように格子定数が一致しているので、ここで
も格子不整合が存在せず、欠陥の少ない良好な界面が形
成される。
【0027】さらに、同図(d)に示されるように、電
子放出層4上に膜厚約0.2μmのコンタクト層5をエ
ピタキシャル成長させる。電子放出層4とコンタクト層
5は母材が同一であるから、格子不整合がなく、良好な
p/n接合が形成される。
【0028】続いて、同図(e)に示されるように、コ
ンタクト層5上にTiを約0.1μm蒸着してオーミッ
ク電極6を形成する。
【0029】その後、同図(f)に示されるように、オ
ーミック電極6上にフォトレジスト9を塗布して、所定
のパターンのマスクを用いてフォトリソグラフィにより
このフォトレジスト9をマスクのパターンにあわせて加
工する。ここでは、線幅が2μmで5×250μmの矩
形メッシュ状に加工を行っている。
【0030】そして、同図(g)に示されるように、フ
ォトレジスト9の形成面から反応性イオンエッチングを
行い、オーミック電極6とその下のコンタクト層5とを
露出表面から露出パターンにあわせて除去する。これら
の層のエッチングは、エッチング時間のみによって正確
に制御することができるので、エッチング制御が容易か
つ正確にできる。露出部分のコンタクト層5の除去後、
電子放出層4の露出表面のエッチングによるダメージ層
を除去するため、ウェットエッチングを用いて、電子放
出層4表面を約50nmほど除去する。
【0031】その後で、同図(h)に示されるように、
フォトレジスト9を除去して、同図(i)に示されるよ
うに基板1の裏面全面にAuGe/Ni/Auを蒸着し
て、オーミック電極7を形成した後に、電子放出層の露
出表面に活性層8を塗布することにより図1に示される
光電陰極が完成する。
【0032】続いて、本実施形態の光電陰極の動作につ
いて図6を参照して説明する。図6は、この光電陰極内
のエネルギー状態を示すバンド図である。ここで、V.
B.は価電子帯の頂上のエネルギー準位を、C.B.は
伝導帯の底のエネルギー準位を、V.L.は真空のエネ
ルギー準位をそれぞれ示している。
【0033】オーミック電極6、7間に所定のバイアス
電圧を印加すると、コンタクト層5と電子放出層6の間
に空乏層が形成される。この時に、コンタクト層5のキ
ャリア濃度を高く、電子放出層6のキャリア濃度を低く
設定しているので、空乏層はほとんど電子放出層6側に
延長されて、光吸収層3にまで達する。つまり、電子放
出層6と光吸収層3に内部電界が形成されている。
【0034】被検出光hνが受光面に入射すると、活性
層8及び電子放出層6は被検出光hνに対して透明なた
め、被検出光hνはこれらの層を通過して、光吸収層3
に達して吸収され、電子−正孔対を発生し、光電子eが
V.B.からC.B.へと励起される。励起された光電
子eは、前述の内部電界によって図の右方向、つまり受
光面表面方向に加速されて電子放出層4、活性層8を通
過して真空中へ放出される。この際に、光吸収層3と電
子放出層4との界面は、格子整合しているので、この界
面で光電子が再結合する可能性は極めて低く、大部分の
光電子がそのまま電子放出層4の表面に達する。また、
活性層8は、仕事関数を低下させる働きがあるので、電
子放出層4の表面に達した光電子は容易に活性層8を通
過して真空中へ放出される。
【0035】本願発明者は、本発明に係る光電陰極の長
波長領域での検出性能を確認するため、従来品と比較し
たので、以下、その比較結果について説明する。
【0036】比較対象は、前述の本発明の第1の実施形
態(以下、実施例1と呼ぶ。)及び、より長波長まで検
出を可能とした実施例2と、文献2、文献4にそれぞれ
開示されている形態(以下、それぞれを従来例1、従来
例2と呼ぶ。)である。
【0037】実施例2は、基本的な構成は図1に示され
る第1の実施形態と同一であり、より長波長まで検出が
可能となるよう光吸収層3をIn0.82Ga0.18Asで構
成している。この光吸収層3と界面で格子整合させるた
め、バッファ層2の最上面の組成は、InAs0.60.4
とした。これにより、図5に示されるように両者の格子
定数は、5.990オングストロームで一致する。同様
に、電子放出層4とコンタクト層の組成もInAs0.6
0.4として格子定数を一致させて、格子整合させてい
る。
【0038】図7、図8は、これらの実施例1、2及び
従来例1、2の分光感度特性を比較したグラフであり、
図7が放射感度、図8が量子効率を縦軸として示したグ
ラフである。
【0039】図7、図8より明らかなように、従来例2
は、感度、量子効率とも高いが、200Kに冷却した場
合の値であり、1.5μm以上の波長では、急速に感度
が低下する。また、従来例1の場合も、125Kまで冷
却しているにも関らず、量子効率は従来例2には及ば
ず、こちらも1.8μm以上の波長では、感度が低下し
ている。2.1μmの波長でも光電子放出は見られる
が、その感度は1.8μmより短波長領域における感度
の1/10以下である。これに対して、本発明の実施例
1では、従来例1と同等の感度を波長2.2μmまで保
持している。しかもこれは室温における値であり、従来
例1、2のように冷却を必要としない点で実用性が高
く、幅広い適用が可能である。一方、実施例2は、感
度、量子効率とも実施例1に比べて低いが、波長2.3
μmにおいても光電子放出が観測されている。この波長
は、光電陰極における光電子放出が観測された波長とし
ては最も長い波長である。このように、本発明により、
赤外波長領域において室温でも感度が良好で、光電変換
効率の高い光電陰極を提供できることが確認された。
【0040】上述したように、光吸収層3は、層を構成
するInx1Ga1-x1AsのIn組成比x1を調整するこ
とで、吸収光波長域を調整することができる。図3より
明らかなように、波長1.7μm以上の赤外領域におい
て感度を有するためには、x1は0.53より大きいこ
とが好ましい。光吸収層3のIn組成比x1が決まれ
ば、バッファ層2を構成するInAsx21-x2の最上部
のAs組成比x2と電子放出層4とコンタクト層5を構
成するInAsx31-x3のAs組成比x3は光吸収層3
と格子定数を一致させる条件、すなわち図5に示される
条件より自動的に求まる。
【0041】また、バッファ層3については、ステップ
グレーデッド構造を用いた例について説明したが、本発
明はこれに限られるものではなく、図9に示されるよう
に、基板1側から光吸収層3側にかけてAs組成比x3
が直線的に変化するグレーデッド構造や、図10に示さ
れるように、基板1側から光吸収層3側にかけてAs組
成比x3が連続的に変化する構造を用いることができ
る。さらに、図11に示されるように基板1と同じIn
Pと光吸収層3と同じInx1Ga1-x1Asを薄膜状にし
て交互に重ね合わせた超格子構造を用いてもよい。いず
れの場合でもバッファ層2は、基板1及び光吸収層3と
格子整合するので、光吸収層3は良好な界面を有し、品
質の良い光吸収層3を製作することができる。
【0042】第1の実施形態で説明した各層の膜厚、キ
ャリア濃度は、いずれも一例に過ぎず、さまざまな膜
厚、キャリア濃度に設定することが可能である。ただ
し、光吸収層3あるいは電子放出層4のキャリア濃度を
高くすると、バイアス電圧印加時に空乏層が電子放出層
4表面から光吸収層3内部まで延長されないため、感度
が低下して好ましくない。また、電子放出層4の膜厚を
厚くしすぎると、前述の空乏層を光吸収層3内部まで延
長するために、印加するバイアス電圧を高くする必要が
あり、暗電流の増加を招いてこれも好ましくない。
【0043】オーミック電極6は、Tiに限られるもの
ではなく、他の各種金属電極を用いることができるが、
エッチングプロセスの制御性がよくなるので、Tiを用
いることが好ましい。
【0044】また、活性層8は、露出した電子放出層表
面の仕事関数を低下させる材料であればよく、アルカリ
金属、またはその酸化物、あるいはそのフッ化物を利用
することができる。
【0045】そして、電子放出層4の露出パターンは、
上述の矩形メッシュ状のほか、中央から渦巻状にコンタ
クト層5を設けたスパイラル形状や、コンタクト層5を
分岐させたツリー状、同一中心の方形オーミック電極を
接続した形状などの各種の形状を用いることができる。
【0046】また、上述の説明では、光入射面と光電子
放出面が一致する反射型光電陰極について説明したが、
光入射面と反対の面から光電子を放出する透過型光電陰
極についても本発明は適用可能である。この場合には、
第2のオーミック電極7を薄膜あるいはグリッド状若し
くはリム状などに形成して、基板1側から光吸収層3に
光が入射可能なように形成すればよい。
【0047】上述の製造工程の説明では、有機金属気相
成長法を用いた場合について説明したが、本発明の光電
陰極はこの他にも、他の気相成長法であるハイドライド
気相成長法、ハライド気相成長法や分子線エピタキシー
法等を用いることができる。
【0048】本発明の光電陰極は、図12に示されるよ
うなサイドオン型光電子増倍管の光電面に適用可能であ
る。つまり、この光電子増倍管の真空容器16内には、
本発明の光電陰極11のほか、複数のダイノード12a
〜12hと陽極14が封入されている。
【0049】真空容器16の入射窓15から入射した入
射光hνにより、光電陰極11内部で前述したように光
電子eが生成され、真空容器16中に放出される。こう
して放出された光電子eによってダイノード群12a〜
12hではそれぞれ2次電子が生成され、後続のダイノ
ード群にこの2次電子が送られることにより、増倍され
ていく。この結果、最終的には、光電子e1個に対して
106個程度の電子に増倍されて陽極14に入射し、こ
れが検出電気信号として外部に取り出される。ヘッドオ
ン型光電子増倍管に用いる場合には、前述の透過型光電
陰極を用いればよい。
【0050】本発明の光電陰極を光電面とすることによ
りストリークカメラやイメージインテンシファイアなど
の各種の赤外領域における光検出用の電子管を提供する
ことができる。
【0051】
【発明の効果】以上、説明したように本発明によれば、
基板と光吸収層の間に両者と格子整合するバッファ層が
設けられており、これにより赤外領域でも良好な光電子
放出を行う光吸収層が形成できる。さらに、電子放出層
と光吸収層も格子整合しているので、生成された光電子
は、界面で再結合することなく電子放出層の表面に達す
る。そして、電子放出層表面の露出表面には仕事関数を
低下させる活性層が設けられているので、電子放出層表
面に達した電子は容易に真空中へ放出される。さらに、
電子放出層表面から光吸収層まで空乏層が延長されてお
り、形成された内部電界により、光電子は電子放出層表
面に送られる。したがって、室温においても赤外領域で
良好な感度を有する光電陰極が得られる。
【0052】バッファ層のAs組成比を基板側から光吸
収層側にかけて連続的あるいは階段状に変化させる構造
としたり、超格子構造を用いれば、基板、光吸収層の両
方と格子整合するバッファ層が容易に製作できる。
【0053】この光電陰極を利用すれば、赤外領域の光
を検出する各種の電子管が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る光電陰極の概略断面図である。
【図2】図1に係る光電陰極の各層の組成の一例を示す
グラフである。
【図3】図1に係る光電陰極の光吸収層を構成するIn
x1Ga1-x1AsのIn組成比x1と検出限界波長の関係
を表すグラフである。
【図4】図1に係る光電陰極の製作工程を示す概略断面
図である。
【図5】Inx1Ga1-x1AsとInAsx21-x2の組成
比x1、x2の変化による格子定数の変化を表すグラフ
である。
【図6】図1に係る光電陰極内のエネルギー準位を表す
エネルギーバンド図である。
【図7】本発明と従来の光電陰極の分光感度特性を放射
感度で比較して示す図である。
【図8】本発明と従来の光電陰極の分光感度特性を量子
効率で比較して示す図である。
【図9】本発明の光電陰極の各層の組成の別の例を示す
グラフである。
【図10】本発明の光電陰極の各層の組成のさらに別の
例を示すグラフである。
【図11】本発明の光電陰極の各層の組成のさらに別の
例を示すグラフである。
【図12】本発明の光電陰極を利用したサイドオン型光
電子増倍管を示す断面図である。
【符号の説明】
1…基板、2…バッファ層、3…光吸収層、4…電子放
出層、5…コンタクト層、6、7…オーミック電極、8
…活性層、11…光電陰極、12…ダイノード、14…
陽極、15…入射窓、16…真空容器。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 菅 博文 静岡県浜松市市野町1126番地の1 浜松 ホトニクス株式会社内 (56)参考文献 特開 平8−255580(JP,A) 特開 平5−234501(JP,A) 特開 平9−213204(JP,A) 特開 平7−245057(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01J 1/34 H01J 29/38 H01J 31/50 H01J 40/06 H01J 43/08

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 入射した赤外領域の光に対応して光電子
    を放出する光電陰極において、 第1導電型のInPからなる基板と、 前記基板上に形成され、前記基板と格子整合する第1導
    電型のInAsx2P1−x2(0<x2<1)からな
    るバッファ層と、 前記バッファ層上に形成され、前記バッファ層と格子整
    合する第1導電型のInx1Ga1−x1As(0.5
    3<x1<1)からなる光吸収層と、 前記光吸収層上に形成され、前記光吸収層と格子整合す
    る第1導電型のInAsx3P1−x3(0<x3<
    1)からなる電子放出層と、 前記電子放出層上に所定のパターンで形成され、前記電
    子放出層を略均一な分布で露出させている第2導電型の
    InAsx3P1−x3からなるコンタクト層と、 前記電子放出層の露出表面に形成されたアルカリ金属ま
    たはその酸化物若しくはそのフッ化物からなる活性層
    と、 前記コンタクト層上に形成された第1の電極と、 前記基板に形成された第2の電極と、 を備えていることを特徴とする光電陰極。
  2. 【請求項2】 前記バッファ層のAs組成比x2は、前
    記基板側から前記光吸収層側にかけて階段状あるいは連
    続的に変化していることを特徴とする請求項1記載の光
    電陰極。
  3. 【請求項3】 前記バッファ層は、As組成比x2の異
    なる複数の薄膜を積層させて形成された超格子層からな
    ることを特徴とする請求項1記載の光電陰極。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3のいずれかに記載の光電陰
    極と、陽極とを真空容器内に封入して構成された電子
    管。
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