JP3422490B1 - 希土類永久磁石 - Google Patents

希土類永久磁石

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Abstract

【要約】 【課題】 保磁力および残留磁束密度がともに優れた希
土類永久磁石を提供する。 【解決手段】 希土類元素R:20〜40wt%、ホウ
素B:0.5〜4.5wt%、M(Al,Cu,Sn,
Gaの1種または2種以上):0.03〜0.5wt
%、Bi:0.01〜0.2wt%、遷移金属元素T:
残部、とすることによって、高い磁気特性を有する希土
類永久磁石を得ることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は希土類元素R、遷移
金属元素T、ホウ素Bを主成分とする磁気特性に優れた
希土類永久磁石に関するものである。
【0002】
【従来の技術】希土類磁石の中でもNd−Fe−B系磁
石は、磁気特性に優れていること、主成分であるNdが
資源的に豊富で比較的安価であることから、需要は年
々、増大している。Nd−Fe−B系磁石の磁気特性を
向上するための研究開発も精力的に行われており、近年
では、高性能なNd−Fe−B系磁石を製造する場合、
各種金属粉体や組成の異なる合金粉末を混合、焼結する
混合法が主流となっている。
【0003】ところで、Nd−Fe−B系磁石は、キュ
リー温度が低いために、温度上昇に伴って保磁力が低下
してしまうという問題がある。この問題を解決すべく、
様々な試みがなされている。例えば、特公平5−108
06号公報では、Dy、Tb等の重希土類元素を添加す
ることによりNd−Fe−B系磁石の保磁力を高めるこ
とを提案している。また特開平6−283318号公報
および特開平7−50205号公報では、R214B系
金属間化合物(RはYを含む希土類元素の1種または2
種以上、Tは遷移金属元素の1種または2種以上)を主
体とする主相とRリッチ相を主構成相とする混合法を用
いたR−T−B系希土類永久磁石の製造方法において、
R−T−B系合金粉末に対するR−T系合金粉末の配合
量を適宜変更することにより磁石の特性を向上させるこ
とを提案している。さらにまた、特公平2−32761
号公報、特開昭62−116756号公報および特公平
3−16761号公報では、希土類永久磁石の磁気特性
を向上させるためにTi,Ni,Bi,V,Nb,T
a,Cr,Mo,W,Mn,Al,Sb,Ge,Sn,
Zr,Hf,Cu,Si,Pのうち1種または2種以上
(以下、Ti等と記す)を添加することが提案されてい
る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特公平
5−10806号公報記載の方法によれば、Dy、Tb
等の重希土類元素を添加することにより保磁力が向上す
る一方で残留磁束密度が低下してしまう。また重希土類
元素は他の元素と比較してコストが高い。よって、希土
類永久磁石の製造コストを低減するためには、重希土類
元素の添加量をいかにして低減するかということが鍵と
なる。さらに特開平6−283318号公報および特開
平7−50205号公報記載の方法により製造された希
土類永久磁石は、高い残留磁束密度を呈するものの保磁
力が低いという問題があった。また特公平2−3276
1号公報、特開昭62−116756号公報および特公
平3−16761号公報では、Ti等種々の添加元素が
提案されているが、良好な保磁力および残留磁束密度を
兼備するための元素は特定されていない。そこで、本発
明は、保磁力および残留磁束密度がともに優れた希土類
永久磁石を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者は、より高い磁
気特性を得るために様々な検討を行った。その結果、B
iが希土類永久磁石の磁気特性を向上させる上で有効で
あることを知見した。特に、焼結後の磁石にBiが0.
01〜0.2wt%含まれる場合には、高い磁気特性、
つまり良好な保磁力および残留磁束密度を有する希土類
永久磁石を得ることができる。したがって本発明は、希
土類元素R:20〜40wt%、ホウ素B:0.5〜
4.5wt%、M(Al,Cu,Sn,Gaの1種また
は2種以上):0.03〜0.5wt%、Bi:0.0
1〜0.2wt%、遷移金属元素T:残部、とすること
を特徴とする希土類永久磁石を提供する。本発明の希土
類永久磁石において、Nd+Dy:31〜32.5wt
%、ホウ素B:0.5〜1.5wt%、Cu:0.15
wt%以下(0を含まず)、Al:0.15〜0.3w
t%、Co:2wt%以下(0を含まず)、Bi:0.
01〜0.2wt%、Fe:残部の組成を有することが
望ましい。また、Biの含有量については0.02〜
0.1wt%とすることが望ましい。さらに、Dyの含
有量については、2〜15wt%とすることが望まし
い。本発明の希土類永久磁石によれば、残留磁束密度が
1.25T以上であり、かつ保磁力が1650kA/m
以上という優れた磁気特性を得ることができる。本発明
において、Biは粒界相に散在することが望ましい。
【0006】以上の本発明では、M(Al,Cu,S
n,Gaの1種または2種以上)を0.03〜0.5w
t%とし、かつBiを0.01〜0.2wt%とするこ
とを提案しているが、Biを0.01〜0.2wt%と
することのみでも有効である。したがって、本発明は、
希土類元素R:20〜40wt%、ホウ素B:0.5〜
4.5wt%、Bi:0.01〜0.2wt%、遷移金
属元素T:残部、とすることを特徴とする希土類永久磁
石を提供する。本発明の希土類永久磁石は、残留磁束密
度Brと保磁力Hcjの積(Br×Hcj)が2100
(T×kA/m)以上という優れた磁気特性を呈すると
ともに、保磁力Hcjを重希土類元素の重量百分率で割
った値(Hcj/重希土類元素の重量百分率)が230
(kA/m×1/wt%)以上となる。よって、本発明
によれば、コストが高い重希土類元素の添加量を低減し
つつ、優れた磁気特性を有する希土類永久磁石を得るこ
とができる。ここで、重希土類元素とは、Gd、Tb、
Dy、Ho、Er、YbおよびLuのグループから選択
される1種または2種以上を言う。また、本発明は極微
量のBi添加による保磁力Hcjの向上という効果に着
目したものであり、本発明の希土類永久磁石によれば、
保磁力HcjをBiの重量百分率で割った値(Hcj/
Biの重量百分率)が8000(kA/m×1/wt
%)以上となる。以上の本発明による希土類永久磁石
は、焼結磁石に適用することが望ましい。
【0007】
【発明の実施の形態】以下本発明の組成限定理由、望ま
しい製造方法について説明する。本発明の希土類永久磁
石は、希土類元素Rを20〜40wt%含有する。ここ
で、希土類元素Rは、Yを含む希土類元素(La,C
e,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,H
o,Er,YbおよびLu)の1種または2種以上であ
る。ここで、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Ybおよ
びLuのグループから選択される1種または2種以上が
重希土類元素を構成する。希土類元素Rの量が20wt
%未満であると、希土類永久磁石の主相となるR2Fe
14B相の生成が十分ではなく軟磁性を持つα−Feなど
が析出し、保磁力Hcjが著しく低下する。一方、希土
類元素Rが40wt%を超えると主相であるR2Fe14
B相の体積比率が低下し、残留磁束密度Brが低下す
る。また希土類元素Rが酸素と反応し、含有する酸素量
が増え、これに伴い保磁力発生に有効なR−rich相
が減少し、保磁力Hcjの低下を招くため、希土類元素
Rの量は20〜40wt%とする。Ndは資源的に豊富
で比較的安価であることから、希土類元素Rとしての主
成分をNdとすることが好ましい。またDyは異方性磁
界が大きく、保磁力Hcjを向上させる上で有効であ
る。よって、希土類元素RとしてNdおよびDyを選択
し、NdおよびDyの合計を31〜32.5wt%とす
ることが望ましい。そして、この範囲において、Dyの
量は2〜15wt%が望ましい。より望ましいDyの量
は2〜12wt%、さらに望ましいDyの量は4〜9w
t%である。また、本発明の希土類永久磁石は、ホウ素
Bを0.5〜4.5wt%含有する。ホウ素Bが0.5
wt%未満の場合には高い保磁力Hcjを得ることがで
きない。但し、ホウ素Bが4.5wt%を超えると残留
磁束密度Brが低下する傾向がある。したがって、上限
を4.5wt%とする。望ましいホウ素Bの量は0.5
〜1.5wt%、さらに望ましいホウ素Bの量は0.8
〜1.2wt%である。本発明の希土類永久磁石は、焼
結磁石にBiを所定量含めることによって残留磁束密度
Brの低下を防止しつつ、保磁力Hcjを向上させるこ
とができることに着目したものであり、0.01〜0.
2wt%の範囲でBiを含有する。Biが0.01wt
%未満では、保磁力Hcjの向上効果が小さい。一方、
Biが0.2wt%を超えると、残留磁束密度Brが著
しく低下してしまう。望ましいBiの量は0.02〜
0.15wt%、さらに望ましいBiの量は0.025
〜0.10wt%である。
【0008】本発明の希土類永久磁石は、MとしてA
l,Cu,Sn,Gaの中から1種または2種以上を選
択し、かつ0.03〜0.5wt%の範囲で含有するこ
とができる。この範囲でMを添加含有させることによ
り、得られる永久磁石の高保磁力化、高耐食性化、温度
特性の改善が可能となる。MとしてAlを選択する場合
において、望ましいAlの量は0.15〜0.3wt
%、さらに望ましいAlの量は0.15〜0.25wt
%である。また、MとしてCuを選択する場合におい
て、望ましいCuの量は0.15wt%以下(0を含ま
ず)、さらに望ましいCuの量は0.05〜0.1wt
%である。MとしてSnを選択する場合において、望ま
しいSnの量は0.03〜0.20wt%、さらに望ま
しいSnの量は0.05〜0.15wt%である。また
MとしてGaを選択する場合において、望ましいGaの
量は0.03〜0.20wt%、さらに望ましいGaの
量は0.05〜0.18wt%である。本発明の希土類
永久磁石において、遷移金属元素Tとしては従来から用
いられているFe、Co、Niを用いることができる。
これらの中では、焼結性の点からFe、Coが望まし
く、特に磁気特性の点からFeを主体とすることが望ま
しい。但し、Coを2wt%以下(0を含まず)、望ま
しくは0.1〜1.0wt%、さらに望ましくは0.3
〜0.7wt%含有することによって、キュリー温度が
高くなり、温度特性が向上する。
【0009】以下、本発明に係る希土類永久磁石を得る
ための望ましい製造方法について説明する。なお、いわ
ゆる混合法を用いて本発明に係る希土類永久磁石を製造
する場合について以下に説明するが、混合法に限らず、
いわゆるシングル法を用いて本発明に係る希土類永久磁
石を製造することももちろん可能である。本実施の形態
では、R214Bを主体とするa合金粉末(主相用合金
粉末)と、Biを含みRTを主体とするb合金粉末(粒
界相用合金)と、Biを含まずRTを主体とするc合金
粉末(粒界相用合金)とを用いて本発明に係る希土類永
久磁石を製造する方法について示す。但し、c合金粉末
を用いずに、所望の磁石組成とすることも可能である。
なお、本明細書において、「RT」とは、RとTとが
1:1であることを意味するものではなく、RとTとを
主成分とする合金であることを意味する。なお、Biは
a合金粉末に含有させることも可能である。
【0010】はじめに、原料金属を真空または不活性ガ
ス、好ましくはAr雰囲気中で溶解し鋳造することによ
り、a合金、b合金およびc合金を得る。原料金属とし
ては、希土類金属あるいは希土類合金、純鉄、フェロボ
ロン、さらにはこれらの合金等を使用することができ
る。得られたインゴットは、凝固偏析がある場合は必要
に応じて溶体化処理を行う。その条件は真空またはAr
雰囲気下、700〜1500℃の領域で1時間以上保持
すれば良い。
【0011】a合金、b合金、およびc合金が作製され
た後、各母合金は別々に粉砕される。粉砕工程には、粗
粉砕工程と微粉砕工程とがある。まず、各母合金の鋳塊
を、それぞれ粒径数百μm程度になるまで粗粉砕する。
粗粉砕は、スタンプミル、ジョークラッシャー、ブラウ
ンミル等を用い、不活性ガス雰囲気中にて行うことが望
ましい。粗粉砕性を向上させるために、水素を吸蔵させ
た後、粗粉砕を行うことが効果的である。粗粉砕工程
後、微粉砕工程に移る。微粉砕は、主にジェットミルが
用いられ、粒径数百μm程度の粗粉砕粉末が、平均粒径
3〜5μmになるまで行われる。ジェットミルは、高圧
の不活性ガス(例えば窒素ガス)を狭いノズルより開放
して高速のガス流を発生させ、この高速のガス流により
粗粉砕粉末を加速し、粗粉砕粉末同士の衝突やターゲッ
トあるいは容器壁との衝突を発生させて粉砕する方法で
ある。
【0012】微粉砕工程においてそれぞれ微粉砕された
a合金粉末、b合金粉末およびc合金粉末とを、窒素雰
囲気中で混合する。a合金粉末、b合金粉末およびc合
金粉末の混合比率は、重量比で80(a合金粉末):2
0(b合金粉末およびc合金粉末との合計)〜97(a
合金粉末):3(b合金粉末およびc合金粉末との合
計)程度とすればよい。但し、c合金粉末の混合比率が
0の組み合わせをも含む。好ましい混合比率は、重量比
で90:10〜97:3である。微粉砕時に、ステアリ
ン酸亜鉛等の添加剤を0.01〜0.3wt%程度添加
することにより、成形時に配向性の高い微粉を得ること
ができる。次いで、a合金粉末、b合金粉末およびc合
金粉末からなる混合粉末を、電磁石に抱かれた金型内に
充填し、磁場印加によってその結晶軸を配向させた状態
で磁場中成形する。この磁場中成形は、800〜150
0kA/mの磁場中で、130〜160MPa前後の圧
力で行えばよい。
【0013】磁場中成形後、その成形体を真空または不
活性ガス雰囲気中で焼結する。焼結温度は、組成、粉砕
方法、粒度と粒度分布の違い等、諸条件により調整する
必要があるが、1050〜1130℃で1〜5時間程度
焼結すればよい。焼結後、得られた焼結体に時効処理を
施すことができる。この工程は、保磁力Hcjを制御す
る重要な工程である。時効処理を二段に分けて行う場合
には、800℃近傍、600℃近傍での所定時間の保持
が有効である。800℃近傍での熱処理を焼結後に行う
と、保磁力Hcjが増大するため、混合法においては特
に有効である。また、600℃近傍の熱処理で保磁力H
cjが大きく増加するため、時効処理を一段で行う場合
には、600℃近傍の時効処理を施すとよい。以上の組
成および製造方法による本発明の希土類永久磁石は、
1.25T以上の残留磁束密度Brおよび1650kA
/m以上の保磁力Hcjを有することができ、さらには
1.25T以上の残留磁束密度Brおよび1670kA
/m以上の保磁力Hcjを有することもできる。また、
焼結磁石の組成および焼結・時効条件を調整することに
よって、1.29T以上の残留磁束密度Brおよび17
50kA/m以上の保磁力Hcj、さらには1.3T以
上の残留磁束密度Brおよび1780kA/m以上の保
磁力Hcjを有することも可能である。そして、残留磁
束密度Brと保磁力Hcjの積(Br×Hcj)につい
ては2100(T×kA/m)以上、保磁力Hcjを重
希土類元素の重量百分率で割った値(Hcj/重希土類
元素の重量百分率)については230(kA/m×1/
wt%)以上という良好な値を得ることができる。
【0014】
【実施例】次に、具体的な実施例を挙げて本発明を更に
詳細に説明する。 (実施例1)原料金属をAr雰囲気中で高周波溶解する
ことにより、 a合金:(20〜30)wt%Nd-(2〜10)wt
%Dy- (1〜1.3)wt%B-(0.1〜0.3)wt%A
l-bal.Fe b合金:(20〜40)wt%Nd-(10〜50)w
t%Dy- (3〜12)wt%Co-(0.5〜2)wt%Cu- (0.1〜0.5)wt%Al-3wt%以下(0は含
まず)Bi- bal.Fe c合金:(20〜40)wt%Nd-(10〜50)w
t%Dy- (3〜12)wt%Co-(0.5〜2)wt%Cu- (0.1〜0.5)wt%Al-bal.Fe として調整した。なお、NdとDyの合計量は30〜6
0wt%である。
【0015】次いで、a合金、b合金およびc合金を以
下の条件にて粉砕することにより、微粉砕後の粒径を3
〜5μmとし、a合金粉末、b合金粉末およびc合金粉
末の3種類の合金粉末を得た。なお、a合金、b合金お
よびc合金の組成は、a合金粉末:(b+c)合金粉末
の混合比率(重量比)が90:10〜97:3程度で磁
石組成となるよう適宜製作した。得られた合金粉末を窒
素雰囲気のグローブボックス内にて混合し、磁場中成形
および焼結を以下の条件にて行った。次いで以下の条件
で二段時効処理を施し、試料No.1〜試料No.7お
よび比較例1〜比較例5の12種類の焼結磁石を得た。
焼結後の磁石の組成(以下、単に組成ということがあ
る)は表1に示す通りである。なお、試料No.1、試
料No.2および比較例1、比較例4による磁石はBi
の含有の点を除くと基本的に同一の組成を有している。
試料No.3および比較例2、試料No.4〜試料N
o.7および比較例3、比較例5も、試料No.1、試
料No.2および比較例1、比較例4と同様の関係にあ
る。また、試料No.1〜試料No.7および比較例1
〜比較例5は、Nd+Dyの合計量が31.8wt%で
一致するが、NdおよびDyの含有比率が相違してい
る。
【0016】 粗粉砕:ブラウンミル使用(水素吸蔵後、窒素雰囲気中にて行った。) 微粉砕:ジェットミル使用(高圧窒素ガス雰囲気中にて行った。) 粉砕時添加剤:ステアリン酸亜鉛0.1wt% 焼結条件:試料No.1〜試料No.3=1090℃×4時間 比較例1、比較例2、比較例4=1090℃×4時間 試料No.4〜試料No.7=1070℃×4時間 比較例3、比較例5=1070℃×4時間 磁場中成形条件:1200kA/mの磁場中で147M
Paの圧力で横磁場成形(プレス方向と磁場方向が直
交) 二段時効処理: 試料No.1、試料No.2=750℃×1時間、54
0℃×1時間 比較例1、比較例4=750℃×1時間、540℃×1
時間 試料No.3=800℃×1時間、570℃×1時間 比較例2=800℃×1時間、570℃×1時間 試料No.4〜試料No.7=800℃×1時間、54
0℃×1時間 比較例3、比較例5=800℃×1時間、540℃×1
時間
【0017】試料No.1〜試料No.7および比較例
1〜比較例3について、B−Hトレーサーおよびパルス
励磁型磁気特性測定装置(最大発生磁界7960kA/
m)を用いて室温および100℃における残留磁束密度
Br、保磁力Hcjを測定した。その結果を表2に示
す。なお表2には、室温における最大エネルギー積(B
H)maxについても示してある。
【0018】
【表1】
【0019】
【表2】
【0020】表1に示すように、試料No.1、試料N
o.2および比較例1は、比較例1がBiを含有してい
ない点を除けば、焼結磁石における組成は等しい。ここ
で、表2を用いて試料No.1、試料No.2と比較例
1の室温における磁気特性の比較を行う。試料No.
1、試料No.2および比較例1の室温における保磁力
Hcjに着目すると、Biを含まない比較例1の保磁力
Hcjは2380kA/mであるのに対し、Bi量が
0.06wt%の試料No.1の保磁力Hcjは246
8kA/m、Bi量が0.15wt%の試料No.2は
2420kA/mという良好な保磁力Hcjを示す。つ
まり、Biを含有せしめることにより、保磁力Hcjが
向上することがわかる。ただし、試料No.1と試料N
o.2の保磁力Hcjを比較すれば、Biにより保磁力
Hcjは向上するが、その量には適切な値があろうこと
が推察される。
【0021】一方、室温の残留磁束密度Brに注目する
と、Biを含まない比較例1は1.17T、試料No.
1(Bi量:0.06wt%)の残留磁束密度Brは
1.16T、試料No.2(Bi量:0.15wt%)
の残留磁束密度Brは1.15Tである。つまり、Bi
量の増加に伴う残留磁束密度Brの低下はわずかであ
る。したがって、Biは、残留磁束密度Brの低下を最
小限に抑えつつ保磁力Hcjの向上効果を最大限に享受
できるような範囲で含有せしめることができることがわ
かる。また同様に、試料No.3と比較例2とを比較す
ると、焼結磁石にBiを所定量含有する試料No.3
(Bi量:0.05wt%)の方が焼結磁石にBiを含
有していない比較例2よりも高い保磁力Hcjを示すこ
とがわかる。
【0022】次に、Biの含有の点を除いて組成が等し
い試料No.4〜試料No.7と比較例3の室温におけ
る保磁力Hcjを比較すると、比較例3の保磁力Hcj
が1592kA/mであるのに対し、試料No.4〜試
料No.7の保磁力Hcjは1767〜1783kA/
mとなっており、試料No.4〜試料No.7の保磁力
Hcjは比較例3の保磁力Hcjよりも150kA/m
以上高い値を示していることが注目される。また、試料
No.4〜試料No.7の保磁力Hcjを比較する限
り、試料No.4〜試料No.7の保磁力Hcjは試料
No.1〜試料No.2よりもBi含有量の変動の影響
を受けにくいことがわかる。一方、室温における残留磁
束密度Brを比較すると、試料No.4〜試料No.7
の残留磁束密度Brは1.30〜1.31Tであり、比
較例3の残留磁束密度Brである1.31Tとほぼ同等
であるといえる。したがって、試料No.4〜試料N
o.7と比較例3の比較からも、Biは残留磁束密度B
rを低下させることなく保磁力Hcjを向上させること
のできる有効な元素であることがわかる。
【0023】以上では試料No.1〜試料No.7およ
び比較例1〜比較例3について室温における磁気特性の
比較を行ったが、表2中の100℃における磁気特性の
欄を参照すればわかるように、100℃においても試料
No.1〜試料No.7は、比較例1〜比較例3と同等
の残留磁束密度Brを保ちつつ、比較例1〜比較例3よ
りも良好な保磁力Hcjを示している。以上の結果か
ら、焼結磁石にBiを所定量含有することで、保磁力H
cjを向上させることができることがわかった。
【0024】次に、試料No.1、試料No.2および
比較例1、比較例4に基づいてBi量の望ましい範囲を
確認する。なお、表1に示したように、試料No.1、
試料No.2および比較例1、比較例4は、Bi量が異
なる以外は同一の条件で製造されたものである。試料N
o.1、試料No.2および比較例1、比較例4につい
て、室温および100℃における保磁力Hcjと残留磁
束密度Brの測定結果を表3にまとめた。また、試料N
o.1、試料No.2および比較例1、比較例4におけ
るBi量と磁気特性の変化との関係について、図1に示
す。図1中、(a)はBi量と保磁力Hcjとの関係
(室温における保磁力Hcj)、(b)はBi量と残留
磁束密度Br(室温における残留磁束密度Br)との関
係を示したものである。
【0025】
【表3】
【0026】図1(a)および表3に示すように、Bi
量が0wt%(比較例1)から0.06wt%(試料N
o.1)になると、保磁力Hcjが約80kA/m向上
するが、Bi量0.07wt%前後をピークとして保磁
力Hcjは徐々に低下する。そして、Bi量が0.20
wt%を超えるとBi量が0wt%の場合(比較例1)
と同等の保磁力Hcjまで低下し、Bi量が0.30w
t%の場合(比較例4)には保磁力Hcjは2285k
A/mまで低下した。次に図1(b)を見ると、Bi量
が0wt%(比較例1)から0.06wt%(試料N
o.1)、0.15wt%(試料No.2)とBi量が
増加すると若干残留磁束密度Brが低下する。但し、B
i量が0.15wt%の場合(試料No.2)とBi量
が0.30wt%の場合(比較例4)には1.15Tと
いう同一の残留磁束密度Brを示しており、Bi量が増
加してもそれほど残留磁束密度Brに影響を及ぼさない
といえる。したがって、焼結磁石におけるBi量を0.
01〜0.20wt%程度とすることにより、残留磁束
密度Brの低下を抑制しつつ保磁力Hcjを向上させる
ことができることがわかった。そして、試料No.1、
試料No.2の磁石組成においては、Bi量を0.01
〜0.20wt%とすることにより、室温において24
00kA/m以上という良好な保磁力Hcjを得ること
ができる。
【0027】続いて、試料No.1、試料No.2およ
び比較例1、比較例4とは組成が異なる試料No.4〜
試料No.7および比較例3、比較例5に基づいてBi
量の望ましい範囲を確認する。なお、表1に示したよう
に、試料No.4〜試料No.7および比較例3、比較
例5は、焼結磁石におけるBi量が異なる以外は同一の
条件で作製されたものである。試料No.4〜試料N
o.7および比較例3、比較例5について、室温および
100℃における保磁力Hcjと残留磁束密度Brの測
定結果を表4にまとめた。また、試料No.4〜試料N
o.7、比較例3、比較例5のBi量と磁気特性の変化
との関係について、図2に示す。図2中、(a)はBi
量と保磁力Hcjとの関係(室温における保磁力Hc
j)、(b)はBi量と残留磁束密度Br(室温におけ
る残留磁束密度Br)との関係を示したものである。
【0028】
【表4】
【0029】図2および表4に示すように、Biが含ま
れていない場合(比較例3)には1.31Tという良好
な残留磁束密度Brを示す一方で、保磁力Hcjは15
92kA/mと低い値を示している。これに対し、Bi
量が0.025wt%の場合(試料No.4)における
残留磁束密度Brは1.31T、保磁力Hcjは178
3kA/mとなっており、ともに良好な値を示してい
る。Bi量が0.05wt%の場合(試料No.5)、
Bi量が0.075wt%の場合(試料No.6)に
は、試料No.4(Bi量:0.025wt%)と同等
の残留磁束密度Brおよび保磁力Hcjを示す。これを
ピークに保磁力Hcjは徐々に減少し、Bi量が0.3
0wt%の場合(比較例5)の保磁力Hcjは1550
kA/mと、Biが含まれていない場合(比較例3)の
保磁力Hcjよりも低い値まで低下してしまう。以上の
結果から、試料No.1、試料No.2および比較例
1、比較例4とは組成が異なる試料No.4〜試料N
o.7および比較例3、比較例5においても、Bi量を
0.01〜0.20wt%とすることにより、残留磁束
密度Brの低下を抑制しつつ保磁力Hcjを向上させる
ことができることがわかった。Bi量のより望ましい範
囲は0.02〜0.15wt%、さらに望ましくは0.
025〜0.10wt%であるといえる。試料No.4
〜試料No.7の磁石組成においては、Bi量を0.0
1〜0.20wt%とすることにより、室温において1
700kA/m以上の保磁力Hcjおよび1.29Tの
良好な磁気特性を得ることができる。
【0030】(実施例2)焼結温度の変動に伴う磁気特
性の変動を確認するために行った実験を、実施例2とし
て説明する。上述の通り、実施例1で得た試料No.4
〜試料No.6および比較例3は、磁場中成形後の成形
体を1070℃でそれぞれ4時間焼結した後、二段時効
処理を施したものである。表5に示す通り、本実施例で
は、試料No.4(Bi量:0.025wt%)と焼結
条件のみが異なる試料No.8、試料No.9、試料N
o.5(Bi量:0.05wt%)と焼結条件のみが異
なる試料No.10、試料No.11、試料No.6
(Bi量:0.075wt%)と焼結条件のみが異なる
試料No.12、試料No.13、比較例3(Bi含有
せず)と焼結条件のみが異なる比較例6、比較例7を作
製した。試料No.8〜試料No.13、比較例6、比
較例7の焼結条件および二段時効処理の条件は以下に示
す通りである。
【0031】焼結条件: 試料No.8、試料No.10、試料No.12=10
50℃×4時間 比較例6=1050℃×4時間 試料No.9、試料No.11、試料No.13=10
90℃×4時間 比較例7=1090℃×4時間 二段時効処理: 試料No.8〜試料No.13=800℃×1時間、5
40℃×1時間 比較例6、比較例7=800℃×1時間、540℃×1
時間
【0032】試料No.4〜試料No.6、試料No.
8〜試料No.13、比較例3、比較例6、比較例7の
保磁力Hcjおよび残留磁束密度Brの関係図を図3に
示す。図3において、曲線aはBi量が0.025wt
%である試料(試料No.4、試料No.8、試料N
o.9)の磁気特性の傾向を示しており、同様に曲線b
はBi量が0.05wt%(試料No.5、試料No.
10、試料No.11)、曲線cはBi量が0.075
wt%(試料No.6、試料No.12、試料No.1
3)、曲線dは焼結磁石にBiを含有しない試料(比較
例3、比較例6、比較例7)の磁気特性をそれぞれ示し
ている。
【0033】
【表5】
【0034】図3に示すように、曲線aは曲線dの右上
に位置している。つまり、Bi量が0.025wt%で
ある曲線aは、焼結温度1050℃、1070℃、10
90℃のいずれにおいても曲線d(Biを含有せず)よ
りも良好な保磁力Hcjおよび残留磁束密度Brを示し
ていることがわかる。また曲線a〜曲線dは、焼結温度
が上昇するにつれて保磁力Hcjが低下し、その一方で
残留磁束密度Brが向上する傾向を示している。ところ
が、焼結磁石にBiを所定量含む曲線a〜曲線cは、焼
結温度が1090℃である場合においても約1750k
A/mという良好な保磁力Hcjを示していることが注
目される。一方、Biを含有しない曲線dにおいて、焼
結温度が1090℃である場合には保磁力Hcjは約1
590kA/mという低い値となってしまう。
【0035】次に、図3中の曲線a(Bi量:0.02
5wt%)、曲線b(Bi量:0.05wt%)、曲線
c(Bi量:0.075wt%)とを比較すると、この
中で最も安定して高い磁気特性を示しているのは曲線a
である。曲線aでは、焼結温度1050℃、1070
℃、1090℃のいずれの場合においても残留磁束密度
Brが1.29T以上および保磁力Hcjが約1750
kA/mという良好な磁気特性を示す。以上の結果よ
り、Biを所定量含めることにより磁気特性が向上し、
かつ焼結温度が上昇した場合の保磁力Hcjの低下を抑
制することができることがわかった。より具体的には、
Biを所定量含む本発明によれば、残留磁束密度Brが
1.25T以上、かつ保磁力Hcjが1670kA/m
以上の希土類永久磁石を得ることができる。
【0036】(実施例3)Bi量に対する磁気特性の変
化と、焼結磁石におけるGa量(以下、「Ga量」とい
う)に対する磁気特性の変化とを比較確認するために行
った実験を、実施例3として説明する。実施例1と同様
の条件でa合金粉末、b合金粉末およびc合金粉末を調
整し、粉砕、混合、磁場中成形を行った。但し、焼結磁
石にGaを含む場合、実施例1のb合金について、「3
wt%以下(0は含まず)Bi」を含む合金の代わり
に、「5wt%以下(0は含まず)Ga」を含む合金を
用いた。磁場中成形後の成形体を1090℃で4時間焼
結した後、以下の条件で二段時効処理を施し、焼結磁石
にBiを含む試料No.14〜試料No.16と焼結磁
石にGaを含む比較例8〜比較例10を得た。
【0037】二段時効処理: 試料No.14〜試料No.16=750℃×1時間、
540℃×1時間 比較例8〜比較例10=750℃×1時間、540℃×
1時間
【0038】なお、試料No.14〜試料No.16と
比較例8〜比較例10の磁石組成は表6に示す通りであ
る。試料No.14〜試料No.16および比較例8〜
比較例10について、100℃における保磁力Hcjの
測定結果を図4に示す。なお、焼結磁石にGa、Biの
いずれも含有していないものを「M−free」として
図4に示している。
【0039】
【表6】
【0040】図4に示すように、Bi量が0.06wt
%の場合(試料No.14)の保磁力Hcjは約157
0kA/mである。一方、これと同等の保磁力Hcjを
得るためにはGaを約0.16wt%添加する必要があ
る。つまり、Biによれば、Ga添加量のおよそ1/3
の添加量で高い保磁力Hcjを得ることができることが
わかった。よって、Biを用いることによって磁石の製
造コストを低減することができるといえる。
【0041】(実施例4)Bi,Ga,Snをそれぞれ
単独添加した場合におけるDy量と磁気特性の関係を確
認するために行った実験を、実施例4として説明する。
実施例1と同様の条件でa合金粉末、b合金粉末および
c合金粉末を調整し、粉砕、混合、磁場中成形を行っ
た。但し、焼結磁石にGaを含む場合、実施例1のb合
金について、「3wt%以下(0は含まず)Bi」を含
む合金の代わりに、「5wt%以下(0は含まず)G
a」を含む合金を用いた。また、焼結磁石にSnを含む
場合には、実施例1のb合金について、「3wt%以下
(0は含まず)Bi」を含む合金の代わりに、「10w
t%以下(0は含まず)Sn」を含む合金を用いた。磁
場中成形後の成形体を1090℃で4時間焼結した後、
以下の条件で二段時効処理を施し、Biを含む試料N
o.17〜試料No.19(Bi量:0.05wt
%)、Gaを含む比較例11〜比較例13(Ga量:
0.16wt%)、Snを含む比較例14〜比較例16
(Sn量:0.12wt%)、およびBi,Ga,Sn
のいずれも含まない比較例17を得た。
【0042】二段時効処理: 試料No.17〜試料No.19=800℃×1時間、
570℃×1時間 比較例11〜比較例13、比較例17=800℃×1時
間、570℃×1時間 比較例14〜比較例16=750℃×1時間、540℃
×1時間
【0043】試料No.17〜試料No.19と比較例
11〜比較例17の磁石組成は表7に示す通りである。
なお、表7に示すように、試料No.17〜試料No.
19、比較例11〜比較例17はいずれもCu,Alを
同量ずつ含んでいる。よって、比較例17についてもC
u,Alを含有しているが、本実施例においては説明の
便宜上、比較例17については適宜「Mを含まない(後
述する図5においてはM−free)」という表現を用
いる。表7に示すように、試料No.17〜試料No.
19および比較例11〜比較例17のDy量は以下の通
りである。 Dy量5.0wt%:比較例14 Dy量6.0wt%:比較例15 Dy量6.3wt%:試料No.17、比較例11 Dy量7.2wt%:試料No.18、比較例12 Dy量8.1wt%:試料No.19、比較例13、比
較例16、比較例17 試料No.17〜試料No.19および比較例11〜比
較例17について、100℃における保磁力Hcjおよ
び残留磁束密度Brの測定結果を図5に示す。
【0044】
【表7】
【0045】図5に示すように、Dy量が5.0wt
%、6.0wt%、6.3wt%、7.2wt%、8.
1wt%と増加するにつれて保磁力Hcjが向上し、そ
の一方で残留磁束密度Brが低下する傾向がある。つま
り、高い保磁力Hcjを得るためにはDy量を増加させ
ればよく、逆に高い残留磁束密度Brを得るためにはD
y量を減少させることが有効である。ここでDy量が
6.3wt%である試料No.17と比較例11とを比
較すると、両者の残留磁束密度Brは1.22〜1.2
3Tとほぼ等しい。ところが保磁力HcjについてはB
iを含む試料No.17の方が高い値を示している。ま
た、Dy量が7.2wt%である試料No.18と比較
例12とを比較すると、試料No.18は残留磁束密度
Brおよび保磁力Hcjともに比較例12よりも高い値
を示す。したがって、添加元素MとしてBiを選択する
ことにより高い磁気特性を得ることができるといえる。
【0046】次にDy量が8.1wt%である試料N
o.19、比較例13、比較例16、比較例17に着目
すると、これらはいずれも1.18〜1.20Tの残留
磁束密度Brを示している。ところが保磁力Hcjにつ
いては試料No.19が約1550kA/mという最も
良好な値を示し、次いで比較例13(保磁力Hcj:約
1500kA/m)、比較例17(保磁力Hcj:約1
420kA/m)、比較例16(保磁力Hcj:約14
10kA/m)という順になっている。つまり、本実施
例で添加元素Mとして用いたBi,Ga,Snにおい
て、磁気特性向上の効果が高いのはBi,Ga,Snの
順であるといえる。また、Biの添加量は0.05wt
%、Gaの添加量は0.16wt%、Snの添加量は
0.12wt%であることから、上述の実施例1〜3で
立証済みのようにBiは少ない添加量で高い効果を発揮
する。
【0047】さらにDy量が8.1wt%である比較例
16、比較例17とDy量が7.2wt%である試料N
o.18とを比較すると、試料No.18は比較例1
6、比較例17と同等の保磁力Hcjを保ちながらより
高い残留磁束密度Brを示す。つまり、一般的には上述
の通り、Dy量が減少するにつれて保磁力Hcjが低下
する傾向があるのに対し、Biをわずか0.05wt%
含むことにより、コストの高いDyの量を低減しつつ、
磁気特性を向上させることができる。以上の結果から、
Biを選択した場合には、Bi,Ga,Snのいずれも
含まない場合、添加元素MとしてGaまたはSnを含む
場合よりも磁気特性向上、特に保磁力Hcjの向上に有
効であることがわかった。
【0048】(実施例5)BiとGaを複合添加した場
合、BiとSnを複合添加した場合の効果を確認するた
めに行った実験を、実施例5として説明する。実施例1
と同様の条件でa合金粉末、b合金粉末およびc合金粉
末を調整し、粉砕、混合、磁場中成形を行った。但し、
GaまたはSnについてもb合金粉末から供給すること
とした。よって、BiとGaを複合添加した場合には実
施例1のb合金組成にさらに「5wt%以下(0は含ま
ず)Ga」を含む合金を用いた。またBiとSnを複合
添加した場合には実施例1のb合金組成にさらに「10
wt%以下(0は含まず)Sn」を含む合金を用いた。
磁場中成形後の成形体を1090℃で4時間焼結した
後、以下の条件で二段時効処理を施し、焼結磁石にBi
およびGaを含む試料No.20、比較例18および焼
結磁石にBiおよびSnを含む試料No.21、比較例
19を得た。
【0049】二段時効処理: 試料No.20=800℃×1時間、570℃×1時間 比較例18=800℃×1時間、570℃×1時間 試料No.21=750℃×1時間、540℃×1時間 比較例19=750℃×1時間、540℃×1時間
【0050】表8に示すように、試料No.20、比較
例18の組成は上記実施例4で用いた比較例13とほぼ
同じであり、また試料No.21、比較例19の組成は
上記実施例4で用いた試料No.19、比較例16とほ
ぼ同じである。本実施例では、これらの試料No.1
9、比較例13、比較例16を適宜参照しながら、添加
元素MとしてBiとGaを複合添加した場合および添加
元素MとしてBiとSnを複合添加した場合の効果とに
ついて検討を行う。焼結磁石にBiおよびGaを含む試
料No.20、比較例18および焼結磁石にBiおよび
Snを含む試料No.21、比較例19の保磁力Hcj
および残留磁束密度Brを図6に示す。
【0051】
【表8】
【0052】はじめに、試料No.20(Bi:0.0
5wt%+Ga:0.16wt%)と比較例13(G
a:0.16wt%)との比較を行う。ここで、比較例
13と試料No.20は、試料No.20がBiを0.
05wt%含有している点を除けば、磁石組成が同一で
ある。図6を見ると、BiとGaを複合添加している試
料No.20は、Gaを単独添加した比較例13よりも
右側に位置しており、試料No.20は比較例13より
もおよそ50kA/m高い保磁力Hcjを示している。
よって、Gaと所定量のBiを複合添加することによ
り、Gaを単独添加した場合よりも高い保磁力Hcjが
得られることがわかった。但し、Biを0.30wt%
含有している比較例18(Bi:0.30wt%+G
a:0.16wt%)は、比較例13よりもおよそ10
0kA/m低い値の保磁力Hcjを示しており、残留磁
束密度Brについても比較例18の方が比較例13より
も低い値を示した。以上の結果から、所定量のBiとG
aを複合添加することによって保磁力Hcjを向上させ
ることができるが、この場合においてもBiの望ましい
添加量は0.01〜0.2wt%の範囲であると推測さ
れる。
【0053】続いて、試料No.21(Bi:0.05
wt%+Sn:0.12wt%)と比較例16(Sn:
0.12wt%)との比較を行う。ここで、比較例16
と試料No.21は、試料No.21がBiを0.05
wt%含有している点を除けば、磁石組成が同一であ
る。図6を見ると、BiとSnを複合添加している試料
No.21は、Snを単独添加した比較例16よりもお
よそ100kA/m高い保磁力Hcjを示している。と
ころが、比較例19(Bi:0.35wt%+Sn:
0.12wt%)に着目すると、比較例19の保磁力H
cjは約1360kA/mである。つまり、比較例19
は、Snを単独添加した比較例16(保磁力Hcj:約
1420kA/m)よりも低い保磁力Hcjを示し、試
料No.21(保磁力Hcj:約1520kA/m)と
比較した場合には150kA/m以上も低い保磁力Hc
jを示した。また、比較例19(Bi:0.35wt%
+Sn:0.12wt%)は比較例13(Ga:0.1
6wt%)および試料No.21(Bi:0.05wt
%+Sn:0.12wt%)の左下に位置しており、B
iを0.35wt%含有する比較例19は、比較例13
および試料No.21よりも低い残留磁束密度Brを呈
していることがわかる。以上の結果から、所定量のBi
とSnを複合添加することによって保磁力Hcjを向上
させることができるが、この場合においてもBi量が所
定量を超えるとSnを単独添加した場合よりも低い磁気
特性を示すことが確認された。したがって、BiとSn
を複合添加する場合についても、Biの望ましい添加量
は0.01〜0.2wt%の範囲であるといえる。
【0054】ところで、図6には、上記実施例4で用い
た試料No.19の磁気特性についても示してある。こ
こで、試料No.19(Bi:0.05wt%)、試料
No.20(Bi:0.05wt%+Ga:0.16w
t%)、試料No.21(Bi:0.05wt%+S
n:0.12wt%)に着目すると、試料No.19、
試料No.20、試料No.21の順に良好な磁気特性
を示していることがわかる。つまり、本実施例の結果を
まとめると(但し、Biを含有する場合にはBi量を
0.01〜0.2wt%の範囲とする)、最も良好な磁
気特性を示したのがBi単独添加(試料No.19)、
次いでBiとGaの複合添加(試料No.20)、Bi
とSnの複合添加(試料No.21)、Ga単独添加
(比較例13)、Sn単独添加(比較例16)であっ
た。この結果から、本願発明で推奨する範囲、すなわち
0.01〜0.2wt%というごく微量のBiを焼結磁
石に含有せしめることが、焼結磁石の磁気特性を改善す
る上できわめて効果的であることが明らかとなった。
【0055】(実施例6)以上の実施例1〜5は、いず
れも焼結磁石に所定量のAl,Cuを含むものであっ
た。本実施例は、焼結磁石にAl,Cuを含まない場合
においてもBiを所定量添加することによって焼結磁石
の磁気特性を改善することができるか否かを確認するた
めに行ったものである。原料金属をAr雰囲気中で高周
波溶解することにより、 a'合金:(20〜30)wt%Nd-(2〜10)wt
%Dy- (1〜1.3)wt%B-bal.Fe b'合金:(20〜40)wt%Nd-(10〜50)w
t%Dy- (3〜12)wt%Co-3wt%以下(0は含まず)
Bi- bal.Fe c'合金:(20〜40)wt%Nd-(10〜50)w
t%Dy- (3〜12)wt%Co-bal.Fe として調整した。なお、NdとDyの合計量は30〜6
0wt%である。
【0056】次いで、a'合金、b'合金およびc'合金
を以下の条件にて粉砕することにより、微粉砕後の粒径
を3〜5μmとし、a'合金粉末、b'合金粉末および
c'合金粉末の3種類の合金粉末を得た。なお、a'合
金、b'合金およびc'合金の組成は、a'合金粉末:
(b'+ c')合金粉末の混合比率(重量比)が90:
10〜97:3程度で磁石組成となるよう適宜製作し
た。得られた合金粉末を窒素雰囲気のグローブボックス
内にて混合し、磁場中成形および焼結を以下の条件にて
行った。次いで以下の条件で二段時効処理を施し、試料
No.22、試料No.23および比較例20、比較例
21の4種類の焼結磁石を得た。焼結後の磁石の組成は
表9に示す通りである。なお、試料No.22、試料N
o.23、比較例20、比較例21による磁石はBiの
含有の点を除くと基本的に同一の組成を有している。ま
た、比較の便宜のために実施例1で作製した試料No.
1、試料No.2、および比較例1、比較例4の組成に
ついても表9に示してある。試料No.22がCu,A
lを含有していない点を除けば、試料No.22と試料
No.1は同一の組成を有している。また、試料No.
23と試料No.2、比較例20と比較例1、比較例2
1と比較例4についても、試料No.22と試料No.
1と同様の関係にある。
【0057】粗粉砕:ブラウンミル使用(水素吸蔵後、
窒素雰囲気中にて行った。) 微粉砕:ジェットミル使用(高圧窒素ガス雰囲気中にて
行った。) 粉砕時添加剤:ステアリン酸亜鉛0.1wt% 焼結条件:試料No.22、試料No.23=1090
℃×4時間 比較例20、比較例21=1090℃×4時間 磁場中成形条件:1200kA/mの磁場中で147M
Paの圧力で横磁場成形(プレス方向と磁場方向が直
交) 二段時効処理: 試料No.22、試料No.23=750℃×1時間、
540℃×1時間 比較例20、比較例21=750℃×1時間、540℃
×1時間
【0058】試料No.22、試料No.23および比
較例20、比較例21について、B−Hトレーサーおよ
びパルス励磁型磁気特性測定装置(最大発生磁界796
0kA/m)を用いて室温および100℃における残留
磁束密度Br、保磁力Hcjを測定した。その結果を表
10に示す。なお表10には、室温における最大エネル
ギー積(BH)maxについても示してある。また、比
較の便宜のために、表10には試料No.1、試料N
o.2、比較例1、比較例4の室温および100℃にお
ける残留磁束密度Br、保磁力Hcj、室温における最
大エネルギー積(BH)maxについても示している。
【0059】
【表9】
【0060】
【表10】
【0061】表9に示すように、試料No.22、試料
No.23、比較例20および比較例21は、比較例2
0がBiを含有していない点を除けば、焼結磁石におけ
る組成は等しい。ここで、表10を用いて試料No.2
2、試料No.23、比較例20および比較例21の室
温における磁気特性の比較を行う。
【0062】表10において、試料No.22、試料N
o.23、比較例20および比較例21の室温における
保磁力Hcjに着目すると、Biを含まない比較例20
の保磁力Hcjは2352kA/mであるのに対し、B
i量が0.06wt%の試料No.22の保磁力Hcj
は2452kA/m、Bi量が0.15wt%の試料N
o.23は2408kA/mという良好な保磁力Hcj
を示す。ところが、Bi量が0.30wt%の比較例2
1の保磁力Hcjは2260kA/mとなっており、B
iを含まない比較例20よりも保磁力Hcjが低下し
た。つまり、Biを含有せしめることにより、保磁力H
cjが向上するが、Biの含有量が所定量を超えると再
び保磁力Hcjが低下することがわかった。
【0063】上述の通り、試料No.22、試料No.
23、比較例20、比較例21がCuおよびAlを含ん
でいない点を除けば、これらの焼結磁石における組成は
それぞれ試料No.1、試料No.2、比較例1、比較
例4に対応している。ここで、上述した表10の結果、
すなわち試料No.22、試料No.23、比較例20
および比較例21の室温における保磁力Hcjを図7に
示す。なお、図7における曲線は図1(a)に示した曲
線と同一のものである。図7に示したように、曲線に沿
って試料No.22、試料No.23、比較例20、比
較例21がプロットされている。したがって、焼結磁石
にCuおよびAlを含まない場合においてもBi量を所
定量添加することによって保磁力Hcjを向上させるこ
とができることが明らかとなった。
【0064】次に、表10に示した試料No.22、試
料No.23、比較例20および比較例21の室温にお
ける残留磁束密度Brに注目する。Biを含まない比較
例20の残留磁束密度Brは1.17T、試料No.2
2(Bi量:0.06wt%)の残留磁束密度Brは
1.17T、試料No.23(Bi量:0.15wt
%)の残留磁束密度Brは1.16T、比較例21(B
i量:0.30wt%)の残留磁束密度Brは1.15
Tとなっている。つまり、本発明が推奨する範囲、すな
わち、Biを0.01〜0.2wt%の範囲で添加した
場合には、残留磁束密度Brの低下をほとんど招いてい
ないといえる。以上説明の通り、焼結磁石にCuおよび
Alを含まない場合、すなわちMとしてCu,Al,S
n,Gaのいずれも含有していない場合においても、B
iを所定量添加することにより、実施例1とほぼ同様の
傾向が得られた。つまり、本願発明で推奨する範囲、す
なわち焼結磁石にBiを0.01〜0.2wt%の範囲
で含有せしめることによって、Mとして他の元素を含ま
ずとも残留磁束密度Brの低下を抑えつつ保磁力Hcj
を向上させることができることがわかった。この範囲で
Biを添加した場合には、2400kA/m以上の保磁
力Hcjおよび1.16T以上の残留磁束密度Brを得
ることができる。
【0065】上述した実施例1〜6によって、焼結磁石
に0.01〜0.2wt%のBiを含有させることによ
り、残留磁束密度Brの低下を抑制しつつ保磁力Hcj
を向上させることができることが明らかとなった。ここ
で、実施例1および実施例6において作製した試料N
o.1〜試料No.7、試料No.22、試料No.2
3の残留磁束密度Brと保磁力Hcjの積(Br×Hc
j)、および保磁力Hcjを重希土類元素の重量百分率
で割った値(Hcj/重希土類元素の重量百分率)を表
11に示す。なお、試料No.1〜試料No.7、試料
No.22、試料No.23に含まれる重希土類元素は
Dyのみであるため、保磁力Hcjを重希土類元素の重
量百分率で割った値(Hcj/重希土類元素の重量百分
率)については表11中にてHcj/Dy量として示し
ている。
【0066】
【表11】
【0067】表11の残留磁束密度Brと保磁力Hcj
の積(Br×Hcj)の欄を見ると、試料No.1〜試
料No.7、試料No.22、試料No.23はいずれ
も2200(T×kA/m)以上という良好な値を示し
ている。また、Hcj/Dy量の欄を見ると、試料N
o.1〜試料No.7、試料No.22、試料No.2
3はいずれも260(kA/m×1/wt%)以上の値
を示しており、試料No.3〜試料No.7については
290(kA/m×1/wt%)以上の値を示してい
る。ここで、Dy量が4.6wt%である試料No.4
〜試料No.7については、384〜388(kA/m
×1/wt%)という非常に優れた値を示していること
が注目される。つまり、焼結磁石中にBiを所定量含有
する本発明によれば、コストが高い重希土類元素の添加
量を低減しつつ、優れた磁気特性を有する希土類永久磁
石を得ることができるのである。
【0068】次に、実施例1および実施例6において作
製した試料No.1〜試料No.7、試料No.22、
試料No.23、比較例4、比較例5、比較例21の保
磁力HcjをBiの重量百分率で割った値(Hcj/B
iの重量百分率)を表12に示す。
【0069】
【表12】
【0070】表12を見ると、Bi量が0.30wt%
である比較例4、比較例5、比較例21は、保磁力Hc
jをBiの重量百分率で割った値が5167〜7615
(kA/m×1/wt%)である。一方、Bi量が本願
発明で推奨する範囲、すなわちBi量が0.01〜0.
2wt%である試料No.1〜試料No.7、試料N
o.22、試料No.23は、保磁力HcjをBiの重
量百分率で割った値がいずれも10000以上の値を示
している。特に、Bi量が0.1wt%以下である試料
No.1、試料No.3〜試料No.6、試料No.2
2についてはいずれも20000(kA/m×1/wt
%)以上の値を示していることが注目される。つまり、
焼結磁石中に含有されるBi量を本発明で推奨する範
囲、すなわち0.01〜0.2wt%とすることによっ
て、Bi添加による保磁力Hcjの向上という効果を最
大限に享受することができるといえる。
【0071】(実施例7)実施例1〜6では3種類の合
金を原料とした、いわゆる混合法による焼結磁石につい
て説明したが、1種類の合金を原料とする、いわゆるシ
ングル法による焼結磁石の磁気特性の確認を行った。焼
結磁石に含まれる、全ての構成元素を含む合金を製造工
程中での組成変動を勘案した組成に作製した。この合金
をa"合金とする。a"合金を原料として、試料No.1
と同様の条件で粉砕から磁場中成形、焼結、二段時効処
理を施し、試料No.24を得た。試料No.24の組
成および磁気特性を表13に示す。なお、表13には試
料No.1の組成および磁気特性を併せて示している。
【0072】
【表13】
【0073】表13において、試料No.1と試料N
o.24とは、組成がほぼ同一であるとともに、その磁
気特性は同等である。したがって、原料合金が単数(シ
ングル法)であるか複数(混合法)であるかの違いは、
磁気特性に影響を及ぼさないことがわかった。混合法は
所望組成を調整するのが容易である利点を有し、シング
ル法は混合工程がないためにコスト面で有利である。
【0074】(実施例8)試料No.1を用いて、Bi
の焼結磁石中における存在位置を確認するため、EPM
A(電子線プローブマイクロアナライザー)による線分
分析を行った結果を実施例8として示す。図8に、EP
MAによるBi,Nd,Cu,Al,Feの定量線分分
析の結果を示す。なお、図8は、図9中の矢印で示すよ
うに焼結磁石の粒界相を含む部分についての線分分析結
果である。図8に示すように、Biの高濃度ピークとN
dの高濃度ピークとが一致していること、さらにFeの
低濃度ピークとが一致していることから、BiはNd−
rich相と呼ばれる非磁性粒界相に存在しているもの
と判断される。しかし、他の粒界相を分析したところ、
Biが検知されないこともあった。一方で、結晶粒内を
線分分析した結果の範囲内では、Biを含有する結晶粒
が見出せなかった。したがって、Biは焼結磁石中の粒
界相に散在、つまりRリッチな粒界相内に、粒界相の厚
みより小さい長径を有する状態で、独立したR−Fe−
Bi化合物として、非連続に存在する。この化合物をよ
り詳細に解析したところ、正方晶系の結晶構造を有する
6Fe13Bi1(Nd6Fe13Bi1等)化合物として存
在するものがあることがわかった。そして、この粒界相
にBiが含まれることが、本発明の効果、すなわち残留
磁束密度Brの低下を招くことなく高い保磁力Hcjを
得ることができるものと推測される。
【0075】また、焼結体の平均結晶粒径を測定したと
ころ、3〜10μmの範囲であった。よって、焼結体の
平均結晶粒径を3〜10μm、好ましくは5〜8μmと
することが望ましいと推測される。さらに、焼結体中に
おいて10μm以上の粗大な粒子の存在する割合が15
%以下となることが好ましい。
【0076】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明によれば、
コストを低減しつつ、保磁力および残留磁束密度がとも
に優れた希土類永久磁石を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a)は試料No.1、試料No.2、比較例
1、比較例4のBi量と保磁力Hcjとの関係(室温に
おける保磁力Hcj)、(b)は試料No.1、試料N
o.2、比較例1、比較例4のBi量と残留磁束密度B
r(室温における残留磁束密度Br)との関係を示すグ
ラフである。
【図2】 (a)は試料No.4〜試料No.7、比較
例3、比較例5のBi量と保磁力Hcjとの関係(室温
における保磁力Hcj)、(b)は試料No.4〜試料
No.7、比較例3、比較例5のBi量と残留磁束密度
Br(室温における残留磁束密度Br)との関係を示す
グラフである。
【図3】 試料No.4〜試料No.6、試料No.8
〜試料No.13、比較例3、比較例6、比較例7の保
磁力Hcjおよび残留磁束密度Brの関係図である。
【図4】 試料No.14〜試料No.16、比較例8
〜比較例10の保磁力Hcj(100℃における保磁力
Hcj)を示すグラフである。
【図5】 試料No.17〜試料No.19、比較例1
1〜比較例17の保磁力Hcjおよび残留磁束密度Br
の測定結果を示すグラフである。
【図6】 試料No.19〜試料No.21、比較例1
3、比較例16、比較例18、比較例19の保磁力Hc
jおよび残留磁束密度Brの測定結果を示すグラフであ
る。
【図7】 (a)は試料No.22、試料No.23、
比較例20、比較例21の室温における保磁力Hcj、
(b)は試料No.22、試料No.23、比較例2
0、比較例21の室温における残留磁束密度Brを示す
グラフである。
【図8】 試料No.1のEPMAによる定量線分分析
の結果を示すグラフである。
【図9】 実施例7にて線分分析を行った箇所を示す図
である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 福野 亮 東京都中央区日本橋一丁目13番1号 テ ィーディーケイ株式会社内 (56)参考文献 特開 平2−156051(JP,A) 特開 昭62−116756(JP,A) 特開 平3−160706(JP,A) 特開 昭62−244105(JP,A) 特開 昭59−132104(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01F 1/053 C22C 38/16 C22C 38/00 303 B22F

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 希土類元素R:20〜40wt%、ホウ
    素B:0.5〜4.5wt%、M(Al,Cu,Sn,
    Gaの1種または2種以上):0.03〜0.5wt
    %、Bi:0.01〜0.2wt%、遷移金属元素T:
    残部、とすることを特徴とする希土類永久磁石。
  2. 【請求項2】 Nd+Dy:31〜32.5wt%、ホ
    ウ素B:0.5〜1.5wt%、Cu:0.15wt%
    以下(0を含まず)、Al:0.15〜0.3wt%、
    Co:2wt%以下(0を含まず)、Bi:0.01〜
    0.2wt%、Fe:残部の組成を有することを特徴と
    する請求項1に記載の希土類永久磁石。
  3. 【請求項3】 Biを0.02〜0.1wt%含むこと
    を特徴とする請求項1または2に記載の希土類永久磁
    石。
  4. 【請求項4】 Dyを2〜15wt%含むことを特徴と
    する請求項1〜3のいずれかに記載の希土類永久磁石。
  5. 【請求項5】 残留磁束密度が1.25T以上であり、
    かつ保磁力が1650kA/m以上であることを特徴と
    する請求項1〜4のいずれかに記載の希土類永久磁石。
  6. 【請求項6】 Biが粒界相に散在することを特徴とす
    る請求項1〜5のいずれかに記載の希土類永久磁石。
  7. 【請求項7】 希土類元素R:20〜40wt%、ホウ
    素B:0.5〜4.5wt%、Bi:0.01〜0.2
    wt%、遷移金属元素T:残部、とすることを特徴とす
    る希土類永久磁石。
  8. 【請求項8】 残留磁束密度Brと保磁力Hcjの積
    (Br×Hcj)が2100(T×kA/m)以上であ
    り、かつ保磁力Hcjを重希土類元素の重量百分率で割
    った値(Hcj/重希土類元素の重量百分率)が230
    (kA/m×1/wt%)以上であることを特徴とする
    請求項1〜7のいずれかに記載の希土類永久磁石。
  9. 【請求項9】 保磁力HcjをBiの重量百分率で割っ
    た値(Hcj/Biの重量百分率)が8000(kA/
    m×1/wt%)以上であることを特徴とする請求項1
    〜8のいずれかに記載の希土類永久磁石。
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