JP3417871B2 - 静磁場を用いる鋼の連続鋳造方法 - Google Patents

静磁場を用いる鋼の連続鋳造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、鋳型内の溶鋼流を
静磁場の作用によって制御することによって、内部欠陥
のない鋳片を製造する為の連続鋳造方法の改良に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】図1は、従来の連続鋳造法における鋳片
中の溶鋼流の様子を示す概略説明図であり、図中1は短
辺側鋳型、2は長辺側鋳型、3は浸漬ノズル、4は溶
鋼、5は凝固殻、6は非金属介在物、15はガイドロー
ルを夫々示す。尚図1(a)は長辺側から見た断面図で
あり、図1(b)は短辺側から見た断面図である。
【0003】この様な連続鋳造においては、溶鋼4は浸
漬ノズル3から両側の短辺(短辺側鋳型)に向けて略水
平乃至斜め下方に噴出されるが、鋳型内に注入された溶
鋼流(図1においてAで示す)が深く潜り込むと、溶鋼
よりも軽い気泡やアルミナ等も溶鋼流に乗って鋳片内に
深く入り込み、溶鋼表面上に浮上分離されずに、湾曲内
側に非金属介在物6として捕捉されることになる。そし
て、これが鉄鋼製品の内部欠陥となる。こうした鉄鋼製
品の内部欠陥は、深絞り用鋼の鋳造、湾曲型連鋳機
による極低炭素鋼の鋳造、薄スラブの連続鋳造、等の
場合において特に顕著な問題となっていた。これらにつ
いて、説明する。
【0004】まず、製品が深絞りを受ける薄鋼板(上記
の場合)は、鋼板内部に欠陥が存在すると割れが発生
し易いので、特に厳格な内部品質が要求される。この様
な厳格な内部品質の要求に応える為に、深絞り用鋼板は
通常0.8〜1.5m/min程度の遅い鋳造速度で鋳
造することによって、気泡やアルミナ等が溶鋼流にのっ
て鋳片内に深く潜り込むことを防止する様にしている。
しかしながら、この様に生産性を犠牲にして遅い速度で
鋳造しても、内部欠陥の発生は完全に防止することはで
きず、より確実な内部欠陥防止技術が必要とされていた
のである。
【0005】また、プレス成形性に優れる炭素濃度が
0.01質量%以下の極低炭素鋼板では、材質が軟らか
いことが災いして、鋳片内部に気泡等の欠陥が存在し易
い。特に、垂直部を持たない湾曲型連鋳機で極低炭素鋼
を鋳造する場合(上記の場合)には、潜り込んだ気泡
が湾曲内側に捕捉され、ブリスター欠陥が発生し易いと
いう問題がある。こうしたことから、極低炭素鋼を鋳造
する場合には、鋳型から上部のロールスタンドにかけて
長さ数mの垂直部を有する垂直曲げ型連鋳機を用いた連
続鋳造方法が広く採用されている。即ち、こうした垂直
曲げ型連鋳機では、気泡が鋳型内部に潜り込んでも、垂
直部では気泡が凝固殻に捕捉されにくいのである。
【0006】そして、湾曲型連鋳機で極低炭素鋼板を鋳
造するためには、ブリスター欠陥の発生を防止するため
に、1.3m/min程度以下の低い鋳造速度で鋳造す
ることが必要となり、垂直曲げ型連鋳機を用いる場合と
比べて、生産性が低下する。しかしながら、既存の湾曲
型連鋳機を垂直曲げ型連鋳機に改造する為には、改造範
囲が広過ぎ、鋳型と湾曲部全体のロールスタンドの他、
連鋳機の基礎まで改造する必要があり、多大な改造コス
トと長期間の操業停止を余儀なくされることになる。こ
の為に、湾曲型のままで垂直曲げ型連鋳機並みに、鋳造
速度が1.3m/min以上の鋳造速度で鋳造してもブ
リスターの発生が防止でき、しかも改造コストが小さく
て済み、改造に必要な操業停止期間も短くて済む様な内
部欠陥低減技術の開発が望まれていた。
【0007】更に、短辺方向の長さ(厚み)が200〜
300mm程度である様なスラブを鋳造し、熱間圧延に
よって厚みを低減する従来プロセスに代わり、初めから
厚みが150mm以下である様な薄いスラブを鋳造する
ことにより、熱間圧延コストを低減する薄スラブ連鋳
(上記の場合)が、近年広く採用される様になってい
る。この様な薄スラブの連鋳においては、従来の連鋳と
同様な生産性を確保する為には、厚みが薄くなった分だ
け鋳造速度を増大させる必要がある。
【0008】鋳片の幅(長辺方向の長さ)が同一の場
合、例えば厚みが240mmのスラブを1.6m/mi
nの鋳造速度で鋳造する従来の連続鋳造と同様の生産性
を確保しようとすれば、厚み150mmのスラブでは
2.5m/min程度以上、厚み100mmの薄スラブ
連鋳では3.8m/min以上の鋳造速度が必要とされ
る。しかしながら、この様に操業条件の変更が余儀無く
されることは、薄スラブ連鋳で製造された鋼の内部品質
悪化の要因となっている。こうしたことから、鋳造速度
が2.5m/min程度以上の高速鋳造が必要となる薄
スラブ連鋳においては、垂直型連鋳機の場合でも通常
2.5m/min以下の鋳造速度で鋳造される従来の連
続鋳造以上に、より高度な内部欠陥防止技術の実現が必
要とされている。
【0009】この様な内部欠陥防止技術の要求に応える
という、溶鋼流速が早い領域に静磁界を作用させて溶鋼
流動を減速する技術が様々提案されている。例えば、特
開昭57−17356号には、図2[図2(a)は長辺
側から見た断面図、図2(b)は短辺側から見た断面
図]に示す様に、鋳型の周囲に電気コイル7と鉄芯8か
らなる電磁石9を配置し、この電磁石9によって発生す
る静磁場を溶鋼流速が早い領域に作用させて溶鋼流動を
減速する技術が開示されている。
【0010】しかしながら、静磁場を局所的に作用させ
ると、前記図2(a)に示す様に溶鋼流Aは磁場の弱い
領域を迂回するので、溶鋼流Aの潜り込みを十分に抑制
できず、電磁石を配置しただけの効果が発揮されない。
【0011】こうしたことから、例えば特開平2−28
4750号には、断面が長方形のスラブ鋳片またはブル
ーム鋳片(以下、これらを一括して単に「鋳片」と呼ぶ
ことがある)を製造する連続鋳造機の鋳型において、そ
の長辺方向(以下、「幅方向」と言うことがある)の全
域に静磁場を作用させて溶鋼流の迂回経路を断つ技術が
提案されている。また例えば特開平5−55220号に
は、磁場作用領域を鋳型の上下2段とする技術も提案さ
れており、ある程度の品質改善が発揮されている。
【0012】しかしながらこれらの技術は、いずれも鋳
型短辺近傍(幅方向の両端部付近)の領域では、下降流
の抑制効果が不十分であり、鋳片内部の非金属介在物の
欠陥が低減しないという問題があった。そしてこうした
問題が生じる原因としては、次の様に考えられる。上記
した技術はいずれも、断面空間が長方形の鋳型を流下す
る溶鋼流に対して鋳型短辺方向(以下、「厚み方向」と
言うことがある)の磁場を作用させる技術であるが、こ
うした磁場を作用させると図3に示す様に、鋳型幅中央
部においては鋳型幅方向の電流が誘起され、磁場と電流
が水平面内で直交するので、フレミングの法則に従って
上向きの電磁力が発生し、溶鋼流が制動されることにな
る。これに対して鋳型短辺面近傍部では、鋳型厚み方向
に磁場を作用させても、鋳型幅方向には電流が誘起され
にくいため、水平面内で磁場と電流が直交した場合に発
生する鉛直上向きの電磁力が弱い。従って、短辺面に沿
った溶鋼の潜り込みを十分に抑制できず、幅方向両端部
では内部に多くの非金属介在物が残存することになる。
【0013】尚、連続鋳造のタンデッシュから浸漬ノズ
ルを介して鋳型内に注入される溶鋼流に対して、静磁場
を作用させつつ鋳造する方法において、必要な磁束密度
について言及した技術として、(1)日本特許第275
0320号や(2)特開平10−180427号等も知
られている。これらは、いずれも厚み方向の磁場を作用
させる技術であるが、これらの技術においても、磁束密
度がより大きな静磁場を作用させても溶鋼の潜り込みを
十分に抑制できないという本質的な課題は依然として解
消されないままである。
【0014】即ち、上記(1)の技術では、ストレート
浸漬ノズルの吐出口からの最大吐出速度v(m/se
c)、磁束密度B(テスラ:1テスラ=10000ガウ
ス)、磁場印加範囲L(mm)等をパラメータとして、
B×Lを規定するものであるが、基本的に高い磁束密度
を作用させるものである(後記図9参照)。また、上記
(2)の技術では、電気伝導度σ、磁束密度B、鋳片厚
みL、磁場印加範囲上端での溶鋼流速V、密度ρ等から
計算されるスチュアート数N=σB2/ρVを、N=3
×10-3〜7×10-3とする鋳造方法について開示され
ている。しかしながら、この技術においても、より大き
な磁束密度を作用させているのである(後記図10参
照)。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らも上記した
課題を解決するという観点から、以前から検討を重ねて
おり、その研究の一環として、鋳型断面両側の長辺の脇
に1組または複数組の電気コイルを、これらのコイルの
軸方向が鋳片断面の長辺方向に略平行となる様に配置し
て電磁石を構成し、且つ溶鋼中に鋳型長辺方向の磁場が
貫通する様にした溶鋼流の制御装置について提案してい
る(特願平10−87665号)。こうした制御装置の
構成を図面によって説明する。
【0016】図4は本発明者らが先に提案した制御装置
の一構成例を示す縦断面図であり、図中7b,7cは電
気コイル、8bは鉄芯(コア)、12は鋳型フレーム、
13はフットロール、14はトップカバー、15,15
aはガイドロール、16,16aはロールスタンドフレ
ームを夫々示す(3は前述した浸漬ノズルである)。ま
た図5は図4における鋳型付近の構成を説明する為の平
面図であり、図中20は長辺銅板バックプレート、21
は長辺銅板、22は短辺銅板バックプレート、23は短
辺銅板であり、これらによって鋳型が構成される。また
25aは磁極N、25bは磁極Sを夫々示す。
【0017】図4、5に示した制御装置では、軸方向が
鋳型幅方向にほぼ平行な1組の電気コイル7b,7cを
鉄芯8bに巻付けて鋳型断面両側の長辺の脇に配置する
ことによって電磁石が構成され、両コイルに同一方向の
直流電流Eを通電する様に構成されている。こうした構
成を採用することによって、鋳片の幅方向(図5の左右
方向)の磁場(その方向を符号Bで示す)を効果的に作
用させることができたのである。
【0018】この技術によれば、短辺に沿った溶鋼の潜
り込みを十分に抑制することができるので、鋳片内部に
残留する非金属介在物介在物を大幅に低減することがで
きる様になった。しかしながら、この技術においても下
記に示す様な若干の問題があり、依然として改善すべき
余地が残されていた。
【0019】前述の如く、連続鋳造においては、鋳造速
度が製品の内部品質に重要な影響を及ぼすことになる。
そして、薄スラブ連鋳機の様に、機長や鋳片の厚みによ
って定まる最大鋳造速度が大きな連鋳機では、潜り込み
流速が速く、より大きな磁束密度まで内部品質改善効果
が現れると考えられる。一方、最大鋳造速度が小さな連
鋳機では、もともと潜り込み流速が遅いので、ある限度
以上に磁束密度を高くしても、内部品質改善効果は飽和
してしまう可能性がある。また、同じ連鋳機において
も、内部品質の厳格な深絞り用鋼を低速で鋳造する場合
と、深絞り用鋼ほどには内部品質が厳格でない汎用鋼を
高速で鋳造する場合とでは、最適な鋳造速度は自ずから
異なるものと考えられる。
【0020】しかしながら従来では、鋳造速度に応じた
最適な磁束密度が不明であったために、確実に潜り込み
流を低減するためには、必要以上の磁束密度を印加させ
ざるを得ず、過大な電磁石を設置して設備投資の回収が
不能となったり、内部品質の改善に貢献しない無駄な電
力を消費するという問題があった。
【0021】本発明は上記事情に着目してなされたもの
であって、その目的は、連鋳機の最大鋳造速度や操業時
の鋳造速度に応じた適切な磁束密度の静磁場を鋳片断面
内の長手方向に平行に印加することによって、過大な電
磁石を設置したり、無駄な電力を消費することなく、効
率的に潜り込み流を抑制し、内部欠陥の無い鋳片を製造
することができる鋼の連続鋳造方法を提供することにあ
る。
【0022】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決した本発
明の連続鋳造方法とは、断面が長方形のスラブ鋳片また
はブルーム鋳片を製造する連続鋳造機の鋳型内中央部に
設置された浸漬ノズルから鋳型の両側短辺に向けて略水
平乃至斜め下方に溶鋼を噴出させ、その噴流の一部が鋳
型の両側短辺に衝突して生じる下降流に対して、鋳型長
辺方向に静磁場を印加させて、前記鋳片内部の溶鋼流を
制御すると共に、印加する静磁場の磁束密度B(ガウ
ス)が、下記(1)式を満足する様に操業する点に要旨
を有するものである。
【0023】 600×(Vc)1/2≦B≦1700×(Vc)1/2 ……(1) 但し、Vcは鋳造速度(m/min)であり、磁束密度
の測定位置は鋳型の中心に当たる位置とする。
【0024】本発明の上記目的は、断面が長方形のスラ
ブ鋳片またはブルーム鋳片を製造する連続鋳造機の鋳型
内中央部に設置された浸漬ノズルから鋳型の両側短辺に
向けて略水平乃至斜め下方に溶鋼を噴出させ、その噴流
の一部が鋳型の両側短辺に衝突して生じる下降流に対し
て、鋳型長辺方向に静磁場を印加させて、前記鋳片内部
の溶鋼流を制御すると共に、印加する静磁場の磁束密度
B(ガウス)が、下記(2)式を満足する様に操業する
ことによっても達成される。
【0025】 25×(Vc×W)1/2≦B≦40×(Vc×W)1/2……(2) 但し、Vcは鋳造速度(m/min)、Wは長辺方向長
さ(mm)であり、磁束密度の測定位置は磁極間の中心
に当たる位置とする。
【0026】また上記各連続鋳造方法において、より具
体的な操業条件としては、下記の(1)〜(3)の構成
が挙げられる。
【0027】(1)深絞り加工される薄鋼向板けスラブ
を、1.5m/min以下の鋳造速度で鋳造する。
【0028】(2)鋳型が鉛直部を有さない湾曲型連鋳
機であり、炭素濃度が0.01質量%以下である極低炭
素鋼を1.3m/min以上の鋳造速度で鋳造する。
【0029】(3)短辺方向の長さが150mm以下で
ある薄スラブを、2.5m/min以上の鋳造速度で鋳
造する。
【0030】
【発明の実施の形態および実施例】本発明者らは上記従
来の問題を考慮し、鋳造速度に応じた適性な磁束密度に
ついて検討した。そして、この検討に際しては、実際の
鋼の連続鋳造では潜り込み流速の測定が困難であること
から、低融点金属によるモデル実験を行なって潜り込み
流速を測定し、相似則に基づいて実機での効果を評価し
た。このとき用いたモデル実験機の構成を図6(概略説
明図)に示すが、図中30は湯面、31は鋳型に相当す
る容器(SUS304製)、32は電磁石、33は流速
計、34はヒーター、Pはポンプを夫々示す。
【0031】尚、このモデル実験は、基本的には幅:9
00mm、厚み:240mm、鋳造速度:1.67m/
minのスラブ連鋳に関する1/6サイズのモデル実験
であるが、スチュワート数に基づいて、任意の鋳造速度
での効果を換算することができるものである。そしてこ
のモデル実験では、従来の厚み方向磁場の印加に関して
は、溶鋼湯面からの深さが0〜120mmおよび480
〜600mmの2つの領域に、幅全体に亘って厚み方向
の磁場を印加した。また、本発明の幅方向磁場の印加に
関しては、溶鋼湯面からの深さ660〜1530mmの
位置に幅全体に亘って幅方向磁場を印加した。
【0032】その結果、次のことが判明した。まず図7
は、湯面からの距離と潜り込み流速の関係を、モデル機
と実機とで対応させて示したグラフである。この結果か
ら、磁場を幅方向に印加する場合は、厚み方向に印加す
る場合に比べて、より低い磁束密度で潜り込み抑制効果
効果が得られることが分かる。特に、900mm幅程度
の幅の狭いスラブ連鋳では、厚み方向に磁場を印加した
場合には、磁場を印加しない場合に比べてむしろ潜り込
み流速が増大する問題があったのに対して、幅方向に磁
場を印加する場合には潜り込み流速が低減している。
【0033】図8は、鋳造速度Vcが1m/minの場
合における、実機での磁束密度Bと潜り込み流速(湯面
から1m深さ)の関係を示すグラフである。この結果か
ら明らかな様に、磁束密度が750ガウス程度までは、
磁束密度の増大に伴って潜り込み流速が急激に減少する
が、それ以上磁束密度Bを増大させても潜り込み流速は
殆ど減少しないか、或はむしろ微増しており、また磁束
密度Bが1700ガウス以上の静磁場を印加することは
無駄であることが分かる。
【0034】上記の結果に基づき、鋳造前記図4、5に
示した装置構成において、鋳造速度Vcと磁束密度の関
係を検討したところ、図9に示す結果が得られた。即
ち、図9は鋳造速度Vcに応じた適正な磁束密度を示し
たグラフであり、下側のラインL1はB=600×(V
c)1/2、上側のラインL2はB=1700×(Vc)1
/2の関係を満足するものである。
【0035】この図9から明らかな様に、鋳造速度Vc
が増大すると、適正な磁束密度Bは鋳造速度Vcの平方
根に比例して増大することが分かる。即ち、これらのラ
インL1,L2の間は、前記(1)式の関係を満足する
領域であり、この領域内では溶鋼の潜り込み流を効率的
に抑制して内部欠陥の無い鋳片が製造できたのである。
【0036】尚図9には、前記特許2750320号に
おいて実施例とされる操業条件についても○印で示した
が、本発明で適正とされる磁束密度の上限よりも高い磁
束密度を作用させていることが分かる。
【0037】図10は、本発明方法における適正な磁束
密度Bの範囲と、前記特開平10−180427号(従
来技術)で示された操業条件を比較して示したグラフで
ある。この図10においては、上記従来技術において実
施例とされているものを○印、比較例とされているもの
を×印で示した。この図10から明らかな様に、この従
来技術においても厚み方向に磁場を印加する方法である
ので、最適な磁束密度Bの範囲が異なり、本発明の磁束
密度Bの範囲よりも大きな磁束密度Bを作用させている
ことが分かる。即ち、本発明方法によれば、従来技術に
おける比較例に相当する低い磁束密度Bであっても、溶
鋼の潜り込みを十分に抑制することができるのである。
【0038】尚、以上の説明では、最適な磁束密度範囲
に及ぼす鋳片サイズ(長辺方向の長さ)の影響が明らか
ではない。連続鋳造で様々なサイズの鋳片を鋳造する為
には、鋳片サイズに応じて磁束密度を更に厳密に規定す
ることによって、電力消費をより小さくすることが望ま
しい。そこで本発明者らは更に、実機に換算した際の鋳
型長辺方向の長さを前述の900mmから1500mm
に増加させたモデル実験を行ない、最適な磁束密度範囲
に及ぼす鋳片長辺方向長さの影響を調査した。
【0039】その結果、鋳造速度Vc(m/min)が
一定の条件下では、幅Wが増大するに従って溶鋼流の潜
り込み抑制に最適な磁束密度が増大するが、鋳造速度V
cと鋳片の幅W(長さ方向の長さ:mm)との積を一定
に保てば、最適な磁束密度もほぼ一定となることを見出
した。これらのことから、磁束密度Bを下記(2)式の
範囲とすることで、無駄な電力消費を更に低減すること
も可能である。
【0040】 25×(Vc×W)1/2≦B≦40×(Vc×W)1/2……(2) 図11は、その一例として鋳造速度Vcが1.5m/m
inの場合について、鋳片の長辺方向の長さWを600
〜1800mmに変化させたときの前記(1)式および
(2)式から規定される最適磁束密度範囲を示したもの
である。この図11において、ラインL1,L2は、夫
々(1)式の下限と上限の磁束密度を、ラインL3,L
4は夫々(2)式の下限と上限を示したものである。
【0041】図11から明らかな様に、ラインL3とL
4に挟まれた(2)式の磁束密度範囲は、ラインL1と
L2に挟まれた(1)式の磁束密度範囲よりも狭く、鋳
片の長さに応じて更に厳密に最適磁束密度範囲を規定す
ることによって、無駄な電力消費をより一層低減できる
ことが分かる。
【0042】本発明は、上記(1)式または(2)の関
係を満足する様にして操業することを趣旨とするもので
あるが、本発明の具体的な適用例について説明する。例
えば、2ピース飲料缶の様な深絞り加工を受ける薄板向
けスラブを、加工中に内部介在物欠陥に起因する割れが
発生しない様に、1.0m/min程度の鋳造速度で鋳
造する場合には、1000ガウス程度の磁束密度の幅方
向磁場を印加すれば、更に潜り込みが減少し、より確実
に内部欠陥の発生を防止することができる。従来の様に
2000ガウス程度の幅方向磁場を印加する場合と比べ
て、小さな電磁石を設置すれば良く、無駄な電力消費も
無い。特に、幅が1000mm以内の深絞り用鋼板向け
スラブを鋳造する場合においては、内部品質を悪化させ
る厚み方向磁場の印加に比べて、幅方向の磁場を印加す
ることによって品質改善効果が著しくなる。
【0043】また、炭素濃度が0.005%程度で、鋳
片の幅が1000〜1800mm程度の極低炭素鋼を、
湾曲型連鋳機を用いて1.8m/min程度の鋳造速度
で鋳造する場合には、1500ガウス程度の幅方向磁場
を印加すれば、過剰な設備投資と無駄な電力消費を伴わ
ずに効果的にブリスターの発生を防止することができ
る。既存の湾曲型連鋳機に幅方向磁場を印加する手段を
追加する改造工事を行なう場合には、新たに設置する電
気設備を除けば、連鋳機本体の改善範囲は鋳型と鋳型直
下のロールスタンド部に限定される。従って、湾曲部全
体のロールスタンドの改造の他、場合によっては連鋳機
の基礎まで改善が必要となる垂直曲げ連鋳機への改造と
比較すると、ブリスター発生の抑制に必要な改造費用と
操業停止期間を大幅に低減することができる。
【0044】更に、薄スラブ連鋳機で、厚み100m
m、幅1500mm程度のスラブを5m/minの鋳造
速度で鋳造する場合には、2500ガウス程度の幅方向
磁場を印加すれば、過剰な設備投資と無駄な電力消費を
伴うこと無く、効率的に内部欠陥の発生を低減すること
ができる。薄スラブ連鋳機では、長さ1.2m程度の長
い鋳型を用いることが多く、鋳型内の下部に幅方向の磁
場を印加する為の電磁石を組み込むスペースを確保し易
いので、ブレークアウト時に鋳型下に漏出する溶鋼によ
って電磁石が損傷を受けることを防止するのに好都合で
ある。
【0045】尚、薄スラブ連鋳機においても、鋳型下の
ロールスタンド部に電磁石を設置することも勿論可能で
ある。また、薄スラブ連鋳機では、鋳型上部において、
幅方向の中心部の厚みを広くした鋳型を用いることによ
って、断面積の大きな浸漬ノズルを鋳型内の溶鋼に浸漬
させるスペースを確保し、浸漬ノズルから吐出する溶鋼
流速を低減する連続鋳造法が広く用いられているが、こ
の様な方法と幅方向磁場を印加する方法を併用すること
によって、潜り込み流低減効果を向上することも、望ま
しい実施形態である。
【0046】
【発明の効果】本発明は以上の様に構成されており、連
鋳機の最大鋳造速度や操業時の鋳造速度に応じた適切な
磁束密度の静磁場を鋳片断面内の長手方向に平行に印加
することによって、過大な電磁石を設置したり、無駄な
電力を消費することなく、効率的に潜り込み流を抑制
し、内部欠陥の無い鋳片を製造することができる鋼の連
続鋳造方法が実現できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の連続鋳造法における鋳片中の溶鋼流の様
子を示す概略説明図である。
【図2】溶鋼流速が早い領域に静磁界を作用させて溶鋼
流動を減速する技術の概略説明図である。
【図3】鋳型短辺方向の磁場を作用させた場合の溶鋼流
の状態を説明する為の図である。
【図4】本発明者らが先に提案した制御装置の一構成例
を示す縦断面図である。
【図5】図4における鋳型付近の構成を説明する為の平
面図である。
【図6】モデル実験機の構成を示す概略説明図である。
【図7】湯面からの距離と潜り込み流速の関係を、モデ
ル機と実機とで対応させて示したグラフである。
【図8】鋳造速度が1m/minの場合における、実機
での磁束密度と潜り込み流速の関係を示すグラフであ
る。
【図9】鋳造速度に応じた適正な磁束密度を示したグラ
フである。
【図10】本発明方法における適正な磁束密度の範囲と
従来技術で示された操業条件を比較して示したグラフで
ある。
【図11】鋳片の長辺方向の長さを600〜1800m
mに変化させたときの、(1)式および(2)式から規
定される最適磁束密度範囲を示したグラフである。
【符号の説明】
1 鋳型(短辺側) 2 鋳型(長辺側) 3 浸漬ノズル 4 溶鋼 5 凝固殻 6 非金属介在物 7,7a〜7l 電気コイル 8,8a,8b 鉄芯 9,9a 電磁石 15,15a〜15c ガイドロール 16,16a ロールスタンドフレーム 30 湯面 31 鋳型に相当する容器 32 電磁石 33 流速計 34 ヒーター
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平5−76993(JP,A) 特開 平5−177317(JP,A) 特開 平6−262314(JP,A) 特開 平7−100607(JP,A) 特開 平7−100608(JP,A) 特開 平8−10917(JP,A) 特開 平8−52533(JP,A) 特開 平8−90182(JP,A) 特開 平8−229649(JP,A) 特開 平8−229650(JP,A) 特開 平8−267197(JP,A) 特開 平9−174216(JP,A) 特開 平9−192804(JP,A) 特開 平9−277001(JP,A) 特開 平11−10296(JP,A) 特開 平11−254103(JP,A) 特開 平11−285789(JP,A) 特開 平11−300454(JP,A) 特開 昭59−76647(JP,A) 特開 昭63−230258(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B22D 11/115 B22D 11/04 311 B22D 11/11

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 断面が長方形のスラブ鋳片またはブルー
    ム鋳片を製造する連続鋳造機の鋳型内中央部に設置され
    た浸漬ノズルから鋳型の両側短辺に向けて略水平乃至斜
    め下方に溶鋼を噴出させ、その噴流の一部が鋳型の両側
    短辺に衝突して生じる下降流に対して、鋳型長辺方向に
    静磁場を印加させて、前記鋳片内部の溶鋼流を制御する
    と共に、印加する静磁場の磁束密度B(ガウス)が、下
    記(1)式を満足する様に操業することを特徴とする静
    磁場を用いる鋼の連続鋳造方法。 600×(Vc)1/2≦B≦1700×(Vc)1/2 ……(1) 但し、Vcは鋳造速度(m/min)であり、磁束密度
    の測定位置は磁極間の中心に当たる位置とする。
  2. 【請求項2】 断面が長方形のスラブ鋳片またはブルー
    ム鋳片を製造する連続鋳造機の鋳型内中央部に設置され
    た浸漬ノズルから鋳型の両側短辺に向けて略水平乃至斜
    め下方に溶鋼を噴出させ、その噴流の一部が鋳型の両側
    短辺に衝突して生じる下降流に対して、鋳型長辺方向に
    静磁場を印加させて、前記鋳片内部の溶鋼流を制御する
    と共に、印加する静磁場の磁束密度B(ガウス)が、下
    記(2)式を満足する様に操業することを特徴とする静
    磁場を用いる鋼の連続鋳造方法。 25×(Vc×W)1/2≦B≦40×(Vc×W)1/2……(2) 但し、Vcは鋳造速度(m/min)、Wは長辺方向長
    さ(mm)であり、磁束密度の測定位置は磁極間の中心
    に当たる位置とする。
  3. 【請求項3】 深絞り加工される薄鋼板向けスラブを、
    1.5m/min以下の鋳造速度で鋳造するものである
    請求項1または2に記載の連続鋳造方法。
  4. 【請求項4】 鋳型が鉛直部を有さない湾曲型連鋳機で
    あり、炭素濃度が0.01質量%以下である極低炭素鋼
    を1.3m/min以上の鋳造速度で鋳造するものであ
    る請求項1または2に記載の連続鋳造方法。
  5. 【請求項5】 短辺方向の長さが150mm以下である
    薄スラブを、2.5m/min以上の鋳造速度で鋳造す
    るものである請求項1または2に記載の連続鋳造方法。
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