JP3415522B2 - 遊星歯車装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、遊星歯車が均等負
荷分担するようにした遊星歯車装置に関するものであ
る。

【０００２】

【従来の技術】遊星歯車装置は、不可避的な歯車の製作
誤差や組付の誤差のために、各遊星歯車の伝達荷重が均
等にならず振動や騒音を発生したり、耐久性が損なわれ
ることが少なくない。

【０００３】このため、太陽歯車、遊星歯車、内歯歯車
のいずれかを半径方向にある範囲自由に動き得るように
して、遊星歯車の均等負荷を図っている。例えば、クレ
ーンや杭打機等のウインチでは、２段遊星歯車機構の減
速機をワイヤロープの巻取り用のドラムに内装してお
り、太陽歯車か遊星歯車の少なくとも一方を半径方向に
自由度を持たせている。即ち、図３および図４に示すよ
うに、１段目の内歯歯車４ａと２段目の内歯歯車４ｂを
有する環状内歯歯車４がドラム２２に嵌合され、両側か
ら蓋体１２とブラケット１５によってボルト１３、１
４、１６でドラム２２に一体に固設され、１段目の太陽
歯車２を有する入力軸１が油圧モータ２１の出力軸にス
プライン結合で接続されている。なお、このスプライン
結合は入力軸１のスプラインの歯面にクラウニングが施
されており、径方向に若干移動可能となっている。

【０００４】そして、太陽歯車２に噛合う遊星歯車３は
キャリア５に軸受３ａを介して設けられ、キャリア５は
２段目の太陽歯車７の軸６にギア５ａで連結されてい
る。また、２段目の遊星歯車８はキャリア１０の軸９に
軸受を介して支持され、キャリア１０はドラム軸１１に
スプラインで連結されている。

【０００５】このように構成されているので、１段目で
は、太陽歯車２と遊星歯車３が、また、２段目では太陽
歯車７が半径方向に自由度があり、各遊星歯車３、８の
均等負荷が図れている。なお、ドラム軸１１にはブレー
キホイール２３が固設されており、これを固定すること
によって、ドラムが回転する。即ち、油圧モータ２１の
回転は１段目の太陽歯車２から遊星歯車３、キャリア５
に伝達され、さらに２段目の太陽歯車７、遊星歯車８へ
と伝達されるが、ブレーキホイール２３を固定すること
によって、キャリア１０が固定されるのでドラム２２と
一体の内歯歯車４ｂを回動させる。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】こうした従来の遊星歯
車装置では、遊星歯車８が３個である場合には均等負荷
が十分に行われる。しかしながら、とくに２段目の遊星
歯車８を４個以上とした場合には、内歯歯車４ｂと遊星
歯車８に自由度がないため均等負荷が十分に行われると
はいえない。なお、ドラム軸１１とキャリア１０のスプ
ライン連結にかなりの遊びを持たせて遊星歯車８に自由
度を与えればよいが、スプライン結合を緩くするのは強
度上好ましくない。また、ドラム軸１１とキャリア１０
をギアカップリングで連結することも考えられるが、部
品が増加し、ウインチ全体の重量が増加するばかりでな
く、コスト高になるという問題がある。

【０００７】そこで、本発明は、ドラム軸とキャリアの
連結に自由度を持たせずに、また、新たな部品を追加す
ることなく、遊星歯車の均等負荷ができる遊星歯車装置
を提供することを目的とするものである。

【０００８】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明では次の手段を採った。即ち、杭打機や移動
式クレーンのウインチのドラムに内装される複数段の遊
星機構を有する遊星歯車装置において、複数段の各遊星
歯車が噛合う環状内歯歯車を該ドラムに固定される蓋体
に設けた外歯歯車に噛合わせて連結し、１段目の遊星歯
車と噛合う該環状内歯歯車を半径方向に規制するように
その外周部を該ドラムに嵌合するとともに、２段目以降
は該環状内歯歯車が半径方向に自由度のあるように該ド
ラムの内周に遊装させて設け、各段の太陽歯車は半径方
向に自由度のあるように連結し、各遊星歯車が均等に負
荷分担するようにしたことを特徴としている。

【０００９】本発明は、複数段の遊星機構を有する遊星
歯車装置における遊星歯車の均等負荷を２段目以降の内
歯歯車に半径方向の自由度を持たせ、かつ、各太陽歯車
を半径方向に自由度のあるように連結することによって
行うようにしたものである。

【００１０】

【００１１】

【００１２】環状内歯歯車は、ピッチ径が異なるなど各
遊星歯車に対応した歯車諸元の内歯歯車としたものも含
まれる。ただし、この場合は、何れかの内歯歯車をドラ
ムの蓋体に設けた外歯歯車に噛合わせるように歯幅を長
くする。

【００１３】なお、請求項２に記載のように複数段の各
遊星歯車が噛合う環状内歯歯車を同一諸元とすれば、歯
車の精度を高めることができ製作コストも安価にでき
る。また、環状内歯歯車の厚さは遊星歯車の負荷によっ
て撓めるように選定するのが望ましい。そうすることに
よって、より負荷分担が均等に行われる。

【００１４】

【発明の実施の形態】以下本発明の実施形態例を図１お
よび図２に基づいて説明する。この遊星歯車装置は、上
記従来技術で説明した移動式クレーンのウインチに適用
した例を示すもので、２段遊星機構の減速機としてウイ
ンチのドラムに内装される。ドラム２２に円筒状の環状
内歯歯車３０が遊装され、これに１段目の遊星歯車３と
２段目の遊星歯車８が噛合う。内歯歯車３０の歯車の諸
元は１つであり、歯幅は１段目の遊星歯車３と２段目の
遊星歯車８が噛合う長さより長くしてある。 そして、
ドラム２２に固定される蓋体３１には、環状内歯歯車３
０に噛合う外歯歯車３２が設けられており、環状内歯歯
車３０は該外歯歯車３２を介してドラム２２に連結され
ている。また、環状内歯歯車３０は、ドラム２２との嵌
合部３３で半径方向の移動が規制されている。この嵌合
部３３は１段目の遊星歯車３の直上近くに位置してお
り、したがって、環状内歯歯車３０は１段目の遊星機構
においては半径方向の自由度が規制されている。

【００１５】２段遊星機構の歯車および軸の構成は上記
従来例と同様であり、図３に示したものと同一の物は同
一の符号を用いて説明する。即ち、１段目の太陽歯車２
を有する入力軸１が油圧モータ２１の出力軸に径方向に
自由度のあるスプラインで接続されている。そして、太
陽歯車２に噛合う遊星歯車３はキャリア５に軸受３ａを
介して設けられ、キャリア５は２段目の太陽歯車７の軸
６に歯車５ａで連結されている。そして、２段目の遊星
歯車８はキャリア１０の軸９に支持され、キャリア１０
は半径方向に自由度のない状態でドラム軸１１にスプラ
インで連結されている。

【００１６】このように構成されているので、１段目で
は、入力軸１は油圧モータ２１と径方向に自由度のある
スプラインで接続されているだけで軸受けに支持されて
いないので、太陽歯車２は半径方向に自由度があり、ま
た、遊星歯車３はキャリア５が軸６に歯車５ａで連結さ
れているので、半径方向に自由度がある。そして、遊星
歯車３が噛合う環状内歯歯車３０は、嵌合部３３によっ
て半径方向の移動は規制されている。

【００１７】また、２段目では太陽歯車７が軸受けに支
持されておらず、半径方向に自由度があり、かつ、環状
内歯歯車３０が半径方向に自由度がある。即ち、環状内
歯歯車３０は、嵌合部３３を支点として半径方向に自由
度があり、また、環状内歯歯車３０の肉厚が遊星歯車８
の負荷によって撓む程度にしてあるので、キャリア１０
がドラム軸１１に半径方向の自由度がないように連結さ
れていても、遊星歯車８には均等に負荷が分担される。

【００１８】なお、上記実施形態例では、２段遊星機構
の場合で説明したが、３段の場合にも適用できる。

【００１９】

【発明の効果】以上説明したように、本発明は複数段の
各遊星歯車が噛合う環状内歯歯車を該ドラムに固定され
る蓋体に設けた外歯歯車に噛合わせて連結し、１段目の
遊星歯車と噛合う該環状内歯歯車を半径方向に規制する
ようにその外周部を該ドラムに嵌合するとともに、２段
目以降は該環状内歯歯車が半径方向に自由度のあるよう
に該ドラムの内周に遊装させて設け、各段の太陽歯車は
半径方向に自由度のあるように連結したので、キャリア
がドラム軸に半径方向の自由度がないように連結されて
いても、各遊星歯車が均等に負荷分担される。また、ギ
アカップリングなど部品を追加を必要としないので、装
置の重量も増加することもなく経済的なものである。ま
た、請求項２に記載のように複数段の各遊星歯車が噛合
う環状内歯歯車を同一諸元にすれば、歯車の精度を高め
るばかりでなく、加工が容易になる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施形態としての遊星歯車装置の構
成を示す正面図である。

【図２】同図１のスケルトン図である。

【図３】移動式クレーンのウインチに内装された従来の
遊星歯車装置を示す正面図である。

【図４】同図３のスケルトン図である。

【符号の説明】

１…入力軸 ２…太陽歯車 ３…遊星歯車 ３ａ…軸受 ４…環状内歯歯車 ４ａ…内歯歯車 ４ｂ…内歯歯車 ５…キャリア ５ａ…歯車 ６…軸 ７…太陽歯車 ８…遊星歯車 ９…軸 １０…キャリア １１…ドラム軸 １２…蓋体 １３、１４…ボルト １５…ブラケット １６…ボルト ２１…油圧モータ ２２…ドラム ２３…ブレーキホイール ３０…環状内歯歯車 ３１…蓋体 ３２…外歯歯車 ３３…嵌合部

フロントページの続き (56)参考文献 特開 平10−196743（ＪＰ，Ａ) 特開 平６−200989（ＪＰ，Ａ) 特開 平５−155589（ＪＰ，Ａ) 特開 昭62−31692（ＪＰ，Ａ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) B66D 1/22 F16H 1/28

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】杭打機や移動式クレーンのウインチのドラ
   ムに内装される複数段の遊星機構を有する遊星歯車装置
   において、複数段の各遊星歯車が噛合う環状内歯歯車を
   該ドラムに固定される蓋体に設けた外歯歯車に噛合わせ
   て連結し、１段目の遊星歯車と噛合う該環状内歯歯車を
   半径方向に規制するようにその外周部を該ドラムに嵌合
   するとともに、２段目以降は該環状内歯歯車が半径方向
   に自由度のあるように該ドラムの内周に遊装させて設
   け、各段の太陽歯車は半径方向に自由度のあるように連
   結し、各遊星歯車が均等に負荷分担するようにしたこと
   を特徴とする遊星歯車装置。
2. 【請求項２】複数段の各遊星歯車が噛合う環状内歯歯車
   を同一諸元としたことを特徴とする請求項１記載の遊星
   歯車装置。