JP3411863B2 - 磁性フェライト材料および磁心 - Google Patents

磁性フェライト材料および磁心

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JP3411863B2 JP25550299A JP25550299A JP3411863B2 JP 3411863 B2 JP3411863 B2 JP 3411863B2 JP 25550299 A JP25550299 A JP 25550299A JP 25550299 A JP25550299 A JP 25550299A JP 3411863 B2 JP3411863 B2 JP 3411863B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、磁性フェライト材
料と、この磁性フェライト材料を磁性材料として用いる
磁心に関する。
【0002】
【従来の技術】従来からNiCuZnフェライト、Mn
MgZnフェライト、MgCuZnフェライト等の磁性
フェライト材料を用いたフェライト部品は各種電子機器
に多用されている。そして、近年のデジタル回路および
機器、さらに情報通信分野および高周波分野の急速な展
開の中、上記フェライト部品にも従来以上の電磁気特
性、例えば、より低い磁気損失と、より高い透磁率が求
められている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記のよう
な事情に鑑みてなされたものであり、磁性フェライト材
料中のCa成分とS成分の含有量に着目して、低損失で
高い透磁率をもつ磁性フェライト材料と磁心を提供する
ことを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は仮焼時および焼
成時に生成する硫酸カルシウムの量が磁気特性に大きな
影響を与えることを見出してなされたものである。すな
わち、本発明者らは、特開平11−144934号公報
において、アニオン成分を含有させることによりフェラ
イトの生成温度を低温化させたフェライト粉末の製造方
法を開示している。その反応機構について、本発明者ら
は「粉末および粉末冶金」45巻、7号、630−63
5(1998)において、アニオンとカチオンが反応し
て生成した塩化物がフェライト生成温度の低温化に寄与
していることを報告した。
【0005】本発明者らがその他のカチオンとアニオン
の反応について検討を行ったところ、仮焼成および焼成
時にカルシウムイオンと硫酸イオンが反応して硫酸カル
シウム(CaSO4)が生成されること、および、この
CaSO4は融点が1450℃であり、通常のフェライ
トの焼成温度では熱分解しないため、フェライトの微細
構造が不均一となり磁気特性が劣化することを見出し
た。
【0006】上述の知見から、本発明は、原材料を仮焼
成して得た仮焼成粉を所望の形状に形成して焼成した磁
性フェライト材料において、Fe23、NiO、CuO
およびZnOを主成分とし、あるいは、Fe23、Mn
23、MgOおよびZnOを主成分とし、あるいは、F
23、MgO、CuOおよびZnOを主成分とし、あ
るいは、Fe23、Mn23、MgO、CuOおよびZ
nOを主成分とするものであり、S成分の含有量は10
〜200ppmの範囲内、Ca成分の含有量は10〜5
00ppmの範囲内、CaSO4の含有量は30〜80
0ppmの範囲内にあるような構成とした。
【0007】また、本発明の磁性フェライト材料は、C
aSO4の含有量が30〜800ppmの範囲内にある
ような構成とした。
【0008】また、本発明の磁性フェライト材料は、1
000〜1300℃の範囲で焼成したものとした。
【0009】
【0010】本発明の磁心は、上記のいずれかの磁性フ
ェライト材料で構成されているものとした。
【0011】このような本発明にて、S成分の含有量と
Ca成分の含有量が所定の範囲に規定された磁性フェラ
イト材料は、仮焼時や焼成時においてCaSO4の生成
が抑制され均一な微細構造をもつものであり、この磁性
フェライト材料で構成される磁心は高透磁率と低磁気損
失を有する。
【0012】
【発明の実施の形態】以下に本発明の実施の形態につい
て説明する。
【0013】磁性フェライト材料 本発明の磁性フェライト材料は、原材料を仮焼成して得
た仮焼成粉を所望の形状に形成して焼成した磁性フェラ
イト材料であり、Mn23 、NiO、CuO、MgO
およびZnOの1種以上を含有し、S成分の含有量が1
0〜200ppm、好ましくは15〜200ppmの範
囲内、Ca成分の含有量が10〜500ppmの範囲内
のものである。
【0014】上記のS成分の含有量とCa成分の含有量
の範囲は、仮焼時および焼成時におけるCaSO4の生
成が抑制され均一な微細構造をもつ磁性フェライト材料
を可能とするために必須のものである。S成分が200
ppmを超える場合、あるいは、Ca成分が500pp
mを超える場合、磁性フェライト材料の透磁率の低下、
磁気損失の増大がみられ好ましくない。また、S成分が
10ppm未満、Ca成分が10ppm未満の場合、上
記の電磁気特性の更なる向上は得られず、一方で原材料
の高純度化による材料コストの増大を来たすので好まし
くない。そして、Ca成分の含有量とS成分の含有量が
上記の規定範囲内にあるため、本発明の磁性フェライト
材料中に生成されるCaSO4量は30〜800ppm
の範囲内となる。これにより、CaSO4による微細構
造の不均一化が極めて軽微なものとなり、磁性フェライ
ト材料の特性が優れたものとなる。
【0015】本発明の磁性フェライト材料は、不純物で
あるS成分の含有量とCa成分の含有量が上記の規定範
囲内にあり、主成分がFe23と、Mn23 、Ni
O、CuO、MgOおよびZnOの1種以上からなる。
具体的には、Fe23 、NiO、CuOおよびZnO
を主成分とするNiCuZnフェライト、Fe23
Mn23、MgOおよびZnOを主成分とするMnM
gZnフェライト、Fe23 、MgO、CuOおよび
ZnOを主成分とするMgCuZnフェライト、Fe2
3 、Mn23、MgO、CuOおよびZnOを主成
分とするMnMgCuZnフェライト等を挙げることが
できる。これらの磁性フェライト材料の焼成温度は、通
常、1000〜1300℃の範囲内で設定される。ただ
し、これより低温の1000〜1200℃での焼成が可
能なCuOを含む磁性フェライト材料は、CuOを含ま
ない磁性フェライト材料と比較し、CaSO4が熱分解
せず残留しやすいため、本発明の効果が顕著に現れる。
尚、Fe23 、Mn2 3およびZnOを主成分とす
るMnZnフェライト等のように、Ca成分を積極的に
導入する磁性フェライト材料、および焼成温度をCaS
4の分解が可能な温度に設定する磁性フェライト材料
は、本発明の対象外となる。
【0016】本発明の磁性フェライト材料中のS成分
は、試料を粉砕した後に焼成酸化させ、変換されたSO
2 を赤外線検出器を用いて分析することができる。ま
た、Ca成分は、粉砕後の試料を王水(硝酸1:塩酸
3)に溶解させICP発光分光分析法により分析するこ
とができる。さらに、磁性フェライト材料中のCaSO
4含有量は、上記のS成分の含有量A(ppm)とCa
成分の含有量B(ppm)から算出(A×4.25の値
とB×3.4の値のうち小さい方を採用)することがで
きる。
【0017】磁心 本発明の磁心は、本発明の磁性フェライト材料で構成し
たものである。本発明の磁心を製造するためには、ま
ず、上記の本発明の磁性フェライト材料用の原料を所定
の量比となるように混合する。次に、これを湿式粉砕等
にて0.2〜1μm程度の径の粉体とする。そして、こ
れに適当なバインダ、例えば、ポリビニルアルコールを
少量(例えば、0.1〜1重量%)加えて成型する。
【0018】次いで、この成型品を、通常、大気圧下で
脱バインダのための初期焼成として400〜500℃の
範囲内の所定温度まで、例えば60℃/時程度の昇温速
度で徐熱する。次に、1000〜1300℃の範囲内の
所望の焼成温度まで50〜300℃/時の昇温速度で徐
熱し、その温度で一定時間、好ましくは1時間以上保持
する。
【0019】その後の冷却工程は、冷却速度100〜5
00℃/時で常温まで冷却する。以上の焼成方法によ
り、高透磁率を有する高密度の磁心が得られる。尚、本
発明の磁心中のS成分量、Ca成分量、CaSO4含有
量は、上述の磁性フェライト材料中の各含有量の測定方
法と同様にして測定することができる。
【0020】
【実施例】次に、具体的な実施例を挙げて本発明を更に
詳細に説明する。
【0021】[実施例1]Fe23 、MgO、CuO
およびZnOを種々の配合量で配合し、これらをボール
ミルで16時間湿式混合した。さらに、これらの混合粉
を900℃で2時間仮焼した後、ボールミルで16時間
湿式粉砕した。
【0022】得られた各仮焼成粉にポリビニルアルコー
ル6%水溶液を10重量%添加し、1ton/cm2
圧力でトロイダル形状(外径23.5mm、内径11.
7mm、厚み6mm)にプレス成形し、1020℃で2
時間の焼成を行って磁性フェライト材料(試料A1〜A
15)を得た。
【0023】得られた15種の磁性フェライト材料につ
いて、試料を粉砕した後に焼成酸化させ、変換されたS
2 を赤外線検出器((株)堀場製作所製 EMIA−
520)を用いてS成分量を測定した。また、粉砕後の
試料を王水(硝酸1:塩酸3)に溶解させICP発光分
光分析装置((株)島津製作所製 ICPS−800
0)にてCa成分量を測定した。これらの結果を下記の
表1に示した。また、15種の磁性フェライト材料中の
CaSO4含有量を上記のS成分の含有量A(ppm)
とCa成分の含有量B(ppm)から算出(A×4.2
5の値とB×3.4の値のうち小さい方を採用)し、下
記の表1に示した。さらに、15種の磁性フェライト材
料について、ガラスビート法による蛍光X線分析でFe
23 、MgO、CuOおよびZnOの組成を分析して
結果を下記の表1に示した。
【0024】また、得られた磁性フェライト材料(試料
A1〜A15)について、下記の測定方法で測定した透
磁率μ、JIS C2561−1992に基づき100
℃、64kHz、50mTで測定した磁気損失を下記の
表1に示した。透磁率μの測定方法 トロイダル形状の磁性フェライト材料に銅製ワイヤー
(線径0.35mm)を20ターン巻き、測定周波数1
00KHz、測定電流0.5mAでLCRメーター(ヒ
ューレットパッカード(株)製)を用いてインダクタン
スを測定し、下記の式を用いて透磁率μを算出する。 透磁率μ=(le ×L)/(μ0 ×Ae ×N2 ) le :磁路長 L:試料のインダクタンス μ0 :真空の透磁率=4π×10-7(H/m) Ae :試料の断面積 N:コイルの巻数
【0025】
【表1】 表1に示されるように、S成分の含有量が10〜200
ppm、Ca成分の含有量が10〜500ppmの範囲
内にある本発明のMgCuZn系磁性フェライト材料
(試料A2〜A10、A13、A14)は、透磁率が6
00以上、磁気損失が70(kW/m3)以下であっ
た。
【0026】これに対し、S成分量とCa成分量が上記
の範囲から外れる磁性フェライト材料(試料A1、A1
1、A12、A15)は、透磁率が600未満であり、
磁気損失も70(kW/m3)を超えるものであった。
【0027】[実施例2]Fe23 、NiO、CuO
およびZnOを種々の配合量で配合し、これらをボール
ミルで16時間湿式混合した。さらに、この混合粉を9
00℃で2時間仮焼した後、ボールミルで16時間湿式
粉砕した。
【0028】得られた各仮焼成粉にポリビニルアルコー
ル6%水溶液を10重量%添加し、1ton/cm2
圧力でトロイダル形状(外径23.5mm、内径11.
7mm、厚み6mm)にプレス成形し、1030℃で2
時間の焼成を行って磁性フェライト材料(試料B1〜B
5)を得た。
【0029】得られた5種の磁性フェライト材料につい
て、実施例1と同様にして、S成分量、Ca成分量およ
びCaSO4含有量を測定し下記の表2に示した。さら
に、5種の磁性フェライト材料について、ガラスビート
法による蛍光X線分析でFe 23 、NiO、CuOお
よびZnOの組成を分析して結果を下記の表2に示し
た。
【0030】また、得られた磁性フェライト材料(試料
B1〜B5)について、実施例1と同様に、透磁率μお
よび磁気損失を測定し、結果を下記の表2に示した。
【0031】
【表2】 表2に示されるように、S成分の含有量が10〜200
ppm、Ca成分の含有量が10〜500ppmの範囲
内にある本発明のNiCuZn系磁性フェライト材料
(試料B2〜B4)は、透磁率が250以上、磁気損失
が160(kW/m3)以下であった。
【0032】これに対し、S成分量とCa成分量が上記
の範囲から外れる磁性フェライト材料(試料B1、B
5)は、透磁率が250未満であり、磁気損失も160
(kW/m3)を超え、試料B2〜B4に比べて特性が
劣るものであった。
【0033】[実施例3]Fe23 、Mn23、M
gOおよびZnOを種々の配合量で配合した後、これら
をボールミルで16時間湿式混合した。さらに、この混
合粉を900℃で2時間仮焼した後、ボールミルで16
時間湿式粉砕した。
【0034】得られた各仮焼成粉にポリビニルアルコー
ル6%水溶液を10重量%添加し、1ton/cm2
圧力でトロイダル形状(外径23.5mm、内径11.
7mm、厚み6mm)にプレス成形し、1300℃で3
時間の焼成を行って磁性フェライト材料(試料C1〜C
5)を得た。
【0035】得られた5種の磁性フェライト材料につい
て、実施例1と同様にして、S成分量、Ca成分量およ
びCaSO4含有量を測定し下記の表3に示した。さら
に、5種の磁性フェライト材料について、ガラスビート
法による蛍光X線分析でFe 23 、Mn23、Mg
OおよびZnOの組成を分析して結果を下記の表3に示
した。
【0036】また、得られた磁性フェライト材料(試料
C1〜C5)について、実施例1と同様に、透磁率μお
よび磁気損失を測定し、結果を下記の表3に示した。
【0037】
【表3】 表3に示されるように、S成分の含有量が10〜200
ppm、Ca成分の含有量が10〜500ppmの範囲
内にある本発明のMnMgZn系磁性フェライト材料
(試料C2〜C4)は、透磁率が400以上、磁気損失
が80(kW/m 3)以下であった。
【0038】これに対し、S成分量とCa成分量が上記
の範囲から外れる磁性フェライト材料(試料C1、C
5)は、透磁率が400未満であり、磁気損失も80
(kW/m3)を超え、試料C2〜C4に比べて特性が
劣るものであった。
【0039】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明によれば磁
性フェライト材料のS成分の含有量とCa成分の含有量
が所定の範囲にあるので、磁性フェライト材料は仮焼時
および焼成時に生成されうるCaSO4をほとんど含有
しない均一な微細構造をもつものであり、これにより、
磁性フェライト材料およびこの磁性フェライト材料で構
成された磁心は透磁率が高く磁気損失の低いものとな
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI H01F 3/08 C04B 35/26 L 27/255 H01F 27/24 D (72)発明者 鈴木 和雄 東京都中央区日本橋一丁目13番1号 テ ィーディーケイ株式会社内 (56)参考文献 特開 平10−45415(JP,A) 特開 昭58−60628(JP,A) 特開 平1−143307(JP,A) 特開 平6−36919(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01F 1/12 - 1/375

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 原材料を仮焼成して得た仮焼成粉を所望
    の形状に形成して焼成した磁性フェライト材料におい
    て、 Fe23、NiO、CuOおよびZnOを主成分とし、
    あるいは、Fe23、Mn23、MgOおよびZnOを
    主成分とし、あるいは、Fe23、MgO、CuOおよ
    びZnOを主成分とし、あるいは、Fe23、Mn
    23、MgO、CuOおよびZnOを主成分とするもの
    であり、S成分の含有量は10〜200ppmの範囲
    内、Ca成分の含有量は10〜500ppmの範囲内、
    CaSO 4 の含有量は30〜800ppmの範囲内にあ
    ることを特徴とする磁性フェライト材料。
  2. 【請求項2】 1000〜1300℃の範囲で焼成した
    ことを特徴とする請求項1に記載の磁性フェライト材
    料。
  3. 【請求項3】 請求項1または請求項2に記載の磁性フ
    ェライト材料で構成されていることを特徴とする磁心。
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