JP3411804B2 - 車両用ヒンジ構造 - Google Patents

車両用ヒンジ構造

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JP3411804B2
JP3411804B2 JP33598497A JP33598497A JP3411804B2 JP 3411804 B2 JP3411804 B2 JP 3411804B2 JP 33598497 A JP33598497 A JP 33598497A JP 33598497 A JP33598497 A JP 33598497A JP 3411804 B2 JP3411804 B2 JP 3411804B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車等の車両の
開口部に設けられた、ドア,フード,ゲート,トランク
リッド等の開閉部材を回転自在に支持するための、車両
用ヒンジ構造に関する。
【0002】
【従来の技術】自動車等の車両の開口部には、ドア,フ
ード,ゲート,トランクリッド等の開閉部材が設けら
れ、これらの開閉部材は、ヒンジによって回転自在に支
持されている。このような車両用ヒンジには、車両側に
固定されるヒンジ部材と、開閉部材側に固定されるヒン
ジ部材と、これらの両ヒンジ部材を互いに回転自在に結
合するヒンジピンとをそなたものがある。
【0003】例えば図4,図5はこのような従来の車両
用ヒンジ構造を示す図であり、図4,図5に示すよう
に、車両用ヒンジは、車両側に固定される第1ヒンジ部
材としてのフィメイル(female)1と、開閉部材
側に固定される第2ヒンジ部材としてのメイル(mal
e)2と、これらのフィメイル(第1ヒンジ部材)1と
メイル(第2ヒンジ部材)2とを互いに回転自在に結合
するヒンジピン3とから構成されている。
【0004】フィメイル1は、ベース部11と、ベース
部11の両側に形成された立設部12A,12Bとをそ
なえ、ベース部11には図示しない車体側へ結合させる
取付ボルトのためのボルト穴13a,13b,13cが
形成され、両立設部12A,12Bには、それぞれピン
穴14a,14bが形成されている。また、メイル2
は、両端側に設けられたベース部21A,21Bと、こ
れらのベース部21A,21B間に形成された立設部2
2A,22Bとをそなえ、両立設部22A,22Bは中
間部22Cを介して連結されている。そして、ベース部
21A,21Bには図示しない開閉部材側へ結合させる
取付ボルトのためのボルト穴23a,23bが形成さ
れ、両立設部22A,22Bには、それぞれピン穴24
a,24bが形成されている。
【0005】そして、メイル2の立設部22A,22B
がフィメイル1の立設部12A,12B間に介在するよ
うに配置して、フィメイル1の立設部12A,12Bと
メイル2の立設部22A,22Bとの間にブッシュ4を
介装して、各ピン穴14a,24a,24b,14b及
びブッシュ4の穴部の軸心を一致させ、各ピン穴14
a,24a,24b,14b及びブッシュ4にヒンジピ
ン3を嵌入させた上で、ヒンジピン3の先端にカシメを
施すことで、車両用ヒンジを組み立てるようになってい
る。
【0006】つまり、ヒンジピン3は、図5に示すよう
に、円柱状の軸部31と、この軸部31よりも拡径した
頭部32とをそなえ、この例では、ピン穴14a,24
a,24b,14bの上方からヒンジピン3の軸部31
が挿入され、最も下方のピン穴24bから突出したヒン
ジピン3の先端部33をカシメることにより、この先端
部33を拡径させ、頭部32と先端部33のカシメ部分
とにより、フィメイル1の両立設部12A,12Bを挟
持するようにしている。
【0007】このような先端部33のカシメにより、ヒ
ンジピン3のピン穴14a,24a,24b,14bか
らの離脱を防止するとともに、ヒンジピン3のガタ付き
を解消するが、このカシメには、さらに、開閉部材の回
転トルク(開閉部材をヒンジピン3回りに回転させる際
に必要とする操作トルク)を管理するという重要な役割
がある。
【0008】すなわち、開閉部材を開閉させるには、開
閉部材をヒンジピン3回りに回転させることになるが、
この際に必要とする操作トルク(即ち、開閉部材の回転
トルク)は、フィメイル(第1ヒンジ部材)1とメイル
(第2ヒンジ部材)2とヒンジピン3との3要素におい
て、各接触部分で摺動時に生じる摩擦力に応じたものに
なる。
【0009】このような開閉部材の回転トルクが大き過
ぎると、開閉部材の開閉時に大きな操作力を必要として
操作者の負担となったり、ヒンジ部分に異音が生じる原
因となったりして好ましくない。逆に、開閉部材の回転
トルクが小さ過ぎると、僅かな力で簡単に開閉部材が回
転してしまい、例えば車両の製造時等に不具合を招いた
り、ヒンジ部分に異音が生じる原因となったりして好ま
しくない。
【0010】つまり、開閉部材を車体に取り付ける場
合、作業者は、例えば予めメイル2を取り付けられた開
閉部材を持って車体の開口部の所要の位置に当てがい位
置決めした上で、フィメイル1を車体側に固定するとい
う手順があるが、このとき、フィメイル1とメイル2と
が簡単に回転してしまうと、フィメイル1が開閉部材に
対して所定の角度を保持できず、開閉部材を位置決めし
た後で、さらに、フィメイル1が車体の取付位置に対し
て所定の姿勢で位置するように調整しなくてはならなく
なり、取付作業工数を大きく増大させてしまう。
【0011】また、開閉部材を車体に取り付けた後で、
この開閉部材自体への部品の取付や車体開口部から車体
内部への部品の取付等を行なう場合にも、フィメイル1
とメイル2とが簡単に回転してしまうと、僅かな外力で
開閉部材が回動してしまい作業の妨げになることがあ
り、作業工数を大きく増大させてしまう。特に、生産ラ
インでは、車体にラインからの振動が加わるため開閉部
材が回動しやすく、作業の妨げを招きやすい。
【0012】換言すれば、フィメイル1とメイル2とが
予め設定された所定の開度状態を保持できるように、開
閉部材の回転トルクが確保されていれば、開閉部材を位
置決めさえするだけで、フィメイル1が車体の取付位置
に所定の姿勢で位置するように設定することができ、取
付作業性を大幅に向上させることができる。また、開閉
部材を車体に取り付けた後で、この開閉部材自体や車体
内部への部品の取付などの作業を行なう場合にも、フィ
メイル1とメイル2とが予め設定された所定の開度状態
を保持していれば、作業を容易に行なうことができるの
である。
【0013】そこで、開閉部材の回転トルクを所要の範
囲内に調整することが極めて重要になる。このような開
閉部材の回転トルクは、フィメイル1とメイル2との間
で相対回転時に作用する摩擦力の大きさ等に左右される
が、フィメイル1とメイル2との間に作用する摩擦力に
は、フィメイル1とメイル2との間にブッシュ4を介し
ながら直接的に作用する摩擦力の他に、フィメイル1と
ヒンジピン3との間に作用する摩擦力や、メイル2とヒ
ンジピン3との間に作用する摩擦力がある。
【0014】従来の車両用ヒンジ構造では、例えばヒン
ジピン3の先端部(即ち、カシメ部分)33と頭部32
とにより、フィメイル1の両立設部12A,12Bに圧
縮力を与えるようにすれば、両立設部12A,12Bが
互いに接近するように変形して、フィメイル1の各立設
部12A,12Bはメイル2の各立設部22A,22B
側に圧接する。これにより、フィメイル1とメイル2と
の相対回転時には、フィメイル1の立設部12A,12
Bとメイル2の立設部22A,22Bとの間に介装され
たブッシュ4を通じて、フィメイル1とメイル2とで相
対回転を抑制しようとする摩擦抵抗が増大するようにな
る。
【0015】そこで、従来の車両用ヒンジ構造では、こ
のカシメの強さを調整することやブッシュ4の種類(材
質や厚み等)を適宜選択することによって、開閉部材の
回転トルクを所要の範囲内に調整している。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上述のよう
な従来の車両用ヒンジ構造では、ヒンジピン3の先端部
のカシメの強さを調整すると、フィメイル1とメイル2
との間にブッシュ4を介して作用する直接的な摩擦力が
調整されるだけでなく、ヒンジピン3の先端部(カシメ
部分)33と頭部32とがフィメイル1に直接接触する
ので、ヒンジピン3とフィメイル1との間に作用する摩
擦力も調整されることになる。
【0017】前述のように、開閉部材の回転トルクの大
きさは、フィメイル1とメイル2との間に直接的に(た
だし、ブッシュ4を介して)作用する摩擦力だけでな
く、ヒンジピン3を介して作用する摩擦力にも左右さ
れ、開閉部材の開閉時に、ヒンジピン3がフィメイル1
とメイル2との何れの側と一体に連れ回るかによっても
左右される。
【0018】つまり、開閉部材の開閉時に、メイル2は
開閉部材と共に回動するが、この時、ヒンジピン3がメ
イル2と一体に回転するか、或いは、ヒンジピン3が車
体側のフィメイル1と一体の固定状態となるかによっ
て、開閉部材の回転トルクは変化する。したがって、ヒ
ンジピン3の先端部のカシメの強さを調整すると、フィ
メイル1とメイル2との間に作用する摩擦力と、ヒンジ
ピン3とフィメイル1との間に作用する摩擦力との両面
から、開閉部材の回転トルクは調整されることになる。
カシメの強さを調整するには、実際は、カシメを行なう
際の入力調整やストローク調整によって行なっている
が、これらの要素を微妙に調整しても、開閉部材の回転
トルクが大きく変動しやすく、開閉部材の回転トルクを
確実に適切な範囲内に調整することは困難であり、かか
るカシメ力を日々管理しているのが実情である。
【0019】なお、このような車両用ヒンジ構造とし
て、実公平5−1578号公報の技術があるが、かかる
技術は、ヒンジピン側に凹凸部(セレーション部)を設
け、ヒンジメイル穴側に突起部を設けて、ヒンジピンを
ヒンジメイル穴にたたき込むことで、ヒンジピンをヒン
ジメイル穴側に突起部間に嵌入させるととにもヒンジピ
ン側の凹凸部をヒンジメイル穴側に噛み込ませて、ヒン
ジピンをガタなく装着するようにしているが、ヒンジピ
ンを装着する際に叩き込み作業が必要となる上に、この
叩き込み力が大きいとヒンジの塑性変形を招くことがあ
り、また、叩き込み力が小さいとヒンジピンとヒンジメ
イルとの噛み込みが不十分となるなど、叩き込み力の設
定が難しいという課題がある。
【0020】本発明は、上述の課題に鑑み創案されたも
ので、組立作業自体や組立作業に際する加工条件等の種
々の設定を容易に行なえるようにしながら、開閉部材の
回転トルクを確実に適切な範囲内に調整することができ
るようにした、車両用ヒンジ構造を提供することを目的
とする。
【0021】
【課題を解決するための手段】このため、請求項1記載
の本発明の車両用ヒンジ構造は、車両側に固定される第
1ヒンジ部材と、開閉部材側に固定される第2ヒンジ部
材と、これらの第1ヒンジ部材及び第2ヒンジ部材の各
ピン孔に内挿され、該第1ヒンジ部材と該第2ヒンジ部
材とを回転自在に結合するヒンジピンとをそなえ、該ヒ
ンジピンに凹凸形状部が設けられ、該第1ヒンジ部材及
び該第2ヒンジ部材のいずれか一方のピン穴に回転規制
形状部が形成されており、該凹凸形状部が、放射状に等
間隔に立体形成された複数のリブからなり、且つ、該回
転規制形状部が、該複数のリブがそれぞれ嵌合しうる複
数の溝から形成されている。
【0022】請求項2記載の本発明の車両用ヒンジ構造
は、該ヒンジピンの該凹凸形状部と該ピン穴の該回転規
制形状部との間にクリアランスが設けられ、該凹凸形状
部と該回転規制形状部との間においても該ヒンジピンが
該ピン穴に対して抜き差し可能になっている。このた
め、該ヒンジピンの該第1ヒンジ部材及び第2ヒンジ部
材への装着を容易に行なうことができる。
【0023】請求項3記載の本発明の車両用ヒンジ構造
は、該凹凸形状部が該ヒンジピンを構成する軸部と頭部
とに跨がって形成されているため、該ヒンジピンの製造
にあたり該ヒンジピンの頭部の成形工程で該凹凸形状部
を同時に加工でき、該凹凸形状部の形成が容易になる。
【0024】
【発明の実施の形態】以下、図面により、本発明の実施
の形態について説明すると、図1〜図3は本発明の一実
施形態としての車両用ヒンジ構造を示すものである。本
車両用ヒンジ構造は、要部を除いて、図4,図5を参照
して既に説明した従来技術のものと同様に構成される。
【0025】つまり、本車両用ヒンジ構造は、図1,図
3に示すように、車両側に固定される第1ヒンジ部材と
してのフィメイル(female)1と、ドア,フー
ド,ゲート,トランクリッド等の開閉部材側に固定され
る第2ヒンジ部材としてのメイル(male)2と、こ
れらのフィメイル(第1ヒンジ部材)1とメイル(第2
ヒンジ部材)2とを互いに回転自在に結合するヒンジピ
ン3とから構成されている。
【0026】フィメイル1は、ベース部11と、ベース
部11の両側から対をなすように屈曲形成された立設部
12A,12Bとをそなえている。ベース部11には、
ボルト穴13a,13b,13cが形成されており、こ
れらのボルト穴13a,13b,13cに図示しない取
付ボルトを挿入して図示しない車体側へ螺合締結するこ
とより、フィメイル1を車体側へ結合させるようになっ
ている。また、両立設部12A,12Bには、それぞれ
ピン穴14a,14bが形成されている。
【0027】メイル2は、両端側に設けられたベース部
21A,21Bと、これらのベース部21A,21B間
に屈曲形成された立設部22A,22Bとをそなえてお
り、両立設部22A,22Bは中間部22Cを介して連
結されている。ベース部21A,21Bには、ボルト穴
23a,23bが形成されており、これらのボルト穴2
3a,23bに図示しない取付ボルトを挿入して図示し
ない車体側へ螺合締結することより、メイル2を車体側
へ結合させるようになっている。さらに、両立設部22
A,22Bには、それぞれピン穴24a,24bが形成
されている。
【0028】なお、フィメイル1及びメイル2は、厚板
の板金のプレス加工や折り曲げ加工によって形成するこ
とができる。このような車両用ヒンジ構造の組立は、メ
イル2の立設部22A,22Bをフィメイル1の立設部
12A,12B間に介在するように配置し、フィメイル
1の立設部12A,12Bとメイル2の立設部22A,
22Bとの間にブッシュ4を介装して、各ピン穴14
a,24a,24b,14b及びブッシュ4の穴部の軸
心を一致させ、各ピン穴14a,24a,24b,14
b及びブッシュ4にヒンジピン3を嵌入させた上で、ヒ
ンジピン3の先端にカシメを施すことで、行なうように
なっている。
【0029】そして、ヒンジピン3は、図2,図3に示
すように、円柱状の軸部31と、この軸部31よりも拡
径した頭部32とをそなえ、この例では、ピン穴14
a,24a,24b,14bの上方からヒンジピン3の
軸部31が挿入され、最も下方のピン穴24bから突出
したヒンジピン3の先端部33をカシメることにより、
この先端部33を拡径させ、頭部32と先端部(カシメ
部)33とにより、フィメイル1の両立設部12A,1
2Bを挟持するようにしている。
【0030】なお、ヒンジピン3の軸部31の外径は、
各ピン穴14a,24a,24b,14bの内径よりも
僅かに小さく設定されている。つまり、ヒンジピン3の
軸部31の外周面とピン穴14a,24a,24b,1
4bの内周面との間に、ヒンジピン3をピン穴14a,
24a,24b,14bに対して抜き差し可能とするク
リアランスが設けられている。
【0031】ところで、本車両用ヒンジ構造では、図
2,図3に示すように、ヒンジピン3の頭部32に、凹
凸形状部5が設けられるとともに、フィメイル(第1ヒ
ンジ部材)1の一方の立設部12Aに、この凹凸形状部
5の嵌合しうる回転規制形状部6が形成されており、凹
凸形状部5と回転規制形状部6との嵌合により、ヒンジ
ピン3の回転が規制されるようになっている。
【0032】本実施形態では、凹凸形状部5は、ヒンジ
ピン3の頭部32の下面とこれに接する軸部31の外周
面とに跨がるように、放射状に等間隔に立体形成された
複数のリブからなり、回転規制形状部6は、これらの複
数のリブがそれぞれ嵌合しうる複数の溝から形成されて
いる。これらの複数のリブ及び複数の溝は等間隔に形成
されているので、ヒンジピン3を僅かに(リブや溝の配
置間隔分の角度以内)回転させるだけで、凹凸形状部5
を回転規制形状部6に嵌合させることができるようにな
っている。
【0033】また、これらの凹凸形状部5と回転規制形
状部6との間にも、ヒンジピン3の軸部31とピン穴1
4a,24a,24b,14bとの間と同様に、凹凸形
状部5を回転規制形状部6に対して抜き差し可能とする
クリアランスが設けられている。本発明の一実施形態と
しての車両用ヒンジ構造は、上述のように構成されてい
るので、車両用ヒンジの組み立てにあたっては、まず、
メイル2の立設部22A,22Bをフィメイル1の立設
部12A,12B間に配置して、フィメイル1の立設部
12A,12Bとメイル2の立設部22A,22Bとの
間にブッシュ4を介装する。そして、各ピン穴14a,
24a,24b,14b及びブッシュ4の穴部の軸心を
一致させて、各ピン穴14a,24a,24b,14b
及びブッシュ4にヒンジピン3を嵌入させる。この時、
凹凸形状部5を回転規制形状部6に嵌合させる。そし
て、この後、ヒンジピン3の先端部33にカシメを施
す。
【0034】このように先端部33をカシメる際のカシ
メ力は、開閉部材の回転トルク(開閉部材をヒンジピン
3回りに回転させる際に必要とする操作トルク)が所定
の範囲内になるように設定されている。したがって、ヒ
ンジピン3の先端部33をカシメることにより、ヒンジ
ピン3のピン穴14a,24a,24b,14bからの
離脱が防止されるとともに、ヒンジピン3のガタ付きが
解消される上に、開閉部材の回転トルクが適切になるよ
うに調整されることになる。
【0035】本車両用ヒンジ構造では、ヒンジピン3の
離脱が防止されガタ付きが発生しない程度以上にカシメ
力を加えるだけで、凹凸形状部5と回転規制形状部6と
の嵌合は常に保持され、開閉部材の回動時には、ヒンジ
ピン3はフィメイル1と一体に挙動するようになり、こ
れ以上の大きさのカシメ力を加えると、フィメイル1と
メイル2との間に直接的に(ただし、ブッシュ4を介し
て)作用する摩擦力のみを調整することになる。
【0036】したがって、カシメ力の設定は、開閉部材
の回転トルクの一つの調整要素である、フィメイル1と
メイル2との間の直接的な摩擦力を調整することにな
り、カシメ力に対する開閉部材の回転トルクの変動がシ
ンプルで安定したものになるのである。これにより、開
閉部材の回転トルクを所定の状態とするためのカシメ力
の設定が、容易なものになり、逆に、適切なカシメ力を
設定すれば、適切な開閉部材の回転トルクを安定して得
ることができるようになる。
【0037】つまり、従来の構造(図4,図5参照)で
は、開閉部材の開閉時に、ヒンジピン3がフィメイル1
とメイル2との何れの側と一体に連れ回るかは、カシメ
力によって変化するため、調整すべくカシメ力を調整す
ると、フィメイル1とメイル2との間に作用する摩擦力
と、ヒンジピン3とフィメイル1との間に作用する摩擦
力との両面から、開閉部材の回転トルクが調整されるこ
とになり、カシメ力を微妙に調整しても開閉部材の回転
トルクを適切にすることは困難であった。
【0038】これに対して、本車両用ヒンジ構造では、
ヒンジピン3とフィメイル1とははじめから一体になっ
ており、カシメ力を調整すれば、フィメイル1とメイル
2との間に作用する摩擦力のみが調整されることにな
る。このため、カシメ力と開閉部材の回転トルクとの対
応関係が安定するようになり、開閉部材の回転トルクを
極めてシンプルに調整しうるようになり、カシメ力の設
定が容易なものになり、且つ、適切にカシメ力を設定す
れば、確実に開閉部材の回転トルクを適切な範囲に調整
しうるようになるのである。
【0039】また、本実施形態では、ヒンジピン3の軸
部31の外周面とピン穴14a,24a,24b,14
bの内周面との間に、ヒンジピン3をピン穴14a,2
4a,24b,14bに対して抜き差し可能とするクリ
アランスが設けられ、さらに、これらの凹凸形状部5と
回転規制形状部6との間にも、凹凸形状部5を回転規制
形状部6に対して抜き差し可能とするクリアランスが設
けられているので、ヒンジピン3のピン穴14a,24
a,24b,14bへの差し込みや抜き出しを、フィメ
イル1やメイル2に何らの負荷も加えることなく容易に
行なうことができ、作業性が良好である利点もある。
【0040】また、凹凸形状部5を構成する複数のリ
ブ、及び、回転規制形状部6を構成する複数の溝は、そ
れぞれ等間隔に形成されているので、ヒンジピン3を僅
かに(即ち、リブや溝の配置間隔分の角度以内)回転さ
せるだけで、凹凸形状部5を回転規制形状部6に嵌合さ
せることができ、この点でも、作業性が良好である利点
がある。
【0041】また、凹凸形状部5の回転規制形状部6へ
の嵌合は、両者の簡単な位相合わせのみで行なうことが
でき、実公平5−1578号公報の従来技術のような叩
き込み作業は不要であり、作業負担が軽減されるだけで
なく、叩き込みによるヒンジの塑性変形のおそれも回避
することができる。さらに、本実施形態では、凹凸形状
部5をヒンジピン3の頭部32に形成しているので、ヒ
ンジピン3の製造時に凹凸形状部5を一体成形しやすい
など、製造上の利点もあり、ヒンジの製造コスト低減に
寄与している。
【0042】もちろん、凹凸形状部5の形成箇所は、ヒ
ンジピン3の頭部32に限定されることはなく、ヒンジ
ピン3の先端部33や、頭部32或いは先端部33に近
い軸部31の外周に形成してもよいまた、本実施形態
のように凹凸形状部5を複数のリブで構成した場合、リ
ブの数を増やせば(当然、リブの数に応じて回転規制形
状部6側の溝も増やす)、凹凸形状部5の回転規制形状
部6への嵌合が一層容易になる。
【0043】また、本実施形態では、フィメイル1を車
体側に取り付け、メイル2を開閉部材側に取り付けるよ
うにしているが、これとは逆に、フィメイル1を開閉部
材側に、メイル2を車体側に、それぞれ取り付けるよう
にしてもよい。また、本実施形態では、車両側に固定さ
れる第1ヒンジ部材1側に回転規制形状部6を設けてい
るが、開閉部材側に固定される第2ヒンジ部材2側に回
転規制形状部6を設けて、ヒンジピン3が第2ヒンジ部
材2と一体回転するように回転を規制する構成としても
よい。
【0044】また、本実施形態では、フィメイル1の立
設部12A,12Bとメイル2の立設部22A,22B
との間にブッシュ4を介装させているが、このようなブ
ッシュ4を使用しない部品構成としてもよい。
【0045】
【発明の効果】以上詳述したように、請求項1記載の本
発明の車両用ヒンジ構造によれば、ヒンジピンに設けら
れた凹凸形状部と、第1ヒンジ部材及び第2ヒンジ部材
のいずれか一方に形成された回転規制形状部とが嵌合す
ることで該ヒンジピンの回転を規制するので、開閉部材
の回転にあたって、該ヒンジピンは該第1ヒンジ部材又
は該第2ヒンジ部材と一体に挙動するようになり、開閉
部材の回転トルクに影響する因子を減らすことができる
ようになる。したがって、コスト増を招くことなく、開
閉部材の回転トルクが適正になるような調整をより容易
に行なえるようになる。つまり、開閉部材の回転トルク
管理をより簡易化しうるようになる。また、該凹凸形状
部が、放射状に等間隔に立体形成された複数のリブから
なり、且つ、該回転規制形状部が、該複数のリブがそれ
ぞれ嵌合しうる複数の溝から形成されているので、ヒン
ジピンをピン孔に差し込む時にヒンジピンを僅かに回転
させるだけで確実に凹凸形状部と回転規制形状部とを嵌
合させることができる。
【0046】請求項2記載の本発明の車両用ヒンジ構造
によれば、該ヒンジピンの該第1ヒンジ部材及び第2ヒ
ンジ部材への装着を容易に行なうことができ、ヒンジの
組み立て性が向上する。請求項3記載の本発明の車両用
ヒンジ構造によれば、該ヒンジピンに該凹凸形状部を容
易に形成することができるため、コスト低減に寄与す
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態としての車両用ヒンジ構造
を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態としての車両用ヒンジ構造
を示す要部分解斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態としての車両用ヒンジ構造
を示す断面図であり、図1のA−A矢視断面図である。
【図4】従来の車両用ヒンジ構造を示す斜視図である。
【図5】従来の車両用ヒンジ構造を示す断面図であり、
図4のB−B矢視断面図である。
【符号の説明】
1 第1ヒンジ部材としてのフィメイル 2 第2ヒンジ部材としてのメイル 3 ヒンジピン 4 ブッシュ 5 凹凸形状部 6 回転規制形状部 14a,14b,24a,24b ピン穴 33 ヒンジピン3の先端部(カシメ部)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 実開 昭57−82563(JP,U) 実開 昭62−166979(JP,U) 実開 昭53−162270(JP,U) 実公 平5−1578(JP,Y2) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) E05D 3/02 E05D 5/12

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 車両の開口部に設けられた開閉部材を該
    車両に回転自在に支持する車両用ヒンジ構造であって、 該車両側に固定される第1ヒンジ部材と、 該開閉部材側に固定される第2ヒンジ部材と、 該第1ヒンジ部材及び該第2ヒンジ部材にそれぞれ設け
    られたピン穴に内挿され、該第1ヒンジ部材と該第2ヒ
    ンジ部材とを回転自在に結合するヒンジピンとをそな
    え、 該ヒンジピンに凹凸形状部が設けられるとともに、 該第1ヒンジ部材及び該第2ヒンジ部材のいずれか一方
    の該ピン穴に、該凹凸形状部と嵌合して該ヒンジピンの
    回転を規制する回転規制形状部が形成され 該凹凸形状部が、放射状に等間隔に立体形成された複数
    のリブからなり、且つ、該回転規制形状部が、該複数の
    リブがそれぞれ嵌合しうる複数の溝から形成されている
    ことを特徴とする、車両用ヒンジ構造。
  2. 【請求項2】 該ヒンジピンの該凹凸形状部と該ピン穴
    の該回転規制形状部との間に、該ヒンジピンを該ピン穴
    に対して抜き差し可能とするクリアランスが設けられて
    いることを特徴とする、請求項1記載の車両用ヒンジ構
    造。
  3. 【請求項3】 該凹凸形状部が該ヒンジピンを構成する
    軸部と頭部とに跨がって形成されていることを特徴とす
    る、請求項1又は2記載の車両用ヒンジ構造。
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