JP3411680B2 - 高エンボス成形品およびその製法 - Google Patents

高エンボス成形品およびその製法

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徹 飯島
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高エンボス成形品およ
びその製法に関する。
【0002】
【従来技術】熱可塑性樹脂組成物よりなる表面層をもつ
成形品に高さ2.5mm以上の高エンボス加工を行う
と、例えば図3に示すように表面層12をもつ成形品1
1にエンボス用金型13を当てて加熱加圧すると、図4
に示すようにエンボス加工が施されるが、このとき、表
面層12が基体の成形品中に巻き込まれ、巻き込み部分
14は、表面から見るとしわ状の新しい1つの模様(キ
ズ)を形成してしまい、意図する表面層と異った意匠が
発生してしまうという問題が発生する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、高エ
ンボス加工のさい、成形品の表面層が成形品の内部に巻
き込まれて、表面にしわ状のキズが発生するのを防止す
る点にある。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明の第一は、表面に
模様を有しかつエンボス加工時に熱可塑性樹脂製フロー
層(成形材料層)およびフロー調整層のいずれの層より
も流動性が低い熱可塑性樹脂製表面層、エンボス加工時
に熱可塑性樹脂製フロー層より流動性が低いフロー調整
層、熱可塑性樹脂製フロー層が順次積層されてなる積層
体の表面側に、表面層の模様を破壊することなく、高さ
が2.5mm以上のエンボス凸部が形成されていること
を特徴とする高エンボス成形品に関する。
【0005】本発明の第二は、表面に模様を有しかつエ
ンボス加工時に熱可塑性樹脂製フロー層およびフロー調
整層のいずれの層よりも流動性が低い熱可塑性樹脂製表
面層、エンボス加工時に熱可塑性樹脂製フロー層より流
動性が低いフロー調整層、熱可塑性樹脂製フロー層が順
次積層されてなる積層体にエンボス加工をして、表面側
に高さ2.5mm以上のエンボス凸部を形成することを
特徴とする高エンボス成形品の製法に関する。
【0006】フロー層に用いる熱可塑性樹脂としては、
ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体など
の塩化ビニル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、
ポリスチレン、ポリアミドなど通常の成形用熱可塑性樹
脂を挙げることができる。
【0007】フロー層の熱可塑性樹脂には、可塑剤、充
填剤、安定剤、着色剤などを配合することができる。
【0008】フロー層のエンボス加工時の流動性は、フ
ロー層を構成している熱可塑性樹脂そのものの流動性の
ほか、可塑剤、充填剤などの添加剤の性質、配合量によ
って変化するので、これによってフロー層全体としての
流動性を調節することができる。
【0009】フロー調整層は、樹脂と粉状および/また
は液状添加剤よりなる合成樹脂組成物のみの層であって
もよいし、金属繊維、カーボン繊維、ガラス繊維、合成
繊維、天然繊維などの織布、不織布などの1種または2
種以上の複合体よりなる支持体あるいはこれらを前記樹
脂組成物で処理した層であることもできる。フロー調整
層に用いる熱可塑性樹脂としてはフロー層に用いる熱可
塑性樹脂と同じであることもできるし、別の樹脂、たと
えば、アクリル系樹脂、ポリエステル、フッ素系樹脂な
どとすることも可能である。いずれにしてもフロー調整
層は、エンボス加工時にフロー層が大きく流動してもそ
の影響が表面層に及ぶのを抑制または遮断するととも
に、上下の層にある程度の親和性を有する層であれば、
格別の制限はない。
【0010】フロー調整層の厚みは、0.3〜3mm程
度もあれば、充分、その役割を果すことができる。
【0011】前述のように表面層を有する基体をエンボ
ス加工して表面側に高エンボスを形成させるとき、エン
ボス凸部を形成させるためには基体を多量に凸部に移動
(流動)させなければならないが、その際表面層も基体
の動き(流れ)にひきずられて大きく流動してしまい、
基体の複雑な流れに巻き込まれて、結果的に凸部にシワ
が生じ、本来の意匠を損ねてしまう。そこで、本発明に
おいては、フロー調整層を設けることにより、このフロ
ー調整層は、フロー層が大きく流動してもその影響が表
面層に及ぶのを遮断し、主にフロー層のみが流動してエ
ンボス凸部を充填し、表面層は金型形状にそって変形す
るに止まり、シワの発生や模様のくずれを防止する働き
をする。したがって、この効果を一層高めるためには、
表面層のエンボス加工時の流動性は、フロー調整層やフ
ロー層のそれより小さくすることが望ましい。
【0012】表面層は、印刷された一枚の熱可塑性樹脂
組成物のシートであってもよいし、小さなチップの集合
体から成形されたシートであってもよいし、着色シート
であってもよい。また、必要に応じて透明熱可塑性樹脂
シートと印刷または着色された熱可塑性樹脂シートとの
積層シート等の複合シートであることもできる。
【0013】通常、表面層の厚みは0.3〜2mm程度
であるが、厚みが0.3〜0.5mmといった薄い場合
には、表面層に密着してフロー調整層を設けることが好
ましい。
【0014】また、表面層が1mm以上といった厚い場
合には、表面層とフロー調整層の間にフロー層を設ける
ことが好ましい。フロー層を設けることにより、エンボ
スがシャープに発現される。この場合のフロー層は通常
厚さ0.1〜1.0mm、好ましくは0.2〜0.5m
mである。
【0015】前述のように表面層は、一枚のシートより
なる場合や複合シートよりなる場合があるから、個々の
層の熱可塑性樹脂組成物の流動性よりも、やはり表面層
全体としての流動性に着目することが重要である。その
ため、個々の層の熱可塑性樹脂組成物の組成は、この点
にのみ注意すれば、かなり自由度が大きいことは充分理
解されるであろう。
【0016】視覚障害者用誘導タイルは、視覚障害者が
靴をはいていてもその凹凸を充分感知できるに足る凹凸
を設ける必要がある。この凹凸の程度は、凸部が高さ
2.5mm以上あり、このような凸部をエンボスにより
形成すると表面に図4、5に示すようなしわ状模様が発
生するため、しわ状模様が発生していても気付かないよ
うに、同一色、同一材料によるしかなく、他のタイルあ
るいはカーペットタイルなどにはいろいろな模様が付け
られていても、視覚障害者用タイルの部分のみは模様を
つけることができないのが実状であり、そのため、色
彩、模様のバランスが視覚障害者用タイルの部分でくず
れてしまうことは避けられないことであった。ところ
が、このような視覚障害者用タイルについても、本発明
により任意の模様を形成することができるようになっ
た。
【0017】本発明の実施態様を以下に列挙する。 (1)表面に模様を有しかつエンボス加工時に熱可塑性
樹脂製フロー層およびフロー調整層のいずれの層よりも
流動性が低い熱可塑性樹脂製表面層、エンボス加工時に
熱可塑性樹脂製フロー層より流動性が低いフロー調整
層、熱可塑性樹脂製フロー層が順次積層されてなる積層
体の表面側に、表面層の模様を破壊することなく、高さ
が2.5mm以上のエンボス凸部が形成されていること
を特徴とする高エンボス成形品。 (2)フロー調整層が、合成樹脂フィルム、紙、織布、
不織布、金属シートよりなる群から選ばれたシートまた
はこれらの1種以上からなる複合シートあるいはこれら
の合成樹脂処理シートである前項(1)記載の高エンボ
ス成形品。 (3)表面層に形成されている高さ2.5mm以上のエ
ンボス凸部が、断面積が0.5cm以上および/また
は体積が5cm以上のものである前項(1)または
(2)記載の高エンボス成形品。 (4)表面層とフロー調整層の間にさらに厚さ0.1〜
1.0mmのフロー層を介在させてなる前項(1)、
(2)または(3)記載の高エンボス成形品。 (5)フロー層および表面層の熱可塑性樹脂組成物が、
塩化ビニル系樹脂組成物であり、フロー調整層が塩化ビ
ニル系樹脂組成物のペーストで処理されたガラス繊維の
不織布である前項(1)、(2)、(3)または(4)
記載の高エンボス成形品。 (6)フロー調整層の厚みが0.3〜3mmである前項
(1)、(2)、(3)、(4)または(5)記載の高
エンボス成形品。 (7)表面に模様を有しかつエンボス加工時に熱可塑性
樹脂製フロー層およびフロー調整層のいずれの層よりも
流動性低いフロー調整層、熱可塑性樹脂製フロー層が順
次積層されてなる積層体にエンボス加工をして、表面側
に高さ2.5mm以上のエンボス凸部を形成することを
特徴とする高エンボス成形品の製法。 (8)フロー調整層が、合成樹脂フィルム、紙、織布、
不織布、金属シートよりなる群から選ばれた1種または
これらの2種以上からなる複合体である前項(7)記載
の高エンボス成形品の製法。 (9)表面層に形成されている高さ2.5mm以上のエ
ンボス凸部が、断面積が0.5cm以上および/また
は体積が5cm以上のものである前項(7)または
(8)記載の高エンボス成形品の製法。 (10)表面層とフロー調整層の間にさらに0.1〜
1.0mmのフロー層を介在させてなる前項(7)、
(8)または(9)記載の高エンボス成形品の製法。
【0018】
【実施例】 (1)フロー層の熱可塑性樹脂組成物 塩化ビニル−酢酸ビニル 10重量% (95:5重量比)共重合体 (平均重合度800) 塩化ビニル−酢酸ビニル 15重量% (85:15重量比)共重合体 (平均重合度450) 可塑剤(DOP) 15重量% 充填剤(炭酸カルシウム) 58重量% 安定剤 1重量% 顔料 1重量%
【0019】 (2)(イ)フロー調整層に用いる塩化ビニル系樹脂ペーストの組成 ポリ塩化ビニル(乳化重合タイプ 平均重合度1700)55重量% 可塑剤(DOP) 35重量% 充填剤(炭酸カルシウム) 8重量% 安定剤 2重量% (ロ)使用芯材 厚さ 約0.2mmのガラス不織布
【0020】 (3)表面層の組成と成形 ポリ塩化ビニル(懸濁重合タイプ 平均重合度1050)30重量% 可塑剤(DOP) 12重量% 充填剤(炭酸カルシウム) 56重量% 安定剤 1重量% 顔料 1重量% 以上の組成物を混練、圧延してシートにし、これを粉砕
して平均粒径3mmのチップとした。このチップ数色を
混合、加熱、加圧して厚さ1.0mmの模様シートとし
た。
【0021】(4)高エンボス成形品の構成 (A) 前記熱可塑性樹脂組成物よりなる成形材料層
(フロー層)3.5mm(もっと厚い層であっても差し
つかえない) (B) 前記塩化ビニル系樹脂ペーストで処理されたガ
ラス不織布よりなるフロー調整層0.4mm (C) 前記熱可塑性樹脂組成物よりなるフロー層0.
5mm (D) 表面層1.0mm
【0022】(5)エンボス金型 エンボス深さ 2.5mm エンボス部断面積 0.5cm2 エンボス部体積 5cm3
【0023】 (6)エンボス加工温度 150℃ エンボス圧力 5kg/cm2
【0024】
【効果】本発明によれば、エンボス加工をしても表面層
が成形品の内部に巻き込まれて表面にしわ状のキズが発
生することがない。本発明を用いて視覚障害者用誘導タ
イルをつくれば、周囲のタイルやカーペットタイルの模
様や色彩と調和した誘導タイルとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる高エンボス成形品のエンボス加
工前の1つの構成例を示す断面図である。
【図2】本発明にかかる高エンボス成形品のエンボス加
工前の他の構成例を示す断面図である。
【図3】従来のエンボス成形用材料とエンボス金型の関
係を示す断面概略図である。
【図4】フロー調整層がない従来のエンボス成形用材料
をエンボス加工したときの様子を説明するための断面概
略図である。
【図5】図4の上面図である。
【符号の説明】
1 成形材料層(フロー層) 2 フロー調整層 3 表面層 11 成形材料層 12 表面層 13 エンボス金型 14 しわ状模様(キズ)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭55−109700(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B32B 1/00 - 35/00 B29C 59/00 - 59/18 B44C 1/20

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 表面に模様を有しかつエンボス加工時に
    熱可塑性樹脂製フロー層およびフロー調整層のいずれの
    層よりも流動性が低い熱可塑性樹脂製表面層、エンボス
    加工時に熱可塑性樹脂製フロー層より流動性が低いフロ
    ー調整層、熱可塑性樹脂製フロー層が順次積層されてな
    る積層体の表面側に、表面層の模様を破壊することな
    く、高さが2.5mm以上のエンボス凸部が形成されて
    いることを特徴とする高エンボス成形品。
  2. 【請求項2】 表面層に形成されている高さ2.5mm
    以上のエンボス凸部が、断面積が0.5cm以上およ
    び/または体積が5cm以上のものである請求項1記
    載の高エンボス成形品。
  3. 【請求項3】 表面層とフロー調整層の間にさらに厚さ
    0.1〜1.0mmのフロー層を介在させてなる請求項
    1または2記載の高エンボス成形品。
  4. 【請求項4】 表面に模様を有しかつエンボス加工時に
    熱可塑性樹脂製フロー層およびフロー調整層のいずれの
    層よりも流動性が低い熱可塑性樹脂製表面層、エンボス
    加工時に熱可塑性樹脂製フロー層より流動性が低いフロ
    ー調整層、熱可塑性樹脂製フロー層が順次積層されてな
    る積層体にエンボス加工をして、表面側に高さ2.5m
    m以上のエンボス凸部を形成することを特徴とする高エ
    ンボス成形品の製法。
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