JP3409791B2 - 摩擦攪拌ツールおよびその使用方法 - Google Patents

摩擦攪拌ツールおよびその使用方法

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JP3409791B2 JP2001024783A JP2001024783A JP3409791B2 JP 3409791 B2 JP3409791 B2 JP 3409791B2 JP 2001024783 A JP2001024783 A JP 2001024783A JP 2001024783 A JP2001024783 A JP 2001024783A JP 3409791 B2 JP3409791 B2 JP 3409791B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、一対の金属部材を
摩擦攪拌接合するか、または鋳物表層の微細な空隙を除
去するのに用いる摩擦攪拌ツールおよびその使用方法に
関する。
【0002】
【従来の技術】一対の金属部材を突き合わせまたは重ね
合わせ、固相状態で接合する方法として、摩擦攪拌接合
方法が行われている。この方法には、これまで次のよう
な摩擦攪拌ツール50が用いられていた。このツール5
0は、図8(A),(B)に示すように、工具鋼からなる一
体物であって、円柱形のツール本体52、該本体52に
おいて中心部が上向きに凹んだ底面53、該底面53に
おける凹部54、および底面53の中心部からツール本
体52と同軸心で垂下する攪拌ピン56を含む。凹部5
4にて底面53の周縁から中心部に向けた傾斜角度は一
般に10°以下であった。また、攪拌ピン56は、その
先端面57寄りにネジ部58を有する。
【0003】図8(C)に示すように、一対の金属部材M
1,M2の突き合わせ面Fに沿って摩擦攪拌ツール50
を高速回転させつつその攪拌ピン56を挿入し、図8
(C)中にて斜めの矢印で示す方向に沿って移動させる。
この際、上記ツール50は、移動方向と反対側に3〜5
°傾斜し且つツール本体52の底面53側を金属部材M
1,M2に押し込むことにより、ツール本体52の軸心
方向に沿って押込力を負荷されている。金属部材M1,
M2の突き合わせ面F付近のメタルは、図8(C)に示す
ように、回転しつつ移動する攪拌ピン56との摩擦熱に
より、軟化し且つ流動・攪拌された後、攪拌ピン56の
通過により加熱源を失って固化する。この結果、係るメ
タルは、突き合わせ面Fに沿って接合部Sを形成する。
この間において、係るメタルの一部は一旦凹部54内に
入った後、攪拌ピン56が直前まで位置しいていたその
後方にシフトした後、固化して接合部Sを形成する。こ
の結果、金属部材M1,M2は、突き合わせ面Fに沿っ
て接合される。尚、接合部Sの表面S1には、ツール本
体52の押し込みに起因する浅い凹みが形成されると共
に、上記ツール50の底面53の回転軌跡に倣った連続
した円弧模様が形成されている。
【0004】ところで、前記摩擦攪拌ツール50の押込
量が過大になると、塑性流動化した前記メタルがツール
本体52の底面53から外部に押し出され、図9(A)に
示すように、バリb,bを接合部Sの表面における両側
に沿って形成し、且つ接合部Sの表面に形成される凹み
hが大きくなる。このため、接合部Sの断面積が小さく
なり接合強度が低下する、という問題があった。一方、
摩擦攪拌ツール50の押込量が過少になると、図9(B)
に示すように、金属部材M1,M2の突き合わせ面Fに
沿って形成される接合部Sには、上記バリbや凹みhは
小さくなるが、押し込み不足による内部欠陥(空隙)kが
生じる。このため、接合部Sの接合強度が低下する、と
いう問題があった。
【0005】上記バリbのない接合部Sを得るため、図
9(C)に示すような摩擦攪拌ツール60も提案されてい
る。このツール60は、円柱形のツール本体62の底面
64の中心部に攪拌ピン68を垂下すると共に、係るピ
ン68の周りの底面64に周溝66を形成したものであ
る。係るツール60を前記金属部材M1,M2の突き合
わせ面Fに沿って高速回転しつつ移動させると、攪拌ピ
ン68により流動化され軟化した突き合わせ面F付近の
メタルは、周溝66内に一旦入るため、接合部Sの両側
にバリbが形成されにくくなる(特開平11−1036
3号公報参照)。
【0006】しかしながら、上記摩擦攪拌ツール60に
おいても、押込量が過大になると、図9(D)に示すよう
に、接合部S表面の両側に沿って大きめのバリbが形成
され且つ接合部Sの表面に凹みhが形成される。このた
め、やはり接合部Sの断面積が小さくなり接合強度が低
下する、という問題がある。しかも、係るツール60を
用いた場合でも、一定以上の押込力を加えないと、接合
部Sのメタルが緻密になりにくいため、微細な空隙kを
含む内部欠陥を生じ易い。これを防ぐため、ツール本体
62を金属部材M1,M2中に若干押し込んだ状態で使
用すると、接合部Sの表面に上記凹みhが形成されてし
まう、という問題もあった。
【0007】
【発明が解決すべき課題】本発明は、以上に説明した従
来の技術における問題点を解決し、バリや内部欠陥など
が生じにくい接合部または攪拌部を容易に形成できる摩
擦攪拌ツールおよびこのツールを用いた接合方法などの
使用方法を提供する、ことを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を解
決するため、ツール本体の底面において、攪拌ピンの周
囲に内側メタル溜まり部を、その外側に外側メタル溜ま
り部をそれぞれ形成する、ことに着想して成されたもの
である。即ち、本発明の摩擦攪拌ツールは、柱状のツー
ル本体と、係るツール本体の底面から垂下する攪拌ピン
とを備え、上記ツール本体の底面の周縁寄りにリング状
凸部を形成し、係るリング状凸部と上記攪拌ピンとの間
に当該リング状凸部よりも(底面寄りに)垂下する凸状体
を形成すると共に、上記リング状凸部と凸状体との間に
外側メタル溜まり部が位置し、且つ上記凸状体(の底面
側)には内側メタル溜まり部が位置している、ことを特
徴とする。
【0009】これによれば、ツール本体の凸状体が攪拌
ピンと共に挿入され且つ攪拌ピンの近傍に押込力が付加
されるので、金属部材の接合部や鋳物表層の攪拌部に内
部欠陥が生じるのを防止できる。また、攪拌ピンにより
塑性流動化され且つ押し出されたメタルは、凸状体の底
面側の内側メタル溜まり部に一旦入り込むと共に、その
一部は更に押し出されて外側メタル溜まり部に入り込
む。しかも、リング状凸部により、流動化したメタルは
金属部材などの表面レベルに押し広げられるため、ツー
ル本体の底面から外部には押し出されにくくなりバリを
生じなくなる。この結果、内・外メタル溜まり部に入っ
たメタルは、当該摩擦攪拌ツールの移動に伴い攪拌ピン
の側方を通って、攪拌ピンが直前に位置していた部位に
シフトした後、固化して空隙などの内部欠陥、表面欠
陥、およびバリのない健全な接合部または鋳物表層の攪
拌部を形成する。従って、所要の接合強度を有する健全
な接合部または鋳物表面付近の微細な空隙を除去した緻
密な鋳物表層の攪拌部を確実に得ることが可能となる。
【0010】尚、柱状のツール本体は、円柱形、正多角
柱(四角柱、六角柱、八角柱など)、または変形多角柱を
含む。このため、係るツール本体の底面には、円形、正
多角形(六/八角形など)、または変形多角形が含まれ
る。また、上記攪拌ピンには、ツール本体と同軸心でそ
の底面から垂下する形態の他、底面の中心から偏心した
位置から垂下する形態も含まれる。更に、上記リング状
凸部には、底面視において円形、多角形、または約1周
巻きの渦巻き形を呈する形態が含まれる。更に、本明細
書において、(単なる)「底面」、「底面側」、または「底
面寄り」とは、摩擦攪拌ツールにおいてその攪拌ピンの
先端寄りの方向を指し示すものである。
【0011】また、前記リング状凸部は、前記ツール本
体の底面における周縁寄りから前記攪拌ピン寄りに向け
て低くなる傾斜面を含む、摩擦攪拌ツールも本発明に含
まれる。これによれば、流動化され且つ内側メタル溜ま
り部から押し出されたメタルは、上記リング状凸部の傾
斜面により外側メタル溜まり部に容易に誘導されるた
め、ツール本体の底面から外部へ押し出されにくくな
る。このため、接合部などの表面のバリを一層確実に防
ぐことができる。しかも、外側メタル溜まり部内に入っ
たメタルは、ツールの移動に伴って段階的に押し広げら
れるため、メタルの押し広げ不良による接合部や攪拌部
の表面における凹みのような表面欠陥を防ぐことも容易
となる。
【0012】更に、前記凸状体は、前記ツール本体の底
面における周縁寄りから前記攪拌ピン寄りに向って連な
る単数または複数の渦巻き形凸条、または、中心部が上
向きに凹んだ柱状体である、摩擦攪拌ツールも本発明に
含まれる。このうち、凸状体が渦巻き形凸条(その基部
を含む)の形態によれば、攪拌ピンにより流動化された
メタルを押圧し、押し出されたメタルを当該凸条と攪拌
ピンとの間、または凸条同士間に位置する内側メタル溜
まり部に求心状にして確実に掻き込める。一方、凸状体
が円柱体で中心部が上向きに凹んだ柱状体の形態によれ
ば、攪拌ピンにより流動化され且つ押し出されたメタル
を押圧すると共に、係るメタルを当該凸状体の底面に位
置する内側メタル溜まり部に確実に誘導し易くなるの
で、接合部などにおける内部欠陥が一層防ぎ易くなる。
従って、塑性流動化したメタルに一定以上の押込力が加
わるため、内部欠陥のない接合部や攪拌部を得ることが
一層容易となる。
【0013】尚、凸状体が渦巻き形凸条の形態では、そ
のツール本体および攪拌ピンは、接合すべき金属部材に
対しその軸心を垂直姿勢(直角)にして金属部材中などに
押圧し押し込まれる。このため、リング状凸部の底面は
金属部材などの表面と平行で且つほぼ接触した状態とな
る。従って、接合部などの表面にて凹みのような表面欠
陥を防ぐことが容易となる。尚また、凸状体が前記柱状
体の形態では、その底面を攪拌ピンの根元付近が深く且
つ当該柱状体の外周寄りが浅くなる内側メタル溜まり部
とするほか、該柱状体の底面に断面半円形または円弧形
のリング溝の内側メタル溜まり部としても良い。
【0014】更に、前記ツール本体は、底面に前記攪拌
ピンおよび凸状体を有する中柱体と、この中柱体の外周
に配置され且つ底面に前記リング状凸部および外側メタ
ル溜まり部を形成する傾斜面を有する環状体とからな
り、係る環状体は上記中柱体との間に底面寄りの方向に
バネ圧を付与されている、摩擦攪拌ツールも本発明に含
まれる。これによれば、接合すべき金属部材や表層付近
を緻密にすべき鋳物の表面が例えばうねりを伴っていて
も、上記ツール本体の中柱体を軸心方向に倣って押込む
ことにより、バネ圧を介して外周側の環状体も金属部材
などの表面に沿って揺動し且つ回転しつつ移動させるこ
とができる。しかも、環状体がバネ圧に抗して上側に移
行するため、中柱体の底面の凸状体と環状体の傾斜面と
の間に形成される外側メタル溜まり部は、内側メタル溜
まり部よりも高い位置に移行する。このため、内側メタ
ル溜まり部などから押し出されたメタルは、確実に外側
メタル溜まり部に入り込むため、長尺な接合部や広い鋳
物表面あっても、得られる接合部などにおけるバリの発
生を確実に且つ連続して防ぐことができる。
【0015】一方、本発明の摩擦攪拌ツールの使用方法
は、前記摩擦攪拌ツールを回転させつつ、前記リング状
凸部の底面が金属部材または鋳物の表面にほぼ接触する
状態で、そのツール本体の底面および攪拌ピンを、一対
の金属部材の突き合わせ面または重ね合わせ面、あるい
は、鋳物の表面に沿って移動させると共に、上記攪拌ピ
ンを挿入して上記突き合わせ面、重ね合わせ面、または
鋳物表面付近のメタルを攪拌することにより、上記一対
の金属部材を摩擦攪拌接合するか、または上記鋳物表層
の微細空隙を除去する、ことを特徴とする。これによれ
ば、攪拌ピンにより塑性流動化され且つ押し出されたメ
タルを、凸状体の底面側の内側メタル溜まり部に一旦入
り込ませ、且つその一部が更に押し出されても外側メタ
ル溜まり部に確実に入り込ませることができる。また、
外側メタル溜まり部に入ったメタルを金属部材などの表
面に押し広げることもできる。従って、空隙などの内部
欠陥や、バリや凹みなどの表面欠陥のない健全な接合部
または攪拌部を形成できるので、所要の接合強度を有す
る健全な接合部または鋳物表面付近の微細な空隙を除去
した緻密な鋳物表層の攪拌部を確実に提供することが可
能となる。
【0016】
【発明の実施の形態】以下において本発明の実施に好適
な形態を図面と共に説明する。図1は、本発明における
1形態の摩擦攪拌ツール1に関する。図1(A),(B)に
示すように、本発明の摩擦攪拌ツール1は、SKD61
などの工具鋼からなる一体成形物であり、円柱形のツー
ル本体2と、その円形の底面3の中心部から本体2と同
軸心で垂下する円柱形の攪拌ピン10とを備える。ツー
ル本体2の底面3の周縁には底面視が円形のリング状凸
部4が垂下し、その内側には攪拌ピン10寄りが低くな
る傾斜面5が形成されている。また、攪拌ピン10の周
囲には、偏平な円柱形でリング状凸部4よりも底面3寄
り、即ち図1(A),(B)の下方に垂下した柱状体(凸状
体)8が形成されている。
【0017】上記柱状体8の底面には、図1(B)に示す
ように、上向きに凹み且つ攪拌ピン10の根元16寄り
(中心部)ほど深くなる円錐形状の内側メタル溜まり部9
が位置している。即ち、柱状体8の底面は、内側メタル
溜まり部9を有することで、底面3の周辺寄りから攪拌
ピン10に向かい上向きに凹むように傾斜している。ま
た、リング状凸部4の傾斜面5と柱状体8との間には、
図1(B)に示すように、断面矩形の外側メタル溜まり部
6が内側メタル溜まり部9よりも高いレベルで位置して
いる。更に、攪拌ピン10は、その円弧形状の先端面1
2と根元16との間に、攪拌促進用のネジ部14を有し
ている。
【0018】図2(A),(B)は、摩擦攪拌ツール1の使
用状態を示す。当該ツール1は、図2(A)で前後方向に
突き合わせた一対の金属部材M1,M2間の突き合わせ
面Fに沿って、100〜1500rpmで高速回転しつ
つ0.05〜2m/分の移動速度で右方向に移動され
る。この際、ツール本体2および攪拌ピン10は、数k
N〜30kNの押圧力(押し込み力)を軸心方向に伴って
いると共に、図2(A)に示すように、移動(進行)方向と
反対側(左側)に3〜5°(前進角)の範囲で傾斜してい
る。また、ツール本体2の底面3は、一対の金属部材M
1,M2の表面付近において傾斜した姿勢で回転しつつ
移動すると共に、当該底面3における進行方向の前方で
は金属部材M1,M2の表面よりも僅かに上方に位置
し、且つ進行方向と反対の後方では突き合わせ面F付近
に僅かに進入している。尚、金属部材M1,M2には、
例えばJIS:A6061のアルミニウム合金からなる
厚さ約10mmの板材が用いられる。
【0019】ネジ部14を有し且つ高速回転する攪拌ピ
ン10が、押込力を伴って挿入されることにより、突き
合わせ面F付近の金属部材M1,M2のメタル(素材)
は、摩擦熱で攪拌され塑性流動化する。また、当該攪拌
ピン10によって、その側方や上方に押し出されたメタ
ルは、図2(B)に示すように、柱状体8により下向きの
押圧力を受ける。このため、突き合わせ面F付近に追っ
て形成される接合部S内において、空隙などの内部欠陥
を確実に防ぐことができる。また、上記押し出されたメ
タルの一部は、上記押込力を受けつつ図2(B)中で攪拌
ピン10寄りの渦巻き形矢印のように、内側メタル溜ま
り部9内へ入り込む。
【0020】更に、攪拌ピン10により押し出されたメ
タルの一部および上述の内側メタル溜まり部9に入った
メタルは、図2(B)中の渦巻き形矢印のように、突き合
わせ面Fから外寄りに更に押され、外側メタル溜まり部
6内に入り込む。係る溜まり部6に入ったメタルは、図
2(A)にて、攪拌ピン10の回転方向に沿ってその側方
を通過した後、当該攪拌ピン10が直前に位置していた
部位にシフトしつつ段階的に広がって固化し、突き合わ
せ面Fに沿った接合部Sを形成する。このため、外側メ
タル溜まり部6から出たメタルは、ツール本体2の底面
3よりも外部に飛散しなくなる。この結果、接合部Sの
表面において、その両側に沿ったバリを確実に防ぐこと
ができる。尚、接合部Sの表面には僅かな凹みが形成さ
れ得る。
【0021】以上のように、摩擦攪拌ツール1によれ
ば、金属部材M1,M2間の突き合わせ面F付近に所要
の押込力を伴って挿入する攪拌ピン10により流動化さ
れ且つ押し出されたメタルは、柱状体8による押込力を
加えられつつ内側メタル溜まり部9や外側メタル溜まり
部6を経て、攪拌ピン10の後方にシフトして固化す
る。このため、突き合わせ面Fに沿って形成される接合
部Sでは、空隙などの内部欠陥、凹みなどの表面欠陥、
およびバリが生じなくなる。従って、所要の断面積を有
し健全で且つ一定の接合強度を有する接合部Sを介し
て、金属部材M1,M2を確実に突き合わせ接合するこ
とができる。尚、摩擦攪拌ツール1は、後述する金属部
材M1,M2の重ね合わせ接合や、鋳物CMの表層cm
1における微細空隙除去(表面改質)方法にも適用するこ
とができる。
【0022】図3は、本発明における異なる形態の摩擦
攪拌ツール20に関する。図3(A),(B)に示すよう
に、摩擦攪拌ツール20も、SKD61などの工具鋼か
らなる一体成形物で、円柱形のツール本体22と、その
円形の底面23の中心部から本体22と同軸心で垂下す
る前記と同じ攪拌ピン10とを備えている。ツール本体
22の底面23の周縁にはリング状凸部24が垂下し、
その内側には攪拌ピン10寄りが低くなる傾斜面25が
形成されている。また、攪拌ピン10の周囲には、底面
視で約1周余りで且つ渦巻き形を呈し、リング状凸部2
4よりも底面23寄りに垂下した渦巻き形凸条(凸状体)
28が形成されている。
【0023】渦巻き形凸条28は、図3(A),(B)に示
すように、偏平な円柱形の基部27の底面側に突設さ
れ、リング状凸部24寄りの外端部28b寄りから、攪
拌ピン10の根元16寄りの内端部28a寄りに向けて
同じ高さで垂下している。また、渦巻き形凸条28同士
の間および当該凸条28と攪拌ピン10との間には、渦
巻き形状の内側メタル溜まり部29が位置している。更
に、リング状凸部24の傾斜面25と渦巻き形凸条28
の基部27との間には、図3(A)および(B)に示すよう
に、断面ほぼ直角三角形の外側メタル溜まり部26が内
側メタル溜まり部29よりも高いレベルで位置してい
る。
【0024】図4(A),(B)は、摩擦攪拌ツール20の
使用状態を示す。当該ツール20は、図4(A)で前後方
向に重ね合わせた前記同様のアルミニウム合金からなる
一対の金属部材M1,M2間の重ね合わせ面Fに沿っ
て、100〜1500rpmで高速回転しつつ0.05
〜2m/分の移動速度で右方向に移動される。この際、
ツール本体22と攪拌ピン10とは、数kN〜30kN
の押圧力(押し込み力)を軸心方向に伴っている。また、
図4(A),(B)に示すように、上側の金属部材M1の表
面に対し、ツール本体22の底面23、より具体的には
リング状凸部24の底面が接触するように、ツール本体
22と攪拌ピン10との軸心を垂直姿勢とし且つ重ね合
わせ面Fと直角にしている。
【0025】ネジ部14を有し且つ高速回転する攪拌ピ
ン10が挿入されることにより、重ね合わせ面F付近に
おける金属部材M1,M2のメタル(素材)は、摩擦熱で
攪拌され塑性流動化する。また、当該攪拌ピン10によ
り、その側方や上方に押し出されたメタルは、図4(B)
に示すように、渦巻き形凸条28および内側メタル溜ま
り部29の底面(基部27)により下向きの押込力を受け
る。このため、重ね合わせ面F付近に追って形成される
接合部S中に空隙などの内部欠陥が発生する事態を確実
に防止できる。更に、上記押し出されたメタルの一部
は、上記押込力を受けつつ図4(B)中で攪拌ピン10寄
りの渦巻き形矢印のように、内側メタル溜まり部29内
へ入り込む。この際、渦巻き形凸条28は、内側メタル
溜まり部29内へ入ったメタルを、その外端部28bか
ら内端部28aに向かい求心状にして、攪拌ピン10寄
りに強制的に移動させることができる。
【0026】そして、攪拌ピン10により押し出された
メタルおよび上述した内側メタル溜まり部29に一旦入
ったメタルは、図4(B)中の渦巻き形矢印のように、重
ね合わせ面Fから上方寄りに更に押し出され、外側メタ
ル溜まり部26内に入り込む。外側溜まり部26に入っ
たメタルは、リング状凸部24により、金属部材M1の
表面レベル押し広げられる。この際、係るメタルは、リ
ング状凸部24の傾斜面25によって、スムーズに拡げ
られるため、得られる接合部Sの表面が凹む表面欠陥を
一層確実に防止できる。この結果、接合部S表面の両側
に沿ったバリや接合部Sの表面が凹む表面欠陥が発生す
る事態を確実に防止できる。
【0027】以上のように、摩擦攪拌ツール20によれ
ば、金属部材M1,M2間の重ね合わせ面F付近に所要
の押圧力を伴って挿入する攪拌ピン10により流動化さ
れ且つ押し出されたメタルは、渦巻き形凸条28および
内側メタル溜まり部29の底面(基部27)による押込力
を加えつつ内側メタル溜まり部29や外側メタル溜まり
部26を経て、攪拌ピン10の後方にシフトして固化す
る。このため、重ね合わせ面Fに沿って形成される接合
部Sでは、空隙などの内部欠陥、凹みなどの表面欠陥、
およびバリが生じなくなる。従って、所要の断面積を有
し健全で且つ一定の接合強度を有する接合部Sを介し
て、金属部材M1,M2を確実に重ね合わせ接合するこ
とができる。尚、摩擦攪拌ツール20は、前述した金属
部材M1,M2の突き合わせ接合や、後述する鋳物CM
の表層cm1における微細空隙除去方法にも適用するこ
とができる。
【0028】図5は、前記摩擦攪拌ツール1の変形形態
に関する。図5(a)の底面図および図5(A)の垂直端面
図に示す摩擦攪拌ツール1aも、前記同様の工具鋼から
なり、円柱形のツール本体2と、その円形の底面3の中
心部から前記同様に垂下する攪拌ピン10とを一体に有
する。ツール本体2の底面3の周縁には、底面視が正八
角形を呈するリング状凸部4aが垂下し、その内側には
攪拌ピン10寄りが低くなる傾斜面5aが形成されてい
る。また、攪拌ピン10の周囲には、前記と同様の柱状
体(凸状体)8が形成され、その底面3側にはの内側メタ
ル溜まり部9が位置している。柱状体8は、内側メタル
溜まり部9を有することで、底面3の周辺寄りから攪拌
ピン10に向けて順次上向きに凹むように傾斜してい
る。また、リング状凸部4aと柱状体8との間には、図
5(A)に示すように、断面矩形の外側メタル溜まり部6
が位置している。尚、係る溜まり部6は、リング状凸部
4aの内周面に倣ってその断面が広狭に変化している。
【0029】図5(b)の底面図および図5(B)の垂直端
面図に示す摩擦攪拌ツール1bも、円柱形のツール本体
2と、その円形の底面3の中心部から前記同様に垂下す
る攪拌ピン10とを一体に有する。ツール本体2の底面
3の周縁には、底面視が円形で且つ断面が三角形のリン
グ状凸部4bが垂下し、その内側は攪拌ピン10寄りが
低くなる傾斜面5bとなっている。また、攪拌ピン10
の周囲には、前記と同様の柱状体(凸状体)8が形成さ
れ、その底面3側には内側メタル溜まり部9が位置し、
且つ攪拌ピン10に向かって順次上向きに凹むように傾
斜している。また、リング状凸部4bと柱状体8との間
には、図5(B)に示すように、断面ほぼ直角三角形の外
側メタル溜まり部6bが位置している。
【0030】図5(c)の底面図および図5(C)の垂直端
面図に示す摩擦攪拌ツール1cも、円柱形のツール本体
2と、その円形の底面3の中心部から前記同様に垂下す
る攪拌ピン10とを一体に有する。ツール本体2の底面
3の周縁には、底面視が円形で且つ内外2重のリング状
凸部4c,4cが垂下し、外周側の凸部4cの内側は攪
拌ピン10寄りが低くなる傾斜面5cとなっている。ま
た、攪拌ピン10の周囲には、前記と同様の柱状体(凸
状体)8が形成され、その底面3側には内側メタル溜ま
り部9が位置し、且つ攪拌ピン10に向かって順次上向
きに凹むように傾斜している。また、リング状凸部4b
と柱状体8との間には、図5(C)に示すように、内外2
重の外側メタル溜まり部6,6が位置している。尚、内
周側の凸部4cの内側にも傾斜面5cを設けても良い。
【0031】以上の摩擦攪拌ツール1a〜1cにても、
前記摩擦攪拌ツール1と同様に、前記金属部材M1,M
2間の突き合わせ面Fや重ね合わせ面F付近に所要の押
込力を伴って挿入する攪拌ピン10により流動化され且
つ押し出されたメタルは、柱状体8による押圧力を加え
られつつ内側メタル溜まり部9や外側メタル溜まり部
6,6bを経て、前記図2(A)のように、攪拌ピン10
の後方にシフトして固化する。このため、上記ツール1
a〜1cにおいては、負荷する押込力にあまり左右され
ることなく、突き合わせ面Fや重ね合わせ面Fに沿って
形成される接合部Sにおける内部欠陥、表面欠陥、およ
びバリの発生を防止できる。従って、所要の断面積を有
し健全で且つ一定の接合強度を有する接合部Sを介し
て、金属部材M1,M2を確実に突き合わせ接合または
重ね合わせ接合することができる。
【0032】尚、摩擦攪拌ツール1bは、その底面3に
おける構造が簡素で製作も容易となる。また、摩擦攪拌
ツール1cは、その内外2重のリング状凸部4c,4c
により、外側メタル溜まり部6,6に入ったメタルがツ
ール本体2の底面3の外部に飛散してバリとなる事態を
一層確実に防止できる。更に、摩擦攪拌ツール1a〜1
cは、後述する鋳物CMの表層cm1における微細空隙
除去(表面改質)方法にも適用することができる。
【0033】図6は、前記摩擦攪拌ツール20の変形形
態に関する。図6(a)の底面図および図6(A)の垂直端
面図に示す摩擦攪拌ツール20aは、前記同様の工具鋼
からなり、円柱形のツール本体22と、その円形の底面
23の中心部から前記同様に垂下する攪拌ピン10とを
一体に有する。ツール本体22の底面23の周縁には、
底面視が渦巻き形で且つ約1周巻きのリング状凸部24
aが垂下し、その内側は攪拌ピン10寄りが低くなる傾
斜面となっている。また、攪拌ピン10の周囲には、偏
平な円柱形の基部27の底面から前記と同様の渦巻き形
凸条(凸状体)28に突設され、係る凸条28と攪拌ピン
10との間には、内側メタル溜まり部29が位置してい
る。また、リング状凸部24aと渦巻き形凸条28の基
部27との間には、図6(A)に示すように、断面ほぼ矩
形の外側メタル溜まり部26が位置している。尚、外側
溜まり部26は、渦巻き形のリング状凸部24aの内周
面に倣って、断面が広狭に変化している。
【0034】図6(b)の底面図と図6(B)の垂直端面図
とに示す摩擦攪拌ツール20bも、円柱形のツール本体
22と、その円形の底面23の中心部から前記同様に垂
下する攪拌ピン10とを一体に有する。図6(b),(B)
に示すように、上記ツール本体22の底面23の周縁に
は、リング状凸部24が垂下し、その内側には攪拌ピン
10寄りが低くなる傾斜面25が形成されている。ま
た、攪拌ピン10の周囲には、偏平な円柱形の基部27
の底面から突設され、底面視にて約4分の3周巻きで且
つ渦巻き形を呈し、且つリング状凸部24よりも底面2
3側に垂下した一対の渦巻き形凸条(凸状体)28c,2
8cが、攪拌ピン10を中心として対称にして形成され
ている。
【0035】また、当該凸条28c,28c間および凸
条28cと攪拌ピン10との間には、渦巻き形で一対の
内側メタル溜まり部29a,29aが対称に位置してい
る。更に、リング状凸部24の傾斜面25と各渦巻き形
凸条28cの基部27との間には、図6(b),(B)に示
すように、外側メタル溜まり部26が内側メタル溜まり
部29よりも高いレベルで位置している。
【0036】図6(c)の底面図と図6(C)の垂直端面図
とに示す摩擦攪拌ツール20cも、円柱形のツール本体
22と、その円形の底面23の中心部から前記同様に垂
下する攪拌ピン10とを一体に有する。ツール本体22
の底面23の周縁には、リング状凸部24が垂下し、そ
の内側には攪拌ピン10寄りが低くなる傾斜面25が形
成されている。また、攪拌ピン10の周囲には、偏平な
円柱形の基部27の底面から突設され、底面視にて約半
周巻きで且つ渦巻き形を呈し、且つリング状凸部24よ
りも底面23側に垂下した3組の渦巻き形凸条(凸状体)
28dが、攪拌ピン10を中心として対称にして形成さ
れている。
【0037】また、図6(c),(C)に示すように、各渦
巻き形凸条28d,28d間および係る凸条28dと攪
拌ピン10との間には、渦巻き形で3組の内側メタル溜
まり部29bが、攪拌ピン10を中心として対称に位置
している。更に、リング状凸部24の傾斜面25と各渦
巻き形凸条28dの基部27との間には、図6(c),
(C)に示すように、外側メタル溜まり部26が内側メタ
ル溜まり部29bよりも高いレベルで位置している。
【0038】以上の摩擦攪拌ツール20a〜20cによ
っても、前記摩擦攪拌ツール20と同様に、前記金属部
材M1,M2間の突き合わせ面Fや重ね合わせ面F付近
に所要の押込力を伴って挿入する攪拌ピン10により流
動化され且つ押し出されたメタルを、単数または複数の
渦巻き形凸条28,28c,28d(基部27を含む)の
押込力により内側メタル溜まり部29,29a,29b
に移動させる。更に、係るメタルを外側メタル溜まり部
26を経て、前記図4(A)のように、攪拌ピン10の後
方にシフトして固化させる。
【0039】しかも、約1周巻きの渦巻き形凸条28、
一対の渦巻き形凸条28c、または3組の渦巻き形凸条
28dにより、流動化したメタルを内側メタル溜まり部
29a,29b内の攪拌ピン10寄りに強制的に移動さ
せることができる。このため、上記ツール20a〜20
cにても、突き合わせ面Fや重ね合わせ面Fに沿って形
成される接合部Sには、空隙などの内部欠陥、凹みなど
の表面欠陥、およびバリが生じなくなる。従って、所要
の断面積を有する健全で且つ一定の接合強度を有する接
合部Sを介して、金属部材M1,M2を確実に突き合わ
せ接合または重ね合わせ接合することができる。尚、摩
擦攪拌ツール20a〜20cは、後述する鋳物CMの表
層cm1における微細空隙除去方法にも適用することが
できる。
【0040】図7(A)の垂直断面図に示す摩擦攪拌ツー
ル30は、前記摩擦攪拌ツール1の応用形態であって、
前記同様の工具鋼からなり、ほぼ円柱形の中柱体31
と、その外周に配置した環状体32と、からなるツール
本体を有する。図7(A)に示すように、中柱体31は、
円柱状の本体31aの側面にリング形の鍔31bおよび
円筒形のカバー31cを有し、その底面33側には、中
心部から上記本体31aと同軸心で垂下する前記と同じ
攪拌ピン10と、その周囲に位置し係るピン10寄りほ
ど上向きに凹む内側メタル溜まり部39を有する柱状体
(凸状体)38とを有している。また、環状体32は、そ
の底面33側の周縁にリング状凸部34が垂下し、且つ
その内側には攪拌ピン10寄りに向かって低くなる傾斜
面35を有する。係る環状体32と中柱体31の鍔31
bとの間には、図7(A)に示すように、コイルバネ31
dが介在し、このバネ圧により環状体32を底面33寄
りの方向に沿って、図7(A)中の実線の位置に押し下げ
ている。更に、図7(B)に示すように、上記カバー31
cには、下向きに開口した凹部31eが形成され、且つ
環状体32の外側縁には、当該環状体32がバネ圧に抗
して上昇した際に上記凹部31eに嵌合する凸片32a
が立設されている。
【0041】図7(C)の垂直断面図に示す摩擦攪拌ツー
ル40は、前記摩擦攪拌ツール20の応用形態であっ
て、前記同様の工具鋼からなり、ほぼ円柱形の中柱体4
1と、その外周に配置した環状体42とからなるツール
本体を有する。図7(C)に示すように、中柱体41は、
円柱状の本体41aの側面に前記同様の図示しないリン
グ形の鍔および円筒形のカバーを有し、その底面43側
には中心部から本体41aと同軸心で垂下する前記と同
じ攪拌ピン10と、基部47の下側から垂下する単数ま
たは複数の渦巻き形凸条(凸状体)48とを有する。攪拌
ピン10と渦巻き形凸条48との間には、渦巻き形状の
内側メタル溜まり部49が位置する。
【0042】図7(C)に示すように、環状体42は、そ
の底面43側の周縁にリング状凸部44を垂下させ、且
つその内側には攪拌ピン10寄りに向かって低くなる傾
斜面45を有する。係る環状体42と中柱体41の鍔と
の間には、前記同様のコイルバネ(図示せず)が介在し、
係るバネ圧により環状体42を底面43寄りの方向に沿
って、図7(A)中の実線の位置に押し下げている。尚、
このツール40にも前記同様の凹部とこれに嵌合する凸
片(図示せず)とが設けられている。
【0043】図7(D)は、摩擦攪拌ツール30,40を
用いた鋳物CMの表層cm1における微細空隙除去方法
に関する。アルミニウム合金の鋳物CMにおける表層c
m1を含む表面に沿って、摩擦攪拌ツール30,40が
平面視で蛇行状の移動軌跡を形成するよう前記同様に回
転および移動させ、図7(C)に示すように、その跡に形
成される複数の攪拌部K1,K2,K3を互いに重複さ
せる。この際、摩擦攪拌ツール30の環状体32は、中
柱体31と回転しつつ移動するが、鋳物CMの表面から
の反発力により、前記バネ圧に抗して図7(A)中の一点
鎖線の位置に上昇し、中柱体31との間に外側メタル溜
まり部36を形成する。また、環状体32は、その上昇
に伴って前記凹部31eと凸片32aとの嵌合により、
中柱体31と同期して回転する。同時に、環状体32
は、鋳物CMの表面に沿ったうねりに倣って揺動する。
尚、係るツール30は、鋳物CMの表面に対し、移動方
向と反対側に3〜5°傾けて用いる。
【0044】また、摩擦攪拌ツール40の環状体42
も、中柱体41と共に回転しつつ移動するが、鋳物CM
の表面からの反発力により、前記バネ圧に抗して図7
(C)中の破線の位置に上昇し、中柱体41との間に外側
メタル溜まり部46を形成する。同時に、環状体42
は、鋳物CMの表面に沿ったうねりに倣って揺動する。
尚、係るツール40は、鋳物CMの表面に対し、垂直姿
勢にして用いられる。これにより、鋳物CMの表層cm
1に所要の押込力を伴って挿入する攪拌ピン10により
流動化され且つ押し出されたメタルは、柱状体38また
は渦巻き形凸条48による下向きの押込力を与えられつ
つ内側メタル溜まり部39,49に入り込む。
【0045】係るメタルは、環状体32と中柱体31と
の間に形成される外側メタル溜まり部36、または、環
状体42と中柱体41との間のに形成される外側メタル
溜まり部46を経て、前記図2(A)や図4(A)のよう
に、攪拌ピン10の後方にシフトして固化する。この結
果、鋳物CMの表層cm1に存在する微細な空隙を除去
し、緻密な組織の表層に改質することが可能となる。
尚、摩擦攪拌ツール30,40は、前述した金属部材M
1,M2の突き合わせ接合または重ね合わせ接合にも適
用することができる。また、環状体32,42は、カバ
ー31cなどと摩擦接触させることにより、中柱体3
1,41とほぼ同期して回転させても良い。
【0046】本発明は以上において説明した各形態に限
定されるものではない。例えば、攪拌ピン10は、前記
ツール本体2の底面3などの中心部から同軸心で垂下す
る形態に限らず、底面3などの中心からやや偏心した位
置から垂下する形態としても良い。また、攪拌ピン10
の形状は、前記円柱形に限らず、四角柱以上の正多角柱
や変形多角柱としても良い。あるいは、攪拌ピン10の
周面の前記ネジ部14に替えて、攪拌ピン10の周面に
その軸心に平行または直角とした複数の連続する細溝を
設けたり、先端面12にリング状で且つ同心円を形成す
る複数のリング凸片や散点状の突起を多数突設した形態
としても良い。更に、本発明方法の対象となる金属部材
や鋳物の材質には、前記アルミニウム合金に限らず、銅
および銅合金、各種の鋼材、ステンレス鋼、またはチタ
ン合金なども含まれる。
【0047】
【発明の効果】以上において説明した本発明の摩擦攪拌
ツールによれば、攪拌ピンと共に凸状体が挿入されるの
で、金属部材の接合部や鋳物表層の攪拌部における内部
欠陥が防止でき、且つ攪拌ピンにより塑性流動化され且
つ押し出されたメタルは、凸状体の底面側の内側メタル
溜まり部に一旦入り込み、その一部は更に押し出されて
外側メタル溜まり部に入り込む。しかも、外側メタル溜
まり部により、流動化したメタルは、金属部材などの表
面レベルに押し広げられるため、ツール本体の底面から
外部には押し出されにくくなり、バリを生じなくなる。
また、内・外メタル溜まり部に入ったメタルは、当該摩
擦攪拌ツールの移動に伴い、攪拌ピンが直前に位置して
いた部位に移行して固化し、空隙などの内部欠陥やバリ
のない健全な接合部または鋳物表層の攪拌部を形成す
る。従って、所要の接合強度を有する健全な接合部また
は鋳物表面付近の微細な空隙を除去した緻密な鋳物の表
層を確実に得ることが可能となる。
【0048】また、請求項2の摩擦攪拌ツールによれ
ば、流動化され内側メタル溜まり部などから押し出され
たメタルは、前記リング状凸部の傾斜面により外側メタ
ル溜まり部に誘導されるため、ツール本体の底面から外
部へ押し出されにくくなり、バリを発生を一層確実に防
止できる。しかも、外側メタル溜まり部内に入るメタル
は、段階的に盛り上がって広がるため、接合部の表面欠
陥も防ぐことができる。更に、請求項3の摩擦攪拌ツー
ルによれば、凸状体が渦巻き形凸条の形態では、流動化
されたメタルを押圧し且つ当該メタルを内側メタル溜ま
り部内に求心状にして確実に掻き込められ、凸状体が中
心部が凹んだ円柱体の柱状体の形態では、流動化された
メタルを押圧し且つ当該メタルを内側メタル溜まり部に
容易に誘導することができる。従って、塑性流動化した
メタルに一定以上の押込力が加わるため、内部欠陥のな
い接合部や攪拌部を得ることが一層容易となる。
【0049】また、請求項4の摩擦攪拌ツールによれ
ば、金属部材や鋳物の表面が例えばうねっていても、前
記ツールの中柱体を軸心方向に沿って押し込むことによ
り、バネ圧を介して外周の環状体も金属部材などの表面
に沿って回転しつつ移動させることができる。しかも、
中柱体と環状体との間に形成される外側メタル溜まり部
は、内側メタル溜まり部よりも高い位置に移行するた
め、内側メタル溜まり部から押し出されたメタルは、確
実に内側メタル溜まり部に入り込む。従って、長尺な接
合部や広い鋳物表面であってもバリや表面欠陥の発生を
確実に防止できる。
【0050】一方、本発明の摩擦攪拌ツールの使用方法
によれば、流動化され且つ押し出されたメタルを、内側
メタル溜まり部に入り込ませ、その一部が更に押し出さ
れても外側メタル溜まり部に入り込ませることができ
る。従って、空隙などの内部欠陥およびバリや凹みなど
の表面欠陥のない健全な接合部または鋳物表層の攪拌部
を形成できるので、所要の接合強度を有する健全な接合
部または鋳物表面付近の微細な空隙を除去した緻密な鋳
物の表層を確実に提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A),(B)は本発明の摩擦攪拌ツールの1形態
を示す斜視図又は垂直端面図。
【図2】(A)は図1の摩擦攪拌ツールの使用状態を示す
概略図、(B)は(A)中のB−B線に沿った視角における
断面図。
【図3】(A),(B)は異なる形態の摩擦攪拌ツールを示
す斜視図または垂直端面図。
【図4】(A)は図3の摩擦攪拌ツールの使用状態を示す
概略図、(B)は(A)中のB−B線に沿った視角における
断面図。
【図5】(a)〜(c)は図1の摩擦攪拌ツールの各変形形
態を示す底面図、(A)〜(C)は(a)〜(c)のA−A線、
B−B線、またはC−C線に沿った視角での端面図。
【図6】(a)〜(c)は図3の摩擦攪拌ツールの各変形形
態を示す底面図、(A)〜(C)は(a)〜(c)中のA−A
線、B−B線、またはC−C線に沿った視角での端面
図。
【図7】(A),(C)は図1または図3の摩擦攪拌ツール
の各応用形態を示す垂直断面図、(B)は(A)のツールに
おける部分斜視図、(D)はこれらのツールを用いて鋳物
の表層に形成した攪拌部の付近を示す概略図。
【図8】(A),(B)は従来の摩擦攪拌ツールを示す斜視
図または垂直断面図、(C)はその使用状態を示す概略
図。
【図9】(A),(B)は図8の摩擦攪拌ツールにより接合
された接合部付近を示す概略図、(C)は異なる形態の従
来の摩擦攪拌ツールの垂直断面図、(D)はこれにより接
合された接合部付近を示す概略図。
【符号の説明】
1,1a〜1c,20,20a〜20c,30,40…摩擦
攪拌ツール 2,22………………………………………………ツール
本体 3,23,33,43………………………………底面 4,4a〜4c,24,24a,34,44…………リング
状凸部 5,5a〜5c,25,35,45………………傾斜面 6,6b,26,36,46………………………外側メ
タル溜まり部 8,38………………………………………………柱状体
(凸状体) 9,29,29a,29b,39,49……………内側メ
タル溜まり部 10……………………………………………………攪拌ピ
ン 28,28c,28d,48………………………渦巻き
形凸条(凸状体) 31,41……………………………………………中柱体 32,42……………………………………………環状体 M1,M2……………………………………………金属部
材 F………………………………………………………突き合
わせ面/重ね合わせ面 CM……………………………………………………鋳物 cm1…………………………………………………表層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 牧田 慎也 静岡県庵原郡蒲原町蒲原1丁目34番1号 日本軽金属株式会社グループ技術セン ター内 (56)参考文献 米国特許6206268(US,B1) 英国特許出願公開2306366(GB,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B23K 20/12

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】柱状のツール本体と、係るツール本体の底
    面から垂下する攪拌ピンとを備え、 上記ツール本体の底面の周縁寄りにリング状凸部を形成
    し、係るリング状凸部と上記攪拌ピンとの間に当該リン
    グ状凸部よりも垂下する凸状体を形成すると共に、上記
    リング状凸部と凸状体との間に外側メタル溜まり部が位
    置し、且つ上記凸状体には内側メタル溜まり部が位置し
    ている、 ことを特徴とする摩擦攪拌ツール。
  2. 【請求項2】前記リング状凸部は、前記ツール本体の底
    面における周縁寄りから前記攪拌ピン寄りに向けて低く
    なる傾斜面を含む、 ことを特徴とする請求項1に記載の摩擦攪拌ツール。
  3. 【請求項3】前記凸状体は、前記ツール本体の底面にお
    ける周縁寄りから前記攪拌ピン寄りに向って連なる単数
    または複数の渦巻き形凸条、または、中心部が上向きに
    凹んだ柱状体である、 ことを特徴とする請求項1または2に記載の摩擦攪拌ツ
    ール。
  4. 【請求項4】前記ツール本体は、底面に前記攪拌ピンお
    よび凸状体を有する中柱体と、この中柱体の外周に配置
    され且つ底面に前記リング状凸部および外側メタル溜ま
    り部を形成する傾斜面を有する環状体とからなり、係る
    環状体は上記中柱体との間に底面寄りの方向にバネ圧を
    付与されている、 、ことを特徴とする請求項1乃至3何れかに記載の摩擦
    攪拌ツール。
  5. 【請求項5】請求項1乃至4の摩擦攪拌ツールを回転さ
    せつつ、前記リング状凸部の底面が金属部材または鋳物
    の表面にほぼ接触する状態で、そのツール本体の底面お
    よび攪拌ピンを、一対の金属部材の突き合わせ面または
    重ね合わせ面、あるいは、鋳物の表面に沿って移動させ
    ると共に、上記攪拌ピンを挿入して上記突き合わせ面、
    重ね合わせ面、または鋳物表面付近のメタルを攪拌する
    ことにより、上記一対の金属部材を摩擦攪拌接合する
    か、または上記鋳物表層の微細空隙を除去する、ことを
    特徴とする摩擦攪拌ツールの使用方法。
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