JP2002192357A - 摩擦攪拌ツールおよびこれを用いる接合方法 - Google Patents

摩擦攪拌ツールおよびこれを用いる接合方法

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JP2002192357A
JP2002192357A JP2000396601A JP2000396601A JP2002192357A JP 2002192357 A JP2002192357 A JP 2002192357A JP 2000396601 A JP2000396601 A JP 2000396601A JP 2000396601 A JP2000396601 A JP 2000396601A JP 2002192357 A JP2002192357 A JP 2002192357A
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stirring pin
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friction stir
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Hisashi Hori
久司 堀
Shinya Makita
慎也 牧田
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Nippon Light Metal Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】接合部などに過剰なバリや空隙などの欠陥が生
じにくい摩擦攪拌接合などが確実に行える摩擦攪拌ツー
ルおよびこれを用いた接合方法を提供する。 【解決手段】底面3が円形のシール本体2と、この底面
3の中心部から同軸心で垂下する攪拌ピン6とを含み、
上記ツール本体2の底面3を接合すべき金属部材の表面
に沿って回転しつつ進行方向と反対側に傾斜した姿勢で
移動させると共に、上記攪拌ピンを金属部材の突き合わ
せ面10付近に挿入して当該部材の金属を攪拌するもの
であり、上記ツール本体2の底面3において上向きに凹
む凹部4の半分の体積であるメタル溜まり部5は、上記
攪拌ピン6が1回転する間に当該攪拌ピン6の移動に伴
ってシフトする上記金属のメタル9の量よりも大きな体
積を有する、摩擦攪拌ツール1。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、一対の金属部材を
摩擦攪拌接合するかまたは鋳物表面の微細な空隙の除去
に用いる摩擦攪拌ツールおよびこれを用いた接合方法に
関する。
【0002】
【従来の技術】一対の金属部材を突き合わせまたは重ね
合わせ、固相状態で接合する方法として、摩擦攪拌接合
方法が行われている。この方法には、これまで次のよう
な摩擦攪拌ツール20が用いられている。このツール2
0は、図4(A)に示すように、工具鋼からなる一体物
で、円柱形のツール本体21、該本体21において中心
部が上向きに凹んだ底面22、該底面22における凹部
23、および底面22の中心部からツール本体21と同
軸心で垂下する攪拌ピン24を含む。凹部23にて底面
22の周縁から中心部に向けた傾斜角度θは一般に10
°以下であった。
【0003】図4(B),(C)に示すように、一対の金属
部材25,26の突き合わせ面27に沿って、摩擦攪拌
ツール20を高速回転させつつその攪拌ピン24を挿入
した後、且つ図4(C)中の矢印で示す右方向に沿って移
動させる。この際、上記ツール20は、進行方向と反対
側に3〜5°傾斜している。金属部材25,26の突き
合わせ面27付近におけるメタルは、図4(B),(C)に
示すように、回転しつつ移動する攪拌ピン24との摩擦
熱により、攪拌・流動化され軟化して固相状態となった
後、固化することにより接合部28を突き合わせ面27
に沿って形成する。この結果、金属部材25,26は、
突き合わせ面27に沿って接合される。
【0004】ところで、図4(C)に示すように、攪拌ピ
ン24により攪拌・流動化されたメタルは、当該攪拌ピ
ン24が挿入されることにより、その一部は進行方向の
前方寄りのツール本体21における底面22の凹部23
内に一旦押し出される。凹部23内に入ったメタルは、
図4(C)中の一点鎖線の矢印で示すように、摩擦攪拌ツ
ール20の移動に伴って攪拌ピン24の側方を経て、当
該攪拌ピン24が直前に位置していた部分に移行した
後、固化して接合部28となる。しかしながら、摩擦攪
拌ツール20の上記凹部23の体積は、比較的小さいた
め、図4(D)に示すように、挿入された攪拌ピン24の
体積に見合って軟化したメタルの一部は、凹部23に入
らずツール本体21の底面22の周囲に押し出されて固
化し、接合部28の表面30の両側に過剰なバリ29,
29を形成する。また、凹部23内に入り込むメタルが
過少なため、図4(C)中の一点鎖線の矢印で示す経路に
より攪拌ピン24の後方への移行量が少なくなる。この
結果、図4(D)に示すように、接合部28の中央付近に
はメタル不足に伴う空隙31が形成されたり、接合部2
8の表面30付近が凹む表面欠陥を生じ易くなる。
【0005】
【発明が解決すべき課題】以上のような過剰なバリ29
や空隙31などを有する接合部28を介して金属部材2
5,26を突き合わせ接合しても、その接合強度が不足
し易く所要の接合強度が得られない、という問題があっ
た。しかも、上記バリ29を切除するために表面30に
対して過度の面削加工が必要となる、という問題もあっ
た。本発明は、以上に説明した従来の技術における問題
点を解決し、接合部などに過剰なバリや空隙などの欠陥
を生じにくい摩擦攪拌接合などが確実に行える摩擦攪拌
ツールおよびこれを用いた接合方法を提供する、ことを
課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を解
決するため、発明者らの鋭意研究および調査の結果によ
り得られたもので、摩擦攪拌ツールの本体底面の凹部に
おけるメタル溜まり量を適正化することに着目して成さ
れたものである。即ち、本発明の摩擦攪拌ツールは、少
なくとも底面が円形のシール本体と、この底面の中心部
から同軸心で垂下する攪拌ピンとを含み、上記ツール本
体の底面を接合すべき金属部材の表面または微細空隙を
除去すべき鋳物表面に沿って回転しつつ進行方向と反対
側に傾斜した姿勢で移動させると共に、上記攪拌ピンを
金属部材の突き合わせ面付近または重ね合わせ面付近あ
るいは鋳物の表層に挿入して上記部材の金属または鋳物
を攪拌するものであり、上記ツール本体の底面において
上向きに凹む凹部の半分の体積であるメタル溜まり部
は、上記攪拌ピンが1回転する間に当該攪拌ピンの移動
に伴ってシフトする上記金属などのメタルよりも大きな
体積を有する、ことを特徴とする。
【0007】これによれば、ツール本体における底面の
凹部の半分を占めるメタル溜まり部が、攪拌ピンの1回
転当たりの移動に伴ってシフトするメタルの量よりも大
きいため、挿入された攪拌ピンにより押し出されるメタ
ルは上記溜まり部内に全量収容される。このため、凹部
内に一旦収容されたメタルは、当該摩擦攪拌ツールの移
動に伴い攪拌ピンの側方を通って、攪拌ピンが直前に位
置していた部位に移行した後、固化して空隙などの欠陥
のない健全な接合部または鋳物表層部を形成することが
できる。従って、所要の接合強度を有する健全な接合部
または鋳物表面付近の微細な空隙を除去した緻密な鋳物
表層部を確実に得ることが可能となる。尚、摩擦攪拌ツ
ールを回転しつつ進行方向と反対側に傾斜した姿勢で移
動させる際の上記傾斜角(前進角)は、3〜5°の範囲内
である。係る傾斜を伴うため、上記メタル溜まり量を上
記凹部の体積の半分としたものである。
【0008】また、前記攪拌ピンの前記ツール本体の底
面寄りにおける直径dと当該ツール本体の直径Dとが、
数式2の関係にある、摩擦攪拌ツールも本発明に含まれ
る。
【0009】
【数2】D/d≦2.5
【0010】これによれば、攪拌ピンの直径dは、常に
ツール本体の直径Dの5分の2以上となるので、当該攪
拌ピンを大径化することにより、接合すべき突き合わせ
面とのセンターずれ許容量を大きくできる。しかも、ツ
ール本体の底面における凹部のメタル溜まり量を一定の
体積で確保することもできる。また、ツール本体を大径
化しなくて済むため、摩擦攪拌ツールを駆動する設備の
負荷を抑制できると共に、当該摩擦攪拌ツール自体の寿
命も向上させることが可能となる。更に、攪拌ピンに伴
いツール本体を細径にすることにより、狭幅な接合が容
易となる。尚、上記比D/dが2.5を越えると、ツー
ル本体の直径が過大に太くなり、上記設備の負荷が過大
となるか、あるいは攪拌ピンの直径が過少となって摩擦
攪拌ツールの寿命も低下する。これらを防ぐため、上記
範囲を除いたものである。即ち、厚肉の金属部材を接合
するには、これに応じて長い攪拌ピンが必要となるが、
ツール本体の直径Dを上記範囲内にしてその太径化を制
限することで、当該ツールを駆動する設備負荷を小さく
し、適切な接合を施すことが可能となる。
【0011】更に、前記ツール本体の底面の凹部におけ
る周縁から中心部に向けた径方向の傾斜角度θが、11
°以上で且つ30°以下の範囲内にある、摩擦攪拌ツー
ルも本発明に含まれる。これによれば、ツール本体の底
面における凹部のメタル溜まり量を一定以上の体積で確
実に確保できるので、空隙などの欠陥や過剰なバリのな
い健全な接合部または緻密な鋳物表層部を形成すること
ができる。尚、上記傾斜角度θが11°未満ではメタル
溜まり量の体積が過少となり、一方30°を越えると攪
拌ピンの軸方向の長さ、即ち攪拌ピンの根元から先端ま
での長さ(以下、攪拌ピントータル長さと言う)が過度に
長くなり、接合中などに折損し易くなる。これらを防ぐ
ため、傾斜角度θを上記範囲としたものである。
【0012】一方、本発明の接合方法は、前記のような
摩擦攪拌ツールを、厚肉で一対の金属部材間の突き合わ
せ面に沿って回転しつつ進行方向と反対側に傾斜した姿
勢で移動させ、且つ前記攪拌ピンを金属部材の突き合わ
せ面付近に挿入することにより、上記一対の金属部材を
摩擦攪拌接合する、ことを特徴とする。これによれば、
攪拌ピンにより押し出されるメタルを前記凹部内に全量
収容することができるため、凹部内に一旦収容されたメ
タルは、当該摩擦攪拌ツールの移動に伴って攪拌ピンの
側方を通って、当該攪拌ピンが直前に位置していた部位
に移行した後、固化して空隙などの欠陥のない健全な接
合部を形成することができる。従って、所要の接合強度
を有する突き合わせ接合を確実に得られる。
【0013】また、前記金属部材がアルミニウム合金板
材で、且つその板厚が10mm以上である、接合方法も
本発明に含まれる。これによれば、前記摩擦攪拌ツール
の攪拌ピンが折れない程度に当該攪拌ピンの直径を確保
した状態で、健全な接合部を介して厚肉のアルミニウム
合金板材同士を強固に突き合わせ接合することができ
る。尚、攪拌ピンの直径は上記板厚の70%以上とする
ことが望ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】以下において本発明の実施に好適
な形態を図面と共に説明する。図1(A),(B)に示すよ
うに、本発明の摩擦攪拌ツール1は、工具鋼からなり、
円柱形のツール本体2と、その円形の底面3の中心部か
ら同軸心で垂下する円柱形の攪拌ピン6とを一体に有す
る。底面3には上向きに凹む凹部4が形成され、図1
(B)に示すように、底面3の周縁において水平線と凹部
4の接線との傾斜角θは、11°〜30°の範囲内に設
定されている。また、ツール本体2の直径Dと攪拌ピン
6における根元の直径dとの比D/dは、2.5以下の
範囲とされている。尚、攪拌ピン6の周面やその底面
(先端)8には、図示しない螺旋状のネジ凸条、複数の凹
溝、または散点状の凹凸が付される。また、ツール本体
2は、その底面3が少なくとも円形であれば、8角形や
6角形の多角柱体としても良い。更に、図1(B)中の符
号Lは、攪拌ピン6の軸心方向に沿った長さのうち、上
記凹部4の深さ分を除いた長さを示す。
【0015】図2(A)は、摩擦攪拌ツール1の使用状態
を示す。当該ツール1は、図示で前後方向に突き合わせ
た一対の金属部材間の突き合わせ面10に沿って、10
0〜1500rpmで高速回転しつつ0.05〜2m/
分の移動速度で右方向に移動される。この際、図2(A)
に示すように、ツール本体2および攪拌ピン6は、数k
N〜30kNの押し込み力を軸心方向に伴っていると共
に、進行方向と反対側に3〜5°(前進角)の範囲で傾斜
している。また、ツール本体2の底面3は、一対の金属
部材の表面付近において傾斜した姿勢で回転しつつ移動
すると共に、係る底面3における進行方向の前方は金属
部材の表面よりも僅かに上方に位置し、且つ進行方向と
反対の後方は突き合わせ面10付近に僅かに進入してい
る。
【0016】攪拌ピン6が挿入されることにより、突き
合わせ面10付近のメタルは摩擦熱で攪拌され流動化す
る共に、攪拌ピン6により押し出されるメタルの一部
は、凹部4内の前方部分、即ち本発明のメタル溜まり部
5に入り込む。この溜まり部5に入ったメタルは、図2
(A)において、攪拌ピン6の根元付近における回転方向
に沿った側方に通過した後、当該攪拌ピン6が直前に位
置していた部位に移行して固化し、突き合わせ面10に
沿った接合部Sを形成する。
【0017】図2(B)は、ツール本体2における底面3
の凹部4の半分の体積を占めるメタル溜まり部5を示
す。この溜まり部5は、3〜5°の範囲で傾斜して移動
する摩擦攪拌ツール1の凹部4内に進入し得るメタルの
体積にほぼ相当する。以上のようなメタル溜まり部5の
体積Vは、数式3により算出される。尚、数式3中で、
Rはツール本体2の半径(D/2)、rは攪拌ピン6の半
径(d/2)を示す。また、数式3中で中央の「−」の左
側のカッコ内は凹部4とこれに囲まれた攪拌ピン6の基
端部との体積を算出する式、数式3中で中央の「−」の
右側のカッコ内は凹部4に囲まれた攪拌ピン6の基端部
の体積を算出する式であり、最後の「/2」は凹部4全体
の体積を半分にするものである。
【0018】
【数3】V=〔π×((R+r)/2)×(tanθ×(R−
r))−π×r×(tanθ×(R−r))〕/2
【0019】図2(C)〜(E)は、攪拌ピン6が1回転す
る間に距離Zを水平移動することに伴いシフトするメタ
ル9に関する。即ち、図2(C),(D)に示すように、攪
拌ピン6aは1回転する間に攪拌ピン6bの位置まで距
離Z分を移動し、図2(D),(E)に示すように、ピン6
a,6b間には断面三日月形で僅かに傾斜した瓦形状の
メタル9が存在する。メタル9の体積vは数式4により
概算値が算出される。即ち、図2(E)に示すようなシフ
トで生じるメタル9の体積vは、図2(C)中における2
点鎖線の円形からこれに重なる実線の円形部分を差し引
いた面積に、図1(B)中で示した攪拌ピン6の前記長さ
Lを掛けることにより求められる。尚、数式4中で、s
は図2(D)中の弦の長さを示し、「2×(r−(Z/2)
) /2」で算出され、hは2(D)中の弧の高さ(幅)を
示し、(r−(Z/2))で算出される。また、lは2(D)
中の弧の長さを示し、「r×θ1」により算出される。但
し、θ1は「2×(cos−1((Z/2)/r)」で算出される2
(D)中の弧lの中心角である。
【0020】
【数4】v=〔π×r−2×(1/2×(r×(l−s)
+s×h))〕×L
【0021】摩擦攪拌ツール1におけるメタル溜まり部
5の体積Vは、攪拌ピン6が1回転する間に距離Zを移
動することに伴ってシフトするメタル9の体積(量)vよ
りも常に大きくされている。このため、回転しつつ移動
する攪拌ピン6により押し出されたメタルは、理論上凹
部4内のメタル溜まり部5に全量収容可能となる。但
し、押し出されるメタルの一部は凹部4内に入らず攪拌
ピン6の側方を通過するため、上向きに押し出されるメ
タルを確実にメタル溜まり部5へ収容することができ
る。そして、係るメタルは、凹部4(溜まり部5)からツ
ール本体2の傾斜した底面3に押されつつ、攪拌ピン6
が直前に位置した部位に移行して固化する。この結果、
固化したメタルは空隙や過剰なバリのない健全な接合部
Sを形成するので、所要の接合強度を有する突き合わせ
接合を確実に得ることができる。
【0022】また、攪拌ピン6の直径d(半径r)は、前
記数式2のように常にツール本体2の直径D(半径R)の
5分の2以上になるように設定されている。このため、
厚肉の金属部材同士を接合する際にも、ツール本体2を
大径化することなく、一定長さと太さの攪拌ピン6を用
いることができる。このため、摩擦攪拌ツール1を駆動
する図示しない設備の負荷を抑制することができると共
に、当該摩擦攪拌ツール1自体の寿命も向上させること
ができる。換言すれば、攪拌ピン6に伴ってツール本体
2を細径にすることにより、幅狭な接合を行うことも容
易となる。
【0023】図3(A)は、前述したように、摩擦攪拌ツ
ール1を金属部材11,12の突き合わせ面10に沿っ
て、回転しつつ図示で前方方向に移動させることによ
り、突き合わせ面10付近に接合部Sを形成し、金属部
材11,12を突き合わせ接合する状態を示す。また、
摩擦攪拌ツール1は、図3(B)に示すように、金属部材
13,14の重ね合わせ面16に沿って、回転しつつ図
示で前方方向に移動させることにより、重ね合わせ面1
6付近に接合部Sを形成し、金属部材13,14を所要
の強度をもって重ね合わせ接合することもできる。更
に、摩擦攪拌ツール1は、図3(C)に示すように、アル
ミニウム合金の鋳物18における表層19を含む表面に
沿って、平面視で蛇行状の移動軌跡を形成するように回
転および移動させ、その跡に形成される複数の攪拌部K
1,K2を互いに重複させることもできる。この結果、
鋳物18の表層19に存在する微細な空隙を除去し、緻
密な組織の表層19に改質することが可能となる。
【0024】
【実施例ア】以下において本発明の具体的な実施例を説
明する。 JIS:A6061のアルミニウム合金からなり、厚さ
20mmで且つ100mm×300mmのサイズを有す
る一対のアルミニウム合金板材(金属部材)を複数組用意
した。各組のアルミニウム合金板材同士を、それらの長
手方向に沿って突き合わせて拘束状態とした。また、表
1に示す各部のサイズ、傾斜角度θを有するNo,1〜1
7の摩擦攪拌ツール1を3°の前進角で用い、各ツール
1毎にその回転数R(rpm)と移動速度W(mm/分)と
の比を0.25、0.5、および0.75の3段階に分
けて、表1に示すように51種類の摩擦攪拌接合を行っ
た。そして、各接合毎における摩擦攪拌ツール1のメタ
ル溜まり部5の溜まり量(体積)を測定すると共に、得ら
れた接合部Sにおける内部欠陥または表面欠陥の有無を
調べ、欠陥がなかつたものを○、何れかの欠陥があった
ものを×として、表1中に併せて表示した。
【0025】因みに、表1中のNo,11の摩擦攪拌ツー
ル1を用い、且つ当該ツール1の回転数Rが500rp
mで移動速度Wが250mm/分の条件(比W/R=
0.5)で接合した場合、上記ツール1の軸心方向に沿
って生じた反力は28.3kNで、上記ツール1を用い
た設備の許容能力30kNの範囲内に収まっていた。こ
の際、摩擦攪拌ツール1の攪拌ピン6は接合作業中に折
れなかった。一方、表1中のNo,11のサイズを有し傾
斜角度θを5°とした比較例の摩擦攪拌ツールを用い、
上記と同じ回転数および移動速度により接合した場合で
は、当該ツールのメタル溜まり量が過少となったため、
得られた接合部Sに表面欠陥が生じていた。また、表1
中のNo,11の摩擦攪拌ツールであって、ツール本体2
の直径Dのみを40mmとし、その他は上記と同じ条件
による接合の場合では、当該ツールの軸心方向に沿って
生じた反力(負荷)は、上記設備能力を超えてしまったた
め、接合作業自体が行えなかった。
【0026】
【表1】
【0027】表1によれば、メタル溜まり量よりもシフ
トしたメタル量が大きくなったNo,1,4,7,9〜1
1,14における一部の条件による接合において、接合
部Sに内部欠陥または表面欠陥の何れかまたは双方が見
つけられた。これら以外の全ての条件による接合、即ち
メタル溜まり量がシフトしたメタル量よりも大きかった
実施例アの各接合では、欠陥のない健全な接合部Sが得
られた。以上の結果から、メタル溜まり部5の体積をシ
フトしたメタル量よりも大きすることを指標とする本発
明の摩擦攪拌ツール1によれば、内部欠陥や表面欠陥が
なく且つ過剰なバリもない健全な接合部Sが得られるこ
とが裏付けられた。従って、本発明の摩擦攪拌ツール1
とこれを用いた接合方法の優位性が確認された。
【0028】
【実施例イ】次に、実施例アと同じ材質とサイズの一対
のアルミニウム合金板材(金属部材)を2組用意した。各
組のアルミニウム合金板材同士を、それらの長手方向に
沿って突き合わせて拘束状態とした。そして、表2に示
す各部のサイズ、ツール本体2と攪拌ピン6との直径の
比D/d、および傾斜角度θを有する実施例1と比較例
1の摩擦攪拌ツール(1)を各組に対し個別に用い、前進
角3°、回転数500rpm、移動速度150mm/分
の条件により、突き合わせによる摩擦攪拌接合をそれぞ
れ行った。各例における摩擦攪拌ツール(1)の軸心方向
に沿って生じた反力(負荷)と当該ツールの攪拌ピン6の
寿命とを測定し、併せて表2に示した。
【0029】
【表2】
【0030】表2によれば、比D/dが2.5以下の
1.9である実施例1の摩擦攪拌ツール1に生じた負荷
は28.3kNで当該ツール1を回転・移動する設備の
許容能力30kNの範囲内であり、接合中に攪拌ピン6
が折れることもなく健全な接合部Sが得られた。これに
対し、比D/dが2.5を越える2.7である比較例1
の摩擦攪拌ツールでは、生じた負荷は設備の上記能力の
範囲内であったが、その攪拌ピン6が長く細径となり、
当該ピン6が受ける負荷が過大となったため、接合作業
中に当該攪拌ピン6が折損した。以上の結果から、ツー
ル本体2の直径Dと攪拌ピン6の直径dとの比D/dを
2.5以下とする本発明の摩擦攪拌ツール1とこれを用
いた接合方法の優位性が確認できた。
【0031】
【実施例ウ】更に、実施例アと同じ材質とサイズの一対
のアルミニウム合金板材(金属部材)を4組用意した。各
組のアルミニウム合金板材同士を、それらの長手方向に
沿って突き合わせて拘束状態とした。そして、表3に示
す各部のサイズ、比D/d、傾斜角度θを有する実施例
2,3と比較例摩擦2,3の摩擦攪拌ツール(1)を各組
に対し個別に用い、前進角3°、回転数500rpm、
移動速度250mm/分の条件により、突き合わせによ
る摩擦攪拌接合をそれぞれ行った。各例で得られた接合
部Sにおける内部欠陥または表面欠陥の有無を調べ、欠
陥がなかつたものを○、欠陥があったものを×として、
併せて表3中に表示した。また、各例の摩擦攪拌ツール
(1)の攪拌ピン6の寿命を調べて表3中に示した。
【0032】
【表3】
【0033】表3によれば、実施例2,3では健全な接
合部Sが得られ且つ接合作業中に攪拌ピン6が折損しな
かった。これに対し、比較例2では傾斜角度θが11°
未満のため、メタル溜まり部5の溜まり量が過少となっ
たことにより、得られた接合部Sに表面欠陥が生じた。
また、比較例3では傾斜角度θが30°を越えたため、
攪拌ピン6の根元から先端面(底面)8までの長さ(攪拌
ピントータル長さ)が長くなり過ぎたことにより、接合
作業中に当該攪拌ピン6が折損した。以上の結果から、
傾斜角度θを11°〜30°の範囲とした本発明の摩擦
攪拌ツール1の優位性を確認することができた。
【0034】本発明は以上に説明した各形態および実施
例に限定されるものではない。例えば、凹部4の形状
は、前記曲面の形態に限らず、底面3の周縁から11°
〜30°の傾斜角度θに沿って接線状で且つ直線状に凹
む形態としても良い。また、攪拌ピン6の形状は、その
根元部分が直径dであれば、根元部分から先端の底面8
に向けて僅かに細径となるように側面視で逆台形状とし
ても良い。係る形状の攪拌ピン6とすることで、当該ツ
ール1の傾斜角度θを15°以上の比較的急な傾斜にし
易くなり、且つ攪拌ピン6自体の折損も防ぎ易くなる。
係る形態の攪拌ピンでは、その根元部分の直径dが前記
数式2の範囲にあれば良い。更に、本発明の接合方法の
対象となる厚肉の金属部材には、前記アルミニウム合金
板材に限らず、攪拌ピンの直径が板厚の70%以上とす
る条件下において、各種の鋼板、ステンレス鋼板、また
はチタン合金板材なども含まれ得る。
【0035】
【発明の効果】以上において説明した本発明の摩擦攪拌
ツールによれば、ツール本体における底面の凹部の半分
を占めるメタル溜まり部が、攪拌ピンの1回転当たりの
移動に伴ってシフトするメタルの量よりも大きいため、
挿入された攪拌ピンにより押し出されるメタルを上記溜
まり部内に全量収容できる。このため、凹部内に一旦収
容されたメタルは、当該摩擦攪拌ツールの移動に伴って
攪拌ピンの側方を通って、攪拌ピンが直前に位置してい
た部位に移行した後、固化して空隙(内部欠陥)、表面欠
陥、および過剰なバリのない健全な接合部または緻密な
鋳物表層部を形成することができる。従って、所要の接
合強度を有する健全な接合部または鋳物表面付近の微細
な空隙を除去した緻密な鋳物表層部を確実に得ることが
できる。
【0036】また、請求項2の摩擦攪拌ツールによれ
ば、攪拌ピンの直径は常にツール本体の直径の5分の2
以上となるので、当該攪拌ピンを大径化することによ
り、接合すべき突き合わせ面とのセンターずれ許容量を
大きくできる。しかも、ツール本体の底面における凹部
のメタル溜まり量を一定の容積で確保することもでき
る。また、ツール本体を大径化しなく済むため、当該ツ
ールを駆動する設備の負荷を抑制することができると共
に、当該ツール自体の寿命も向上させることが可能とな
る。更に、攪拌ピンに伴ってツール本体を細径にするこ
とにより、狭隘な幅に沿った接合作業が容易となる。一
方、本発明の接合方法によれば、攪拌ピンにより押し出
されるメタルを前記凹部内に全量収容できるため、凹部
内に一旦収容されたメタルは、摩擦攪拌ツールの移動に
伴って攪拌ピンの側方を通って、当該攪拌ピンが直前に
位置していた部位に移行した後、固化して空隙などの内
部欠陥や表面欠陥のない健全な接合部となる。従って、
所要の接合強度を有する突き合わせ接合を確実に得られ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)は本発明の摩擦攪拌ツールを示す斜視図、
(B)はその垂直断面図。
【図2】(A)は図1の摩擦攪拌ツールの使用状態を示す
概略図、(B)はメタル溜まり部を示す模式的斜視図、
(C)〜(E)は攪拌ピンの移動とこれに伴ってシフトする
メタルとを示す概略図。
【図3】(A)〜(C)は図1の摩擦攪拌ツールの異なる使
用状態を示す概略図。
【図4】(A)は従来の摩擦攪拌ツールを示す垂直断面
図、(B),(C)は(A)のツールを用いた接合方法を示す
概略図、(D)は得られた接合部付近を示す断面図。
【符号の説明】
1…………………………摩擦攪拌ツール 2…………………………ツール本体 3…………………………底面 4…………………………凹部 5…………………………メタル溜まり部 6…………………………攪拌ピン 9…………………………シフトしたメタル 10………………………突き合わせ面 11,12,13,14…金属部材 16………………………重ね合わせ面 18………………………鋳物 19………………………表層 D…………………………ツール本体の直径 d…………………………攪拌ピンの直径 L…………………………攪拌ピンの長さ(凹部4の深さ
分を除く) θ…………………………傾斜角度 Z…………………………攪拌ピンの1回転当たりの移動
距離

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】少なくとも底面が円形のシール本体と、こ
    の底面の中心部から同軸心で垂下する攪拌ピンとを含
    み、 上記ツール本体の底面を接合すべき金属部材の表面また
    は微細空隙を除去すべき鋳物表面に沿って回転しつつ進
    行方向と反対側に傾斜した姿勢で移動させると共に、上
    記攪拌ピンを金属部材の突き合わせ面付近または重ね合
    わせ面付近あるいは鋳物の表層に挿入して上記部材の金
    属または鋳物を攪拌するものであり、 上記ツール本体の底面において上向きに凹む凹部の半分
    の体積であるメタル溜まり部は、上記攪拌ピンが1回転
    する間に当該攪拌ピンの移動に伴ってシフトする上記金
    属などのメタルよりも大きな体積を有する、 ことを特徴とする摩擦攪拌ツール。
  2. 【請求項2】前記攪拌ピンの前記ツール本体の底面寄り
    における直径dと当該ツール本体の直径Dとが、数式1
    の関係にある、 ことを特徴とする請求項1に記載の摩擦攪拌ツール。 【数1】D/d≦2.5
  3. 【請求項3】前記ツール本体の底面の凹部における周縁
    から中心部に向けた径方向の傾斜角度θが、11°以上
    で且つ30°以下の範囲内にある、 ことを特徴とする請求項1または2に記載の摩擦攪拌ツ
    ール。
  4. 【請求項4】請求項1乃至3の何れかに記載の摩擦攪拌
    ツールを、厚肉で一対の金属部材間の突き合わせ面に沿
    って回転しつつ進行方向と反対側に傾斜した姿勢で移動
    させ、且つ前記攪拌ピンを金属部材の突き合わせ面付近
    に挿入することにより、上記一対の金属部材を摩擦攪拌
    接合する、ことを特徴とする接合方法。
  5. 【請求項5】前記金属部材がアルミニウム合金板材で、
    且つその板厚が10mm以上である、ことを特徴とする
    請求項4に記載の接合方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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US6676008B1 (en) * 2002-04-30 2004-01-13 Edison Welding Institute Friction stir welding of corner configurations
WO2009081659A1 (ja) * 2007-12-26 2009-07-02 Japan Ae Power Systems Corporation 真空遮断器の電極接点部材及びその製造方法
CN102490018A (zh) * 2011-12-09 2012-06-13 重庆大学 一种浮动双轴肩双搅拌针的切削-搅拌摩擦焊接复合加工设备及其制造方法

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