JP3409660B2 - 表面性状に優れた薄板ステンレスクラッド鋼板 - Google Patents
表面性状に優れた薄板ステンレスクラッド鋼板Info
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Description
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、深絞りや張り出し
或いは曲げ等の加工に供される素材として好適な薄板ス
テンレスクラッド鋼板に関する。 【0002】 【従来の技術】合わせ材にステンレス鋼、母材に炭素鋼
を配したステンレスクラッド鋼板は、ステンレス鋼の優
れた耐食性を安価に利用できることから、近年、薄板用
途においても鍋、釜等の厨房品や浴槽といった日常品を
はじめ、自動車、電機、建材等の各分野でもその需要が
増大しつつある。薄板ステンレスクラッド鋼板は、ほと
んどの場合に深絞りや張り出し或いは曲げ等の加工に供
されるため、耐食性に加えて加工性が品質上重要であ
り、このため母材には低炭素鋼が用いられるのが一般的
である。 【0003】薄板ステンレスクラッド鋼板の加工性も、
一般の冷延鋼板と同様、冷間圧延後の焼鈍温度に依存す
るところが大きいが、合わせ材ステンレス鋼と母材低炭
素鋼の再結晶、軟質化温度が大幅に異なるため、焼鈍温
度を合わせ材と母材のいずれにも適切となるように設定
するのが難しいという問題がある。具体的には、加工性
確保のために合わせ材ステンレス鋼の再結晶、軟質化を
優先し、高温焼鈍(例えば1000℃以上)を行った場
合には、母材低炭素鋼にとっては過度の焼鈍となり、結
晶粒が全体的に粗大化するとともに、ステンレス鋼との
界面に結晶粒が著しく粗大化した粗粒化層を生じること
があり、加工時にオレンジピール等の肌荒れとなって製
品の表面品質を損なう。 【0004】このような母材組織の粗大化とステンレス
鋼との界面における粗粒化層の生成という問題に関して
は、従来からもその対策が検討されており、例えば、特
開昭53−144454号、特開昭54−96459
号、特開昭62−124229号、特開昭63−699
42号等には、TiやNb等の炭窒化物形成元素を比較
的多量に添加することでCとNを炭窒化物として固定
し、これらの合わせ材への拡散を防止するとともに、こ
の炭窒化物自体の存在により粒界移動をピン止めし、粒
成長を抑えることで、母材組織の粗大化とステンレス鋼
との界面における粗粒化層の生成を防止しようとする技
術が開示されている。また、特開昭62−57786号
及び特開昭62−74025号には、Bを添加すること
で粒成長が抑制されることが述べられている。 【0005】これらの従来技術によれば、確かに母材組
織の粗大化やステンレス鋼との界面における粗粒化層の
生成をある程度抑えることができ、加工性に対する要求
がそれ程厳しくなく焼鈍温度が比較的低い場合にあって
は、オレンジピール等の肌荒れは回避することができ
る。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、強加工
に供されるため加工性に対する要求が厳しい場合には、
合わせ材ステンレス鋼の軟質化を促進させるため焼鈍温
度を1100℃近くまで上昇させる必要があり、このよ
うな場合には上記従来技術をもってしても母材結晶粒の
粗大化を十分に抑制することができない。その理由は、
従来技術のうちTiやNb等の炭窒化物形成元素を添加
する方法では、炭窒化物形成元素を比較的多量に添加す
るために炭窒化物が粗大に析出してしまい、このため粒
界移動に対するピン止め力が十分に得られず、またBを
単独添加する方法では、TiやNb等の炭窒化物形成元
素を添加する場合に比べてより一層粒成長に対する抑止
力が小さいためであり、このためステンレス鋼との界面
における粗粒化層の生成は回避できるものの、母材結晶
粒の全体的な粗大化は抑止できず、この結果オレンジピ
ール等の肌荒れを誘発し、製品歩留まりの低下を招いて
しまう。また、加工後に表面調整のための表面研磨を施
す用途においては、上記のような肌荒れが生じると重研
磨が必要となるためコスト上昇を招き、また肌荒れが特
に酷い場合には、研磨時に母材の一部が露出して耐食性
の劣化を招いたり、或いはこれを避けるために合わせ材
ステンレス鋼の厚みを大きくする必要を生じてコスト上
昇を招く等、問題が多い。 【0007】薄板ステンレスクラッド鋼板では、ステン
レス鋼との界面付近の母材結晶粒が粗大であると、加工
による母材結晶粒或いは結晶粒のコロニー単位の結晶回
転が合わせ材ステンレス鋼を通して凹凸となって顕在化
し、オレンジピール等の肌荒れを生じる。この場合、加
工度が大きい程結晶回転自体が大きくなって、これら肌
荒れを生じ易くなる。強加工に供される場合には高温焼
鈍を余儀なくされるのは上述した通りであるが、この場
合には高温焼鈍により母材結晶粒が粗大化することに加
えて、その加工度自体の影響が重畳される結果、肌荒れ
の発生は一層促進されることになる。 【0008】このように薄板ステンレスクラッド鋼板を
加工の厳しい用途に用いるために高温焼鈍を行った場合
には、母材結晶粒の粗大化、さらにはそれに加工度自体
の影響が重畳することにより、オレンジピール等の肌荒
れの問題を生じるが、上記従来技術ではこのような肌荒
れを適切に回避することができず、このため表面性状が
劣化して製品歩留まりの低下や研磨用途における耐食性
の低下、無用なコスト上昇等を招くといった問題を生じ
ていた。 【0009】したがって本発明の目的は、このような従
来技術の課題を解決し、強加工に供するために高温焼鈍
を行った場合でも母材結晶粒の粗大化を生じることがな
く、オレンジピール等の肌荒れがない優れた表面性状を
有する薄板ステンレスクラッド鋼板を提供することにあ
る。 【0010】 【課題を解決するための手段】本発明者らは、高温焼鈍
を行った際の母材結晶粒の粗大化を防止することができ
る母材低炭素鋼の組成について検討を重ね、その結果、
母材低炭素鋼中に炭窒化物形成元素であるTiを添加
し、C量とTi量並びに両者の含有量の関係を適正化す
るとともに、さらにBを複合添加することにより、高温
焼鈍における母材結晶粒の粗大化が顕著に抑制されるこ
とを見い出した。 【0011】本発明はこのような知見に基づきなされた
もので、その特徴とするところは、合わせ材がオーステ
ナイト系ステンレス鋼、母材が低炭素鋼からなる薄板ス
テンレスクラッド鋼板であって、母材低炭素鋼がC:
0.015〜0.06重量%、N:0.010重量%以
下、Ti:0.10〜0.40重量%、B:0.000
5〜0.0050重量%を含有し、且つ、 (Ti−3.4N)/4C≧0.6 Ti×C=2.8×(1/103)〜13.5×(1/103) 但し Ti:Ti含有量(重量%) N :N含有量(重量%) C :C含有量(重量%) を満足する成分組成を有することを特徴とする表面性状
に優れた薄板ステンレスクラッド鋼板である。 【0012】 【発明の実施の形態】以下、本発明の詳細をその限定理
由とともに説明する。合わせ材がオーステナイト系ステ
ンレス鋼、母材が低炭素鋼からなる薄板ステンレスクラ
ッド鋼板において、母材低炭素鋼中へのB添加による母
材結晶粒の粗大化抑制効果と、それに対するC量及びT
i量の影響を調査するため、表2に記載の鋼番A群〜D
群の鋼を溶製した。これらのうち、鋼番A群はC≒0.
034重量%、Ti≒0.11重量%でほぼ一定とし、
その他のSi、Mn、P、S、Sol.Al、Nもほぼ
一定とし、B量のみをtr.〜0.0025重量%の範
囲で変化させた一連の鋼である。また、鋼番B群はC≒
0.022重量%でほぼ一定とした以外は、鋼番A群と
同様の成分組成とした一連の鋼である。鋼番C群はC≒
0.055重量%、Ti≒0.21重量%でほぼ一定と
し、その他のSi、Mn、P、S、Sol.Al、Nも
ほぼ一定とし、B量のみをtr.〜0.0025重量%
の範囲で変化させた一連の鋼である。鋼番D群はTi≒
0.27重量%でほぼ一定とした以外は、鋼番C群と同
様の成分組成とした一連の鋼である。 【0013】これらの鋼を表1に記載のSUS304L
相当鋼と組み合わせ、母材低炭素鋼のB量とC量及びT
i量が異なる薄板ステンレスクラッド鋼板を作成し、B
添加による母材結晶粒の粗大化抑制効果と、それに対す
るC量及びTi量の影響を調査した。具体的には、表1
に記載のSUS304L相当鋼を合わせ材に、表2に記
載の鋼番A群〜D群を母材に配したクラッドスラブを組
立て、これらを1250℃に加熱後、仕上温度920
℃、巻取温度580℃で板厚3.4mmまで熱間圧延
し、930℃で熱延板焼鈍後、酸洗及び冷間圧延を施
し、1070℃で仕上焼鈍した後、酸洗及び調質圧延す
ることで、SUS304L相当鋼と低炭素鋼からなる全
厚0.6mmの薄板ステンレスクラッド鋼板(合わせ材
SUS304L相当鋼を母材低炭素鋼の表裏面に配した
3層クラッド鋼板,全厚に対する合わせ材の厚さの比
率:片側で15%)を作成し、母材組織の板厚方向断面
を観察して結晶粒の粗大化状況を調査した。 【0014】 【表1】 【0015】 【表2】 【0016】図1は、このようにして得られた母材結晶
粒の平均粒径を母材のB量との関係で整理して示したも
のである。これによれば、B無添加の場合には母材が鋼
番A群〜D群の何れであってもその結晶粒径は80〜9
0μmに達しており、母材組織の粗大化を生じている。
また、Ti量が略0.11重量%である鋼番A群及びB
群を母材に配したものと、Ti量が略0.21〜0.2
7重量%である鋼番C群及びD群を母材に配したものと
では母材結晶粒の平均粒径に大きな差はなく、粒径に対
するTiの効果がほぼ飽和していることも判る。 【0017】上記のようにB無添加の場合には母材結晶
粒の粒径は母材の鋼種によって大きく変化することはな
いが、Bを添加した場合には母材の鋼種によって母材結
晶粒の粒径に大きな差を生じるようになる。即ち、母材
に鋼番A群及びC群を配したものでは、B添加により細
粒化が促進され、Bが5ppm以上添加されると母材結
晶粒の粒径はともに30μm程度にまで減少し、母材組
織の粗大化が顕著に抑制されている。一方、鋼番B群及
びD群の場合には、Bを25ppmまで添加しても母材
結晶粒の粒径は70μm程度にしか減少せず、B添加に
よる母材組織の粗大化抑制効果は小さい。 【0018】ここで、B添加により母材結晶粒の粗大化
が顕著に抑制される鋼番A群及びC群の場合と、粗大化
抑制効果の小さい鋼番B群及びD群の場合を比較する
と、鋼番B群は鋼番A群に対してC量が、また鋼番D群
は鋼番C群に対してTi量がそれぞれ異なるだけであ
り、このことからしてBによる粗大化抑制効果に対する
C量及びTi量の影響が示唆される。そこで、この点を
明らかにするために、B量をB≒0.0012重量%で
ほぼ一定とした上で、C量及びTi量を各々0.015
〜0.06重量%、0.10〜0.40重量%の範囲で
変化させた表3に記載の鋼番E群(Si、Mn等の他の
成分は一定)の一連の鋼を母材として用い、図1に関す
る試験と同様の条件で3層の薄板ステンレスクラッド鋼
板を作成し、Bによる母材組織の粗大化抑制効果に対す
るC量とTi量の影響を調査した。なお、このC量とT
i量に関しては、本発明が規定する適正範囲(この限定
理由については後述する)内でその影響を調査した。ま
た、後述するように本発明ではC量、Ti量及びB量に
加えてN量及び(Ti−3.4N)/4Cについても適
正化する必要があり、鋼番E群はこれらも適正範囲とな
るように溶製を行った。 【0019】 【表3】 【0020】母材に上記鋼番E群の一連の鋼を配した際
の、母材結晶粒の粒径と母材のC量及びTi量との関係
を図2に整理して示す。これによれば、B添加による母
材組織の粗大化抑制効果は、母材のC量とTi量の積で
あるTi×Cの値に極めて強く依存し、Ti×Cの値が
2.8×(1/103)〜13.5×(1/103)とい
う特定の範囲にある場合にのみB添加による顕著な粗大
化抑制効果が得られ、母材結晶粒の粒径は30μm程度
と十分に細粒化する。一方、Ti×Cの値が2.8×
(1/103)未満と13.5×(1/103)超の範囲
では、母材結晶粒の粒径は略70μm以上と大きく、図
1に示したB無添加の場合の粒径80〜90μmと大差
ないレベルにあり、B添加による母材組織の粗大化抑制
効果はTi×Cの値が上記2.8×(1/103)〜1
3.5×(1/103)の範囲にある場合に比べて著し
く小さい。 【0021】このようにC量とTi量の相互の関係を、
Ti×Cの値が2.8×(1/103)〜13.5×
(1/103)の範囲となるよう適正化することによ
り、はじめてB添加による母材組織の粗大化抑制効果が
顕著に発揮されるため、本発明ではTi×Cの値を2.
8×(1/103)〜13.5×(1/103)の範囲と
規定する。上記のようにBによる母材組織の粗大化抑制
効果が、Ti×Cの値を通してC量とTi量の影響を受
ける理由については必ずしも明らかではないが、Ti×
Cの値が焼鈍中のTiCの再溶解挙動に影響を及ぼし、
TiCの再溶解によって生じる固溶C量を変化させ、こ
の固溶C量との関係で上記粗大化に対するBの効果の大
小が決定されるためであると考えられる。 【0022】すなわち、本発明ではTiが比較的多量に
添加されているため、焼鈍前においてはCのかなりの部
分がTiCとして固定されているが、焼鈍時の昇温中に
TiCは再溶解を生じる。このTiCの再溶解によって
母材マトリックス中にCが再固溶することになるが、こ
の固溶CとBの共存によって母材のα/γ変態点が変化
し、これが適正化された場合に母材組織が細粒化し、結
晶粒の粗大化が抑制されるものと考えられる。 【0023】焼鈍時の昇温中に母材フェライトは再結晶
を経た後粒成長を生じ、α/γ変態によりオーステナイ
トに変態した後再度粒成長し、このオーステナイトが冷
却中に再びフェライトに転じることで母材の組織形成は
終了するが、その際、α/γ変態点が高温であるか低温
であるかによって母材の結晶粒径は大きく変化する。す
なわち、α/γ変態点が高温であると、母材組織は高温
までフェライトのまま維持され粗大に成長する。その
後、このフェライトがオーステナイトへ変態し、次いで
フェライトに変態して最終組織を形成するが、変態の出
発点であるフェライトが粗大であるために変態後の組織
も粗大となり、母材組織の粗大化を招く。一方、α/γ
変態点が低温であると、焼鈍時の昇温中の早い時期にオ
ーステナイトが生成するとともに、冷却中の遅い時期ま
で組織がオーステナイトのまま維持されることになり、
この間の粒成長によりオーステナイトの粗大化を生じ
る。この粗大なオーステナイトよりフェライトが生成し
て最終組織を形成するため、α/γ変態点が高い場合と
同様、母材組織の粗大化を招く。これらに対し、α/γ
変態点が適当な温度にあると、上記α/γ変態点が高温
であったり低温であったりする場合にみられるオーステ
ナイトやフェライトの粗大化を生じることがないため、
母材組織が粗大化することはない。 【0024】このようにα/γ変態点を適正化すること
で母材組織の粗大化は抑制されるが、そのためには、α
/γ変態点に大きな影響をもつBを添加するとともに、
焼鈍時のTiCの再溶解挙動を制御し、TiCの再溶解
によって生じる固溶C量を適正化することが重要とな
る。その場合、Ti×Cの値は溶解度積との関係からT
iCの再溶解速度を変化させ、これによってB添加によ
る母材組織の粗大化抑制効果の有無を左右するものと考
えられる。すなわち、Ti×Cの値が本発明範囲である
2.8×(1/103)〜13.5×(1/103)の範
囲にあると、焼鈍時の昇温中のTiCの再溶解速度が適
正化されて固溶C量が適正となり、これがBの存在とと
もにα/γ変態点を適正化し、母材組織の粗大化が回避
される。これに対し、Ti×Cの値が2.8×(1/1
03)未満ではTiCの再溶解速度が遅いため、またT
i×Cの値が13.5×(1/103)超ではTiCの
再溶解速度が速いため、何れの場合も固溶C量が適正化
されず、B添加によるα/γ変態点の変化はあっても、
なおα/γ変態点が高温すぎたり、逆に低温すぎたりし
て母材組織の粗大化を防止できない。 【0025】本発明では、上記のようにTi×Cの値を
適正化することに加え、B量を適正化し、さらにはC量
及びTi量自体とN量並びに(Ti−3.4N)/4C
の値を適正化することも必要であり、これらのうち一つ
でも適正範囲から外れると、母材組織の粗大化や加工性
の劣化等を招き、本発明が意図する効果が得られない。
以下、それらの適正範囲について説明する。 【0026】Bの添加はα/γ変態点の適正化を通じて
母材組織の粗大化を抑制するが、この効果が発揮される
には、図1に示されるようにBを0.0005重量%以
上添加する必要があり、したがって、これをもって本発
明のB量の下限とする。一方B量が0.0050重量%
超では、母材組織の粗大化抑制効果が飽和するだけでな
く加工性が劣化するため、B量の上限は0.0050重
量%とする。 【0027】本発明ではTiが比較的多量に添加されて
いるため、焼鈍前においてはCのかなりの部分がTiC
として固定されており、この状態ではα/γ変態点に影
響を及ぼすことはほとんどない。Cの影響が顕在化する
のは焼鈍時であり、先に述べたように焼鈍時にTiCが
再溶解し、これによって固溶Cが供給されることを通じ
てα/γ変態点を適正化し、母材組織の粗大化防止に寄
与する。この焼鈍中に生成する固溶C量は上述したTi
×Cの値とともにC量自体に依存するため、C量の適正
化が必要となる。具体的には、Ti×Cの値が本発明条
件である2.8×(1/103)〜13.5×(1/1
03)の範囲にあったとしても、C量が0.015重量
%未満であると焼鈍前のTiC量が少ないために焼鈍時
のTiCの再溶解量が過少となり、固溶Cが十分に供給
されない結果、α/γ変態点が適正化されず、母材組織
の粗大化を生じる。一方、C量が0.06重量%を超え
ると、焼鈍前のTiC量が多いために焼鈍時のTiCの
再溶解量が過多となり、固溶Cが過剰に供給される結
果、C量が少ない場合と同様、α/γ変態点が適正化さ
れず、母材組織の粗大化を生じる。また、TiC量が少
ない場合には、TiC自体による粒界移動のピン止め力
が弱くなり、逆にTiC量が多いと、TiC自体により
加工性が劣化してしまう。こうした点から、C量は0.
015〜0.06重量%の範囲とする必要があり、これ
をもって本発明のC量の範囲とする。なお、C量の下限
に関しては、これを0.020重量%にすると母材組織
の粗大化が一層抑制されるため、より好ましい。 【0028】TiもCと同様、TiCの生成を通じてα
/γ変態点の適正化に寄与するため重要な成分である
が、Ti量の適正範囲は焼鈍時のTiCの再溶解挙動よ
りも、むしろ焼鈍時の粒界移動に対するピン止め力とコ
ストの面から規定される。TiCの生成はTiの拡散律
速であるため、Ti量が少ないと析出するTiCが小さ
くなり、焼鈍時の昇温中のかなり早い時期に再溶解を開
始し、この結果、母材結晶粒の粒界移動に対するピン止
め力が不十分となって母材組織の粗大化を生じてしま
う。一方、Ti量が過剰であると連続鋳造ができなくな
り、製鋼コストが増大する。これらの問題を回避するに
は、Ti量を0.10〜0.40重量%とする必要があ
り、このため本発明ではこれをもってTi量の範囲とす
る。 【0029】Ti量との関係でNは全てTiNとして固
定され、またTiNは焼鈍温度が高温であってもTiC
のように再溶解することがないため、α/γ変態点の適
正化には寄与しない。しかし、N量が過剰であるとTi
Nが増加しすぎるために加工性が劣化するので、Nは
0.010重量%以下とする必要がある。 【0030】TiとCの当量比が1を下回り、Cの全量
がTiCとして固定されず焼鈍前に一部固溶Cとして存
在する場合には、この固溶Cが焼鈍時の昇温中のかなり
早い時期に合わせ材であるステンレス鋼に拡散し、従来
技術に関しても述べたように、これが引き金となってス
テンレス鋼との界面に母材結晶粒が著しく粗大化した粗
粒化層を形成し、加工時にオレンジピール等の肌荒れを
誘発する。さらに、合わせ材ステンレス鋼に拡散したC
によって合わせ材の耐食性も劣化する。これらを防止す
るためにはTiとCの当量比を0.6以上とする必要が
あり、このため本発明では(Ti−3.4N)/4Cの
値を0.6以上と規定する。なお、(Ti−3.4N)
/4Cの値が0.6以上であれば、Ti×Cの値をはじ
めとして本発明が規定する各適正数値範囲は、(Ti−
3.4N)/4Cの値に依存して変化することがないこ
とを実験的に確認した。これは、焼鈍前にある程度固溶
Cが存在していても、上記のようにこの固溶Cは焼鈍時
の昇温中のかなり早い時期に合わせ材ステンレス鋼に拡
散してしまうため、α/γ変態点の適正化に何ら関与し
ないためであると考えられる。 【0031】なお、TiとBを複合添加する技術そのも
のは特開平5−5190号等にも開示されているが、こ
れらの従来技術では本発明が要件とするC量とTi量並
びにC量とTi量の相互関係が適正化されておらず、上
述の説明からも明らかなように本発明が意図するような
母材結晶粒の粗大化抑制効果は得られない。 【0032】本発明が目的とする優れた表面性状は、母
材に配する鋼の成分を上記のように適正化することで得
られるため、優れた表面性状を得るという観点からはS
iやMn等の他の成分の含有量を特段適正化する必要は
なく、この種の母材低炭素鋼に通常採用される成分に準
じた成分組成、すなわち、Si≦0.5重量%、Mn≦
1.5重量%、P≦0.1重量%、S≦0.03重量
%、sol.Al:0.005〜0.10重量%程度の
成分組成でよい。残部は実質的にFeからなり、したが
って不可避不純物等を含めた微量の成分元素が含まれる
ことは妨げない。また、母材の製造方法も常法に従えば
よく、またその板厚構成等も特に制限はない。 【0033】合わせ材の種類については、薄板ステンレ
スクラッド鋼板に広く用いられているオーステナイト系
ステンレス鋼とするが、鋼種は特に規定の必要はなく、
汎用鋼種であるSUS304やSUS304Lであって
もよいし、要求特性や用途に応じてその他の鋼種を用い
てもよい。合わせ材の厚みやクラッド比についても特別
な制約はなく、耐食性や高級感等を重視する場合には合
わせ材の厚みを増加させればよい。また、加工後の研磨
工程の都合で適宜合わせ材の厚みを変えることも可能で
あり、コストを重視する場合には合わせ材の厚みを小さ
くしてもよい。 【0034】このように合わせ材の厚みやクラッド比は
通常の範囲で適宜選択できるが、その好適な範囲とし
て、例えば母材の表裏面に合わせ材を配した3層クラッ
ド鋼板にあっては、全厚に対する合わせ材の厚みの比率
が片側当たり3〜25%程度とすることを例示できる。
この比率が3%未満では耐食性が劣化したり、オレンジ
ピール等の肌荒れがなくとも加工後の研磨工程で一部母
材が露出したりする恐れがあり、一方、25%を超える
と製品コストが上昇するためクラッド化自体の意味がな
くなる。このため合わせ材の全厚に対する厚みの比率は
片面当り3〜25%程度が目安となる。 【0035】本発明では、母材成分の適正化により表面
性状の劣化を招くことなく優れた加工性や耐食性を具現
できるため、クラッド鋼板の層構成にも特別な制約はな
い。すなわち、本発明は先に例示した3層クラッド鋼板
に限らず、例えば5層以上の多層クラッド鋼板にも適用
可能であり、また、最終製品として、ステンレス鋼とア
ルミニウム或いはアルミニウム合金からなるクラッド薄
板と本発明による薄板ステンレスクラッド鋼板を組み合
わせてもよい。 【0036】 【実施例】表1に記載のSUS304L相当鋼を合わせ
材に、表4及び表5に記載の鋼番F〜Zを母材に配した
クラッドスラブを組立て、これらを1250℃に加熱
後、仕上温度940℃、巻取温度620℃で板厚4mm
まで熱間圧延し、910℃で熱延板焼鈍後、酸洗及び冷
間圧延を施し、1100℃で仕上焼鈍した後、酸洗及び
調質圧延することで、SUS304L相当鋼と低炭素鋼
からなる全厚0.8mmの薄板ステンレスクラッド鋼板
(合わせ材SUS304L相当鋼を母材低炭素鋼の表裏
面に配した3層クラッド鋼板,全厚に対する合わせ材の
厚さの比率:片側で10%)を作成し、母材組織の板厚
方向断面を観察して結晶粒の粗大化状況を調査した。ま
た、ポンチ径50mmで円筒深絞り成形を行って限界絞
り比(LDR)を測定するとともに、成形後の肌荒れ発
生状況も併せて調査した。 【0037】その結果を表6に示す。これによれば、母
材に鋼番F〜Rを配した本発明例(No.1〜No.1
3)のうち、C量が少なめの鋼番Fを母材に配したN
o.1では母材の結晶粒径は48μmとやや大きいが、
それ以外のものは結晶粒径が何れも40μm未満と小さ
く、上記No.1も含めて本発明例では母材組織の粗大
化が効果的に抑制されている。このため深絞り成形時の
肌荒れ発生もなく、また限界絞り比も2.2〜2.3と
高く、加工性にも優れている。 【0038】これに対し、母材に鋼番S〜Zを配した比
較例(No.14〜No.21)にあっては、母材に鋼
番Wを配したNo.18を除いて、母材組織は何れも結
晶粒径75μm以上に粗大化しており、このため深絞り
成形時に肌荒れを生じ表面性状が劣ている。なお、母材
に(Ti−3.4N)/4Cの値が0.6を下回る鋼番
Xを配したNo.19は、先に述べた通りステンレス鋼
との界面に母材結晶粒が著しく粗大化した粗粒化層を形
成していた。母材にN量が本発明範囲を超えた鋼番Wを
配したNo.18では、母材組織の粗大化はみられない
ものの、限界絞り比が1.65と低く、加工性に劣って
いる。また、母材にC量が本発明範囲を超えた鋼番Tを
配したNo.15も限界絞り比が1.75と低く、加工
性が劣っている。 【0039】 【表4】【0040】 【表5】 【0041】 【表6】【0042】 【発明の効果】以上述べた本発明によれば、高温焼鈍を
行った場合にも母材組織の粗大化を起こさず、加工時に
オレンジピール等の肌荒れを生じることのない薄板ステ
ンレスクラッド鋼板を提供できる。このため、強加工に
供される用途において、従来の薄板ステンレスクラッド
鋼板では肌荒れの発生を余儀なくされるような高温焼鈍
を行っても表面性状の劣化をきたすことがなく、製品歩
留まりの低下や無用なコスト上昇を招くことなく、優れ
た品質の薄板ステンレスクラッド鋼板を得ることができ
る。さらに、母材組織の粗大化が効果的に抑制されるた
め、表面性状を劣化させることなく、これまで以上の高
温焼鈍も可能となり、従来材に比べて加工性の向上も期
待できる。
或いは曲げ等の加工に供される素材として好適な薄板ス
テンレスクラッド鋼板に関する。 【0002】 【従来の技術】合わせ材にステンレス鋼、母材に炭素鋼
を配したステンレスクラッド鋼板は、ステンレス鋼の優
れた耐食性を安価に利用できることから、近年、薄板用
途においても鍋、釜等の厨房品や浴槽といった日常品を
はじめ、自動車、電機、建材等の各分野でもその需要が
増大しつつある。薄板ステンレスクラッド鋼板は、ほと
んどの場合に深絞りや張り出し或いは曲げ等の加工に供
されるため、耐食性に加えて加工性が品質上重要であ
り、このため母材には低炭素鋼が用いられるのが一般的
である。 【0003】薄板ステンレスクラッド鋼板の加工性も、
一般の冷延鋼板と同様、冷間圧延後の焼鈍温度に依存す
るところが大きいが、合わせ材ステンレス鋼と母材低炭
素鋼の再結晶、軟質化温度が大幅に異なるため、焼鈍温
度を合わせ材と母材のいずれにも適切となるように設定
するのが難しいという問題がある。具体的には、加工性
確保のために合わせ材ステンレス鋼の再結晶、軟質化を
優先し、高温焼鈍(例えば1000℃以上)を行った場
合には、母材低炭素鋼にとっては過度の焼鈍となり、結
晶粒が全体的に粗大化するとともに、ステンレス鋼との
界面に結晶粒が著しく粗大化した粗粒化層を生じること
があり、加工時にオレンジピール等の肌荒れとなって製
品の表面品質を損なう。 【0004】このような母材組織の粗大化とステンレス
鋼との界面における粗粒化層の生成という問題に関して
は、従来からもその対策が検討されており、例えば、特
開昭53−144454号、特開昭54−96459
号、特開昭62−124229号、特開昭63−699
42号等には、TiやNb等の炭窒化物形成元素を比較
的多量に添加することでCとNを炭窒化物として固定
し、これらの合わせ材への拡散を防止するとともに、こ
の炭窒化物自体の存在により粒界移動をピン止めし、粒
成長を抑えることで、母材組織の粗大化とステンレス鋼
との界面における粗粒化層の生成を防止しようとする技
術が開示されている。また、特開昭62−57786号
及び特開昭62−74025号には、Bを添加すること
で粒成長が抑制されることが述べられている。 【0005】これらの従来技術によれば、確かに母材組
織の粗大化やステンレス鋼との界面における粗粒化層の
生成をある程度抑えることができ、加工性に対する要求
がそれ程厳しくなく焼鈍温度が比較的低い場合にあって
は、オレンジピール等の肌荒れは回避することができ
る。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、強加工
に供されるため加工性に対する要求が厳しい場合には、
合わせ材ステンレス鋼の軟質化を促進させるため焼鈍温
度を1100℃近くまで上昇させる必要があり、このよ
うな場合には上記従来技術をもってしても母材結晶粒の
粗大化を十分に抑制することができない。その理由は、
従来技術のうちTiやNb等の炭窒化物形成元素を添加
する方法では、炭窒化物形成元素を比較的多量に添加す
るために炭窒化物が粗大に析出してしまい、このため粒
界移動に対するピン止め力が十分に得られず、またBを
単独添加する方法では、TiやNb等の炭窒化物形成元
素を添加する場合に比べてより一層粒成長に対する抑止
力が小さいためであり、このためステンレス鋼との界面
における粗粒化層の生成は回避できるものの、母材結晶
粒の全体的な粗大化は抑止できず、この結果オレンジピ
ール等の肌荒れを誘発し、製品歩留まりの低下を招いて
しまう。また、加工後に表面調整のための表面研磨を施
す用途においては、上記のような肌荒れが生じると重研
磨が必要となるためコスト上昇を招き、また肌荒れが特
に酷い場合には、研磨時に母材の一部が露出して耐食性
の劣化を招いたり、或いはこれを避けるために合わせ材
ステンレス鋼の厚みを大きくする必要を生じてコスト上
昇を招く等、問題が多い。 【0007】薄板ステンレスクラッド鋼板では、ステン
レス鋼との界面付近の母材結晶粒が粗大であると、加工
による母材結晶粒或いは結晶粒のコロニー単位の結晶回
転が合わせ材ステンレス鋼を通して凹凸となって顕在化
し、オレンジピール等の肌荒れを生じる。この場合、加
工度が大きい程結晶回転自体が大きくなって、これら肌
荒れを生じ易くなる。強加工に供される場合には高温焼
鈍を余儀なくされるのは上述した通りであるが、この場
合には高温焼鈍により母材結晶粒が粗大化することに加
えて、その加工度自体の影響が重畳される結果、肌荒れ
の発生は一層促進されることになる。 【0008】このように薄板ステンレスクラッド鋼板を
加工の厳しい用途に用いるために高温焼鈍を行った場合
には、母材結晶粒の粗大化、さらにはそれに加工度自体
の影響が重畳することにより、オレンジピール等の肌荒
れの問題を生じるが、上記従来技術ではこのような肌荒
れを適切に回避することができず、このため表面性状が
劣化して製品歩留まりの低下や研磨用途における耐食性
の低下、無用なコスト上昇等を招くといった問題を生じ
ていた。 【0009】したがって本発明の目的は、このような従
来技術の課題を解決し、強加工に供するために高温焼鈍
を行った場合でも母材結晶粒の粗大化を生じることがな
く、オレンジピール等の肌荒れがない優れた表面性状を
有する薄板ステンレスクラッド鋼板を提供することにあ
る。 【0010】 【課題を解決するための手段】本発明者らは、高温焼鈍
を行った際の母材結晶粒の粗大化を防止することができ
る母材低炭素鋼の組成について検討を重ね、その結果、
母材低炭素鋼中に炭窒化物形成元素であるTiを添加
し、C量とTi量並びに両者の含有量の関係を適正化す
るとともに、さらにBを複合添加することにより、高温
焼鈍における母材結晶粒の粗大化が顕著に抑制されるこ
とを見い出した。 【0011】本発明はこのような知見に基づきなされた
もので、その特徴とするところは、合わせ材がオーステ
ナイト系ステンレス鋼、母材が低炭素鋼からなる薄板ス
テンレスクラッド鋼板であって、母材低炭素鋼がC:
0.015〜0.06重量%、N:0.010重量%以
下、Ti:0.10〜0.40重量%、B:0.000
5〜0.0050重量%を含有し、且つ、 (Ti−3.4N)/4C≧0.6 Ti×C=2.8×(1/103)〜13.5×(1/103) 但し Ti:Ti含有量(重量%) N :N含有量(重量%) C :C含有量(重量%) を満足する成分組成を有することを特徴とする表面性状
に優れた薄板ステンレスクラッド鋼板である。 【0012】 【発明の実施の形態】以下、本発明の詳細をその限定理
由とともに説明する。合わせ材がオーステナイト系ステ
ンレス鋼、母材が低炭素鋼からなる薄板ステンレスクラ
ッド鋼板において、母材低炭素鋼中へのB添加による母
材結晶粒の粗大化抑制効果と、それに対するC量及びT
i量の影響を調査するため、表2に記載の鋼番A群〜D
群の鋼を溶製した。これらのうち、鋼番A群はC≒0.
034重量%、Ti≒0.11重量%でほぼ一定とし、
その他のSi、Mn、P、S、Sol.Al、Nもほぼ
一定とし、B量のみをtr.〜0.0025重量%の範
囲で変化させた一連の鋼である。また、鋼番B群はC≒
0.022重量%でほぼ一定とした以外は、鋼番A群と
同様の成分組成とした一連の鋼である。鋼番C群はC≒
0.055重量%、Ti≒0.21重量%でほぼ一定と
し、その他のSi、Mn、P、S、Sol.Al、Nも
ほぼ一定とし、B量のみをtr.〜0.0025重量%
の範囲で変化させた一連の鋼である。鋼番D群はTi≒
0.27重量%でほぼ一定とした以外は、鋼番C群と同
様の成分組成とした一連の鋼である。 【0013】これらの鋼を表1に記載のSUS304L
相当鋼と組み合わせ、母材低炭素鋼のB量とC量及びT
i量が異なる薄板ステンレスクラッド鋼板を作成し、B
添加による母材結晶粒の粗大化抑制効果と、それに対す
るC量及びTi量の影響を調査した。具体的には、表1
に記載のSUS304L相当鋼を合わせ材に、表2に記
載の鋼番A群〜D群を母材に配したクラッドスラブを組
立て、これらを1250℃に加熱後、仕上温度920
℃、巻取温度580℃で板厚3.4mmまで熱間圧延
し、930℃で熱延板焼鈍後、酸洗及び冷間圧延を施
し、1070℃で仕上焼鈍した後、酸洗及び調質圧延す
ることで、SUS304L相当鋼と低炭素鋼からなる全
厚0.6mmの薄板ステンレスクラッド鋼板(合わせ材
SUS304L相当鋼を母材低炭素鋼の表裏面に配した
3層クラッド鋼板,全厚に対する合わせ材の厚さの比
率:片側で15%)を作成し、母材組織の板厚方向断面
を観察して結晶粒の粗大化状況を調査した。 【0014】 【表1】 【0015】 【表2】 【0016】図1は、このようにして得られた母材結晶
粒の平均粒径を母材のB量との関係で整理して示したも
のである。これによれば、B無添加の場合には母材が鋼
番A群〜D群の何れであってもその結晶粒径は80〜9
0μmに達しており、母材組織の粗大化を生じている。
また、Ti量が略0.11重量%である鋼番A群及びB
群を母材に配したものと、Ti量が略0.21〜0.2
7重量%である鋼番C群及びD群を母材に配したものと
では母材結晶粒の平均粒径に大きな差はなく、粒径に対
するTiの効果がほぼ飽和していることも判る。 【0017】上記のようにB無添加の場合には母材結晶
粒の粒径は母材の鋼種によって大きく変化することはな
いが、Bを添加した場合には母材の鋼種によって母材結
晶粒の粒径に大きな差を生じるようになる。即ち、母材
に鋼番A群及びC群を配したものでは、B添加により細
粒化が促進され、Bが5ppm以上添加されると母材結
晶粒の粒径はともに30μm程度にまで減少し、母材組
織の粗大化が顕著に抑制されている。一方、鋼番B群及
びD群の場合には、Bを25ppmまで添加しても母材
結晶粒の粒径は70μm程度にしか減少せず、B添加に
よる母材組織の粗大化抑制効果は小さい。 【0018】ここで、B添加により母材結晶粒の粗大化
が顕著に抑制される鋼番A群及びC群の場合と、粗大化
抑制効果の小さい鋼番B群及びD群の場合を比較する
と、鋼番B群は鋼番A群に対してC量が、また鋼番D群
は鋼番C群に対してTi量がそれぞれ異なるだけであ
り、このことからしてBによる粗大化抑制効果に対する
C量及びTi量の影響が示唆される。そこで、この点を
明らかにするために、B量をB≒0.0012重量%で
ほぼ一定とした上で、C量及びTi量を各々0.015
〜0.06重量%、0.10〜0.40重量%の範囲で
変化させた表3に記載の鋼番E群(Si、Mn等の他の
成分は一定)の一連の鋼を母材として用い、図1に関す
る試験と同様の条件で3層の薄板ステンレスクラッド鋼
板を作成し、Bによる母材組織の粗大化抑制効果に対す
るC量とTi量の影響を調査した。なお、このC量とT
i量に関しては、本発明が規定する適正範囲(この限定
理由については後述する)内でその影響を調査した。ま
た、後述するように本発明ではC量、Ti量及びB量に
加えてN量及び(Ti−3.4N)/4Cについても適
正化する必要があり、鋼番E群はこれらも適正範囲とな
るように溶製を行った。 【0019】 【表3】 【0020】母材に上記鋼番E群の一連の鋼を配した際
の、母材結晶粒の粒径と母材のC量及びTi量との関係
を図2に整理して示す。これによれば、B添加による母
材組織の粗大化抑制効果は、母材のC量とTi量の積で
あるTi×Cの値に極めて強く依存し、Ti×Cの値が
2.8×(1/103)〜13.5×(1/103)とい
う特定の範囲にある場合にのみB添加による顕著な粗大
化抑制効果が得られ、母材結晶粒の粒径は30μm程度
と十分に細粒化する。一方、Ti×Cの値が2.8×
(1/103)未満と13.5×(1/103)超の範囲
では、母材結晶粒の粒径は略70μm以上と大きく、図
1に示したB無添加の場合の粒径80〜90μmと大差
ないレベルにあり、B添加による母材組織の粗大化抑制
効果はTi×Cの値が上記2.8×(1/103)〜1
3.5×(1/103)の範囲にある場合に比べて著し
く小さい。 【0021】このようにC量とTi量の相互の関係を、
Ti×Cの値が2.8×(1/103)〜13.5×
(1/103)の範囲となるよう適正化することによ
り、はじめてB添加による母材組織の粗大化抑制効果が
顕著に発揮されるため、本発明ではTi×Cの値を2.
8×(1/103)〜13.5×(1/103)の範囲と
規定する。上記のようにBによる母材組織の粗大化抑制
効果が、Ti×Cの値を通してC量とTi量の影響を受
ける理由については必ずしも明らかではないが、Ti×
Cの値が焼鈍中のTiCの再溶解挙動に影響を及ぼし、
TiCの再溶解によって生じる固溶C量を変化させ、こ
の固溶C量との関係で上記粗大化に対するBの効果の大
小が決定されるためであると考えられる。 【0022】すなわち、本発明ではTiが比較的多量に
添加されているため、焼鈍前においてはCのかなりの部
分がTiCとして固定されているが、焼鈍時の昇温中に
TiCは再溶解を生じる。このTiCの再溶解によって
母材マトリックス中にCが再固溶することになるが、こ
の固溶CとBの共存によって母材のα/γ変態点が変化
し、これが適正化された場合に母材組織が細粒化し、結
晶粒の粗大化が抑制されるものと考えられる。 【0023】焼鈍時の昇温中に母材フェライトは再結晶
を経た後粒成長を生じ、α/γ変態によりオーステナイ
トに変態した後再度粒成長し、このオーステナイトが冷
却中に再びフェライトに転じることで母材の組織形成は
終了するが、その際、α/γ変態点が高温であるか低温
であるかによって母材の結晶粒径は大きく変化する。す
なわち、α/γ変態点が高温であると、母材組織は高温
までフェライトのまま維持され粗大に成長する。その
後、このフェライトがオーステナイトへ変態し、次いで
フェライトに変態して最終組織を形成するが、変態の出
発点であるフェライトが粗大であるために変態後の組織
も粗大となり、母材組織の粗大化を招く。一方、α/γ
変態点が低温であると、焼鈍時の昇温中の早い時期にオ
ーステナイトが生成するとともに、冷却中の遅い時期ま
で組織がオーステナイトのまま維持されることになり、
この間の粒成長によりオーステナイトの粗大化を生じ
る。この粗大なオーステナイトよりフェライトが生成し
て最終組織を形成するため、α/γ変態点が高い場合と
同様、母材組織の粗大化を招く。これらに対し、α/γ
変態点が適当な温度にあると、上記α/γ変態点が高温
であったり低温であったりする場合にみられるオーステ
ナイトやフェライトの粗大化を生じることがないため、
母材組織が粗大化することはない。 【0024】このようにα/γ変態点を適正化すること
で母材組織の粗大化は抑制されるが、そのためには、α
/γ変態点に大きな影響をもつBを添加するとともに、
焼鈍時のTiCの再溶解挙動を制御し、TiCの再溶解
によって生じる固溶C量を適正化することが重要とな
る。その場合、Ti×Cの値は溶解度積との関係からT
iCの再溶解速度を変化させ、これによってB添加によ
る母材組織の粗大化抑制効果の有無を左右するものと考
えられる。すなわち、Ti×Cの値が本発明範囲である
2.8×(1/103)〜13.5×(1/103)の範
囲にあると、焼鈍時の昇温中のTiCの再溶解速度が適
正化されて固溶C量が適正となり、これがBの存在とと
もにα/γ変態点を適正化し、母材組織の粗大化が回避
される。これに対し、Ti×Cの値が2.8×(1/1
03)未満ではTiCの再溶解速度が遅いため、またT
i×Cの値が13.5×(1/103)超ではTiCの
再溶解速度が速いため、何れの場合も固溶C量が適正化
されず、B添加によるα/γ変態点の変化はあっても、
なおα/γ変態点が高温すぎたり、逆に低温すぎたりし
て母材組織の粗大化を防止できない。 【0025】本発明では、上記のようにTi×Cの値を
適正化することに加え、B量を適正化し、さらにはC量
及びTi量自体とN量並びに(Ti−3.4N)/4C
の値を適正化することも必要であり、これらのうち一つ
でも適正範囲から外れると、母材組織の粗大化や加工性
の劣化等を招き、本発明が意図する効果が得られない。
以下、それらの適正範囲について説明する。 【0026】Bの添加はα/γ変態点の適正化を通じて
母材組織の粗大化を抑制するが、この効果が発揮される
には、図1に示されるようにBを0.0005重量%以
上添加する必要があり、したがって、これをもって本発
明のB量の下限とする。一方B量が0.0050重量%
超では、母材組織の粗大化抑制効果が飽和するだけでな
く加工性が劣化するため、B量の上限は0.0050重
量%とする。 【0027】本発明ではTiが比較的多量に添加されて
いるため、焼鈍前においてはCのかなりの部分がTiC
として固定されており、この状態ではα/γ変態点に影
響を及ぼすことはほとんどない。Cの影響が顕在化する
のは焼鈍時であり、先に述べたように焼鈍時にTiCが
再溶解し、これによって固溶Cが供給されることを通じ
てα/γ変態点を適正化し、母材組織の粗大化防止に寄
与する。この焼鈍中に生成する固溶C量は上述したTi
×Cの値とともにC量自体に依存するため、C量の適正
化が必要となる。具体的には、Ti×Cの値が本発明条
件である2.8×(1/103)〜13.5×(1/1
03)の範囲にあったとしても、C量が0.015重量
%未満であると焼鈍前のTiC量が少ないために焼鈍時
のTiCの再溶解量が過少となり、固溶Cが十分に供給
されない結果、α/γ変態点が適正化されず、母材組織
の粗大化を生じる。一方、C量が0.06重量%を超え
ると、焼鈍前のTiC量が多いために焼鈍時のTiCの
再溶解量が過多となり、固溶Cが過剰に供給される結
果、C量が少ない場合と同様、α/γ変態点が適正化さ
れず、母材組織の粗大化を生じる。また、TiC量が少
ない場合には、TiC自体による粒界移動のピン止め力
が弱くなり、逆にTiC量が多いと、TiC自体により
加工性が劣化してしまう。こうした点から、C量は0.
015〜0.06重量%の範囲とする必要があり、これ
をもって本発明のC量の範囲とする。なお、C量の下限
に関しては、これを0.020重量%にすると母材組織
の粗大化が一層抑制されるため、より好ましい。 【0028】TiもCと同様、TiCの生成を通じてα
/γ変態点の適正化に寄与するため重要な成分である
が、Ti量の適正範囲は焼鈍時のTiCの再溶解挙動よ
りも、むしろ焼鈍時の粒界移動に対するピン止め力とコ
ストの面から規定される。TiCの生成はTiの拡散律
速であるため、Ti量が少ないと析出するTiCが小さ
くなり、焼鈍時の昇温中のかなり早い時期に再溶解を開
始し、この結果、母材結晶粒の粒界移動に対するピン止
め力が不十分となって母材組織の粗大化を生じてしま
う。一方、Ti量が過剰であると連続鋳造ができなくな
り、製鋼コストが増大する。これらの問題を回避するに
は、Ti量を0.10〜0.40重量%とする必要があ
り、このため本発明ではこれをもってTi量の範囲とす
る。 【0029】Ti量との関係でNは全てTiNとして固
定され、またTiNは焼鈍温度が高温であってもTiC
のように再溶解することがないため、α/γ変態点の適
正化には寄与しない。しかし、N量が過剰であるとTi
Nが増加しすぎるために加工性が劣化するので、Nは
0.010重量%以下とする必要がある。 【0030】TiとCの当量比が1を下回り、Cの全量
がTiCとして固定されず焼鈍前に一部固溶Cとして存
在する場合には、この固溶Cが焼鈍時の昇温中のかなり
早い時期に合わせ材であるステンレス鋼に拡散し、従来
技術に関しても述べたように、これが引き金となってス
テンレス鋼との界面に母材結晶粒が著しく粗大化した粗
粒化層を形成し、加工時にオレンジピール等の肌荒れを
誘発する。さらに、合わせ材ステンレス鋼に拡散したC
によって合わせ材の耐食性も劣化する。これらを防止す
るためにはTiとCの当量比を0.6以上とする必要が
あり、このため本発明では(Ti−3.4N)/4Cの
値を0.6以上と規定する。なお、(Ti−3.4N)
/4Cの値が0.6以上であれば、Ti×Cの値をはじ
めとして本発明が規定する各適正数値範囲は、(Ti−
3.4N)/4Cの値に依存して変化することがないこ
とを実験的に確認した。これは、焼鈍前にある程度固溶
Cが存在していても、上記のようにこの固溶Cは焼鈍時
の昇温中のかなり早い時期に合わせ材ステンレス鋼に拡
散してしまうため、α/γ変態点の適正化に何ら関与し
ないためであると考えられる。 【0031】なお、TiとBを複合添加する技術そのも
のは特開平5−5190号等にも開示されているが、こ
れらの従来技術では本発明が要件とするC量とTi量並
びにC量とTi量の相互関係が適正化されておらず、上
述の説明からも明らかなように本発明が意図するような
母材結晶粒の粗大化抑制効果は得られない。 【0032】本発明が目的とする優れた表面性状は、母
材に配する鋼の成分を上記のように適正化することで得
られるため、優れた表面性状を得るという観点からはS
iやMn等の他の成分の含有量を特段適正化する必要は
なく、この種の母材低炭素鋼に通常採用される成分に準
じた成分組成、すなわち、Si≦0.5重量%、Mn≦
1.5重量%、P≦0.1重量%、S≦0.03重量
%、sol.Al:0.005〜0.10重量%程度の
成分組成でよい。残部は実質的にFeからなり、したが
って不可避不純物等を含めた微量の成分元素が含まれる
ことは妨げない。また、母材の製造方法も常法に従えば
よく、またその板厚構成等も特に制限はない。 【0033】合わせ材の種類については、薄板ステンレ
スクラッド鋼板に広く用いられているオーステナイト系
ステンレス鋼とするが、鋼種は特に規定の必要はなく、
汎用鋼種であるSUS304やSUS304Lであって
もよいし、要求特性や用途に応じてその他の鋼種を用い
てもよい。合わせ材の厚みやクラッド比についても特別
な制約はなく、耐食性や高級感等を重視する場合には合
わせ材の厚みを増加させればよい。また、加工後の研磨
工程の都合で適宜合わせ材の厚みを変えることも可能で
あり、コストを重視する場合には合わせ材の厚みを小さ
くしてもよい。 【0034】このように合わせ材の厚みやクラッド比は
通常の範囲で適宜選択できるが、その好適な範囲とし
て、例えば母材の表裏面に合わせ材を配した3層クラッ
ド鋼板にあっては、全厚に対する合わせ材の厚みの比率
が片側当たり3〜25%程度とすることを例示できる。
この比率が3%未満では耐食性が劣化したり、オレンジ
ピール等の肌荒れがなくとも加工後の研磨工程で一部母
材が露出したりする恐れがあり、一方、25%を超える
と製品コストが上昇するためクラッド化自体の意味がな
くなる。このため合わせ材の全厚に対する厚みの比率は
片面当り3〜25%程度が目安となる。 【0035】本発明では、母材成分の適正化により表面
性状の劣化を招くことなく優れた加工性や耐食性を具現
できるため、クラッド鋼板の層構成にも特別な制約はな
い。すなわち、本発明は先に例示した3層クラッド鋼板
に限らず、例えば5層以上の多層クラッド鋼板にも適用
可能であり、また、最終製品として、ステンレス鋼とア
ルミニウム或いはアルミニウム合金からなるクラッド薄
板と本発明による薄板ステンレスクラッド鋼板を組み合
わせてもよい。 【0036】 【実施例】表1に記載のSUS304L相当鋼を合わせ
材に、表4及び表5に記載の鋼番F〜Zを母材に配した
クラッドスラブを組立て、これらを1250℃に加熱
後、仕上温度940℃、巻取温度620℃で板厚4mm
まで熱間圧延し、910℃で熱延板焼鈍後、酸洗及び冷
間圧延を施し、1100℃で仕上焼鈍した後、酸洗及び
調質圧延することで、SUS304L相当鋼と低炭素鋼
からなる全厚0.8mmの薄板ステンレスクラッド鋼板
(合わせ材SUS304L相当鋼を母材低炭素鋼の表裏
面に配した3層クラッド鋼板,全厚に対する合わせ材の
厚さの比率:片側で10%)を作成し、母材組織の板厚
方向断面を観察して結晶粒の粗大化状況を調査した。ま
た、ポンチ径50mmで円筒深絞り成形を行って限界絞
り比(LDR)を測定するとともに、成形後の肌荒れ発
生状況も併せて調査した。 【0037】その結果を表6に示す。これによれば、母
材に鋼番F〜Rを配した本発明例(No.1〜No.1
3)のうち、C量が少なめの鋼番Fを母材に配したN
o.1では母材の結晶粒径は48μmとやや大きいが、
それ以外のものは結晶粒径が何れも40μm未満と小さ
く、上記No.1も含めて本発明例では母材組織の粗大
化が効果的に抑制されている。このため深絞り成形時の
肌荒れ発生もなく、また限界絞り比も2.2〜2.3と
高く、加工性にも優れている。 【0038】これに対し、母材に鋼番S〜Zを配した比
較例(No.14〜No.21)にあっては、母材に鋼
番Wを配したNo.18を除いて、母材組織は何れも結
晶粒径75μm以上に粗大化しており、このため深絞り
成形時に肌荒れを生じ表面性状が劣ている。なお、母材
に(Ti−3.4N)/4Cの値が0.6を下回る鋼番
Xを配したNo.19は、先に述べた通りステンレス鋼
との界面に母材結晶粒が著しく粗大化した粗粒化層を形
成していた。母材にN量が本発明範囲を超えた鋼番Wを
配したNo.18では、母材組織の粗大化はみられない
ものの、限界絞り比が1.65と低く、加工性に劣って
いる。また、母材にC量が本発明範囲を超えた鋼番Tを
配したNo.15も限界絞り比が1.75と低く、加工
性が劣っている。 【0039】 【表4】【0040】 【表5】 【0041】 【表6】【0042】 【発明の効果】以上述べた本発明によれば、高温焼鈍を
行った場合にも母材組織の粗大化を起こさず、加工時に
オレンジピール等の肌荒れを生じることのない薄板ステ
ンレスクラッド鋼板を提供できる。このため、強加工に
供される用途において、従来の薄板ステンレスクラッド
鋼板では肌荒れの発生を余儀なくされるような高温焼鈍
を行っても表面性状の劣化をきたすことがなく、製品歩
留まりの低下や無用なコスト上昇を招くことなく、優れ
た品質の薄板ステンレスクラッド鋼板を得ることができ
る。さらに、母材組織の粗大化が効果的に抑制されるた
め、表面性状を劣化させることなく、これまで以上の高
温焼鈍も可能となり、従来材に比べて加工性の向上も期
待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】母材中のB量と母材結晶粒の平均粒径との関係
を示すグラフ 【図2】母材中のTi×Cの値と母材結晶粒の平均粒径
との関係を示すグラフ
を示すグラフ 【図2】母材中のTi×Cの値と母材結晶粒の平均粒径
との関係を示すグラフ
フロントページの続き
(72)発明者 高野 俊夫
東京都千代田区丸の内一丁目1番2号
日本鋼管株式会社内
(72)発明者 崎山 哲雄
東京都千代田区丸の内一丁目1番2号
日本鋼管株式会社内
(72)発明者 松野 隆
東京都千代田区丸の内一丁目1番2号
日本鋼管株式会社内
(56)参考文献 特開 平6−158221(JP,A)
特開 平4−143248(JP,A)
特開 平5−5156(JP,A)
(58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名)
C22C 38/00 - 38/60
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 合わせ材がオーステナイト系ステンレス
鋼、母材が低炭素鋼からなる薄板ステンレスクラッド鋼
板であって、母材低炭素鋼がC:0.015〜0.06
重量%、N:0.010重量%以下、Ti:0.10〜
0.40重量%、B:0.0005〜0.0050重量
%を含有し、且つ、 (Ti−3.4N)/4C≧0.6 Ti×C=2.8×(1/103)〜13.5×(1/103) 但し Ti:Ti含有量(重量%) N :N含有量(重量%) C :C含有量(重量%) を満足する成分組成を有することを特徴とする表面性状
に優れた薄板ステンレスクラッド鋼板。
Priority Applications (1)
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JP25274597A JP3409660B2 (ja) | 1997-09-02 | 1997-09-02 | 表面性状に優れた薄板ステンレスクラッド鋼板 |
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JP25274597A JP3409660B2 (ja) | 1997-09-02 | 1997-09-02 | 表面性状に優れた薄板ステンレスクラッド鋼板 |
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ID=17241696
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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- 1997-09-02 JP JP25274597A patent/JP3409660B2/ja not_active Expired - Fee Related
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JPH1180883A (ja) | 1999-03-26 |
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