JP3409471B2 - アルミニウム系金属材料の表面処理方法 - Google Patents

アルミニウム系金属材料の表面処理方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はアルミニウム系金属材料
の表面処理方法の改良に関するものである。さらに詳し
くいえば、本発明は、アルミニウム系金属材料の表面
に、良好な耐食性、防錆性、塗膜密着性をもたらす化成
皮膜を効果的に形成することができ、しかも従来法に比
べて処理中に有害なミストの発生が少ない上、排水の公
害性も著しく小さく、環境汚染の面で有利なアルミニウ
ム系金属材料の表面処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】アルミニウムは軽量性、塑性加工性、耐
食性に優れ、かつ電気・熱伝導性が良好であるなど、金
属として多くの優れた特性を有することが知られてい
る。また、このアルミニウムに、銅、マンガン、亜鉛、
ケイ素、マグネシウム、リチウム、ニッケル、クロム、
マンガン、ジルコニウムなどを加え合金化したものは、
固溶体硬化、加工効果、時効硬化などによって、常温並
びに高温において機械的性質が著しく増大する上、耐食
性、耐摩耗性、低熱膨張係数、展延性などが改良され、
例えば家庭用品や飲料用缶などをはじめ、自動車、車
両、船舶、航空・宇宙、土木・建築などの分野において
幅広く用いられている。
【0003】しかしながら、このようなアルミニウムや
その合金から成るアルミニウム系金属材料は、大気中で
酸化して薄い酸化皮膜で覆われ、塗装しにくく塗膜の密
着性が低下する上、海水や塩化物水溶液に対する耐食性
に劣り、かつ塩酸、硫酸、硝酸などの酸や水酸化ナトリ
ウムなどのアルカリに溶けやすいなどの欠点を有してい
る。
【0004】このため、アルミニウム系金属材料の耐食
性、防錆性、塗膜密着性を向上させるために、従来、六
価クロム酸塩を主成分とする強酸性の水溶液を用いて、
アルミニウム系金属材料の表面処理を行い、その表面に
化成皮膜を形成させることが行われているが、この方法
は、取り扱いにくい強酸性液を用いなければならない、
六価クロムを含有する有害なミストを発生する、六価ク
ロムを含有する廃液による環境汚染をもたらすなどの欠
点を有している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような
従来のアルミニウム系金属材料の表面処理方法が有する
欠点を克服し、アルミニウム系金属材料の表面に、良好
な耐食性、防錆性、塗膜密着性をもたらす化成皮膜を効
果的に形成することができ、しかも処理中に有害な生成
物の発生を伴わないアルミニウム系金属材料の表面処理
方法を提供することを目的としてなされたものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者は、前記目的を
達成するために鋭意研究を重ねた結果、六価クロムの排
出基準が0.5mg/リットルであるのに対し、マンガ
ンの排出基準が10mg/リットル(鉄の排出基準と同
じ)であり、マンガンは環境に極めてやさしいことに着
目し、過マンガン酸カリウムやマンガン酸カリウムを所
定の割合で含有し、かつ化成皮膜形成促進剤を所定の割
合で含有する水溶液を用いて、アルミニウム系金属材料
を表面処理することにより、その目的を達成しうること
を見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至っ
た。
【0007】すなわち、本発明は、過マンガン酸カリウ
ム又はマンガン酸カリウムあるいはその両方を1〜20
0g/リットルの割合で含有し、かつ化成皮膜形成促進
としてケイフッ化物の中から選ばれた少なくとも1種
を1〜10g/リットルの割合で含有する水溶液中に、
アルミニウム系金属材料を浸せきしてその表面に化成皮
膜を形成させることを特徴とするアルミニウム系金属材
料の表面処理方法を提供するものである。
【0008】本発明において、処理しうるアルミニウム
系金属材料は、金属アルミニウムやその合金から成る金
属材料である。金属アルミニウム(1000系)として
は、純度99.99%より高い高純度アルミニウムと1
%までの不純物と少量の添加元素を含む工業用純アルミ
ニウムがある。またアルミニウム合金としては、例えば
Al−Si合金系(4000系)、Al−Mn合金系
(3000系)、Al−Mn−Mg合金系(3000
系)、Al−Mg合金系(5000系)、Al−Cu合
金系(2000系)、Al−Cu−Mg合金系(200
0系)、Al−Mg−Si合金系(6000系)、Al
−Zn−Mg合金系(7000系)、Al−Zn−Mg
−Cu合金系(7000系)、Al−Li合金系(80
00系、2000系)などが挙げられる。本発明方法
は、これらのアルミニウム系金属材料のいずれに対して
も適用することができる。
【0009】本発明においては、前記アルミニウム系金
属材料の表面処理に、処理液として、過マンガン酸カリ
ウム又はマンガン酸カリウムあるいはその両方を1〜2
00g/リットル、好ましくは3〜50g/リットルの
割合で含有し、かつ化成皮膜形成促進剤としてケイフッ
化物の中から選ばれた少なくとも1種を1〜10g/リ
ットルの割合で含有する水溶液が用いられる。この含有
量が1g/リットル未満では化成皮膜が形成されにくい
し、200g/リットルを超えると過マンガン酸カリウ
ムやマンガン酸カリウムが溶解しにくくなる。
【0010】成皮膜形成促進剤のケイフッ化物として
は、例えばMnSiF6、MgSiF6などが用いられ
【0011】これらの化成皮膜形成促進剤はそれぞれ単
独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いても
よく、またその含有量1〜10g/リットルの範囲で
選ばれる。この含有量が10g/リットルを超えるとそ
の量の割には皮膜形成促進効果の向上があまり認められ
ない
【0012】本発明においては、このようにして調製さ
れた処理液中にアルミニウム系金属材料を浸せきして、
その表面に化成皮膜を形成させる。その際、処理液の温
度については特に制限はないが、20〜60℃の範囲が
好ましい。また、浸せき時間は、過マンガン酸カリウム
やマンガン酸カリウムの濃度、所望により用いられる化
成皮膜形成促進剤の種類や濃度、処理温度などにより異
なり、一概に決めることはできないが、通常1〜60分
間程度で十分である。浸せき処理後は、ただちに水洗
し、乾燥することにより、表面に化成皮膜が形成された
アルミニウム系金属材料が得られる。
【0013】
【発明の効果】本発明によると、アルミニウム系金属材
料の表面に良好な耐食性、防錆性、塗膜密着性をもたら
す化成皮膜を効果的に形成することができ、しかも従来
法に比べて処理中に有害なミストの発生が少ない上、排
水の公害性も著しく小さく、環境汚染の面で有利であ
る。
【0014】
【実施例】次に、実施例により本発明をさらに詳細に説
明する。
【0015】実施例1 アルミニウム系金属材料として、工業用純アルミニウム
展伸材「1100」(Si、Fe:1.0%、Cu:
0.05〜0.20%、Mn:0.05%、Zn:0.
10%、Al:99.00%以上)を用いた。このアル
ミニウム展伸材の試験片(50×50×2mm)に脱脂
及び酸洗浄の前処理を施したのち、これを、50℃に保
持したKMnO4100g/リットル及びMnSiF 6
又はMgSiF 6 5g/リットルを含有する水溶液中
に、分間浸せきして、表面に化成皮膜を形成させた。
次いで、この試験片をただちに水洗し、さらに60℃の
温水中に浸せきしたのち、乾燥した。この際、皮膜の形
成過程を観察したところ、浸せき後、約30秒経過した
時点から皮膜の形成が認められ、化成皮膜形成促進剤を
加えない場合に比べて、皮膜形成が著しく促進されるこ
とが分った。
【0016】このようにして、化成皮膜を形成させたア
ルミニウム展伸材試験片について、耐食性、塗膜の密着
性及び塗装板の耐食性を評価した。 (1)耐食性 化成皮膜を形成させたアルミニウム展伸材試験片を、室
温に保持した塩化ナトリウム5重量%水溶液中に浸せき
し、錆が発生するまでの時間によって耐食性を評価した
ところ、120時間で一部錆の発生が認められた。
【0017】(2)塗膜密着性及び塗装板の耐食性 化成皮膜を形成させたアルミニウム展伸材試験片に、ま
ずプライマーとしてエポキシ系塗料を乾燥膜厚が20μ
mになるように塗布し、150℃で20分間焼付けたの
ち、アクリル系塗料を乾燥膜厚が30μmになるように
塗布し、150℃で20分間焼付けることにより、2層
仕上げとした。
【0018】この塗装板について、セロテープを用いる
碁盤目試験法によって、塗膜密着性を評価したところ、
基材からなんら塗膜の剥離が認められず、密着性は極め
て優れたものであった。さらに、同一塗装板を用いて、
試料下部に素地まで達するクロスカットを施し、5重量
%塩化ナトリウム水溶液を用いた塩水噴霧試験法(JI
S Z−2371)により、表面へのブリスター(塗膜
のふくれ)発生とクロスカット部での塗膜の剥離を観察
したところ、連続塩水噴霧を2,000時間行っても、
表面及びクロスカット部に変化が認められず、クロスカ
ット部からの塗膜剥離も生じなかった。
【0019】比較例1 実施例1と同一のアルミニウム展伸材試験片を用い、従
来工業的に実施されているアルミニウム系金属材料防食
処理を重クロム酸塩‐硝酸浴によって行い、化成皮膜を
形成させた。
【0020】このようにして、化成皮膜を形成させたア
ルミニウム展伸材試験片について、実施例1と同様の試
験法により耐食性、塗膜の密着性及び塗装板の耐食性を
評価した。 (1)耐食性 約24時間で一部錆の発生が認められた。 (2)塗膜の密着性及び塗装板の耐食性 連続塩水噴霧試験240時間で、表面に多数のブリスタ
ー(塗膜のふくれ)の発生が認められ、またクロスカッ
ト部の塗膜剥離が顕著であった
【0021】実施例 実施例1において、工業用純アルミニウム展伸材「11
00」の代わりに、Al−Si合金ダイカスト板「AC
4C」(Si:6.5〜7.5%、Fe:0.55%、
Cu:0.25%、Mn:0.35%、Mg:0.25
〜0.45%、Zn:0.35%、Ni:0.10%、
Ti:0.20%、Pb:0.10%、Sn:0.05
%、Cr:0.10%、Al:残部)を用いた以外は、
実施例1と同様にして化成皮膜を形成させた。
【0022】このようにして、化成皮膜を形成させたA
l−Si合金ダイカスト板試験片について、実施例1と
同様の試験法により耐食性、塗膜の密着性及び塗装板の
耐食性を評価した。 (1)耐食性 約120時間で一部錆の発生が認められた。 (2)塗膜の密着性及び塗装板の耐食性 実施例1と同様の結果が得られた。
【0023】比較例2 実施例5と同じAl−Si合金ダイカスト板を用い、比
較例1と同様にして化成皮膜を形成させ、耐食性、塗膜
の密着性及び塗装板の耐食性を評価した。 (1)耐食性 約120時間で一部錆の発生が認められた。 (2)塗膜の密着性及び塗装板の耐食性 連続塩水噴霧試験1000時間で、表面に多数のブリス
ター(塗膜のふくれ)の発生が認められ、またクロスカ
ット部の塗膜剥離が顕著であった。
【0024】実施例 実施例1において、工業用純アルミニウム展伸材「11
00」の代わりに、Al−Cu合金展伸材「2011」
(Si:0.40%、Fe:0.7%、Cu:5.0〜
6.0%、Zn:0.30%、Pb:0.20〜0.6
%、Bi:0.20〜0.6%、Al:残部)を用いた
以外は、実施例1と同様にして化成皮膜を形成させた。
【0025】このようにして、化成皮膜を形成させたA
l−Cu合金展伸材試験片について、実施例1と同様の
試験法により耐食性、塗膜の密着性及び塗装板の耐食性
を評価した。 (1)耐食性 約120時間で一部錆の発生が認められた。 (2)塗膜の密着性及び塗装板の耐食性 実施例1と同様の結果が得られた。
【0026】比較例3 実施例と同じAl−Cu合金展伸材を用い、比較例1
と同様にして化成皮膜を形成させ、耐食性、塗膜の密着
性及び塗装板の耐食性を評価した。 (1)耐食性 約120時間で一部錆の発生が認められた。 (2)塗膜の密着性及び塗装板の耐食性 連続塩水噴霧試験1000時間で、表面に多数のブリス
ター(塗膜のふくれ)の発生が認められ、またクロスカ
ット部の塗膜剥離が顕著であった。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 過マンガン酸カリウム又はマンガン酸カ
    リウムあるいはその両方を1〜200g/リットルの割
    合で含有し、かつ化成皮膜形成促進剤としてケイフッ化
    物の中から選ばれた少なくとも1種を1〜10g/リッ
    トルの割合で含有する水溶液中に、アルミニウム系金属
    材料を浸せきしてその表面に化成皮膜を形成させること
    を特徴とするアルミニウム系金属材料の表面処理方法。
  2. 【請求項2】 ケイフッ化物が、MnSiF 6 又はMg
    SiF 6 である請求項1記載のアルミニウム系金属材料
    の表面処理方法。
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