JP3401471B2 - モノキノン化合物の製造方法 - Google Patents

モノキノン化合物の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、モノキノン化合物
の製造方法に関し、詳しくは化学工業、食品産業、環境
関連産業などの分野において有用なビスフェノール類を
酸化してモノキノン化合物を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】酸化試薬フレミー塩によって下記の式
(3)で表されるビスフェノールAを酸化すると、式
(4)で表されるモノキノン化合物の1種が低収率で生
成することは知られている。
【0003】
【化3】
【0004】
【化4】
【0005】しかしながら、この反応は、有機溶媒を使
用すること、試薬が爆発性を有すること等の理由から、
工業的に不利であり、環境に対する負荷も大きいという
問題がある。また、反応制御が困難で、酸化の進みすぎ
た式(5)で表されるビスキノン化合物の生成が避けら
れないという問題も抱えている。
【0006】
【化5】
【0007】モノキノン化合物は、その他の一般的な酸
化試薬によっても合成することが可能であると考えられ
る。しかし、フレミー塩による結果から、ビスキノン化
合物の副生を避けてモノキノン化合物のみを製造するこ
とは、試薬の量を変えたり、極めて精密な反応制御をも
ってしても困難であると考えられる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明において原料と
して用いることのできるビスフェノールAは、内分泌攪
乱作用が指摘されながら大量に製造され、合成樹脂原料
等として化学工業で利用されている物質である。そのた
め、環境中に既に大量のビスフェノールAが放出されて
おり、湖沼水などを汚染している他、包装資材から食品
へ移行することも報告されている。ビスフェノールAと
類似の構造を有する化合物は種々知られており、いずれ
も生態系に対する影響が懸念されている。このような状
況下、環境修復のための基盤技術として、このような低
濃度で存在するビスフェノール類を原料として用い、新
たな環境負荷を与えずに付加価値の高い物質を製造でき
る方法の開発が求められている。
【0009】ビスフェノールAは、2つのフェノール構
造を有した化合物である。フェノール類の一般的な化学
反応として、酸化反応が最も良く知られているが、ビス
フェノールAの酸化反応性は必ずしも高くはない。例え
ば、アルカリ水溶液中、酸素雰囲気で加熱しても、ほと
んど変化せず、フェノールの酸化触媒として知られてい
るサレンコバルト錯体存在下においても、酸素酸化をほ
とんど受けない。これは、化合物の立体障害や反応生成
物による触媒の被毒によるためと考えられる。
【0010】本発明者らは、環境ホルモン物質が食品中
でどのような化学反応を起こすのか研究する過程で、上
記のような知見を得る一方で、ある種の食品中に含まれ
る酵素が効果的にビスフェノールAを消去することを発
見した。この反応は、室温でほぼ中性の条件下で進行
し、反応生成物の解析から、ビスフェノールAの一方の
ヒドロキシフェニル基が酸化を受けたモノキノン化合物
(前記式(4)で表される)であることを明らかにし
た。
【0011】式(4)で表されるモノキノン化合物は既
知であり、一般的なフェノールの酸化剤であるフレミー
塩によってビスフェノールAを酸化しても得られること
が知られていた。そこで、本発明者らは、この物質の標
品を得るために、同じ反応を試みたところ、試薬の量を
変化させても反応収率が十分に上がらないという事実を
見つけた。式(4)で表されるモノキノン化合物は、フ
ェノール性水酸基を有していることから、さらに酸化反
応が進んでいるのではないかと考え、反応生成物を詳細
に調べたところ、文献未載のビスキノン化合物(前記の
式(5)で表される)が副生していることを見出した。
【0012】酵素反応においても、同様に反応時間の延
長や酵素の追加によって上記のビスキノン化合物(5)
が生成することが期待されたが、それ以上酸化反応は進
行せず、常にモノキノン化合物(4)しか生成しなかっ
た。本発明者らは、これらの知見を基に、酵素を用いた
酸化反応がフェノール構造とキノン構造を併せ持つ化合
物の製造に利用できるものと考えて、検討を重ね本発明
に到達した。したがって、本発明の目的は、ビスフェノ
ール構造を有する化合物の原料として、フェノール構造
とキノン構造を併せ持つ化合物を酵素反応を利用して効
率的に製造する方法を確立することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は一般
式(1)で表されるビスフェノール化合物に、ポリフェ
ノールオキシダーゼの存在下、酸素を作用させることを
特徴とする一般式(2)で表されるモノキノン化合物の
製造方法に関するものである。
【0014】
【化6】 (式中、R 1 およびR 2 は低級アルキル基を示す。)
【0015】
【化7】 (式中、R 1 およびR 2 は低級アルキル基を示す。)
【0016】さらに、本発明は環境ホルモン物質である
ビスフェノール類を、請求項1記載の方法を利用して低
減化する方法に関する。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明で原料として用いる一般式
(1)で表されるビスフェノール化合物は、分子内に反
応点となるフェノール性水酸基を2つ有している。そこ
で、上記の課題を解決するためには、一方のフェノール
構造がキノンへ酸化した時点で、反応を終了させる必要
がある。フェノールの酸化反応は、アルカリ存在下もし
くはサレンコバルト錯体存在下の分子状酸素による方法
が良く知られているが、ビスフェノール化合物の場合、
反応が全く進行しなかったり、極めて初期の段階で停止
してしまう。これは、化合物の立体的な要因や、生成し
たキノン体による触媒の強力な被毒が原因と見られる。
【0018】より強力な酸化剤として、フレミー塩とし
て知られるニトロソ化合物が知られており、これを用い
ることにより酸化反応は進行する。しかし、この場合
は、反応制御が困難であり、反応率を上げようとする
と、分子内の両方のフェノールが酸化されたビスキノン
体の生成が避けられなくなる。これは、原料であるビス
フェノール化合物と生成物であるモノキノン化合物(前
記式(2)で表され、これはモノフェノール化合物でも
ある)を試薬が区別することができないことが原因であ
る。より詳細には、ビスフェノール化合物をモノキノン
化合物へ酸化する反応速度と、モノキノン化合物をビス
キノン化合物へ酸化する反応速度に大きな差がないため
と言える。
【0019】本発明では、酵素を利用することによっ
て、一見困難に見える上記課題を解決することに成功し
た。すなわち、酵素の存在下、酸素によってビスフェノ
ール化合物を酸化すれば、ビスキノン化合物を全く生成
することなく、モノキノン化合物のみを得ることができ
る。この理由としては、酵素が一般的に有している高い
基質特異性を挙げることができる。すなわち、ビスフェ
ノール化合物は酵素の基質となり得るが、モノキノン化
合物は基質となり得ないためである。
【0020】本発明では、より一般化されたビスフェノ
ール化合物を原料とすることができるが、このことを説
明するためには、酵素の反応性を単なる基質特異性とし
て片付けることはできない。原料であるビスフェノール
化合物にも生成物であるモノキノン化合物にも、フェノ
ール構造が含まれているのに、なぜ酵素がモノキノン化
合物を基質とすることができないか明らかにする必要が
ある。本発明者らは、反応系に加える酵素の量が少ない
と、原料が残っているのに反応が途中で停止してしまう
こと、大過剰の酵素を用いたことにより原料が消失して
も、モノキノン体はビスキノン体へと酸化されないこと
等の知見から、本酵素反応の特異性について以下のよう
に考察した。
【0021】まず、ビスフェノール化合物の一方のフェ
ノール構造が酵素の反応中心に結合し、酵素による酸化
を受けてキノン構造に変化する。生成したモノキノン体
は、活性中心から離れるが、反応系内に蓄積すること
で、未反応のビスフェノール化合物に対し、拮抗的に酵
素反応を阻害する。モノキノン体による酵素反応の阻害
は、分子のキノン構造に由来するものと考えられ、反応
速度の低下や、反応率の頭打ちをもたらす。しかし、キ
ノン構造による阻害は、分子間においては不完全である
ため、酵素の使用量を増やしたり、分割添加することに
よって、ほぼ全量のビスフェノール化合物をモノキノン
体へと酸化することがてきる。
【0022】一方、モノキノン体の持っているフェノー
ル構造が酸化されないのは、同一分子内のキノン構造に
よる阻害が原因と考えられる。すなわち、モノキノン体
の持つフェノール構造が、たまたま酵素の活性中心に先
に近付いて結合しても、同じ分子内でごく近傍に存在す
るキノン構造が、活性中心とのより強い結合能を持つた
め、活性中心との結合部位がキノン構造に置き換わって
しまい、反応が進まないものと考えられる。
【0023】前記したように、本発明で用いることがで
きる原料は、一般式(1)で表されるビスフェノール化
合物である。この化合物において、水酸基の位置は、両
方がパラ位もしくはメタ位、あるいはパラ位とメタ位の
組み合わせである。また、R 1,R2 はアルキル基を指
し、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基などの
低級アルキル基である。
【0024】次に、酵素としては、モノフェノールを酸
素によってキノンへ酸化することができるものであれば
よく、具体的にはポリフェノールオキシダーゼがある。
【0025】本発明の方法は、酵素存在下、原料物質と
酸素を接触させることができれば、いかなる形態で行っ
ても良いが、例えば原料を溶解した緩衝液に酵素を添加
して行う方法は好ましい方法の一つである。この場合、
温度やpHは酵素が活性を保つ範囲であればよく、その
範囲は用いる酵素の由来によって異なる。例えば、マッ
シュルーム由来の市販酵素であれば、pH6−7のリン
酸緩衝液中で20−30℃程度の温度で行う方法は最も
良好な条件である。しかし、概ね4−50℃、pH4−
8の条件であれば、反応は進行する。
【0026】原料の濃度、酵素の濃度等については特に
制限はないが、生成物が酵素反応を阻害する場合は、一
般に酵素を徐々に添加したり、酵素を過剰に用いること
が反応率を高める上で有効であることが知られている。
したがって、本発明においても、反応率を高めるために
は、原料濃度を減らして酵素量を増やすことは良い方法
である。本発明は、酵素を利用することによって、低濃
度の水溶液中の原料を変換できること、反応に際して副
生成物が生じないこと等の大きな特色を有している。こ
れらの特色を活かすならば、低濃度の原料に大過剰の酵
素を作用させるような条件を設定することも可能であ
る。例えば、数ppmという希薄な原料を含む水溶液に
対して、反応を行うことも可能である。反応が進行する
上で、酸素の存在は必須であるが、反応系を大気圧下で
開放する場合、反応液の酸素濃度は空気中の酸素分圧
(約0.2atm)と平衡にあるため、反応の進行によ
って一時的に反応液の酸素濃度が低下しても空気中の酸
素が溶け込んで補われる。それ故、特に酸素を加える必
要はない。しかし、反応速度を高めたい場合や、基質濃
度が高く多量の酸素を消費する場合には、積極的に系内
の酸素濃度を高めることは有効である。例えば、反応液
を酸素雰囲気下に置いて接する酸素分圧を高めたり、あ
らかじめ反応液に酸素を吹き込んで飽和させておくこと
は良い方法である。また、反応の進行中にたえず酸素を
吹き込むことも有効である。
【0027】
【実施例】以下に、本発明を実施例により詳しく説明す
るが、本発明はこれらによって制限されるものではな
い。 実施例1 220μgのビスフェノールAを含むpH6.5の0.
5mM リン酸緩衝液3mLに300unitのマッシ
ュルーム由来のポリフェノールオキシダーゼ(別名:チ
ロシナーゼ、フナコシ(株)製)を加え、酸素を5分間
吹き込んだ後、室温で24時間静置した。クロロホルム
3mLで油溶成分を抽出し、減圧濃縮後、NMRで生成
物を分析した。その結果、70%のビスフェノールAが
対応するモノキノン体(前記の式(4)で表される化合
物)に変換された。ビスキノン体(前記の式(5)の化
合物)は生成しておらず、未反応の原料が回収された。
【0028】モノキノン体のNMRデータ1 H NMR(500.13MHz、CDCl3) δ1.54(6H,s) 4.89(1H,s) 6.23(1H,d,J=10.3Hz) 6.50(1H,d,J=2.3Hz) 6.64(1H,dd,J=10.3,2.3Hz) 6.83(2H,d,J=8.7Hz) 7.15(2H,d,J=8.7Hz)
【0029】実施例2 91μgのビスフェノールAを含むpH6.5の0.5
mM リン酸緩衝液3mLに300unitのマッシュ
ルーム由来のポリフェノールオキシダーゼ(別名:チロ
シナーゼ、フナコシ(株)製)を加え、酸素を5分間吹
き込んだ後、室温で1時間静置した。クロロホルム3m
Lで油溶成分を抽出し、減圧濃縮後、NMRで生成物を
分析した。その結果、ほぼ100%のビスフェノールA
が対応するモノキノン体に変換された。原料は回収され
なかったがビスキノン体の生成も確認されなかった。
【0030】実施例3 91μgのビスフェノールAを含むpH6.5の0.5
mM リン酸緩衝液3mLに300unitのマッシュ
ルーム由来のポリフェノールオキシダーゼ(別名:チロ
シナーゼ、フナコシ(株)製)を加え、酸素を5分間吹
き込んだ後、室温で2時間40分静置した。キノン構造
に由来する378nmの紫外線スペクトル吸光度の変化
を指標に計算すると、50%のビスフェノールAがモノ
キノン体に変換されていた。この反応液に150uni
tの酵素を追加し、さらに1時間40分静置した。クロ
ロホルム3mLで油溶成分を抽出し、減圧濃縮後、NM
Rで生成物を分析した。その結果、80%ののビスフェ
ノールAが対応するモノキノン体に変換された。ビスキ
ノン体の生成は確認されなかった。
【0031】実施例4 470μgの3,4’−イソプロピリデンジフェノール
(式(6)の化合物)を含むpH6.5の0.5mM
リン酸緩衝液60mLに6000unitのマッシュル
ーム由来のポリフェノールオキシダーゼ(別名:チロシ
ナーゼ、フナコシ(株)製)を加え、酸素を5分間吹き
込んだ後、室温で80時間静置した。クロロホルム30
mLで油溶成分を抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥、
減圧濃縮後、NMRで生成物を分析した。その結果、ほ
ぼ100%のビスフェノール(式(6)の化合物)が対
応するモノキノン体(式(7)の化合物)に変換され
た。ビスキノン体は生成していなかった。
【0032】
【化8】
【0033】
【化9】
【0034】モノキノン体(式(7)の化合物)のNM
Rデータ1 H NMR(600.13MHz、CDCl3) δ1.55(6H,s) 6.23(1H,d,J=10.3Hz) 6.50(1H,d,J=2.2Hz) 6.64(1H,dd,J=10.3,2.2Hz) 6.75(2H,d,J=7.9Hz) 6.76(1H,brs) 6.84(1H,d,J=7.9Hz) 7.23(1H,dd,J=7.9,7.9Hz)
【0035】実施例5 4.6mgのビスフェノールB(式(8)の化合物)を
含むpH6.5の0.5mM リン酸緩衝液60mLに
6000unitのマッシュルーム由来のポリフェノー
ルオキシダーゼ(別名:チロシナーゼ、フナコシ(株)
製)を加え、酸素を5分間吹き込んだ後、室温で80時
間静置した。クロロホルム30mLで油溶成分を抽出
し、無水硫酸ナトリウムで乾燥、減圧濃縮後、NMRで
生成物を分析した。その結果、20%のビスフェノール
B(式(8)の化合物)が対応するモノキノン体(式
(9)の化合物)に変換された。ビスキノン体は生成し
ておらず、未反応の原料が回収された。
【0036】
【化10】
【0037】
【化11】
【0038】モノキノン体(式(9)の化合物)のNM
Rデータ1 H NMR(600.13MHz、CDCl3) δ0.81(3H,t,J=7.4Hz) 1.26(3H,s) 2.06(2H,q,J=7.4Hz) 6.21(1H,d,J=10.4Hz) 6.47(1H,d,J=2.3Hz) 6.60(1H,dd,J=10.4,2.3Hz) 6.82(2H,d,J=8.6Hz) 7.11(2H,d,J=8.6Hz)
【0039】比較例1 リン酸二水素ナトリウム0.2gを水66gに溶解した
ものを分液漏斗に入れ、フレミー塩(ニトロソジスルホ
ン酸カリウム)1.2gを加えて溶解させた。そこに、
200mgのビスフェノールAをエーテル4mLに溶か
したものを加えて20分間振り混ぜた。その後、直ちに
クロロホルム100mLで油溶成分を抽出した。抽出溶
液を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を減圧で留去
した。粗抽出物を1H NMRで分析したところ、モノキノン
(前記式(4)で表されるもの)とビスキノン(前記式
(5)で表されるもの)の混合物であった。次いで、カ
ラムクロマトグラフィー(シリカゲル,ヘキサン/酢酸
エチル=3/1)で精製し、モノキノン体式(4)の化
合物)を赤色アモルファスとして得た(収率15%)。
また、原料の55%を回収した。副生したビスキノン体
はシリカゲルカラムに強く吸着して回収されなかった。
【0040】比較例2 リン酸二水素ナトリウム1gを水330gに溶解したも
のを分液漏斗に入れ、フレミー塩(ニトロソジスルホン
酸カリウム)6gを加えて溶解させた。そこに、500
mgのビスフェノールAをエーテル10mLに溶かした
ものを加えて約1時間振り混ぜた。その後、直ちにクロ
ロホルム約500mLで油溶成分を抽出した。抽出溶液
を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧で留去し、
茶色粉末を得た。粗抽出物を1H NMRで分析したところ、
主にビスキノン(式(5)の化合物)であったが、モノ
キノン(式(4)の化合物)も含まれていた。水素化カ
ルシウムで乾燥・蒸留したクロロホルムから再結晶し、
ビスキノン体の純品を赤色粉末として得た(再結晶後の
収率7.7%)。
【0041】ビスキノン体(式(5)の化合物)のNM
Rデータ1 H NMR(600.13MHz、CDCl3) δ1.54(6H,s) 6.44(2H,d,J=10.3Hz) 6.48(2H,d,J=2.4Hz) 6.86(2H,dd,J=10.3,2.4Hz)
【0042】比較例3 水酸化カリウム25mgを水100mLに溶解したもの
に10mgのビスフェノールAを加えて溶かし、酸素雰
囲気下100℃で一晩加熱攪拌した。この反応液を5日
間室温に静置した後、油溶成分をクロロホルム50mL
で抽出し、抽出溶液を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶
媒を留去した。得られた成分のNMRとFABMSを測
定したところ、主な成分は未反応のビスフェノールAで
あった。
【0043】比較例4 ジメチルホルムアミド10mLにビスフェノールA20
0mgを溶かした。そこに、コバルトサルコミン330
mgを加え、キャピラリで酸素を吹き込みながら室温で
約24時間攪拌した。その後、油溶成分をエーテルで抽
出し、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去したと
ころ、白色固体が得られた。これを1H NMRで分析したと
ころ、未反応のビスフェノールAであった。
【0044】
【発明の効果】本発明によれば、ビスフェノール類を原
料として、分子内にキノン構造とフェノール構造を併せ
持ったモノキノン化合物を効率よく製造することができ
る。本発明により得られるモノキノン化合物の最も有利
な原料の一つは、環境ホルモン様作用の疑いがあるビス
フェノール類である。また、モノキノン化合物は、化学
的な反応性が高いため、ビスフェノール類を原料として
他の化学製品を製造するための有用な合成中間体とする
ことができる。
【0045】一方、ビスフェノール類は、大量に工業生
産され合成樹脂等の原料として利用されているが、この
ものは化学的に極めて安定であるため、自然界にそのま
まの化学形態で長く残存したり、包装資材から食品へ移
行して、生物の内分泌系を攪乱することが疑われてい
る。本発明によれば、モノキノン化合物の製造原料とし
て、排水や湖沼水、食品中に含まれる環境汚染物質とし
てのビスフェノール類を用いることが可能である。した
がって、本発明は環境や食品を汚染しているビスフェノ
ール類を低減化するための基礎技術としての利用、開発
が期待される。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (73)特許権者 598026688 忠田 ▲吉▼弘 茨城県つくば市吾妻1丁目1番1号603 棟520号 (73)特許権者 300020717 森 美子 茨城県龍ケ崎市小柴4−6−1−5− 305 (72)発明者 小野 裕嗣 茨城県つくば市吾妻1丁目1番1号603 棟805号 (72)発明者 吉田 充 茨城県つくば市並木4丁目11番地915− 303 (72)発明者 忠田 ▲吉▼弘 茨城県つくば市吾妻1丁目1番1号603 棟520号 (72)発明者 森 美子 茨城県龍ヶ崎市小柴4−6−1−5− 305 (56)参考文献 Environmental and Molecular Mutagen esis(1995),Vol.26,No. 1,p.60−66 Biosci.Biotechno l.Biochem.(2001),Vo l.65,No.6,p.1444−1446 Biochemical and B iophysical Researc h Communications (1995),Vol.210,No.2,p. 424−433 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C12P 7/00 CA(STN) REGISTRY(STN) WPIDS(STN)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式(1)で表されるビスフェノール
    化合物に、ポリフェノールオキシダーゼの存在下、酸素
    を作用させることを特徴とする一般式(2)で表される
    モノキノン化合物の製造方法。 【化1】 (式中、R 1 およびR 2 は低級アルキル基を示す。) 【化2】 (式中、R 1 およびR 2 は低級アルキル基を示す。)
  2. 【請求項2】 環境ホルモン物質であるビスフェノール
    類を、請求項1記載の方法を利用して低減化する方法。
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Non-Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
Biochemical and Biophysical Research Communications(1995),Vol.210,No.2,p.424−433
Biosci.Biotechnol.Biochem.(2001),Vol.65,No.6,p.1444−1446
Environmental and Molecular Mutagenesis(1995),Vol.26,No.1,p.60−66

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