JP3398830B2 - シート表皮材 - Google Patents

シート表皮材

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JP3398830B2
JP3398830B2 JP12747696A JP12747696A JP3398830B2 JP 3398830 B2 JP3398830 B2 JP 3398830B2 JP 12747696 A JP12747696 A JP 12747696A JP 12747696 A JP12747696 A JP 12747696A JP 3398830 B2 JP3398830 B2 JP 3398830B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はシート表皮材に関す
る。更に詳しくは車室内の座席表皮、住宅、オフィス等
の椅子表皮、ベッド等人体が接触する用品に用いること
によりむれを低減するシート表皮材に関する。
【0002】
【従来の技術】シート着座時にシートと接触している背
中や大腿部に汗ばみやべとつきを生じ、不快感を覚える
ことがある。この不快感を「むれる」と表現すると、こ
のむれるという感覚は温湿度感とべとつき感等から形成
された複合感覚であり発汗により湿気や汗がシートと
接触している背中、臀部との間にこもることによって生
じるものと考えられる。従来より、このむれを低減する
ことが快適性や予防安全性等の面から求められている
が、エアコンだけではこのむれを解消することは困難で
あり、シート側での対策が必要となってくる。
【0003】シート側での対策として、活性炭や含水珪
酸マグネシウム質粘土鉱物等から成る充填剤と高分子ラ
テックスを布地に1平方メートルあたり固形分量で50
〜200g塗布した車両用表皮材は、特開平2ー145
864公報で開示されているが、脱臭を目的としたも
ので着座時のむれに改良の余地がある。また、平均細孔
直径が1〜10nmの範囲内にあり、かつ50%以上の
細孔の直径が平均直径を中心として±5nmの範囲内に
分布していることを特徴とする多孔材料を用いた湿度調
節剤が、特開平6ー304437公報で開示されてい
る。その中の使用形態の1つにセルロース繊維と混合・
抄紙した湿度調節紙があるが、これは、住宅や車室内な
どの居住空間を一定湿度に調節するためであり、シート
表皮に用いることは粉落ちや強度、耐久性等の物性面か
ら困難である。使い捨て等の方法で使用した場合、人体
と湿度調節紙が密着するために汗が蒸発する空間容積が
小さくなり、湿度調節作用よりも吸湿・吸水時の吸着熱
で温度感が増えて暑くなり、また、着座感が通常と異な
ることもあり、複合感覚であるむれの低減効果は不十分
と考えられる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上述した従
来技術の欠点を改善し、人体が接触する用品に用いるこ
とによりむれを低減することができるシート表皮材を提
供することを解決すべき課題とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決する第1
発明のシート表皮材は、細孔径分布曲線における最大の
ピークを示す細孔直径(以下、中心細孔直径と称する)
が1〜10nmの範囲内にあり、中心細孔直径の±40
%の範囲内に全細孔容積の60%以上が含まれる無機物
からなる多孔体と、高分子ラテックスとからなり、前記
多孔体は比表面積が700m 2 /g以上を有するととも
に、前記高分子ラテックスの固形成分100重量部に対
して5〜200重量部の範囲で配合されている合成樹脂
組成物を布地に塗布したことを特徴とするものである。
【0006】また、上記課題を解決する第2発明のシー
ト表皮材は、X線回折において、d値が1nm以上に相
当する回折角(2θ)の位置に、1本以上のピークを有
する無機物からなる多孔体と、高分子ラテックスとから
り、前記多孔体は比表面積が700m 2 /g以上を有
するとともに、前記高分子ラテックスの固形成分100
重量部に対して5〜200重量部の範囲で配合されてい
る合成樹脂組成物を布地に塗布したことを特徴とするも
のである。
【0007】
【発明の作用および効果】(1)第1発明 中心細孔直径が1〜10nmの範囲内にあり、中心細孔
直径の±40%の範囲内に全細孔容積の60%以上が含
まれる無機物からなる多孔体(以下、第1発明で示す多
孔体をメソ多孔体称する)は、細孔が均一であり、相
対湿度が高くなると毛細管凝縮が生じて吸湿量が急増す
る吸脱着等温線を有する。吸湿量が急増する湿度はメソ
多孔体の細孔直径から次のケルビンの式で推定できる。
【0008】 In(P/Po)=−(2γVm/rRT)cosθ 〔P/Po×100:相対湿度、γ:水の表面張力、V
m:水のモル体積、:細孔直径、R:気体定数、T:
絶対温度、θ:接触角〕 よって、メソ多孔体の細孔直径を1〜10nmの範囲内
に変化させることにより、吸湿量が急増する相対湿度を
10%から90%の範囲で任意に設定することができ
る。
【0009】このメソ多孔体と高分子ラテックスからな
る合成樹脂組成物を布地に塗布し、塗布面を表皮裏面と
してシート表皮に用いることにより、粉落ちがなく、ま
た、強度、耐久性等必要なシート物性を損なわない。さ
らに、人体と通気性のある布地を介して該メソ多孔体が
相対するために汗が蒸発する空間容積が生じて湿度調節
作用が効果的に行えると共に、吸湿・吸水時の吸着熱は
人体に接触する布地が断熱材として働き、温度感が増加
せず、また、着座感が異なることもない。
【0010】従って、本発明のシート表皮材によれば、
発汗して相対温度が高くなったときによく吸湿し、普通
の雰囲気になると放湿するいわゆる調湿性能を示し、こ
れによりむれを低減することができる。 (2)第2発明 X線回折において、d値が1nm以上に相当する回折角
(2θ)の位置に、1本以上のピークを有する無機物か
らなるメソ多孔体は、そのピーク角度に相当するd値の
周期構造が材料の中にあることを意味する。すなわち、
本発明のメソ多孔体は、構造の規則性を反映して、結晶
性が高く、細孔がより均一であり、相対湿度が高くなる
と毛細管凝縮が生じて吸湿量がよりシャープに急増する
吸脱着等温線を有する。
【0011】よって、このメソ多孔体と高分子ラテック
スからなる合成樹脂組成物を布地に塗布し、塗布面を表
皮裏面としてシート表皮に用いることにより、粉落ちが
なく、また、強度、耐久性等必要なシート物性を損なわ
ない。さらに、人体と通気性のある布地を介して該メソ
多孔体が相対するために汗が蒸発する空間容積が生じて
湿度調節作用が効果的に行えると共に、吸湿・吸水時の
吸着熱は人体に接触する布地が断熱材として働き、温度
感が増加せず、また、着座感が異なることもないと考え
られる。
【0012】従って、本発明のシート表皮材によれば、
発汗して相対湿度が高くなったときによく吸湿し、普通
の雰囲気になると放湿するいわゆる調湿性能を示し、こ
れによりむれが低減することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
〔1〕メソ多孔体 このメソ多孔体としては、例えば、層状シリケート界面
活性剤を作用させて合成した耐熱性層状シリカ多孔体が
利用できる(T.Yanagisawa ct.,Bu
ll.Chem.Soc.Japn.,63.988−
922(1990))。耐熱性層状シリカ多孔体は、結
晶性層状珪酸塩の板状のシート層が複数積層し、隣接す
る上記シート層の層間がシロキサン結合による結合点に
おいて縮幅し、該結合点の間においては拡幅して微孔を
形成しているハニカム状多孔構造をもつ。
【0014】この耐熱性層状シリカ多孔体のX線回折パ
ターンは、2nm以上のd値を持つ位置に最大強度を持
つ回折ピークを含め、少なくとも1つ以上のピークが観
察される。また、その中にあるものは、六方構造を示す
2〜4本の回折ピークが見られ、その透過電子顕微鏡写
真には、蜂の巣状の骨格構造が観察される(S.Ina
gaki,et al.,J.Chem.Soc.,C
hem.Commu.,No.8,680−682(1
993))。
【0015】この結晶性層状珪酸塩中に含まれるアルカ
リ金属イオンの含有率は0.2重量%以下で、かつ比表
面積は700m2 /g以上であるのが好ましい。アルカ
リ金属イオンの含有率が0.2重量%を超えた場合に
は、比較的低温で原子の移動が促進され、クリストバラ
イトなどへの結晶化が起こる。そのため、層状シリカ多
孔体の比表面積が減少し、さらには耐熱性が低下してし
まう。また、層状シリカ多孔体の比表面積が700m2
/g未満の場合には、層状シリカ多孔体に高分子ラテッ
クスを担持させるとき、その活性を十分に発揮すること
ができず、また吸着剤として使用するときに有機物など
に対する吸着能力が低い。
【0016】代表的な層状シリカ多孔体は、図1(a)
〜図1(c)に示すように、骨格の組成がSiO2 で、
板状のシート1が上下方向に重なった構造を有し、各シ
ート1は上下方向に湾曲又は屈曲している。そして上下
の各シート1間が部分的に結合し、ハニカム状の骨格を
形成している。ハニカムの微孔2の直径は、1〜60Å
である。
【0017】シート層は、SiO4 四面体が2次元的に
結合することで形成されるシリケート層であり、SiO
4 四面体の結合点が屈曲可能であるため、シート層全体
としても湾曲または屈曲が可能である。シート層は、マ
グネシウムイオン(Mg2+)、アルミニウムイオン(A
3+)などのシート層の屈曲性を妨げる八面体を含まな
い。また、上記シート層は、Na+ などのアルカリ金属
イオンおよびH+ を挟んで、複数枚積層している。ま
た、具体的には、結晶性層状珪酸塩としては、例えば、
カネマイト(NaHSi2 5 ・3H2 O)が好まし
い。
【0018】また、他の結晶性層状珪酸塩としては、ジ
珪酸ナトリウム(Na2 Si2 3)、マカタイト(N
2 Si4 9 ・5H2 O)、アイラアイト(Na2
817・XH2 O)、マガディアイト(Na2 Si14
29・XH2 O)、ケニヤイト(Na2 Si2041・X
2 O)などが代表的であるが、これらに限定されな
い。
【0019】上記層状シリカ多孔体の製造方法について
は、含水率10重量%以上の結晶性層状珪酸塩中の層間
に存在するアルカリ金属イオンを有機物陽イオンとイオ
ン交換させ、該有機陽イオンを層間に導入する層間拡幅
工程と、上記イオン交換により遊離した上記アルカリ金
属イオンを除去する洗浄工程と、洗浄した上記結晶性層
状珪酸塩を焼成することにより、上記有機物陽イオンを
燃焼せしめて多孔性の層状シリカ多孔体を得る多孔化工
程とを含む耐熱性層状シリカ多孔体の製造方法がある。
【0020】結晶性層状珪酸塩は非晶質珪酸塩から合成
することができる。非晶質珪酸塩としては、市販の粉末
珪酸ナトリウム、水ガラスを乾燥して粉末としたものな
どがある。たとえば、結晶性層状珪酸塩の1種であるカ
ネマイトを合成する場合、Na2 O/SiO2 =2にで
きるだけ近い組成の非晶質の珪酸ナトリウムを用いるこ
とが好ましい。
【0021】この非晶質珪酸ナトリウムを空気中、65
0〜750℃で焼成すると、δ型Na2 Si2 5 に結
晶化する。650℃より低い温度ではβまたはγ型Na
2 Si2 5 に、750℃を超える温度ではα型Na2
Si2 5 に結晶化する。α、β、γ型では水との反応
で結晶性層状珪酸塩が生成しない。次に、このδ型Na
2 Si2 5 を2倍から50倍の水に分散させ、1〜5
時間攪拌した後、濾過する。これにより、δ型Na2
2 5 のNa+ の一部が水中のH+ と置換し、NaH
Si2 5 ・3H2 Oとなり、結晶性層状珪酸塩である
カネマイトが得られる。
【0022】上記結晶性層状珪酸塩における含水率は1
0重量%以上である。10重量%未満では、結晶性層状
珪酸塩が凝集し、次の層間拡幅工程において、水中での
分散性が低下し、有機物陽イオンとアルカリ金属イオン
との交換が起こりにくくなる。10重量%以上であれ
は、結晶性珪酸塩が、次の層間拡幅工程の際に水によく
分散し、層間のアルカリ金属イオンと有機物陽イオンと
のイオン交換がスムースに短時間で行われる。その結
果、層状シリカ多孔体の比表面積が700m2 /g以上
となり、また、アルカリ金属イオンの残存量が0.2重
量%以下の優れた耐熱性層状シリカメソ多孔体を得るこ
とができる。
【0023】上記層間拡幅工程においては、結晶性層状
珪酸塩中にあるアルカリ金属イオンが有機物陽イオンと
イオン交換される。有機物陽イオンはアルカリ金属イオ
ンよりも嵩高のため、結晶性層状珪酸塩の層間は拡幅さ
れる。これにより、シート層は有機物陽イオンを取り囲
む形で湾曲する。それと同時に、有機物陽イオンが導入
された部分を除く、隣合うシート層中のシラノール(S
i−OH)どうしが脱水縮合され、シロキサン結合(S
i−O−Si)が形成される。これにより、隣合うシー
ト層どうしが、部分的にシロキサン結合により結合さ
れ、三次元的ハニカム状の層構造を形成する。
【0024】上記有機物陽イオンとしては、アルキルト
リメチルアンモニウム、ジメチルジアルキルアンモニウ
ム、アルキルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモ
ニウムなどがある。上記イオン交換の際、pHを8〜9
に調整することが好ましい。さらに、その後、30〜9
0℃にて加熱することが好ましい。上記洗浄工程におい
ては、上記イオン交換により遊離したアルカリ金属イオ
ン、有機物陽イオンの対イオン、または未反応の有機物
陽イオンが除去される。特に、遊離したアルカリ金属イ
オンの含有率が0.2重量%以下となる。
【0025】上記多孔体化工程においては、層間に取り
込まれた有機物陽イオンを燃焼させ、微細な微孔を形成
させる。また、シロキサン結合の三次元骨格を安定化さ
せる。焼成は、酸化雰囲気中で温度600〜1200℃
で行うことが望ましい。600℃未満の場合、あるいは
酸化雰囲気以外の場合には、有機物陽イオンを十分に除
去することはできない。一方、1200℃を超える場
合、焼結が進み過ぎ、微孔が破れ、比表面積が低下する
ので好ましくない。
【0026】層状シリカ多孔体は、アルカリ金属イオン
の含有量が0.2重量%以下であるので、800℃以上
の高温下でも結晶化しにくく、微孔も安定である。その
ため、耐熱性に優れている。また、700m2 /g以上
の比表面積を有するため、優れた吸着性能を発揮する。
また、他のメソ多孔体としては、界面活性剤のミセル構
造が鋳型として合成したメソポーラスモリキュラーシー
プ(MCM−41)がある(Kresge eta
l.,Nature,359,710(1992))。
このMCM−41は、やはり直径1〜10nmのシリン
ダー状細孔が規則的に配列した構造をして、蜂の巣状の
断面を呈するが、先の材料とは細孔壁内の構造が異な
る。このMCM−41のX線回折パターンは、2nm以
上のd値を持つ位置に、最大の強度をもつ回折ピークを
含め、少なくとも1つ以上のピークが観察される。
【0027】従来の多孔体であるシリカ、例えば、シリ
カゲルのX線回折パターンには、明瞭な回折ピークは観
察されていない。X線回折ピークはそのピーク角度に相
当するd値の周期構造が材料の中にあることを意味す
る。このことから、シリカゲルには、少なくともd=
0.15〜12nm(0.7<2θ<60°に相当)の
周期構造をもたない。つまり非晶質であることを示して
いる。それに対し、本発明のメソ多孔体は、2nm以上
のd値に最強のピークを含む1つ以上のピークが存在
し、周期構造を有している。
【0028】具体的には、これらのピークは直径が1〜
10nmの細孔が2nm以上の間隔で規則的に配列した
構造を反映したものである。その結果、従来のシリカゲ
ルの構造が不規則であるため構造中にある細孔の径も不
均一であるのに対し、本発明のメソ多孔体は、構造の規
則性を反映して細孔は均一であることになる。これらの
酸化物のメソ多孔体の組成は、純粋なシリカでもよい
が、シリカにアルミニウム(Al)、チタニウム(T
i)、マグネシウム(Mg)、ジルコニウム(Zr)、
ガリウム(Ga)、ベリリウム(Be)、イットリウム
(Y)、ランタン(La)、スズ(Sn)、鉛(P
b)、バナジウム(V)、ホウ素(B)等が混ざったも
のでもよい。 〔2〕メソ多孔体の細孔分布の測定法 細孔分布曲線は、細孔容積(V)を細孔直径(D)で微
分した値(dV/dD)を細孔直径(D)に対しプロッ
トした曲線をいう。細孔分布曲線は、例えば以下に示す
気体吸着法により作成される。
【0029】この方法において最もよく用いられる気体
は窒素である。まず、充填剤に液体窒素温度(−196
℃)で窒素ガスを導入し、その吸着量を定容量法あるい
は重量法で求める。すなわち、メソ多孔体である充填剤
に導入する窒素ガスの圧力を徐々に増加させ、各平衡圧
に対する窒素ガスの吸着量をプロットすることにより吸
着等温線を作成する。作成された吸着等温線から、例え
ばCranston−Inklay法、Pollimo
re−Heal法の計算法を用いて、上記の細孔径分布
を求めることができる。
【0030】この細孔径分布曲線における最大のピーク
を示す細孔直径(中心細孔直径)の±40%の直径範囲
に全細孔容積の60%以上が含まれるというのは、次の
ように説明できる。例えば、細孔径分布曲線における最
大のピークが2.7nmとすると、細孔直径が1.62
〜3.78nmの範囲にある細孔の容積の総計が、全細
孔容積の60%以上を占めているということである。具
体的には、細孔分布曲線の細孔直径が1.62〜3.7
8nmの範囲の積分値が、曲線の全積分値の60%以上
を占めていることである。細孔分布曲線における最大の
ピークを示す細孔直径の±40%の細孔径範囲が全細孔
容積の60%未満のメソ多孔体では、細孔径が不均一で
あり、細孔径の大きさを有効に利用するのに好ましくな
い。 〔3〕高分子ラテックス 高分子ラテックスとしては、合成樹脂ラテックスおよび
ゴムラテックスがあり、このうち合成樹脂ラテックス
は、分散剤としての樹脂コロイド粒子と、分散媒として
の水などから構成され、乾燥等により粒子相互の融着が
起き結合剤として有効に作用する。
【0031】具体的には、合成樹脂ラテックスとして、
ポリ塩化ビニルラテックス、ポリ塩化ビニリデンラテッ
クス、ポリウレタンラテックス、アクリル樹脂ラテック
ス、ポリ酢酸ビニルラテックス、ポリアクリロニトリル
ラテックスおよびこれらの変成体、共重合体などが挙げ
られる。特に好ましいアクリル樹脂としては、(メタ)
アクリル酸エステルを主成分とする重合体エマルション
がある。主成分となる(メタ)アクリル酸エステルとし
ては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アク
リル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)ア
クリル酸2ーエチルヘキシル、(メタ)アクリル酸グリ
シジルエステル、(メタ)アクリル酸2ーヒドロキシエ
チルなどが挙げられる。この主成分と併用して用いられ
るものとして、共重合可能なエチレン性不飽和単量体が
あり、単量体としては、スチレン、(メタ)アクリロニ
トリル、(メタ)アクリル酸アミド、Nーメチロールア
クリル酸アミド、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、塩
化ビニル、塩化ビニリデン、(メタ)アクリル酸、イタ
コン酸、フマル酸、クロトン酸、マレイン酸などが挙げ
られる。
【0032】上記の単量体と併用する場合、主成分とな
る(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、50重量%
以上とするのがよい。また、アクリル樹脂は、乳化重合
法により形成したものがよい。例えば窒素置換した反応
容器に水、エチレン性不飽和単量体、乳化剤(ドデシル
ベンゼンスルフォン酸ナトリウム、ポリオキシエチレン
アルキルエーテルなど)、およびラジカル重合開始剤を
添加し、加熱攪拌して所定の温度で重合する。アクリル
樹脂の粒子径の制御は、乳化重合時における乳化剤の濃
度を調整することにより行うことができる。
【0033】また、ゴムラテックスとしては、具体的に
は、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリロニト
リルゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、イソプレ
インイソブチルゴム、ポリイソブチレン、ポリブタジエ
ン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、ポリエチレン
プロピレンなどが挙げられる。ブタジエン共重合体とし
てはブタジエンを20〜80重量%含みこれと共重合可
能な不飽和モノマー20〜80重量%を含むものが好ま
しい。不飽和モノマーとしては、メタアクリル酸エステ
ル、アクリル酸エステル、スチレン、アクリロニトリ
ル、メタアクリロニトリル、アクリル酸アミド、N−メ
チロールアクリル酸アミド、酢酸ビニル、塩化ビニル、
塩化ビニリデン、アクリル酸、イタコン酸、フマル酸、
クロトン酸、マレイン酸などが利用できる。
【0034】ブタジエン共重合体の共重合組成は、例え
ば車両用に用いる際のように耐熱性と耐候性を必要とす
る場合には、ブタジエン20〜60重量%、(メタ)ア
クリル酸エステル40〜80重量%、他の不飽和モノマ
ー0〜20重量%であることが望ましい。本発明では、
上記合成樹脂・ゴムラテックスのうち少なくとも1種を
用いる。
【0035】また、高分子ラテックスは、シート表皮材
に用いる場合、皮膜が形成されたときに示すガラス転移
温度(以下、Tgと表記する)が−70℃〜+15℃の
範囲にあるものが望ましい。皮膜のTgが−70℃以下
の高分子ラテックスは、柔軟過ぎるために、皮膜形成時
にメソ多孔体を被覆することによる吸湿機能の低下や、
皮膜がべた付くなどの物性・取扱い性が問題となり、好
ましくない。皮膜のTgが+15℃以上の高分子ラテッ
クスは、硬すぎるために、布等に塗布し、加工あるいは
使用する際に、メソ多孔体等が脱落する場合があり、ま
た、風合いが悪く、好ましくない。Tgが−70℃〜+
15℃の樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、エチ
レン−酢酸ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ブタジ
エン系樹脂などが挙げられ、それらのうちの少なくとも
1種が使用される。 〔4〕合成樹脂組成物 メソ多孔体と高分子ラテックスからなる合成樹脂組成物
を製造する方法は、特に限定されるものではなく、何れ
の製造方法を用いてもよい。
【0036】例えば、メソ多孔体を、界面活性剤を溶か
した水と混練する。次に、高分子ラテックスを加え、更
に混練し、布地に塗布する合成樹脂組成物を得る。また
は、メソ多孔体と界面活性剤を乾式で混合したものを、
水に分散し、高分子ラテックスを加えて混練してもよ
い。あるいは、メソ多孔体と界面活性剤を乾式で混合し
たものを、水で希釈した高分子ラテックスと混練しても
よい。更に、前記3種の製法において、界面活性剤は数
回に分けて使用することもできる。例えば、最初の使用
は、分散剤および保護コロイド形成用に小量使用し、高
分子ラテックスを加えて得られた合成樹脂組成物の増粘
剤として界面活性剤を追加使用し、粘度調整してもよ
い。
【0037】メソ多孔体の量は、高分子ラテックスの固
形分100重量部に対して、5〜200重量部が好まし
く、より好ましくは10〜150重量部使用する。この
範囲であれば、メソ多孔体の機能が十分に発揮され、合
成樹脂組成物の性質、すなわち、布地の寸法精度の向
上、糸のほつれや目開きの防止等が良好となる。また、
メソ多孔体は水に懸濁すると酸性を呈するため、例え
ば、アクリル樹脂ラテックス等のアルカリ性領域(通常
pH8〜10)で安定化させてある高分子ラテックスと
用いる場合は、アンモニア水などでpH調整を行うこと
が好ましい。あるいは、酢酸ビニル系樹脂ラテックスな
どの酸性領域で安定化させた高分子ラテックスと用いる
ことが好ましい。
【0038】さらに、この合成樹脂組成物の不揮発分
は、布地への塗布および乾燥工程における生産性、作業
性等の観点から、20〜60重量%に調整することが好
ましい。ここで、界面活性剤は、メソ多孔体2次粒子の
解こう・分散を助ける分散剤として、また、塗布方法に
応じて要求される合成樹脂組成物の粘度調整用増粘剤と
して配合するもので、塗布方法に応じて必要量用いるこ
とが好ましく、界面活性剤の重量平均分子量は150以
上であることが好ましい。重量平均分子量が150以下
では、界面活性剤がメソ多孔体の細孔の奥まで進入し
て、吸湿機能を低下させる場合があるため望ましくな
い。
【0039】具体的には、トリポリリン酸ナトリウム、
テトラリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム
などのトリポリリン酸塩、アルキルナフタレンスルフォ
ン酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルフォン酸ナトリ
ウムなどのアルキルアリールスルフォン酸塩、ポリアク
リル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、スチレン−
マレイン酸共重合体などの合成高分子、メチルセルロー
ス、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセ
ルロースなどのセルロース誘導体、ポリオキシエチレン
フェノールエーテル、ポリオキシブチレンフェノールエ
ーテルなどのポリオキシアルキレンアリールエーテルな
どが挙げられる。
【0040】また、界面活性剤を添加する場合、その添
加量は、メソ多孔体100重量部当たり0.1〜20重
量部の範囲内が望ましい。この範囲内であれば、界面活
性剤の働きをより発揮させやすい。また、上記の合成樹
脂組成物には、その特性を損なわない範囲で、他の添加
剤、例えば難燃剤、導電剤、架橋剤、安定剤、充填剤を
添加してもよい。
【0041】難燃剤としては、無機系難燃剤と有機系難
燃剤があり、アンチモン系化合物、リン系化合物、塩素
系化合物、臭素系化合物、グアジニン系化合物、ホウ素
化合物、アンモニウム化合物、臭素系ジアリールオキサ
イド、臭素化アレン等が知られており、これらの1種以
上を用いることができる。具体例としては、三酸化アン
チモン、五酸化アンチモン、リン酸第一アンモニウム、
リン酸第二アンモニウム、リン酸トリエステル、亜リン
酸エステル、フォスフォニウム塩、リン酸トリアミド、
塩素化パラフィン、デクロラン、臭化アンモニウム、テ
トラブロモビスフェノールA、テトラブロモエタン、塩
酸グアニジン、炭酸グアニジン、リン酸グアニジン、リ
ン酸グアニル尿素、四ホウ酸ナトリウム10水和物(ほ
う砂)、硫酸アンモニウム、スルファミン酸アンモニウ
ム、デカブロモジフェニールオキサイド、ヘキサブロモ
フェニールオキサイド、ベンタブロモフェニールオキサ
イド、ヘキサブロモベンゼンなどが挙げられる。
【0042】導電剤としては、導電性カーボンブラッ
ク、ポリアセチレン、ポリピロール等の導電性高分子、
銅、アルミニウム、ステンレス等の金属粉末、カーボン
繊維、金属繊維等の導電性繊維物質等を単独あるいは2
種以上を混合して用いてもよい。安定剤としては、セミ
カルバジド系化合物等が用いられる。
【0043】充填剤としては、例えば、セピオライト、
パリゴルスカイト等の含水ケイ酸マグネシウム質粘土鉱
物、活性炭、活性炭素繊維、シリカゲル、合成ゼオライ
ト、クリストバライトなどの多孔性吸着材料や脱臭剤
を、吸湿性の補強や脱臭性などの他機能を付与するため
に、1種以上加えてもよい。 〔5〕布地 布地としては、特に限定されず、通気性がありシート表
皮として用いられているものであればよい。通常は、天
然繊維、合成繊維またはこれらの両方の繊維からなる織
布、編布、不織布が用いられる。
【0044】具体的には、織物、モケット、タオル地、
トリコット、ダブルラッセル、丸編、ニードルパンチ等
が挙げられる。また、ここでいう繊維としては、木綿、
麻、絹、羊毛等の天然繊維、あるいはレーヨン、アセテ
ート、蛋白質繊維、塩化ゴム、ポリアミド、ポリビニル
アルコ−ル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポ
リアクリロニトリル、ポリエステル、ポリエチレン、ポ
リプロピレン、ポリウレタン、ポリシアン化ビニリデ
ン、ポリフルオロエチレン等の合成繊維およびこれらの
改質繊維が挙げられる。またはこれら両方の繊維からな
る布地を用いてもよい。
【0045】さらに、静電気を有効に放散させるために
利用されている導電性の布地を用いてもよい。ここでい
う導電性の布地とは、銅、アルミニウム、ステンレス、
カーボン、導電性高分子などの導電性の物質を有機質繊
維の中に粒子状で混合したり、該有機質繊維の表面に真
空蒸着法でコーティングしたり、該有機質繊維とクラッ
ドさせたもの、または導電性の物質そのものからなる導
電性繊維を上記布地に対して添加したものである。布地
への導電性繊維の添加方法としては、繊維状態での混
合、スライバー状態でのミックス、糸状での撚糸、フィ
ラメント状でのミックスまたは撚糸、組織上での配列の
いずれでもよい。
【0046】また、穴をあけた皮革、防水・透湿シート
等を用いてもよい。 〔6〕シート表皮材 本発明のシート表皮材は、上記のメソ多孔体と高分子ラ
テックスからなる合成樹脂組成物を布地に塗布して得ら
れる。合成樹脂組成物の布地への塗布量は、布地1平方
メートルあたりメソ多孔体として5g以上が好ましい。
5g以下の場合、メソ多孔体の量が少ないためにむれ低
減性能が不十分となる。また、シート表皮材の物性とし
て柔軟性等風合いが要求される場合は、合成樹脂組成物
の布地への塗布量は、布地1平方メートルあたり合成樹
脂組成物の固形分として200g以下が好ましい。
【0047】なお、上記合成樹脂組成物は、布地の裏打
剤として、シート表皮材の裏面に塗布することが望まし
い。この形態では、人体と該合成樹脂組成物との間にさ
らに空間が十分に存在するため、汗が蒸発する空間容積
が増大する。合成樹脂組成物を布地に塗布する方法は、
特に限定されるものではなく、通常用いられている何れ
の方法を用いてもよい。
【0048】例えば、フローティング・ナイフコータ
ー、ナイフオーバーロール・コーター、リバースロール
・コーター、ロールドクター・コーター、グラビアロー
ル・コーター、エアーナイフコーター、カーテンコータ
ー、キスロールコーター、ニップロールコーター、キャ
ストコーター、コンアダイレクト・コーター、コンアリ
バースコーター、スリットコーターおよびスプレー方式
などが挙げられ、ラミネートやボンディング方式も使用
できる。
【0049】また、該合成樹脂組成物を機械的あるいは
化学的に発泡させた後、塗布してもよく、あるいは塗布
後、皮膜形成時に化学的に発泡させてもよい。これらの
塗布に続いて、通常は加熱、乾燥により合成樹脂組成物
が皮膜化され、シート表皮材が得られる。 〔7〕シート表皮材の実施形態 本発明のシート表皮材は、必要に応じて成形して使用す
る。成形する手段はどのようなものでもよいが、その形
状は使用箇所、方法に応じて決めることができ、例え
ば、車室内の座席表皮、住宅、オフィス等の椅子表皮、
ベッド等を、それらの製造時にシート表皮を取り付ける
成形方法を使用して成形する。
【0050】本発明のシート表皮材は、人体が接触する
用品に用いることによりむれを低減することができる。
【0051】
【実施例】以下、本発明を実施例により更に詳しく説明
する。 〔実施例1〕本実施例のシート表皮材は、ポリエステル
繊維からなるファブリック(布地)と、該ファブリック
の裏面に裏打され、中心細孔直径が1〜10nmの範囲
内にあり該中心細孔直径の±40%の範囲内に全細孔容
積の60%以上が含まれるシリカ系メソ多孔体と高分子
ラテックスとからなる合成樹脂組成物と、で構成されて
いる。
【0052】以下、このシート表皮材の製造方法を説明
して、構成の詳細な説明に代える。 〔1〕シリカ系メソ多孔体の製造(FSM16) 日本化学工業(株)製の粉末ケイ酸ソーダ(SiO2
Na2 O=2.00)を700℃で6時間、空気中で焼
成し、ジケイ酸ソーダ(δーNa2 Si2 5)に結晶
化させた。この結晶50gを500mlの水に分散さ
せ、3時間攪拌した。その後、ろ過により固形分を回収
してカネマイト結晶を得た。乾燥重量で50gのカネマ
イトを0.1Mのヘキサデシルトリメチルアンモニウム
クロライド(C1633N(CH3 3 Cl)水溶液10
00mlに分散させ、70℃で3時間攪拌しながら加熱
した。加熱初期のpHは12.3であった。その後、7
0℃で加熱攪拌しながら、2Nの塩酸を添加して、分散
液のpHを8.5に下げた。その後、70℃で3時間加
熱してから室温まで放冷した。固形生成物を一旦ろ過
し、1000mlのイオン交換水中に分散させ攪拌し
た。このろ過、分散攪拌を5回繰り返してから、60℃
で24時間乾燥した。この試料を空気中で550℃で6
時間焼成することによりシリカ系メソ多孔体を得た。
【0053】得られたシリカ系メソ多孔体の構造解析を
行った。まず、合成したシリカ系メソ多孔体の粉末X線
回折パターンを測定した。X線回折は理学RADーB装
置を用い、CuKαを線源として2度(2θ)/分でス
キャンした。スリット幅は、1度−0.3mm−1度で
ある。その結果、回折角度(2θ)が10度以下に数本
のピークが観察され、ピークの回折角度をd値に変換す
ると、d=3.7nmに相当する強いピークと1.4〜
2.5nmの弱い数本のピークが観察された。これらの
ピークは六方構造に指数付けされた。X線回折パターン
の結果から、このシリカ系メソ多孔体は、規則的な周期
構造を持っていることが分かる。
【0054】次にシリカ系メソ多孔体の細孔分布曲線を
窒素吸着等温線から求めた。窒素吸着等温線は以下のよ
うに測定した。装置は真空ラインに圧力センサー(MK
S,Baraton 127AA、レンジ1000mm
Hg)およびコントロ−ルバルブ(MSK,248A)
2個が接続されたものを用い、窒素ガスの真空ラインへ
の導入およびサンプル管への導入が自動に行えるように
なっている。
【0055】シリカ系メソ多孔体サンプル約40mgを
ガラス製のサンプル管に入れ、真空ラインに接続した。
サンプル管を130℃で約1時間真空脱気した。到達真
空度は10−4mmHgであった。サンプル管を液体窒
素に浸漬し、真空ライン部に所定圧の窒素ガスを導入す
る。圧力が安定した後、サンプル管のコントロ−ルバル
ブを開き、圧力が一定になった後、平衡圧を記録する。
平衡圧が0〜800mmHgの範囲で16〜18点同じ
操作を繰り返した。平衡までの時間は、圧力により変化
するが、20〜60分の範囲であった。
【0056】この平衡圧と圧力変化から求めた吸着量を
プロットすることにより、シリカ系メソ多孔体の窒素吸
着等温線を作成し、この窒素吸着等温線から、Cran
ston−Inklay法により、細孔分布曲線を求め
た。細孔分布曲線における最大のピークを示す細孔直径
(中心細孔直径)は2.7nm、および中心細孔直径の
±40重量%の細孔範囲に含まれる細孔容積の全細孔容
積の割合は80重量%以上を示した。 〔2〕シート表皮の作製 得られたシリカ系メソ多孔体を100メッシュ以下に篩
い、以下の手順でシート表皮を作製した。
【0057】まず、ポリマー組成が、ブチルアクリレー
ト/メチルアクリレート/アクリル酸=80/18/2
で、その皮膜のガラス転移温度(以下、Tgと表記す
る:レオメトリックス社製動的粘弾性測定装置…レオメ
トリックスPSAIIで測定)が−25℃であるアクリ
ルエマルション(不揮発分50%)を用いて、以下の方
法で合成樹脂組成物を得た。粒度100メッシュ以下の
シリカ系メソ多孔体70重量部に対して、平均分子量1
30000のカルボキシメチルセルロース2重量部を3
48重量部の水に溶解したものを、特殊機化工製ホモデ
ィスパーを用いて混合した。その後、上記アクリルエマ
ルション(不揮発分50%)100重量部を加えて混合
し、不揮発分23.5%の合成樹脂組成物を得た。
【0058】得られた合成樹脂組成物を、ポリエステル
繊維からなるファブリックの裏面にドクターブレードを
用いて固形分で120g/m2 塗布し、130℃の熱風
乾燥機中で30分加熱・乾燥し、シート表皮材を得た。
以上のようにして作製された本実施例のシート表皮材の
性能を調べるために、熱・水分移動特性を計測した。
【0059】まず、車両用シートの構成と同じようにウ
レタンパッドとシート表皮を積層し、その上部にYシャ
ツの生地(綿60%、ポリエステル40%)、ランニン
グの生地(綿100%)、透湿膜の袋で包んだ水で湿ら
したろ紙の順に積み重ねた。次に、人体の発汗・蒸発を
想定して、積層体全体を36℃に温度調節した熱板で押
し、約30g/cm2 の荷重をかけた。積層した各素材
の隙間には予め、超薄型温湿度センサーを挟んでおき、
温湿度の時間変化を60分間計測してシート表皮の熱・
水分移動特性を調べた。その結果を図2に示す。また、
試験前後の重量を測定し、増量分をシート表皮の吸水量
として図4に示した。
【0060】なお、比較例1として、上記実施例1で用
いたシリカ系メソ多孔体の替わりに、粒度100メッシ
ュ以下のセピオライト35重量部と粒度250メッシュ
以下の活性炭35重量部とを乾式混合したものを用いた
以外は、実施例1と同様な操作により作製したシート表
皮材を用意し、そのシート表皮材についての熱・水分移
動特性および吸水量を実施例1と同様な操作により計測
した。その結果を図3および図4に示す。
【0061】図2および図3からも明らかなように、実
施例1の温度は、比較例1と同様な変化を示したが、Y
シャツ/表皮間および表皮/パッド間の湿度は比較例1
よりも各々数%低い傾向を示した。また、これら2つの
湿度差すなわちシート表皮の表裏間の湿度差も実施例1
のほうが比較例1よりも大きかった。これは、試験後の
シート表皮の吸水量が実施例1が比較例1よりも約3倍
多かったことと一致する。
【0062】これらの結果から、着座した場合、実施例
1のほうが比較例1よりも人体/シート間の湿度が低く
保たれ、むれが少ないものと予想できる。したがって、
実施例1のシート表皮材によれば、人体が接触する用品
に用いることによりむれを低減できることがわかる。 〔実施例2〕実施例1と同じシリカ系メソ多孔体を用い
て、以下の方法で合成樹脂組成物を得た。粒度100メ
ッシュ以下のシリカ系メソ多孔体38.5重量部に対し
て、100重量部の水を、特殊機化工製ホモディスパー
を用いて混合した。その後、約25%アンモニア水67
重量部を加えて攪拌しpHを6〜7に調整し、実施例1
と同種のアクリルエマルション(不揮発分55%)10
0重量部を加えて混合し、不揮発分31.5%の合成樹
脂組成物を得た。
【0063】得られた合成樹脂組成物を、ポリエステル
繊維からなるファブリックの裏面に、リバースロール・
コーターを用いて固形分で125g/m2 塗布し、13
0℃の熱風乾燥機中で30分間加熱・乾燥し、シリカ系
メソ多孔体として約52g/m2 塗布したシート表皮材
を得た。得られたシート表皮材の性能を調べるために、
以下の方法で着座実験を行った。
【0064】まず、シート表皮材に車両用シートで使わ
れているウレタン製カバーパッドを接着剤でラミネート
した。これを用いて、実際の車両用シートと同じ構成の
シートを試作した。次に、被験者が約25℃相対湿度6
0%の部屋で10分間安静にした後、34℃相対湿度5
0%に保たれた恒温恒湿室に入り、丸椅子に10分間着
座し、シート着座前の官能評価を行った。その後、同室
内に前日から設置しておいた上記シートに50分間着座
し、着座前後から5分間隔で官能評価を行った。この
際、被験者は、ランニング(綿100%)、半袖ワイシ
ャツ(綿60%、ポリエステル40%)、作業ズボン
(綿35%、ポリエステル65%)を着て試験した。な
お、試験は4月に実施した。また、シート表皮/Yシャ
ツと背表面/ランニングの間に超薄型湿度センサーを設
置し、温湿度変化を20秒ごとにデータロガを介してパ
ソコンに取り込んだ。この着座実験の様子を示す模式図
を図5に示す。
【0065】なお、官能申告は、背部のむれ感、べとつ
き感、温度感、湿度感の計4項目で、シート着座直前と
着座後5分毎に被験者が申告用紙に記入する方法で行っ
た。また、申告尺度は4段階評価(0:無感、1:やや
感じる、2:感じる、3:非常に感じる)で評価した。
その温湿度変化を図6に、申告値を図8に示す。なお、
比較例2として、実施例2のシート表皮の作製におい
て、アクリルエマルション(不揮発分55%)だけを実
施例2と同様の操作で固形分で70g/m 2 塗布したシ
ート表皮材を作製し、そのシート表皮材を用いて実施例
2と同様の方法で着座実験を行った。その温湿度変化を
図7に、申告値を図8に示す。
【0066】図6および図7からも明らかなように、実
施例2のシート表皮を用いたシートに着座した場合、同
一条件下の通常のシートである比較例2と比べて背内側
の湿度が高くてもシート表皮/Yシャツ間のシートバッ
ク湿度の上昇が抑えられる傾向が認められた。また、官
能申告においても、図8からも明らかなように、実施例
2に着座したほうが比較例2に着座したときよりも、温
度感では差が見られないが、むれ感、べと付き感、湿度
感の発生が20〜25分間遅延した。
【0067】したがって、実施例2のシート表皮材によ
れば、人体が接触する用品に用いることによりむれを低
減できることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るメソ多孔体の構造を示す説明図で
ある。
【図2】実施例1のシート表皮材の試験における温湿度
の時間変化を示すグラフである。
【図3】比較例1のシート表皮材の試験における温湿度
の時間変化を示すグラフである。
【図4】実施例1および比較例1のシート表皮材の試験
後の吸水量を示すグラフである。
【図5】着座実験の状態を示す模式図である。
【図6】実施例2のシート表皮材の着座実験における温
湿度の時間変化を示すグラフである。
【図7】比較例2のシート表皮材の着座実験における温
湿度の時間変化を示すグラフである。
【図8】(a)(b)(c)(d)実施例2および比較
例2のシート表皮材の着座実験における官能申告値の時
間変化を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 関原 孝俊 愛知県刈谷市豊田町1丁目1番地 豊田 紡織株式会社内 (72)発明者 松山 昭博 愛知県刈谷市豊田町1丁目1番地 豊田 紡織株式会社内 (56)参考文献 特開 平5−98537(JP,A) 特開 平6−304437(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D06M 11/00 - 15/72

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 細孔径分布曲線における最大のピークを
    示す細孔直径(以下、中心細孔直径と称する)が1〜1
    0nmの範囲内にあり、中心細孔直径の±40%の範囲
    内に全細孔容積の60%以上が含まれる無機物からなる
    多孔体と、高分子ラテックスとからなり、前記多孔体は
    比表面積が700m 2 /g以上を有するとともに、前記
    高分子ラテックスの固形成分100重量部に対して5〜
    200重量部の範囲で配合されている合成樹脂組成物を
    布地に塗布したことを特徴とするシート表皮材。
  2. 【請求項2】 X線回折において、d値が1nm以上に
    相当する回折角(2θ)の位置に、1本以上のピークを
    有する無機物からなる多孔体と、高分子ラテックスとか
    らなり、前記多孔体は比表面積が700m 2 /g以上を
    有するとともに、前記高分子ラテックスの固形成分10
    0重量部に対して5〜200重量部の範囲で配合されて
    る合成樹脂組成物を布地に塗布したことを特徴とする
    シート表皮材。
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