JP3397472B2 - 木材含浸処理用組成物 - Google Patents
木材含浸処理用組成物Info
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Description
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、木材に含浸させ硬化さ
せることにより木材の諸性質を改善することができる木
材含浸処理用組成物に関するものであり、本発明の組成
物は、住宅設備及び建築材料等に使用される木材の改質
に使用することができ、これらを使用する分野で賞用さ
れ得るものである。尚、本明細書においては、アクリル
又はメタクリルを(メタ)アクリルと、アクリレート又
はメタクリレートを(メタ)アクリレートと、アクリル
酸又はメタクリル酸を(メタ)アクリル酸という。 【0002】 【従来の技術】従来より、木材の寸法安定性、硬度、耐
吸水性、耐吸湿性、耐摩耗性等を改良するために、木材
に樹脂又はモノマー等からなる木材含浸処理用組成物を
含浸させ、硬化させる方法が知られている。この方法に
より得られる木材プラスチック複合体は、WPC(ウッ
ド プラスチック コンビネーション)と呼ばれ、種々
の建築材料等に利用されている。WPCに使用される木
材含浸処理用組成物は、樹脂としては、スチレンや有機
溶剤等により希釈された不飽和ポリエステルが、またモ
ノマーとしてはメタクリル酸メチルやスチレン等が知ら
れている。しかしながら、従来の樹脂又はモノマーは、
疎水性を有するために、木材の細胞壁内まで含浸されな
いため目的の性質を改善できなかったり、又反応性が不
十分であるため、未硬化モノマーが木材中に残ってしま
い、硬化後に行われる切削工程や研磨工程で、未硬化モ
ノマーが木屑に含まれてしまい、悪臭の問題を発生させ
ていた。又、樹脂を溶解させている有機溶剤やモノマー
は、揮発性が高いために引火の危険性があり、また悪臭
の問題もあった。 【0003】これらの問題を解決するため、木材含浸処
理用組成物として揮発性の低い(メタ)アクリル系のオ
リゴマーを使用することが検討されている。しかし、
(メタ)アクリル系のオリゴマーは、一般的に木材に含
浸しにくいことが多いため、該オリゴマーを水で希釈し
た、水希釈系の木材改質剤が使用されている。例えば
(メタ)アクリル系のオリゴマーをエマルション化した
ものが知られているが(特開昭55−118804)、
安定したエマルションを得るにはオリゴマーや乳化剤の
選択が難しく、また硬化後の木材表面に乳化剤がブリー
ドしてくるという欠点があった。又、水溶性(メタ)ア
クリル系オリゴマーの水溶液も検討されているが(特開
平4−82707)、オリゴマーが水溶性のため、該オ
リゴマーの硬化物も親水性を示し、完全に空気中の水分
を遮断することはできず、木材に耐水性、耐湿性を付与
し難かった。又、木材の含浸性を改善するために水で希
釈したとしても、この様な従来知られた水希釈系の木材
含浸処理用組成物は、木材への含浸性が充分なものでは
なく、従って木材内部の空壁を組成物で完全に埋めるま
では至っていないために、木材の寸法安定性も満足なも
のではなく、寸法安定性の指標となる抗膨潤能(AS
E)の値も充分なものではなかった。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、低揮発
性で取り扱いが容易で、木材への含浸性に優れ、反応性
が高く、含浸処理した木材に耐湿性、寸法安定性を付与
することができる木材含浸処理用組成物を見出すため鋭
意検討した結果、特定の構造を有するポリオール又はポ
リオールのアルキレンオキサイド付加物と(メタ)アク
リル酸との反応生成物が有効であることを見出した(特
願平5−89382号)。本発明者らは、上記した性能
がさらに優れる木材含浸処理用組成物を見いだすため鋭
意検討を行ったのである。 【0005】 【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記課題
を解決するには、特定の構造を有する(メタ)アクリレ
ートが、木材への含浸性及び反応性がさらに優れ、又含
浸処理した木材にさらに優れた耐湿性、寸法安定性を付
与できることを見い出し本発明を完成した。即ち本発明
は、2〜4個の水酸基を有する飽和脂肪族アルコールの
プロピレンオキサイド付加物と(メタ)アクリル酸との
反応による、下記一般式(1)で表される反応生成物か
らなる木材含浸処理用組成物に関する。 【0006】 【化2】 【0007】以下、本発明を詳細に説明する。 【0008】本発明の木材含浸処理用組成物における、
上記一般式(1)で表される反応生成物〔以下単に反応
生成物という〕は、2〜4個の水酸基を有する飽和脂肪
族アルコールのプロピレンオキサイド付加物に対して、
それぞれの水酸基すべてに(メタ)アクリル酸がエステ
ル化反応したものである。 【0009】2個の水酸基を有する飽和脂肪族アルコー
ルとしては、炭素数5以上のアルコールである必要があ
り、例えばペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプ
タンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デ
カンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサ
ンジメタノール又はシクロヘキサンジオール等が挙げら
れる。 【0010】水酸基を3個又は4個有する飽和脂肪族ア
ルコールとしては、例えば、トリメチロールプロパン、
トリメチロールエタン、グリセリン又はペンタエリスリ
トール等が挙げられる。 【0011】前記一般式(1)におけるRは、n価の飽
和脂肪族炭化水素基、即ち前記2〜4個の水酸基を有す
る飽和脂肪族アルコールから水酸基を除いた基である。
本発明では、炭素数5以上、好ましくは炭素数5〜15
の2個の水酸基を有する飽和脂肪族アルコール、水酸基
を3個又は4個有する飽和脂肪族アルコールを使用して
得られる反応生成物が、木材に対する含浸性に優れるた
めに使用される。炭素数が4個以下の2個の水酸基を有
するアルコールを使用して得られる反応生成物は、親水
性が強いものであるが、この様なものは木材を構成する
導管部への樹脂の充填性が悪くなる傾向にあるため、水
分の吸収を完全に遮断することができず、充分な寸法安
定性が得られない。一方、炭素数が16個以上の2個の
水酸基を有するアルコールを使用する場合は、得られる
反応生成物の疎水性が強くなるために、木材を構成する
木質部への浸透性が充分ではなくなる。 【0012】反応生成物において、飽和脂肪族アルコー
ルの1つの水酸基に対するプロピレンオキサイドの付加
量、即ち一般式(1)におけるaの値は、0〜10でな
らなくてはならなず、かつ複数個存在するQにおいて、
少なくとも1つのaは1以上でなければならない。aの
値が10を越える反応生成物は、架橋密度が低くなり、
硬化物の硬度が低下してしまう。又、一般式(1)にお
いて、反応生成物中に存在するプロピレンオキサイド付
加物の合計量、即ちaとnの積は、1〜15となること
が好ましく、より好ましくは1〜10である。この値が
15を越える場合は、硬化物の架橋密度が低く、硬化物
に充分な強度が発現しなくなってしまう恐れがある。本
発明の組成物は、プロピレオキサイドが付加されていな
いポリオールと(メタ)アクリル酸との反応生成物を使
用した組成物に比べ、木材の導管部への浸透性に優れ、
又得られる処理木材が耐水性に優れ、特にWPC処理し
た場合において顕著である。 【0013】一般式(1)において、Qの数を示すnは
2〜4である。nが2に満たない場合は、反応生成物中
の(メタ)アクリロイル基の数が少ないため硬化反応性
が低下してしまい、一方4を越える場合は、反応生成物
中の(メタ)アクリロイル基の数が多すぎ、硬化時の収
縮が激しいために木材組織を破壊してしまう恐れがあ
る。又、反応生成物中に2〜4個存在する各Qにおけ
る、R1 又はR2 は、それぞれ同一であっても、異なっ
ていても良い。即ち、反応生成物として、1分子中にア
クリロイル基とメタクリロイル基を有する反応生成物で
も良く、又1分子中に異なるプロピレン基を有するもの
であっても良い。 【0014】本発明で使用する反応生成物は、通常知ら
れたエステル化反応により得ることができ、例えば上記
した2〜4個の水酸基を有する飽和脂肪族アルコールの
プロピレンオキサイド付加物と(メタ)アクリル酸を通
常知られたエステル化反応を行う方法が挙げられる。よ
り具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン又はシク
ロヘキサン等の有機溶媒中にポリオールのプロピレンオ
キサイド付加物、(メタ)アクリル酸、パラトルエンス
ルホン酸又は硫酸等の酸触媒、及びハイドロキノン、ハ
イドロキノンモノメチルエーテル、カテコール又はフェ
ノチアジン等の重合禁止剤を混合し、攪拌下加熱して脱
水エステル化する方法が挙げられる。有機溶媒としては
水に溶解し難いものが、副生する水の分離を容易にし、
脱水反応を容易に進行させることができるため好まし
い。得られた化合物の精製方法も常法に従えばよく、例
えば反応液を水洗した後、減圧蒸留により溶媒を除く方
法等が挙げられる。 【0015】反応生成物は単一化合物ではなく、化学構
造が異なる複数の化合物からなる組成物であって、前記
一般式(1)におけるn及びaは、いずれも反応生成物
における各化合物の平均値を示している。 【0016】本発明の木材含浸処理用組成物において
は、反応生成物を1種のみ、または2種以上使用するこ
ともできる。 【0017】本発明の木材含浸処理用組成物には、必要
に応じて反応生成物に種々の成分を配合することができ
る。例えば、組成物の粘度を低下させるために、有機溶
剤、水又は反応性希釈剤を配合できる。 【0018】有機溶剤としては、例えばメチルエチルケ
トン或いはメチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸
エチル或いは酢酸ブチル等の酢酸エステル類、トルエン
或いはキシレン等の芳香族炭化水素類、メタノール或い
はイソプロピルアルコール等のアルコール類、メチルセ
ロソルブ或いはエチルセロソルブ等のセロソルブ類、又
はメチルセロソルブアセエテート或いはエチルセロソル
ブアセテート等のセロソルブアセエート類等を挙げるこ
とができ、これらは1種又は2種以上を使用することが
できる。 【0019】又、反応性希釈剤の代表例は、分子中に
(メタ)アクリロイル基を有する化合物であり、粘度が
25℃で200cps以下のものが、組成物の粘度を低
下させる効果が大きいため好ましい。分子中に(メタ)
アクリロイル基を有する化合物は市販されており、例え
ばテトラヒドロフルフリルアクリレート〔大阪有機化学
工業(株)製ビスコート150〕、フェノキシエトキシ
エチルアクリレート〔東亞合成(株)製アロニックスM
101〕、ネオペンチルグリコールジアクリレート〔大
阪有機化学工業(株)製ビスコート215〕、ヘキサン
ジオールジアクリレート〔大阪有機化学工業(株)製ビ
スコート230〕等がある。これら以外にも、ヒドロキ
シエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル
(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アク
リレート、ポリエチレングリコールモノヒドロキシモノ
(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ
ヒドロキシモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチ
ル(メタ)アクリレートのコハク酸付加物、ヒドロキシ
プロピル(メタ)アクリレートのコハク酸付加物、又は
(メタ)アクリル酸のフェニルグリシジルエーテル付加
物等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上を使用
することができる。 【0020】反応性希釈剤を配合する場合の割合は、反
応生成物100重量部に対して100重量部以下、又有
機溶剤や水を配合する場合の割合は、反応生成物及び反
応性希釈剤(以下これらを硬化性成分という)の合計量
100重量部に対して100重量部以下とすることが好
ましい。 【0021】本発明の木材含浸処理用組成物には、貯蔵
中のゲル化を防止し貯蔵安定性を増すために、安定剤を
配合することができる。好適な安定剤としては、例えば
ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、
t−ブチルハイドロキノン或いはカテコール等のフェノ
ール類、ベンゾキノン、ナフトキノン或いはジフェニル
ベンゾキノン等のキノン類、フェノチアジン、又は銅塩
等が挙げられる。これらの安定剤の使用量は、硬化性成
分100重量部に対して0.00001〜0.01重量
部とするのが好ましい。 【0022】本発明の木材含浸処理用組成物を木材に含
浸させる方法としては、種々の方法が使用でき、例え
ば、減圧含浸法、加圧含浸法、常圧浸漬法等が挙げられ
る。改質できる木材の種類は、多岐にわたっており、広
葉樹、針葉樹その他に使用することができる。 【0023】本発明の木材含浸処理用組成物の木材への
含浸深さは、特に限定されず、木材の種類、改質目的に
応じて種々設定すればよい。特に本発明の組成物は、木
材の木質部及び導管部に対して優れた含浸性を有し、そ
の硬化物は高い硬度、寸法安定性、及び耐湿性等を有す
るため、木材の表層にのみ含浸させ硬化させることで目
的を達成することができ、この場合組成物の使用量が少
なくても済み経済的である。含浸深さの好ましい範囲と
しては、1mm以上であり、より好ましくは3mm以上
である。 【0024】木材に含浸させた木材含浸処理用組成物を
硬化させる方法としては、種々の方法が採用でき、組成
物にラジカル重合開始剤を配合して、加熱や光により硬
化させることができる。加熱炉、赤外線、マイクロ波等
の熱エネルギー源を使用して熱硬化させる場合は、熱重
合開始剤を配合する。好適に用いられる熱重合開始剤と
しては、例えば、アゾイソブチロニトリル等のアゾ系化
合物類、メチルエチルケトンパーオキサイド又はシクロ
ヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド
類、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等
のハイドロパーオキサイド類、ジクミルパーオキサイド
等のアルキルパーオキサイド類、ベンゾイルパーオキサ
イド又はトルオイルパーオキサイド等のアシルパーオキ
サイド類、及びクミルパーオキシオクトエート又はブチ
ルパーオキシイソブチレート等のパーオキシエステル類
等の各種有機過酸化物類、並びに過硫酸アンモニウム等
の無機過酸化物類等が挙げられる。常温で放置して硬化
させる場合、または100℃以下の比較的低温で加熱硬
化させる場合には、上記熱重合開始剤と共に重合促進剤
を配合することが好ましく、好ましい重合促進剤として
例えば、コバルト、鉄、マンガン等の金属とナフテン
酸、リノール酸、アセチルアセトン等との有機金属塩
類、ジメチルパラトルイジン、アスコルビン酸等の還元
性アミン類及びその他の還元物質等が挙げられる。紫外
線又は可視光線の照射により硬化させる場合には、一般
的に使用されている光開始剤や増感剤を配合する。好ま
しい光開始剤としては、ベンゾフェノン及びその誘導
体、ベンゾイン、ベンゾインアルキルエーテル、2−メ
チル〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリ
ノ−1−プロパノン〔市販品としてはチバガイギー製イ
ルガキュアー907がある〕、ベンジルジメチルケター
ル〔市販品としてはチバガイギー製イルガキュアー65
1がある〕、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケ
トン〔市販品としてはチバガイギー製イルガキュアー1
84がある〕、ジエトキシアセトフェノン〔市販品とし
てはファーストケミカル製ファーストキュアーDEAP
がある〕、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル
プロパン−1−オン〔市販品としてはチバガイギー製ダ
ロキュアー1173がある〕、4−(2−ヒドロキシエ
トキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケ
トン〔市販品としてはチバガイギー製イルガキュアー2
959がある〕、及び2−ベンジル−2−ジメチルアミ
ノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン〔市販
品としてはチバガイギー製イルガキュアー369があ
る〕等が挙げられる。これら熱重合開始剤及び重合促進
剤、並びに光開始剤及び増感剤の配合量は、常法に従え
ば良く、例えば硬化性成分100重量部に対して0.0
1〜20重量部が好ましい。0.01重量部未満では、
充分に重合させることができず、20重量部を越える
と、硬化性成分の量が相対的に減少するため、硬化物の
特性が低下する恐れがある。特に好ましい開始剤の使用
量としては、0.1〜10重量部である。組成物を電子
線や放射線の照射により硬化させる場合には、重合開始
剤を使用しなくてもよい。 【0025】本発明の木材含浸処理用組成物には、上記
の他、必要に応じて染料、顔料等、木材への含浸量の調
節のためにフィラー等を配合することもできる。 【0026】 【作用】木材は、構造的には細胞組織の詰まっている木
質部と水分等が流れていた導管部の2つ部分とからな
る。それらのいずれの部分にも、極性の高い組成物が浸
透し易く、非極性の物でも水希釈系にすることにより幾
分浸透させることができるが、導管部には浸透した組成
物が抜け出やすいという性質がある。導管部に組成物を
充分に埋めるために、粘度の高い組成物を使用すればあ
る程度の充填は可能となるが、この場合は木質部に組成
物が浸透しにくくなってしまうという問題が生じる。本
発明における木材含浸処理用組成物は、次の4つの大き
な特徴を持つ。極性のバランスがとれているために、
木質部への浸透性に優れかつ硬化後も導管部に充填した
状態を維持することができる。硬化物は硬化収縮の程
度が小さいために、木材組織を破壊することがない。
反応性に優れるため容易に硬化し、しかも硬化後は木質
部及び導管部に固定され、木材表面にしみ出すことがな
い。得られた硬化物は硬度が高く木材の補強が充分で
ある。従って、本発明の木材含浸用組成物は、木材に対
する含浸性に優れ、含浸後硬化させた木材に寸法安定
性、耐湿性を付与することができるのである。 【0027】 【実施例】以下に、実施例及び比較例を挙げ、本発明を
より具体的に説明する。なお、各例における部または%
は、特に断わらない限り重量基準である。 ○評価方法 各例で得た木材含浸用処理組成物をブナ材のブロック片
(2×2×10cm)に減圧法によって含浸させ、80
℃で10時間の加熱処理を行い、組成物を硬化させるこ
とにより含浸処理木材を製造した。各含浸処理木材につ
いて、含浸率を測定した。また、各含浸処理木材を温度
20℃で湿度94%の条件下に30日間保持する吸湿試
験を行い、吸湿性と寸法安定性を測定した。 【0028】・含浸率 含浸率は、未含浸処理木材に対する含浸処理木材の重量
増加率(%)で表した。 【0029】・吸湿性及び寸法安定性 吸湿性と寸法安定性は、それぞれ次式で表される、ME
E及びASE値で示した。 【0030】 【式1】 【0031】ここで、UO は未含浸処理木材の吸湿率
(%)を示し、Uは含浸処理木材の吸湿率(%)を示
す。尚、吸湿率は、吸湿試験前後の木材の重量変化の割
合である。 【0032】 【式2】【0033】ここで、SO は未含浸処理木材の膨潤率
(%)を示し、Sは含浸処理木材の膨潤率(%)を示
す。尚、膨潤率は、吸湿試験前後の木材の体積変化の割
合である。 【0034】・硬化状況 含浸処理木材を切断して、内部の組成物の硬化状態を目
視で調べた。○は硬化が充分であることを意味し、×は
硬化が不充分であることを意味する。 【0035】合成例1 攪拌器、温度計及び上部に冷却管を付帯した水分離管を
備えたフラスコに、ネオペンチルグリコールのプロピレ
ンオキサイド4.0モル付加物(分子量336)336
g(1モル)、アクリル酸144g(2モル)、触媒と
してパラトルエンスルホン酸19g(反応物全体に対し
て2%)、重合防止剤としてハイドロキノンモノメチル
エーテル0.2g(反応物全体に対して250pp
m)、及び溶媒としてトルエン480g(反応物全体に
対して50%)を仕込んだ後、攪拌下加熱し、反応温度
110℃で5時間脱水エステル反応を行った。水分離管
に溜まった水の量は36gであった。反応終了後、反応
液を水洗した後、トルエンを減圧蒸留により除き、ネオ
ペンチルグリコールのプロピレンオキサイド4.0モル
付加物のジアクリレートを主成分とする反応生成物を得
た。これを組成物Aとする。この反応生成物は、一般式
(1)における各記号が次のとおりのものである。 R :ネオペンチルグリコール残基(炭素数=5) R1 :プロピレン R2 :水素原子 a :2.0 n :2.0 【0036】合成例2 トリメチロールプロパンのプロピレンオキサイド3.0
モル付加物(平均分子量308)308g(1モル)、
アクリル酸216g(3モル)、触媒としてパラトルエ
ンスルホン酸21g(反応物全体に対して2%)、重合
防止剤としてハイドロキノンモノメチルエーテル0.3
g(反応物全体に対して250ppm)、そして溶媒と
してトルエン524g(反応物全体にして50%)を使
用し、合成例1と同様の方法で脱水エステル反応を行っ
た。水分離管に溜まった水の量は54gであった。合成
例1と同様に後処理をし、トリメチロールプロパンのプ
ロピレンオキサイド3モル付加物のトリアクリレートを
主成分とする反応生成物を得た。これを組成物Bとす
る。この反応生成物は、一般式(1)における各記号が
次のとおりのものである。 R :トリメチロールプロパン残基 R1 :プロピレン R2 :水素原子 a :1.0 n :3.0 【0037】比較合成例1 ネオペンチルグリコールのエチレンオキサイド4.1モ
ル付加物(分子量280)285g(1モル)、アクリ
ル酸144g(2モル)、触媒としてパラトルエンスル
ホン酸17g(反応物全体に対して2%)、重合防止剤
としてハイドロキノンモノメチルエーテル0.2g(反
応物全体に対して250ppm)、及び溶媒としてトル
エン429g(反応物全体に対して50%)をを使用
し、合成例1と同様の方法で脱水エステル反応を行っ
た。水分離管に溜まった水の量は36gであった。合成
例1と同様に後処理をし、ネオペンチルグリコールのエ
チレンオキサイド4.1モル付加物のジアクリレートを
主成分とする反応生成物を得た。これを組成物A’とす
る。この反応生成物は、一般式(1)における各記号が
次のとおりのものである。 R :ネオペンチルグリコール残基(炭素数=5) R1 :エチレン R2 :水素原子 a :2.05 n :2.0 【0038】比較合成例2 トリメチロールプロパンのエチレンオキサイド3.0モ
ル付加物(平均分子量270)270g(1モル)、ア
クリル酸216g(3モル)、触媒としてパラトルエン
スルホン酸19g(反応物全体に対して2%)、重合防
止剤としてハイドロキノンモノメチルエーテル0.2g
(反応物全体に対して250ppm)、そして溶媒とし
てトルエン486g(反応物全体にして50%)を使用
し、合成例1と同様の方法で脱水エステル反応を行っ
た。水分離管に溜まった水の量は54gであった。合成
例1と同様に後処理をし、トリメチロールプロパンのエ
チレンオキサイド3モル付加物のトリアクリレートを主
成分とする反応生成物を得た。これを組成物B’とす
る。 R :トリメチロールプロパン残基(炭素数=6) R1 :エチレン R1 :水素原子 a2 :1.0 c :3.0 n :0 【0039】実施例1〜2 表1に示される各組成物100部に、重合開始剤として
ベンゾイルパーオキサイドを1部を配合して、木材含浸
処理用組成物を調製した。各評価結果は表1に示すとお
りであった。 【0040】比較例1〜4 表1に示される各組成物100部に、重合開始剤として
ベンゾイルパーオキサイドを1部を配合して、木材含浸
処理用組成物を調製した。各評価結果は表1に示すとお
りであった。 【0041】 【表1】 ・アロニックスM245:ポリエチレングリコールジア
クリレート〔東亞合成(株)製〕 ・アロニックスM113:ノニルフェノールエチレンオ
キサイドの4モル付加物のアクリレート〔東亞合成
(株)製〕 【0042】 【発明の効果】本発明の木材含浸処理用組成物は、木材
への含浸性に優れ、反応性が高く、低揮発性で取り扱い
も容易であり、木材へ含浸させ硬化させることにより、
木材に耐湿性、寸法安定性及び強度を付与することがで
き、木材の改質のために賞用されるものである。
せることにより木材の諸性質を改善することができる木
材含浸処理用組成物に関するものであり、本発明の組成
物は、住宅設備及び建築材料等に使用される木材の改質
に使用することができ、これらを使用する分野で賞用さ
れ得るものである。尚、本明細書においては、アクリル
又はメタクリルを(メタ)アクリルと、アクリレート又
はメタクリレートを(メタ)アクリレートと、アクリル
酸又はメタクリル酸を(メタ)アクリル酸という。 【0002】 【従来の技術】従来より、木材の寸法安定性、硬度、耐
吸水性、耐吸湿性、耐摩耗性等を改良するために、木材
に樹脂又はモノマー等からなる木材含浸処理用組成物を
含浸させ、硬化させる方法が知られている。この方法に
より得られる木材プラスチック複合体は、WPC(ウッ
ド プラスチック コンビネーション)と呼ばれ、種々
の建築材料等に利用されている。WPCに使用される木
材含浸処理用組成物は、樹脂としては、スチレンや有機
溶剤等により希釈された不飽和ポリエステルが、またモ
ノマーとしてはメタクリル酸メチルやスチレン等が知ら
れている。しかしながら、従来の樹脂又はモノマーは、
疎水性を有するために、木材の細胞壁内まで含浸されな
いため目的の性質を改善できなかったり、又反応性が不
十分であるため、未硬化モノマーが木材中に残ってしま
い、硬化後に行われる切削工程や研磨工程で、未硬化モ
ノマーが木屑に含まれてしまい、悪臭の問題を発生させ
ていた。又、樹脂を溶解させている有機溶剤やモノマー
は、揮発性が高いために引火の危険性があり、また悪臭
の問題もあった。 【0003】これらの問題を解決するため、木材含浸処
理用組成物として揮発性の低い(メタ)アクリル系のオ
リゴマーを使用することが検討されている。しかし、
(メタ)アクリル系のオリゴマーは、一般的に木材に含
浸しにくいことが多いため、該オリゴマーを水で希釈し
た、水希釈系の木材改質剤が使用されている。例えば
(メタ)アクリル系のオリゴマーをエマルション化した
ものが知られているが(特開昭55−118804)、
安定したエマルションを得るにはオリゴマーや乳化剤の
選択が難しく、また硬化後の木材表面に乳化剤がブリー
ドしてくるという欠点があった。又、水溶性(メタ)ア
クリル系オリゴマーの水溶液も検討されているが(特開
平4−82707)、オリゴマーが水溶性のため、該オ
リゴマーの硬化物も親水性を示し、完全に空気中の水分
を遮断することはできず、木材に耐水性、耐湿性を付与
し難かった。又、木材の含浸性を改善するために水で希
釈したとしても、この様な従来知られた水希釈系の木材
含浸処理用組成物は、木材への含浸性が充分なものでは
なく、従って木材内部の空壁を組成物で完全に埋めるま
では至っていないために、木材の寸法安定性も満足なも
のではなく、寸法安定性の指標となる抗膨潤能(AS
E)の値も充分なものではなかった。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、低揮発
性で取り扱いが容易で、木材への含浸性に優れ、反応性
が高く、含浸処理した木材に耐湿性、寸法安定性を付与
することができる木材含浸処理用組成物を見出すため鋭
意検討した結果、特定の構造を有するポリオール又はポ
リオールのアルキレンオキサイド付加物と(メタ)アク
リル酸との反応生成物が有効であることを見出した(特
願平5−89382号)。本発明者らは、上記した性能
がさらに優れる木材含浸処理用組成物を見いだすため鋭
意検討を行ったのである。 【0005】 【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記課題
を解決するには、特定の構造を有する(メタ)アクリレ
ートが、木材への含浸性及び反応性がさらに優れ、又含
浸処理した木材にさらに優れた耐湿性、寸法安定性を付
与できることを見い出し本発明を完成した。即ち本発明
は、2〜4個の水酸基を有する飽和脂肪族アルコールの
プロピレンオキサイド付加物と(メタ)アクリル酸との
反応による、下記一般式(1)で表される反応生成物か
らなる木材含浸処理用組成物に関する。 【0006】 【化2】 【0007】以下、本発明を詳細に説明する。 【0008】本発明の木材含浸処理用組成物における、
上記一般式(1)で表される反応生成物〔以下単に反応
生成物という〕は、2〜4個の水酸基を有する飽和脂肪
族アルコールのプロピレンオキサイド付加物に対して、
それぞれの水酸基すべてに(メタ)アクリル酸がエステ
ル化反応したものである。 【0009】2個の水酸基を有する飽和脂肪族アルコー
ルとしては、炭素数5以上のアルコールである必要があ
り、例えばペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプ
タンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デ
カンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサ
ンジメタノール又はシクロヘキサンジオール等が挙げら
れる。 【0010】水酸基を3個又は4個有する飽和脂肪族ア
ルコールとしては、例えば、トリメチロールプロパン、
トリメチロールエタン、グリセリン又はペンタエリスリ
トール等が挙げられる。 【0011】前記一般式(1)におけるRは、n価の飽
和脂肪族炭化水素基、即ち前記2〜4個の水酸基を有す
る飽和脂肪族アルコールから水酸基を除いた基である。
本発明では、炭素数5以上、好ましくは炭素数5〜15
の2個の水酸基を有する飽和脂肪族アルコール、水酸基
を3個又は4個有する飽和脂肪族アルコールを使用して
得られる反応生成物が、木材に対する含浸性に優れるた
めに使用される。炭素数が4個以下の2個の水酸基を有
するアルコールを使用して得られる反応生成物は、親水
性が強いものであるが、この様なものは木材を構成する
導管部への樹脂の充填性が悪くなる傾向にあるため、水
分の吸収を完全に遮断することができず、充分な寸法安
定性が得られない。一方、炭素数が16個以上の2個の
水酸基を有するアルコールを使用する場合は、得られる
反応生成物の疎水性が強くなるために、木材を構成する
木質部への浸透性が充分ではなくなる。 【0012】反応生成物において、飽和脂肪族アルコー
ルの1つの水酸基に対するプロピレンオキサイドの付加
量、即ち一般式(1)におけるaの値は、0〜10でな
らなくてはならなず、かつ複数個存在するQにおいて、
少なくとも1つのaは1以上でなければならない。aの
値が10を越える反応生成物は、架橋密度が低くなり、
硬化物の硬度が低下してしまう。又、一般式(1)にお
いて、反応生成物中に存在するプロピレンオキサイド付
加物の合計量、即ちaとnの積は、1〜15となること
が好ましく、より好ましくは1〜10である。この値が
15を越える場合は、硬化物の架橋密度が低く、硬化物
に充分な強度が発現しなくなってしまう恐れがある。本
発明の組成物は、プロピレオキサイドが付加されていな
いポリオールと(メタ)アクリル酸との反応生成物を使
用した組成物に比べ、木材の導管部への浸透性に優れ、
又得られる処理木材が耐水性に優れ、特にWPC処理し
た場合において顕著である。 【0013】一般式(1)において、Qの数を示すnは
2〜4である。nが2に満たない場合は、反応生成物中
の(メタ)アクリロイル基の数が少ないため硬化反応性
が低下してしまい、一方4を越える場合は、反応生成物
中の(メタ)アクリロイル基の数が多すぎ、硬化時の収
縮が激しいために木材組織を破壊してしまう恐れがあ
る。又、反応生成物中に2〜4個存在する各Qにおけ
る、R1 又はR2 は、それぞれ同一であっても、異なっ
ていても良い。即ち、反応生成物として、1分子中にア
クリロイル基とメタクリロイル基を有する反応生成物で
も良く、又1分子中に異なるプロピレン基を有するもの
であっても良い。 【0014】本発明で使用する反応生成物は、通常知ら
れたエステル化反応により得ることができ、例えば上記
した2〜4個の水酸基を有する飽和脂肪族アルコールの
プロピレンオキサイド付加物と(メタ)アクリル酸を通
常知られたエステル化反応を行う方法が挙げられる。よ
り具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン又はシク
ロヘキサン等の有機溶媒中にポリオールのプロピレンオ
キサイド付加物、(メタ)アクリル酸、パラトルエンス
ルホン酸又は硫酸等の酸触媒、及びハイドロキノン、ハ
イドロキノンモノメチルエーテル、カテコール又はフェ
ノチアジン等の重合禁止剤を混合し、攪拌下加熱して脱
水エステル化する方法が挙げられる。有機溶媒としては
水に溶解し難いものが、副生する水の分離を容易にし、
脱水反応を容易に進行させることができるため好まし
い。得られた化合物の精製方法も常法に従えばよく、例
えば反応液を水洗した後、減圧蒸留により溶媒を除く方
法等が挙げられる。 【0015】反応生成物は単一化合物ではなく、化学構
造が異なる複数の化合物からなる組成物であって、前記
一般式(1)におけるn及びaは、いずれも反応生成物
における各化合物の平均値を示している。 【0016】本発明の木材含浸処理用組成物において
は、反応生成物を1種のみ、または2種以上使用するこ
ともできる。 【0017】本発明の木材含浸処理用組成物には、必要
に応じて反応生成物に種々の成分を配合することができ
る。例えば、組成物の粘度を低下させるために、有機溶
剤、水又は反応性希釈剤を配合できる。 【0018】有機溶剤としては、例えばメチルエチルケ
トン或いはメチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸
エチル或いは酢酸ブチル等の酢酸エステル類、トルエン
或いはキシレン等の芳香族炭化水素類、メタノール或い
はイソプロピルアルコール等のアルコール類、メチルセ
ロソルブ或いはエチルセロソルブ等のセロソルブ類、又
はメチルセロソルブアセエテート或いはエチルセロソル
ブアセテート等のセロソルブアセエート類等を挙げるこ
とができ、これらは1種又は2種以上を使用することが
できる。 【0019】又、反応性希釈剤の代表例は、分子中に
(メタ)アクリロイル基を有する化合物であり、粘度が
25℃で200cps以下のものが、組成物の粘度を低
下させる効果が大きいため好ましい。分子中に(メタ)
アクリロイル基を有する化合物は市販されており、例え
ばテトラヒドロフルフリルアクリレート〔大阪有機化学
工業(株)製ビスコート150〕、フェノキシエトキシ
エチルアクリレート〔東亞合成(株)製アロニックスM
101〕、ネオペンチルグリコールジアクリレート〔大
阪有機化学工業(株)製ビスコート215〕、ヘキサン
ジオールジアクリレート〔大阪有機化学工業(株)製ビ
スコート230〕等がある。これら以外にも、ヒドロキ
シエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル
(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アク
リレート、ポリエチレングリコールモノヒドロキシモノ
(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ
ヒドロキシモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチ
ル(メタ)アクリレートのコハク酸付加物、ヒドロキシ
プロピル(メタ)アクリレートのコハク酸付加物、又は
(メタ)アクリル酸のフェニルグリシジルエーテル付加
物等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上を使用
することができる。 【0020】反応性希釈剤を配合する場合の割合は、反
応生成物100重量部に対して100重量部以下、又有
機溶剤や水を配合する場合の割合は、反応生成物及び反
応性希釈剤(以下これらを硬化性成分という)の合計量
100重量部に対して100重量部以下とすることが好
ましい。 【0021】本発明の木材含浸処理用組成物には、貯蔵
中のゲル化を防止し貯蔵安定性を増すために、安定剤を
配合することができる。好適な安定剤としては、例えば
ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、
t−ブチルハイドロキノン或いはカテコール等のフェノ
ール類、ベンゾキノン、ナフトキノン或いはジフェニル
ベンゾキノン等のキノン類、フェノチアジン、又は銅塩
等が挙げられる。これらの安定剤の使用量は、硬化性成
分100重量部に対して0.00001〜0.01重量
部とするのが好ましい。 【0022】本発明の木材含浸処理用組成物を木材に含
浸させる方法としては、種々の方法が使用でき、例え
ば、減圧含浸法、加圧含浸法、常圧浸漬法等が挙げられ
る。改質できる木材の種類は、多岐にわたっており、広
葉樹、針葉樹その他に使用することができる。 【0023】本発明の木材含浸処理用組成物の木材への
含浸深さは、特に限定されず、木材の種類、改質目的に
応じて種々設定すればよい。特に本発明の組成物は、木
材の木質部及び導管部に対して優れた含浸性を有し、そ
の硬化物は高い硬度、寸法安定性、及び耐湿性等を有す
るため、木材の表層にのみ含浸させ硬化させることで目
的を達成することができ、この場合組成物の使用量が少
なくても済み経済的である。含浸深さの好ましい範囲と
しては、1mm以上であり、より好ましくは3mm以上
である。 【0024】木材に含浸させた木材含浸処理用組成物を
硬化させる方法としては、種々の方法が採用でき、組成
物にラジカル重合開始剤を配合して、加熱や光により硬
化させることができる。加熱炉、赤外線、マイクロ波等
の熱エネルギー源を使用して熱硬化させる場合は、熱重
合開始剤を配合する。好適に用いられる熱重合開始剤と
しては、例えば、アゾイソブチロニトリル等のアゾ系化
合物類、メチルエチルケトンパーオキサイド又はシクロ
ヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド
類、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等
のハイドロパーオキサイド類、ジクミルパーオキサイド
等のアルキルパーオキサイド類、ベンゾイルパーオキサ
イド又はトルオイルパーオキサイド等のアシルパーオキ
サイド類、及びクミルパーオキシオクトエート又はブチ
ルパーオキシイソブチレート等のパーオキシエステル類
等の各種有機過酸化物類、並びに過硫酸アンモニウム等
の無機過酸化物類等が挙げられる。常温で放置して硬化
させる場合、または100℃以下の比較的低温で加熱硬
化させる場合には、上記熱重合開始剤と共に重合促進剤
を配合することが好ましく、好ましい重合促進剤として
例えば、コバルト、鉄、マンガン等の金属とナフテン
酸、リノール酸、アセチルアセトン等との有機金属塩
類、ジメチルパラトルイジン、アスコルビン酸等の還元
性アミン類及びその他の還元物質等が挙げられる。紫外
線又は可視光線の照射により硬化させる場合には、一般
的に使用されている光開始剤や増感剤を配合する。好ま
しい光開始剤としては、ベンゾフェノン及びその誘導
体、ベンゾイン、ベンゾインアルキルエーテル、2−メ
チル〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリ
ノ−1−プロパノン〔市販品としてはチバガイギー製イ
ルガキュアー907がある〕、ベンジルジメチルケター
ル〔市販品としてはチバガイギー製イルガキュアー65
1がある〕、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケ
トン〔市販品としてはチバガイギー製イルガキュアー1
84がある〕、ジエトキシアセトフェノン〔市販品とし
てはファーストケミカル製ファーストキュアーDEAP
がある〕、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル
プロパン−1−オン〔市販品としてはチバガイギー製ダ
ロキュアー1173がある〕、4−(2−ヒドロキシエ
トキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケ
トン〔市販品としてはチバガイギー製イルガキュアー2
959がある〕、及び2−ベンジル−2−ジメチルアミ
ノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン〔市販
品としてはチバガイギー製イルガキュアー369があ
る〕等が挙げられる。これら熱重合開始剤及び重合促進
剤、並びに光開始剤及び増感剤の配合量は、常法に従え
ば良く、例えば硬化性成分100重量部に対して0.0
1〜20重量部が好ましい。0.01重量部未満では、
充分に重合させることができず、20重量部を越える
と、硬化性成分の量が相対的に減少するため、硬化物の
特性が低下する恐れがある。特に好ましい開始剤の使用
量としては、0.1〜10重量部である。組成物を電子
線や放射線の照射により硬化させる場合には、重合開始
剤を使用しなくてもよい。 【0025】本発明の木材含浸処理用組成物には、上記
の他、必要に応じて染料、顔料等、木材への含浸量の調
節のためにフィラー等を配合することもできる。 【0026】 【作用】木材は、構造的には細胞組織の詰まっている木
質部と水分等が流れていた導管部の2つ部分とからな
る。それらのいずれの部分にも、極性の高い組成物が浸
透し易く、非極性の物でも水希釈系にすることにより幾
分浸透させることができるが、導管部には浸透した組成
物が抜け出やすいという性質がある。導管部に組成物を
充分に埋めるために、粘度の高い組成物を使用すればあ
る程度の充填は可能となるが、この場合は木質部に組成
物が浸透しにくくなってしまうという問題が生じる。本
発明における木材含浸処理用組成物は、次の4つの大き
な特徴を持つ。極性のバランスがとれているために、
木質部への浸透性に優れかつ硬化後も導管部に充填した
状態を維持することができる。硬化物は硬化収縮の程
度が小さいために、木材組織を破壊することがない。
反応性に優れるため容易に硬化し、しかも硬化後は木質
部及び導管部に固定され、木材表面にしみ出すことがな
い。得られた硬化物は硬度が高く木材の補強が充分で
ある。従って、本発明の木材含浸用組成物は、木材に対
する含浸性に優れ、含浸後硬化させた木材に寸法安定
性、耐湿性を付与することができるのである。 【0027】 【実施例】以下に、実施例及び比較例を挙げ、本発明を
より具体的に説明する。なお、各例における部または%
は、特に断わらない限り重量基準である。 ○評価方法 各例で得た木材含浸用処理組成物をブナ材のブロック片
(2×2×10cm)に減圧法によって含浸させ、80
℃で10時間の加熱処理を行い、組成物を硬化させるこ
とにより含浸処理木材を製造した。各含浸処理木材につ
いて、含浸率を測定した。また、各含浸処理木材を温度
20℃で湿度94%の条件下に30日間保持する吸湿試
験を行い、吸湿性と寸法安定性を測定した。 【0028】・含浸率 含浸率は、未含浸処理木材に対する含浸処理木材の重量
増加率(%)で表した。 【0029】・吸湿性及び寸法安定性 吸湿性と寸法安定性は、それぞれ次式で表される、ME
E及びASE値で示した。 【0030】 【式1】 【0031】ここで、UO は未含浸処理木材の吸湿率
(%)を示し、Uは含浸処理木材の吸湿率(%)を示
す。尚、吸湿率は、吸湿試験前後の木材の重量変化の割
合である。 【0032】 【式2】【0033】ここで、SO は未含浸処理木材の膨潤率
(%)を示し、Sは含浸処理木材の膨潤率(%)を示
す。尚、膨潤率は、吸湿試験前後の木材の体積変化の割
合である。 【0034】・硬化状況 含浸処理木材を切断して、内部の組成物の硬化状態を目
視で調べた。○は硬化が充分であることを意味し、×は
硬化が不充分であることを意味する。 【0035】合成例1 攪拌器、温度計及び上部に冷却管を付帯した水分離管を
備えたフラスコに、ネオペンチルグリコールのプロピレ
ンオキサイド4.0モル付加物(分子量336)336
g(1モル)、アクリル酸144g(2モル)、触媒と
してパラトルエンスルホン酸19g(反応物全体に対し
て2%)、重合防止剤としてハイドロキノンモノメチル
エーテル0.2g(反応物全体に対して250pp
m)、及び溶媒としてトルエン480g(反応物全体に
対して50%)を仕込んだ後、攪拌下加熱し、反応温度
110℃で5時間脱水エステル反応を行った。水分離管
に溜まった水の量は36gであった。反応終了後、反応
液を水洗した後、トルエンを減圧蒸留により除き、ネオ
ペンチルグリコールのプロピレンオキサイド4.0モル
付加物のジアクリレートを主成分とする反応生成物を得
た。これを組成物Aとする。この反応生成物は、一般式
(1)における各記号が次のとおりのものである。 R :ネオペンチルグリコール残基(炭素数=5) R1 :プロピレン R2 :水素原子 a :2.0 n :2.0 【0036】合成例2 トリメチロールプロパンのプロピレンオキサイド3.0
モル付加物(平均分子量308)308g(1モル)、
アクリル酸216g(3モル)、触媒としてパラトルエ
ンスルホン酸21g(反応物全体に対して2%)、重合
防止剤としてハイドロキノンモノメチルエーテル0.3
g(反応物全体に対して250ppm)、そして溶媒と
してトルエン524g(反応物全体にして50%)を使
用し、合成例1と同様の方法で脱水エステル反応を行っ
た。水分離管に溜まった水の量は54gであった。合成
例1と同様に後処理をし、トリメチロールプロパンのプ
ロピレンオキサイド3モル付加物のトリアクリレートを
主成分とする反応生成物を得た。これを組成物Bとす
る。この反応生成物は、一般式(1)における各記号が
次のとおりのものである。 R :トリメチロールプロパン残基 R1 :プロピレン R2 :水素原子 a :1.0 n :3.0 【0037】比較合成例1 ネオペンチルグリコールのエチレンオキサイド4.1モ
ル付加物(分子量280)285g(1モル)、アクリ
ル酸144g(2モル)、触媒としてパラトルエンスル
ホン酸17g(反応物全体に対して2%)、重合防止剤
としてハイドロキノンモノメチルエーテル0.2g(反
応物全体に対して250ppm)、及び溶媒としてトル
エン429g(反応物全体に対して50%)をを使用
し、合成例1と同様の方法で脱水エステル反応を行っ
た。水分離管に溜まった水の量は36gであった。合成
例1と同様に後処理をし、ネオペンチルグリコールのエ
チレンオキサイド4.1モル付加物のジアクリレートを
主成分とする反応生成物を得た。これを組成物A’とす
る。この反応生成物は、一般式(1)における各記号が
次のとおりのものである。 R :ネオペンチルグリコール残基(炭素数=5) R1 :エチレン R2 :水素原子 a :2.05 n :2.0 【0038】比較合成例2 トリメチロールプロパンのエチレンオキサイド3.0モ
ル付加物(平均分子量270)270g(1モル)、ア
クリル酸216g(3モル)、触媒としてパラトルエン
スルホン酸19g(反応物全体に対して2%)、重合防
止剤としてハイドロキノンモノメチルエーテル0.2g
(反応物全体に対して250ppm)、そして溶媒とし
てトルエン486g(反応物全体にして50%)を使用
し、合成例1と同様の方法で脱水エステル反応を行っ
た。水分離管に溜まった水の量は54gであった。合成
例1と同様に後処理をし、トリメチロールプロパンのエ
チレンオキサイド3モル付加物のトリアクリレートを主
成分とする反応生成物を得た。これを組成物B’とす
る。 R :トリメチロールプロパン残基(炭素数=6) R1 :エチレン R1 :水素原子 a2 :1.0 c :3.0 n :0 【0039】実施例1〜2 表1に示される各組成物100部に、重合開始剤として
ベンゾイルパーオキサイドを1部を配合して、木材含浸
処理用組成物を調製した。各評価結果は表1に示すとお
りであった。 【0040】比較例1〜4 表1に示される各組成物100部に、重合開始剤として
ベンゾイルパーオキサイドを1部を配合して、木材含浸
処理用組成物を調製した。各評価結果は表1に示すとお
りであった。 【0041】 【表1】 ・アロニックスM245:ポリエチレングリコールジア
クリレート〔東亞合成(株)製〕 ・アロニックスM113:ノニルフェノールエチレンオ
キサイドの4モル付加物のアクリレート〔東亞合成
(株)製〕 【0042】 【発明の効果】本発明の木材含浸処理用組成物は、木材
への含浸性に優れ、反応性が高く、低揮発性で取り扱い
も容易であり、木材へ含浸させ硬化させることにより、
木材に耐湿性、寸法安定性及び強度を付与することがで
き、木材の改質のために賞用されるものである。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(72)発明者 溝口 芳夫
長野県上伊那郡高遠町西高遠1132番地株
式会社ウッドレックス内
(56)参考文献 特開 平5−39470(JP,A)
(58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名)
B27K 3/15 - 3/52
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】2〜4個の水酸基を有する飽和脂肪族アル
コールのプロピレンオキサイド付加物と(メタ)アクリ
ル酸との反応による、下記一般式(1)で表される反応
生成物からなる木材含浸処理用組成物。 【化1】
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